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  [No.3706] バトルサブウェイの怖い話 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2015/04/11(Sat) 00:44:57   150clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

イッシュ地方の特異なバトル施設、バトルサブウェイ。
地下鉄という閉鎖空間の中、地下を走りながらバトルするという特異な環境ゆえか、
そこにまつわる怖い話や不思議な話も絶えないという……。

不思議な人物やポケモンに会った、とか。
車窓からありえないものが見えたとか。
おかしなところに出た、とか。

このスレではみなさんがバトルサブウェイで見た、聞いた、体験した怖い話や不思議な話を投稿してください。


  [No.3707] 彼の見るもの 投稿者:ピッチ   投稿日:2015/04/11(Sat) 01:20:51   75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:ジャッジ

 バトルサブウェイの入り口、いや入り口って言っても本当の玄関ゲートのところさ。いつも立ってる人がいるでしょう? そう、ジャッジさん。
 サブウェイで名を挙げようってトレーナーはみんなよくお世話になるけれど。……この前、ちょっと気味の悪い話聞いちゃったんだ。
 あるトレーナーがさ、ジャッジさんにこれから育てようとしてタマゴから孵したたくさんのポケモンを洗いざらい見てもらって、ようやく最高の力のあるポケモンを見つけ出すことができたんだって。喜ぶトレーナーに向けて、だけど、ってジャッジさん、一言付け足したらしいんだ。

「あなたのトレーナーとしての力は、まずまずっていうところですから。十分に、お気をつけて」

 ……その後?
 その人が育てようとしてたっていうのが、モノズだったらしくってさ。あの、扱いの難しいことで有名な。
 なんでも全然トレーナーの言うことを聞かなくて、バトルどころじゃなかったんだって。なんとか進化まではさせたらしいけど、それで凶暴さがなくなるかって言ったら、逆でしょう。終いにはトレーナー本人も腕を片方食い千切られて、ポケモンなんか二度と触れないってくらいになったとか。
 本当かどうかは知らないけど、……でも、有り得る話だって思わない? あれだけポケモンの素質がはっきり分かるならさ、トレーナーの素質だって分かってても不思議じゃないし。
 本当はあの人、入り口に私たちが来たところでもうどの辺までいけるのか全部お見通しなのかもね。


  [No.3708] 幼馴染と会った話 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2015/04/11(Sat) 01:29:35   102clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 バトルサブェイでバトルをしていたところ、十戦目くらいで懐かしい顔に当たった。
 ジャック。同じ町から旅立った同期だった。
 もう何年も会っていなかったが、当時の面影が残っている。
 最初にあいつが貰ったポカブはすっかり立派なエンブオーになっていた。
 連続で繰り出されるつっぱり。車両を揺るがすヒートスタンプ。
 正直かなり手ごわかったがなんとか勝つ事が出来た。

「あー、やっぱ強いな。お前」

 ジャックは言った。
 相性ではこっちが有利なのに、と。

「覚えてるか? 最初にポケモン貰った時、俺達バトルしただろ。
 あの時も勝てなくてさ。俺、すごい悔しかったんだ」

 だから一生懸命育てたんだぜ、ジャックは続ける。
 それから二言三言言葉を交わしたけれど、敗者は車両から出なくちゃいけなかった。
 去り際にジャックは言った。

「あー、とうとう勝てなかったな」

 そう言って同郷の友は出ていった。

 ジャックには辛勝した俺だったが、次の相手にはあっさり負けてしまった。
 あっけないほどの三タテだった。
 俺は車両を降りた。
 おふくろからのライブキャスターが入ったのはホームに降りたすぐ後だったと記憶している。

「ひさしぶりやねー。今何しとっと?」

 画面の向こうで母が言う。

「バトル」

 何だよ。こんな時間に。
 内心ウザイと思いながら俺は答える。

「で、なんか用?」
「ああ、それがなー……」

 次に母はおかしなことを口にした。

「お前と同じ時期に旅に出たジャックを覚えとる? あの子、亡くなっとーと」
「…………」

 何を言っているのかわからなかった。
 だって、ジャックなら。
 さっき。

「一年前くらいからな、悪かったらしいわ。ずっとヒウンの病院に入院してて」

 今朝、息を引き取ったらしい。
 そう母は告げた。

「葬式はこっちでやるらしいから、お前も一度顔見せとけ」

 そう母が言って、以後はよく覚えていない。
 その後、葬式があって、そこで俺は物言わぬジャックと再会を果たすがそこにいたのは抜け殻だった。
 本人はもうここにはいないのだと、そんな空虚さが俺の感覚を占めていた。

 あれからもう何年も経って、あの時何を話したかも忘れてしまったけれど、
 とうとう勝てなかった、というその台詞だけが忘れられない。


  [No.3709] 車窓から(1) 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2015/04/11(Sat) 02:46:36   147clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

バトルサブウェイは地下を走っている。
当然見えるのは暗い壁やそして近づいては去っていく均等に配置された明かりばかりだが、ふと窓を見ると違う景色が見えることがあるという。

それは深海にいるはずのチョンチーの明かりだったり、トンネルに現れるいくつもの鬼火だったり。
バトルの合間になんとなく窓を見たら、ガラスにカゲボウズがびっしり張り付いていていた、という話もある。

体験談、作り話、ただの見間違い、酔っ払って見た幻覚。
もはやどれが本当でどれが嘘かもわからないが、これはと思ったものを紹介したい。



<終わりなきハブネーク>

 ライモンシティに住むAさんは、バトルサブウェイの常連だ。
 Aさんは一年ほど前、サブウェイの走るトンネルの壁を這っているきばへびポケモン、ハブネークを見たという。

「列車が動き出してすぐ後ですよ。なんとなく窓を見たら、壁を這ってて。顔は見えなかったですよ。胴体だけ。六角形の金色の鱗が光ってて、あの模様は間違いないですよ」

 トンネルの中にポケモンが出る事は別に珍しくないという。走る電車が線路を軋ませているその直ぐ脇をコラッタが通ってる事なんてよくあるし、ズバットがいる事もある。だからAさんもハブネークがいたからといって、珍しくはあるが別段おかしいとは思わなかったという。
 だが、

「そのうちに列車が走り出して、あれ……? って……」

 ハブネークの長い胴体は車窓から見え「続けて」いた。
 列車がスピードを上げ、すでに何十、何百メートルは走っているにも関わらず、だ。

「いくら列車が走っても、ちっとも頭にも尻尾の先にも到達しないんですよ。終わらないんですよ。そのハブネーク。一体何キロメートルあるんだって話。不思議と怖いとは思わなかったんですけど、バトルが終わるたびに振り向いてもまだ見えるんです。もう気になって気になって。何度見間違いかと思って窓に張り付いてよくよく見るんですけど、やっぱりどう見てもハブネークなんです。でも頭にも尻尾の先にも到達しないんです」

 連勝が止まって下車したAさんだったが、下車してホームからトンネルを覗き混んだ時、もうその姿は見えなかったという。


  [No.3711] 車窓から(2) 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2015/04/11(Sat) 09:55:51   153clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

<笑うイトマル>

 キョウコさん(仮名)の話。
 サブウェイで三十連勝ほどした頃だろうか、車窓のガラスに一匹のイトマルが腹を見せて張り付いている事に気が付いた。

「イトマルって背中に人の顔みたいのがついているでしょ。そのイトマルには腹にも模様があってね、・へ・みたいな模様だった。あんまり機嫌はよくない感じ。まあ私は構わずバトルを続けた。出てくるポケモンもトレーナーもどんどん強くなるし、それどころじゃないって感じ」

 それでも気になって時々バトルの合間に窓を見るとまだイトマルは・へ・の腹を見せて張り付いていたという。

「あれは四九戦目だったからよく覚えてる。もう少しで五○戦目だーって意気込んでいたら、ポケモンが技を外して、すんでのところで負けてしまって。まー負けは負けだからしょうがないかって、列車を降りようと思って……」

 キョウコさんはまた、何気なく車窓を見た。

「笑ってたの。イトマルの腹が。さっき・へ・じゃなくてあきらかに口を三日月みたいな形にして。いかにもニターッって笑みを浮かべて笑っていたのよ」




<追いすがるギャロップ>

 車窓とトンネルの間の狭い空間の間を何者かが移動していた、という話もサブウェイでは珍しくない。

「僕の場合はギャロップです。そう、ひのうまポケモンのギャロップ」

 そう語るのはヒウンに住む会社員のジムさん(仮名)。
 バトルに熱中していたのだがどうも自分の右方向が明るいような気がする。
 窓のほうを振り向いたらものすごいスピードで走る車両に併走する形で、炎のたてがみの火の粉を散らしながらギャロップが走っていたという。

「いやびっくりしました」

 だが、うっかりトレーナーが外に出してしまったとか、狭い空間なのになんて事を考える余裕はなかったという。

「というのもね、車窓にぴったりと併走しながらね、ギャロップがものすごい形相で私をにらんでいるんです。顔の左半分でね、目を異様なほどにと見開いて歯を見せてね。トンネルの中の風のせいなのかな。唇が煽られてぶるぶると震えていてね。裏側がばたばたとめくれて見えるんですよ。涎がね、飛び散ってね、窓にもついてね」

 ギャロップに恨まれるような覚えはさっぱりないというジムさん。
 だがそれはとにかく恐ろしい形相であったという。
 そんなギャロップもジムさんがバトルに負けると減速し、瞬く間に見えなくなってしまった。

「負けた以上にほっとしましたね」

 そうして今改めて考えると不可解な点がある、と彼は言う。

「これ、降りてから気が付いたんですけど、その位置にギャロップが見えるのっておかしいんですよね」

 ほら、見てください。
 と、ジムさんはホームの下を指さした。

「線路から、我々の立っているホームまで、少なく見積もって人一人分の高さはあるでしょう。さらに我々の足元から車窓のガラス部に達するまで一メートルくらいはあるでしょう。だいたい二.五メートルとして。でも、窓からギャロップの顔が見えていた」

 ギャロップの頭のある位置は大きい個体でも地面から二メートルくらいでしょう。
 地面を走って併走しても、絶対に顔なんか見えないんですよ。
 でも、窓から顔が見えた。
 なら奴は空中を走っていたという事なんですかねえ……。


  [No.3712] ある記者の取材メモ 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/12(Sun) 02:04:57   81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


(1)
 怖い話、とは少し違うかもしれませんが。
 ポケモンバトルの途中、お恥ずかしいことですが、集中が解けて、気持ちが緩んで、ふっと窓に目がいきました。すると、まるで豪雨の中を走り抜けてきたかのように、窓の外が濡れていたんです。
 窓の外のそれは、水滴が細い筋をいくつも引くような、そんな生易しいものではありませんでした。水の膜が張り付いて、電車が丸洗いされているかのよう。それも、もう確実に地下のことで、トンネルに据え付けられた照明が、一定間隔に、その輪郭を水に歪ませながら流れていくのが見えたのです。
 そのバトルは勝って、次のバトルでひと区切りでしたが、矢も盾もたまらなくなって。棄権してすぐさま折り返しのギアステーション行きへ乗りこみました。
 そうして無事に戻ってこられたので、今こうしてコーヒーを飲みながら喋っているというわけです。
 にしても、あのまま乗り続けていたら、どうなっていたのでしょうね。


(2)
 バトルサブウェイは表沙汰にしてませんが、実は行方不明者が多い。そんな話、聞いたことありませんか。
 バトルの高揚、勝利への執着、そして地下鉄という空間の特殊さが、この類の都市伝説を作り出しているのかもしれませんが、さて。
 私が聞いたのは、その続きの話です。
 地下鉄で行方不明になるほどバトルに嵩じたトレーナーは、しかし、順調に勝ち続けることはできませんでした。負けたトレーナーはライモンシティへ戻ると思しき電車の中で、延々と考え続けます。
 さっきのバトルのどこが悪かったのだろう。技の選択、交代のタイミング、相手の技の読み違え。バトルレコーダーの狭い液晶でバトルの様子を右から左から上から下から眺める内に、やがてトレーナーの目はポケモンバトルを右から左から上から下から眺められる位置に、すなわち、電車の床や天井や窓に張り付いていることに気付きます。いえ、それだけではありません。トレーナーは電車になっていたのです。
 とまあ、勿体ぶって話しましたが、要は負けたら電車になるという話ですよ。ろくに連勝できない私には縁のない話です。


(3)
 聞いた後で、やっぱり勘違いなんじゃないか、って言われそうな話ですけど。
 この間、サブウェイに挑んだんです。七連戦を連勝して。七戦目の時に、なんだかおかしいな、とは思ってたんですよ。でも、バトルが終わって、気が抜けまして。端末があったから、いつもの癖でそこに行って、ポケモンを回復して。そしたら表示が出たんです。
「次は8戦目です。準備はいいですか?」
 冷水をかぶせられたような気がしました。寝ていたわけではないですけど、起きたような、たとえば突然目の前に色違いのポケモンが出てきて、ボールを投げる前にそれが色違いかどうか確かめるような、そんな心地でした。
 私はいつもの癖で「続ける」を選びそうになった腕を下ろしました。そして、恐る恐る、目を皿のようにして選択肢を確かめながら、リタイアを選びました。
 折り返しの電車は、すぐライモンに着きました。駅から出て太陽の光を浴びた時、あんなにホッとしたことはなかったと思います。
 あの時、八戦目に進んでいたらどうなったんでしょう。なぜあの電車だけ、八両だったのでしょう。そもそも、どうしてバトルトレインって七両編成なんでしょうか。


(4)
 路線図をじっくり見たことってありますか。
 バトルサブウェイの路線って、独特な形だと思うんです。中央部、ハイリンクを避けて、ぐるりと円を描いている。でも実は、そこを通る線路があるそうです。通したけど使われずに廃線になって、今でもそこに残っているのだとか。
 使われずに廃線になった理由も色々言われていますが、ひとつは、その路線を幽霊列車がゲラゲラ笑いながら走り続けたから。この幽霊列車は、廃線になった今でも、閉じられた壁の内側で、笑いながら走り続けているらしいです。そして、バトル中毒のトレーナーたちを、その車両の中に取り込んで、来る日も来る日もお腹の中でポケモンバトルをさせながら、ゲラゲラ笑って走り続けているそうです。今でも。


(5)
 これはさして怖い話でもないんですが。
 真ん中あたりの車両で、バトルで勝った後、ちょっと休んでたんです。シートに体を預けて、向かいの窓の外を眺めながら、僕が休んでてもバトルトレインは走り続けるんだなあって思って、まあぼんやりしてましたね。戦った相手もすぐそこに座っていたんですが、特に喋りもせず。
 そしたら、不意に次の車両に続くドアが開いたんです。僕はてっきり、休んでたから車掌さんが急かしに来たのかと思いました。けれど、そこを通って来たのは、ワゴンを押したおばさんでした。飲み物や食べ物を満載したワゴン。車内販売でした。
 おばさんが僕の側を通る時に、何か買いますか、と聞かれました。何があるのか尋ねたら、おいしい水とかサイコソーダとか、あと、能力アップ系の栄養剤がたくさん。それがね、また値段が安かったんです。タウリンとかブロムヘキシンとかが、千円くらい。思わずまとめ買いしてしまいました。車両にいたもう一人は、何も買わなかったようですけど。
 その後は、普通に次の車両に進んで、バトルして、でもまとめ買いで気が弛みました。負けて、ギアステーションに戻りました。
 で、後で知ったんですけど、バトルサブウェイは車内販売ないんですね。もう使っちゃったんですけど、特に異常もないし、大丈夫ですよね。


(6)
 ポケモンバトルでは集中して、とは当たり前ですが、この話を聞いてから、集中なんてできやしない、と思うようになりました。ええ、この話は伝聞です、恐縮ですが。
 バトルサブウェイには魔物がいるそうです。
 ここ一番の勝負で“ぜったいれいど”が三回当たっただとか、そんな類のものではありませんよ。ただ、線路の先で大口を開けていて、電車ごと呑み込んでしまう。そんな魔物がいるそうです。それはバトルに取り憑かれ、サブウェイに挑み続けた人間の成れの果てで、あまりの執着にバトルトレインごと食ってしまうのだとか。
 魔物から逃れる術はないそうです。バトルに集中していて、気付いたら呑まれている、と。
 もし幸運にも呑まれる途中で気付けば、逆向きの電車で出られるそうですが、無理ですよねえ、そんなの。


(7)
 怖い話ですか。だめですよ、記者さん。怖い話は七つ集めると七不思議になって、えっと、七不思議を全部集めたらだめなんですっけ。えっと。
 じゃあこういうのはどうでしょう。
 ギアステーション名物ギアステバーガー。怖いくらいに美味しいです。っていうのはだめですかね。


  [No.3724] 車窓より(3)【イラスト追加】 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2015/04/16(Thu) 01:23:33   153clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
車窓より(3)【イラスト追加】 (画像サイズ: 600×498 36kB)

 反対車線。
 サブウェイでバトルを続けているとギアステーションに戻る反対車線の車両とすれ違う事がある。
 そんな時に何かを見てしまった……という報告も大変多い。



<車両の二人>

「僕が見たのは乗客二人……正確には一人と一匹ですね」

 リックさんは語る。

「反対車線に列車がきてね、一瞬見えたんですがね、スリーパーがね、少女の手を引いていたんです。背の高いスリーパーが五歳くらいの女の子と手をつないで、後ろ姿でね。すごくその身長差が対照的でね。他には誰も乗っていない。他の車両にも。なんかこう、異様な感じでした。普通に考えたらトレーナーとそのポケモンなんでしょけど、あれはちょっと、こう、ね。僕の勘違いならいいんですけどねえ」



<自分>

 こんな話もある。

「私が見たのは自分でしたね。最初はこう鏡でも見てたのかと思ったけど、明らかに向いてる方向違うし。一心不乱ににね、バトルしてましたよ。持ってるポケモンも同じで」

 ドッペルゲンガーという奴だろうか。

「でも幸いにその後、死んだとかはないですよ。現にこうして話しているわけだからね」

 対向車線にいる自分を見たという話は多数報告されている。
 中には過去の自分だったり、自分と目があったりなどシチュエーションも様々だ。
 中には年老いた自分を見たという話もある。
 年老いているが、自分の事だからわかる、という。



<懐かしい友人>
 
「久ぶりにね、友人の姿を見たんです」

 ジェントルマンのラッセルさんは語る。

「懐かしくてね、反対車両ごしに一生懸命声をかけたんですけど、さすがに気づいてもらえなかった。まあ、走行音もうるさいし、仕方ないよね」

 いてもたってもいられなくなったラッセルさんは、乗っていた車両から下りて次に来た列車でギアステーションに引き返した。もしかしたら、友人がいるかもしれないと思ったからだ。

「残念ながらいませんでした。もうステーションを出ちゃったのかな。まあ、仕方ないかなって思っていたら、私気が付いてしまって。あ、あいつもう去年に死んでたわって」

 歳を取ると物忘れが激しくていけませんね。
 ラッセルさんは屈託なく笑った。



<ぼくのだ>

 ケリーが見たのは、対向車両に乗っていたポケモン達だった。
 もう少しでカナワタウンに到着、という頃だった。列車はずいぶんとゆっくり走っており、対向車の中はよく見えたという。
 種類は様々だった。ミネズミにハトーボー、ハーデリアにバオップ、ペンドラー……その多くはイッシュで手に入る標準的なポケモン達だったがそのうちに彼は気が付いてしまった。
 これ、ぼくのポケモン達じゃないか……。
 ボックス1、ボックス2、ボックス3……その車両数はケリーが使っているボックスの数だけあって、対応する車両にそれぞれボックスに入れているポケモン達が同じように乗車していたという。



<車両に詰まっていたもの>

 一時期、こんな問い合わせがサブウェイに多数寄せられた事があったという。

「サブウェイは普通車両で貨物の扱いを始めたのか」
「しかしあれはあんまりではないのか」
「いくらなんでもひどい」

 問い合わせの電話越しで相手が言う。
 対向車線を走っていた車両にはポケモンのタマゴがぎっしりと詰まっていた、と。
 貨物用の車両ではない、普通車両に、だ。
 もちろん過去から現在に至るまで、サブウェイでは普通車両で貨物を扱っていないし、サブウェイ側も否定を貫いている。


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totoまめさんがイラストをつけてくださいました!