歩けど歩けど山は続く。
ガイドのシェイミはとても明るくて山の植物の解説をしたりしてるけど、ひのめは聞いてるのやら。
後ろを振り返ればひのめの六つのしっぽは全部垂れ下がっていて、これは元気ないなと思った。けど私も人の事をいってられないくらい疲れてる。
ニューラが保護されたくらいなんだから、この山は相当険しい。で、なんで登ってるんだろうって思う。いっそこの耳が翼みたいにふわーってならないかしら。私が知ってるかぎりそんな進化はしてくれないけど。せめてしっぽが軽くなってくれないかな。普段は気にならないのに、今はタイヤを引きずってるみたい。
そんなに元から山登りが好きな方じゃないのに、わざわざなんで山に来て息きらせてまで来てるんだろう。あー、別に登らなくていいよね。重力って本当重たい。
急な勾配を勢いつけて飛び登った。そこには山がなかった。
見えるのは空の青。青、そしてグラデーションの緑。足元の白。高山植物が色とりどりの花を咲かせている光景。
ひのめはそこに仰向けに転がって頂上だーって喜んでる。私は足場がある限りまで行った。
いきなり来てしまった世界は息を呑むほど美しかった。いつもいるトレジャータウンが小さかった。ギルドなんて見えない。
ああそうだ、ここはこんなに美しくてだからこそ……
「あの店、通信ケーブルと進化の石が置いてあるどうぞ」
「了解、ひきよせだまを使うので階段の近くに集合すべしどうぞ」
「了解、念のため通過スカーフ装備確認どうぞ」
ダンジョンに響くカクレオンのドロボウコールを毎回すり抜ける探検隊。7テール(セブンテール)という探検隊はたくさんの経験と豊富な戦闘回数により、誰もが手に負えない探検隊へと成長していた。
「了解。7テール、出動!」
ひのめのしっぽと私のしっぽ。
あわせて7本のしっぽは探検隊。ディアルガと戦った唯一の探検隊。
あの日みたこの世界の全てを探検しきれるとは思っていない。けれどあの日みたこの世界は全て美しい。