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  [No.3747] 赤い短冊 投稿者:Ryo   投稿日:2015/05/22(Fri) 21:39:59   83clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ミナモシティから船で半日ほど東へいったところに、トクサネという小さな島がある。
標高が最大でも280メートルしかないこの島は、今ではこの国唯一の宇宙センターがあることで有名だが、かつては椰子の林とさとうきびや芋の畑があるだけの小島であった。
島の人々は、畑で採れる作物と海の恵みを糧とし、島の周辺に生息するパールルの真珠やそれを使った工芸品でホウエンの人々と交易を行いながら慎ましやかに暮らしていた。しかし、小さく平らな島であるので、一度嵐に襲われれば、僅かな耕地はみんなだめになってしまう。しかも丁度潮の流れのぶつかるところにあるこの島にはそういうことが頻繁にあったので、島民の暮らしはいつも苦しかった。

ホウエンには星や隕石に纏わる伝承が多いが、宇宙センターを有するトクサネも例外ではない。科学の進んだ今では廃れてしまった話だが、この島の人々にはオホシサマという存在に島の暮らしが良くなることを願う風習があった。オホシサマは色の白い人間の子供のようなすがたをした神様で、島の人々が苦しんでいると涙を流し、その涙が海に落ちると漁場を豊かにし、畑に落ちると実りを多くするのだという。
旧暦の7月7日にある星祭りの日の夜に、オホシサマは家を一軒一軒まわって、その家に苦しいことや悲しいことがあるだけ涙を流す。なので人々はこの日は仕事を早くに終えて、家の中で静かにしているのであった。騒がしい家にはオホシサマが近寄らず、恵みを受けることができないからである。
今はもう無くなってしまったが、昔は島の北側の林に小さな祠があり、オホシサマを祀る白い岩が置かれていた。星祭りの日にはこの島の巫女が青い涙の色の短冊をこの白い岩に貼り、島の人々が豊かに暮らせるよう願ったのだという。

このようにトクサネの人々は島の全ての良いことはオホシサマがもたらしてくれると信じていたのだが、時には恐ろしい願いをオホシサマに祈ることがあった。
先に記したようにトクサネの人々の暮らしは決して楽なものではなかった。高い山もない小さな島は数日雨が降らなかっただけで草木も人も干からびてしまう。台風が来れば畑は荒れ、時化が続けば頼みの海にも出られない。人々がいよいよ飢えと乾きに苦しんだ時には、島の巫女は祠の白い岩に赤い短冊を貼ったのだという。これは何を願ったものかというと、島の近くを通る交易船が遭難するようにということなのだった。人々は遭難した人々をよく助け、その礼として生活に必要な色々のものをもらうわけだが、良くない心の持ち主や真に困窮した者は難破した船から盗みもしたという。言い伝えによるとこの赤い短冊を貼られるとオホシサマは赤い涙を流すということだが、船が遭難するようにという願い事をすることは、まさに人の血が流れる恐ろしい祈りであった。
トクサネのすぐ北東には洞穴の開いた小さな島があるが、あの辺りは潮の流れの関係で、船がよく座礁するところであった。そしてそこを通る船はホウエンに行く船ではなかったので、島民の気が咎めることもまだ少なかったのだ。あるいは祠がその小島を見通せる北東に建てられた理由もその辺りにあったのかもしれない。
難破船のもたらすものは、食料や交易品はもちろん、破損した材木さえも家具材として人々の生活の大きな糧となった。例え島から離れて沈んでしまっても、それを糧として多くのポケモン達が集まり漁場が豊かになり、島の暮らしを支えてくれた。決して心地良い話ではないため、島の人々はあまり口に出してはこういうことを言わないが、当時の人々がどのような気持ちで最後の願いを赤い短冊に託したかを思うと、簡単に責められる話ではない。
今では宇宙センターとロケットの発射台ができたためにオホシサマの祠は椰子の林ごとなくなってしまい、白い岩だけがロケット発射実験の成功を願うものとして島の中央に置かれるようになった。


  [No.3816] サイユウ民話-龍にもらった刀 投稿者:Ryo   投稿日:2015/09/04(Fri) 00:52:04   89clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

昔々、サイユウの町は、ホウエンからやって来た偉いお侍が治めておったそうだ。
ホウエンのお侍は、サイユウの民に重い年貢をおさめさせて、朝から晩まで働かせ、たいそういばっておったということだよ。

そんなお侍が、ある日、村々の見回りをしておる途中に、草むらの中から「おい、おい」と小声で呼ばれたって。
お侍というのは、その辺りの村人が簡単に「おい」なんて呼んでいいお方じゃない。だからお侍が
「侍に向かってかように無礼な態度を取るとは、何奴か!」
とカンカンに怒って草むらに分け入ったらさ、なんとそこにいたのは人じゃなくて、大きな紫のハブのマジムン(サイユウでは昔、ポケモンのことをこう呼んでいました)だったんだよ。
ハブが口を聞くなんて、とお侍がおどろいたのもつかの間、ハブはお侍にこんな頼み事をしたって。
「お前さん、ちょうどいい所に来てくれた。今からわしは龍になるための準備をするから、そこで誰か来ないか見張っていてくれんかね。特に、白いイタチのマジムンが来たら、何としても追い返してくれんか」
お侍は、ハブの言うことを聞くなんて、と思ったが、しぶしぶとハブの言うとおりにした。龍ってものを、自分の目で見てみたい気持ちもあったんだろうね。それでハブを背にしてしばらく草むらに立っておった。
そうしたら白いイタチのマジムンがやって来て
「紫のハブを見なかったか」
とお侍に聞いたと。お侍はハブに言われた通り
「いや、見なかった」
と答えたら、白いイタチは不思議そうに首をかしげて、きた道を戻っていった。そうこうするうちに紫のハブは、立派な白い龍の姿に変わっておったって。

白い龍はお侍にこう言ったそうだよ。
「お前が見張ってくれたおかげで、わしは無事に龍になることができた。お礼にこの紫の刀をあげよう。これは、わしら紫のハブの一族が、白いイタチの一族と戦うためにずっと持っていたものだけれど、わしはもう戦うのにほとほと疲れてしまったのだよ。そういう理由で龍になるのだから、もういらなくなったこの刀をお前にあげるけれど、決してこの刀で生き物を切ってはいけないよ。龍からもらった刀だと言って見せればそれだけで人も獣も何でも言うとおりになるから、どうか切ることだけはしないでおくれよ」
お侍はこれを聞いて大喜びした。見せるだけで誰でも何でも言うことを聞く刀なんて、お侍にとってはすごいお宝だったろうね。だから
「わかり申した、約束、しかと守らせていただこう」
ときっぱりとした声で言ったって。
それで、白い龍は安心して紫の刀を置いて、天に登っていったんだよ。

紫の刀を持ったお侍は大いばりで、サイユウのある村へやって来た。そうしたら、お百姓たちが困り果てた様子で道ばたに座っておった。
お侍は
「どうしたどうした、さっさと畑仕事をせんか」
と、どなった。お百姓はお侍を見て、慌てて地面に頭をこすりつけながらこう言ったって。
「それがお侍様、鳥や獣や虫のマジムンが畑に次々やって来て、仕事にならんです」
「わしらもほとほと困っております。今すぐに追い出しにかかりますから、どうぞお許し下さい」
お侍はこれを聞いて、ははあ、ちょうどあの刀を使ってみるのにいいな、と思った。それから
「かっかっか、なんじゃ、そんなことならわしに任されよ」
と、大笑いをしながら、ゆうゆうと畑へ向かったって。

お侍は、この村の畑が全部見下ろせる丘へやって来た。なるほど確かに、トウキビの畑にも、イモの畑にも、いろんな鳥や獣や虫のマジムンが集まって、荒らし放題やっていた。
お侍は、龍にもらった紫の刀を天へ向かって抜き放ち、高らかな声で言ったって。
「獣よ、虫よ、鳥よ、これを見よ、これなるは天におわします龍神様よりいただいた刀であるぞ。この刀の持ち主のわしに逆らうことは、龍神様に逆らうことであるぞ。分かったらこの地から去れい」
そうするとね、あっちからピイピイ、こっちからギャアギャア、いろんなマジムンたちの騒ぐ声がして、鳥も獣も虫も、みーんな逃げてしまったって。
お百姓たちは大喜びして、
「お侍様、ありがとうございます」
とお礼を沢山言ったって。
さて、これだけならこのお侍は、いいことをしたと思うだろうね。でも、お侍は紫の刀をお百姓に向けて言ったって。
「お前たちもさっきの言葉を聞いていただろう。わしの言葉に逆らうことは、龍神様に逆らうことなのだぞ。分かったらさっさと働いて、畑を元に戻さんか」
お侍の言葉を聞いたお百姓の顔は真っ青になって、
「へへー、分かりました。すぐに畑仕事に戻ります」
と、みんな慌てて畑へ向かったって。
それでね、お侍は
「これは良い物を手に入れた。これでみんなわしの言うとおりじゃ」
と、とても気分を良くして、お城へ帰ったんだよ。

それからお侍は、龍からもらった刀でお百姓を無理やり働かせて、年貢をたっぷり取り上げた。
男も女も、オジイもオバアも、子どもや病気の人まで働かせたんだよ。
ひどいもんだねえ。

ところがある年、あちこちの村の畑にひどい病気がはやって、作物はみーんな枯れてしまったって。
お百姓たちは、年貢どころか、自分たちの食べるものにも困る有り様だったということだよ。
「お侍様、作物がみんな枯れてしまったので、どうしても今年は年貢が納められません。どうぞお許し下さい」
そう言って村のお百姓たちは泣いて謝ったけど、紫の刀を持ったお侍は許さなかったって。
「何としてでも年貢を納めないと、許さんぞ」
そう言って紫の刀を向けて怒ったけれど、お百姓は頭を地面にこすりつけて謝るだけで、なんにもならない。
いくらなんでも、何にもないところから年貢がわいて出てきたり、枯れてしまった作物がみるみるうちに元気になる、なんてことは、どんなに龍神様の刀を振りかざしても、無理な相談だったわけ。
お侍はカンカンに怒った。紫の刀でもどうにもならないことが、がまんできなかったんだろうね。だから
「ええい、こうなったらお前を殺して、村人へのばつにしてやるわい」
そう言って村の広場へお百姓を連れて行くと、縄でしばって、紫の刀を振り上げた。

するとそのとたんにね、空が雲におおわれて、嵐の前のような強い風がふいてきたって。
村人たちが
「なんだ、なんだ」
と不思議そうな顔をする中、お侍はあのハブのマジムンとの約束を思い出して、真っ青になったけれど、もう遅い。

ガラガラドッシャーン!!

ものすごいカミナリが村の広場に落っこちて、その真下にいたお侍は死んでしまったって。

それでね、お侍の服はこげていたけれど、側に落ちていたあの紫の刀だけは、きれいなままだったから、村人たちは
「ははあ、このお侍はこの刀を龍神様からもらったものだと言っていたけど、それは本当だったんだなあ」
「弱い者いじめをしてきたから、バチがあたったんさあ」
と、うわさしあった。
それでその刀は、村のお社にあずけられて、大切にまつられることになったということだよ。


あとがき
このお話では、ハブネークが白い龍になったということが伝わっています。
白い龍のポケモンといえば、ハクリューですね。昔、ポケモンの進化のことがまだよく分かっていなかった頃には、ハクリューの進化前のミニリュウというポケモンも見つかっていませんでした。だから、他の種類のポケモンが、修行をしてハクリューになるのだと思われていたのです。
このお話に出てくるハブネークは、紫色の姿をしていますが、その抜け殻はハクリューのように真っ白なのです。だから、昔の人は、ハブネークが修行をしてハクリューになるのだと考えたのかもしれません。

また、このお話では、サイユウの人々がホウエンからきたお侍に苦しめられる様子が書かれています。昔、サイユウやトクサネ、ムロといった島々は、ホウエンの領主に治められ、このお話のように重い年貢を払わされて、苦しい暮らしをしていました。サイユウやトクサネには、マジムン(ポケモン)の不思議な力を借りて、そうしたお侍をやり込めるお話が沢山残っています。このことから、サイユウの人たちがマジムンの力を敬っていたこと、そしてマジムンの力を借りてでも苦しい生活を抜け出したい、と強く願っていたことがわかります。


  [No.4022] 異説・ジョウト神話 神なる鬼と鎮守の鎧 投稿者:Ryo   投稿日:2017/07/20(Thu) 02:04:22   77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 エンジュシティに伝わる焼けた塔とホウオウの伝説は、ジョウト地方を代表する神話として、地方を越えて多くの人々に親しまれている。
 最も一般的に知られている逸話は「カネの塔が雷で焼け落ちた時、そこに住んでいた三体の名も無きポケモンが火事で息絶えた。そこにホウオウが現れて三体のポケモンを、ライコウ、エンテイ、スイクンとして復活させた」というものであろう。
 しかし、神話や伝説というものには異説がつきものであり、このホウオウ伝説も例外ではない。
 以下に紹介するのはその異説の一つであり、オニドリルとエアームドが変じてホウオウとルギアになったとするものである。ある種のポケモンが全く別種のポケモンに変ずるということは、今の時代からすれば一見考えがたい説に思えるが、カロス地方においては、幻の存在とも呼ばれるディアンシーというポケモンが、実はメレシーの突然変異種であることが研究で分かっている。ホウオウとルギアに関しても、別種のポケモンの変異種である可能性が全くないわけではないのだ。
 そうした可能性に思いを馳せながら、一種独特の神話の世界を垣間見てみよう。

***

 昔々、延寿の町には二つの塔が建っていた。
 二つとも立派な塔であったのに、あまりに古いものであるためか、その由来は誰も知らず、ただカネの塔、スズの塔と呼ばれていた。
 その二つの塔の頂に、二羽の鳥がそれぞれ住んでいた。
 カネの塔に住んでいた一羽は鎧鳥、スズの塔に住んでいた一羽は鬼嘴鳥(きしどり、今で言うオニドリル)である。
 元来、鎧鳥は刃のような翼で草木や獣、人をも斬ってしまう鳥として人々に恐れられる鳥であった。このカネの塔に住まう鎧鳥もやはり恐れられていたが、この鎧鳥はいつも塔の頂に居座ったままで、何一つ人に害なすことはなかったという。
 一方の鬼嘴鳥はといえば、こちらは元々、人が近づけばたちまち空へ上がり、一昼夜降りてこないとされるほどに臆病な質であるはずのものが、少しでもスズの塔に近づく者があれば、その長く鋭い嘴で直ぐ様追い払ってしまったという。その時の鬼嘴鳥の怒り狂う様の恐ろしいことは、まさに鬼の如しであったと言われている。

 ある時、カネの塔に見知らぬ獣が出入りしているという噂が延寿の町にはやり、これを一目見ようと忍び込もうとする者がいた。が、カネの塔の頂から鎧鳥が刃の如き羽を一枚落として睨みつけ、スズの塔の頂から鬼嘴鳥が舞い降りて嘴で激しく攻めたてると、一目散に逃げていった。延寿の人々はこの様を見て、最もなことだと噂しあったという。
 カネの塔に住む正体の知れぬ獣の事は、その後も人々の口にのぼるところとなり、一時はその姿を目で捉えたという者も現れたが、いざ正体を掴もうとすると尽く二つの塔に住む鳥たちに阻まれ、誰も事を成し遂げることはできなかった。

 嘉永二年の夏、延寿の町を大嵐が襲った。嵐は風と雷を呼び、雷はカネの塔に落ちた。これがカネの塔を焼いた大火である。
 この時人々はみな家に閉じこもっていたが、大火の報せを聞くやいなや外へ飛び出し、この後のことを見た。
 延寿の町に並び立つ塔のうちの一つが、頂から真っ二つに裂けて燃え盛っている。吹きすさぶ雨風にも因らず炎の勢いはますます強く、人々は恐ろしい光景に身を震わせた。そしてそのうちに、はたと気づく者がいた。
「あの塔に住んでいた鎧鳥はどうなったか」
「あの塔に居着いているという獣はどうしたか」
「鬼嘴鳥の姿もどこにも見えない」
 口々に言う人々の恐怖がいよいよ頂点に達した時、燃えるカネの塔の中から凄まじい鳴き声が聞こえ、続いて一羽の鳥が矢のような勢いで空に向かって舞い上がっていくのが見えた。
 鳥は頭から尾羽根まで炎に包まれていたが、その鬼の角のように長く鋭い嘴を人々が見違えることはなかった。
 鬼嘴鳥は雨風に打たれ、炎に焼かれながら、雲を割るような声をあげて真っ直ぐ空へ上がっていく。その様子はまるで天に怒り、戦いを挑むかのようであった。その鬼嘴鳥を、一つの雷が貫いた。
 この様子を見守っていた人々は、ああ、いよいよあの鬼嘴鳥の命もなくなったか、と嘆息したという。
 ところが、雷に打たれた鬼嘴鳥は命をなくして地面に落ちるどころか、ますます勢いを増して空を舞いだした。見れば、その翼は炎の朱色に染まり、尾羽根は雷のように金色に光っている。姿を変じた鳥が一つ大きく羽ばたくと、雨風はたちまち慈雨に変わり、塔を焼く炎を鎮めた。
 これが鳳凰の起こりである。
 鳳凰が焼けたカネの塔の上を一巡りし、笙の響くような声で鳴くと、声に応ずるように、焼けた塔の中から堂々たる風格の三頭の獣が現れ、何処へか走り去っていった。その姿は、塔を焼いた炎、塔に落ちた雷、塔を鎮火させた慈雨をそれぞれの身にまとったようであったという。
 これが炎帝、雷公、水君の起こりである。
 この時人々は、かなし、かなし、という声を聞いた。そして、焼け焦げた塔の中から、もう一羽の鳥が現れた。 
 その鳥の翼は白く、雨を受けて清らかに輝いていた。鎧鳥の鋼の翼が雷と炎により、白銀と成ったのだ。
 白銀の鳥は、かなし、かなし、と人の声で鳴いた。そして天に向かい、このように告げたという。
「かなし、かなし。炎に焼けて泣く獣の声が。
くちおし、くちおし。雷によりて崩る我が家居が。
おそろし、おそろし。雨風に怖じ恐る人の声が。
水底なれば、炎、雷、雨風、消え返りて事なきものを」
 白銀の鳥が飛び去ると、驚くことに、空を覆っていた黒雲がその後をついていき、延寿の空は一辺、晴天となった。空に虹が渡ると、鳳凰もまた飛び去ったという。
 白銀の鳥には長きに渡り、名がなかった。延寿に起きた災いを引き連れて飛び去ったとされるその鳥の名を呼ぶ時は嵐や雷の名で呼ばれ、災いが去ったままにしておくために塔は焼けたままにされた。
 今でも、スズの塔に鳳凰が舞い降りることはあっても、かつてカネの塔であった焼けた塔に「ルギア」と名付けられたその鳥が現れることはないのだという。
 以上が、ジョウト神話の異説である。