「顔面クリムガンなんて言わないで」
 よわよわしい声で訴えかけるのは、全身クリムガンなマロンくん。
 マロンという可愛らしい名前はギャップ萌えという言葉ですらフォローしきれないほどに不釣り合い。
 しかし内面は温厚、それどころか母性愛をくすぐるような愛おしいものなのに、そのワイルドな頭を撫でたいという人はいません。
 抱きつくなんてもってのほか、全身ゴツゴツメットなマロンくんにはスキンシップすらままなりません。
「どうしてこんな身体なんだろう」
 しょんぼりと頭を項垂れて歩きだします。重い足取りは、地面に無数の傷をつけました。
「ようマロンwwww元気そうだなwww」
「あ、オノノクスくん……」
 通りに差し掛かると、とても嫌なポケモンに出会ってしまいました。
 マロンくんは龍単体という優秀なタイプ、それに加えてそれなりに高い攻撃力からの逆鱗が打てます。不意打ちだって覚えるんです。
 にも関わらず対戦でお見かけできないのはこのポケモンがいるからなのです。
 マロンくんはオノノクスくんの劣化とすら蔑まれています。
 マロンくんが苦手に思うのも無理はないでしょう。
「おい聞けよマロンww俺この前対戦で龍の舞積みまくって3タテ決めてやったんだぜww
 いや〜スカっとするぜ?wwお前も今度使ってみろよww
 って、お前龍の舞出来ねえんだったかwwwwwテラワロスwww」
「うう……」
 
 何も言い返せないマロンくん。
 蛇睨みというオノノクスくんの習得しない技を覚えていますが、それすら放つ気にはなれません。
「それじゃ、ご主人が待ってくるからなwww
 じゃーな顔面クリムガンwwww」
 型破りならぬ常識破りなまでの高らかな笑い声をあげて、オノノクスくんがいなくなりました。
 散々好き勝手言われて、マロンくんの目には涙がたまっています。
「ボクのことを必要としてくれる人なんていないんだ……」
 そんな言葉と涙がこぼれます。
 目をぬぐいますが、その肌は自分すら傷つけていきます。
 
 心も体も、傷だらけ。
 全身クリムガンな、マロンくん。
 
 そんなマロンくんの所に、数少ない友達がやってきました。
「あ、マロンじゃないか。どうしたんだよ、泣いてるのか?」
「フライゴンくん……」
 フライゴンくんはランダム対戦で猛威をふるっているガブリアスの完全劣化という評価を受けている、マロンくんと同じ境遇の龍ポケモン。やはりどこか通じ合う所があります。
「また対戦で使ってもらえなくて落ち込んでるのか〜?
 もう諦めようぜ〜どうせ俺達は、あいつらの劣化なんだからよ〜」
 そんな風にフライゴンくんは、必死に作った笑みを浮かべて言います。
 でもマロンくんは。
「対戦で使ってもらえなくてもいいんだ……。
 対戦で使ってもらえなくても、ボクのことを好きって言ってくれる人がいるなら……。
 でもね、みんなボクのことを見て顔面クリムガンだって言うんだ……」 
 
 マロンくんは対戦で使ってもらえなくても、誰かに好きになってもらえたらそれで良いと言います。
 
「顔面クリムガンなんて、言わないで……」
 どんどん、涙が流れていきます。
 そんなマロンくんをみてフライゴンくんは考えます。 
 そして閃きました。
「そうだ、ならもっとインパクトのある言葉をつくればいいんじゃないか?」
「ど、どういうこと……?」
「だから、顔面クリムガンなんて言葉よりももっと流行るような言葉をつくればいいんだよ。
 
 そうだ、『クリム頑張る』なんていうのはどうかな?
 傷だらけになっても、あきらめず頑張るって意味だ!良い意味だろ?」
「クリム……頑張る……。
 うん、良いねそれ。ボク、クリム頑張るよ!」
 俯いていた顔をあげ、マロンくんは笑います。もう誰にも顔面クリムガンなんて言わせません。
 新たに習得できるようになったステルスロックをもって、走り出します。
 クリム頑張れ、マロンくん!
 
書いてみていいのよ
描いてみていいのよ
使ってみていいのよ
────
 
 最近ランダム対戦に潜るようになって色々と戦術を練っているのですが、クリムガンというポケモンの不遇っぷり、そして活躍の予感を感じまして育ててみたのですが、なかなかの立ち回りをしてくれます。
 皆さんも一度育成してみてはどうでしょうか。
 マロンくんと対戦したいかたはコメントしてください(対戦したいだけです笑)