通りすがりの青年の前で、少年が草むらの中に入って行った。
「こら。君は、ポケモンを持っているのかい?」
「持っているよ。ほら」
少年の腕には、ミネズミが抱かれている。
「そうか。なら草むらに入っても大丈夫だな」
「うん。これからミネズミ逃がすの」
「逃がしちゃうのか。見たところ随分懐いているようだが、何か事情があるのかな?」
「うん。ポケモンは人間と暮らしちゃいけないんだって。だから逃がすの」
「ポケモンは大事な家族じゃないか。誰がそんなことを言ったんだ」
「お母さん。テレビで見たんだって。ポケモンは大事な友達だけど、やたらむやみに捕まえたらいけないって。僕の家にはもうチョロネコがいるから、どっちか逃がしなさいって言われたの」
「そうなのか。家で面倒が見られないならしょうがないな」
「うん。チョロネコもミネズミもタマゴから育ててきたけど、家で二匹もポケモンを飼えないんだって。家計が苦しいんだって」
「困ったな。お兄さんも手持ちがいっぱいなんだ。ミネズミを欲しがるトレーナーも少ないだろうし、ポケモンセンターや施設に預けても、こいつが幸せになるとは限らないからな」
「うん。お母さんも、きっと野生で立派に生きていくから大丈夫だって。きっとたくましいミルホッグになって、群れのリーダーになるって」
「そうだな。よく見ればこのミネズミは良い顔をしている。お母さんの言っていることも正しいかもね」
「うん。じゃあさよなら、ミネズミ」
少年はミネズミを地面に置いた。ミネズミは、最初はおろおろとしていたが、やがて森の中に走り去って行く。
「ミネズミー 元気でねー」
「達者に暮らせよー」
少年と青年が見守る中、ひたすらミネズミは走っていく。
そして数十メートル走り続けた頃、一匹のケンホロウが、ミネズミめがけて一直線に飛んでいく。ミネズミが危機に気づいたときにはもう遅かった。
獲物を捕らえ悠然と飛び去る鳥ポケモンを、青年と少年は何もできず、ただ呆然と見つめていた。
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一発ネタです。これ以上の意味はありませぬ。
フミん
【批評していいのよ】
【描いてもいいのよ】