その昔、おばあちゃんに聞いたことがある。
木の実や野菜、お米等を収穫している途中で
遠くで雷が落ちたところを見たあとに、お酒や花と一緒に
収穫したものを鳴神様にお供えすると
そのものの願いを叶えてくれるのだと言う。
*
「おばあちゃん。」
「びぃ!」
「いらっしゃい、チナツ。可愛いあなたもね。」
大きな昔ながらの家。その裏に、小さなビニールハウスがある
そのハウスの中から、おばあちゃんは収穫したたくさんの野菜を持って
私とエレキッドを出迎えてくれた。
「可愛いでしょ!エレキッドって言うんだ!
この前お父さんがくれた卵が孵ったの!!」
「そう、良かったわね。大事に育てなさい。」
「うん!!」
おばあちゃんはニコニコ笑いながらエレキッドの頭を撫でた。
私も!と、おねだりして撫でてもらったとき、遠くで雷が鳴った。
「……あら?鳴神様かしら?」
「なるかみさま?」
「ちょっと呼んでみましょうか。」
「!あの歌だね!!」
「びぃ?」
「エレキッドにも聞かせてあげる!」
*
空に黒雲渦巻いて
雨降り風吹き雷(かんだち) 落ちる
嵐の過ぎた焼け野原
鍬立て種撒き命成る
鳴神様に捧げよう
黄金に染まった我が宝
*
目の前に、小さな祠が現れた。
そこには、古びた和紙に、『鳴神様ノ祠』と書かれていた
おばあちゃんの手には、なんだか高そうなお酒が握られている
「さあ、チナツ。野菜をお供えして上げて?」
「うん。」
私は、色とりどりの木の実や夏野菜が入った籠を、小さな祠の前に置いた。
その横では、おばあちゃんがお酒をお猪口に注いでいるのが見えた
アルコールの匂いが鼻につくが、神様の前なので我慢した。
エレキッドは、花瓶に花と水を入れて、そっと野菜達の横にそれを置いた。
おばあちゃんも、注いだお酒を供えると、蝋燭に火をつけて、手を合わせた。
「チナツとエレキッドが、何時までも仲良しでいられますように。」
「……!!」
「ふふ。チナツとエレキッドも、お願い事をしてみなさいな。」
「じゃあ……おばあちゃんが元気でいられますように!!」
「ありがとう、チナツ。さあ、帰ってお昼にしましょうか。」
「うん!!行こう、エレキッド!!」
おばあちゃんは蝋燭の火を仰いで消すとお酒を持ち、私の手を取った。
私もおばあちゃんの手を取ると、反対側の手で、エレキッドの小さな手を握った。
そのエレキッドの反対側の手には、いつの間にか拾ってきたであろう木の枝が握られていた
「チナツ。何がいい?おばあちゃん。今日は何でも作るわよ。」
「カレー!カレーがいい!!」
「じゃあ、決まりね。」
家路をのんびり歩きながら、色んな話をした。
鳴神様が、私達を優しく見守っている気がした。
*あとがき*
雷を題材に、ほのぼのしたのを1つ。
この小説における鳴神様はなんなのか
皆様のご想像にお任せします。
【好きにしていいのよ】