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  [No.3060] 恋文 投稿者:きとら   投稿日:2013/09/09(Mon) 19:53:22   103clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 私の旦那は長男で、義父母は自営業をしている。世間一般の姑像と違い、なんというか義母は「確かに息子もかわいいけど、私の恋人は旦那だし」と言い放つ。年の割りに恋人感覚が抜けないのか、嫁の立場からみてもラブラブ過ぎて驚く。ついでに私の旦那もそれが当たり前みたいで、すごい優しい。結婚に恵まれたと思ってる。
 そんなラブラブな義父母だけど、義父が病で倒れ、そのまま帰らぬ人になった。義母は亡くなった日は泣き通し、それからあんなに元気でしっかりしていたのに、家事もしなくなった。その頃には定年してたので、自営は私の旦那がやっているけど、たまに旦那な義父母に助言を求めていたりした。けど義母がそんな感じではなくなった。
 遺骨を抱いて仏壇の前でぼーっとしてたらしい。あれじゃいかんと義妹から連絡が入り、義母宅を交代で訪れることにした。義妹には小さな子供がいたので、うちが多めに行くことに。旦那は仕事に専念してもらった。
 その日は珍しく休みだった旦那とうちの当番の日に行った。義母が玄関まで迎えにきてた。元気になったのかといえば旦那の顔見るなり、満面の笑みで「ダイゴさん!」と上機嫌。旦那は義父にそっくり。けどいくらなんでもと思ったら、「……ごめんね」と謝ってきた。旦那はそれをみていくらなんでも息子と旦那間違えないだろとへこんでいた。
 それから私一人で行くことがあると、部屋で「ダイゴさんがいない。ダイゴさんがどっか行っちゃった」「ダイゴさんどこ?」と泣いてる。ちなみにダイゴさんとは義父のこと。義父も義母もずっと名前で呼び合ってた。
 しかもよくよく旦那に聞けば、なんと義母の猛アタックの末、当時ものすごくイケメンだった義父を手に入れたとのこと。さすがにやばいと思ったので、旦那に相談すると「じゃあ僕が行ってみる」と休みをとって家にいく。
 旦那が義母の名前を呼ぶとすごい速さで、しかも目を輝かせてこっち向いた。「ダイゴさん!」って喜んでたけど、旦那が近づくと「似てるけどダイゴさんじゃなかった」「ダイゴさんの匂いしない」とさらに元気なくなる。ガーディか!と言いたくなった。
 さらにショック受けてたのは旦那。一応、息子の顔は覚えてるみたいだけど、ダイゴさんがいないとしか言わない。
 私が「ダイゴさんってどういう人?」と何と無く聞いたら義母が嬉しそうに「ないしょ!」とか「かっこよくてね、チャンピオンでね、それですっごく優しい人!」って、恋する乙女を見てるようだった。最後には「でもお姉さん綺麗だから」と( ´・ω・`)みたいな顔をする。取られると思ったらしい。だから「じゃあ告白しないと!好きだって伝えなきゃ好きなのかわからないよ」とアドバイスした。そしたら「えっ、でも恥ずかしいし、ダイゴさんはかっこいいから私が言っても( ´・ω・`)」と言ってた。「じゃあダイゴさんにお手紙かいてみたら?」といったところ、どこから持ってきたのか綺麗な便箋で書く書く。私だって旦那にそんな書くことないと思うくらい書く。ある程度のところで繰り返してるものの、便箋の終わり頃に「ずっと好きです」とかいてあって、義母の旧姓で差出人がかいてあった。
 手紙かいてる間は楽しそうだったし、こうやって義父にアタックかけたのかと思った。
 なので、「私は占い師です。貴方の未来を占います……貴方は将来好きな人と結婚して子供もたくさん恵まれます」と言ったら全身が喜んでたよ、義母。なんだか初恋に浮かれてる子供見てるみたいな感覚だった。
 次の日、旦那と一緒に行ったら義母が手紙持って死んでいた。私が夜遅く帰るまで「また来てね」と子供みたいにしてたのに、今朝来たら死んでた。昨日かいた手紙を持ってたよ。
 葬儀の日、海外にいる義弟も来て、三人で「二人の愛の結晶というより愛の副産物だったね」とぼやいてた。
 私は義母の棺桶に「貴方の名前はツワブキハルカになります。私は貴方の息子の嫁です」と手紙入れておいた。義母のかいた手紙もいれておいたから、あの世でもう一回告白してるんじゃないかな。