休日。家事を全て終わらせ、部屋で仕事の書類を片付けながら微睡んでいると、なにやらぶつぶつと声が聞こえてきた。
「うーん、ちょっとキツイか? こいつを倒さないとアイツ出れねーし……お、急所きた! よしよし、さあ行け。日照り後何ターンだ……まあいいや、積んで、メロメロと。よしよしよし。さあ行け……おっし!」
またか。すっかり目が覚めた俺はあくびをしながらリビングへと向かう。そこでは俺の同居人がソファーに座ってゲームをしていた。後ろから覆い被さって、耳元で囁く。
「オイ」
「わっ……なんだ、お前か」
同居人はびくりと肩を跳ねさせ、振り替える。
「どうしたんだよ」
「どうしたじゃねえよ……うるさいんだっての。またそれか」
「あ……悪い、口に出してたか」
「……はあ」
俺は頭が痛くなった。
こいつと暮らし始めてから、今まで気付かなかった欠点が浮き彫りになっている。
まず、寝起きが悪い癖にどこでも寝る。酷い時は朝飯を食べ終わった直後に食卓に突っ伏して寝ていた。
それから、結構なゲーム好きであること。これは別に欠点でも無いが、たまにやり過ぎて頭痛になっているのを見ると学習しろと思う。
そして、ゲームをやっている時は基本的にうるさいこと。本人は無意識らしいが考えを口に出していて、たまに休日の朝早くに起きてやっている時に叫んだりして迷惑極まりない。
「んー……こう、か?」
「だから喋んなって……」
「ああもう、ちょっと静かにしてくれ」
それはこっちのセリフだ。
今同居人がやっているのは、国民的なあのゲーム。画面は戦闘前の選出画面のようだ。
俺はふと気になって、相手のチームと同居人のチームを見比べる。相手のチームには剣と盾が一緒になったようなモンスターや、いかにも強そうな翼の生えた赤いトカゲがいる。一方同居人のチームは、尻尾が多い黄色い狐や、わたあめにしか見えないピンクの物体など、可愛いモンスターばかりがそろっていた。
「……お前、それで勝てるのか?」
「甘く見てると痛い目にあうぜー」
同居人はどこかウキウキとした表情で恐ろしいセリフを言い放った。
そして戦闘が始まる。相手はさっきの剣盾一体モンスターと、大きな赤い蛾のようなモンスターを出した。同居人は黄色い狐と、首にスカーフを巻いたような可愛らしいモンスターを選んだようだ。可愛らしいことは可愛らしいが、こいつは画面によると♂らしい。いいのかそれで。
同居人はもう手を決めているらしく、素早く行動を決めた。相手を待っている間に、スカーフの奴のどアップが映し出された。とても♂には見えない。
そして戦闘が動き出した。まず、スカーフが先に動き、岩を連射して赤い蛾を瞬く間に地に伏せた。こいつ、なかなかやるな。
それから次に動いたのは黄色い狐で、熱風を打ち出して剣盾野郎に大ダメージを与えていた。倒しきれなかったものの、火傷させたらしい。その次の攻撃を、効果抜群だったもののスカーフは耐えきっていた。
「どうだ、すごいだろ!」
同居人は振り返り、俺にキラキラとした瞳を見せてきた。
「お、おお。凄いな」
普段滅多に見られない満面の笑みを眩しく思いつつ、頭を撫でてやる。
「可愛くて強いって最高だと思わね!?」
同居人は更に俺に詰め寄ってきた。ちょ、まて、これ以上は、おいコラ。
「お、俺は、お前の方が可愛いと思うぜ」
あ、しまった。つい本音が。
「な……な、何言ってんだアホ!」
同居人は真っ赤な顔を背け、ゲーム画面に集中しようと本体を顔に近付けていた。
……まあ、こんなやり取りが出来るのなら、うるさいのもいいかもしれない。たまになら、だけどな。あと画面近い。視力落ちるぞ。
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ポケムーバーが解禁早々配信停止になり、てんやわんやな毎日ですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
私は奇跡的にDL、過去からの輸送を行えたため、一気に増えた対戦用ポケモンで色んなパーティーを組み、ランダムマッチを楽しんでいます。
そんな私ですが、ポケモンに限らずゲーム中は基本うるさいです。一人でぶつぶつ喋っている様子は一周まわって面白いのではないかと思い、文章にしてみました。同居人の手持ちは私の対戦用ポケモンです。ダメージ計算も行い、なるべくゲームに忠実に仕上げました。
もうすぐ2014年ですね。