キーンコーンカーンコーン。
大学の個性を表す象徴の一つである、チャイム音。
そのチャイムが鳴り始めるとともに教室に続々と学生が集まってきた。
高校生らしさが抜けていない女の子や、スキンヘッドの男性、明らかに中年のおじさんと様々だ。
チャイムが鳴り終わってから数分後、教授のオクツ先生と彼のパートナーのエーフィが入ってきた。
白髪の頭に黒縁の四角いフレームのメガネ、しわだらけの顔や手。
スーツは有名ブランドのしゃれたデザインのものらしいのだが着方が着方だからなのか堅苦しい雰囲気だ。
「クイズの時間だ」
は?えっ……えっ?
何を言ってるんですかオクツさん?
あ、みんなも同じ反応。
その僕たちの反応に特に気にする様子もなくオクツは大きい壺を出して教壇においた。
縦一メートルはゆうに超す、装飾が豪華で高そうだ。授業なんかで使っていいのかな。
あ、オクツが持ってくるわけではないのね。エーフィのサイコキネシス使うのね。
オクツはその壺に一つ一つ岩を詰め始めた。穴は大きめに作られているようでいびつな形ばかりの岩がそこに投げ込まれてゆく。
壺がいっぱいになるまで岩を詰めてオクツは僕たちにこう聞いた。
「この壺は満杯か?」
は?
本日二回目の疑問符。
誰かが「はい」と答えた。
「本当に?」そう言いながら先生は教壇の下からバケツいっぱいの砂利を取り出す。
おいおいまさかまさか……。
そして砂利を壺の中に流し込み、エーフィの力でツボを振りながら、岩と岩の間を砂利で埋めていく。そしてもう一度聞いた。
「この壺は満杯か?」
学生は答えられない。僕の前に座っている生徒が「多分違うだろう」と答えた。
オクツは「そうだ」と笑らった。
今度は教壇の陰から砂の入ったバケツを取り出した。
それを岩と砂利の隙間に流し込んだ後、三度目の質問を投げかけた。
「この壺はこれでいっぱいになったか?」
やっぱりキター!!
ほらキタよ。やっぱりキタよ。
学生は声をそろえて、「いや」と答えた。オクツは今度は水差しを取り出し、壺の縁までなみなみと注いでいく。そして学生に最後の質問を投げかける。
「僕が何を言いたいか分かるだろうか」
何を言いたいか言いたいか……。
前の方に座る一人の学生が手を挙げた。「どんなにスケジュールが厳しい時でも、最大限の努力をすれば、いつでも予定を詰め込むことは可能だということです」
「それは違う」オクツは言った。
「重要なポイントはそこにはないんだよ。この例が私たちに示してくれる真実は、大きな岩を先に入れないかぎり、それが入る余地は、その後二度とないということなんだ。
君たちの人生にとって”大きな岩”とはなんだろう。それは、仕事であったり、志であったり、愛する人であったり、ポケモンであったり家庭であったり、自分の夢であったり……。
ここでいう“大きな岩”とは、君たちにとって一番大事なものだ。
それを最初に壺の中に入れなさい。さもないと、君たちは永遠に失うことになる。
もし君たちが小さい砂利や砂や、つまり自分にとって重要度の低いものから自分の壺を満たしていけば、君たちの人生は重要ではない「何か」に満たされたものになるだろう。そして大きな岩、つまり自分にとって一番大事なものに割く時間を失い……
その結果、それ自体失うだろう。
さてと。
君たちが
これまで大事にしてきたものは何かね?
これからも大事にしてきたいものは何かね?」
オクツの目がなんだか悲しそうに見えた。
―――――――
初めまして。シオンと申します。
【どうにでもなってしまえなのよ】