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  [No.3748] ポケモンハンターの起源 投稿者:WK   投稿日:2015/05/23(Sat) 11:55:49   68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 カロス貴族にとってエネコやエネコロロ、サーナイトといったポケモンは憧れの的だった。当時自らの権力を表す象徴として、入手しにくい他地方のポケモンを持つことは一種のステータスだった。
 そんな彼らの望みを叶えるのと同時に、カロスから未知の地方へと渡り、それらを持ち帰って来た人間達が、ポケモンハンターの起源だと言われている。
 彼らによってカロスに持ち込まれたポケモンの種類はおよそ三百近いという。交通機関が他地方まで及ばなかった時代、彼らは自分の信頼するポケモンと共に野を越え、山を越え、海を越えて目的のポケモンへと必死で辿りつこうとしたのである。
 特に貴族に人気があった前述三匹は、当時は遥か東の地方、ホウエンでしか確認されていなかったため、その苦労は計り知れない物があっただろう。それでもそこに行き、タマゴや幼個体であるラルトスを入手してきたのには、そこにビジネスという概念が存在していたからだ。
 需要と供給の関係。需要が多くあり、そこに小さな供給があれば、その利益は莫大な物になる。当時の貴族が嗜んでいた娯楽の中に、他地方からのポケモンを競り落とすオークションがあったと記録にある。
 これはとある貴族の日誌からだが、人気があったポケモンが舞台に上がると、一斉に彼らは値上げを始める。一番初めの値は約100ユーロ……ざっくり言えば一万円台である。これが人気のポケモンになればなるほど値は高くから始まる。
 一番高い時は色違いのラルトスであった。そこの日誌には1500ユーロから始まり、最終的に当時権力を振りかざしていたとある貴族に、9000ユーロで落札されたという。
 現在も知られている通り、サーナイトにはメガシンカが存在している。その外見の美しさは、どんなに着飾った淑女も見劣りするほどだ、と誰もが口を揃えたという。
 色違いのサーナイトは頭部がペールブルー、下半身は白である。これがメガシンカすると、下半身はドレスを着たようになり、白から黒へと染まる。
 貴族がこぞって欲しがったのも、無理はないだろう。

 さて、今でこそポケモンハンターはあまり良い印象を持たれていない。記憶に新しい、ポケモンの強奪事件や密輸事件は全て、自称ポケモンハンターによって行われている。
 しかし起源を辿れば、彼らが未知の世界を切り開いて行ったと言っても過言ではないのだ。富と名声を得た数少ないハンターの裏側には、見知らぬ土地で命を落としていった多数のハンターがいたはずだ。
 大金をもたらす仕事には、それなりのリスクが伴うということを、ポケモンハンターという職業は示している。


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元ネタ:『13歳の/ハローワーク』
『プラントハンター』より。


  [No.3749] 学問とは本来面白いものだ 1:ポケモン学 投稿者:WK   投稿日:2015/05/28(Thu) 20:44:36   39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 ポケモン学、という言葉が作られたのは本当にここ数十年の間である。ポケモンがいつからこの世界に存在しているのかは分からないが、各地に残る伝説や神話を見る限りだと、むしろ彼らが住むためにこの世界は創られたのではないか、と考えることがある。
 ポケモンだけじゃつまらん、じゃあ別の生き物でも創るか、そんな軽いノリで私達人間は創られたのかもしれない。ポケモンが世界を創りだした、という科学的根拠はないため、想像に過ぎないが。
 しかし、ポケモン学を学びたいと思う人間は、この想像に過ぎない話を裏付けようと研究している。考古学者のシェリーマンは、幼少の頃父に聞かれた話を本当だと信じ切り、やがて本当に戦火によって消滅した古代都市を発掘した。
 それが考古学会に認められたのは二〇〇一年と最近のことだが、それでもあり得ないと誰もが口を揃えたことを、長い年月を掛けて事実だと証明した彼の心と気力には感服せざるをえない。
 話はさておき、あまりにも複雑な事案はまた今度にするとしよう。ポケモン学は設立と同時に、あらゆることを解明してきた。たとえば、ポケモン図鑑。
 私の生まれた頃は、あんな小型の機械ではなかった。音声案内ももちろん、付いていなかった。全て冊子だった。そして、一年毎に新しい物が出て、買い替えなくてはいけなかった。
 何故か。ポケモンの新しい情報が、毎年次々に出て来ていたからである。
 今ではネットに繋げば数秒でアップデートされる。しかし当時は買い替えるしかなかった。新種のポケモンが見つかれば、その分だけページが増えるし、器官の用途が分かれば、内容はガラリと変わる。
 たとえば、ピカチュウ。
 あの赤い頬が電気袋だと解明されたのは、実は僅か八十年ほど昔なのだ。
 アブソルは、ホウエン出身ならきっと誰もが知っているポケモンだと思う。そう、わざわいポケモンという不名誉な分類のされ方をしているポケモンだ。
 彼らがわざわいを呼ぶのではなく、わざわいが起きる場所に来て、人間達に知らせているのではないか……と考えた学者がいた。その学者が生きている間には、その考えは認められなかった。
 一度付いた概念を払拭するには、膨大な時間を要する。特に古い風習が残っている地方ならば、尚更だ。


 人がポケモンと共に生活するようになって、どのくらい経っているのかは不明だ。少なくとも、一五三二年の帝国侵略の記録には、ギャロップやゼブライカを引き連れていた部隊の記録がある。彼らは皇帝を捕虜にするために、わずか二〇〇人で八万人もの兵士を倒したという。
 ギャロップ、ゼブライカはスピードと耐久力があり、高い位置から急降下して降りることも可能だ。その血や肉は食べることができ、またそれぞれに便利な能力があった。ギャロップは炎タイプだし、ゼブライカは電気タイプだ。
 どれも相手を攻撃するのにこれ以上ない武器だったと言える。
 しかし、それでも未だ彼らが何故そんな力を持っているのかは解明されていない。そもそも、ポケモンのタイプ自体が何故存在するのかすら分からないのだ。
 何故彼らは炎を纏う必要があったのか。何故彼らは炎を吐いても平気なのか。何故彼らは自分の毒に侵されないのか。
 こんなにも便利な能力を持つ彼らが、何故無力に等しい私達人間と一緒にいてくれるのか。

 近年、各地で伝説のポケモンが目撃される事案が相次いでいる。
 それを目撃するのは決まってトレーナー、または一般人であり、長いこと彼らを追い続けている科学者や研究者の前に現れたことはほとんどない。
 遭遇したトレーナーに法則性はない。バッジ八つのベテランだったこともあるし、旅を初めて一週間の新米にもほどがあるトレーナーの元に現れた事例もある。
 彼らは人間に何もせず、ただ少し姿を見せて去って行ったという。
 もちろん、トレーナーも何もできない。自分が遭遇するなんて、考えてもいなかっただろう。だからボールを投げることも、写真を撮ることもできずにただ突っ立っていて、我に帰り学者に連絡するのである。
 
 何故ポケモンは存在するのか。いつから存在しているのか。
 それを議論するとキリがないが、その疑問を幼少時からずっと持ち続けて、やがてポケモン学の学者になった人間を私は何人も知っている。
 何かに興味を持ち続け、解明したいと願い心。何が何でも解明してやるという意地。
 
 彼らは、そんな人間達をどう思って見ているのだろうか。