とあるポケモンが虐められている。
集団の中に混じる異質を除け者にする行為は、生物の中では決して珍しくはない。例えば、弱い雄は強い雄に子孫を残すという役割を奪われ、雌からも必要とされない。理性のある生き物の場合、お金を沢山所持していたり容姿が特別良かったりすれば優位に立てることもある。優劣がつく理由は、生物によって様々である。
「やーい気持ち悪い色ー」
「変なのー」
ここで除け者にされているポケモンは、特別弱い訳ではない。格闘タイプとしては優秀な方であった。もちろん顔も悪くないし性格も温厚で思いやりもある。少々気が弱いところもあるが、それは彼の優しさから来るものであって対した短所ではない。
彼はリオル。はもんポケモン。
リオルが集団で済む森で、このリオルだけは浮いていた。
「どうしてお前はそんなに気持ちが悪いんだよー?」
「可哀想ー」
除け者リオルは五体満足である。健康的で、身長と体重は平均より上だが誤差範囲内である。精神障害を患っている訳でもない。寧ろ、他の個体よりも優れている面は多い。それでも彼は差別される。邪魔者と罵られる。要らないと言われる。
彼の両親もまた、どこにでもいるようなルカリオの夫婦であり、周囲の仲間からは非常に慕われている。もちろん仲間からの信頼も強い。
それでも彼らの息子は、今日もこうして、数人の仲間達に囲まれ酷い扱いを受ける。
彼を虐めるリオル達に当然罪の意識はない。ただ、生活の場に紛れる異端児を、弄りたいだけなのである。中には本当に彼のことを忌み嫌う者もいたが、大抵は同調しているだけであって本心ではない。子どもは、無邪気故に恐ろしい事をするものである。
そのリオルは、この日も、精一杯抵抗をする。
「別に良いじゃないか! 僕が“青色のリオル”でも!」
青色のリオルは、今日も胸を張り宣言する。両親は自分の色を好きだと言ってくれた。自分を愛してくれると言ってくれた。その支えを胸に、堂々と立ち向かう。
その地域に生息するリオルが黄色であることが当たり前であり、青色のリオルが奇体として扱われている時の出来事である。
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風呂の順番待ちしている時に書いた。
コミケ受かってます。2日目 東C-17aです。今回はポケモンスペースではありませんが、よろしければおこし下さい。ポケモン本の新刊も出すかもです。