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  [No.3084] ほしのねがいごと 投稿者:きとら   投稿日:2013/10/26(Sat) 21:41:33   111clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:ジラーチ】 【ジラーチ♂】 【擬人化

 それは空が凍る月夜でした。
 流れ星にのってジラーチがやってきました。ジラーチは願い事を叶えてくれるポケモンです。今日はどんなことがあるのか解りませんが、ジラーチは人間の住む街に降りていきました。ぽつぽつと明かりが窓から漏れています。雪が積もっていたので、月明かりも眩しく感じました。窓からこっそり人間の家を覗くと、暖かそうな暖炉のまわりに人間が集まっていました。ジラーチには気付かなそうだったので、他の家にも行きましたが同じでした。誰にも気付かれないなあとジラーチは明かりのついていない家を見てみました。
 覗けば明かりはついているのですがヒトモシの炎より弱いロウソクが2本ついているだけでした。その中で男の人と女の人がお酒を飲んでいるようです。暖炉に火はありませんが、二人は幸せそうでした。でも心からの幸せというより、酔いがまわっての幸せ、つまり一時的なものにジラーチには見えたのです。
 どさっとジラーチの頭に雪が落ちてきました。屋根につもった雪のようです。屋根の上には誰もいませんでした。けれど小さな窓を見つけました。屋根裏のようで真っ暗ですが覗き込んでみました。
「だれ?」
 中からは見えたのでしょう、ジラーチは話しかけられたことに気付きました。が、中は全く見えません。開けて、と窓を叩くと小さな手が窓を開けてくれました。女の子でした。ただかなり細く、一階の窓から見えた消えそうなロウソクを思い浮かべます。あまり裕福な家庭ではなさそうです。それに、月明かりに見えた女の子の手には青い斑点がありました。強くぶつけた時にできるあざでした。
「ジラーチだよ。願い事をかなえにきたの。君の願い事はなに?」
 簡単に自己紹介したつもりでしたが、女の子はジラーチを見つめたまま動きません。聞こえなかったのかな、言葉が通じなかったのかなとジラーチは少し待ってみましたが、女の子はじっと見たままです。
「ジラーチっていうの。願い事をかなえにきたよ」
 黙って女の子はジラーチの頭についている青いものを引っ張りました。子供の力だったのでジラーチはびくともしませんでした。むしろその手の冷たさにジラーチは驚いてしまいました。
「さむいの」
「どうしてそんなに寒いところにいるの?」
「パパとママがここにいなさいっていう」
「あったかいものがほしい?」
 ジラーチは聞いてみました。女の子は首を横に振りました。
「あたしは、優しいパパとママがほしい」
「パパとママは優しくないの?」
「いらない子だから明日お金持ちのお家にいくの」
「わかった。きみに優しいパパとママをあげる。待っててね」
 女の子の願いを聞いたジラーチは空へ舞い上がりました。優しいパパとママに適した人間を見つけなければいけません。もしいなかったら星の力をかりてかなえてあげようと思いました。本来ならそれが一番早いのですが、人間の子供を適切に育てられるのは人間だと思ったのです。
 
 翌日、ジラーチが見つけた優しいパパとママになりそうな夫婦のところに女の子を連れていってあげようと家にいきました。家からは特徴のある模様を掲げた神官と、怒鳴りつけている男と女が出てきました。たくさんの男たちが大きな箱を家から運び出そうとしています。まさか、とジラーチは近づきました。
「金にもならない」
「せっかく買ってもらえる金持ちを見つけたのに」
 狂ったように叫び続ける男と女に、神官が静かに言いました。
「お金になるくらいなら、自ら神の元へと旅立ったのでしょう」
 神の元へ旅立ったのでしょう。
 神の元へ。
 星の力でもたどり着けない神様の世界に。
 ジラーチでも行けないところに。
 あんなに冷えた夜に、暖かみもないところにいたのです。それにジラーチが腕まで見たということはその子が着ていた服は銀世界に相応しくない季節のもの。どうしてそんなところに気付かなかったのでしょう。寒さに震えていたのに、それより両親の暖かい心をひたすら渇望していたのです。
 雪がつもった道は大勢の足跡が残されているだけでした。

 ねえ、どうして気付いて上げられなかったんだろう。ぼくは何も出来なかった。
 君に何も出来なかった。
 ごめんね、ごめんね……
 
 君が生まれ変わる時、君のお父さんになって、優しいパパになって、君の願いをなんでもかなえてあげる。
 そして今度こそ、優しいパパとママに会えるように……


 君に会う時のために、私が使える力をたくさん蓄えておこう。人間には仕事が必要だから、たくさん仕事をしよう。
 凄く優しい人に会った。君の母親になる人は、星空を見るのが好きのようだ。特に君が願ったような冬の寒い日の星空が好きだと言っていた。
 そして生まれてきた君は、男の子になって生まれて来た。でもすぐに君だって解った。久しぶり、君。そして初めまして、私の息子。
 息子は何も覚えてないけれど、それでいいと思った。もうあの時の辛い寒さや両親の冷たさを覚えている必要なんてない。
 彼は成長してポケモントレーナーになりたいと言った。私は言ってこいと言った。何でもかなえてやろう。その世界でトップに上り詰めることだってなんだって。


「よく思いつくねえ」
 ダイゴが紅茶を飲みながら笑っている。子供の発想があまりにも突飛すぎて何をどう感想を言っていいか解らない。
「だってダイゴさんのお父さんはジラーチ♂みたいだし」
 と、ジラーチの写真とデボンの会社案内に載っている社長の写真を並べる。髪型が「ほしたべよ」の形をしているし、確かにジラーチの頭の形に凄く似ている。しかしジラーチのかわいさと中年男性の父親の見た目に、何の共通点もなくてジラーチに申し訳なくなってきた。
「オヤジの髪型が変なのは昔からだよ。ジラーチ本人だったら僕はもっと楽にチャンピオンになってると思うけどな」
 納得いかない顔をしている。子供は何を考えているか解らないから面白い。
 やはり子供はこうでなくては。大人にはよく解らない発想でも、それがいつか正解になったりかなったり。そんな時間は子供の時だけしかない。

 少なくとも昔のような、空腹よりも寒さよりも、酒代欲しさのために売られるようなそんなことは誰の身にも起きて欲しくない。

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ジラーチ♂の擬人化小説かきました!
と思わせてやはり。


ツワブキ社長の髪型がほしたべよに見えるとか、ジラーチ♂の擬人化はツワブキ社長だとか聞かされたので文章にしてみました。