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  [No.3441] 試しのイシツブテ 投稿者:No.017   投稿日:2014/10/08(Wed) 23:52:44   140clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 カントー地方はハナダの北東のおつきみ山には宝泉寺という寺がある。洞窟にほど近いその古刹の周辺にはその昔、「もちあげつぶて」と呼ばれるイシツブテがいたらしい。
 なんでも何か願いごとがある時、そのイシツブテを持ち上げてみると叶うかどうかが分かるのだそうだ。見事持ち上げる事が出来れば願い事は叶うし、叶わない時はまるでゴローンのごとく重くなっててこでも動かないという。
 また、ジョウトのエンジュにも似たような事例があり、こちらは「おもかる石」と呼ばれている。稲荷神社に生息するイシツブテを持ち上げる事で願い事成就の行方を占うというもので、イシツブテを持ち上げてみて思っていたより軽ければ願い事が叶い、想定より重く感じれば叶わないという。ただし、イシツブテも気紛れで、その場にいたりいなかったり、あるいはいても持ち上げさせてくれるかは別の問題だ。境内にはポケモンでない普通の石の「おもかる石」もあるのだが、イシツブテを用いた占いのほうがより当たるなどと言われ、参拝客はイシツブテを持ちたがる。
 このような占いに用いられるイシツブテを「試し石」「試しのイシツブテ」などと言い、上記に挙げた二例の他にも似たようないわれを持つイシツブテが全国各地に存在している。その中にはゴローンを神使兼試し石としている神社もあり、さすがに持ち上げるのは厳しいので押して動けば願い事成就となっているが、それでも厳しい。その存在はまるで「そう簡単に願い事なんか叶わないよ」と諭しているようでもある。
 もっとも百キロ以上あるゴローンも参拝者の手持ちポケモンに格闘ポケモンがいればかわりに持ち上げてくれるだろうし、手持ちのポケモン全員で押せばなんとかなる場合もあるだろう。一人で叶えられる願い事は少ないから、みんなで力を合わせなさいという事なのかもしれない。


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武蔵野の民話と伝説に持ち上げ観音っていうのがあって。
あと「おもかる石」は実際に伏見稲荷にあります。


  [No.3472] 海首の話 投稿者:No.017   投稿日:2014/10/29(Wed) 21:35:41   176clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 海首の話


 今でこそかわいいポケモンとして広く認知されている種族であっても、生物学などの学問が体系化されていない、生態などが研究されていなかった時期においては不気味な存在として扱われていた時があった。そんなポケモンの一種がホウエン地方の一部などに生息する「タマザラシ」である。
 玉のような丸い身体に顔がついている生物的にはアンバランスなその姿は、見ようによっては生首であるとか髑髏を連想させたらしい。事実、昔の文献などにはタマザラシを海首などと記載しているものがあり、海の生物というよりは妖怪的な扱いであった。タマザラシを鼻の上でくるくると回すトドグラーの姿は現代人から見ればほほえましいが、鼻の上で回るそれが髑髏であるとか生首であるという風に考えると途端に不気味な光景になってくる。
 古くから海には魔物が住むなどというが、タマザラシが生首扱いされたのにはホウエンの歴史的事件も背景にあったようだ。ニューキンセツの南、シマバラ・アマクサと呼ばれた地域ではその昔、領主からの重い年貢や過酷なに絶えかねて百姓達が反乱を起こした事があった。彼らの多くは現在のカロス地方などを擁する西欧の宗教の信徒であったという。島々の中にあった城の一つにたてこもった人々は一万にもなると云われ数ヶ月に渡り戦い続けたが、幕府軍の十万を越える軍勢を前にしてついに全滅する。乱を主導したとみなされた者達の多くは首を斬られて晒された後にシマバラ・アマクサの海に投げ捨てられたという。
 このような背景があった為に、海に投げ捨てられた首が海首として戻ってきたのがタマザラシではないか、という風に人々は考えたわけである。彼らはタマザラシの毛皮の下には人の首が入っていると考えた。そして、その進化系であるトドグラーやトドゼルガの皮の中には人一人が丸々入っていると考えた。乱の鎮圧の際に身体を失った首が海で育ち、失った身体を取り戻したのだと。殊にトドゼルガなどはなかなか凶暴そうな面構えをしているから、乱で海にうち捨てられた人の怨念が宿っているなどと考えたかもしれない。タマザラシが海首などと呼ばれたのに対し、トドグラーやトドゼルガは時に鯔人(トドビト)などと呼ばれた。
 そうして首の状態から身体を取り戻した彼らには、時間が経つにつれて別の伝説が付随するようになる。潮がもっとも引く日の夜には彼らは鯔の皮を脱ぎ、浜辺に上がると人の姿になって踊る。その舞踊はホウエンのそれではなく、海の向こうから伝わった異教のそれであるという。そうしてまた日が昇る頃には鯔の皮を着て海に戻っていく。
 海の幸をたっぷりと身体に蓄えた彼らの容姿は美しく、偶然にその現場に居合わせた男が鯔人の皮を取り上げてしまった為に、海に戻れなくなった鯔人の女が泣く泣く男の妻になった、という話も伝わっている。鯔人の女は男との間に何人かの子を設けるが、ある日、末の子の口ずさむ歌から夫が隠した鯔の皮の行方を知り、皮を被って海に戻っていく。また、鯔人の男が殿様の妻を寝取る、という話もある。
 余談だが、海首の伝説のルーツと思われるシマバラ・アマクサの乱の鎮圧後、領民に重い税を課して、乱を発生させる原因を作ったとして領主もまた斬首となっている。もしかしたら領主の首もまた海首となって、ホウエンの海を彷徨ったのかもしれない。となるとその子孫が誰かのポケモンとしてボールの中に収まっている、なんて事もあるのかもしれない……。




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ほんとうはこわいタマザラシ・タマザラシ異説

参考文献:人魚と結婚した男―オークニー諸島民話集―(あるば書房)
スコットランドの北に浮かぶオークニー諸島の伝説にはアザラシ人間(セルキー・フォーク)が登場します。彼らはある時間帯には皮を脱ぎ、人間の姿になることが出来るそうです。シンオウ地方にもそういいう神話がありましたよね。アザラシ人間を妻にする話は、日本の羽衣伝説によく似ていて興味深いです。

もしかしたら皮を脱いだトドグラー達は冬はこういう歌を歌ってるのかもしれないな。
http://www.youtube.com/watch?v=1mItWsC8RtM


  [No.3545] 三匹の獣の話 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2015/01/02(Fri) 22:51:08   123clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 今日話すのはホウオウの力で甦った三匹のポケモンの話だ。

 エンジュには二つの塔があった。あるとき人間たちの争いがもとでそのうちのひとつが燃えてしまった。三匹のポケモンが巻き込まれて焼け死んだ。それを哀れに思ったホウオウが新しい姿で蘇らせたのはご存じの通りだ。
 そこで甦った三匹はひとまず故郷へと返り、その事を報告することにした。彼らは報告を終えたらまた落ち合う約束をして三方に走っていった。

 三匹のうち一番早くたどり着いたのは青い身体の獣だった。ところが親兄弟のところにたどり着いたものの、あまりに姿が変わっていて自分だとわかって貰えない。話をしようとするものの声もまったく違って恐れられ逃げられるばかりだった。
 青い獣は悲しみに涙を流した。けれど再び落ち合う二匹に涙は見せられないからと、近くの湖で涙を洗った。その時、湖が涙で澄みわった。スイクンが水を浄化する力を得たのはこの時からである。

 二番目に故郷についたのは黄色の毛皮の獣だった。だがやはり同じ理由から自分だとわかって貰えなかった。
 黄色の毛皮の獣は悲しみに涙を流した。けれど再び落ち合う二匹に涙は見せられないからと、雲を呼んだ。雷が轟いて激しい雨が降り、彼はその雨で涙を洗った。ライコウが背中に雷雲を背負うようになったのはこの時からである。

 最後に故郷にたどり着いたのは褐色の長い毛の獣だった。だが彼もまた同じ理由から拒絶されてしまったのだった。
 褐色の長い毛の獣は悲しみに涙を流した。けれど再び落ち合う二匹に泣き腫らした顔は見せられないからと、一計を案じた。彼は人間の鍛冶屋のところに行くとこう言った。
「お前が一年間に鉄をつくるのに必要な量の炎、それを今与えてやろうから、私の望むものを作って欲しい」
 鍛冶屋は作った鉄で獣の顔に合う仮面を作った。獣はそれを被ると二匹のところに戻っていった。エンテイが炎を操り、今のような姿となったのはこの時からである。

 三匹が今のような有り様となったのはこの時からなのである。


  [No.3546] 都市伝説いろいろ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2015/01/02(Fri) 23:04:01   185clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

【キルリアの成人儀式】
キルリアが成人してサーナイトとなる為にはトレーナーの生命エネルギーが必要である。
ラルトス族が人間の前に現れるのはそういった目的があるからなのだ。
時々、草むらでひからびたトレーナーの遺体が見つかるのは成人儀式のドレインキッスに耐えられなかった為である。
尚、死体は干からびながらも皆、満ち足りた表情であるという。

【アゲハントの好きなもの】
アゲハントは花の蜜や樹液を好むと言われるが、本当の好物は人間の血である。
長い口を突き刺して血をすするのだ。
ことに死体が野ざらしにされていた戦国時代などには、血の味を覚えてしまったアゲハントがたくさんおり、ポケモンや人間を狙って怖れられていたという。

【黒いバタフリー】
公害。そういうものが発生した時代があった。
ある地方では科学工場から黒煙を空に吹き出しつづけた結果、その灰が周辺の森に大量に降り注いだ。
灰をかぶったトランセルからは黒い羽のバタフリーが羽化したという。
黒いバタフリーは異常な繁殖力を示し、数年のうち空を黒いバタフリーが覆い尽くした。
そのりんぷんは猛毒で、黒バタフリーが通った後の町は死の町と化したとう。

【何百回と何十回目】
トレーナーAは優れた能力を持つイーブイを出す為に生ませては投棄を繰り返していた。
投棄につぐ投棄の末、念願のイーブイが生まれた。
するとイーブイがニヤリと笑って言った。
「マスター……これで五百八十六回目ですね。今度は僕の事、捨てないですよね?」


  [No.3547] 鎧鳥の昔話 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2015/01/02(Fri) 23:16:57   143clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 合戦の後、というのは死人の身ぐるみをはぐ絶好の稼ぎ場であったが「鎧鳥に襲われるから」と言って昔の人々は戒めた。
 ある町の言い伝えによれば合戦後に身ぐるみをはぎにいった野盗が見たのはオニドリル達であった。彼らは死体から剣や槍を奪い取ると自らの翼に刺していた。これが「エアームド」というポケモンが生まれた最初である、という。刀には死者の怨念が宿っているから彼らに見つかると鋼の翼で首をはねられると云われる。
 こんな話もある。とある国で謀反の企てがあった。その企みをたまたま聞いていたオニドリルは城の武器庫に入ると、刀や槍の刃をすべて自らの翼に刺し、ごっそりと持ち出してしまった。オニドリルはエアームドとなってどこかへ飛び去り、結果謀反は失敗に終わったという。


  [No.3548] 血と草をめぐる二つの話 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2015/01/03(Sat) 01:19:37   111clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

【フシギバナから生まれた子】
 ある夫婦は子に恵まれずに悩んでいた。
 地元の産婆に相談すると、夫婦で花を育てなさいと言う。毎日の水の代わりに交互に二人の血をかけて育て、花が開いたらその花粉をフシギバナのメスの花に受粉させなさい、と。二人は言われた通りに花を育て、フシギバナに受粉させた。
 するとフシギバナの花が閉じ、幾月かののちに再び開いた。中には人間の赤ん坊がいて鳴き声を上げた。その瞳はフシギダネのように赤く、二の腕にもフシギダネの模様に似たアザがあったという。その子供は植物と会話する事が出来た。故に農作業を手伝うようになってからは村一帯に豊作をもたらした。
 これは私のおじいさんから聞いた百年くらい前の話である。

【吸血樹】
 森でコノハナに出会った。人語を操るコノハナだった。
「私が人間だった頃は半兵衛という名前だった。私は燈火ヶ原で討ち死にした。私が力尽きた処には一本の樫の木が生えていた。私の血を吸って樫の木は実をなし、タネボーとして生まれ落ちた。コノハナになってこうして口を利けるようになったのだ」
 コノハナはそう語ると森の奥へと消えていった。
 彼を生み落した血を吸う樫の木は今でもトウカのどこかに生えているという。


  [No.3551] ラプラスと消えた少年 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2015/01/03(Sat) 09:34:59   161clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 水族館で少年が不法侵入で逮捕された。彼の狙いはラプラス。水族館ではラプラスの歌が名物で歌声を目当てにたくさんの人がつめかけていた。
 一方、少年はこう証言する。
「ラプラスはずっと助けを求めていた。助けて、助けて、ここから出して、と歌っていた。僕だけにはわかったんだ」

 尚、話の枝葉が広がってこのような噂がある。
 少年は釈放された後にトレーナーになった。研鑽して8つのバッジを集めた彼はその足で水族館へと向かい、建物、水槽を破壊し、ラプラスを奪取した。そして今も少年はラプラスと旅をしている……。
 そんな話を少年はすると、海に向かって口笛を吹いた。現れたのはラプラスで、少年は飛び乗った。私は何かを聞こうとしたけれどうまく言葉にならなかった。そうして彼らは水平線へと消えていった。


  [No.3581] 変化(へんげ)するしゃれこうべ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2015/01/22(Thu) 20:50:59   126clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 ポケモンにおいてある種族が何かの条件を経て、まったく別種のポケモンになる、いわゆる「変化(へんげ)」が信じられている例は世界中に存在する。

 例えばカロスの一部ではメブキジカは寿命が近づくと育った森の日あたりがいい場所を選んでうずくまり、眠るようにその生涯を終える。やがてその亡骸からは樹が生える。その樹が千年生きるとゼルネアスになると、信じられている。

 また、ホウエンの一部地域ではケイオウオが二百年生きたならばカイオーガになる、と信じている人々がいたという記述がいくつかの文献に散見される。

 更にホウエンのとある島ではその「変化」が風習化されている。
 その島では人やポケモンが死ぬと葬儀の後に首を切り落とし、胴体とは別に庭に埋葬する風習がある。百日目にしゃれこうべとなった首を掘り出し、黒い服を着せ、祠へ祀る。そうするとヨマワルとなって、子孫を守ってくれると信じられていた。今ではめったに行われなくなったが、今でも島の祠ではたくさんの服を着たしゃれこうべを見る事が出来るという。
 島の昔話によれば、昔この島に仲睦まじい若夫婦がいたが、妻は病弱で先立つ運命にあった。お前なしでは生きていけないと嘆く夫に妻は言った。
「私が死んだらその首を切り落として、墓には入れず庭に埋めてください。そうして百日目にしゃれこうべを掘り出して服を着せるのです。そうすればずっと貴方の傍におります」
 これが島における風習の始まりだという。