8月も終わりに近づき、そろそろ学生が慌て出す時期だと言うのに何だこの暑さは。午後からうちの球体どもと一緒にコンテストでも見に行こうと思っていたが、冷房が効いている、強者どもが集まるマスターランク、更に今日は現チャンピオンのミクリ氏が出場するらしい。となれば当然凄まじい混み具合になるだろう。行きたくない。
「きゅー……」
縁側で暑さに耐えながら寝っ転がっている私の上で、すぴすぴと寝ていた球体3号が目を覚ました。
「玉三郎、起きた?」
「もきゅう……」
おい、また寝ようとするな。こっちはそろそろ限界なんだ。私は玉三郎の頬っぺたに人差し指を刺した。第二間接まで埋まった。大丈夫かこいつ。
「きゅ……」
そんなうらめしそうな顔で見るな。というかこの暑さの中で寝たら死ぬんじゃないのかお前。
「もきゅきゅきゅー!」
「きゅーうー!」
玉三郎のもふもふから指を抜いた私に、球体1号と球体2号がなにやらわめきながら畳を転がってきて引っ付いた。恐らく暑いとか何とか言っているのだろうが、私に言うんじゃない。
「あーもー分かった。涼しくしてやるからどけ」
冷房が壊れてなきゃ無駄な苦労をしなくても良いのだが……はあ。
十数分後。庭に出した子供用ビニールプールに球体どもを放り込むと、きゅっきゅと愛らしく涼み始めた。庭の水道からはぬるま湯が出たので、冷蔵庫の氷を全部使った。こいつらに凍える風でも指示すれば良かったのだろうが、バテている愛らしいもふもふのタマザラシたんにそんなことをさせるやつはホエルオーに潰されてしまえ。
「もきゅきゅきゅ!」
「きゅーうー!」
「もきゅ……」
玉一郎と玉二郎がころころじゃれあっている中、玉三郎はぷかぷか浮いて恍惚の表情を浮かべていた。
さて、もうそろそろ妹が夏期講習から帰ってくる頃だな。おやつにかき氷でも作ってやるか。
数分後、氷が無いことに気付いた私は大慌てで買い物に行くのだった。