シオンタウン郊外に、自転車を漕いでどこかに向う1人の女性
その自転車の籠にはカラカラがちょこんと居座り、その手には、赤と紫の花束
女性は白衣を来て、荷台に鞄を括り付けている。
栗色の髪をうまく纏めて、白い薔薇の嘴ピンで、前髪を止めていた。
「久しぶりね。こっちに来たの。」
「カラ……?」
「だって、私が医大卒業してからはずっとアサギにいたじゃない。」
女性の言葉に答えるように、籠に居座るカラカラのオスは、前を向いて、小さく鳴いた。
だいぶボロボロの自転車ではあるが、女性は白衣を靡かせて、ひたすら、どこかに向かっていた
「さあ、そろそろあの花畑よ。フジさんが先に着いてるはずだから
失礼のないようにしなさいね?オーカー。」
「カラ!」
「よし、いい子!さあ、飛ばすわよ!!」
*
僕のお母さんは、ちょっと前に天国へ行ってしまった。
そのときに、偶然出会ったのが、人間のクルミさんだ。
クルミさんは、寂しくないように、ずっと僕の側に居てくれた
そして、そのまま僕のトレーナーになってくれた。
そのときのクルミさんは、お医者さんになる勉強をしていたため
クルミさんに着いてきたというチャコールさんに、色々教えてもらった。
チャコールさんは、とっても強くてカッコいいマニューラの女の人で
僕の憧れであり、目標としている人だ。
もしお母さんがまだ生きてたら、チャコールさんみたいに
戦い方を教えてくれたのかな……。
「着いたわよ、オーカー……降りれる?」
お花屋さんで買ってきた、ちょっと高い花束を
いったんクルミさんに預けて、自転車の籠から飛び降りた。
「……こんなに逞しくなったの、チャコールのお陰かしら。」
花束をまた預かると、クルミさんは荷台の荷物を取ってから
たくさんのお花に囲まれた、丘の上の大きな木へと向かった。
その木の下に、僕のお母さんのお墓があるんだ。
「フジさん。」
「おお、クルミさん。お久しぶりです。」
「お久しぶりです。腰の具合はどうですか?」
「ええ、なんとか。しかし、最近のお医者さんはすごいですな!」
「医学は常に、進歩していますから……それじゃあ、始めましょうか。」
フジさんと言う人間のお爺さんとクルミさんは
お母さんのお墓を綺麗にし始めた。
僕も手伝えることをして、5分くらいで終わった。
それから花束をお母さんのお墓に置いて
蝋燭と御線香を立てて手を合わせた。
「オーカー。私達は向うに行ってるから
お母さんとたくさん話しておいで。」
「カラ……?」
(いいの……?)
「ほら……行きましょう。」
クルミさんとフジさんは、丘の下の花畑に行ってしまった。
それをじっと見送ったあと、僕はお母さんのお墓に向き合った。
「……お母さん。僕ね、前より強くなったんだよ。」
「まだまだ未熟者だってチャコールさんは言うけど
それでも、色んなポケモンと戦ってきたんだ。」
「お母さん、この花、好きだったから持ってきたんだ
花の名前は知らないけど、とてもいい匂いがするって言ってたもんね
これね、赤い方がグラシデアで、紫の方が胡蝶蘭って言うんだ。」
「お母さん……僕、ずっとずっと、お母さんのこと、忘れないから。」
ありがとう、愛しているよ、お母さん。
*あとがき*
Superflyさんの愛を込めて花束を聞いたときから
この曲はずっと、ガラガラとカラカラの二匹に会うなぁと思ってました
カラカラがガラガラに花束を送ると言うイメージが
焼き付いて離れませんでした。
感想、お待ちしています。
【描いてもいいのよ】
【感想求む】