メラルバのメラちゃんは元気いっぱいな男の子。女の子のトレーナーといっしょに、イッシュ地方を旅しています。
今日はリゾートデザートにやってきました。リゾートだというのに実際は古びたお城と砂漠で、観光客も疎ら。行く手を阻む砂嵐を前に、これ以上は危険だと思ったトレーナーがボールに戻そうとした瞬間強い風が吹き、メラちゃんは飛ばされてしまいました。
気が付くと彼は宙に浮いていました。シンボラーに捕まっていたのです。食べられてしまうと思って慌ててジタバタすると、シンボラーはすぐに離したので、かなり高いところから落ちてしまいました。幸い柔らかい砂の上だったので怪我はしなかったけれど、周りはどこを見ても砂、砂、砂。パーティリーダーのダイケンキさんも、カッコいい秘伝技で旅を助けるミルホッグくんも、優雅に空を飛ぶスワンナさんも、友達になったばかりのキバゴくんも、だーれもいません。
心細くなって、メラちゃんは泣き出してしまいました。なにぶん彼はまだLv5。タマゴから孵って以来トレーナーと離れることがなかったものだから、どうしていいかわからないのです。
そこへメグロコがやってきました。メグロコはメラちゃんをよいしょと背中に乗せて、お城へ入っていきました。奥にあるまだ埋もれていない部屋に着くと、デスマスが丁寧にお辞儀して、メラちゃんを高いところへ座らせました。怖い顔のデスカーンも、メラちゃんの前ではニコニコ笑顔。木の実を器一杯に盛ってくれました。ワルビルやマラカッチ、ナックラーやサボネアやサンドもやってきて、みんなで楽しませようと踊り始めました。
確かに木の実はおいしいし、踊りもとってもおもしろいのですが、どうしてこんなによくしてくれるのか、メラちゃんにはわかりませんでした。
「メラちゃーん!」
その内、遠くでトレーナーの声がしました。
「めらぁー!」
呼びかけに答えるように鳴き声を出して、ここだよと伝えます。声を頼りにトレーナーがこっちへ走ってくるのが見えました。ポケモン達は人間が入ってきたことで身構えましたが、メラちゃんが嬉しそうによじ登っていくのを見ると、警戒を解きました。
「よかった。無事だったのね。すぐボールに戻してあげなくてごめんね」
トレーナーにぎゅっと抱きしめられて、メラちゃんは安心したように「めらっ」と一声鳴きました。
「みんなに遊んでもらっていたのね。ありがとう。さ、帰ろう」
トレーナーが立ち上がると、出口の方向をヤジロンが光線で示してくれました。みんなに見送られてお城を出る途中、六枚の羽根を持った蝶のような、蛾のような神々しいポケモンが描かれた壁画を見つけました。
しかしメラちゃんがその意味を知るのは、もっともっと先のお話。