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  [No.3368] 【9/17,9/29追記】一粒万倍日企画(書き出しだけでも投稿しちゃおうぜ企画) 投稿者:砂糖水@一粒万倍   《URL》   投稿日:2014/09/10(Wed) 22:08:41   185clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

皆様こんばんは!
突然ですが、今日は一粒万倍日という日だそうです。
一粒万倍日とは物事を始めるのによい日らしいです。
――
一粒万倍日(いちりゅうまんばいび、いちりゅうまんばいにち)は、選日の1つである。単に万倍とも言う。
「一粒万倍」とは、一粒の籾(もみ)が万倍にも実る稲穂になるという意味である。一粒万倍日は何事を始めるにも良い日とされ、特に仕事始め、開店、種まき、お金を出すことに吉であるとされる。
但し、借金をしたり人から物を借りたりすることは苦労の種が万倍になるので凶とされる。
ウィキペディア:一粒万倍日
――
と、いうことで、一粒万倍日にお話を書き始めたらいいんじゃね?な企画。

完成させなくていいのよ。書き出しだけ投稿しちゃおうぜ!
鳩さんも長編は完結しないのが普通って言ってたじゃない!

短編の書き出しでも、長編の書き出しでも、長編の一話だけでも。
タイトルやキャラの名前が決まってない? 問題ナッシング!
さあ、あなたのお話の書き出しを晒しチャイナYO!

目指せ完結、まずはその一歩から。

気になった作品には感想をつけちゃおう!
作者がやる気になってくれるかもしれないぞ!

あっ、書くのは今日じゃなくても大丈夫です!
以下、今年の一粒万倍日。いっぱいあるよ!やったね!

9月
2(火)10(水)17(水)
22(月)29(月)

10月
4(土)※14(火)※17(金)
26(日)※29(水)

11月
10(月)11(火)22(土)
23(日)※

12月
4(木)5(金)※7(日)
18(木)19(金)※30(火)
31(水)

(※)一粒万倍日 + その他の吉日
くわしくはこちらをどうぞ
http://www.xn--4gqo86mdy5bh3z.net/

れっつしっぴつ!


【9/12追記】
書き出しとはいえいきなり書けない…そんなそこのあなた!
当日に書いたものじゃなくても、いいのよ?
もちろん、一粒万倍日の定義?としては、その日に書き始めるのが一番いいとは思いますが、そんな固くならなくってもいいじゃない!
なので、前々からずっと書いていた話を晒しちゃうぜ!
→OK!

難しいことはいいじゃない、所詮は験担ぎですのよ。
そんなに気になるなら、当日にちょっとでいいから書き足しましょう!
それでいいのだ(`・ω・´)

この企画の趣旨は、一粒万倍日にかこつけて書き出しを晒して完成への勢いをつけちゃおう、あわよくば拍手とか感想もらってうっはうは、なので無問題!

ちなみに発起人は一番雑な文章かつ、当日書き始めたやつが短すぎたので、数日前に書き始めたやつだったりするので(げふんげふん
だから細かいことは気にしちゃらめぇぇぇぇ…!
※みんな気軽に参加してね!

それでは楽しいしっぴつライフを!


【9/17追記】
追記の嵐でごめんなさい!
完成品の投稿についてです。

個人的に完成品は新規投稿をオススメします。
このスレに投稿した記事を編集でもいいのですが、そうすると新着に上がらないんですよね!
せっかく書いたのに目立たないだなんてもったいない!!!
是非是非、新規で投稿してください。
どのみちここには書き出ししか出してないんだもの…。

すでにイサリさん(http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=3372&reno= ..... de=msgview)が編集という形で完成品投稿されてるので若干の手遅れ感…!

まあ、新着に上げたくないの私、って方はもちろん編集でもOKです。
あなたのお好みでどうぞ。

ではでは。
しっぴつしっぴつぅ!


【9/29追記】
バタバタしてうっかり忘れてました。すみません。

追記事項そのいち
前回分追記のさらに追記なんですが、こっそり編集で完成品投稿するとき、タイトルにその旨追記するとか、せめて発起人にこそっとお知らせしてもらえると涙ちょちょぎれるほど嬉しいです。
もちろん、ご自身のTwitterかなんかで宣伝してくれてもいいのよ!
一応、発起人の連絡先書いておきますね。
Twitter
本垢:sucrose_syrup
※現在諸事情により非公開設定
サブ垢(企画・感想用):drysugardry
pixiv
http://www.pixiv.net/member.php?id=340318
まあ、普通に皆さんはタイトルにその旨書いてくださるか新規投稿すると思いますけど!

追記事項そのに
長編の第○話の書き出しでもOKです!
というかもうすでに投稿されてますけど!
対応遅くてすみません。
最初の話じゃなきゃダメ、なんてことはないです。
長編は一話一話書くの大変ですよね、その書き出しだけでもいいのよ!
щ(゜д゜щ)カモーン
あなたの執筆のお手伝いをしたいのです。
どうぞお気軽にご利用ください。
拙い感想ですけど、書きますから!


しっぴつは三歩進んで二歩下がる。
気長に行きましょ。


  [No.3369] ×沼と大山椒魚(仮) 投稿者:砂糖水   投稿日:2014/09/10(Wed) 22:22:19   129clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:】 【ヌオー】 【一粒万倍日企画

 それは昔。人々がポケモンたちへの畏敬と思いやりを忘れてしまい、二柱の神が都から去ってしまった頃。
 かつて×沼と呼ばれたそこには大小様々な獣が住んでおりました。山椒魚や鯰、他にもたくさん。その中でもひときわ大きな体を持つ大山椒魚(ヌオー)は沼の主と呼ばれていたのでございます。
 ところがある日のこと。土地を広げたいと思った人間が、沼を埋め立てようとやってきました。主を含む沼の生き物たちは必死に抵抗しましたが、人間たちの連れてきた草の獣たちには太刀打ちできず、みんな殺されてしまいました。


――
そんなわけで投稿してみました。
思いきり途中だけど、それでいいじゃない。
書き直し予定がある?いいじゃない!

ダメなら教えてください。


  [No.3380] Re: ×沼と大山椒魚(仮) 投稿者:逆行   投稿日:2014/09/13(Sat) 22:47:47   66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

企画運営&投稿乙でございます。

敵草タイプか……ダメージ四倍は、いくら主でもさすがに勝つのがむずい……。

人間たち主対策ちゃんとしてくるというね。

ポケモンみんな殺すとかひどす。

人間は残酷ですね。


  [No.3382] Re: ×沼と大山椒魚(仮) 投稿者:砂糖水   投稿日:2014/09/14(Sun) 00:08:20   64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

わー、わー、ありがとうございます!
じぇのさーいど、殺る気満々です((
(全部ぬっ頃して土地はいただくぜヒャッハー!
> 敵草タイプ
多分痛い目に何度か遭っているのではないでしょうか、知りませんが((
(これから考えます!


  [No.3370] Saiko's storY(かきだし) 投稿者:   《URL》   投稿日:2014/09/10(Wed) 22:33:52   112clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


 <過去・1>

 一メートルぽっちの体高のポケモンが、五十メートルはある灰色の壁に見えた。
 一瞬は飴細工のようにぐにょんと伸びて、けれど求める形に縮まないような、そんな予感が延々としていた。
 自分を包んだ腕は、母のものだった。
 伸び切った一瞬が、プツンと切れて。
 そして、腕の中のヤヤコマが、飛び立った。


 <ミアレシティ、カフェ・ソレイユにて>

 暗緑色のタブレットの大きな盤面に、ボタリ、ボタリと滴が落ちた。
 細い足の白いテーブルの端っこに、コーヒーがそっと入り込んだ。
 ミアレっこの足音は、近づいては遠ざかる。
 サイコは――この前アサメタウンを旅立って、今はミアレシティのカフェ・ソレイユのテラス席に座っているこの少女は、レポートを目の前にして、そのレポートに文字は一つも書かれないまま、泣いていた。パートナーのフォッコが不安げに彼女を見上げる。それにも構わずに。
 白いテーブルの端っこに、二杯目のコーヒーが入り込んだ。
「相席、よろしいかしら?」
 その声に、やっとサイコは顔を上げる。そこにいたのは、今さっき別れたばかりの、カルネその人であった。カロス地方で知らない者はいない大女優を目の前に、その人に二度も話しかけられた奇跡に、……サイコは自分の顔がぐしゃぐしゃであることに気づいて、伏せてしまった。
「無理に顔を上げなくていいわよ」
 びくついたサイコの肩にかけられる言葉は、まさしくサイコの心象を見透かしたもの。そんな見透かせる程度の心根が卑しくて、またその程度の心根で、カロス地方の誇る大女優に気を遣わせてしまったことが情けなくて、サイコはまた泣きそうになった。ただ堪えたのだ。泣くのもみっともなかったから。
 カルネの大きな目が、強い力でもってサイコを見ていた。それは顔を上げなくとも、何故か分かった。広い帽子の鍔に半ば目隠しされているのに。人の目の持つ力は、フィジカルに規定される五感を時折飛び越える。そしてサイコの目にそんな力はなかった。そのことは、サイコ自身でよく分かっていた。
「あなたのことが、気になっちゃって」
 カルネは視線をサイコに注いでいた。それはサイコの心胆を暴いてやろうとかそういうものでなく、カルネがサイコのことに注意を払っているというそれ以上の意味がなくて、なんで人にこんな感覚を味あわせるんだろうこの人は、とサイコは羨望をもってその視線を浴びていた。
 二つのコーヒーカップの内の片方が、中身にさざ波を立てる。真っ白の角砂糖は黒いコーヒーの中に消えた。
「さっき、カルムくんに追い越されてね。彼、機嫌が悪いみたいだったから、何かあったのかと思って」
 カルネの視線は変わらずサイコに注がれていた。目の力が、サイコの心をつつき回した。これにはサイコも、自分の固く閉じた心の殻が緩むのを感じて、くすぐったくなった。それでも数年がかりで“殻にこもる”を積み上げてきた防御は、簡単に陥落しない。でも、だ。サイコの意志に反して、それとも意思に従って、サイコの幼い唇は、緩んだ殻の隙間から、ポツリポツリと言葉を零し始めたのだ。
「カルムくんと、喧嘩、したんです。喧嘩っていうか、わたしが、悪くて。
 あの後、カルムくんと、このカフェで、ちょっと喋ったんです。その、大体、主に、カルムくんが。その、……研究所で、わたしのバトルを見て、……だから、その。カルムくんが、わたしのバトルを見て、それでわたしが強そうだから、競争しようって。どっちが強くなるの早いか、競争しようって言ったんです。でもわたし全然強くなくて。だから、その、競争も苦手だし、やめとくってわたし言ったんです。それで、カルムくん、怒っちゃって」
 降り始めには弱くとも、数滴の後に強まる夕立のように、サイコの言葉はだんだん流暢に、話すにつれてつっかえもなくなっていった。それから堰もなくなった感じで、サイコは立て続けに話した。
「レポートを書きなさいって言われて。あ、プラターヌ博士の研究所で、わたし、プラターヌ博士からポケモンを貰ったから、だから、プラターヌ博士に旅の経過が分かるように、レポートを書きなさいって言われたんです。でも、さっきのことも書かなくちゃいけないって思ったら」
 そこで言葉は消えた。サイコはきょとんとした。逆さまにしたコップから水が落ちてなくなるように、言葉は出てこなくなった。サイコは空っぽになったコップを確かめるように、白いテーブルの上を、二度、三度見た。空になっていたのはカルネのコーヒーカップだけだった。
「そう」
 とカルネは微笑んでから、ちょっと見せて、と言ってサイコの前の暗緑色のタブレットに手を伸ばした。へえ、これがレポートになるんだ、と驚いてから、私の頃は手書きだったのよとおどけてみせて、裏表のないその語りに、サイコはどうしてこの人はこんな気持ちに人をさせるんだろうと、そんなことを主に考えていた。
「はい」
 暗緑色のタブレットをサイコに返してから、カルネは言った。
「レポートって、気負わなくていいのよ。自分の好きなこと、書きたいことから書き進めれば。
 今は思い出したくないこと、嫌なことでも、後から、『意味があったな』って思って、書き加える時が来るかもしれない。それでいいのよ。台本だって、時系列のばかりじゃないんだから」
 最後のは、自分の為に付け足してくれた言葉だと、サイコは察した。カルネの言葉だけではあやふやに感じていたサイコに、カルネは自分の職業と紐付けて、納得できるだけの言葉にしてくれたのだ。その厚意を手落としたくなくて、サイコは「ありがとう」と呟く。
 本当は、「ありがとうございます」って、丁寧に言いたかったのだ。でも、サイコの口から出てきたのは、かすれかすれの「ありがとう」たったそれだけで、でもカルネは分かってくれるだろうという甘えがあった。
「いいのよ。こちらこそ、素敵な時間をありがとう」
 その言葉に耳を疑ってサイコが顔を上げた時には、もうその人はいなくなっていて。チェックと一緒に伏せて置かれたコーヒー代と、千円のチップが、もう夕暮れ時のミアレシティの風に揺れていた。
 サイコの頭の中で天秤が、さっきのは夢……現実……夢……というように手を振り振り落ち着かない様子をしていたけれど、やがてその秤は現実の方に傾いて、サイコははっとしてレポート用紙代わりのタブレットを見た。そして足元のフォッコを見て。
「書きたい時なら、君と会えた時だよねえ」
 のんびりした口調でそう言って、付属のチョークに似たペンをタブレットの上に走らせ始めた。
 サイコが無意識に落としたコーヒー受けを、フォッコががりがりと齧っている。
『わたしがフォッコと出会った時の話を書きます。
 わたしはフォッコと出会う前に、サナちゃんと、ティエルノくんと、トロバくんと、それからカルムくんに出会いました。
 カントー地方から引っ越してきて急だな、と思ったけれど、でも、となり町のメイスイタウンに行って、そこで、ポケモンを貰いました。服は、お母さんが選んだ、黒と赤のワンピースを着ていきました。あまり似合わないなと思いましたけれども、自分で選ぶのもセンスがないので。
 その時、ティエルノくんとトロバくんはもうポケモンを貰っていたので、わたしと、サナちゃんと、カルムくんの三人が、三匹のポケモンを貰うことになったのですが、その時に、ちょっと困ったことがありました。サナちゃんとカルムくんとわたしで、ポケモンを選ぶ順番のことだったのですが、サナちゃんとカルムくんは、わたしはカロス地方に来たばっかりなので、わたしが一番にポケモンを選ぶといい、と言って順番を譲ってくれました。でもわたしは、この地方に来たばっかりで、思い入れのあるポケモンとかもいないし、だから後でいいよ、と言ったのです。それでしばらく、誰が最初にポケモンを選ぶか、譲り合い? みたいになったのですが、結局わたしが選ばないので、カルムくんがハリマロンを選んで、サナちゃんがケロマツを選んで、わたしはフォッコを選びました。
 だから、自分で選んだわけではないのですが、でも、わたしはフォッコでよかった、と思っています。
 フォッコのボールを受け取って、カルムくんはすぐ、バトルしよう、と言いました。わたしはそれを断って、みんなから離れて、フォッコをボールから出しました。さっき、ポケモンを受け取った場所の近くでは、カルムくんのハリマロンと、サナちゃんのケロマツが、バトルをしているようでした。
 わたしはフォッコに、「ちょっと動かないでね」と頼みました。フォッコはわたしの言うことを聞いてくれて、石畳の上で、ぴったりと伏せました。わたしはしゃがんで、しゃがみ歩きでフォッコに一歩近づき、息を吸い込んで、それからまたしゃがみ歩きで一歩近づきました。フォッコに近づくと、温度が上がったような気がしました。フォッコは不思議そうな顔をしていたみたいでしたが、わたしが動かないでねと言ったのをよく聞いてくれて、石像みたいに動かないでいました。そうやって十分に近づいた後、フォッコはじっと動かず待ってくれていまして、わたしはフォッコの耳の後ろを、嫌がらなさそうなところだと判断して、触りました。それで、自分の金縛りが解けたみたいに、気が軽くなりました。
「よろしくね、フォッコ」そう言って、フォッコを抱き上げました。
 いつの間にかトロバくんが隣にいました。「フォッコと仲良くなれたんですね」とトロバくんが言いました。わたしは、みんなから離れていたのに、それでもトロバくんが話しかけてくれて、嬉しくなりました。トロバくんはフォッコは炎タイプだとか、小枝が好きでおやつにするといいとか、色々教えてくれました。それから、そういうことはポケモン図鑑で調べてみるといい、ということも教えてくれました。それから、フォッコに名前はつけないんですか? と聞かれました。ポケモンの名前のことまでは考えてなかったし、急に言われてもいい名前が思いつかないし、それでわたしが困った顔をしたのだと思います。トロバくんと、それからティエルノくんと、バトルを終えたサナちゃんもやってきて、みんなでフォッコの名前を考えてくれました。それで、太陽みたい、という意味の、サニーになりました。
 それから、サナちゃんが、わたしの呼び名を決めよう、と言いました。サナちゃんは、サイぴょんなんてどうかな、と提案しましたが、わたしがさっちゃんがいい、と言ったので、さっちゃんになりました。今レポートを書いていて思ったのですが、さっちゃんという呼び名は、サナちゃんと似て聞こえるのではないでしょうか。それでも、さっちゃんで決定、と言ってくれたみんなには、感謝の気持ちでいっぱいです。』
 サイコのペンは動き続ける。ハクダンの森を越え、一番目のジムで勝利を収め、ミアレシティに辿り着く。そこで迷いながら、プラターヌ博士の研究所まで行ったこと。そこでちょっと困ったことがあって、カフェ・ソレイユでもまた困って、そこでカルネさんに出会って、勇気づけられたこと。カルネさんが、レポートは書きたいことから書けばいいよ、と言われたから、レポートを書き出せたこと。全部束ねて連ねる間に、コーヒーがそっと、温かいものに差し替えられた。


  [No.3371] 空飛ぶくじら 投稿者:焼き肉   投稿日:2014/09/10(Wed) 22:49:49   60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 ずっとむかし。まだ伸ばしていた髪の毛だって、肩くらいしかなかったくらい、ちっちゃなころ。わたしは海
に遊びに行って、溺れたことがある。体に力が入らなくて、息が苦しくて、気が遠くなって、ああ死んでしまう
のかなあと、子どもなりに考えていたような気もする。
 でもわたしはこうして今も生きている。それは、助けられたから。誰に? ポケモンに。それも、家よりも大
きな。しかもびっくりすることに、そのポケモンは、空を飛んでいたのだ。幼い私を乗せて、大きな大きな体を
優雅に、ヒレを動かしながら、どこまでも遠く遠く。その時の感動といったらない。だって空飛ぶポッポ、ファ
イヤーなんかは珍しくないけれど、そのポケモンは──後から知ったのだが、ホエルオーだった。空飛ぶベッド
、空飛ぶじゅうたん、空飛ぶホウキ、そんな感じの本の中にだけあるような産物と変わらないくらい、常識から
外れたポケモンだった。その大きな船みたいな巨体から、もっともっと地上を眺めたかったけれど、わたしはす
ぐに意識を失ってしまって──気がついたら、病院のベッドの上にいた。

 あれからもう少し大きくなって、髪が腰まで伸びて、日に日に旅に出ることが出来る十歳の誕生日が近づいて
いくにつれて、わたしはその時のことを頻繁に思い出すようになっていた。
 それは恋に似ているかもしれない。
 わたしは多分、旅に出てもう一度会いたいのだ。
 幼いころのわたしを助けてくれた、空飛ぶベッドや空飛ぶじゅうたん、ホウキと同じ、本の中から飛び出して
きたかのように幻想的な、あの空飛ぶくじらに。



 便乗しました。ン年前からずーっと考えている長編のネタだったりしますが、モチーフ自体n番煎じだよって
感じのネタな上に普通にこのレスだけで話終わってね? っていう。

 ポケモンに限らず空飛ぶくじらっていうモチーフが昔から好きなんです。太●の達人のねこくじらとか、ラノ
ベの晴れた空にくじらとかギャルゲーの最終試験くじらとか。ええもちろんNo.017さんのクジラ博士のフ
ィールドノートも読みましたとも。 あの時まだポケモンssは書いてなかったけどくっそ長い感想送りつけま
したすいません。


  [No.3372] 輪廻(9/15 追記) 投稿者:イサリ   投稿日:2014/09/10(Wed) 22:54:54   155clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:一粒万倍日

 輪廻転生と聞くと、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。
 悔いの残る人生をやり直したいと願う人、あるいは現世で切れてしまった縁を来世では必ず繋ぎとめたいと考える人もいるかもしれません。
 ですが、次にこの世に返ってきたとき、必ずしも人間の姿で生まれてくるとは限らないのです。

 前世の記憶を持つと主張する人々の話を集めていると、そのうちの決して少なくない割合で、自分はかつてポケモンだったと語る人が存在するのです。
「僕の前世は硬い鎧のコドラで、年がら年中薄暗い洞窟の奥に陣取っては、甘い鉄鋼石を齧っていたなぁ」そう話してくれたのは、初めてのポケモンをもらったばかりだという、わんぱく少年でした。
「私の前世は、乳飲み子のいる家で飼われていたニャースでした。年老いて死ぬまで、それはもう、可愛がってもらって……。ちなみに、その家の赤ん坊は、今の私の夫です」なんて若い女性も。

 しかし、これまで聞いてきた中で、最も驚くべき――そして想像を絶する記憶を持つ人は、トキワタウンに住む老人をおいて他にないでしょう。


「聞くところによると、あなたはこれまでの輪廻の記憶をすべて受け継いで生まれてきたそうですね」
「ええ、そうです。太古の海底に張り付き揺蕩うリリーラから、唸るだけで大気を震わせ、尾の一振りで岩山を砕くバンギラスまで。今となっては名前も知れぬ生物であったことも、その地の支配者として君臨していたことさえもあります。ですが、それだけではありません。……私は自分が死んだ後、何に生まれ変わって行くのかまですべて知っているのです」
「……なるほど、来世も、ということですか。それでは、あなたの来世とは?」

「来世で、私はキャタピーに生まれます。残念ながら、木の葉を食らって身を太らせ、いよいよサナギになろうとしたところで、巣立ちを終えたばかりのオニスズメに食べられる運命にあります」

 老人は唇を歪め、仄暗い笑みを浮かべました。

「錆びついた神話に残る大昔から、手の届かない遥か彼方の未来まで、ありとあらゆる姿で私は生まれました。人間であるこの生など、例えるならば時渡りの精霊セレビィがたった一度羽根を震わせる時間にも満たないものなのです」

 なるほど、海千山千という言葉がこれほどふさわしい人はいないかも知れません。
 ですが、一つ疑問が残ります。並の人間ならば、輪廻の記憶など忘れてしまっているか、覚えていたとしてもせいぜい一つ。なぜこの老人に限り、ここまで鮮明で膨大な記憶を現世に受け継ぐことができたのでしょうか。

「なに、別になんてことありゃしません。私の前世が、――ネイティオだったというだけの話ですよ」

 過去と未来を同時に見るという霊鳥の生まれ変わりの、底知れぬ静けさを湛えた両目は、視線をそらすのを中々許してはくれませんでした。





――

(9/15 追記)
お待たせいたしました。
たったこれだけの話なのですが、久しぶりに書くと中々言葉が出てきませんね(汗)
1000字が長い長い……。

感想をいただきましたので、この場でお返事させていただきます。お二人に感謝です!



>逆行さん

小さな生き物を含めたら、人間の個体数よりその他の方が圧倒的に多いでしょうから、人間に生まれる確率はどれほどのものか……。
人間に生まれるのがベストかどうかは分からないんですけどね。
でも、転生の先がポケルスだったら、確かに最悪ですねw その発想はなかったですw
生まれ変わりのネタは、オカルトの王道だと思うのですが、そういわれればあまり見かけませんね。
楽しんでいただけたら幸いです!


>砂糖水さん

企画立案お疲れ様です!
こういう、気軽に参加できる企画は書くのも読むのも楽しくて良いですね。
文章を投稿するきっかけがつかめずに悩んでいたところだったので、渡りに船でした。
ネタを考えるときに狙ったわけではないんですが、切りの良いところで分かれました。
もしもポケモンに生まれ変わったら……。砂糖水さんの魅力(甘味的な意味で)をもってすれば、きっと弱肉強食の世界でも大丈夫です。



それでは、お読みいただき、ありがとうございました!


  [No.3378] Re: 輪廻 投稿者:逆行   投稿日:2014/09/13(Sat) 22:09:52   75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


どうも、こんにちは。

読ませていただきました。

輪廻転生が本当にあるとしても、やっぱり人間の姿で生まれてくる確率は低いですよね。

ポケモンだったらまだいいですが、ポケルスとかだったら最悪ですねw

転生を題材にした小説は、なろうの一次小説なんかでは良く見られますが、ポケモンでは(ポケダン以外で)あまり見ないので、どうなるか楽しみであります。

トキワタウンの老人は前世何のポケモンだったのか、気になる所です。


  [No.3373] 家畜人(仮) 投稿者:   《URL》   投稿日:2014/09/10(Wed) 23:08:43   93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

(この小説には残酷な表現が含まれます)

 夜毎、私は恐怖にさいなまれる。ほかでもない、生きることへの恐怖。
 あたたくてやわらかな布団、プライベートを保障するしずかな部屋、五分歩けばコンビニがあって食べ物が手に入る。これほど満たされているというのに、私は明日をむかえることが不安でたまらない。生きていて楽しいことなどなにもない。日々を暮らすということが、私にはただ重圧でしかない。
 こうした夜を、はたしてあとなん回くりかえさなければならないのだろう。これから年老いて死ぬまでの気の遠くなるほど長い年月を思って、ますます恐ろしくなる。
 逃れる手段はただ一つしかない。もし死ぬことができたなら、体も心もなにも無くなって、きっと楽になれる。そうだ、いったいなにをしているのだ。明日が来る前に、はやく死んでしまわなければならないじゃないか。
 私のような出来そこないの存在を許してくれるほど、世界は優しくなかった。ただ、世界は選択を私にもとめる。死が向こうからやってきてくれればどれほど楽だろうか。けれどそうはいかない。私はこれから、自ら死ぬよりほかにないのだ。
 寝巻きで裸足のまま、あてもなく部屋をとび出す。強烈なたえがたい衝動だけを携えて……
 お父さん、いままで育ててくれたのにごめんなさい……でももう私だめなんだ。私が死んだらお兄ちゃんは泣いてくれるかなあ……
 かたくて痛いアスファルトを踏んで、ふらりふらりと歩く。ぬるい風はほほを乾かさなかった。
 ところが、私ははやばやと立ちすくむ。
 深夜、人通りのない道に、街灯に照らされた大きな背があった。それがぬうと振り返る。顔には黒い穴が二つならんだ大きなマスクをかぶっていて、手に大きな斧みたいなものをにぎっている。それは私に気づくと、ずんずんと近づいてくる。
 私の直感が告げる。この人はぜったいに危ない人、きっと通り魔かなにかに違いない。こわい。殺される――笑わば笑え。私はそのとき、自殺衝動など一瞬のうちに忘れてしまって、逃げだしたくなったのだ。こんなやつに殺されるのだけはいやだと思ったのだ。それなのに体がいうことをきいてくれない。腰がくだけてしまって、地面にへたりこむ。
 ふるえる肩を、通り魔の大きな手につかまれる。
 その感触におどろいて私はさけぶ、「ひやアア――ッ」しずかな夜にけたたましい悲鳴をひびかせてしまう。私こんな大きな声も出せたんだ。
 しかし通り魔はそんなことにかまわず、おもむろに大きな斧をふり下ろす。
 とっさに頭をかばった腕に激痛が走る。
「ぎゃア――ッ、いたい、腕、私の腕……」
 みれば腕は大きく裂けていて、血が吹き出ている。
 通り魔の手をはねのけて、がむしゃらにもがく。道をもと来た方へ、みすぼらしく這いつくばって逃げだす。
 しかし通り魔はそんな私を逃がさなかった。
 後ろから背中を一撃。どこまで深くいったのかしらん。息ができなくなる。
 四つんばいになった太ももをもう一撃。ちぎれたらどうしよう。私は倒れる。
 通り魔の足蹴で仰向けになおされて、腹を二、三度えぐられる。そんな風にしたら人間に必要なものが壊れてしまうかもしれない。
 ……もうやめてください。おねがいします。本当に痛いんです。死んじゃいます。いやだ。死にたくないよう。なんで私なんだろう。いやだよう。
 それらは声にさえならなかった。
 大きな刃物がもちゃがってはおちてくる。もちゃがってはおちてくる。ざっく、ざっくざく。なんだか斧って律儀だなあ……
 ふと、通り魔のマスクの穴の奥に血走った目玉をみつける。笑っているんだろうか、泣いてるんだろうか、怒ってるんだろうか。
 もう痛みはあまり感じない。ただ通り魔が、私という物体を丁寧に壊していく、そういった様子がなんとなく他人事のように感じられるだけだった。


  [No.3374] シロガネ携帯獣記 炎馬の王 投稿者:ラクダ   投稿日:2014/09/10(Wed) 23:24:42   150clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 ジョウトとカントーに跨る霊峰、シロガネ山。数多の強者がひしめくこの山に、一際名を轟かせる猛者がいた。
 彼の名はライカ。シロガネの麓に生息するギャロップの中で、歴代最も大きな群れを率いた長である。
 大地を駆ける音、雷の如く。たなびく赤焔のたてがみ、猛火の如き気性を表す。畏敬と賞賛の念を持って、人々は彼をこう称した。
 誇り高き炎馬の王、シロガネ平野を統べる主――そして、彷徨う孤独な炎馬の王、と。
 
 これは、栄光と自由の中に生きた一頭のギャロップの物語である。


 まだ幼い仔馬の頃から、彼はすでに王者の頭角を現していた。輝く炎を纏う美しい容姿もさることながら、その年に産まれたポニータの中で一番足が速く、また気性も荒かった彼はあっという間に仔馬たちのリーダー格に納まった。子分を従えて颯爽と走り回る様は微笑ましくもあり、同時に将来有望である事を予感させるものだった。
 独り立ちを迎え群れを出た後は、同じく所属を持たない若い雄馬達を纏め上げて新たな集団をつくり、互いに争うことで自分の能力を磨き上げた。天性の俊足に加えて、戦闘での立ち回り方や仲間内での優劣のつけ方を学んだ彼は、数年後、小さな群れを率いる長へその座をかけた闘いを挑むことになる。
 燃え盛るたてがみから激しい火花を散らしつつ、二頭の雄馬が対峙する。甲高いいななきで相手を牽制し、前足を踏み鳴らし地を掻いて自らの力を見せつけ、睨み合ったまま有利な位置取りを探してぐるぐると歩き回る。互いに一歩も引かないことを悟った彼らは、ついに雄叫びを上げて相手に突進した。
 首筋を狙って食らいつき、身を翻して後足を蹴り出し、棹立ちになって前足を叩きつけ、ごうごうと音を立てて燃えるたてがみや尾を打ち振るう。両者の闘いは互角に見えた。年長の雄馬には豊富な経験と技量があり、若い雄馬にはがむしゃらに突き進む体力と気力があった。
 何度もぶつかり合い、退き、またぶつかる内に、やがて群れの長に疲労の色が見え始めた。動きに僅かな躊躇いとふらつきを見て取ったライカは、ここぞとばかりに相手を攻め立てた。とうとう決定的な後足の一打が雄馬の胸に叩き込まれ、長は悲鳴を上げてくるりと背を向けた。
 走り去る敵を、ライカは追わずに見送った。勝敗は決した、群れの長との激しい戦いに打ち勝って見事その座を手に入れたのだ。
 野性の世界は厳しい。弱肉強食の理の中で暮らす生き物達は、本能的に強い者を求める。雌馬達は自分と仔を生かす為、老いた統率者より力を示した若き挑戦者を選び、自ら進んで頭を垂れた。座を追い落とされた古き長は失意のうちに群れを去り、代わって新しい長が誕生した。
 自分の群れを手に入れた彼は、それを守るために全力で戦った。幼い仔馬を襲うリングマに真っ向から立ち向かって撃退し、縄張りを巡って他の群れと争い、虎視眈々と最高位の乗っ取りを狙う雄馬達を蹴散らし。全てにおいて優位を保った彼の元にはその強さを慕った雌馬達が集まり、また強力な庇護の下で産まれた仔馬たちは、外敵の脅威にさらされることなくすくすくと育った。時が経つほどに群れは栄え、いつしかシロガネ平原に住まう者の中で一大勢力を誇ることとなった。
 しかし、彼に注目していたのは同族のみならず。野生ポケモンの最大の敵――人間もまた、この強く逞しいギャロップに深い関心を示したのである。
 野を疾駆する彼の姿を見た者は、その速さに舌を巻いた。敵と対峙する彼を目の当たりにした者は、凄まじい気迫に度肝を抜かれた。燃えるたてがみを振りたてて誇らしげに歩く様は、見る者全てを魅了した。
 大地を駆ける音、雷の如く。たなびく赤焔のたてがみ、猛火の如き気性を表す。その素晴らしいギャロップの噂はシロガネ山から遥か離れた土地まで轟き、いつしか人々の間で『シロガネ平野の炎馬王ライカ』として知られるようになった。
 噂が噂を呼び、ライカはますます神格化されて語られる。比類なきギャロップと称されたその内容は、残念ながら欲深な人間達を引き付けるに余りあるものだった。
「その足の速さはレースに使える、きっと優秀な成績を収めるだろう」
「いや、それほど力のある馬なら戦わせるべきだ」
「何を言う、美しい姿を活かしてコンテスト用に仕立てなければ」
 各々の目的の為に、彼を手に入れたいと願う者は沢山いた。そんな人間が大挙して押し寄せ、基地とされたシロガネの麓は黒く染まった。無数に蠢く人間達を警戒し、恐れをなしたポケモン達は山の奥地や洞窟の中に身を隠したが、しかし彼の群れは逃げも隠れもしなかった。欲望にぎらつく二本足どもを横目に、悠々と草を食み野を駆ける。
 ギャロップ達は知っていた。群れが戴く長は賢く力のある者で、どんな脅威からも守ってくれるのだと。
 けれどギャロップ達は知らなかったのだ。人間がいかに狡賢く、執念深い生き物であるかを。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 今一番時間を割いて書いているもの、元ネタはシートン動物記の野生馬のお話。
 企画に便乗して上げさせていただきました。一粒万倍日ってとっても縁起のよさそうな素敵な響き、完成しますようにできますようにと願いを込めて。
 皆様の作品もどんどん芽が出て成長しますように!


  [No.3379] Re: シロガネ携帯獣記 炎馬の王 投稿者:逆行   投稿日:2014/09/13(Sat) 22:41:37   71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

語彙力があって羨ましいです。

ギャロップの描写すごいっすね。

ライカは勇敢ですね。

人間たち意見が対立して捕まえるの失敗しそう……

硬派な文体なので書き上げるのが大変かもしれませんが、続きを期待してます!


  [No.3375] 居合い斬りの木視点(仮) 投稿者:逆行   投稿日:2014/09/10(Wed) 23:26:37   77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 今日も一人の人間が眼前に現れた。人間は何やら丸いボールから、鋭い刃を持った緑色のポケモンを出した。その刃は私を怯えさせるのに十分な輝きを帯びていた。銀色に輝くその刃を、緑色のポケモンは両手に二つも所持していた。所持というより、体と一体化しているようだ。どっちでもいい。どちらにせよ、これからの彼の行為が仁義なきものであることには変わりはない。あの刃では、恐らく一撃であろう。逆に考えれば、一撃のみ我慢すればいいのだ。そう思えば、前回よりは楽ではある。前回は、中途半端にレベルの上がったポケモンに、何度も刃をぶつけられた。あれは悲惨だった。
 ポケモンは、いよいよ刃を振り上げる。私には顔面がない。恐怖を軽減するために目を瞑るという手段を持たない。
 次の瞬間、木である私は体の真ん中よりやや下の箇所をスパッと切られた。スパッという形容が、実によく似合いほど切れ味が良かった。




 なんか物を主人公にした話しが書きたいと思ったので。九億八千四百五十四万年以内には完結します。


  [No.3376] 【お知らせ】次の一粒万倍日は17(水)22(月)29(月)です 投稿者:砂糖水   投稿日:2014/09/11(Thu) 00:15:34   116clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:一粒万倍日

お知らせ

今月の一粒万倍日は以下の通りです。
17(水)22(月)29(月)

今回を逃した方は是非次の機会にどうぞ!
もちろん来月でもいいのよ?


  [No.3381] 感想です。まとめてですみません 投稿者:砂糖水   投稿日:2014/09/13(Sat) 23:39:53   72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

感想です!
まとめてでごめんなさい!

『Saiko's storY(かきだし)』 きとかげさん
こ、これが書き出し、だと…?
ということは本来は長編なんでしょうか。
これだけでうまうま美味しいお話です
はあ、やっぱりうまい人の文章は読んでてすっと入ってきますねえ。
一見さらっと書かれているようで実はそうじゃないんだろうなあと。
そういう風にさらっと書かれているように見せるのって難しいのに、苦労の跡がわからないなんてさすがきとかげさんです。
あと、ナチュラルにケロマツをケツマロって読んで、あっごめん…ってなったのは秘密(
(

『空飛ぶくじら』  焼き肉さん
こう、あのですね、うまい下手とか細かいことは置いといて、今回参加いただいた作品の中で一番好きです。
ふわりと空を飛んでいくその感じがとっても好き。
どこまでも高く高く、続く空。
想像するだけで心が躍ります。
長編のプロローグですかね?
彼女がどんな旅をするのか楽しみです。


『輪廻』 イサリさん
ふわ、ふわ、さすがイサリさん…!
続きが気になって仕方ないです!
うまいとこで終わってやがる…! くっ…。
トキワタウンの老人にはいったいどんな過去が…。
ああああああ気になる、気になるうううううう。
続きキボンヌ(古い
来世はポケモンになりたーい、あ、でも弱肉強食の世界で生きていける自信が…あうあう。


『家畜人(仮)』  殻さん
ちょwwwww殻さん来るとは思いもしなかったです。
しょっぱなの(この小説には残酷な表現が含まれます)に、あ、殻さんだわあと思いました(小並感
あの、その、いやダメじゃないし面白いけど、これあかん(白目
いきなり人がお亡くなりになってしまって、ここからどうなるのやら…。
気になる反面、続きが怖いです…。


『シロガネ携帯獣記 炎馬の王』  ラクダさん
本w格w的wすぎwwwwwwwww
ネタ元読んだことないのが悔やまれます…。むう。
力を入れて書いてるなーっていうのがありありと伝わってきました。
語り口調がうまいなーって、ドキュメンタリーというか。
わくわくさせられちゃう、胸が高鳴る。
ああ、本当にライカは強い、すごいって伝わってくるのが素晴らしいです。
そして、お約束の人間が…ああ。
やっぱり負けちゃうのかなー、でもどう奮闘するのかなーと続きに期待です。
わくわくきらきら期待のまなざし。
あ、でも無理のない範囲でお願いします。


『居合い斬りの木視点(仮)』 逆行さん
うん、その、まず内容じゃなくてつっこませてほしい。
>九億八千四百五十四万年以内には完結します。
って気が長いよ!気が長すぎるよ!!!
さてそれはさておき。
これあれですかね、およげたいやきくん的な死んで蘇って、という。
何度も死んでしまうのね…。
物視点という以上に、居合切りできられる細い木、っていうのが斬新すぎてもう。
切られちゃいましたけどこのあとすぐ復活して話が続くのかしら。
それとも切られた状態で…?
むむう。




拙い感想ですがご笑納ください。


  [No.3395] 鋼氷の王 投稿者:きとら   投稿日:2014/09/17(Wed) 20:05:39   69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 最も北にあると言われる領主夫妻がなくなり、新たな領主としてその座についたのは、若干16の、政を行うには幼すぎる領主だった。
 他人を信用せず、他人を信頼せず、領主の城にたった一人で住む彼が、領民のために捧げた歴史である。






モンハンパロかきたいと言っててまだこれしか出来てない
クシャルダオラは風翔龍だったのにいつの間にか鋼氷龍になってた。

ポケモンが一切出てこないですよ?モンハンパロですから
アイルーとかポポ料理とか、そんなものが出てくる予定、ではある。


  [No.3396] 蜘蛛の糸(仮タイトル) 投稿者:きとら   投稿日:2014/09/17(Wed) 20:13:59   100clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:かきかけ】 【いきおい】 【ホムハル

 あそこで失敗しなければ。元より関わらなければこんなことにならなかった。わかっていても、時間は戻せず、記憶も消せない。
 マグマ団との勝負に負け、拘束されてアジトまで運ばれた。目撃者などいない。最初からハルカがいなかったかのように、持ち物やポケモンも全てマグマ団の連中に奪われた。
 何をされるかわからない恐怖に、ハルカは何度も謝りの言葉を述べた。しかしそんなことで満足するわけがなく、連中は楽しそうにハルカを見ていた。幹部の許可が降りたら楽しい時間になるよ、と嫌な笑いを浮かべて。
 縛られて鎖でつながれたハルカを、体格のいい男たちが囲んでいる。見下ろされ、身動きが出来ずにハルカは震えるだけだった。
「ウヒョヒョ。やーっと捕まえたか」
 すぐさま幹部がやってきた。何度かハルカも会ったことがある。ホムラと名乗る細めの男は楽しそうだった。ここにいる男たちはやっと復讐できると楽しそうな顔をしていた。
「おい、どうだ? 散々コケにしてきたマグマ団に囲まれる気分は?」
 ハルカの前髪をかきあげ、ホムラは顔を覗き込む。恐怖でホムラの顔を見ることができない。するとホムラはハルカの前髪を引っ張る。ハルカから小さな悲鳴が上がった。ホムラは立ち上がる。手から茶色の髪が2、3本落ちた。
「ふーん、最初からそうだったらこんな目に会わなくて済んだのにな」
「……ごめんなさい」
 ハルカは必死だった。この男が何を考えているかは分からないが、マグマ団で誰よりも危険だということを本能で察知していた。そんな危険な男が率いる集団で、命の保証はない。
「今更謝っても遅えんだけどな。その心意気に免じて俺様のペットにしてやるよ。それともみんなに楽しませてもらうか? 選ばせてやるなんて俺様優しいだろ? ウヒョヒョ」
 ハルカに選択の余地はなかった。

 仮眠室のような狭い部屋に押し込められる。後から入ってきたホムラが扉の鍵を閉めた。これから何をされるのか分からない。ホムラから遠ざかるようにハルカは部屋の隅の方へ隠れるように身を置いた。
 ホムラは何やらロッカーの中を漁っている。一度ハルカを難しそうな顔をして見たが、すぐにロッカーに視線を戻した。
 殺されてしまうのかもしれない。もう逃げ場はなく、ホムラに背を向けてただ祈っていた。家族や友達に二度と会えない。そんなの嫌だ。でもハルカにはどうにもできない。ホムラの機嫌次第では……。
 いきなりハルカの頭に布が被さる衝撃が来た。必死で払いのけた。
「何やってんだ。それ着ろ」
 ハルカが払いのけたのは、マグマ団がみんな着ている服だった。上下揃ったセット。何を言ってるのか分からない。
「だから今きてる服の上からでいいから、それ着ろ」
 反抗することは許されない。恐る恐る服を取る。一番小さなサイズを選んだようだが、ハルカには大きくてダボダボ。
「あんま似合わねえなウヒョヒョ」
 ホムラが扉を開けた。引っ張られるようにハルカは立ち上がる。引きずられるようにマグマ団のアジトの中を歩いた。他の団員たちとすれ違うも、ハルカを新入りと勘違いしているのか誰も疑問を抱かないようだった。
「で、俺のペットならお前の荷物は俺のもの。俺が引き取っても問題ないな」
 倉庫らしきところに、ハルカの持っていた荷物とポケモンが乱雑に放置されていた。ホムラはそれらを手にすると、ハルカに押し付ける。
「ペットなら荷物くらい持て」
 そういって強引に押し付ける。
「それでなぁ、そこの扉あけると外に出ちまうわけだ。」
 するとホムラはハルカの両肩を掴み、鋭い眼光で目を見た。
「今回は見逃してやるが、次に俺たちの邪魔をしたら容赦しねえウヒョヒョ」
 ホムラの威圧感に首を縦に振る。
「最近のガキにしちゃ聞き分けいいじゃねーか。さっさと帰って夕飯にしろ」
 ハルカの頭を撫でた。そして扉を開ける。外の光が入ってきた。行け、とホムラに背中を押されてハルカは扉をくぐった。背後でバタン、と閉まる音がした。今後二度と振り返ることなくハルカは走り出した。
「隊長、今度うちらにも楽しませてくださいよ」
 団員が話しかけてくる。ホムラは軽く頭を叩いた。
「俺はあんなガキに興味ねーよ。お前あんの? ちょっとお前の神経疑うなぁウヒョヒョ」
 ホムラはハルカを抹殺しろなんて命令はしていない。俺が説教してやるから連れてこいと言ったのだ。それが団員任せだと暴走気味だ。よくない傾向だと同じく幹部のカガリも頭を悩ませていた。


 マグマ団の栄光はそれからしばらくして陰りを見せ、そのまま解散してしまった。窃盗や社会に不安を与えたとして幹部ら数名が責任を取ることとなった。
 そして本日、ホムラはその期間を終えて再び社会へと戻る。持ち物はその間の対価であるわずかな金と数日の着替えのみ。
 昔の仲間に連絡を取ろうにも、みな行くあてもないようなやつらばかりだった。そんなやつらの唯一の場所としてもマグマ団は存在していた。それがない今、マグマ団みたいな組織を作って、前のように居心地のいいものを作ろうか。あの時のことが昨日のことのように思い出される。
 持っていたポケモンは引き離され、再び育てる気力もない。トレーナー資格を再び取得しても、また離されてしまうのでは取っても無駄だ。
 これからどうやって生きていこうか。まだ30にもならないのに、先は全く見えない。
 人通りの多い場所に出る。なんとなくポケモンセンターに入った。トレーナー関連の仕事にありつけるのではないかと思った。しかしそんな都合よく出ているわけはないし、あってもホムラより腕の立つ人間などたくさんいる。
 設置されているテレビでは、注目のバトルを放送していた。何となく見ていると、なんだが知ってる名前がそこにある。顔が映った時、ホムラは驚いた。
「あいつ、チャンピオンになりやがったのか」
 団員に負けて大泣きしてた子供は、いつの間にか成長していた。確実に年月は流れていた。
「人間って変わるんだな……」
 顔こそ変わってないようだが、雰囲気は王者そのものだった。あの時のハルカがこうなるとは誰が予想できたのか。
 何なら、チャンピオンの過去をバラしてその筋で金を貰うか。しかしそれをバラしたところで色恋沙汰ではないから大したダメージは無いだろうし、社会的信用も向こうのが高い。やるだけ無駄だとテレビから目を逸らした。
 
 ポケモンセンターから出て、再び人混みの中に混じる。何もかももうない。行く場所もない。
 終わったか。陸地を増やすという夢が散って、残ったのは生きる場所もないという現実。今日も明日も生き残らねばならない。なのに生き残る術は奪われた。せめてポケモンたちさえいれば、頑張ろうという気になったのに。
 はっはっはっという息遣いが近くに聞こえる。強そうなグラエナがホムラの顔を覗き込んでいた。人懐っこく、ホムラの顔を舐めた。撫でるともっと、と言うように顔を舐めてきた。
 強そうな外見とは裏腹に、仕草がとてもかわいい。前に持っていたグラエナも同じような仕草をした。もしかしたら、という期待で同じ名前を呼んでみる。グラエナはさらに嬉しそうにホムラに寄ってきた。
「運命の再会、だったら嬉しいんだけどな」
 もしそうだとしても今のグラエナには持ち主がいるはすだ。よく見るとグラエナの毛皮の中に首輪があった。連絡先があり、ホムラは公園の端の公衆電話からかける。数回のコールの後、息が絶え絶えの女性の声がした。向こうも必死で探しているようだった。それだけ大切にされているようだ。
「グラエナ、いたんですか? すみません、ありがとう、ございます」
「公園にいるんで、引き取りに来てください……体当たりするなウヒョヒョ」
 電話の間も、グラエナはホムラにじゃれまくる。仕方なくグラエナの頭をなでてやっても、構いたりなさそう。
「……ホムラ?」
 電話の向こうの声色が変わった。知り合いの番号にかけた記憶はない。
「そこ動かないで! 動かないでね!」
 電話が切れた。カガリの声ではなさそうだし、彼女もポケモンと離されている。他に知り合いと言ったら絶縁された両親くらいだ。
 公園のベンチに座った。グラエナも従う。よく手入れされた黒い毛皮が眩しい。
「ホムラいた!」
 その声を聞いてグラエナがそっちに走り出した。今の主人のようだ。まだ若い女性だ。何も知らないで引き取ったのか、知ってても目の前にいる人間が、前の主人と知らないのか分からない。
「……ところでさっきから名前呼ばれてるけど、俺たち知り合いだっけ?」
「マグマ団幹部のホムラでしょ。知ってるよ。昔ホムラのペットになって荷物持たされた」
「……まさかと思うがじゃあなんでチャンピオン様がこんなところにいて俺のグラエナ持ってるのか説明してもらおうか」
「私じゃ不満? とにかく探してた。こっち来て」
 グラエナが行こうよ、とホムラを呼んでいるみたいだった。行くところもないホムラはとりあえずついて行った。

 大きなカフェに誘われ、そこでホムラがいなかった数年間の話をされた。マグマ団の処遇が決まり、ポケモンの新しい飼い主を探していたことを知って名乗り出たこと。マグマ団の一部ではあるが連絡先を知っていること。
「世間の皆様の説得が一番大変だったの」
「そりゃそうだ。それで俺が聞きたいのはそこじゃねえ。どうしてマグマ団に肩入れしてんだよお前が。チャンピオンがそんなことしてお前がマグマ団だと疑われんぞ」
「あーもうそりゃあ真っ先に疑われた! あの制服記念に取っておけばよかったなぁー」
「違うそうじゃねえ」
 話が微妙にかみ合わないし、ホムラの記憶の中には、大泣きしてるハルカしかないのでこんなに明るく語られても調子が狂ってしまう。
「はぁ……もういい……付き合いきれん……」
「えー。そういえばホムラ今後どうすんの? トレーナーやるの? だとしたらグラエナ欲しいよね?」
「しばらくトレーナーやらん」
「じゃあグラエナはもうしばらく預かるね」
 終始ハルカのペースで会話は終わる。とても嬉しそうなハルカと、ひたすら聞いてるホムラ。しかも日常のことを聞かされても、ポケモンリーグがどうのと聞かされてもピンと来ない。
「ホムラこれからどうするの? 家帰るの?」
「家探すの。これから」
「……あのさ、うち来て」
「うちってお前の家? お前何言ってるかわかってる? 普通、未婚の、しかも未成年が、前科者を家にあげねーよウヒョヒョ」
「ホムラは大丈夫だよ。それにホムラは俺様のペットにしてやるって言ったんだから、主人とペットが一緒に住んでてておかしくないよ」
「その話は忘れておけ。その方が幸せになる」
「いいからうち来て! 引っ張っても連れてくから!」
「あーわかったよ。お前、信用ガタ落ちすんぞ……」
 一度だけ、どんな暮らしをしてるのか見るのも悪くない。チャンピオンという、雲の上の存在が知り合いにいるのだから。

 夕方にハルカの住んでるというマンションに来た。チャンピオンになってから親元を離れたという。かなり上の階で、夜景がよく映りそうなところだった。一人で住むには広い部屋で、中にはポケモンを鍛えるための道具が置いてあった。
「いい暮らししてんな」
「でしょ? ホムラ座ってて」
 リビングのようなところには小さなテーブルとふんわりとしたクッションがあった。本当に全く違う世界に住む人間になったようだ。
 なんだか座りが悪い。ハルカが何か企んでいてこんなことをしてるようにしか思えない。ホムラが侵入してきて脅してきたと訴えれば、世間はハルカの味方だ。再びホムラが社会からつまみ出されれば今度こそ戻るところはない。
「ホムラ今日は泊まってくれるんだよね?」
「は? なぁお前自滅の道進んでるぞ……」
「帰るとこ、ないんでしょ?」
 そこをつかれると反論できない。笑顔でハルカは答えた。
「一人は寂しいから」
 部屋の明かりは眩しい。ハルカは隣に来て話し始めた。自宅で落ち着いてるのか、カフェとは違って少し暗い。その方がホムラも話しやすかった。
「ハルカひとつ聞くが、俺がここでお前を傷つけて金持って逃げることは考えなかったのか?」
「ホムラがお金ないこと知ってるし、ないなら渡す」
 話にならなかった。なぜこんなにハルカが絶対に信用しているのか分からないし、それは何か企んでいるものの裏返しかもしれない。

 さすがに寝床を共にするのはホムラも抵抗があった。夜景の見えるリビングに毛布一枚借りて、ここで寝ると言い張る。
 慣れない寝床に眠気が来ない。カーテンを引いても夜景は騒がしく、ホムラの眠気を邪魔していた。そしてもうひとつ眠りを邪魔するものが来た。
「なんだよ。お前は寝室で寝ろよウヒョヒョ」
 毛布にそっと入って、ホムラの手を握っていた。成長したと思ったのは外見だけで、中身は親がいないと不安で寂しい子供のままのようだ。
「……やだ。ホムラと寝る」
「もうひとつ聞く。俺がお前に手を出す可能性を考えなかったか?」
「ホムラそんなことしないでしょ? あったかい」
「男を知らないで育つとこうなるのか……お前天然記念物だよ」
 全く警戒心がないのに、よくチャンピオンやってられるよな、と心のなかで感心する。言い寄ってくる男なんてたくさんいるだろうし、そいつらをみんなこんな風に接してたら無事じゃ済まないはずだ。


 ハルカのツテで住居も仕事も見つかった。マグマ団とはいえ、人を率いてた立場にいたのだから、組織の動き方はすぐにわかる。それでもマグマ団と知って、罵られることが多く、立場は下の下だった。もらえる額も多くなく、やっと生活していけるかどうかというところだ。
 そして週末になるとハルカがやってくる。そのまま泊まる。最初こそ拒否していたが、ホムラは何も言わなくなった。狭い部屋で、嬉しそうにホムラと話していく。友達いないのかと聞いてみた。
「チャンピオンになったら、みんな離れて行っちゃった。なんか住むところ違うよねーって」
 ハルカはホムラのベッドに転がりながら明るく答えた。占領されてはホムラも居場所がなく、追い出されるように床に座っていた。
 するとハルカは起き上がり、ホムラの顔をじっと見た。
「……ホムラ」
「なんだ」
「好き」
 やっぱり、という思いと何もわかってねえ!という思いが混ざる。一日二日の付き合いではない。そんなこととっくに気づいていた。だからこそ突き放すべきだったのだ。勇気出して言葉にしたようで、ハルカは真剣だ。
「半年いてね、やっぱり私はホムラが好き。ホムラが前科者でも、ホムラは私を助けてくれた!」
「ウヒョヒョ、バカか」
 それだけ返すと、ハルカの手を掴み、そのまま押し倒した。あれだけ強気だったのにいざ行動に出されたら怖いのか目を閉じている。あの時と一緒だ。
「俺はこういうことしてもおかしくありませんって言われてんだよ。それなのに警戒心なく近寄ってくるお前は本当にバカだ。もう帰れ」
 ゆっくりと目を開けて、そしてホムラを真っ直ぐ見て。今にも泣きそうな顔で訴えていた。
「やだ。ホムラはそんなことしないの知ってる。ホムラがあの時助けたくれなかったら、私は……」
 団員から言われた言葉を思い出した。確実にハルカを食う気だった。あの時は子供だから、まさかそんなことを本当にするとは思わなかった。でも今となれば、あってもおかしくない話だと認識できる。
「今でもあの時思い出して怖い。ホムラは何考えてるか分からないけど、ずっと会いたかった」
「ウヒョヒョ意味わかんね。恩返しのつもりなら、俺は十分助かった。自分自身差し出す必要ねえよ。お前はチャンピオンなんだ、わざわざ前科ついてる人間と関わろうとするな」
 それでもハルカは首を縦に振らなかった。嫌だ、離れたくないと言うばかり。
 言葉では説得できなそうだ。ホムラが手を離し、体を起こした。すると突然ハルカはホムラの体に抱きつき、そのままベッドに倒れこむ。誘うかのようにホムラの唇はふさがれた。強引だったためか、すぐにホムラは離した。
「なにすんだ! お前わかってんのか?」
「うん。……ホムラ、して」
 愛を囁くようにハルカは言った。まさか子供だと思っていた人物から、甘く、性を喚起させるような言い方をされるとは思わず、ホムラはじっとハルカを見つめた。
「したら気が済むか?」
「もっと欲しくなっちゃう」
「じゃあダメだ。それで俺を離せ」
 そう言ってもハルカはホムラにしがみついたまま。離してくれそうにない。少しためらい、ホムラはハルカの唇に触れた。何年も触れてない感覚は優しい。苦しそうにハルカが体を動かし、服の上からでも伝わる体温がまたホムラを夢中にした。
 より体が絡んでいた。息が荒く、とろけた目。ハルカの頭をホムラは撫でた。
「これで満足か?」
 自身もかなり息が荒くなっていた。こんな状況でも頭が冷静な判断をしてくれるのはありがたい。これ以上はダメだ、と警報が鳴っている。
「この先も……してほしい」
「また今度な」
 ハルカの額に口付けする。そう言わないと解放してくれないだろう。今度も何もないのに。でもこの欲望は際限がないことを知っている。
 二人はその後も無言が続いた。少し離れたところに座るホムラにハルカが黙って近寄る。そして猫のように膝に乗って、ホムラの胸に顔をうずめた。
「ホムラ、好き」
「さっき聞いた」
 頭を撫でた。目を細めて嬉しそうにハルカはホムラにしがみつく。
 ホムラにはなぜここまでハルカが自分に固執するのかわからなかった。
 





この後のメモがないため半年くらい止まってる


  [No.3397] タイトル未定(長編予定) 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2014/09/17(Wed) 21:16:52   92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:長編(予定)

 どうしてこうなったんだ。
 カヅキは周囲から聞こえる低いうなり声に身体を震わせ、額から脂汗を滴らせた。手に持った紅白のボールが足元にぽとりと落ちる。しかしそれを屈んで拾う余裕はカヅキにはなかった。



 そもそもカヅキがここに来たきっかけは、幼馴染であり先輩トレーナーにあたるユウトに、マンネリ化してきた手持ちに対しての愚痴をつぶやいたからだ。
 カヅキは言ってしまえば中堅どころのトレーナーである。ずぶの初心者ほどポケモンの扱いに慣れていないわけでもなく、かといって大きな大会で常勝出来るほどでもない。そこそこの規模の大会でぎりぎり入賞できるくらいで、ピンからキリまでいるトレーナー界全体では真ん中より上であろうが、名が知れたいわゆるエリート達とは実力は比べるべくもない。
 トレーナーとしての力は育成方法や戦術も当然関わってくるが、何よりポケモンの種類そのものによるところが大きい。中にはとんでもなく意外なポケモンで勝ち進む者もいるが、ほんのひと握りだ。特に中堅どころから頭ひとつ抜け出るには、より強力なポケモンを捕獲し育てることが必要になる。
 最近大きな変化もなかったパーティーに新しい風を入れるという意味も込めて、カヅキは新しい手持ちを増やそうかと考えていた。

 そんな事を先輩のユウトに言うと、ユウトは思い出したようにつぶやいた。

「そう言えば、『ランテンの森』だっけ……あそこにはかなり強いポケモンがいるんだってな」

 カヅキもその地名には聞き覚えがあった。同時に、そこは公には何も言われていないが、トレーナーの間では「入ってはいけない」と囁かれている場所であることも知っていた。
 昔は力のあるトレーナーが集まる場所であったとか、強いポケモンが生息しているとか、噂は様々であったが、少なくとも今現在、近寄ろうとする人はほとんどいない場所である。

 しかし、ユウトの言葉は、カヅキの興味を強く惹いた。
 かつてどうであろうと、今現在はトレーナーのいない場所である。人の立ち入らない場所には、普段見ないポケモンが生息していてもおかしくない。カヅキはエリートではないが、それなりに強く、トレーナーとなってそれなりに長く、ある程度の危険には対処できる。よっぽどのことがない限り、何とかなるだろう――。
 そんな楽天的な気持ちで、カヅキは「禁足地」である『ランテンの森』へ向かった。


 己の実力を過信し、軽い気持ちで過去のトレーナーたちの忠告を破った過去の自分を、カヅキは絶望の中で深く呪った。

 ランテンの森は予想通り、数多くのポケモンで溢れていた。長く人の手が入らず細いけもの道ばかりの薄暗い森では、普段森では見ない種類のポケモンもちらほら見られた。
 予想通り、珍しいポケモンがたくさんいる。カヅキはほくそ笑んだ。
 周囲をうろつくポケモンたちを見回し、自分のパーティーを埋めるポケモンは何がいいかと逡巡していた。

 しかし、思った通りに事が進んだのはそこまでだった。
 カヅキが森の中を歩いていると突然、ぞわりと全身が総毛だった。
 まずい、と思った時にはすでに遅く、カヅキの周囲からは低い獣のうなり声と突き刺すような殺気があふれ出していた。藪の中から数え切れないほどの目がぎらぎらと光って見えた。

 森の中から大きなモルフォンが飛びだしてきた。カヅキは腰のボールに手をかけ、応戦した。しかし長くは持たなかった。1匹倒し、2匹倒し、しかし周囲の気配は減るどころか大きくなる一方だった。
 間もなく最初に出したライチュウが倒れた。カヅキはライチュウをボールに戻し、一目散に駆けだした。全速力で逃げるカヅキをポケモンたちが追いかけてきた。
 カヅキは走りながらも手持ちを出して応戦した。しかし長くは持たない。ランテンの森のポケモンは噂通り、いや噂以上に強く、そして圧倒的な数の前にカヅキは尽くす手立てを失っていた。

 走って走って、カヅキは森の中の少しだけ開けた場所に追い込まれた。
 手持ちはみな力尽き、走る体力も既にない。それなのに、周囲の殺気はますます強くなっている。じりじりと後ずさりしていたカヅキは、とうとう大木の幹に退路を塞がれた。

 どうしてこうなったんだ。
 カヅキは周囲から聞こえる低いうなり声に身体を震わせ、額から脂汗を滴らせた。手に持った紅白のボールが足元にぽとりと落ちる。しかしそれを屈んで拾う余裕はカヅキにはなかった。

 辺りを取り囲み、じわじわと迫る大型のポケモンたち。カヅキは涙と鼻水を滴らせながら、最後の気力を振り絞って叫んだ。


「だ、誰か……誰でもいいから、助けてくれぇーっ!」






「――その言葉、『依頼』と受け取ってもいい?」






 突然、カヅキの頭の上から、鈴を転がすような声が響いてきた。カヅキははっと目を見開いた。

 空気を包んだスカートをふわりと膨らませ、ひとりの少女が地面に降り立った。
 揺れる長い黒髪が、まるで羽のようにカヅキには見えた。

 モノクロの世界から抜け出したような少女だった。
 ふくらはぎまである真っ直ぐな髪も、ジャケットの上着も、プリーツスカートも、膝より長いブーツも、革の手袋も、全て真っ黒。上着下の丸襟ブラウスと、顔と首元からわずかに覗く素肌は、色白を通り越した白。大きな深緑色の瞳だけが、唯一彼女に色彩を与えていた。
 突如上空から舞い降りた黒衣の天使は、カヅキににっこりと笑顔を向け、言った。


「ご依頼ありがとうございます! 『携帯獣萬屋(ポケモンティンカー)』です!」



「ポケモン……ティンカー……?」

 聞き慣れない単語を耳にし、カヅキは呆然と単語を繰り返した。
 そんなカヅキの前で、少女は左手首につけられた腕時計型のデバイスを操作し、空中に画面を浮かび上がらせた。

「それじゃまずは、システム……というか、依頼料についての説明だけど……」
「ちょ、ちょっと待って」

 呑気に解説を始めた少女をカヅキは慌てて止めた。
 黒い少女が空から降りてこようが、現在カヅキが置かれている状況は変わらず絶体絶命のまま。辺りの殺気は全く消えていないし、むしろ少女の出現によって強くなった気配さえある。

「金なら払う! いくらでも払うから、そんなことより早く助けてくれ!!」
「……あ、そ。わかった」

 少女はきょとんとした表情をカヅキに向けると、デバイスを操作し画面を消した。

 カヅキは何を馬鹿なことをやっているんだ、と頭を抱えた。目の前の能天気な少女だけでなく、己に対してもである。
 溺れる者は藁をも掴むというが、まさにそれである。目の前にいるのはどう見ても自分より年下――おそらく15歳かそこら――の、押したらぽっきり折れてしまいそうなか弱い少女である。そんな少女にこの瀕死の状況で助けを求めるとは、どうにかしている。
 大会上位に食い込んでくるような実力のある有名トレーナーは大体知っているが、見たことのない顔である。仮に見たことがあったならば忘れるわけがない自信がカヅキにはあった。
 なかなか、いやかなり、いやものすごく、かわいい。絶世の美少女だ。完全にストライクど真ん中である。空から舞い降りた救いの天使に、カヅキは完全に一目惚れだった。
 しかし今はそれどころではない。いくら外見がよかろうとも、今この状況でポケモン相手に色仕掛けは効くまい。
 少女はカヅキの方を向いたまま、ポケモンの群れに背を向けたまま、上着の下に両手をつっこんだ。

「……草タイプが28、地面が17、虫が22、飛行が20、格闘と鋼がそれぞれ8……全部で103。結構いるなあ。なるほど、おっけー」

 少女はそう言うと不敵に微笑み、殺気のする方向へ振り向きながら、腰から白と黒の小さな球が並んだ平紐を取り出し、宙に放った。
 それが赤い部分に塗装が施されたモンスターボールと、それが大量に取り付けられたベルトだと、カヅキが気付くのには少し時間がかかった。

 周囲に無数の赤い閃光が走り、カヅキと少女を何重にも取り囲むように、様々な種類のポケモンが姿を現した。しかもその全てが、バンギラス、カイリュー、メタグロスといった、大型で威圧感のあるポケモンだった。
 カヅキは口をポカンと開けて、周囲を見回した。少女が繰り出したポケモンは、見える範囲だけでも20匹以上はいるだろうか。
 少女はぱん、と手袋をした手を打ち鳴らした。辺りを覆っていた殺気が、戸惑いと恐怖に変わっていくのがカヅキにもはっきりわかった。

「さあ、かかってくる子はいる?」

 凛とした少女の声を合図に、2人を囲むポケモンたちが、一斉に咆哮を上げた。周囲から慌て怯える声が聞こえ、生き物の気配が消えていった。あっという間に辺りは静まり返り、そこにはカヅキと少女と少女のポケモンたちだけが残された。
 少女は納得したようにうなずくと、ベルトを拾い、ぱんぱんと2回手を叩いた。再び辺りに無数の赤い閃光が走り、2人を囲んでいたポケモンたちが全てボールに収まった。

 ずるずる、と音を立て、カヅキは背中を樹の幹に預けたまま放心状態で地面にへたりこんだ。
 少女はベルトを腰に巻きなおし、カヅキに笑顔を向けた。

「依頼完了! で、いいかな?」
「あ、う、うん……」

 カヅキは混乱した頭で少女の笑顔を確認し、ほんのり頬を染めた。
 少女は首をかしげ、大丈夫? とカヅキに手を差し出した。カヅキは顔を真っ赤にし、大丈夫大丈夫、と言って慌てて起き上がった。

 左手首の腕時計型デバイスをいじる少女の姿を見ながら、カヅキは先程の嵐のような展開を思い出していた。
 カヅキの混乱のもととなっていたのは、野生のポケモンに傷ひとつつけず事態を収集した手際でも、彼女の使うポケモンの種類でもない。一番の原因は、彼女の厚かったポケモンの数だ。
 確認できただけでも20数匹。見えない場所や上空に飛んだものも合わせれば30は超えるだろう。それだけのポケモンを連れ歩き、育て、指示を出せることが不思議でしょうがなかった。
 それはトレーナーとしての実力云々の世界ではない。そもそも、カヅキ達トレーナーにとって、ポケモンを同時に7匹以上連れ歩くことは、事実上「不可能」だからだ。

 トレーナーの「手持ち」は最大6匹。それはこの世界どこに行っても共通のルールだ。
 免許取り立ての初心者も、この道何10年のベテランも、どんなにあくどい人間だって、手持ちが6匹を超えることは絶対に「あり得ない」。
 トレーナーの持っているポケモンは全てボックス管理システムによって管理されており、最大数を超えたら自動的に転送されるようになっている。たとえ電子端末の使えないところでも、数を超えたらその分のボールは開かなくなる。詳しいシステムなどカヅキは知りもしないが、「そういうこと」になっているのはわかっている。トレーナーとしての常識だ。
 しかし目の前の美少女は、いとも容易くその常識を打ち壊して見せた。
 一体どうやって、とカヅキが尋ねようとするより先に、少女が口を開いた。

「じゃあえっと、野生ポケモンの追い払い5万、数が103で1匹当たり3千だから30万9千、人命救助10万、プランB4万、手数料含めて……占めて50万円、お願いね」
「はぇっ!?」

 カヅキは素っ頓狂な声を上げた。少女は笑顔で首を捻った。

「ん? どうしたの?」
「ご、ごじゅうまんて……いくらなんでもそれは……」
「え? でも、お金なら払うって言ったよね?」
「いやいや、言ったけど、言ったけどさ、でも……」

 嫌な汗がカヅキの全身から噴き出した。多少のお礼は考えていたが、桁が予想より遥かに多い。カヅキは決して金がないわけではないが、楽な暮らしかと言われれば全くそんなことはない。元よりトレーナー1本で食って行くのはかなり厳しい道だ。大会上位者でさえ、兼業トレーナーが少なくない。
 それにしても、50万とはいくらなんでも吹っかけすぎである。足元を見られているとしか思えない。見目麗しい少女が上目遣いで小首を傾げてこようとも、こればかりははっきりしなければ。
 カヅキが異を唱えようとした、その時だった。

「シュリ」

 どこからか突然声がした。よく通るバリトンの声だ。
 少女の後ろから、少女とほとんど同じ大きさの影が気配もなく現れた。
 現れたのは少年だった。その姿を見て、カヅキは目を見開いた。
 くせの強い髪の毛、袖なしのスーツ上下、ネクタイ、革靴、革の手袋は真っ黒。シャツと素肌は白。大きな瞳は深い蒼色。
 瞳を除く全身の色合い、体格、そして何よりその顔は、目の前の美少女と瓜ふたつだった。

「シュン」

 『シュリ』と呼ばれた美少女は、『シュン』と呼んだ自分によく似た少年に顔を向けた。2つの顔が並んだ様子はまるで鏡写しのようで、双子か何かかな、とカヅキは思った。

「お前、悪徳業者か何かみたいだぜ」
「えぇー、そうかなあ?」

 シュリは唇を尖らせて首をひねった。
 どうやら窘めてくれるようだ、とカヅキは内心ほっと息をついた。

「依頼料のことちゃんと事前に話したのか?」
「話そうとはしたけど、『いいから早く助けろ、金は払う』って言うものだから」
「そっか。それじゃしょうがねぇな」

 シュンは頷くと、カヅキに向き直った。

「じゃ、きっちり払ってもらおうか」
「ええぇぇー!?」

 業者が増えただけじゃないか……とカヅキは頭を抱えた。
 シュリは屈託のない笑顔で、シュンはどことなく不機嫌そうな顔でカヅキをじっと見つめてくる。表情は違えど、緑と青の2組の瞳が放つプレッシャーは底知れない。
 どうしよう……とカヅキは情けなくも泣きそうになった。

「シュリちゃん。シュン君。その辺にしてあげなよ」

 カヅキを見つめるふたりの背後から、また別の声が聞こえてきた。シュリとシュンが全く同じタイミングと動作で後ろを振り返った。
 シュリとシュンよりほんの少し背の高い、年齢も同じか少し上くらいに見える人影が歩いてきていた。ぼさぼさの黒髪を右手で掻き、左手をだぼだぼのフリースのポケットに突っ込んでいる。左目の目尻に小さなシールを貼っている他は、飾り気も何もないだるそうな見た目だ。

「ユズキ」
「何でてめーまでここに来てんだよ」

 やっほー、とユズキは笑顔で右手を上げた。シュンの顔がより一層不機嫌になったように見えた。
 カヅキは次々増える登場人物に小さなため息を着いた。それを聞き付けたのか、ユズキは笑顔でカヅキに近寄ってきた。

「やー、どーもどーも。ボクはニノマエ・ユズキっていいます。この子たちの、えーっと何だろ、上司? 代表? 保護者? みたいなのやってます」

 誰が保護者だ、とシュンが不機嫌そうにつぶやいたのがカヅキには聞こえた。
 そのつぶやきが聞こえているのかいないのか、ユズキはポケットから棒付きキャンディを4つ取り出すと、1つを口に含み、残りをシュリとシュンに差し出した。

「はい、どーぞ」
「わーい」
「いらねぇよ阿呆か」
「ほら君も」
「あ、どうも……」

 薦められるまま、カヅキは赤いビニルに包まれたキャンディーを受け取った。「辛くて渋いズリ味!」とパッケージに書いてある。一体どこに需要があるのだろうか、とカヅキはひっそり眉をしかめ、そっと上着のポケットにしまい込んだ。
 ユズキは余った1本を再びフリースのポケットに戻し、さて、と口を開いた。

「料金のことだけどさ、シュリちゃん、いかなる理由があろうとも事前説明が無かったのは事実なんだし、事態が事態なんだから割引つけてあげよう」
「はーい」
「あ、ありがとうございます……」
「というわけで、合計50万円に緊急割引つけて、49万円ってことで」
「1万しか変わってないじゃないか!」

 1万は決して小さくないが、現状では大して変わりがない。助かった、と少し期待したカヅキはがっくり心を折られた。
 ユズキは笑顔のまま、少し困ったように眉をしかめた。

「うーん、君の気持もわからないことはないんだけど、こっちも仕事だからなあ」
「そ、そもそも、君たちはどういう? 『ティンカー』って……」
「カヅキ!!」

 突然、怒鳴るような声が聞こえてきた。カヅキにとっては聞き覚えのある声だ。
 カヅキにとって先輩トレーナーにあたるユウトが、ピジョットの脚につかまって上空から降りてきた。

「先輩!?」

 ユウトはカヅキに対して一瞬驚いたような表情を見せた後、そばに立っている3人に視線を向けた。

「あんたらは?」
「初めまして、『ポケモンティンカー』のシュリです」
「ティンカーだと?」

 シュリの言葉を聞いたユウトは、あからさまに不機嫌そうな顔をしてシュリをにらみつけた。

「おいカヅキ、こんな奴らに関わんな! 帰っぞ!」
「あ、え、あの」

 戸惑うカヅキの腕を引っ張り、ユウトは再びピジョットの脚につかまった。
 カヅキ君、とユズキが笑顔で声をかけ、ポケットから小さな手帳を取り出してさらさらと何かを書きつけてページを1枚破り、カヅキの上着のポケットに入れた。

「いつでもいいから、気が向いたらそこに連絡してね」

 笑顔で右手を上げるユズキと、不機嫌そうなシュンと、何やら神妙な顔をしているシュリの姿は、あっという間に森の木々に隠れて見えなくなった。



+++



 瀕死の手持ちをポケモンセンターに預け、近くのコンビニでいつもの黒地に紫色のドガースのシルエットが印刷されている煙草を1箱買い、カヅキはユウトと行きつけの居酒屋に来ていた。
 ビールを1杯とお通しのマカロニサラダに少々箸をつけたところで、ユウトが口を開いた。

「ま、ケガもなくてよかったな」
「はい、ご心配おかけしました、先輩」
「にしても、ティンカーの奴ら、こういうところすぐつけこんできやがるな」
「先輩、その『ティンカー』って何なんです? 俺、初めて聞いたんですけど……」
「詐欺師だよ。高額の依頼料せびってくるモグリのトレーナーさ」

 ユウトはポケットから青いパッケージの煙草を取り出し、火を点けた。

「モグリ?」
「あいつら、トレーナーカード持ってねぇんだ。無免許だよ」
「確か、ポケモン扱うだけだったらトレーナーカードなくってもいいんですよね? ポケセンとか大会とかでは必要ですけど」
「まあそうだが、普通取るだろ。常識的に」

 灰皿に灰を落とし、ユウトは不機嫌そうな態度を崩さず続けた。

「何か困ってることがあると、すぐやってきては馬鹿高い金を要求するんだ。まじトレーナーの風上にも置けねえよ」
「でも、おかげで俺こうやって生きてるんですけど……」
「あ? 困った奴がいたら手助けするのが当然だろうが」
「……そう、っすよね」

 何となくもやもやとする気持ちを抱きながら、カヅキは上着のポケットに手を突っ込んだ。
 がさり、と音がした。机の下でこっそりと取り出してみると、手帳の切れはしと赤いパッケージに包まれたキャンディーが現れた。切れはしには住所と電話番号が書いてあった。
 紙を4つ折りにしてポケットに戻し、カヅキはふう、とため息をついてユウトに言った。

「先輩、ズリ味のキャンディーっていりますか?」
「あ? んなゲテモノいらねぇよ」

 どうしようかなこれ、とカヅキは辛渋い物体を手の中でくるくると弄んだ。





++++++++++


いずれ書きたい長編の1話目の書きだし(の試し書き)
昔から自分の小説を知っている人なら見覚えある奴が出てくる。かも。
使わなくなったキャラはリサイクルするもの。


  [No.3398] さる獣医のミミロップ 投稿者:MAX   投稿日:2014/09/17(Wed) 23:11:30   115clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 人間なんて、恩の押し売りばかりの生き物だと思ってた。
 野生から切り離されたわたしを、助けてくれた思ったのに。

 優しい人だと思ったら、進化したわたしに笑顔でお別れするような人だった。
 大事にしてくれると思ったら、動く玩具がほしいだけの人だった。
 逃げないように鎖でつないで、嫌がれば小さな火で肌を焼く。火が怖いから素直で可愛い振りをしてたら、急にわたしを人里に追い出した。

 帰る先がわからないから人の中で生きることになって、食べる物も少なかったけど、多少汚いのを我慢したら食べ物は見つけられたし、なんとか生きていけた。
 少しでも汚れが気にならなくなれば、もう止まらない。気づいた時には汚れ放題で、毛繕いもしなくなってた。汚れた毛を、汚れた手で整えたところでキレイになるはずなかったから。
 そんなわたしを人間たちはいつも汚い物を見る目で見ていた。実際汚かったけど、誰のせいよ。
 悔しくて苦しかったけど、でもこのまま死にたくなかった。脚に繋げられた鉄球の冷たさが、こんな苦しいまま死んでたまるかって、わたしを奮い立たせていた。

 今、わたしの脚に鉄球は無い。
 私が今お世話になっている人が、鉄球を外してくれたんだ。


 今日みたいに、公園でよく見かける光景。ベンチに腰掛けたわたしたちの前で、ポケモントレーナーとかいうのの仲間になったみんなが戦いあっている。
 これがどうしても好きになれない。
 人間との絆を見せてやる、と得意げになってるヤツは良い。まだ良い。なんだかわからないままにとりあえず戦うヤツは哀れだ。でも苦しいと感じない分、幸せなんだろう。
 悲惨なのは、痛い痛いと泣きながら戦い続けるヤツ。やりたくないのに捨てられたくないから、必死になって無理して身体を壊す。人間はそれを裏切られたと感じて、叱責する。
 身に過ぎたひたむきさは勝手な期待を増長させて、後でつらくなるだけなのに。それがわたしが捨てられた時のことと重なって苦しくなる。不安になる。

 わたしのこと、飽きたら捨てますか?
 また、汚れた生活をすることになりますか?

 あの人はそんなことしない。そう信じているけども、人間から受けた暴力と泥と埃にまみれた生活の記憶は事ある毎にわたしの安心を揺るがせる。
 こんな公園、本当は来たくなかった。お留守番が寂しくなかったら、こんなところには。けどあの人は見捨てておけないから、ほら、身体を壊した子を助けるため、叱責するトレーナーを止めに入った。
 傷が治ればまた戦いに駆り出される。根本的な解決になってないのにね。
 それはきっとあの人も分かってるはず。でもどうしたら解決できる? 考えても、できそうもない答えしか浮かばないから、目の前の痛みを取り除くだけなんだろう。
 だけど……。

 そんなことよりも、わたしを暖めてください。
 あなたの暖かさでわたしを安心させてください。

 あなたの邪魔になりたくないから我慢してるけど、本当は思いっきり甘えたいんだよ。そう言いたいけど、声にならないし分かってももらえない。
 早く戻ってきて。そう願いながら目を伏せたとき……。

「――――ッ!!??」

 今しっぽ握ったの、誰!?


***
公園でひと騒動。これの前後同時期で、トレーナーがバトルしたり、獣医が文句を言いながら治療したり、バシャーモが爆発して、仕舞いにバトルとなる予定です。
多分、連載モノの板に数年ぶりに書き足すでしょう。


  [No.3399] フカフカフワフワワンワンディ 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/09/17(Wed) 23:40:43   76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:BW2

 わたしのガーディの名前は、ワンディって言う。理由は、ワン、って鳴くから。バウ、じゃねえのってヒュウちゃんに言われたけど、ワンって聞こえるからバウディじゃなくてワンディ。

 タチワキシティの近くのタチワキコンビナートの草むらから、呼ばれてないけど飛び出てきたからつかまえた。タチワキコンビナートには、他にも真っ赤な炎の体のブビィもいて、なんでだろってヒュウちゃんに聞いたら、コンビナートだからだろって言われた。なんでコンビナートだからワンディがいたんだろう。というかコンビナートってなんだろう。



 カフェラウンジ2Fで書いてるシリーズもの。明日の夜にはupできるといいな。


  [No.3401] プラズマ団のアンケート 投稿者:門森 ぬる   投稿日:2014/09/17(Wed) 23:46:53   133clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

.あなたはポケモンが好きですか?
 ・基本的に好き ・好きでも嫌いでもない ・基本的に嫌い ・種類による ・個体による ・その他(       )
.
 で「種類による」と答えた方にお聞きします。
  あなたの好き嫌いを決める要因は何ですか? 次の中から当てはまる物を全て選んで下さい。
 ・思い入れ ・タイプ ・強さ ・見た目 ・特性 ・生息地 ・生態 ・危険度 ・タマゴグループ ・高さ ・重さ ・その他(       ) ・特に基準はない 
.
 で「個体による」と答えた方にお聞きします。
  あなたの好き嫌いを決める要因は何ですか? 次の中から当てはまる物を全て選んで下さい。
 ・思い入れ ・性格 ・性別 ・強さ ・特性 その他(          ) ・特に基準はない
.
あなたはモンスターボール及びそれに類する機器を利用していますか?
 ・利用している ・利用していない
.
 で「利用している」と答えた方にお聞きします。
  モンスターボール類を利用している理由は何ですか? 次の中から当てはまる物を全て選んで下さい。
 ・ポケモンを携帯する為 ・ポケモンを従わせる為 ・他人がそのポケモンを捕まえられない様にする為 ・その他(            )
.
あなたはポケモンバトルをした事がありますか?
 ・ある ・ない
.
 で「ある」と答えた方にお聞きします。
  あなたがポケモンに指示を出す時、命令形を使いますか?
 ・いつも使う ・よく使う ・あまり使わない ・一切使わない ・ポケモンに指示を出した事はない
.
 で「いつも使う」・「よく使う」と答えた方にお聞きします。
  命令形を使う理由は何ですか? 次の中から当てはまる物を全て選んで下さい。
 ・ポケモンはトレーナーの指示に従うべきだから ・指示にかかる時間が短いから ・命令形を使っている人が多いから ・特に理由はない ・その他(         )
.
あなたはポケモンバトルをしたいですか?
 ・したい ・したくない ・どちらでもない
.
 で「したくない」と答えた方にお聞きします。
  あなたがポケモンバトルをしたくない理由は何ですか? 次の中から当てはまる物を全て選んで下さい。
 ・興味がないから ・負けるのが嫌だから ・面倒だから ・ポケモンを傷付けたくないから ・ポケモンを傷付けられたくないから ・ポケモンと関わりたくないから ・その他(        )
.
あなたにとってポケモンとは何ですか? 次の中から当てはまる物を全て選んで下さい。
 ・家族 ・恋人 ・自分自身 ・憧れ ・相棒 ・友達 ・仲間 ・ライバル ・敵 ・ペット ・奴隷 ・主人 ・神 ・道具 ・玩具 ・ポケモンはポケモンとしか表せない ・その他(         ) ・分からない
.
あなたにとってポケモンがどの様な存在となるのが理想ですか? 次の中から当てはまる物を全て選んで下さい。
 ・家族 ・恋人 ・自分自身 ・相棒 ・友達 ・仲間 ・ライバル ・ペット ・奴隷 ・主人 ・神 ・道具 ・玩具 ・ポケモンはいなくなって欲しい ・その他(         ) ・特に希望はない ・分からない 
.
あなたはポケモンを交換した事がありますか?
 ・ある ・ない
.
 で「ない」と答えた方にお聞きします。
  あなたがポケモン交換をしない理由は何ですか? 次の中から当てはまる物を全て選んで下さい。
 ・交換してまで欲しいポケモンがいないから ・交換に出すポケモンがいないから ・交換する相手がいないから ・今のポケモンと一緒にいたいから ・面倒だから ・その他(          )
.
あなたはポケモンの交換を規制するべきだと思いますか?
 ・全て規制するべきだ ・一部を除き規制するべきだ ・条件付きで認めるべきだ ・全て認めるべきだ ・わからない ・特に意見はない
.
 で「一部を除き規制するべきだ」・「条件付きで認めるべきだ」と答えた方にお聞きします。
  どのような場合に規制すべき、または認めるべきだと思いますか? 思いつく限りお答え下さい。
 ・(                                              )  ・具体的な考えはない
.
あなたはポケモンを売買した事がありますか?
 ・ある ・ない
.
あなたはポケモンの売買を規制するべきだと思いますか?
 ・全て規制するべきだ ・一部を除き規制するべきだ ・条件付きで認めるべきだ ・全て認めるべきだ ・わからない ・特に意見はない
.
 で「一部を除き規制するべきだ」・「条件付きで認めるべきだ」と答えた方にお聞きします。
  どのような場合に規制すべき、または認めるべきだと思いますか? 思いつく限りお答え下さい。
 ・(                                              )  ・具体的な考えはない
.
あなたはポケモンを譲渡した、または譲渡された事はありますか?
 ・ある ・ない
.
あなたはポケモンの譲渡を規制するべきだと思いますか?
 ・全て規制するべきだ ・一部を除き規制するべきだ ・条件付きで認めるべきだ ・全て認めるべきだ ・わからない ・特に意見はない
.
 で「一部を除き規制するべきだ」・「条件付きで認めるべきだ」と答えた方にお聞きします。
  どのような場合に規制すべき、または認めるべきだと思いますか? 思いつく限りお答え下さい。
 ・(                                              )  ・具体的な考えはない
.
次の内、あなたが普段使う表現を全て選んで下さい。
 ・自分のポケモン ・ポケモンを捕まえる ・ポケモンを手に入れる ・ポケモンを持っている ・ポケモンを管理する ・ポケモンを飼う ・どの表現も使わない
.
次の内、あなたが普段使う表現を全て選んで下さい。
 ・ポケモンを使う ・使用ポケモン ・手持ちのポケモン ・ポケモンを戻す ・ポケモンを戦わせる ・ポケモンと共に戦う ・どの表現も使わない
.
次の内、あなたが普段使う表現を全て選んで下さい。
 ・ポケモンを逃がす ・ポケモンを捨てる ・ポケモンを手放す ・ポケモンと別れる ・どの表現も使わない
.
次の内、あなたが普段使う表現を全て選んで下さい。
 ・ポケモンを育てる ・ポケモンを鍛える ・ポケモンを強くする ・どの表現も使わない
.
次の内、ポケモンに用いる表現として相応しくないと思う物を全て選んで下さい。
 ・自分のポケモン ・ポケモンを捕まえる ・ポケモンを手に入れる ・ポケモンを持っている ・ポケモンを管理する ・ポケモンを飼う ・どの表現も適当である
.
次の内、ポケモンに用いる表現として相応しくないと思う物を全て選んで下さい。
 ・ポケモンを使う ・使用ポケモン ・手持ちのポケモン ・ポケモンを戻す ・ポケモンを戦わせる ・ポケモンと共に戦う ・どの表現も適当である
.
次の内、ポケモンに用いる表現として相応しくないと思う物を全て選んで下さい。
 ・ポケモンを逃がす ・ポケモンを捨てる ・ポケモンを手放す ・ポケモンと別れる ・どの表現も適当である
.
次の内、ポケモンに用いる表現として相応しくないと思う物を全て選んで下さい。
 ・ポケモンを育てる ・ポケモンを鍛える ・ポケモンを強くする ・どの表現も適当である
.
一般に野生のポケモンと人間に捕まえられたポケモンのどちらがより幸せだと思いますか?
 ・野生のポケモンの方が幸せだ ・どちらもあまり変わらない ・人間に捕まえられたポケモンの方が幸せだ ・捕まえられたポケモンによる ・捕まえた人間による ・分からない
.
一般にポケモンと人間のどちらが幸せだと思いますか?
 ・ポケモンの方が幸せだ ・どちらもあまり変わらない ・人間の方が幸せだ ・個体による ・分からない
.
現在の人間とポケモンの関係は次の内のどれに最も近いと思いますか?
 ・ポケモンが人間の支配下にある ・ポケモンと人間が対等である ・人間がポケモンの支配下にある
.
 で「ポケモンが人間の支配下にある」と答えた方にお聞きします。
  ポケモンは人間から解放されるべきだと思いますか?
 ・思う ・思わない

――――――――――――――――――――――――――――

 お話じゃありませんが良いですかね? 多分良いですよね。あと書き出しでもないですね。でも途中ですし多分良いですよね。と言う訳でプラズマ団がアンケートをしましたとさ。
 もっと設問や選択肢足したいのですが案が出ずに停滞しておりますのでここに。書き途中ですのでいきなり設問に入ってたり番号を振ってなかったりします。
 社会調査にはキャリーオーバー効果なるものがあるらしいですね。それまでの設問が後の設問の回答に影響を与えるというもの。本来はその効果はなるべく小さくするべきなのですが、利用すれば多少は都合の良い様に調査の結果を操作出来るのかなぁと思いまして大きくなりそうな感じにしてみました。


  [No.3412] 9月17日分の感想です。遅くなりました… 投稿者:砂糖水   投稿日:2014/09/28(Sun) 01:19:54   76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

はわわわ…遅くなりました、すみません。
9月17日分の感想になります。
たくさんのご参加ありがとうございました!


『鋼氷の王』 きとらさん
ふおおおおお…!なんだかすごくわくわくする書き出し…。
こ、これしかないだなんて…!
きとらさんのいけずー。
モンハンは姉がやってるのを見るだけでよく知らないのが非常に残念ではあるんですが、続きが気になります。
アイルー!お供アイルー!


『蜘蛛の糸(仮タイトル)』 きとらさん
はわわわ…二作もありがとうございます!
なんかもうこれはこれで完成品です、って言われてもおかしくないですね…。
続きはご想像にお任せします的な。
ホムラが優しくてなんだか不意打ち。
こ、こんなに魅力あるキャラでしたっけ…?
ハルカちゃん無防備すぎます!
いけません…いけません!


『タイトル未定(長編予定)』 久方小風夜さん
ふあああああああガチ系きたー!(゜д゜lll)
う、うますぎて逆に書くことが思いつかな
((結構な文字数あるのに読んでる間は全くそんな感じしなくて、読み終えてから、あ、これ結構文字数あった…!となりました。
萬屋ってティンカーっていうんですね、勉強になりました。
窮地に陥ったからと言って、いくらでも払う、は危険ですね…。
説明はちゃんと聞かないと…知らなかったでは済まされないですよね。
金額聞くとぼったくりに思えるけど、内訳読むとそうでもない感じするんですよねー…いやまあいきなり五十万払うのはきついですけど。
ぶ、分割でお願いします
((さてはて、彼らは一体何者なのか(萬屋、ティンカーって言ってるけど、それだけだとわからない)、なぜ免許を取得していないのか…なぜ法外と言われるのにその金額をいつも請求するのか、あとお金払う目処が立ってないのに割と簡単に引き下がったのは一体…?
長編の書き出しだけあって謎が…謎がいっぱい!
続きは、続きはいつですか!?(机バンバン


『さる獣医のミミロップ』 MAXさん
ミミロップ…(つД`)
連載モノに書き足すということは…もしや趣味についてシリーズのウサミさんですか?
あのウサミさんですか!?あの正座してたハシバさんとウサミさんのあの?!
わくわくわくわくわくわく!
仄めかされていたウサミさんの過去はこんな…うう…。
爆発するバシャーモさんはハシバさんなのでしょうか…うう気になる。


『フカフカフワフワワンワンディ』 焼き肉さん
おお、早速のご活用?ありがとうございます!
感想はあちらにまとめて書きますね!


『プラズマ団のアンケート』 門森 ぬるさん
もーりー!君って人は!
相変わらず人とは違う方向のものを書いててとても素晴らしいと思います。
小説じゃなくてもいいのよ、ここのルールに反してなければ大丈夫だと思います。
しかしアンケートとはまた…。
とりあえず自分が今まで書いたキャラクターならどう答えるかなって考えながら読みました。
普段使う表現とかふさわしくない表現とか、読んでて色々考えちゃいました。
そういえば書くとき色々考えて書いてよなー、と。
最近はあんまりその辺気を遣わなくなったやも…。
昔はかなりこだわって書いてんだけどねえ…。
> キャリーオーバー効果
あれですね、
Q 大**法がブッダの生まれ変わりだということを知っていますか?
・知っていた ・今知った
という(いいえ

プラーズマー!


  [No.3416] メッセージ 投稿者:WK   投稿日:2014/09/29(Mon) 13:04:10   70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 その男が部屋に戻った時、既に部屋の中は冷え切っていた。
 暖房は切られており、白熱灯も部屋を明るくしてくれてはいなかった。
 ベッドの上のシーツは皺だらけだったが、その皺を付けた張本人はどこにもいなかった。
 男は焦って、バスルームとクローゼットのドアを全部開けて隅々まで探した。しかし、彼女はいなかった。
 落ち着け、と男は自分に言い聞かせた。彼女は自由に動ける体じゃない。そう遠くへは行っていないはずだ。
 だが、机の上に置かれたパソコン――電源が付きっぱなしだった――を見た途端、男は思わずディスプレイを引っ掴んで大きく揺らした。
 パソコンは物言わぬ機械である。しかし、何物かが残したメッセージを男に読ませる程度の心遣いはすることができた。
 ワードで表示されたそれは、原稿用紙三枚分ほどの短いメッセージだった。しかしそれを読んで理解し、行動に移すには実に二時間の時間を要したのである。
 お世辞にも上手い文章とは言い難い物だったが、男を驚愕させるには十分だった。

 あなたがこれをよんで、どう考えてどうするかは、ぼくにとってはどうでもいいことなのです。
 まずはじめに、キーボードをきずつけてしまうことをあやまっておかなくてはなりません。
 ご存じの通り、ぼくのては何かをたたいたり、なにかを持ったりすることがむずかしいです。あなたのようなせいかくな文は書けないでしょう。
 しかし、今からいうことは本当のことなのです。
 誰かがあなたをだますために書いたものではありません。まぎれもない、ぼくからのメッセージです。

 あなたがこの人とけっこんすると知ったとき、ぼくはいやでした。
 あなたがこの人を愛していると思えなかったからです。ごぞんじの通り、ぼくはずっとこの人といっしょにいましたから、よく相談あいてになっていました。
 かのじょにとっては、人のことばを話せないぼくだけがあんしんして話せるあいてだったのです。
 あなたからけっこんを申しこまれたと聞いたとき、かのじょはとてもうれしそうでした。あなたも彼のことを好きになってくれるはずだ、そう言いました。
 でも、ぼくはあなたのことをよく知っていました。とても、かのじょを愛しているとは思えませんでした。
 ずっと昔、ぼくはあなたに会ったことがあります。とてもきれいなばしょでした。ぼくたちはしあわせにくらしていました。
 森とみずと大地がひろがる、美しいばしょでした。
 それが、とつぜんあなたが大きなきかいとともにやってきて、つぶしてしまったのです。
 みんな、ばらばらになりました。ぼくは逃げて、ここまでやってきました。
 そして、かのじょの友達になったのです。
 あのとき、ためらいなくぼくらの住みかを壊したあなたの顔を、ぼくは一生わすれないでしょう。
 
 かのじょが体がよわくて、でもお金持ちの人ということを考えれば、あなたがけっこんを申しこんだ理由なんて、すぐにわかりました。
 でも、ぼくは人のことばをはなせません。そしてかのじょは、文字を見ることができません。
 だからこうして、あなたにはメッセージをのこそうと思ったのです。
 かのじょはぼくに、たくさんの本を読んでくれました。てんじとよばれる文字を使って。
 ローマじや、ひらがなカタカナもぜんぶ読めるようになりました。
 
 ぼくはかのじょをつれていきます。
 どこか遠いばしょで、あなたが壊したぼくのすみかと同じくらい、きれいなばしょで、いっしょにくらすつもりです。
 さようなら。


 男の額から、一滴の汗が流れた。
 


  [No.3417] ペイズリー 投稿者:音色   投稿日:2014/09/29(Mon) 19:55:09   75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

0 ペイズリ―柄について一言
どうもあの、ペイズリ―柄が苦手だ。生物の教科書に載っていた何かの微生物がちりばめられた模様が嫌い。


1 試験勉強

ごろごろとベッドの上でペイズリ―柄のタオルケットが転がっていく。
人が勉強しているというのに、まったく羨ましい御身分だことで。
そんなこと思いながら、その様子を見ている時点で勉強してないんだけどねー、と自分に自分で突っ込んで、ぐるりと椅子をまわして机の前に向かいなおってみた。
ノートは白い。
一問だって解いてない化学のセミナー。
カガク、じゃなく、バケガクと読む。
だってその方が分かりやすいだろ、と誰かが行っていたのを聞いて以来、化学はバケガクだ。
明日は本番のテスト。テスト週間ラストの教科の一つ。
もうひとつ、お供に地理がくっついてくるが、そんなモノは知らない。全力投球だ。諦める方に。
笑えないが正直地理よりも化学のほうが配点及び成績がでかいのだからしょうがない。
だからヤル気を化学に向けよう、とさっきからずっと努力しているが、机の上に置きっぱなしのシャーペンが早速その飽きっぽさを象徴している。
だって、なぁ。ヤル気を向けた一問目からまず解けない。チャレンジしたその瞬間から分からないなんて結構ダメージ大きいんだよ?答え丸写しはさすがにプライドは許さない。
ていうか、答えを写して理解できるわけがない。
という信条。なので自力でやる。時間は過ぎる。手は動かない。遂にシャーペンを置き、考え込む。ふと視線をやる。ベットの上でペイズリ―柄の・・とここまで来たらもう十分だ。
セミナーが一つだって進まないのを理由に、布団の上で飽きもせず転がるペイズリ―を眺めるのは飽きないなんて、どれだけ矛盾していることやら。
「ペイズリ―」呼んでみた。転がり運動がピタッと止まる。
「ペイズリ―」もう一度。もぞもぞ、円柱のタオルケットが立ち上がる。
「ペイズリ―」呼んでいる柄のタオルケットを振りほどこうと一生懸命。
「ペイズリ―」思わず笑みが漏れる。くすりという声が聞こえたのか、焦ってさらにほどけなくなっている。
「ほら、ペイズリ―」椅子から立ち上がり、手伝ってやってしまう。化学とけないし、気分転換だよ、と言い訳。
「やぁぷ」小さな声。
ほどけたタオルケットの中身は、転がりまくって目でも回ったのか、くるりくる、反動で2回ほど回って、こてんと後ろに倒れ込むように座った。
しかしパッチールみたいな目ではなく、変わらない笑顔。
そう、いつだってペイズリ―は笑っている。
ただそれは、それしか表情を知らないんじゃないかと時々不安になる。
種族上、ただそうなんだと知ってはいるけれど、それでも、笑っているペイズリ―を見て素直に笑えない自分が憎い。
大体、この子にペイズリ―なんて名前をつけちまったことが、いけないんだろうけど。
つけた理由を思い出しかけて、やめた。

2 散歩


「ペイズリ―」呼ぶと、ぱっとこっちの顔を見上げる。
「散歩行く?」気分転換に。本日二度目の言い訳。テスト、化学の全力投球決定。悪い方に。知ったことじゃない。気分が乗らない、何より解けない。ならば仕方がない。気分転換だ、とにかく今は。自分を説得。
ペイズリ―はただ水色クロ―バーの尻尾を振っている。
とんとん、階段を下りる足音がついてくる。
とんとん、安アパートのコンクリートはよく響く。
「やぷ」追いついた、とばかりに足元に小さな手。ぎゅっと握りしめるズボンのすそ。そんなに離れたくないのか、と言いたいが、迷子にならないようにとこの癖をつけさせたのは他ならない自分だと一人苦笑する。
街から遠くない住宅街住まい。ぶらぶら歩く。歩くたびにペイズリ―の歩幅が崩れていく。
ゆっくり歩けばいいんだろうけど、つい、小さな手の存在を忘れていつもの調子で歩けば、こてんと転げる。
それでも、変わらない笑顔で立ちあがってすぐにズボンを掴もうとする。
ごめんよ、「ペイズリ―」手を握ってあげたい。ただ、この身長差はちょっと。それも言い訳。
結局、ペイズリ―を拾っておきながら何もしない馬鹿は自分だ。
拾う、という言い方の時点で善人面。あぁ、また自分が嫌いになった。
抱っこしてやればいい。おんぶでもいい。肩車なんかしたらきっとはしゃいで喜ぶだろう。お互いに触れていられて、安心できる。
でも、それをしない。だって、10kgちょっともあるんだ。ずっとおんぶにだっこ、まして肩車なんて疲れるにきまっている。
そう、これも言い訳。自分の十八番。一つも自慢にならない。
それでも、ペイズリ―は何も言わず、ただ笑ってズボンを掴む。
電気屋の前で、でっかいテレビの隣で黄色いシキジカのきぐるみは『アナログからデジタルへ!』のノボリを持って立っている。
テレビのない(買う金がない)我が家には関係がないが、ペイズリ―はきぐるみに興味があるらしい。二足歩行のシキジカ。そりゃまぁ、変だよな。
テレビにはもうすぐ七夕という事でカントーだかジョウトだかで、でっかいマダツボミに七夕飾りを付けている女の子のニュースをやっていた。30m、のテロップに感心する。
ペイズリ―はしきりにきぐるみに挨拶をしている。きぐるみはちいさなペイズリ― に気がついて、手を振り返す。
行こうか、と声をかけて、その場を去る。
「バケガクのテスト、どうしようかなぁ」何気なくつぶやく。バケガク呼んで化学と書く。間違ってはいない。
何のことだろう、とペイズリ―がこちらを見上げる。
笑い顔、というより、少し眉をひそめたような、困った顔。口は笑っていないし、こんな表情もするんだ、と今更ながら再認識する。
それでも目はいつも笑っている。馬鹿にするような感じとかじゃない。そんな目しかできないんだ。いつもぐるぐるのパッチールみたいに、ヒヤップはいつも笑顔。もちろん、表情はちゃんとある。
そんなの分かってるけど。
こてん、またこけた。
「ペイズリ―」ごめん。の言葉が後に続く前に、立ち上がり、ポンポンとひざをはらい、そしてズボンのすそを掴む。
もちろん、笑顔で。
でも、その笑顔は本当に笑顔なんだろうか。分からない、と言い訳。
疑う前に、ペイズリ―のことを分かろうともすらしていないな。最低な自分。
溜息。
若干消えてしまいたい、この世から。が、ペイズリ―を残してそんなことはできない。いっそ無理心中。どこの小説だ。馬鹿な事を考えて、ペイズリ―のことを考えない。
そういえばペイズリ―の故郷を知らないなぁ、ふと思う。帰ったら、地理をしようか、とも考える。テスト範囲は、シンオウ地方だけど。
これも言い訳。何に対しての言い訳だかも、もう分からない。
何でもかんでも、とにかく理由を付けて逃げて、やめて、何がしたいんだ、自分。足は自然と、森に向かう。いや違う、足を引っ張る小さな手。
「ペイズリ―」どうした、と疑問符をつけようとして、やめた。
ほんの小さな力でも、考え事をしながら当てもなく歩く自分をこっちだと引っ張ってくれるのだから、抗うのは得策じゃない。
もちろん、これも言い訳。行く当てがないから、ペイズリ―任せ。森に行くのも、良いんじゃないかな。これすらも言い訳。

3 狐

舗装された道から、獣道へ。雑草を踏みしめながら、楽しそうに歩く水色の小猿。
それに引っ張られながら、課題、いつ帰れば間に合うかなぁ、あれほど集中できなくて逃げたはずの化学を考えることで今起こっている現実から逃げる。
まったく、身勝手な自分だ。バケガク、バケガク。声に出すと、書くのとイメージが違いすぎて、なんか何の勉強だか分かんなくなるよなぁ、と言い訳。もう、何から逃げているのやら。
「ペイズリ―」意味もなく呼ぶ。ぴたりと、小猿の動きが止まった。
「ペイズリ―」?、疑問符、を付けかけて、変に後半は上がってしまった。止まった小猿は、笑顔のまま、こちらを見上げる。
「ペイズリ―」普通に名前を呼ぶだけ。何から逃げてるんだ自分は。呼ばれたペイズリ―は返事もせず、ただ尻尾を振ってくれるだけ。その視線を向けられるのがつらくて思わず天を仰ぐ。
ぎゅ、と。ズボンのすそを掴む小さな手に、力がこもった。
「ペイズリ―」視線を落とす、何かあったのかな、と思ったから。そうしたら。
「ぺ、ペイズリ―」が増えた。いつの間にか、ペイズリ―が二匹になっている。
「ペイズリ―」やぁぷ。片方は返事をした、片方は何も言わない。どうしよう、どっちの反応もペイズリ―らしい。
あ、と声が漏れた。
片方のペイズリ―の尻尾が、おかしい。
漏れた言葉はもう元には戻らない。眉をひそめる二匹のペイズリ―。
「ペイズリ―」呼んでやる。片方は、元気よく手を挙げた。その時、もう片方のペイズリ―が気がついて、黒い尻尾を、ズボンのすそを掴むようにギュッとする。
ぽむ、と音がして、手を挙げていたペイズリ―があっという間に尻尾を掴まれた黒い狐に変化した。
赤いきつねはCMでもみるが、黒いきつねは初めて見た。まぁ、うどんにないしね、黒とか。論点のずれた言い訳、ていうか言い訳ですらない、ただのボケ。
ロコンも色違い、なわけではなさそうだ。尻尾一個だし。ペイズリ―(本物)は片方をズボン、片方を黒狐(偽ペイズリ―)の尻尾を掴んでちょっとおろおろしていた。
もっとおろおろしたのは狐。凝視されている理由に気がついて、自分の尻尾を掴む小猿に手を離せとばかりに威嚇交じりに一回吠えた。
仰天したペイズリ―、慌てて離した手をそのままズボンにやる。両手ですそを掴んで、それでも興味があるのか狐を見る。
尻尾から手を離してもらった狐の行動は早かった。くるるん、一回宙返りすると、今度はペイズリ―が混乱するものに化けた。私だ。
「ペイズリ―」呼んでみる。こっちを見上げ、化けたあっちを見つめ、困っている。こらこら、君は今までしっかりと本物のズボンを握ってるくせに。
あっかんべーをして狐が化けたままが駆けだした。尻尾丸見えなのに。
「やっぷ!」
え。
ペイズリ―がズボンから手を離して、明らかな偽物を追いかけ始めた。

4 老婆

偽物を追っかけてかけ出す小猿。速い速い、あっという間に見失いそうになる。
これ完全に明日の化学のテスト死亡フラグだなー。この現状さえも利用する言い訳。常日頃運動していない自分を責める。だから追い付けない。これも言い訳。
考える暇があれば足を動かせよ自分。いわゆるランナーズハイとかいう状態に陥ったことがないんだから多分無理。水色は速度を緩めない。
黒い尻尾を振りながら逃げてく偽物はどんどん小さくなっていく。明らかにあっちの方が運動神経いいじゃないか。化けるのなら徹底的に化けろよ。運動音痴なところとか。無茶苦茶な言い訳、いや言いがかり。
偽物(黒狐)、水色小猿、そして自分。距離はどんどん広がっていく。
ダメだ、息が切れてきた。乏しい体力が恨めしい。
ぽつんと頭に何かが降った。空は明るい。
「雨?」
全くこんな時に限って、天気雨ときた。やはり日ごろの行いが悪いからなのか。言い訳、なのかそうでないのか。
狐は見失い、小猿だけを追いかける。雨の中を跳ねながら水色は偽物を跡を追う。
不意に視界に小屋が現れた。妙に古臭く、でも見ようによればただの掘立小屋か。そこにペイズリ―は飛び込んだ。
この雨だ、




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
此処でメモ帳は途切れていた
さーて、これ何時書いてたのか中の人も覚えてないぞ!!(爆
投げるだけならタダ、便乗便乗


  [No.3418] 放火魔(仮題) 投稿者:音色   投稿日:2014/09/29(Mon) 20:01:51   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 妙なものが見える様になった。14歳か、そこらの時だ。
 10歳で成人扱いといえど、一応親が「上の学校にいっときなさい」と言ってくれたので言葉に甘えてトレーナーズスクールの中等学校に入学して、まぁまぁ周りとも馴染んで何のことはない日々のまんなかで。
 最初は紙切れを踏んづけるよりはしっかりした感触だった。くしゃ、と音がして目を落としたら、粉々になった何かがあった。
 紙切れ、にしちゃもろい。硝子細工にしてはこんな所に転がってるなんて妙だ。何だろう、とばかりに足元に視線を落としていたら、近くに何か転がっているのが目に入った。
 葉っぱのように見えた。ただ、葉といっても植物の葉ではなかった。なにか、薄くて透明に近くて、全然別なものだった。拾い上げてみたら、何か書いてあるように見えた。
『昨日ばったり元彼に会っちゃってさ。すごいきまずかった―』 
 ・・・なんだこれ。
 会話の断片、ってやつか。いや、何でそんなものをメモした葉っぱが落ちてるんだ。
 メモした、と考えて、そりゃないかと考えなおす。こんな葉っぱにシャーペンで何か書くなんて、無理だ。大体これ、紙じゃないし。会話をいちいちメモするなんて、おっつかないだろう。
 となれば、これはなんだ。
 ふと見渡すと、あちらこちらに同じような葉っぱが落ちている。机の上、椅子の下、黒板に張り付いたり、窓に引っ掛かっている、などなど。気を回せば、いくらでも見えてくる。
 葉っぱ、と勝手に定義したが、ようするに、これは。
 言葉なわけか。
 見えているかといって、だから何だと言われたらそこまでだけど。
 握りしめると、あっさり砕け散った。随分もろかった。


 頭に何かがポン、と当たった。え、なに。考える前に、呼ばれたことを思い出した。
 その辺にころころと透明なボールが転がっている。拾うと、まん中に自分のあだ名。
 振り返ると、もう一個飛んできた。思わずキャッチする。
「ごめん」返事は最初葉っぱで、徐々にスピードがついて、向こうの胸にポンと当たってくだけた。
 どうやら遠くにいる相手に声をかけると、そこまで球となって飛んでいくらしい。自分の声も、言葉もきちんと見えるんだ、と思った。球、というより、珠かな。もろいし。いや、そうでもないか。持っているボールに目を落とす。
「なに持ってんの?」
 やっぱり他人には見えないらしい。なんでもない、と返事して、呼んだ理由を尋ねてみた。
 見せられたのはボランティア募集の紙。一緒に出ないか、と持ちかけられた。受け取ると、軽く説明があった。ふわふわと言葉が紙の上に落ちてくる。
「こんどの日曜日に、ポケモン保護施設でふれあいケアに行くんだけどさ。もしよかったら、と思って」
 集合場所と時間を告げられる。それを聞いて、特に予定もないから、良いよと言ったら、どんな格好をしていけばいいのかとかも教えてくれた。必要な言葉だけを紙の上に残して、落とさない席に戻る。
 これはこれで、便利だなと思った。


 相変わらず教室は言葉で溢れている。ふと、掃除の時間は溢れている言葉を一掃するために考え出された時間じゃないかと錯覚した。箒でしゃらしゃらはいて、ちりとりでまとめてゴミ箱へ。砕けた言葉の残骸は、生活の中のゴミよりよっぽどたくさんあった。
 自覚すれば、見える。歩くたびにしゃりしゃり音がする。消しゴムカスを払いのける動作で、ついでに言葉も払いのける。
 もちろん、意識しなけりゃいい話なんだろうけど、なんかそういうわけにもいかないというか、一度気になったら余計こと見えてしまうというか。
 こんなこと気にしてるの私だけだろうな―とか思いながら、ぼんやりと掃除が終っても埃以上に積み重なっている言葉を眺めて塾に行くためにカバンを背負った。


 バスが上手くつかまらなかったので歩く。20分の距離だ。丁度いい。
 道にも言葉が溢れているかと思えば、そうでもない。やっぱり、車の威力が高いのか。言葉を片っ端から轢いて挽いてひきまってくるから、粉々すぎて道路はいつもの風景だ。
 空からも言葉がふってくる。鳥ポケモン達の鳴き声も、言葉と言えばそうなのか。雪や雨より緩やかだ。これはこれである意味きれいだ。
 前の方を小学生の団体が歩く。言葉が花のごとく咲き乱れてそして葉っぱは歩いた後を埋めていく。その後ろを歩くとしゃりしゃり音がする。もっとも、この音が聞こえるのは私だけか。
 賑やかだなーとか思いながら眺めていると、前の方を歩いている別の小学生に追いついた。気付いた団体の一人が何やら前の小学生に声をかけた。
 言葉がボールに、ボールがナイフになった。
 軽い音がしてその子の背中に突き刺さった。
「え」
 思わず声が漏れた。団体の子達は触発されてはやし立て始めた。言葉の刃は容赦なく一人の小学生を襲う。その子は何も言い返さない。ただ黙々と歩き続ける。大量のナイフが刺さったまま。
 無反応に飽きたのか、団体はいつの間にかただの葉っぱ製造機に戻った。
 言葉の暴力、なんてものが真っ先に出てきた。あの団体は最初からナイフを投げてはいなかった。ただの言葉を投げかけた。そして、それは激しく一人の人間を傷つけた。受け取る側で言葉が言刃に変わった。
 なんか、虐め反対のポスターを読みあげているような思考になった。リアルであんなものを見ると、うへぇとなった。
 

 塾が終って家に帰ると、テレビでニュースをやっていた。政治家がどうやら、プラズマ団とこうやら報道している。
 スタジオはすでに山の様な言葉で埋め尽くされているが、かまわずさらに言葉を吐き出すアナウンサーを見てられなくて消した。見てるこっちが言葉で窒息死しそうだわ。
 すっかりこの異常現象になれつつある。家の中にも言葉は溢れていた。こまめに掃除をしようと決心した。
 カレンダーにボランティアの予定を書きこむ。今度の日曜か。
 




 180円。この180円が大いに問題なのだ。何がって塾への片道バス代180円。こいつが手元にあるかないかの話で。
 まず作るのがちょっと面倒くさい。200円あれば良いじゃないと言うことなかれ。上手く崩すのが至難の業なのである。
 コンビニによれば一番安くて21円。消費税の5%が邪魔をする。1円めぇ・・・。知ってるか、1円足りなくてもバスには乗れんのだ。
 他に崩す方法と言えばまぁ、校内の自販機か。ただし、なまじ校内と言うだけあって問題ある。
 安いのだ。
 外に出れば120円で売っているカフェオレはワンコイン。20円の差ってなんだろう。カップの自販機もあるが、70円と80円の違いも微妙。まぁ、どうでもええか。
 ただ、水筒にお茶が残っているにもかかわらず、小銭を作るためだけに飲み物を買うと言うのはなんかプライドに引っ掛かる。飲み物あるなら買わなくても良いじゃん。
 ていうか、200円しかないのに余計なもの買ってあげく足りないとか意味無し。
 バスの中で崩せば、という意見に妙な羞恥心が『他人の視線が集まりそうでそれが嫌じゃけこういうことに四苦八苦してんじゃねぇかよ』という本音をぶつけてやり返す。
 とまぁ180円についての考察を続けていると目の前の人物が振り返った。
「なんやら難しい顔をしょうるな」
「む、100円玉を80円に分割する方法を探しとるけぇ」
「・・・また不思議なこと考えとるね」
 前の席の住人はぐるんとこちらを向いて座り直した。ホームルームまではまだ時間がある。
「先生来んなぁ」
「忙しいんじゃろ。進路面談とか放火魔事件とか」
「あー、朝言っとったね」
 ゴミステーションのあっちこっちで小火騒ぎが起こっているらしい。不審者を見かけたら連絡するように、と警察から回ってきたらしいとか。
「暇潰しにごみに火を付けて面白いんかね」
「さぁねー。放火魔の思考なんざ分かるわけなかろ」
「あんがい人間じゃないかも」
「ほぉ、すーさんには犯人の目星がついとるとな!」
 いや、そういうわけじゃないけど。
「その辺歩いてるガーディがくしゃみした拍子にボッ、だとか」
 真面目腐って答えたが「ゴミ箱漁る子犬ってのもなー」と何処か不満そう。いや、夢を壊したくないだけか。
「野生のポケモンならゴミくらい漁るじゃろ」
「せめてカラスの方がしっくりくるかな」
「それもそうか」
「ヤブクロンじゃない?」
「餌を燃やすのかあいつら」
「焼いたらおいしいとか」
「ないない」
 適当な会話がぶちんと切れて、しばらく黙る。
「進路と言えばさ」
「あ?」
「なんて答えたのさ。面談。あんた、昼休憩だったじゃん」
 間延びした返事をして、担任との会話を思い出す。進路をどうするか、というか、どこの大学行くか、行って何をするのか。
「なにしたいのか、って言われて、とりあえずなんか作りたいです材料系が良いです金属が好きですって答えといた」
「アバウトな。そいで?」
「ホウエンの方の大学が良いですとか言ってみたら『物理このままだとやばいし英語と数学磨かないと理系の武器全部持ってないよ』って怒られた」
「おい」
「これからがんばるよ。塾とか」
「うちは面談まだだからなぁ。なるほど、参考になった」
「んー、そいつはよかった」
 ガラッと音がスライドして先生が入ってきた。はい、きりーつ、れーい。おねがいしまーす。前の席はすでに背中を向けていた。


 結局200円は180円にならなかった。もとより、消費されなかった。バスの時間のがした。次のバスまで30分。バス停で待つよりも、歩けば20分。つーわけ。
 ただ危ないんよね。なんか観光地とか言われとるけど車がどうにかすれ違えるような狭い道だって存在するし、自転車でぶっ飛ばす高校生がいないわけがない。
 歩きの人間に配慮しぃや。とか言っても無駄じゃけぇ、ひたすら黙々と歩く。結局180円問題は解決しなかったけん、思わず浮いたこの金をどう有効活用しょうかに問題がシフトした。
 どーせ塾に行っても2時間は時間があるわけじゃけぇ。その間に糖分と晩飯までつなぎを同時に摂取するための食べ物をチョイスしなけりゃならん。そのバランスをどうすっかだ。
 今ならホットドリンク100円セールをしとるので、150円するココアもワンコイン。これで糖分は確保するとして、だ。飯をどうしよう。やはりご飯粒が一番なんだけど、おにぎりとココアって最悪のコンボだろう。
 水筒のお茶は残っていただろうか。あ、お茶あるならココアいらないかな。いや、糖分のためだ。ここ大事。いかに少ない所持金で効率よく尚且つ味がぐちゃぐちゃにならんようにするか。大問題である。
 どうしたもんかなーと歩いとれば、妙なモン見つけた。なにかってゴミ箱漁るポケモンじゃけど。犬じゃない。なんじゃあれ。
 人型、じゃないが二足歩行。猫背。ぼてっとしている感じ。尻尾から煙上がってる。あれか、炎タイプか。火のない所に煙は立たない。
 がっしゃらがっしゃら袋を漁っている姿は目立、ってない、のか。微妙。人通り多いのかよく分からんからな、この辺。へっくしょん、とそいつがくしゃみをしたらしかった。
「あ」
 途端、そこが燃え上がった。あーもしかして。
 放火魔か、あれ。

 
 次の日、放火魔を見た、と前の席の住人に報告してみた。
「まじで」
「ゴミ箱漁ってくしゃみして着火しとったから、違うかもしれん」
 なんじゃそれ、と呆れた顔して「いや、それ確実にそいつじゃん?ていうか、通報しろ」
「ケータイは携帯しない主義じゃけん」
「おい」
「学校にケータイを持っていくのは校則違反です」
 正論を投げつけたら押し黙った。
「ま、そいつが意図して燃やしとるように見えんかったし。あれが初犯じゃったら別の奴の可能性もあるわけじゃん?」
「十中八九そいつな気ぃするけどな」
 で、それ何のポケモンなん?
 知らん。
「知らんのかい」
「あとで図書室で調べとくわ」
 横着もん、と友人はニヤッと笑って話題が終った。


 炎タイプ、の欄を適当にページをめくっているとそれっぽいの発見。
「・・・『クイタラン』、間抜けな名前だ」
 アリクイがゴミ箱をあさるとか聞いたことないんじゃけど。しかし猫背といい体格といい、尻尾が極め付けだな。こいつだ。多分。
 目つきは悪いけども、まぁ、いわゆるペット系の可愛さは備えてないから普通のペットショップとか売ってなさそうだわ。何か専門店とかその辺から逃げだしたとか。
 主に食うもの、木の実とか、アリとか。・・・ゴミ捨て場にアリがおるんか?
 ついでに蟻ポケモンも引いてみる。
 『てつありポケモン』名前が『アイアント』。まんまだ。分かりやすさが一番ってか。主食がゴミとは書いてない、が、アリならゴミにたかっとっても不思議じゃないけんなぁ。
 それを狙ってゴミ捨て場を荒らすアリクイ・・・。ヤブクロンが迷惑しそうな話だ。
 とりあえず、どうでもええか。野生のポケモンには野生の事情があるんだろう。逃げ出したか捨てられたかは定かじゃないが、知ったこっちゃないわけで。
 本を閉じた。
 
 
 本日はあっさりバスゲット、いやバスキャッチ。文法的にはこちらが正しいけど、明らかにゲットって言った方が正しくね?とか思う。
 いや、catchにはcatchの理由がある。きっと。昔、バスってのは今みたいに停留所にやってくるシステムじゃなくてタクシーみたいにあっちこっちで客を拾って後払いで目的地に運んでいったとか。
 だから自分からゲットするんじゃなくてバスが客をキャッチするからそれが今の名残となってcatchが正しい、とか。ウルトラ屁理屈こねとったらついた。結局100円玉をくずす。あー、スムーズにバスを乗り降りしたい。
 小銭入れの中は今いくら?今日は適当に自主勉してきりあげるからかるい糖分接種でえっか。バスで来ると寄れんのよね。一個80円の木の実まん。肉まんとかのまん。饅頭ではない。
 ポケモンも一緒に食べられます、という宣伝文句とか申し訳程度についてる割けど、普通に上手いんよね。塩味と醤油味。最近はバリエーション増えてるっぽいけどやっぱこの2つが好きだ。
 塩はあっさり。醤油はこってり。手のひらサイズのこの木の実まんの重要ポイントはその場で蒸したてをくれるってこと。最大のポイントは貰ってすぐ包み紙をはがさんと湯気で紙とくっついて皮がはがれる。これはもったいない。つまりタイミングと加減が重要なんじゃけどいかに手早く紙をはがして完璧な格好で食べるか、結構な技術が必須なのである。
 昨日は放火魔ポケモンのことで頭がいっぱいでうっかりおっちゃんの店を素通りしてしまってあり付けんかったが、あれはバスをキャッチしそこねた時限定のコースでしか買えんのだ。わざわざバスを一駅分早く下りてまで買うわけにもいかない。楽しみは後に取っておかなければ意味がない。
 バスの便利性は塾に早くつく。よーするに時間をお金で買う。バス逃したら時間を食うが木の実まんにありつける。どうだ、バランス取れとるじゃん。とまぁそういうわけ。
 皆意外と知らん穴場なんよね。教えても自転車の子は降りて寄るわけにもいかん、というし。そりゃそうじゃろうな、だって自転車乗りながら食ったら危ないわ。かと言って休みの日に食べ歩きするほど金ないし。誰かと一緒に歩きながら食べたいわ。
 そういやポケモン持ってないって結構珍しいらしいなぁと



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
メモ帳は此処で途切れている
多分クイタラン書きたくなって書きだした話
ちゃんと落ちも決めてあるけどこれもいつごろ書きだしたっけなぁ…(目逸らし


  [No.3419] ゆうやみのおりひめ(仮) 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2014/09/29(Mon) 20:14:25   173clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 昔むかしのおはなしです。
 とある山里に、やいちという若い男がいました。数年前に父母を亡くし、今はひとりで暮らしていました。


 ある夜のこと。外では吹雪がごうごうと唸りをあげていました。そこにどんどんと、誰かが扉を叩く音が聞こえてきました。
 やいちが戸を開けると、外にはとても長く美しい髪を持った女が立っていました。

「突然すみません。もしよろしかったら、ひと晩泊めていただけないでしょうか」

 吹雪の外はあまりにも寒く、やいちは快く女を招き入れました。
 囲炉裏の炎にあたって話を聞くと、女の名は「ゆう」と言い、両親を亡くし、遠い親戚を尋ねていく途中で吹雪に遭い、道に迷ったということでした。同じく天涯孤独の身であるやいちは、ゆうの境遇に深い共感を覚えました。

「吹雪はもうしばらく続くでしょう。好きなだけこの家にいるといいですよ」

 やいちがそう言うと、ゆうはありがとうございますと言って頭を下げ、嬉しそうに笑いました。


 吹雪は何日も止みませんでした。
 ゆうはやいちの家に留まりつづけていました。毎日顔を合わせ、囲炉裏の火を囲んで話をしているうちに、やいちとゆうはすっかり仲良くなりました。

 10日ほども経って、ようやく吹雪も弱まってきました。
 穏やかになった空の様子を見ながら、やいちは言いました。

「もう行くのですか」
「はい。雪も止みそうですし、これ以上ご迷惑おかけするわけにもいきませんから」
「……これから、顔も知らない親戚のところへ行くんですよね」
「……はい」

 ゆうはそう言い、少しだけ寂しそうに微笑みました。

「わたしも、父と母が亡くなってからしばらく経ちます。寂しい思いをしてきました」
「……?」
「もしよかったら、ここにいてもらえませんか? ……この先、ずっと」

 突然のやいちの申し込みに、ゆうは目を真ん丸にしました。
 そして、真っ白な頬をぽっと染め、お願いします、と言いました。


 翌日、ゆうはやいちに、機織り機はあるか、と聞いてきました。
 やいちの家には亡くなった母が昔使っていた古い機織り機がそのままになっていました。

「わたしは何も持っていません。嫁入り道具も仕度金もありません。代わりといってはなんですが、機を織らせていただきます」

 ゆうは機織り機の動作を確認すると、機織り部屋の襖から少しだけ顔を覗かせて言いました。

「わたしが出てくるまで、決してこの部屋を覗かないでください」

 それからしばらく、ゆうは一切姿を見せなくなりました。やいちの呼び掛けにも、一切答えることはありません。
 その代わり、部屋からは機織り機の軽快な音が絶えず聞こえていました。


 とんとん、からり。とん、からり。
 とんとん、からり。とん、からり。


 2日ほど経った夜、機織りの音が止まりました。
 がらりと襖の開く音がし、少しばかりやつれた様子のゆうが、1巻の反物を抱えて出てきました。

「これをどうぞ。町で売れば、それなりの値段になるはずです」

 そういってゆうは、やいちに反物を差し出しました。
 その反物は落ち着いた柴色で、光のあたるところは紫色にも見えました。


 翌日、やいちは町へ野菜を売りに行き、反物も一緒に持って行きました。




+++++

個人で細々やってた納涼短編で書こうと思ってたんだけどすっかり涼しくなってしまったよ!!!
そして今気付いたけど全然ポケモン出てなかったよ!!!


  [No.3450] Re: ゆうやみのおりひめ(仮) 投稿者:   投稿日:2014/10/16(Thu) 12:10:38   45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

こんにちは。
ポケモンが出ていなくても一千字に達していなくても、もうその段階からわくわくそわそわしちゃいます。これぞ久方さんクオリティ。
昔話タッチのしあわせな物語として幕を閉じるのか、それとも最後の最後でざっくり胸をえぐられるのか。どちらも得意な久方さんの作品だけに、先行きの予想のつかなさに殊更そわそわしています。

肉親を亡くしたやいちにとって、ゆうはまるで炉辺で感じる火のようにあったかかったんでしょうなあ。
ちょうど涼しくなってきた時期なのでますますやいちが羨ましいです(?)


  [No.3420] 少女の旅(短編集) 投稿者:WK   投稿日:2014/09/29(Mon) 20:47:23   123clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 ご機嫌な蝶になって きらめく風に乗って 今すぐ君に会いに行こう――

 服を選ぶのにどれだけかかったか。
 カント―は比較的温暖な気候で、極端に気温が違う、なんて場所はない。ただ、シオンタウンなんかは別の意味で肌寒いかもしれない、という親父の意見があった。
 あたしは言った通りマサラから一度も出たことがないから、ふーんそうなんだ、じゃあ上着一枚くらい持って行くか。それでおしまい。
 ただ、やはりあたしも女なので、それなりに御洒落をしたい。遭難なんかしたら御洒落もくそもないんだけど、そうならない前提で旅をしようと思っていた。
 どうせ行くなら、楽しみたい。
「キナリ、まだ終わらないの?」
 お袋の声が聞こえた。このオロオロした少しばかり高めの声とも、しばらくお別れだ。
「服選んでるの」
「貴方、今から長旅に出るっていうのに、そんなのんきなこと……」
 やれやれ。今までずっとあたしが家から出ないことを嘆いていたのに、いざ行くとなったらこれか。全く、めんどくさい。
 でも、そんなお袋があたしは嫌いになれない。
「いいでしょ別に。マサラは田舎だけど、トキワまで行けば結構都会って聞いてるし。まさかジャージ姿で行けとか言わないよね?」
「そりゃそうだけど……」
「よし、こんなもんかな」
 カーネルは昨日から、出発前の健康診断として研究所にお泊りしている。ポケモンだって、そりゃ人間よりかは万能な体を持っているけれど、不死身ではないのだ。
 旅先で何かあったら大変だ。
 全身鏡で、今の格好を確認する。カーキ色のキャップに、黒のスキニーパンツ。下は黒のスニーカー。上はピーコックブルーのフード付きシャツに、簡単に折り畳めるジャケット。
 そして、胸にネックレス。お守りだ。
「よし!」
 部屋を眺める。CDに付いて来たポスター三枚、机と本棚に大量に入れられた大量の本たち。フィギアにゲーム機にテレビにタオルケットが散乱したベッド。
 ……次に会うのは、いつになるだろう。
「親父は?」
「外よ。ママも行くわ。研究所」
 これは初耳だった。
「カーネルちゃん以外にも、ポケモンを連れて行くんでしょ? 何を選ぶのか、ママも見たいのよ」
 もちろん、パパもね。とお袋は言った。さっきとは違う、しっかりした声だった。


 研究所までの道を行く時、二人は一度も喋らなかった。それでも研究所のドアを開けて、カーネルが待ってました!と言わんばかりに飛びついてきた時は、驚いた声を出した。
「やめてよカーネル、くすぐったいよ」
 もふもふの毛が顔や首に当たる。カーネルは、オスのイーブイだ。性格はれいせいだけど、こういう時に甘えたりするのは、親が寂しがりと無邪気だからなのかもしれない。
 何処からか逃げ出してきて、研究所に侵入したのを博士に見つかって、ここで暮らすことになった。やがて私と出会い、何故だが気が合って、こうしてパートナーになった。
 カント―御三家以外のポケモンをパートナーに選ぶのは、マサラでは私が初めてらしい。でも、流石に外の世界を知らないカーネルだけでは不安だと、博士が気を利かせてくれた。
「キナリちゃん、博士がお待ちだよ」
 研究員の一人であるキサラギさんがやって来た。カーネルがどいて、やっとあたしは起き上がることができた。
「朝からずっとそわそわしていてね。ドアが開いた音がした途端、出て行ってしまったんだ」
「素早さが高いんですかね」
「サンダースにしたら、もっと素早くなるかもしれないね」
 カーネルは進化の意味を分かっているのだろうか。
 廊下の突き当りのドアを開ける。見知った顔の御爺さんが、あたしを見た。
 隣の長机には、三つのモンスターボール。
「おお、キナリちゃん。パパさんとママさんも」
「お世話になります。 ……こんな時期に、御三家ポケモンを取り寄せてもらうなんて」
「いやいや、また新しいトレーナーが旅立つんです。 おめでたいことですよ」
 あたしはボールを眺める。
 伊達に研究所に出入りしてない。御三家がどういうポケモンかくらい、分かっているつもりだ。でも、いざ選ぶとなると、すごく迷う。
 草タイプのポケモン、フシギダネ。
 炎タイプのポケモン、ヒトカゲ。
 水タイプのポケモン、ゼニガメ。
「……一度ボールから出そうか」
 難しい顔をして考えている私を見かねたのだろう。キサラギさんが博士に許可をもらい、ボールを全部投げた。
 中から出て来た三体は、あたしの膝小僧くらいしかない、小さな姿をしていた。踏まれたらおしまいなイメージを植え付けて来る。
 カーネルが挨拶をすると、三体は戸惑いながらも挨拶を返して来た。やはり、ポケモン同士の方が意志疎通がしやすいらしい。
「……こうして見ると、みんな小さいわねえ」
 お袋がそっと、フシギダネを抱き上げた。その優しさに安堵したのか、フシギダネは怯えることなく腕に収まる。
「不思議ね。 ダイキもこんなに小さなポケモンを連れて、旅立ったのね」
 ダイキはゼニガメを選んだ。あのゼニガメは、今はどうしているだろうか。
 旅が楽し過ぎて、一年に一度くらいしか連絡してこないダイキ。もう、カメックスになっただろうか。
「……」
 あたしはヒトカゲに右の人差し指を出した。ヒトカゲはあたしを少し見た後、おずおずと自分の左手を出して来た。
 小さい。人の赤ん坊の指のようだ。
「……おいで」
 そっと両腕を広げると、ヒトカゲはあたしにすり寄って来た。そのまま抱きしめる。
 あったかい。小さくても炎タイプなんだということが分かる。
「ヒトカゲって、進化したら翼が生えて飛べるようになるんですよね、確か」
「うん。 リザードンっていうポケモンになるよ」
「あたしは、この子をそこまで成長させられますかね」
「そりゃ、君次第だよ。 でも、これだけは言える。 君がポケモン達に精一杯何かを伝えようとすれば、きっと彼らも応えてくれるさ」
 ヒトカゲが鳴いた。頭をなでると、気持ちよさそうに目を閉じる。
「……決めた」

「博士、あたし、この子と一緒に行きます」

 
 ヒトカゲにニックネームを付けるか、と聞かれてあたしは悩んだ。どうしよう。付けるとしたら、やっぱりセンスのいい名前を付けてあげたい。
「この子、オスだね」
「……後で付け直せますかね」
「どうだろうなー」
「じゃあ、いいです。 変えるくらいなら、最初からこのままで」
 よろしくね、“ヒトカゲ”。

 六年のブランクは、決して小さな物じゃない。
 でもあたしには、それを賄うだけの知識がある。
 さあ、行こう。世界を広げる旅へ。


 無限大な夢の後の 何もない世の中じゃ そうさ愛しい 思いも負けそうになるけど


 マサラから出たことはなかったが、ネット上では様々な情報を入手できる。
 あたしは一番初めのジムは、ニビにすると決めていた。というか、トキワシティのジムが全く機能していなかった、というのが理由だ。
 各ジムは何処からでも挑戦していいようだが、どうせなら近場から挑戦していった方が効率がいいだろう。ジムリーダーは挑戦者が持っているバッジの数によって、使うポケモンを決めるそうだから。
 一番道路を抜け、トレーナーとバトルしてみた。
 野生ポケモンとのバトルとはまた違う。向こうは、トレーナーの指示によって技を繰り出したり、躱してくる。体力だけでなく、頭も使うのだ。
 それでも何とか勝って、レベルを上げて、ニビシティを目指す。途中、トキワの森という深い森を通ることになった。
 ここはさっきまで生息していなかった虫タイプのポケモンが多い。季節は四月で、幸いにもコクーンの孵化の時期にはギリギリ当たらなかった。
 彼らが孵化し、一斉に巣立つのは初夏だ。五月から六月初旬という所。この時期になると各地の警察署が特定のルートしか入っちゃいけないという指示を出す。
 むしよけスプレーを必ず持参するとか、黒や黄色の服は着ないとか。
 万一襲われた時の対処法、とか。
 ヒトカゲは森にいる時、ずっとあたしの足の側から離れなかった。ポケモンにしか感じない何かがあるのか、と思ったが反対にカーネルは何処吹く風で前を行く。
 時折出て来る虫タイプは、二匹を交互に出してバトルさせた。いくら相性のいいヒトカゲがいても、ずっとバトルさせたら疲れてしまう。
 入ってから約一時間。出口付近にいた虫取り少年とのバトルを終え、あたしは森を抜けた。
「……」
 マサラとは比べ物にならないくらい、発展した街。トキワも結構大きかったが、どちらかといえばこちらの方がより広くて近代的な気がする。
 地図を出して、施設を確かめる。ポケモンセンター、フレンドリィショップ、あの高台にあるのは、多分化石研究所。確か、化石を見つけたら復元してくれるらしいんだけど……。
 何万年も昔、このカント―はほとんど海だった。そこには、今は絶滅してしまい、化石しか残っていないポケモンが沢山生息していた。その化石を何処かで見つけてくれば、その研究所で復元、ポケモンに戻してくれるのだという。
 ネットで見たことがあった。まあ、あたしは化石なんて持ってないから関係ないけど、覗いてみるのも悪くない。
 そして、あの威圧感を放つ建物が……。
「ほら、見て。 あそこがニビジムだよ」
 カーネルとヒトカゲが、気合いを入れるように鼻から息を勢いよく吐き出した。

決して諦めない気持ちがあるなら どんな時でも 希望は味方する

 目の前にそびえ立つ、巨大な岩蛇。
 イシツブテをどうにか倒したあたし達の前に、今度はイワークが立ち塞がった。こいつさえ倒せば、念願のジムバッジが手に入る。
 だけど、流石リーグ公認ジム。そう簡単には、勝たせてくれないらしい。
「イワーク、“たいあたり”だ!」
 ジムリーダーであるタケシさんが指示を飛ばす。それに応え、イワークが長い体をうねらせて突進してくる。
「カーネル、かわして!」
 その大きさに怯んでいたカーネルだったが、あたしの声で我に帰ったらしい。即座にフィールドを移動させ、相手からの直撃を避ける。
 イワークに当たった岩は、その勢いによって粉々に砕け散った。破片が、あたし達の前を浮遊して落ちて行く。
「すごい……。 何て威力」
 でも、負けていられない。
「“かみつく”!」
 イワークの体は、大小様々な岩によって形成されている。そして、それは頭に近付けば近付くほど、大きくでかく、重くなっていく。
 でも尻尾の方は……。
「長くて軽いから、相手を振り払ったり叩きつけたりするのに向いている。 つまり、コントロールしやすいってこと。 でも、細いから、神経に一番近い場所でもある!」
 カーネルが尻尾に噛付いた。途端に体の芯まで痛みが走り、イワークは暴れ出す。
「耐えて!」
 噛付いたまま、必死で耐えるカーネル。
「甘い! “アイアンテール”だ!」
 イワークが尻尾を大きく振り上げた。そのまま、壁に向かって尻尾を勢いよく叩きつける。
 壁の破片が飛び散った。
「カーネル!」
 次にアタシが見たのは、目を回して壁の破片と寝ているカーネルだった。これで戦闘不能。
「ご苦労さん」
 アタシの手持ちは、あと一匹。
 最初にカーネルを出したのは、ヒトカゲよりも有利に戦えると思ったからだ。相手は岩、ヒトカゲは炎。確かにカーネルはノーマル・悪タイプの技ばかり覚えているけど、ダメージはヒトカゲが受けるより少なくなるはずだ。
 でも、今カーネルは戦闘不能。そうなれば、必然的にヒトカゲが出ることになる。
 いけるか……。
「どうした? 次のポケモンは?」
「……ヒトカゲ!」
 ヒトカゲは勢いよく雄叫びを上げた。その足には震えも、怯みもない。
 むしろ、早く戦いたい、戦わせろ!というオーラが全身がから溢れている。
「ヒトカゲ……」
 向こうが気合い十分なのを見て、あたしはパン!と頬を両手で叩いた。
 ヒリヒリする。でも、良い薬だ。
 そうだ。ポケモンが戦いたいと思ってるのに、トレーナーであるあたしが躊躇ってどうする。
 あたしに出来るのは、気合い十分のヒトカゲに上手く指示を出し、勝たせてあげることだけ。
 それだけだ。
「やるよ、ヒトカゲ!」
「カゲッ!」
 尻尾の先に灯る炎が、一層燃え盛った気がした。


きらめきをバッグに詰め込んで 君が笑う楽園まで行こう

 カーネルとヒトカゲの活躍で、あたし達は無事に一つ目のバッジを入手した。カント―のリーグに挑戦できるだけのノルマは、最低でも8つ。
 ほとんどのトレーナーは、このままオツキミ山を越えてハナダシティ・ハナダジムに行くそうだ。途中で出会ったおじさんから教えてもらった。
 山を越えるということは、それなりに危険が伴うと考えるべきだろう。
 あたしは回復薬と、非常食にもなるおいしい水やチョコレートなどを大量に持つことにした。

 オツキミ山は、岩だらけで木が一本もない場所だった。出てくるポケモンは、イシツブテやズバットばかり。
 この前のジム戦で、“メタルクロー”を覚えたヒトカゲが活躍してくれる。でも、使い過ぎると危険なので、逃げられる野生ポケモンとの戦闘はなるだけ避けることにした。
 ここは、たまにだがピッピという可愛らしいポケモンが見つかることがあるらしい。何でも女性に人気で、遠く離れたゲームコーナーの景品にもなっているとか。
 ポケモンを景品にしていいものかどうか。そこら辺はまあ、個人の考えに任せることにする。ちなみに、あたしは普通に捕まえたい。
「しかし、埃っぽいな」
 しばらく雨が降っていないせいもあるだろうけど、山の中は砂埃が舞っていた。おかげで着ているジャケットに砂が積もって、ザリザリする。
 ここで思ったのは、今のあたしの手持ちがこのままで良いのか、ということ。別にカーネルとヒトカゲに不満があるわけじゃない。ただ、もう少しポケモンを持っている方が、戦闘でも有利になるんじゃないかと思ったのだ。
 ハナダジム戦も控えてることだし、草タイプか電気タイプの一匹でもいれば、それなりに有利に戦えるだろう。
「――まあ、無理してゲットする必要もないと思うけどさ」
 ふと見ると、薄暗い空間の中で白衣を着た男が、もぞもぞ動いている。ポケモンを探してるわけじゃなさそうだ。
 不思議に思って声を掛けると、彼は数メートルほど飛び上がった。
「ご、ごめんなさい。 脅かすつもりは……」
 だが、彼は突拍子もないことを言ってきた。
「……君も化石を取りに来たのかい」
 見ると、男の両腕の中に、石の塊のような物が二つあった。ただの石ではないことが、男の必死な様子と、ぼんやりとだが何か模様のような物が浮き出ていることで分かった。
「それ、化石なんだ! この山で採れるなんて、初耳」
「これは僕が見つけたんだ! 君にはやらないぞ!」
 話が噛みあわない。ただ、奪うとか奪わないとか関係なく、盗人扱いされたのには流石に腹が立った。
「あのね、あたしは何もしてないからね。 そっちが勝手に勘違いしてるだけで、君から化石を奪おうなんて思っては……」
「いけっ、サンド!」
 問答無用というわけか。まあ仕方ない。ちゃっちゃと終わらせよう。

 結論から言えば、あたしの勝ち。ただ、その後が大変だった。
 負けたと知った向こうは、そのまま全部身包みを剥がされると思ったらしい。化石を抱いたまま、何処かへと逃げ出そうとした。
 だが、化石って意外と重い。
 元々貧相な体をしていた男は、その重さに耐えきれなかったのだろう。走り出してすぐに転んで、あたしに起こされた。
 そこでやっと、あたしが盗人じゃないって分かったらしい。話を聞けば、何でもここ最近、オツキミ山に化石を強奪しようとする変な集団が現れたとか。
「君は違うみたいだ。 ごめん、早とちりしちゃって」
「その化石、どうするの」
「グレンタウンに持って行くよ。 研究所でポケモンに復元してもらうんだ。 ……うん、君に片方あげるよ。 今回でよく分かった。 欲を出し過ぎると、碌なことにならないね」
 ……というわけで、あたしは片方の化石を選ぶ権利を手に入れた。彼はこの岩石だらけの場所から化石を掘り出しただけあって、かなり詳しい。
 かつて、この場所は海で、オムナイトとカブトという古代ポケモンが生息していたらしい。彼らは進化するとそれぞれオムスターとカブトプスというポケモンになり、バトルの用途もまた大分違ってくるそうだ。
「先に選んでいいよ」
「そうだなー……。 じゃあ、こうらの化石で」
 地図を開いて、グレンタウンを調べる。マサラタウンからが一番近いけれど、生憎あたしは水ポケモンを持っていない。泳いで行くわけにもいかないから、しばらく復元はお預けだ。
 ごたごたしてたら、いつの間にか出口まで来ていた。外に出ると、満月が美しい。
 静かな夜だ。



 正しさなんてもの 人の物差しによって変わる

 ロケット団。
 あたしがその名前をきちんと聞いたのは、ハナダに行ってからだった。
 ジム戦をするために訪れたそこは、何と強盗に入られていた。盗まれた物は確か、技マシンだったと思う。
 そんな物盗んで、どうするんだか。
 その後、何だかんだで黒い趣味の悪い服を着た男と対峙したあたしは、そいつをバトル(と物理)でボコボコにしてやった。
 かなり特徴のある話し方をする男だった。カント―の人間じゃないらしい。何か……。イッシュ地方とかいう、海の向こうの出身だと聞いた。
 面倒なので警察には引き渡さなかった。盗まれた物を取り返せただけでも、満足したし。
 ただ、これで終わりじゃなかった。
 
 二番目、三番目とバッジを手に入れたあたしは、シオンタウンという街へたどり着いた。ここは、親父が言っていた『別の意味で寒気がする街』だ。
 確かに言われた通り、妙に肌寒く感じる。その理由が、ポケモンセンターにいた女性の話で分かった。
 ここは、ポケモンタワーという、ポケモンのお墓がある街なのだ。不謹慎かもしれないが、やはり未練を持って死んだポケモンもいるのだろう。
 きちんと供養されても、どうしても捨てきれない何かがある……。
 ポケモンだって機械じゃないし、そういうこともきっとあるだろう。
 
 ポケモンタワーには、ゴーストタイプが生息しているらしい。扱いは難しいが、上手くいけばトリッキーな戦法で活躍してくれるゴーストタイプ。
 一匹は欲しい所だ。まだカーネルと……リザードしかいないし。
 だが、そうは問屋が卸してくれなかった。
 何故か……本当に何故か、そこはロケット団に占拠されていた。
 墓荒らしでもしてるのかと思ったら、違った。
 ここにはゴーストタイプ以外に、カラカラというポケモンが生息しているらしい。それで、このカラカラが被っている頭の骨は、裏ルートで高く売れるそうだ。
 つまり、金儲けのためだけに、ここを占拠してカラカラを襲っているというわけだ。
 一人下っ端団員を捕まえたあたしは、それを聞き出して吐き気がした。こんなに吐き気を催す邪悪にあったのは、多分生まれて初めてかもしれない。
 だけど、トラブルの元はそれだけじゃなかった。
 何と、そのタワーには幽霊が出るという話まであった。最初はてっきり、ロケット団が一般人を寄せ付けないためだけに作った噂話かと思ったんだけど……。
 出た。本当に、あたしは見た。
 おかげでみっともない醜態を晒すことになってしまった。やだやだ。

 そこで、一匹のはぐれゴースと出会ったあたしは、道案内をしてもらうことになる。そいつは周りに馴染めず、いつも一匹でいたらしい。
 でも、あたしが持っていた音楽プレーヤーに興味を示したようで、自ら道案内を買ってくれることになった。
 ……いざバトルになると、逃げ腰になるけど。『おくびょう』なのかもしれない。ま、良いけどね。
 さて、上の方に行くにつれて、だんだん空気が冷たくなって来た。霊感がないあたしでも分かる。

『何かいる――』

 冷たい空気と共に、それは現れた。子供に描かせたら、こんな感じになるだろうな……。そんな姿だ。
 攻撃しようとしても、相手は幽霊。実体がない上に、カーネル達も怖がって技を出せない。
 おまけにゴースが全く役に立たない。ゴーストタイプが幽霊にビビッてどうすんの!
 だが、ここで転機が訪れる。
 騒ぎまくってたあたし達の前に、上からロケット団の下っ端がやって来た。どうやら、騒ぎは上にまで響いていたらしい。で、業を煮やした上司に言われて様子を見に来た、と。
 ……いや、その騒ぎの現況を殺してしまえ、的なイントネーションだったのかもしれない。現にその下っ端は、人の一人でも殺してそうな面構えだった。
 しかし彼も運が無かった。
 階段を下りてきた途端、転んだあたしの下敷きになってしまったからだ。
 華の女子高生(十六歳!)の下敷きになるなんて、男としては喜ばしいこと……でもなかったようだ。まあ、その瞬間相手は気絶していたから、話は聞けなかったけど。
 男はおでこにゴーグルのような物を装着していた。そういえば、ロケット団は幽霊騒動に悩まされなかったのだろうか。ポケモンの攻撃が全く効かないなら、当然彼らが使うポケモンも使えないということになる。
 もしかして、とあたしはそのゴーグルをぶんどった。途中、ブチブチという音がしたような気がするが、気にしない。
 少し躊躇った後、レンズの部分だけ目に当てる。
「……!」
 レンズを通してみた幽霊は、以前図鑑で見たことのあるポケモンに、よく似ていた。そしてその瞬間、あたしは全てを悟った。

 この幽霊は……。ロケット団に殺されたカラカラの、肉親だと。

―――――――――――
 好きな曲の歌詞に合わせて書いてみたその一。
 まだまだ続く。
   


  [No.3421] 鋼氷の王 投稿者:きとら   投稿日:2014/09/29(Mon) 20:49:46   101clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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最初にいいますごめんなさい。
かきかけ、なるべく全年齢が読んでも大丈夫なように削ったはずだけどところどころエロが容赦なく入ります。



 アイルー達に連れられて来た部屋は広かった。石の壁は冷えていたが、暖炉がそれをかき消していた。ハルカはベリオロスの暖かい寝巻きを今一度掴み、暖炉へ手をかざした。
 ユウキはどう思っているのか。連れ出してと泣いて頼んで迷惑だっただろう。領主の花嫁になれば家族は金とたくさんのケルピやポポを領主から貰え、飢える心配なんてなくなる。それだけが頼りだ。
 夜も遅く、結婚式の疲れもあって手触りのよいシーツをめくった。これからここでずっと暮らすのだ。氷の領主と呼ばれたダイゴの妻として。アイルーもいる、氷の領主を象徴するクシャルダオラもよく見れば可愛らしい。きっとそんなにさみしいことはない。
 扉が開いた。同じようなベリオロスの寝巻きをまとったダイゴだ。ベッドの中で思わず身構える。目は相変わらず冷たい。氷のようだ。
「何を身構えてるの? 脱ぐんだよ」
 突然のことにハルカはダイゴを見つめたまま固まっていた。ダイゴはすでに寝巻きを椅子にかけ、筋肉質の体を見せていた。そしてハルカのいるベッドに近づく。一歩がハルカの死刑を宣告していたようにも思えた。
「いくら生娘でもわかりそうなものなのにね」
 穏やかな口調、整った顔立ち。それらは全て凍てついた視線で相手の心を止めた。


 疲れや営みのダメージもあって、ハルカは食事の時間ギリギリに起こされた。アイルーがテーブルにつくにふさわしいウルクススの部屋着を持ってきてくれた。これも手触りがよく、今みで触れたこともない。やはり領主の妻になったことは現実なのだ。
「田舎娘は朝が早いと聞くが、ずいぶんと寝坊だな」
 席につくなり、ダイゴは言った。誰のせいで、座るのも辛いほどの痛みに耐えてるんだとハルカはダイゴを見ることをしなかった。
「今日は仕立て屋が来るから、アイルーとともに服を選ぶがいい。領主の妻にふさわしいものをアイルーによく聞いて選んで」
 広い食卓に並んだ朝食は豪華だった。夜のこともあり、食欲もなかった。ダイゴに促され、パンを一切れつかむ。逆らえない。氷の領主には誰も逆らえないのだ。

 血の染みが広がっているシーツは消えていた。寝室には新しいシーツがシワなく揃えてある。アイルーたちの働きぶりはため息が出る。いまもハルカに当てられた部屋に掃除にきたアイルーとすれ違った。
「奥様、お掃除終わるまで待っててニャ」
「ねぇ」
「何かようかニャ?」
「どうしてみんなあんな冷たい領主のところで働いてられるの?」
 アイルーはさも当たり前かのように隅々まで掃除をして、そしてダイゴに当たり前のように忠誠を尽くしている。ハルカにはそれが信じられなかった。
「旦那様は、国からも見捨てられた領地を守ろうと必死でがんばってるからニャ。最初は冷たい人だと思うかもしれニャいけど、本当の旦那様を知ったらきっと幸せニャ」
 あんなに乱暴なことをする人のことなど知りたくない。本当は結婚などしたくなかった。けれど逆らうことは出来ず、断れば家族ごと処刑されただろう。ハルカは領主に差し出された貢物なのだ。ダイゴはハルカの何を気に入ったのかわからない。けれど恋人とまで自覚してなくても、将来なんとなく結婚するんだと思っていたユウキを目にした瞬間、ダイゴの顔が少し変わった気がした。仲良い恋人を引き裂くことが楽しみだったのではないか。昨日の愛を全く感じない行為や、食事の後すぐにどこかへクシャルダオラと共に装備を整えて行ってしまったりするのを見ると、ハルカには興味が元々ない。あるのは、ユウキと関係を引き裂きたい衝動だったのではないか。
 掃除アイルーがいなくなり、ハルカは広い部屋に一人になった。暖の近くに行き、することがないことに気づく。城を探索することにした。
 広くて声が響く。アイルーたちがすれ違いざまに挨拶をしてくれる。忙しそうにしていた。
 客間やパーティを行う広間、キッチンなど今までの生活では考えられない広さの城。ここにダイゴは他の人間を入れず、アイルーたちとクシャルダオラと共に住んでいた。一人で何を思っていたのか、ハルカには分からない。
 まだ訪ねてない部屋に来た。ダイゴの書斎だ。アイルーが止めた。掃除以外で勝手に入ると怒ってご飯抜きにされる、と。でも今はダイゴはいない。見つかる前に出ていけばいいのだ。ハルカは興味本位で入った。
 天井まで届く本棚と、ぎっしり詰まった分厚い本。どれも政治や農業などの本のようだ。薄いものは机にあり、よく使うと思われる本にはしおりが挟まっていた。ハルカはその本を手に取ると、最初から読み始める。その内容が領民の幸福といった内容の本で、ハルカはどこか心の中で笑い飛ばした。その本の内容は意外と面白く、すぐに読めてしまった。そしてその下にあった本に手を伸ばす。寒冷地の栽培法を紹介した本だ。ハルカも実家で同じような栽培をしていたし、オーロラ草を見つけては売って小遣い稼ぎをしていたので何だか懐かしい。
 実家では父も母も貧しいながらすごく仲良くて、優しかった。父が母を見るような優しさをダイゴは持っていない。領主様に見初められたと嬉しそうな父、たくさんの花嫁道具を持たせてくれた母。まだ何日も経ってないのに、急に会いたくなる。帰りたい。ハルカはその場でうずくまり、涙を流した。
 背後でぎぃ、という音がした。振り向くとダイゴが立っていた。目があった瞬間、ハルカはアイルーの言葉を思い出した。けれどダイゴの氷の視線に何も出来ない。
「勝手に入るなとアイルーに言われなかったのか……」
 ダイゴは静かに言った。ハルカに着ているものを全て脱げと。室内で暖炉があっても全裸ではかなり寒い。
「ごめんなさい、もう入りません」
「……出て行ってくれ」
 入り口ですれ違った時、氷の像に近づいたのかと思うほどの冷気を感じた。

 その日の夕食は肉料理中心だった。子をなすことを期待されていて、しかもダイゴのおもちゃのように扱われる。ハルカの顔つきは暗かった。
 寝室に行けば地獄の時間が待っている。けれど夜はそこしか暖はなく、湯上りに軽いローブを羽織ったままハルカはベッドに横たわった。そのうちダイゴが来るだろう。
 扉が開いた。ダイゴが来たのだ。身構えた。目を閉じて、苦しい時間さえ耐えれば朝が来る。体の中を貫かれるような衝撃と共に、いまだダイゴを拒むかのように痛む。
「まったく……まだ痛いのか」
 ダイゴは呆れたように言い放った。泣き出す寸前だったハルカの心は触れてはいけない境界を破ったようだった。
「貴方は、私のこと愛していない!ただ性欲ぶつける相手で!領主だからって何が偉いのよ!」
 ダイゴの顔つきが変わった。殺されるかもしれない。けれどハルカは怖いよりも、怒りが強かった。自分の体をもの扱いされた怒り。恋人と引き離された怒り。全て爆発してダイゴに向かった。
「領民のため、ほとんど食料政策に走り、豊かな領地から頭を何度も下げて、ようやく冬を越せるのは誰のおかげだと思っている?政略結婚さえ断られるような貧しい雪の国で飢え死にしたければするがいい。だがしたくないだろう?君の両親も冬を越せるかな。君がいますぐ謝るのならそれもありだ」
 ハルカはガンとして譲らなかった。ダイゴを睨みつけた。その態度にダイゴもベッドの脇においた剣を抜いた。クシャルダオラで作られた氷の剣。初めて会った時にダイゴが携帯していたものだ。その刃先をハルカに向かって振り下ろした。
 羽毛が舞い、シーツが切られる。ハルカの髪が少し切られた。おそるおそる閉じていた目を開けた。
「根性あるね」
 ハルカのほおに剣の冷気を感じた。
「こんなに君を愛してるのに、何が足りないのかい?一目会った時から、君をずっと愛してる。もう食料のため野山を駆け回ったり、病気の心配だっていらない。これ以上何が欲しいんだい!」
「……貴方の子なんて、産みたくない」
 ダイゴは黙ってハルカから離れた。剣を抜き、鞘にしまう。
 殺されることはなかったが、これではもう家に返されるだろうし、実家はタダではないだろう。怒りがあったとはいえ、軽率な発言にハルカは今更怖くなった。羽毛だらけのベッドの中で震えたのは寒さのせいだけじゃない。


 翌朝、食事の時間の沈黙が重かった。ダイゴには何も言われず、アイルーたちも空気を察してか何も言わない。時間だけが過ぎた。
 部屋にこもった。ダイゴは特に何も言わなかった。掃除にきたアイルーに、ハルカは話しかける。
「昨日、領主様にひどいこと言っちゃったんだ。どうしたらいい?」
「ニャ!?それで旦那様はあんなに落ち込んでいたかニャ……」
「よく考えたらさ、領主様が何をしてるのか私は何も知らないよ」
「奥様、文字が読めるなら領主様のところの本、読んでみたらどうかニャ?あ、でも旦那様は部屋に入ると怒るニャ……」
 ハルカは部屋を出てダイゴの書斎へ向かった。中にはダイゴがいた。入るなと冷たく言った。それに構わず、ハルカはダイゴの椅子の隣まで入ってきた。跪き、ダイゴを見上げた。
「領主様、昨夜は興奮してたとはいえ、大変無礼なことを申し上げました」
 ダイゴは黙ってハルカを見た。
「許してもらえるなど思いません。ただ、私は領主様にいただいたものを否定してしまっ……」
「それで僕に何をして欲しいんだい?」
 詰まってしまった。考えてなかったわけでない。ただ普通に愛してほしかったのだ。領主の愛人になったわけではなく、ダイゴの妻になったのだ。夫に妻として愛してほしかった。
「……私を」
「君を?」
「愛してください。お願いです。苦しめないでください。痛いこともしないでください」
 感情が高ぶり、最後は涙がかった声でダイゴに懇願した。
「僕はね、君の苦しむ顔が見たいんだよ。僕が与えた苦痛に耐えてる君に僕への愛を感じるんだ」
 歪んでる。なぜこの人の妻になったのだろうか。ハルカは絶望するという気持ちを味わった。ハルカを支配する存在がダイゴだ。それは使役される動物と同じだった。


 ダイゴが、どんなにいい領主でも限界だった。毎晩、ハルカを虐げ、体には傷跡が残っていた。その傷跡をみてダイゴはますます嬉しそうにハルカを虐げた。
 ダイゴはハルカに何でも与えた。衣服も食事も、時には上等なものを一番に与えた。そして言うのだ。愛してる、と。
 いつしかダイゴに触れられることも苦痛となり、夜以外は顔を合わないように避けて通るようになった。異常な新婚一年目の夫婦は、それでも生活を続けた。特にダイゴはハルカへの興味もあったが、それ以上に冬を越せる準備に忙しい。備蓄の食料を全領民が用意できるわけでなく、配布するための食料も含めて。
 初雪が降るのは領地の中で最も早く、城の窓からちらつく雪をみて、ハルカは去年の今頃はユウキと野山に入って野生のポポを狩ったことを思い出す。ギアノスに追いかけられて弓も当たらなくて……ハルカはいつの間にか泣いていた。両親に会いたい。ユウキに会いたい。手首には縄の跡が、服の下にはやけどの跡もあった。
「奥様ー!」
 アイルーが探してる。ダイゴが出かけていたが、客が来たようだ。教えられたように対応するだけだ。ハルカは階段を降りて入り口に向かった。
「奥様、お久しぶりでございます、なんてな!」
 嘘かと思った。ハルカはその姿を捉えると駆け下りた。ユウキだ。ユウキが辺境の村から来てくれたのだ。懐かしさと嬉しさで、外套を着たままのユウキに抱きついた。
「元気そうだな。痩せたみたいだけど。領主様のお城でけーな!」
「ユウキ、ユウキ!ユウキー!」
 少し会わない間にかっこよくなったように感じた。

 客間に通して、アイルーに何か出すように言った。ハルカが結婚してからの村の様子とか、今年はポポがたくさんいるから狩りに行かなくてもよさそうなこととか、その代わりティガレックスが多くなったりしてハンターが増えた話とか。懐かしい話にハルカはダイゴと話す時よりもずっと楽しかった。両親からの手紙も預かってるとユウキから渡される。
「ハルカへ。領主様と仲良くやれてますか。迷惑かけてませんか。こちらはいつもより豪華に冬を越せそうです。あまりわがまま言って困らせてはいけませんよ。領主様はみんなの幸せを考えてくれてます」
 ハルカがダイゴから受けたことを言っても誰も信じてくれないだろう。ハルカは手紙を置いた。
「二枚目読まないの?」
「……うん」
 促されてハルカは二枚目をとった。
「どんな立派な領主様でも、ハルカは大切な一人娘です。辛かったらうちのことなんて考えないで帰ってきなさい」
 ユウキがみてた。アイルーにわからないように紙を差し出す。
 知っていたのだ。みんなダイゴの元に来たハルカが幸せにならないこと。領主へのお礼の名義でユウキはハルカに会って、前より痩せた体を見た。どんなに取り繕ってもずっと一緒だったのだから、わからないわけがない。
 これはチャンスだ。ダイゴから逃げる一度だけの。アイルーに聞かれない手段で。
 その時、ハルカはダイゴの部屋で読んだ本や手紙を思い出した。ダイゴはいつも国王や他の領主へ食糧援助の代わりにハンターを派遣する手紙を書いていた。夏が短く、収穫する穀物もろくに取れないこの地に住む人たちを守ろうとしてる姿が浮かんだ。
「大丈夫、だよ。領主様にはよくしてもらってる」
「……そうか。あ、そうだ村にハンターが来てから武器が少し強くなってさ、ハルカの弓も強化できたんだぜ」
 ユウキは緑色に折りたたまれた弓を置いた。これを持って雪山をかけたのだ。短い夏に現れたリオレイアを倒した時に作った炎の弓。ハルカは手に取った。
「今日はありがとう。村からここまで大変だったでしょ。よければ持って行って」
 ハルカが渡したのは、ここに来てから編んだ手袋だ。ユウキは受け取ると城を後にした。

 ポポが引く車から、ダイゴは外を見た。まだ冬が始まっていないのに、食糧の高騰が始まっている。貧しいものから飢えていく。この現状をなんとかしなければ……国王に援助をこれ以上求めて節約せよと言われただけだった。
 空腹など慣れた。食べずにこの辺りで取れる茶だけで過ごすこともあった。それでも食糧が足りない。何か資源が見つかればそれなりに食糧だって生産することができるのに。
 親子連れが目に入った。親は子供の手をつないで、子供は親に楽しそうに話しかけていた。
「誰も僕を抱きしめてくれない」
 親でさえ抱きしめてもらった記憶がない。せめて生きてる間に、食べれなくても親に抱きしめてもらいたかった。
 どうしてあの日、ハルカを妻にしたいと思ったのか。豊かな領地の娘との縁談を笑い飛ばされた後だったからなのか。けれど何と無く母を子供にしたような雰囲気があったように思えた。そんなことはないのに。彼女は彼女なのに。でも同じようにダイゴを抱きしめてくれる存在にはならなかった。
「誰でもいいのに」
 誰でもいい。努力を認めてほしかった。ダイゴの代になってから少しではあるものの、豊かになったこと。食糧が足りず、責め立てられ続けて、人間は側に置きたくない。けれど認めてもらうのはアイルーではなく人間でなければならない。
「……何が食べたいだろうか」
 ハルカのことが浮かぶ。せめてハルカだけは食べさせていかなければいけない。他の領地であればもっと豊かな食生活を送れたのだし、服も装飾品も贅沢が出来たのだ。
 愛してくれないとハルカは言った。けれど本当はダイゴがそれを言いたかった。月日が経てば愛してくれるようになるのかと思っていたが、ハルカはどんどん離れていくように感じた。焦れば焦るほど、ダイゴは彼女にきつくあたっていた。
「明日、使者が帰ってくるはずだ」
 南方の領地への救援の手紙だ。冬は厳しいが、その代わり秋の実りが多い。少し違うだけでこんなに世界が違うとは。なぜこの地に生まれ、領主として生きねばならなかったのか。本当ならば、全てから解放されて、理解してくれる夢に抱かれたい。

 ダイゴが帰る。ハルカの姿がなかった。倉庫代わりの部屋にいると言われ、様子を見に行く。ぎぃっと弓を引き絞る音、そして離れて的に命中する音。そうだ。ここに来る前、彼女はそうやって獲物をとっていたと言っていた。防具も揃え、ハンターと見分けがつかない。
「おかえりなさいませ」
 弓を折りたたみ、ダイゴを見た。
「それで何を狩ろうというのかな」
「まだ麓にはケルピがいますから、ケルピの毛皮や肉を」
「そんな危険なことさせられない」
「少しでも食糧不足に備えたいのです。それにアイルーたちも一緒に言ってくれます」
「そう」
 何を思いつきでやろうとしているのか。武器を持って野山をかけて。もしかしたらそれでダイゴを射殺すつもりだろうか。いきなり武器など持って、怪しいものだ。ダイゴはそのまま書斎に行った。
「領主様のお手伝いできたら、少しは愛してくれるかな」
 ハルカはまだダイゴを信じていた。両親からの手紙とユウキに会ったことで、一生ダイゴと暮らす覚悟をしたことを思い出した。そして弓でダイゴを守る新たな決意もした。もし、この弓で出来ることが増えれば、可愛がって愛してるくれるような気がした。
 その日ダイゴはすでに寝ていた。疲れたかもしれない。ハルカは話しかけたが、帰ってきたのは寝息だった。
 久振りに弓を引いた。もう少し練習してから休もうと寝室を出る。
 まだアイルーが起きてるようで、話し声がする。食堂のドアを開けた。
 ハルカは声が出なかった。アイルーと思われた話し声は、見知らぬ男だ。目が合った瞬間、泥棒だとわかったものの、体が硬直したように動かなかった。
 泥棒の方が対応が速かった。ハルカの腕を掴み、体ごと引き寄せて大きな手で口を覆った。暴れてもハルカの力ではビクともしない。
 


  [No.3422] パラレル・オブ・ザ・レディ(短編集2) 投稿者:WK   投稿日:2014/09/29(Mon) 20:56:16   97clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 ※ちょっとアレな表現あります














 枯れ行く命よ 儚く強くあれ 無慈悲で優しい 時のように

 この屋敷内に、『人の形をしたモノ』は数あれど、『人そのもの』は、一つしかない。
「用心棒なんて、雇う意味あるのかしら」
 ルージュは内心、そう思っていた。口に出して呟くことはしなかった。そんなことをしたら、ネロのことだ。何処かでこっそり聞いていて、マダムに告げ口する……なんてこともあるかもしれない。
 そうなれば、明日のディナーの材料が自分になることなんて、分かり切っていることだ。別段、自分の肉体がマダムの血となり骨となり、生きる糧となるならば、ルージュは喜んで自分の首をナイフで切り裂くだろう。ご丁寧に、ネロに血抜きのやり方のメモまで遺して。
 しかし、その体がマダムだけではなく、ネロや黄昏の子供達にまで行き渡るというのなら、話は別だった。
 自分の肉体は、マダム・トワイライトのためだけに存在する。死ぬ時は、彼女に喰われて死にたい。
 常日頃から、そう思っていた。それくらい、ルージュのマダムに対する忠誠心は厚いものだった。
 それでも、今回の用心棒雇用には、些か疑問を抱いた。
 この広い屋敷に使用人と呼べる者は、二人しかいない。ルージュとネロだった。ルージュは料理長で、ネロは料理以外の全ての雑事を賄っている。時折黄昏の子供達にも手伝わせるが、彼らは加減を知らない。
 ガラスを割ったり、箒を折ったり、壁紙を破いてしまったり。挙句の果てに、マダムのコレクションが詰まった部屋のドアを半壊させたこともある。
 その時ばかりは、流石のマダムも怒りに怒った。ルージュ達が止めたが、あともう少しで屋敷が全壊するところだった。
 その一件でルージュは左足を失い、ネロは右手を失った。後にマダム自ら義足を造らせたので、全く支障はないが。
 さて、それから考えたのかは分からないが、マダムが新しく使用人を入れると言ってきた。使用人と言っても、美しいものではない。
 用心棒――金で動く人間だった。
 この黄昏屋敷に、何か敵意を持って侵入した人間は、その日のうちにディナーのメインディッシュとして出されることになる。どんな武器を持っていようが、ルージュとネロ、そして黄昏の子供達の前では無意味だ。
 それはマダム自身もよく知っているはずだ。
 それなのに。
「マダムは私達の力にご不満なのかしら」
「それは違いますよ」
 ビクッとして振り向く。ネロが立っていた。いつもの燕尾服に、モノクル。髪はしばらく放置されて酸化した血の色。
 何時の間に……。
「レディーの背後に音もなく立つなんて、なってないんじゃない?」
「申し訳ございません。 マダムのご命令通りに動いていると、どうしても癖が出てしまうのです」
「……まあいいわ。 それより、アンタ今回のマダムのお考え、真意のほどは理解しているの?」
「ええ」
 何の躊躇いもなく返って来た答えに、ルージュは多少面食らった。が、すぐに態勢を立て直し、いつもの口調で話しかける。
「そうなの。 じゃあどうして用心棒を雇ったのか、アタシに教えてくれるかしら」
「それはいけません」
「……何ですって?」
「マダムから言うなと、固く口止めされております故」
 マダムの命令とあれば、何も言えない。いや、もしかしてこいつ、それを知った上でマダムの名前を出したんじゃ……。
 疑惑の念に駆られるルージュとは裏腹に、ネロは涼しい顔をしている。
 ふと、二人の耳が同時に動いた。
 本邸をぐるりと取り囲む、約一キロの門。バラの蔓が絡みつき、シーズンになれば見る者全てを感嘆させる『薔薇の門』となる場所。
 その入口に、誰か来たようだ。
「……知らない気配ね」
「いらっしゃったようですね」
「は?」
「用心棒ですよ。 マダム直々のご命令で、そのまま本邸まで通せとのことです」
「……本気?」
「ええ、もちろん」
 ルージュは肩を竦めたが、おもむろに肉切り包丁を取り出すと、テーブルの上で研ぎ始めた。
「その用心棒って、男なの? 女なの?」
「女性だと聞いております」
「……そうなの。 じゃあ、早いところ回収しないと、彼らに食べられちゃうわね。
――彼らは、柔らかい肉が大好きだから」
 コンロの火にかけられた鍋の中で、ブイヨンがくつくつと煮えていた。

一方、いくらインターホンを押しても誰も出てこないことに痺れを切らした用心棒は、門を飛び越えて庭の中に入っていた。
天気は昨日降った雨の影響で、未だに曇り、霧まで出ている。クトゥルフ神話では、霧の中から化け物が出て来て人を食う、という伝説があるという。
庭はとても広かった。草木は美しく手入れされ、今の時期は桜が冷たい風に散らされて花びらの道が出来ている。
柔らかく冷たい花びらの道を、裸足で歩く。時折花びらが引っ付いて来るが、気にしない。
少し肌寒さを感じ、彼女は息を吐いた。流石に白には染まらないが、それはゆっくり上空へと上って行く。
 不意に。
 霧の中で蠢く影があった。
 一つではなかった。二つ、三つ……。いや、それ以上が、ぐるりと彼女の周りを囲んでいる。
(匂う、匂うぞ)
(生娘の匂いだ)
「……!」
 霧に紛れて、赤い目が幾つも浮かび上がる。普通の人間ならば、ここで悲鳴を上げるか、尻もちでもついていただろう。
 しかし、彼女は悲鳴も上げなければ、尻もちもつかない。その二本の足は、しっかりと地面を踏みしめている。
 いつの間にか、彼女の周りには身の毛もよだつような怪物達が集まっていた。皮膚がぼこぼこに変化しているもの、よく分からない液体を口から垂れ流しているもの、目が全身にあるもの……。
(久々に柔らかい肉が食えるぞ)
(俺は足だ)
(俺は首だ)
 彼女が腰に付けていた日本刀を抜いた。

「行くぞ」

 テラスには、既に大理石のテーブルとイス、そしてクッションが用意されていた。足元には電気ストーブまで設置されている。
 一人の少女が、テラス席にやって来た。十二、三くらいだろうか。ふわふわの金髪に、シンプルだが上質な素材を使ったワンピース。
 何処からともなくネロが現れ、彼女に椅子をすすめた。
 そのままボスンと座ると同時に、アフタヌーンティーの用意が目の前のテーブルに置かれる。
 紅茶とケーキ、スコーンにプチフール。マカロンにドラジェ。
 色とりどりのケーキを、彼女は品定めするように選んでいく。
「あの用心棒は、どうなっているかしら」
 幼さが残る声。聞く者全てを服従させる、魔性の声。
 ネロは静かに答える。
「十分ほど前に、門を飛び越えたのを確認しました」
「そう」
「……ここまで辿りつけるでしょうか」
「そうじゃないと、面白味がないわ」
 ドン、という音がした。続いて、土煙が上がる。ネロがテラスから身を乗り出し、下を見る。
 玄関の支柱の片方に、何かが叩きつけられたようだ。それも、ものすごい力で。
「……」
 やがて、土煙が晴れた。そこにいたのは、あの異形の物達だった。
「これは……」

「随分派手なお出迎えだ」

 ネロが振り返った。
 少女が座っている席の向かい側。もう一つ、椅子がある。
 そこに一人の女が座っていた。
 髪はプラチナブロンド。上はバッサリと切り上げ、下だけ長く伸ばし、編み込みにしている。
 服はおよそこの場に似つかわしくない、Yシャツと黒いスキニーパンツ。
 しかし、その服が全く気にならないくらい、彼女は美しかった。
「一体どこからお入りに……?」
「上から」
 当然、という口調で返す彼女に、ネロは何も言えなかった。反対に、少女が口を開く。
「それでこそ、うちの用心棒に相応しいわ」
「あれは、アンタのペットか」
「まあね。 可愛いでしょう?」
「全滅させたよ」
 三人の間を、冷たい風が吹き抜けていく。
「……よく倒せたわね」
「図体がでかいだけで、頭は空っぽだったからな」
 少女が立ちあがった。身長百五十センチ近くしかない彼女と、百六十以上ある彼女。
 自然と、見上げる形になる。
「貴方、名前は?」
「……レディ・ファントム。 周りは皆そう呼ぶ」
「じゃあそれでいいわ。 レディ、貴女はたった今から、うちの用心棒よ。 もちろん、報酬は好きなだけ出すわ。 ただし、変なことしたらディナーのメインディッシュになるからね」
「どうぞご勝手に。 私の肉なんて、食べても不味いと思うけど」
 それだけ言うと、レディは再び屋根へ飛び移ってしまった。
「……むかつくわ」
 少女――マダム・トワイライトが顔を顰めた。


 
 骨の髄まで 染まってもまだ それだけじゃ 物足りないの

 斬り合え、骨の髄まで――

 レディ・ファントムには師匠がいた。もう何年も昔のことだ。
 様々な組織を転々とし、あらゆる仕事をして金を手に入れて来たレディ。用心棒はもちろん、情人にもなったし、敵対する組織を壊滅させたことがある。
 その評判が裏に響き渡り、一つの組織に留まるのはごくわずかになった。良い条件を提示されれば、たとえ別の組織の用心棒をしていたとしても、簡単に裏切った。
 若さ故の無鉄砲さ。十代の小娘のすることだ。今考えると、よく死ななかったなと若干驚く。
 そんな時だ。
 レディの腕を聞きつけ、手合せしたいという男が現れた。
 今までも、組織の命令で腕に自信のある者と闘って来た。負けた者は、使える部分だけを取り除いて、捨てられる。
 もちろん、レディは一度も負けたことがなかった。誰もがレディが負ける所を見たがっていたようだが、その悪趣味な願いは一度も叶わなかった。
 その時、レディは珍しく何処にも属していない、フリーの状態だった。そこを狙ってきたのか、男は水浴をしている彼女の元へ現れ、勝負をしたいと告げた。
 下半身は水に隠れていたとはいえ、上半身は何も付けていなかった。普通の男ならば、その美しさに我を忘れて飛びかかろうとしただろう。そして、物言わぬ骸にされていたに違いない。
 だが、男はただ、手合せすることだけを望んでいるようだった。その他のことには一切興味がないように見えた。
「……私の評判を聞いたのか」
「“とてつもなく強い”というだけだな」
「ま、いいけどね。 ……アンタ、名前は?」
 男は答えなかった。面倒な挑戦者が来たな……と、レディは肩を竦めた。

 当時、レディはまだ十代後半だった。だが、どんな相手にも負けたことがなかった。
 年下、同い年、年上――。それらを容赦なく倒してきた。
 その男は、外見は三十代後半に見えた。ぼさぼさの髪に、髭面。それなりに整った顔立ちをしているが、大分薄汚れた格好をしている。
 レディは、その男に今までの挑戦者にはない物を感じていた。違和感、といえばいいだろうか。
 決闘は、誰の邪魔も入らない荒地で行うことになった。茶色い岩肌がむき出しになった、植物が一切生えていない場所。
 相手が持っていた日本刀を、鞘から抜いた。
 瞬間。

 レディは、今まで感じたことがないくらいの恐怖を抱いた。
 
 “命を懸けて戦った”ことは、今までない。それをするほど、相手が強くなかったからだ。
 大抵の相手は、目を瞑ってでも勝てた。
 だが、この男は――。
「どうした」
 男の声が聞こえた。レディを嘲笑しているようにも見えた。普段なら怒り狂っているところだが、この時はそんな余裕はなかった。
 相手から醸し出される、圧倒的な恐怖。
 幻か、催眠術の類か。
 足元に、大量の白骨が散らばっているように見える。
 だが、そこで一つの疑問が生じた。これだけ人を斬っているのなら、自分の耳にもその噂が届いているはずだ。
 自分の知る限り、そんな人斬りの話は聞いたことがない。
 ――まさか。
「怖気づいたか」
「……いや」
 一度はその恐怖に圧倒されかけたが、流石に場数を踏んでいない。レディはすぐに態勢を立て直した。
「随分と……恨まれているみたいだと思って」
「俺の腕に見合う奴がいなかっただけの話だ。 ……身の上話を語る状況でもないだろう。さっさと始めようじゃないか」
 この時、レディは確信していた。
 この斬り合いは、今までで一番壮絶な物になるだろう、と……。

 予感は当たった。
 その日、レディは生まれて初めて敗北した。
 経験値、剣技、体力。そして機転。
 全てにおいて、男の方が圧倒的だった。
 血にまみれ、息も絶え絶えになったレディに、男は言った。
「お前でもなかったか……」
「……」
 声を出す気力もなく、レディは自分の死を悟った。自分は、この男によって息の根を止められるのだと。
 今までの人生を振り返る。生きて来た時間は、長いとはいえないだろう。だが、あらゆる意味で濃い人生だった。
 何人もの命を断ち、裏切ってきた。
 それが当たり前になっていた。命を懸けて斬り合うことなど、なかった。そんな意味のある斬り合いなんて、なかった。
 ……自分は、ここで死ぬのだろう。

「……光が、消えないな」

 男の声がした。
 レディは気付かなかったが、死の間際の彼女の目には、未だに光が消えていなかった。その瞳は濁ることなく、むしろぎらぎらと光っている。
 生に執着するように。まだ死ねないと訴えるように。
「……お前は、亡霊の類を信じるか」
 男が話し始めた。満身創痍のレディは、聞き取る余裕もない。息荒く、男の顔を見つめている。
「亡霊というのは諸説あるが、死んだ人間の未練が形を成した物だそうだ。 死してなお、満たされない欲望が、人をこの世に留まらせるらしい」
 ごほっ、という音がして赤い飛沫が散った。
「いくら斬っても満たされぬ、この乾き……」
 だんだん意識が薄れていく。逆光で真っ黒な男の顔が、どんな表情をしていたのか。

「お前を生かせば、それを満たしてくれるのか?」

 次に意識を取り戻した時、レディは薄暗い洞窟の中で横にされていた。あの男が手当したのだろう、体には包帯が巻かれている。
 そして、その後レディはその男を師として仰ぐこととなる。数々の斬り合いを乗り越え、やがて彼女は“幻の刀”の存在を知る――。

 それを巡り、鋏男の一族と争うことになるのは、また別の話。


 幻の手

 ルージュの仕事の一つに、使用人の賄い食を作ることがある。ネロや黄昏の子供たち、そして用心棒であるレディに、その日の食材を使って食事を作るのだ。
 その日の昼食は、ロールキャベツ、林檎と胡瓜のサラダだった。ゲテモノ食いと称される彼女でも、このような料理は作れる。何せ、かつては料理の女王とまで呼ばれていたのだから。
 どんな食材も、誰もが口を揃えて『美味しい』と言う料理にしてしまう。全世界から賞賛され、数えきれないほどのレストランからシェフになってくれ、と頼まれた。
 しかし、そこに彼女が作りたいと思う料理はなかった。
 創作料理で地位を築き、また彼女が一番得意とする物が独自で作る料理だったことから、誰かに依頼されて作る料理はあまり得意ではなかった。
 そこから、彼女は自分の店を持とうと思った。
「……よし」
 自分を含めた分の料理を作り終え、ルージュはネロを呼んだ。
 黄昏屋敷には、百を超える部屋がある。使用人たちはそれぞれ休息の部屋を与えられているが、ほとんどは自分が一番過ごしやすい場所にいることが多い。
 たとえば、子供たちは屋敷全域を走りまわっている。
 ネロは、マダムに付き添って彼女が行く場所にいる。
 レディは、あの広大な庭の何処かにいることが多いらしい。らしい、というのはネロから聞いた話で、ルージュ自身は全く彼女と接触したことがないからだ。
 あの庭にいるマダムの『コレクション』を全滅させたというのに、マダムは彼女を用心棒としてそのまま雇い入れた。下種な話になるが、かなりの金額を提示されてそれを払ったという話だ。
 初めて顔を合わせた時、不覚にも美しいと思ってしまったのは恥ずかしい話だ。あの姿なら、用心棒だけでなく、別の仕事もしていた可能性がある。
「お呼びですか、料理長」
 呼び出してから、わずか三分ほどでネロはやって来た。意外と近くにいたのか……と思ったが、見ると燕尾服の裾がしっとり濡れている。
 この館内で、湿っている場所といえば十ほどあるバスルームくらいだ。
「風呂掃除でもしてたの?」
「いえ、庭のバラの様子を」
「……」
 庭にバラがある場所は二か所。一つは敷地をぐるりと囲む鉄の門だ。その時期になると、絡みついた蔓から一斉にバラが咲く。その姿はさながら、薔薇御殿と呼ぶに相応しい。
 そしてもう一か所は、庭の隅にある比較的小さなバラ園だ。小さい、といっても公園ほどの広さがある。
 この調理場は、屋敷の一階の右の隅っこにある。一方バラ園は、どちらにしても徒歩十分ほどかかるはずだ。
 馬車はマダムにしか使えないし……。
「どうされましたか?」
「……何でもないわ」
 ネロはいつものように、涼しい顔をしている。『あらゆることを卒なくこなす程度の能力』……。恐ろしい。
「それより、賄いができたわ。 他の人にも持って行って」
「かしこまりました」
 ルージュは考えるのを辞めた。そもそも、ここの使用人は皆、触れられたくないことには触れないのがモットーだった。
 ……私にも。
「あの子達は何処にいるかしら」
「先ほど、池の畔で蹴鞠をしているのを見かけましたよ」
「そう。 じゃあ」
 お願いね、と言おうとした時だった。廊下の方から、何やら騒がしい足音が聞こえてきた。
 この屋敷でバタバタ走りまわるのは、あの子達しか考えられない。
「おやおや、何事でしょう」
「ちょっとお灸を据えてやろうかしら」
 私は調理場のドアを開け、廊下に向かって叫んだ。
「何事!? 悪戯だったら、豚の臓物を生で食わせるわよ!」
「料理長、その言い方は……」
 案の定、廊下を走って来たのは黄昏の子供たちだった。だが、様子が何かおかしい。本来、その外見から潜入用、情報操作用、拷問用に教育された彼らは、ちょっとやそっとのことでは動じないはずだ。
 何せ、あのネロが教育係なのだから。
 しかし、今の彼らは完全にパニック状態に陥っている。流石におかしいと思ったのだろう、ネロが自ら止めに行った。
「落ち着きなさい。 何があったのですか」
 “先生”であるネロに窘められ、やっと彼らはおとなしくなった。
 それにしても、全く見わけがつかない。いや、年齢と身長が微妙に違うけれども、外見は男女を除いて皆同じだ。
 男子は紺色のセーラー服。
 女子は白色のセーラー服。
 髪型もそれぞれ統一されていて、男子はざんばら、女子は長めのツインテール。皆、マダムが融資している孤児院『夕焼けの家』で暮らす子供だ。
 ここには、赤ん坊から十五歳前後までの子供が暮らしている。各地に建てられていて、一つの家の子供は約五十名。
 時折この屋敷に集団で遊びに来ることが許されている。今回も、十人ほど来ていたのは知っていたけども……。
「教えたはずですよ。 どんな時も平常心を忘れないこと、と」
「ゆーれい」
「ゆーれいがでた」
 同じ外見の子供が、口を揃えて同じこと言う姿は、不気味の一言に尽きる。そして、その内容も頭を捻るには十分だった。
 ネロが瞬きをした。
「幽霊? この敷地内に、ですか?」
「何かの見間違いじゃないの?」
「くろいて」
「くろいてが、のびてきて」
「からだがない、てだけ」
 ボキャブラリーが少ない彼らの言葉を理解するには、数秒を要することになる。そして、誰かが言っている時に黙っていることもできない。それが余計にややこしい。
 話を整理すると、こういうことだった。

 敷地内の庭に、半径三十メートルほどの人工の池がある。夏になると納涼もかねてここでお茶をしたり、遊ぶのがマダムの日課だった。
 今は泳ぐには早いが、ただ眺めているだけでは暑いだけで、子供たちは水をかけ合って遊んでいたという。
 そうしているうちに、茂みの方からガサガサという音が聞こえてきた。てっきりマダムのペットの一匹かと思ったが、それにしては音が小さい。
 全員が気になって注目しているうちに、それはあらわれた。
「……で、それが手だったっていうのね?」
「手だけの生き物ですか……」
 ネロが考える。
 この庭には、実に沢山の生き物がいる。中には生き物と呼ぶには疑問が残る物もちらほらいる。
 用心棒が来る際に全滅させた彼らも、生き物とは言い難い、化け物と呼ぶ方がふさわしい者たちだった。
「ここ数日、錬金術のお勉強はカリキュラムに入っていません。 何処からか迷い込みましたかね」
「まさか、手だけの生命体とでもいうの?」
「ここは黄昏屋敷。 遭ヶ魔時の空間の塊です。 何がいてもおかしくはないのですよ」
 ……突っ込んだら負けな気がする。
「しかし、新しいペットを飼う時には、必ず私に宣言なさるはずですが」
「その手は、何処に行ったの?」

「おどろいたら、」
「しげみににげてった」

 手を洗おうと、人工湖に行った手が慌てて戻って来た。
「……どうした」
 理由を聞くと、子供たちに見つかり、驚かれて慌てて逃げてきたという。
 その気になれば誰でも驚かすことができるのに、変な所で小心者だ。手に心があるのかは分からないが。
 レディ・ファントムが用心棒としてここに来てから、既に三カ月が経過しようとしている。マダムは夜遊びできる年ではないので、誰かにお誘いを受けた時以外は、屋敷の外に出ることはない。
 時折客人が来たりもするが、大抵は仕立て屋か友人だ。込み入った話をすることも多く、そういう場合は用心棒なんて何処の馬の骨とも分からない奴は入れない。
 用心棒とは思えないくらい、良い待遇を受けている。一人部屋が与えられ、まとも以上……それこそ、豪勢とも言えるような食事ができ、寝首を掻かれるような状況下で休みを取ることもない。
 恵まれているのかもしれないが、レディは少々退屈だった。
 昔のように、自ら血の匂いが漂う場所へ突進していく元気はない。ただ、今まで生きてきた場所に慣れてしまっているせいで、刺激が足りないのだ。

―――――――――――
 好きな曲の歌詞に合わせて書いてみたその二。
 今回はここでストップ。だってキリがないから!
 しかしマダムが幼女だったり、レディが用心棒だったりとかなり設定が違うなあ。


  [No.3423] 蜘蛛の糸 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2014/09/29(Mon) 21:53:08   95clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 生き物は死ぬと、生前の行い次第では涅槃の地に行けるらしい。涅槃には仏がいて、それは穏やかな世界が広がっているそうだ。ポケモンも人も奪い合うことも縛り合うこともなく、かのプラズマ団やフレア団が求めた世界に近いかもしれない。
 そんなある日のこと、仏が散歩をしていると、池を見つけた。すぐそばに木が生えており、枝は池の上にまで伸びている、やけにがさがさ枝が揺れているも、仏は気にせず水面を見つめた。そこからは地獄が見えた。かつては苦しみしか生み出さなかった地獄も、近代化を遂げていた。涅槃に行けなかった者たちは地獄で労働に従事し、涅槃の者の生活を支えているのだ。
 その中に、仏は一人の男を見出した。地獄の工場を掃除している男は、Twitterやゲームで遊び呆けて執筆を怠るという大罪を犯して涅槃に行けなかったのだが、生前一匹のイトマルを助けていた。そのことを思い出した仏は糸を垂らそうとしたのだが、その手を止めた。すでに木から糸が下りていたからである。

 さて、こちらは地獄。涅槃は雲より高い所にある。仕事の合間にそれを眺めていた男の元に、細い糸がやってきた。自堕落な生活を送っていたとはいえ、男も物書きの端くれである。すぐに勘付いて一言
「これは、もしやあの有名な蜘蛛の糸か? あの話通りなら、救いの手が来たんだな。物語の男は失敗していたが、私はすでに死んだ身、どうして失敗することを恐れようか」
と糸を手繰り寄せ、地面をけり上げ上りはじめた。
 そこからは速かった。男も常人ならざる力で易々と上るが、手足の動きに不釣り合いなほどの勢いである。まるで天に吸い込まれているかのようだ。男はこれに驚きつつも、運が良いと休まず手を動かした。
 ところが、その勢いが急に落ちてきた。まさかと思って下を見ると、男の視界にたくさんの人の姿が見えた。糸を手繰る人の髪をさらに人が掴み、さながら大樹のような様子である。言うまいと思っていても、いざ遭遇すると落ち着きを失うようである。男は「あの言葉」を言ってしまった。
「おい、降りろ。これは俺の糸だ…あっ」
 自らの失言に男は天を仰ぎ、観念したのか目をつぶった。糸が切れる音が聞こえてくる。大勢の悲鳴がこだました。しかし、男は黙ったままだ。恐る恐るまぶたを開けると、男の足元より下の糸がなくなっていた。
「助かったのか。どうやら、全て物語通りというわけではなさそうだ」
 男は安堵し、再び上りはじめた。最大の難関を突破した男は、やはり何かに引き寄せられるように上を目指す。一時間ほど過ぎるころには、遂に水面を眺める仏が見えるところまでたどり着いた。男は最後の力を振り絞り、遂に涅槃に到着したのだ。
「よし、あとは着陸…あれ?」
 ふと、男は異変に気付いた。手を止めたはずなのに体が上へ上がるではないか。糸の出どころは茂みに覆われた木の枝。仏ではない。もしやと思った男は逃げ出そうとするが、蜘蛛の糸が手足に絡まり思うように動けない。下手に動けば地獄にまっさかさまと言うこともあり、激しく暴れられないのも災いした。
 そうこうするうちに、男は茂みの中に入っていた。そこにいたのはアリアドス。大きく口を開けていた。
「あの言葉の報い、ここで受けるのか…」
 今度こそ万事休す。アリアドスは男の首を噛み千切ると、そのまま胴体、足、腕の肉を食べてしまった。茂みから残った骨や内臓がぼとぼとと池の中に落ちていった。
 食事を終えたアリアドスは、今いる枝から幹を伝って木から降りようとした。ちょうどその時、枝が根元からぼきりと折れた。アリアドスは為す術なく池から地獄に入っていった。

 この一部始終を見ていた仏は、少し悲しそうな表情をしたが、すぐに落ち着きを取り戻し、散歩を再開するのであった。







 思い立ったが吉日だと思ってるので、これを読んでる方は一粒万倍日でなくても書いてみましょう。


  [No.3424] 【お知らせ】今月の一粒万倍日は4日14日17日26日29日です【お詫び】感想遅れます 投稿者:砂糖水@一粒万倍   《URL》   投稿日:2014/10/01(Wed) 19:48:20   75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:一粒万倍日】 【天赦日パネェ

・お知らせ
今月の一粒万倍日は、4(土)14(火)17(金)26(日)29(水)デース。
4日は天赦日、14日・26日は大安と重なるのでさらに縁起がいいですよ!
この機会にユーも書いちゃいなYO!

※天赦日(てんしゃにち、てんしゃび)
天赦日は日本の暦の上で最上の吉日とされており、新しい何かをスタートさせたり躊躇していたことに挑戦するにはもってこいの日。
年に5〜6回しかない貴重な開運日。
引用:http://www.xn--rss490a204a.net/
調べてみたら予想以上にすごい日だったwwwwww
みんな書くんだ!!!!!


・お詫び
今度の日曜日に受ける資格試験の勉強に専念しているため感想遅れます。
すみません。
駄菓子菓子受かる気がしない!!!!!!(

主催に構わず投稿していいのよ…。
ただし感想は遅いです(イエーイ


  [No.3437] 感想まとめ 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/10/04(Sat) 21:12:16   71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

砂糖水さんのパワフルな感想に便乗させて頂きます。



【×沼と大山椒魚(仮) 】砂糖水さん
ヌオーが沼の主ってのがなんかかわいいです(内容は物騒だけど)
出だしのインパクトはばつぐんだ! 身勝手な人間相手にその後どうしたのか気になります。
(終わり方が終わり方なだけに)せめてドククラゲさんたちがいればちょっとは違ったのかしら(沼だけど)。

【Saiko's storY(かきだし)】きとかげさん
こう、なんというかあたたかいお話ですね。
空気が優しいっていうのか。
カルネさんのレポートの書き方指南の仕方が自然でさり気なかったり、
サイコちゃんの語りだったり、レポートの内容だったり。
ここで終わっても大丈夫な感じの満足感はあるけれど、続きも読んでみたい!
冒頭のシーンがなんなのかとても気になります。
小枝が好きでおやつにするといい、とかミアレっこの足音は近づいては遠ざかるとか、
言い回しが好きです。終わり方も素敵です。

【輪廻】イサリさん
短いのにサックリしておらず読み終わったあと満足感があります。(食べ物の批評のようだ)
>年老いて死ぬまで、それはもう、可愛がってもらって……。ちなみに、その家の赤ん坊は、今の私の夫です
何故かちょっぴりエロいなんて思った私は汚れているのでしょうね。
書き出しのみの時もオチが気になってたんですが、期待を裏切らぬ終わり方でした。
短いのにこの余韻は本当に不思議で素敵です。

【家畜人(仮)】殻さん
まずあなたの文章がとても好きです。今作のようなハードな話と
きれいな話で自然と描きわけが出来ている感じがするというか。
細かいこと考えずに引き込まれてしまうというか。
御託はいいからもっと読ませてくれーってなる感じというか。
何言いたいか全然わからんですね。
今作も話の前振り、展開、ラストと短いお話として綺麗に終わってる感じしますが、続くなら読みたい。読ませてくれえ!
って感じになってます。

【シロガネ携帯獣記 炎馬の王】ラクダさん
堅い語りの中でギャロップの神秘性とか威厳がしっかり描かれていると思います。
老いた長より若くて強い方を選ぶ野生のポケモンの強さ、厳しさもいい。
リングマ蹴散らしちゃうとかギャロップカッコよすぎる。
人間に対して逃げも隠れもしないギャロップたちもまた威厳があり。
とても不吉な終わり方しているんですがこれからどうなるんでしょう。

【居合い斬りの木視点(仮)】逆行さん
ああごめんなさいごめんなさいいあいぎりの木さん。
だってあなた邪魔なんだもの(酷い)初代赤やってる時
トキワの森出口横の丸いアイテムが気になってずいぶん歯がゆい思いをしたものです。
まさに発想の勝利。目がないから目を閉じることも出来ず切られるとか、木らしい視点もしっかり描かれていますね。
九億八千四百五十四万年以内かあ……。これはゴーストタイプのポケになって待つしかない。

【蜘蛛の糸(仮タイトル) 】きとらさん
ウヒョウヒョ言っててかわいいとしか思えないけどホムラさんカッコいいです素敵です。
こりゃ懐くのも納得ですわ。
しかし出所?直後の彼が悲哀に満ちすぎていて悲しい。
>これからどうやって生きていこうか。まだ30にもならないのに、先は全く見えない。
>人通りの多い場所に出る。なんとなくポケモンセンターに入った。
>トレーナー関連の仕事にありつけるのではないかと思った。
>しかしそんな都合よく出ているわけはないし、あってもホムラより腕の立つ人間などたくさんいる。
このあたりの流れが特にわけもなくへこみます。後でうっほほーいな展開になるにしても。
後半の無防備すぎなハルカに読みながらわっふるわっふるしていた私は
ホムラより外道なのでしょう。
ホムラのイケメンっぷり、悲哀、素敵なお約束と単品で満足してしまいましたが
これ書き出しなんですよね……。

【タイトル未定(長編予定)】久方小風夜さん
敢えての根底潰したポケモンティンカーの設定が面白いです。
ひでん要員に頭を悩ませる必要がないのでうらやましいとか思ってみたり。
ゲームやってても無免許っぽいトレーナーって結構いますよね。
渋くて辛いズリ味キャンディーの不評さに笑いました。ゲテモノとか言われてるしww
今回20匹も勝手にポケモン持ってるだけでもインパクトはあったのですが、
手持ちと法外な値段ふっかけ以外はどんなことをしてるのか気になります。

【さる獣医のミミロップ】MAXさん
そうだよねえ戦いたくないポケもいるよねえ。なんかごめんなさい。
鉄球はもしかしてくろいてっきゅうかしらとも思いました。
たしかにミミロルは動くぬいぐるみって感じでかわいいです。
だけどミミロップだっていいじゃないか!パンツはいてないし!
新参なのでわかりませんが、連載ものの一部だそうで……。
しっぽ握ったのは誰なんでしょうか。

【プラズマ団のアンケート】門森ぬるさん
小説じゃないけれどとてもおもしろいですね。
極論集団と思っていたけれど一個一個の質問は結構普通な気が。
でもこれも誘導されたりしてる……?
頭の中で答えながら読みました。
個人的に表現の仕方の質問がとてもアンケートとしてそれっぽいと思います。

【メッセージ】WKさん
どういうことなの……。いやなんとなく状況は掴めましたが、ここで終わるとは人が悪い。
「ぼく」は一体誰なのか。男は本当に酷いやつなのか。
たどたどしいパソコンのメッセージがいい雰囲気を作っていると思います。
しかしキーボードを傷つけたことを謝る「ぼく」は律儀ですね。
しっかりしてそう。

【ペイズリー】音色さん
こう、語りの空気とペイズリーのかわいさがとても好きです。
ペイズリーって呼んで出てくるヒヤップ。彼らはいつも笑顔ですよねかわいい。
ズボンいつも掴んでて、時々コテンとコケるヒヤップ。
ああかわいらしい。いたずらっ子ゾロアも大変かわいらしい。
素敵な語りで、読み始めたら最後まで行ってしまって
メモがここで途切れているというのが非常に残酷だと思いました。
試験勉強の逃避の流れとかが自然で、めっちゃ好みの作品です。
二足歩行シキジカ……不気味だろうなあww

【放火魔(仮題)】音色さん
あのー、連続ですっごい好みなんですけど。これで続きがないとは殺生な。
言葉が葉っぱになるって発想がすごいかわいい&好きです。
言葉のナイフとかとにもかくにも演出というかノリがいい。
(このシーンはあんまり明るいネタではないですが)
ちょい方言入るかわいい語り口とか、うだうだしてる学校生活とか、雰囲気出てますねー。
木の実まんがおいしそうです。

【ゆうやみのおりひめ(仮)】久方小風夜さん
拝見させていただいた部分だけを見ると、普通にツルの恩返しっぽいのですが、
この後どうなるのでしょう。
とんとんからりとんからり、という擬音がかわいらしいですね。

【少女の旅(短編集)】WKさん
ところどころの小ネタがいいですね。森の出口のむしとりのしょうねんとか。
カーネルって名前のイーブイ見て即「かみなりのいし使いたい」と思ったら、
すぐその後でサンダースにしたらという指摘が。
これは確信犯ということでよろしいですか。
途切れ途切れな感じが逆に冒険のレポートっぽくていいなあと思います。
そしてシルフスコープ……その手があったか。
スルスルサラサラと読める感じが癖になる作品です。

【鋼氷の王】きとらさん
モンハンはアイルーくらいしか知らないですすいません。
なので普通にファンタジーパロとして楽しく読ませて頂きました。
示唆されるだけのエロシーンが逆にエロいですね。そして色んな意味で痛そう。
ダイゴさんのぶきっちょにもほどがある気遣いが悲しい。
感想被って申し訳ないですが、最後のシーン見てまたわっふるわっふる状態になっていました。
アイルーかわいい。

【パラレル・オブ・ザ・レディ(短編集2)】WKさん
なんといったらいいのかわかりませんが、独特。
ちょいクラブ(和訳)バってたり、ふわふわしている感じが。
ハードボイルドもちょい入っている感じでしょうか。
孤児院の子どもたちがみんな同じ格好しているのもちょっと不気味な感じがします。

【蜘蛛の糸】あつあつおでんさん
ポケモン版蜘蛛の糸。ツイッターやゲームで遊び呆けているというのが身につまされますね。
地獄が近代化していたり、くっついてきた亡者のほうが切られたりとアレンジの仕方が面白いです。
そしていったいこれは誰に同情すればいいのでしょうか。
男? お腹いっぱいになって幸せなところに不幸が起きたアリアドス?
それとも見守っていた神? ベースは有名なお話なのに、とても独特なお話です。



あまり上手い感想言えてない気がしますが、私の感想が少しでもこやしになれば幸いです。
みんな芽を出せーと電波送っときます。
しかし企画とはいえ生殺しな作品だらけ……。みんな面白いのが逆につらい。
この悶々とする作品群にしっかり感想を送っていらっしゃる砂糖水さんには敬意を払いたいです。


  [No.3442] 9月29日分の感想です 投稿者:砂糖水@一粒万倍   《URL》   投稿日:2014/10/09(Thu) 22:49:39   65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

盛大に遅れました!すみません!
9月29日分の感想です。
この回も多数のご参加ありがとうございました!


・メッセージ WKさん
こ、これはまた謎めいたお話…。
キーボードが傷つくと言うことは鋭い爪でもある子なのかしら…。それとも手が鎌とか?
ふたりは無事にたどり着けたのだろうか、たどり着いてもちゃんと暮らしていけるのかしら。
残されたこの人は…? この人にはどんな思惑があったのか。
謎が!謎が!
というか、嫌いな人なのにキーボードを壊したことを謝るとか、この子いい子…!


・ペイズリー 音色さん
ペイズリーかわいい。かわいいけど、その、ごめんなさい。
ペイズリーって聞くと、いつだったかのドラマ?のトリックで、ペイズリー!って踊ってたよくわかんない集団のことが頭から離れな(
あ、はいごめんなさい、まじめに書きます。
音色さんはこういう、ちまっこい子をかわいく書くのうまいですね!
かわいい(吐血)
始めの方のペイズリーって何回も呼んで、タオルケットに絡まっちゃうシーンかわいすぎて死んだ。死んだ。
大事なことなので二回(
うん、さすがに10キロのものをずっともって歩くのはしんどいですよねえ…。
あ、アニポケの連中はスーパーマサラ人だから…(震
ていうかもおおおおおおおおおお、ズボンをぎゅっと握るこの小猿かわいい(


・放火魔(仮題)  音色さん
まさしく言の葉、ってやつですねえ。
実際見えたらやっぱりうっとうしいでしょうねえ。
でも言葉が残るのは羨ましいです。
聞き間違いとか、聞いたけど記憶に自信がなくてどうだったっけ?!ってなるので…。
ポケモンの鳴き声も、ってことですけどなんて書いてあるのか気になりますねー。
ポッポならポッポーとかですか((多分違う
言葉が見えると言うことが今後どう関わってくるのか…。
ば、バスカードは…あ、ないんですか、デスヨネー。
そもそもそれあったら話が成り立たない(
クイタラン出てきたところで途切れてるなんてもったいない!
ぜひ書きましょう?ねっねっ!?


・ゆうやみのおりひめ(仮) 久方小風夜さん
> そして今気付いたけど全然ポケモン出てなかったよ!!!
まだ出てなくともこれから出る予定ならいいと思います。
というか鶴の恩返しが元なんですから、ゆうはなんかのポケモンだろうなーというのは簡単に予想つきますし。
えっもしや違ったりして…。
納涼に出すつもりだったってことは、なにかこう、あまりハッピーな感じじゃないんでしょうか…?
あうあうこあい。
ていうか鶴の恩返しってよく考えたら、布を織ると言いつつ材料を持っていってないという時点でおかしいはずなのに、なぜ今まで疑問に思わなかったのだろう…。


・少女の旅(短編集) WKさん
出だしからなんだかうきうきするお話ですね。
これから出発!っていう。
テンポよく書かれた文章がうきうき感とマッチしてる気がします。
読み終えてみると、一応ゲームのストーリー沿いで見たことがあるようなイベント、なんだけど、読んでいくとどうやらそれだけじゃないようで。
主人公はなぜ家を出られなかったのか。過去に何かあった?
今回旅に出られるようになったわけは? ダイキって兄弟?
ゲーム沿いにイベントが進行するなら、今後ロケット団とも否応なしに戦うでしょうけど、その辺はどう書かれるのか。
名前だけ出てきたダイキは登場するのか。
などなど気になるうううううううう!
ところでこのゴースはやっぱり仲間になるんですかね!?


・鋼氷の王 きとらさん
作中に出てくるモンスター?の名前見ても全然どういうのかわからない…。
だけどそれはどうでもいい。
だって、おもしろいんだもん!
この回で集まった中で一番小説としておもしろかったです!
分からないこととかどうでもよくなるくらい、夢中になって読みました。
みんなもっと本音を語ろうよ(涙)
いえ、分かってるんですよ。そうは言ってもなかなか言えないの。
いやでもなあ、と思ってしまうんですよねえ。
だ、ダイゴさん、もっとわかりやすくしないと伝わらないから!不器用とかいうレベル通り越してるから!
ハルカちゃんも行動の理由を説明したげてえ!
と、もやもやしておりますが、まあ解消されるのは終盤ですよね、知ってる(
そうじゃないとお話にならないものですね…。
この話はどう転がっていくのかわかりませんが、ユウキくんの謎の安定感により、わりと安心して読んでられます。
たぶんユウキくんがいればなんとかなる…あくまで私の心の平穏的に(


・パラレル・オブ・ザ・レディ WKさん
幼女なのにマダムで、見た目だけ若いのかと思ったら、
> マダムは夜遊びできる年ではない
とあるからほんとに正真正銘の幼女…?
それとも体に引きずられて夜は眠たくなる体質…?
まあ、とにかく、幼女!幼女!
表現がちょっとあれですが、偉そうな幼女萌え!(
最後に出てきた手というのはゴーストタイプのポケモンでしょうか…?
手が印象的なのはデスカーンですけど、あれ体大きいしなあ…むう。
どうやらレディが世話してる子のようですが…。


・蜘蛛の糸 あつあつおでんさん
> Twitterやゲームで遊び呆けて執筆を怠るという大罪
ぎゃあああああすみませんすみません!
感想書くのさぼったりしてごめんなさい!
じゃなくて、本題。
えっ、実は私がダウンしてる間に完結したとかです?
キリがよすぎて書きかけとは思えないできなのですが…。
そ、そういえば長編版のあれはいつ更新されるのですか…?
え、あ、お忙しい…あ、はいすみません。
仏様が糸を垂らすより先に糸が降りていたと思ったら…なんということでしょう。
しかし、男が俺の糸だと発言してなかったとしてもやっぱり食べられちゃうんでしょうか…?
あの仏様はなんだか助けてくれなさそうな気がするんですよね。
それとも、本来なら糸が切れて無事助かるはずだったとか…?
むむう。
まあそこは問題じゃないというか、本質じゃないような。
簡単にさらっと読む話ではなくて、これはこうなのかああなのか考えないと読み解けないですねえ。
そしてここに書いた考えが間違っている気がしてならないです…。おおう…。
>  思い立ったが吉日だと思ってるので、これを読んでる方は一粒万倍日でなくても書いてみましょう。
ええ、そのとおり!
皆さんしっぴつしましょう!


以上になります。
言葉が上滑りしててつらい…。
10月4日分はまた来週で…。