少し浮かれすぎやしねーか、って思ったが許してやった。
明日、ついにマグマ団の念願であるグラードンの捕獲に挑む。マツブサ様だって緊張したような言い方だったし、下っ端どもが浮かれてても仕方ない。
程々にして寝ろと小学生の躾のようなことを下っ端どもに言って、俺はアジトの外に出た。
正直俺も眠気が来ない。ここ一番で失敗してはいけないというのに。少しアジトのまわりを散歩でもするかと少し歩く。
星空が明るくて、余計に眠れなそうだった。先客が俺に気づかずに星空を見上げていた。
「マツブサ様はいいのかよカガリ」
話しかけてみた。カガリにも緊張するとか眠れないとかあるのかと思った。振り向いた顔はいつもの何も感情がなさそうな顔。でもそれは俺にだけなのは重々承知している。
「……特に何も」
カガリの隣に座る。飲むか、とカガリは飲みかけのあったかい缶のココアをくれた。少し寒かったからちょうどよかった。
「……ついに明日だな」
「そうね、マツブサ様の念願もついに叶う」
カガリに本当に感情がないような感じはした。いくらマツブサ様の命令とはいえ、言い渡されたときに取り乱すこともなく、震えることもなかった。ただマツブサ様に選ばれたことを光栄だと言った。
美人なのに誰も男が声かけなかった理由もわかる。そんなカガリに振り向いてほしくて、付き合ってくれと頼み込んだときはバカじゃないかって思った。俺が告白した時も表情が変わらなくて、だめだとしか思えなかったのに、いいわよって言われた時は騙されてるんじゃないかとすら思った。デートしたっていつもと変わりないし、マツブサ様からもらったものが俺のプレゼントより価値高いのは今でも変わらない。それでもカガリと一緒にいて相棒というか戦友のようで、ケンカしたことも、朝を一緒に迎えたことも、マツブサ様からプライベートは構わないと言われたことも、ここにきてたくさんあったなと思い出した。
カガリの手を握った。明日、カガリはマツブサ様と共に潜水艦でグラードンを捕獲しに行く。危険なのは知っている。マツブサ様の命令なのも知っている。けれど俺はカガリに無事に帰ってきてほしくて、知らないところにいってほしくなくて、幹部なのに割り切れていないところが甘いのはわかってる。
「前に言ったけど、すべてにおいてマツブサ様を優先すると幹部になって誓った」
誰もがカガリみたいに割り切れるわけじゃない。不安はあるはずなんだ。その不安を飛び抜けてしまえるマツブサ様という存在と俺の価値は天と地以上の差がある。結局、カガリもマツブサ様の方が好きなんだろうな、って今まで俺の努力はなんだった。
「ホムラ、最後に聞いてほしい。ホムラのことは好きだと思ったことは一度もないけど、ホムラといて楽しかった」
「なにそれ。ショック受ければいいの?感動すればいいの?」
「……ほめてるつもり」
これでも付き合いたての頃よりは言い方が柔らかくなった方だから、カガリと付き合うのって難しい。
ポケモンを撫でるみたいにカガリが頭なでてきたから、もっとくっついてカガリの耳元で言った。
「最後なんて言わないでもっと言っていいんですよ」
カガリはじっと見てきてさらに言った。
「ホムラ好きじゃない」
「そこじゃない」
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もう我慢できない!
リメイクホムラかわいすぎか。