この前変なss投稿させていただいたので説得力ゼロですが、今日のは普通です。バレンタインネタではありますが。XYのアニメ楽しすぎて困る。
ポケモン尽くしの生活を送るサトシは気づくのが遅れたが、世間はバレンタインデーというやつであるらしい。その辺の店でもバレンタインデームードなので視界の端にくらい浮ついた空気が入り込むはずだが、自分が疎いものは認識されにくいものだ。特にサトシという少年は。
そんな彼がやっとこさ気づけたのは、セレナとユリーカの存在が大きい。二人とも優しい女の子だから、みんなの手持ちのポケモンとシトロンやサトシに、ポケモンセンターの台所を借りていっぱいチョコレート菓子を作って振舞ってくれたのだ。
みんなで騒がしい中ポケモンのように笑顔でチョコを頬張るサトシに、シトロンが説明をしてくれた。
「地域によっては、男の人から女の人に贈ったりもするそうですよ。単純に男女とか些細なことは関係なく、日頃の感謝を込めてプレゼントしたりもするそうです」
「グラシデアの花みたいにか?」
いつかの冒険で出会った、生意気で楽しいポケモンと、桃色の可憐な花を思い浮かべながら、サトシは何気なく言った。シトロンはかたいいしだと思ったら大きな真珠を拾っていた時のように驚いて、メガネの位置を直したりしていたが。すぐ優しい笑顔に戻って解説を続けた。
「グラシデアの花はちょっと大げさですね。あれは生えている地域が限定されすぎていて、おいそれと入手できるものではありませんし。ただ……」
デデンネに手から直接お菓子をあげているユリーカの方を見ながら、シトロンは言う。蓄積された知識を披露するのではなく、素直な気持ちをこぼしたように。
「足場は同じでしょう。一緒にいられる仲間や家族、そんな人達に感謝を贈るという気持ちは」
☆
昼間の騒ぎが夢に出る夜の時間、サトシは欠伸を噛み殺しながらポケモンセンターの部屋に戻ってきた。寝てるのならそれでいいと思っていたのだが、親友の一人での外出に、黄色いネズミはどうしたのかと訝(いぶか)しみ、あてがわれたベッドで黒目をパッチリ開けて待っていたようである。腰のボールを外し、枕元のテーブルに置きながらサトシはピカチュウの頭を撫でた。
「ゴメンな、急に思いついたからピカチュウ置いてく形になっちゃってさ」
「ピ?」
撫でられているピカチュウは、怒っているというより何をしていたの? というようにサトシを見上げている。そんな相棒に、サトシはポケットから何かを取り出して見せた。
何の変哲もない、ただの板チョコである。
「セレナとユリーカが、昼間いっぱい作ってくれたから、いらないかもしれないけどさ……シトロンも、気持ちが大事みたいなこと言ってたし」
サトシの前置きは、ついてきてくれた他の手持ちポケモンの反応に由来する。みんな申し出は嬉しいがお腹いっぱいで無理、とボディランゲージで表現し、丁重にお断り状態だった。
「ピー♪」
しかし流石はサトシの長年の相棒。あれだけ昼間に食べといて、食いしん坊が底知れない。彼なら食いしん坊ネズミとして、化け猫ニャースにケーキを次々持ってこられても平気でやっていけるに違いない。オムレットにチョコケーキ、クレープババロアなんのそのだ。
サトシがパキッと折ったチョコを、黄色いネズミはムシャ食べる。小さな相棒に勧められ、サトシもそれを一口食べた。
夜の時間に甘い匂いが広がる。旅に出る前なら絶対に怒られた、背徳的な夜食時間。みいんな眠った時間帯。一枚のチョコがなくなるまで、少年と黄色いネズミはお菓子の味を楽しんだ。
もっと尺が欲しいと思いつつシェイミ映画好きです。テーマ的にはポケ映画で一番好きかも。ポケモンなら大丈夫ってことで私はネズミポケにチョコを食わせるのをやめない。ポケモンカードと交換しようって持ちかけられるようなブツがポケモンに有害なはずがない(ネタ古すぎて意味不明)。でも現実の動物にチョコレートはあげちゃダメですよ。