※参加型のポケモン知恵袋に回答して思い立った小説
 
 とってもカラフルで、片手で収まるほどのハンドガンを、1人の少女が持つ。
 その銃口の先にいるのは、捕まえるために軽く体力を弱らせ、痺れ粉で麻痺状態にさせた、一匹のヤミカラス。
 ヤミカラスに慎重に狙いを定めて、女の子は右手人差し指に掛けていた引き金を引くと、紅白のモンスターボールが飛び出し、 それはまっすぐとヤミカラスへと飛んで行く。そして、発射されたボールが命中すると、ヤミカラスは赤い光に包まれてその中に収まり、ゆらゆらと三回ほど揺れたのち、カチリ、と音がして、無事に捕まえられたことを示してくれた。
 「やったぁ!ポケモンだぁ!!
 すごいね!この銃!!モンスターボールが飛んで行ったよ!!
 ママ見てー!!私、ポケモン捕まえられたよー!!!」
 「うん。よかった………よかったねぇ。ほら、ヤミカラスをこれで治療して来なさい。」
 「うん!お兄ちゃんありがとう!!」
 女の子は持っていたハンドガンを僕に渡すと、一気に捕まえたばかりのヤミカラスが入っているモンスターボールへと、飛ぶように走って行く。母親らしき女性は、とっても元気な女の子のその姿に、瞳いっぱいに涙を浮かべる。
 「よかった………本当によかった…………!!ミヤニシさん、本当にありがとうございます!!!」
 「いえ。………その人にあったサポートガンを作るのが、僕の仕事なので。」
 サポートガン。正式名称、携帯獣捕獲補助銃。
 空のモンスターボールを装填して、対象である野生のポケモンに向けて撃ち、捕獲するための道具だ。
 最初、ケガや病気でボールを投げられない人のために作り始めた福祉道具の1つだが、最近はボールを投げるのが苦手な人や、プロの捕獲屋さん。それからポケモンレンジャーの方からの注文が相次いでいる。
 サポートガン専門店を立ち上げてからは、直接来て頂いた方限定で、サポートガンのレンタルや、その人にあった物をハンドメイドで作るサービスも行っていて、今目の前にいる母娘も、そのサービスで来たお客様だ。
 この女の子は、利き腕である右腕を不慮の事故で失い、それからはずっと、義手での生活だったらしい。そのため腕に力がなかなか入らず、重いものを持つこともそうだが、ポケモンを捕まえる上で絶対に欠かせない動作である、投げることもできないほどだったらしい。
 それでも、自分でポケモンを捕まえたい。自分で捕まえたポケモンで旅をしたい、と、遠いのにわざわざ、シンオウ地方のコトブキシティから、このジョウト地方はアサギシティにまで来てくれたらしい。
 「よかったね。……ヤミカラス、大切にね。」 
 「うん!お兄ちゃんありがとう!!」 
 「どういたしまして。………じゃあこの銃は、君にあげる。」
 「!いいの!?」
 「うん。そのために作ったんだから。………ヤミカラスもこの銃も、大切にね?」
 「うん!!」
 捕まえたばかりのヤミカラスが入ったボールとサポートガンを持って、近くにあったベンチに座りながら、それを嬉しそうに見つめる様子を見ていると、つくづく作ってよかった、と思えてくる。この笑顔のために作ってきたのだ。この笑顔のために、5年の歳月を掛けて、自分でポケモンを捕まえたい人たちのために、頑張ってきたのだ。
 「ミヤニシさん。………娘の夢に協力してくださり、本当にありがとうございました。」
 「いえ。これしか取り柄のない人間なので。……銃の手入れはそちらでやっていただくことになりますが、もし不安があったらお電話ののち、こちらに郵送していただければ、時間は掛かってしまいますが、丁寧に手入れさせていただきます。」
 「そう、なんですか………それじゃあ、これからもよろしくお願いします。」
 「はい。……今後とも、携帯獣捕獲補助銃専門販売店『プリエール』をよろしくお願いします。」
 今日もまた、たくさんの人の笑顔のために、丹精を込めて、作らせていただきます。
【書いてもいいのよ】
【ポケモン世界の福祉道具みんなで考案してみよう。】