ぼくが部屋のすみっこに座っていると、バクフーンはいつもぼくのとなりにいてくれる。
背中の炎をけして、そーっと、ぼくの近くにやってきて、あったかい体でぼくのとなりにくっついてくれる。
パパとママの言い付けどおり、リビングのテーブルの上でボールの中にいるはずなのに、バクフーンはいつもぼくの部屋まで出てくる。
そんなときは大抵、パパとママがケンカしてるときだ。
パパとママはなかよしだって、どんな本にも書いてあるけど、それはウソだってぼくは知っている。だって、なかよしならケンカのあとの『ごめんね』があるでしょ?ぼくだって、友達とケンカしたら、ぼくが悪くても悪くなくてもあやまりに行く。でもパパとママにはそれがない。だから、いつまでもケンカをしてるんだ。
いつまでも。いつまでも。ぼくが寝たはずの時間から、いつまでも。
そんなパパとママを聞いているのが、ぼくはイヤだ。
だから、こうして部屋のすみでちいさくなることにしてる。まるで、図鑑でみたヒノアラシみたいに。
もうひとつ、ぼくは知っていることがある。
それはぼくがバクフーンに命令すれば、パパとママのケンカは片付けられるってこと。
ぼくが一言、友達とのバトルのときみたいになにかをいえば、パパも、ママも、二度とケンカをしなくなる。
バクフーンも、ぼくが言わないからそうしないだけで、本当はケンカを止めさせたいはずなんだ。
ぼくは知っている。
パパとママがケンカしているとき、バクフーンもぼくと一緒に悲しいかおになる。けれどすこしだけ、一回だけ、かならずドアの向こうを睨むんだ。それも、バトルの前のときみたいな、怖い目で。まるで、敵が向こうにいるような怖い目で。
…でも、ぼくはそれをするのがイヤだ。
だって、そんなことしても、本当に二人はなかよしにならないから。
だれも、ぼくのとなりにいてくれなくなるから。
だから、ぼくはこうして部屋のすみでちいさくなることにしている。
そうすれば、バクフーンがとなりに来てくれて、ぼくと一緒にいてくれるから。
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初めましての方は初めまして。
また読んで下さった方は、ありがとうございます。aotokiです。
ポケモンは家族。じゃあこういうちょっと物悲しいのもありかな、と勢いで書きました。
第二世代はチコリ―タでしたがバクフーンもなかなか好きです。・・・べっ、べつにオーダイルが嫌いだとかそういうのじゃないからね!!
反省はしている。だが後悔は(カイリューの はかいこうせん!
【なにしてもいいのよ】