[掲示板へもどる]
一括表示

  [No.2655] フィッシング 投稿者:aotoki   投稿日:2012/10/01(Mon) 21:02:20   115clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

なんか凄いらしいつりざおをもらったので、釣りをしてみることにした。
ルアーとかもついていて、確かに見た目は凄いつりざおだった。あの棒切れにヒモとエサがついただけのつりざおからはえらい進化だ。
ひょいっと川に投げるとたしかな手応え。
引き上げるとルアーの先にギャラドスがひっついていた。


正直言ってアズマオウくらいを想像してたので、ぶったまげた。

そのギャラドスには、初めて釣り上げたコイキング、が進化したギャラドス(LV62)を見せて丁重にお帰りいただいた。
逃げたギャラドスが上げた飛沫を浴びながら、たしかにこれは凄いつりざおだと一人感心した。

****

その後もあちこちでつりざおを振ったけれど、どんな場所でも強いポケモンばかりが釣り上がって、とても面白かった。最近はあんまり野生のポケモンと戦ってなかったから、釣り上げたポケモンとのバトルは地上とはまた違った手応えがあって、いいトレーニングになった。

近くの水場に飽きると、ギャラドスに跨がって海に出た。
でもギャラドスに乗ると上手くつりざおが振るえないということに気づいて、残念だけどギャラドスは留守番にしてラプラスに乗っていくことにした。
海のポケモンもたしかに強かったけど、川のポケモンとはまた違った強さで戦いがいがあった。ただ、ドククラゲの多さにだけは辟易したけれど。

不機嫌そうに上がってきたオクタン。ルアーをぐるぐるまきにして遊ぶメノクラゲ。マンタインには釣り上げた瞬間逃げられて、水面を5mくらい引きずられた。キングラーには糸を切られかけ、何故か40LVのコイキングが引っ掛かったこともあった。
どうしても釣れないとき、気まぐれに海の底を覗いてみるとたくさんのテッポウオが泳いでいたこともあって、ポケモンが引っかかったのにも気づかず水色と銀の鱗の流れを眺めていた。
ちなみに、引っかかったのはコイキング(LV40)だった。
もちろん、ギャラドスを出して丁重にお帰りいただいた。

****

しばらくすると海にも飽きてしまった。
困ったことに、川と海以外の水場には心当たりがなかった。当たり前だけど。仕方がないのでつりざおを下ろして、また元の地上暮らしに戻った。
草むらを出たり入ったりのつまらない日々。
そういえば、洞窟があるって話をどこかで聞いたな。
ゴローニャと山道を歩いていくと、たしかにあちらこちらに小さな洞窟があった。大抵はイシツブテとか弱いポケモンのねぐらだったけど、たまーにサナギラスとかが飛び出してくることもあって、こちらはこちらでそれなりに楽しかった。

ある日、たまたま見つけた深めの洞窟を探検していると、微かに水のが聞こえてきた。音の方に歩いていくと、ちょっとした広場くらいの地底湖があった。

家に帰って、すぐさま夜の山道を戻った。
背中では赤いルアーが揺れている。


地底湖で一人、つりざおを振った。ピチョン、ピチョンと水滴が落ちる音に耳を澄ませながら浮きを眺めていると、川や海の時とは違った感情が浮かんできた。
静かな湖につりざおと水と一人。
つり上がったアズマオウは小さかったけど、とても綺麗な色をしていた。

****

地底湖という水場を見つけて、またつりざおを持ち歩く日々が始まった。
洞窟に潜るとなるとラプラス、ギャラドスだけではきつい。かといって手持ちを一杯にすると大変だ。仕方がないので水上での釣りは諦めて、ゴローニャとカポエラーとデンリュウの三匹で、地底湖の岸に腰かけることにした。
あんなに静かな湖は珍しかったらしく、地底での釣りは想像以上に大変だった。
上からゴルバット達の襲撃を受けながら釣糸を垂らす。当然逃げられる確率も跳ね上がる。
けれどそれだけ釣り上げたときの喜びも格別で、いつのまにか戦うことの喜びよりも、釣り上げることへの喜びのほうが勝ってきていた。

そんなこんなで一ヶ月。
なんとはなしに、これはまずいと思った。

修行がてら、久々にりゅうのあなに入ることにした。もちろんフルメンバーで。
数ヶ月ぶりのりゅうのあなは、前にも増して静けさと荘厳さに磨きがかかったようだった。けど社への道を渡りながら、静けさ以外の何かに興奮しているのに気がついた。

イブキさんに相手してもらいながらも、何故か妙なところに引っ掛かりを感じていて、そのせいか二匹もやられてしまった。
たしかに強いけれど、今日は少しぬるかったわね。
そう言い残して、イブキさんはハクリューに跨がって水面を滑っていってしまった。

やっぱり腕が鈍ってしまったかなと思ったそのとき、気づいてしまった。



りゅうのあなも大きな湖だ。



一回だけと自分に言い聞かせて、鏡のような水面につりざおを振った。ポチャン、という心地いい音が洞穴に響いた。
鏡の面は揺らぐことなく、ぼくの顔を映しつづける。あまりの釣れなさに、本当はエサがついてないんじゃないかと三回もルアーを確かめた。もちろん、エサはついている。
ポチャン、ポチャンと水面にルアーを落としつづける。
見事なまでに、何も引っかからなかった。

次で最後、そう心に決めてつりざおを振った後、どうしてこんなにも釣りにはまってしまったか。それを考えた。

初めは、強いポケモンが出てきたからだった。
その次は、川のポケモンに飽きたからだった。
じゃあ、その次は?

どうして地底湖なんて、今までなら通りすぎてしまうような場所にまで、つりざおを振る理由を探したんだろう。
バトルに飽きたからだろうか。いやそれはない。だってここに来たのは――

・・・・来たのは?
そう思ったとき、浮きがボチャッと沈んだ。


来た、と急いでリールを回す。だいぶ深くまで糸が垂れたらしく、なかなか上がってこない。その割に手応えは軽く、まるでなにもひっついていないようにリールが回る。でも浮きは沈んだ。
ならば、


「えいっ」


勢いよくつりざおを後ろに振るうと、水色の影が頭上を舞った。

それは、小さな―小さな小さなミニリュウだった。

ぺちゃ、と呆気ない音を立ててミニリュウは地面に落っこちた。呆然と眺めていると、ミニリュウは頭をふるふると数回振って起き上がり、きっとぼくを睨んだ。
図鑑が未発見のポケモンとランプを点滅させる。捕まえないと。捕まえないと。

「・・・・そうこなくちゃ」

ぼくはボールを手に取る。ずっと一緒に歩いてきたモンスターボール。モンスターボールを投げると、相棒の一匹、バクフーンが飛び出した。
「ヴァクゥゥゥウウウ!!!」

それでもミニリュウは怯まない。

ぼくはまたボールを手に取る。今まであえて空っぽにしていたボール、ガンテツさんに作ってもらったルアーボール。
「バクフーン!かえんほうしゃ!」

バクフーンとミニリュウが上げる飛沫を浴びながら、ぼくは考える。


そうか、この時のためだけに、つりざおを振っていたんだ。


そしてこうも考える。

このつりざおは本当にすごいつりざおだ。



                            "Great fishing" is the end!

[後書き]

どうしてBWからつりざおは一発ですごいのがもらえるようになったんでしょうね。
リュウラセンの塔でカイリューを釣ったとき、りゅうのあなで必死にミニリューを粘ったのを思い出しました。