ルンルン気分でミルクと砂糖入りのコーシー(コーヒーを軽く言った俺語)をいれてテーブルに戻ったところ、ハムエッグとレタスの挟まれたサンドイッチがサンドのサンドイッチに変貌していた。食パンと食パンに挟まれた、まだまだ小さいサンドの口の周りには卵の黄身と白身がくっついていた。ゲップまでしている。これだけ状況証拠がそろえば言い訳もクソもあるまい。こいつがハムエッグレタスサンドをサンドのサンドイッチにしたのである。向こうの部屋からずだだだだだだだ! と、鋭い背中と爪を持った、サンドに似た姿格好のポケモンが走ってくる。僕のサンドパンだ。
僕のサンドパンはテーブルの上のサンドのサンドイッチを見ると、ああ! という顔をしてテーブルによじ登り、我が息子のサンドのサンドイッチをひっぱたいた。ぎゃいぎゅい言ってるのはガミガミクドクドお説教しているのだろう。サンドのサンドイッチはサンドされたまま泣いている。
一通りお説教の終わったサンドパンは不意に僕の方を向いた。そしてサンドのサンドイッチをかばうように抱きしめるとぎゃいぎゅい鳴いた。さめざめ涙まで流している。これは私の朝食よ、食べないでちょうだい! とでも言ってるのだろう。
ごめんウソ。息子の粗相を許してやってくだせえご主人、と僕に訴えていたのだろう。朝だからお腹が空いてたんじゃないかな。怒ってないよ、と言うと、ありがたき幸せですご主人、と平伏した。昔から義理堅い性格だったけど、子どもを持ってからますますそれが悪化した気がする。僕はこいつにそんな悪政を強いていただろうか。少なくともいつの間にか抱えていた卵をウチで育てれば、と言ってやるくらいはこいつに甘かったはずなんだけど。
「……怒らないけど、残ったパンは君達で食べなさい。僕はもう、いいや」
サンドパンはまたへへーっと頭を下げ、サンドのサンドイッチの上部分を取ってムシャリ出した。息子が具を食ったからもういいやって感じにパンから退いて毛づくろいしだしたのをまたパカンっとひっぱたくのも忘れない。びええんかーちゃんひどいよう、とさめざめ泣く(この辺の仕草がおやそっくし)息子にいいからあんたもお食べ、と食パンを差し出すサンドパンを見ながら、僕は少し冷めた甘ったるいミルクコーヒーをすすった。
n番煎じっぽいネタですが気にしない