おらっ はやく ねろ!
てめえら はやく ねろ!
うるせーよ はやく ねろ!
いいから はやく ねろってんだよ!!
「みんめえええええ!!!!」
「キャー!」
「きいいいいええええええ!!!」
「タブンネが鳴いたー!」
「タブンネー!」
「タブンネー!」
「みみひっぱるぞー!」
うぜえ。うぜえ、うぜえうぜえうぜえうぜえええええ!!!
人間どももうざいが、そのちいせえガキはもっとうぜえ!
タブンネの見た目じゃ「反撃しなそうだしもっとやっちゃえ☆」ってか!?
「こら!もう寝なさい!」
人間の女が同じことを言う。そーするとなぜか渋々布団に入るガキども。うぜえ。見た目で言うこと聞く人間を決めてんじゃねえぞこら。
つーか耳ひっぱるな! しっぽ触るな! 腹もむな!
布団に入って寝かしつけようとしたらまだかまってほしいのか!ふざけんな!
ガキどもが布団に入って数時間。やっとこさ寝やがった。
こちとらやっと休憩だ。ほっとついて人間がくれるコーヒーを一杯。匂いはいいのに苦い。
「また増えたね」
「仕方ないわよ。こちらが打てる手は全部打ったから」
人間たちはまじめな話をしている。ここがそんなところだから仕方ねえ。
ここは人間たちが捨てた子供たちを育てる施設らしい。意味わかんねー。
自分の子供捨てるかふつー!? かわいくねーだのなんだのかんだのすきじゃないだのあいしてないだのうんぬんかんぬん。人間たちはいつも訳の分からん理屈をこねて自分が一番可愛そうだと力説すんの。なんでそんなかわいそうなドラマ仕立てのストーリーを話していくんだ。子供捨てることに罪悪感あるなら引き取れっつーの。かわいそうじゃないなら黙って捨てろっつーの。
まー、人間なんて勝手な生き物だわな。あいつも勝手に変なボール投げつけてきて、弱いからいらねーだのなんだの散々いってくれた挙げ句、知らねー土地に置いて行きやがった。木の実のなってるところも解らんし、野生のポケモンたちはやたらつえーし、死ぬかと思った。
腹も減って喉も乾いて、タブンネの見た目からして血眼で探すトレーナーから逃げて本気で死ぬかと思った。草むらが途切れてるところに逃げてやばいと思ったね。そしたらここの園庭だったわけだ。
それからはなんでかここで働いてる。24時間親に捨てられたガキどもの相手だ。我ながらこんなに適性のない仕事につくとは思わなかったがな。
あ?幸せだとは思ってねーよ!ガキはうぜえし人間どもはコーヒーとか苦いものばかり渡して来るからな!
「タブンネー!」
もう起きたのかよクソガキ。見に行ってやるか。
なんだよ触覚引っ張るなうぜえ……お前の体調なんて知りたくもねーわ!うるさい、うるせーよガキ。
「もう寝る時間よ寝なさい」
人間たちが寝かしつけてくれた。あーでももう少し起きててよかったんじゃね?
人間が我が子を捨てる理由のもう一つが、生まれ持った障害。ぎゃーすか騒ぐガキどもはまだいい。あいつみたいに自分じゃ動けねえ、呼吸も危ないっつーのばっかりだ。唯一動く手で触覚触るのは助かりたい本能なのか?
見に行ってやるか。お前のその心臓の音じゃあな……お前の親みたことねーから知らんけど、人間の親の真似くらいはしてやるよ。だから寝ろ。起きてる間のが苦しいらしいぞ。
そいつは触覚を握ったまま朝を迎えやがった。痛いっつーの。いくらお前の親の真似とはいえ触覚握っていいなんて言った覚えはないぞ。体くらい拭いてやるからよ。だから離せ。そーっとな、そーっと。いっててててて!
やっと触覚が抜けた手を熱いタオルで拭いてやる。背後に影を感じた。振り返ったら知らねえ人間が立ってた。人間って何かしら表情あるんだが、こいつら無表情だった。初めて見たが、こいつの両親だった。あー、弱い子供は自分の子でも要らねえのか。あーそうか。
何も言わずにそいつを引き渡した。これが正しいのかは知らん。が、これが今の仕事だ。その代わりに生きる権利を手に入れた。やっていくしかねえよ。弱いポケモンは生きられねえんだ。タブンネだからここに拾ってもらえて、やっていくしかねえ。
「タブンネ」
「めんめ?」
「今日、また一人来るって」
ああ、またか。そうだあいつ一人いなくなったところで世界は何も変わらない。自分の仕事は何も変わらない。生きていかなきゃならん。今さら野生に戻れるほど戦えるとは思ってない。
せめて捨てられたガキどもくらいは、野生の社会を戦えるだけの力を持って成長しろ。つーかしろ。しなかったらげしげしするからな。解ってんのか。だから触覚触るなクソガキ!
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おらっ はやく ねろ げしげし
タブンネの鳴き声は「みっみー」に聞こえるでございます。
ポケライフって間に合うのかな。捨てられたタブンネが孤児院で働いていく話でした。
【好きにしてください】