[掲示板へもどる]
一括表示

  [No.2498] ポケモンニュース七夕編【ポケライフ】 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2012/07/06(Fri) 21:07:43   118clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 こんばんは、6時のニュースです。

 さて、今日は七夕。各地で笹が飾られる中、ある事件が起こりました。では現場から中継です。

「本日午後3時頃、このトクサネシティで大量のキュウコンを連れて辺りを干上がらせた疑いで男が逮捕されました。男は非理亜住(ひりあ じゅう)容疑者で、調べに対し容疑を認めているとのことです。非理亜容疑者は特性が『ひでり』のキュウコンを使って夜を明るくしようとしましたが、駆け付けた警察に『明るくても七夕じゃなくても、カップルはいちゃいちゃするんだぞ!』と説得され、その場に崩れ落ちました。非理亜容疑者は動機を『夜を明るくすれば七夕をできなくなると思った』と語っています。以上、現場からでした」

 ありがとうございました。1年前にも似たような事件がありましたが、どこにでもこうした人はいるものですね。では、次のニュースはこちら。






1年前はサーナイトのブラックホール設定を使い、今年はキュウコン。来年はどうなることやら。


  [No.2508] 【便乗】 [快晴の七夕] 投稿者:MAX   投稿日:2012/07/08(Sun) 05:53:12   120clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 七夕の夜のこと。
 都会を遠く離れた田舎にひとつの神社がある。そこは小高い丘の上にあり、鳥居に続く石段からは町並みを見下ろすことができた。
 街灯が点々と夜道を照らす中、しかしその神社では軒下の電灯がひとつ、境内で虫を集めるのみ。管理が行き届いてないのか、主立った明かりは幽霊か狐の作る鬼火だった。
 まさに肝試しの場にしかならないような場所だが、そこに人影がふたつ。石段に腰掛けて夜景を眺める男女の姿があった。

「やってるなぁ」
「まぁ、よう燃えとろうなぁ」

 毎年の行事を男は微笑ましく思いながら、方や女は片膝に頬杖をついて眠そうに、目を細める。
 両名の視線の先には、町の一角を橙に照らす大きな明かりがあった。もうもうと煙を立てるそれは七夕の笹を燃やす火だ。町中の短冊と笹を集め、まとめて火にくべられていた。
 短冊にこめられた願い事は煙となって空の神様のもとに届けられ、やがて叶えられるだろう。そんな人々の神頼みを、あざ笑うように女が言う。

「ああも大量に送られては、お空の神様とやらも手一杯であろうに」

 煙の中にどれだけの願いが詰まっているのか。無邪気な風習だと呆れつつ、男から手土産にともらったいなり寿司を頬張った。
 そうぼやく女に、男が串団子片手に言い返す。

「確かに多いが、急ぎのお願いなんてのは短冊には書かないだろ。神様には、少しずつゆっくり叶えてもらえばいいんだよ」
「あの量を少しずつか。は、ずいぶんと気の長い」
「そういうもんさ。いつか自分の番が来る。そう信じるんだよ、人は。良い話じゃないか、夢があってさ」
「夢のぉ。そんな程度……」

 偏見混じりの男の言葉に女は思う。その程度の願いなら、叶う頃には願ったことさえ忘れているんじゃないか。神に頼るほどのこともないのではないか、と。

「ん?」
「いや、そんな程度なら、神様に頼らんでもそのうち叶えられるのではないか、とな」
「あー、その時はその時だろ。神様が、自分で願いを叶えられるように導いてくれた、ってな」

 なんとも前向きな思考だ。いよいよ女も呆れ果て、鼻で笑った。

「盲信ここに極まれり、じゃの」
「そう言うなよ。どうせ、将来の目標みたいな感じで短冊に書くんだからさ」
「将来の目標、のぅ」

 我が事のように言う男に、女の興味が向いた。男の顔をのぞき込みながら、口の端は上がり、目がいっそう細くなる。

「かく言うお主は、なんと書いたのかや?」
「黙秘します」

 いたって自然に断られた。しかしそれではおもしろくないと女は口を尖らせる。

「かーっ、なんじゃい、生意気な口をききおって。
 目標と言うからわしが生き証人となってお主の行く末を見届けてやろうとちょいと世話を焼いてみれば、これか。
 そんな人に言えんような目標なぞ墓まで持ってくが良い。どうせ達成できたところで自己満足にしかならんからな。
 わしは知らんぞ。目標達成の暁には労いの言葉のひとつぐらいくれてやろうかと思うたが、もう知らん。勝手に一喜一憂するが良いわ」
「拗ねるなよ、面倒くせぇな。おまえ、こういう願掛けの類は他人に言ったら効果がなくなるって、よくいうだろう?」
「そんな迷信、気休めにもならんわ。だったら何ゆえ人目に付くような笹の枝に短冊を吊す」
「個人を特定されなきゃ大丈夫だろ」
「大雑把にもほどがあるのぉ〜……」

 細かいのかいい加減なのか。苦々しく顔を歪ませる女に、男はため息をついた。

「そうは言うがな。忘れた頃に叶ってラッキー、そんな程度なんだ。ことさら、達成を労ってもらうようなもんじゃない。それに……なぁ」
「それに?」
「失敗したら、おまえ、笑うだろ?」
「…………」

 女は目をそらした。

「……そんなわけだ」
「あ……いや、返事に窮したのは、笑うからではないぞ? 目標の種類によると思って、どう返そうか迷っただけじゃ」
「いーんだよ。どうせもう俺の短冊は煙になってる頃だ。神様、織姫様、彦星様、何卒よろしくお願いします、ってな」

 言って、男は団子をかじった。
 幸いにして今夜は晴天。明かりの少ない土地柄、見上げれば天の川がはっきりと見えた。しかし風に乗って夜の闇に消えていく願い事たちが、はたして空まで届いてくれるのやら。
 だが男の投げやりな態度に、女は納得しない。

「これ、弁明も聞かずに不貞腐れるな。わしばっかり悪いようにされて納得できるか」
「あぁ、そりゃこっちも悪かった。いいからこれでも食って少し黙ってな」
「な……んむ」

 女の前に串団子が一本、突き出された。それに女はかじりつき、男の手からもぎ取る。
 食わせれば黙るという算段か。少々癪に障ったが、団子一本に免じて女は黙ることにした。

「…………」

 その団子がなくなるまでの少しの間、男は夜の音に耳を澄ませる。
 ひと気のない神社で聞こえるのは、虫の声と幽霊のすすり泣きくらいだ。泣き声は不気味と思うが、その正体が知れていれば怖くもない。複数のムウマによるすすり泣きの練習風景を見てしまって以来、むしろ微笑ましかった。
 そんな折に、男の耳に遠くから拍子木の音が届いた。「火の用心」と声が聞こえ、もうそんな時間かと腕時計を眺める。

「……里の夜景は楽しいか?」
「いや、あんまり」

 団子を食い終わったか、女が話しかけてきた。しかしその内容には、いささか同意しかねる。
 田舎の夜は控えめに言っても退屈だ。黙って見ていると眠くなってくるし、眠れば幽霊からのいたずらが待っているのだから。

「その割には、向こうの明かりをじっと見ておったがなぁ」
「……そうだったか?」

 言われて自覚がないことに気づいた。そろそろ眠気がひどいようだ。調子が悪いか、そろそろ帰って寝るか。思いながらまぶたを揉む。

「眠いか」
「それも、ある。ただ向こうの焚き火、雨降らなくて良かったな、って」

 言って、男はふと思い出した。

「……そういや、天気予報じゃ雨じゃなかったか? 今日って」
「予報なぞ知らんな。しかし、昼ぐらいまでは確かに曇り空じゃったのう」

 両名が見上げる空は、満天の星空。雲はひとつとして見当たらない。

「はてさて、どこぞのキュウコンあたりが“ひでり”で雲を消し飛ばしたのやもな」
「キュウコンなぁ…………おまえ……」
「さーて、わしには心当たりなんぞありゃせんなー」

 白々しいというか胡散臭いというか。なんとも人を馬鹿にしたような女の態度だが、しかし女は続ける。

「言っておくが、わしはむしろ七夕は曇り空であるべきと思うとるからの」
「そりゃまた、ずいぶんひねくれたことで」
「ふん。七夕とは、愛し合いながらも離ればなれの男女が、一年の中で唯一会うことが許される日という」
「今更なことを言うなぁ」
「その今更じゃがな? 考えてもみよ。一年もご無沙汰の男女が再会したならば、ナニをするか……」
「……ぁ゛あ゛?」

 何かを企むようにニヤニヤと語る女に、なんとなく理解した男は何を言い出すこの女、と信じられないモノを見る目を向けた。

「快晴にして見通しも良く、衆人環視の真っ直中で……というのは恥ずかしかろーなぁー」
「おまえ、それって……ぁあ、下品なっ!!」
「か、か、か! 下品で結構。そういう見方もあって、わしに“ひでり”の心当たりは無い。それさえわかってもらえれば充分じゃ」

 それだけ言って、女は満足げに鼻で笑った。そう堂々とされては男は黙るしかない。これ以上口出ししても、自分ばかりが騒いでいるようで馬鹿馬鹿しいではないか、と。

「ったく……」
「何にせよ、今夜は快晴じゃ。こうして天の川を見れた。短冊を燃やすのもできた。それを幸いと思うが良い」

 まったくもってそのとおりだが、男はうつむいて唸るばかり。騒ぎの原因にそう言われて素直に従うのは、ただただ癪だった。
 しかしそうやって下を向いていたから近づく影が見えず、女に背を叩かれることとなった。

「……んむ、少々声が大きかったか。ほれ、お迎えじゃ」

 拍子木の音と「火の用心」という声。顔を上げれば、石段の下で錫杖を持った男性と拍子木を手にしたヨマワルが鬼火に照らされていた。
 男性とヨマワルの目がこちらを見上げて、

「ひのよぉーじん」

 ヨマワルが拍子木をちょんちょん、と鳴らす。もうそろそろ夜も遅いぞ、と。そういう意味である。

「あー……じゃぁ、今日はこれまでだな。もう帰る、おやすみ!」
「おぉ、気をつけて帰るんじゃな」
「あぁ、またな」

 団子の串などのゴミを抱えて男は石段を下りていく。やがて夜回りの男性達と共に夜の町に姿を消した。
 そして夜の神社に女だけが残る。

「……どれ、わしもひとつやってみるかの」

 つぶやき、女が取り出したのは町で配られていた短冊の一枚。本来ならば町の笹と一緒に燃やすものであったが、女はそれを今の今まで持ち続けていた。
 願いを書かずに持っていたのだが、そうこうしているうちに焚き火は終わってしまった。だが女は構わない。
 白紙の短冊を左手に持つと、右手の親指に歯で傷をつけ、出た血を人差し指につけて文字を書いてゆく。そうして願い事を書き込み、掲げる。

「この場に笹は無いが、ま、燃えれば同じであろう」

 そして「いざ」と息を吹きかければ、短冊はたちまち火に包まれ、細い煙を残して灰となって消えた。

「さて、期待せずに待つとするかの」

 その言葉を残して女は夜に溶けるように消え去り、後には、

――――コォーーーーン…………。

 狐のような声だけが夜の境内に響きわたった。






 * * * * *



 まず、あつあつおでん様、ネタ拝借と言う形になりましたが、樹液に集まる虫のようにありがたく思いながら使わせていただきました。。

 お付き合いいただきありがとうございました。MAXです。
 あつあつおでん様のネタから「夜のひでり状態」を見て、「雲が晴れるだけなんじゃないか」と考えた7日の朝。
 キュウコンとおしゃべりをするなら古びた神社でこんな具合でしょう、と地元を想起しながら作り上げたこれ。
 ジジイ口調の女性と言うステレオタイプなキャラができましたけども……。
 書いてて思いました。久方様のある作品と舞台が似てる、と。
 だ、大丈夫でしょうか! ちとツイッタで聞いた限りでは概ね寛容でございましたが、自分の説明を誤解されてしまっていたやも……。
 不安の残したまま動いたことを謝ります。難があれば即時退去いたします。と、これ以上はネガティブなんで、以上MAXでした。

【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【申し訳ないのよ】


  [No.2511] Re: 【便乗】 [快晴の七夕] 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2012/07/08(Sun) 19:25:23   103clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

あのネタ話からこのような真面目な話ができるとは。思わず唸りました。ありがとうございます。

私もキュウコンと色々やってみたいです。