ポケモン裁判事例
※本作品は、ポケモン法学の可能性を探る目的で、ポケモンが関係する民事事件・刑事事件を集めたものです。
エログロ系の不快な表現を(特に刑事編で)含みます。ご注意のほどお願い申し上げます。
※ドラマ性のない基本類型の列挙と、ただの考察です。
本作品の内容はネタとしてご自由に使って頂いても結構です。つまらないものですが。
※民法典・刑法典・ポケモン法典をご参照の上解答を作成なさるというお茶目さん大歓迎。
ポケモン法学の世界へようこそ。
<民事編>
●物権
・Aがモンスターボールで捕獲しないまま自宅で飼育していたスバメを、Aの友人Bが、Aに無断でモンスターボールで捕獲した。
☆Aはスバメについて、所有権を主張できるか。→AはBに対し、スバメの返還を請求できるか。
※ポケモンの所有権について
ポケモンの所有権を第三者に対して主張するためには、ポケモンをモンスターボールで捕獲してポケモンのデータにトレーナーIDを書き加えることによる公示が必要となる。
ポケモンの所有権が侵害された場合は、所有権に基づき、相手方に対し、ポケモンの返還等を請求することができる。
・AとBが、通信施設を利用せずに、手渡しでピクシー(おやはA)とネンドール(おやはB)を交換した。その後、AのネンドールがZに奪われた。
☆AはZに対し、ネンドールの返還を請求できるか。
※ポケモンの交換について
ポケモンセンターの通信施設を利用した交換においては、ポケモンごとに交換後のトレーナーID情報が追加され、交換後のトレーナーがそのポケモンの所有権を有することが公示される。
・AがBに対し、自分の手持ちのミニリュウを50万円で売り渡した。
☆ポケモンの売買は可能か、あるいは認めるべきか。
・AがBからの借金の担保のため、自分の手持ちのノクタスを抵当に入れた。
☆ポケモンについての担保物権の設定は可能か、あるいは認めるべきか。
●親族
・Aが自分の手持ちのメガニウムと婚姻届を提出した。
☆人とポケモンの婚姻は可能か。
歴史的には、慣習として認められていたことも、逆に禁止されていたこともある。
国際的にも重要問題。
宗教的にも重要問題。
憲法問題。倫理的問題。人ならざるものとの婚姻が可能なのか。社会的に望ましいのか。
→人とポケモンの間に子が生まれた場合
☆子に人権は認められるか。
ポケモンに親権が認められるか、親としての義務が発生するか。等々
●相続
・Aは、手持ちのカメール、コータス、ハヤシガメの三体に、自身の全財産を譲る旨の遺言をし、死亡した。
☆ポケモンに対する財産譲渡の遺言は有効か。
ポケモン自身は財産に含まれないのか。
・Aは、子Bに自分の手持ちのニャース、オニドリルを譲る旨の遺言をし、死亡した。
☆ポケモンの財産としての相続は可能か。
→相続人が複数存在する場合、遺産を均等に分割しようとするとき、ポケモンの価値をいかにして判断するか。
●その他
・Aのドーブルが描いた絵画の著作権は、Aに帰属するか、ドーブルに帰属するか。
<刑事編>
以下の各ケースについて、トレーナーAはいかなる罪責を問われるか。
また、Aがトレーナー登録をしておらずポケモン取扱免許のみを有していた場合や、Aがポケモン取扱免許を有していなかった場合はどうか。
○ポケモンによる侵害行為
●殺人
・Aが手持ちのザングースに命令し、面識のないBを斬殺させた。
・AとBのバトルの最中に、誤ってAの手持ちのモココの放電がBに直撃し、Bを感電死させた。
・Aが水泳の特訓と称し、自身の当時6歳の子Bを海に連れて行き、自身の手持ちのメノクラゲに触手でBの体を固定させてBが抵抗できなくした上で、メノクラゲに長時間のダイビングを命じ、Bを溺死させた。
・Aの当時3歳の子Bが、Aの手持ちのキノガッサの尻尾の胞子を食し、毒死した。
・Aが屋外で飼育していたグラエナが、A宅前を通りかかったBに襲い掛かり、死亡させた。
☆ポケモンに主体的意思は認められるか。トレーナーの責任は(どの程度)問われるか。
ポケモン責任説……ポケモンが主体的な意思に基づき犯罪行為を行っているため、トレーナーに責任はないか、トレーナーの責任は軽い。→減軽
トレーナー責任説……ポケモンに主体的意思はない。あるいは、ポケモンの主体的意思も含めてトレーナーの責任とする。→加重
●傷害
・AとBのバトルの最中に、Aのカバルドンが起こした地割れにBが足を取られて、転倒し骨折した。
・バトルの最中に、Aのペリッパーが起こした暴風で、通行人Bが吹き飛ばされて軽傷を負った。
・Aが所持するビブラーバの羽ばたきによる騒音のために、Aの隣人Bが慢性的な頭痛やめまいに襲われるに至った。
・Aが手持ちのジュペッタに、Bを呪わせた。
☆Bに降りかかる複数の不幸のどの範囲までがジュペッタの呪いの結果なのか、判別が困難。
●窃盗
・Aが手持ちのバリヤードに命令し、トリックによってBの財布を盗ませた。
・Aが手持ちのレントラーに命令し、B宅の家屋を透視させて内部構造を把握した上で、A自身がB宅に侵入し現金を盗んだ。
・Aが、手持ちのエルフーンの所有権を放棄した(逃がした)上で、自分を慕うエルフーンに命じてB宅に侵入させ現金を盗ませた。
・Aが手持ちのゴチルゼルに命令し、ゴチルゼルの念力によって野生のニャースを操り、その野生のニャースにBの財布を盗ませた。
・Aのデデンネが、Aの友人B宅の電源から多量の電気を吸収した。
・Aが屋外で放し飼いにしていたガーディが、Bの所有する畑地の作物を食べた。
●強盗
・Aが手持ちのワルビルとズルズキンでBを威圧し、Bに現金を交付させて、そのまま逃走した。
・Aが手持ちのコダックに命令し、コダックの金縛りでBの動きを封じた上で、Bの財布を盗んだ。
●その他ポケモンによる侵害行為
・AのオーベムがBの記憶を消した。
・Aのゴローニャがポケモンバトルの最中に起こした地震により、地盤沈下が発生し、本件バトルの一ヶ月後にBの自宅が倒壊した。
・Aとその手持ちのブーバーが就寝中、そのブーバーの体の炎によって出火し、三軒が全焼した。
・学生AのラルトスがAの友人Bを避けたことを発端として、Bに対する同級生たちの誹謗中傷が激化した。
・Aが手持ちのゴースに命令して、キュウコンを信仰するBに、キュウコンを虐待するといった内容の幻覚を見させ、Bに精神的なショックを与えた。
・Aが、虫ポケモンを苦手とするBのもとに、手持ちのアイアント15体を送り付けた。
・Aがアパートの室内で飼育していたベトベトンが、隣室まで届く、消臭の困難なほどの、耐えがたい悪臭を放った。
・Aのダストダスが川の水源に大量の猛毒を混入させた。
・Aが連れ歩いていたAの手持ちのジバコイルが、企業Bの保持する精密機械を、恒常的に発する電磁波によって破壊した。
・Aのポリゴンが、Bのパソコン内のデータを改ざんした。
・Aが、Bの牧草地に、所有していたメリープ100体を逃がし、Bの牧草地の草を食い尽くさせ、その後メリープ100体を捕獲し直した。
・Aのヨーギラスが、Bの所有する山一つを食い尽くし、更地にした。
・Aが手持ちのポワルンに命令し、Bの畑地の上だけ雨乞いをさせ、Bの畑の作物の成長を阻害した。
・Aが手持ちのヤミラミに命令し、Bの自宅に侵入させた。
・Aが手持ちのペラップに罵詈雑言を教え込み、そのペラップがAのいないところで、Bに向かって、Aに教えられた罵詈雑言を浴びせた。
○ポケモンに対する侵害行為
●ポケモンの殺害
・経済的に窮状にあったAが、自宅の水槽で飼育していたコイキングを殺害し食した。
☆ポケモンは個人の財産か、あるいは法的主体たりえるか。→自分のポケモンを殺害したり傷害を負わせたりする行為は、自身の財産の処分行為として正当化されるのか否か。
・Aが、タマゴからの孵化後から間もないピィを、適切な看護を与えずに遺棄し、死亡させた。
・Aが、Bの手持ちのヨーテリーを絞殺した。
・Aが手持ちのノズパスに命令し、Bの手持ちのチュリネを岩雪崩で圧殺させた。
・AとBのバトル中に、AのギャロップがBのアメタマを焼死させた。
・Aがバトル中に、Aのキングラーのハサミギロチンが誤って通行人Bのピチューに当たり、ピチューを死亡させた。
・Aが、自宅に野生のアリアドスが侵入してきたことに狼狽し、猟銃でアリアドスを射殺した。
・Aは自動車を運転していて野生のエネコをはねたが、救護せずそのまま放置しエネコを死亡させた。
●ポケモンの傷害
・Aのギャラドスが、ポケモンバトル中に、Bのコンパンに重傷を負わせた。
・Aが、自身の手持ちのウツドンに対し暴行を加え、重傷を負わせた。
・Aが、野生のサニーゴの角を切り落とした。(類:ヤドンの尻尾)
←→Aが、野生のバネブーから真珠を奪った。(類:フラベベの花)
●ポケモンの自由の侵害
・Aが、野生のプリンをモンスターボールで捕獲しないまま、檻の中に閉じ込めた。
・3000万円の借金を抱えるAが、手持ちのミミロップを強引にアダルトビデオに出演させた。
・Aが、30年間にわたり、モンジャラをモンスターボールの中に収納したまま放置した。
・Aが、食用のために30体のカモネギを飼育した。
→ポケモンを食べることは法的に許されるか。許される場合は、どのような根拠によるか。
●その他ポケモンに対する侵害行為
・Aが、Bの所持するマスキッパに対し、一般公開している自身のブログにて誹謗中傷を行った。
☆ポケモンの名誉は保護されるべきか。→種としての名誉、トレーナーの名誉
<ポケモン法学入門>
序論
ポケモン法学のごく根本的な姿勢は、「ポケモンとは何か」である。
古来よりポケモンは人にとって、災害であり、師であり、神仏であり、奴隷であり、友であり、家族であり、道具であり、凶器であり、兵器であり、財産であった。
しかしその一方で、現代においては、ポケモンはみな一様にモンスターボールによる捕獲が可能であり、均一的な管理が容易となっている。
法による統治においては、社会的通念というものを無視しえないものである。そのため、いくら管理が容易であるからといって、ポケモンをただの財産としか見なさない法制度では、国民からの支持が得られず、法の安定性そのものが揺るがされる。
よって、ポケモンには「財産」以上の種々の権利を付与されるべきと考えられる。
政策的な意味でも、ポケモンに他の財物以上の価値を認めることは有用である。
かといって、ポケモンを人と同等に扱ってよいかという問題がある。
もしポケモンを人と同等と見なすのであれば、「モンスターボールによる捕獲」は「逮捕拘禁」と同義である。それは著しい人権侵害であり、仮にポケモンに人と同様の人権を認めるのであれば、許されざる犯罪行為となる。
ところが、モンスターボールの使用不可というような事態は、社会的にも望ましくはない。
よって、ポケモンを人と同等に扱うわけにはいかない。
では、果たして「ポケモンとは何か」。
ポケモンをどのように扱うのが、社会にとって最も有益か。
それを模索するのがポケモン法学である。
<一法学部生のメモ>
・ポケモンは人の財産か、それとも権利主体か?
・例えばポケモンと、土地や建物といった不動産では、どちらの方が財産として価値があるのか。
地面タイプなら、水面埋め立てなどで容易に新たな土地を生み出すことすら可能だ。
格闘タイプがいれば、建物を建てることも容易い。
とすると、タイプや種族によってポケモンの価値は異なることになる?
・ポケモンの中にも差別を設けるべきか?
・何にせよ、ポケモンの財産としての価値は不動産より高い。
・ポケモンの価値とは何か。
人間による利用可能性? 経済効果、実力としてのバトルの強さ、人間社会への適応……
人間の価値とは何かを問うのと同じではないのか? 無意味ではないか?
人にとってのポケモンの価値は、人によって異なるのではないか?
・ポケモンの価値を客観的に、一律に定めることが果たして可能か。やはりポケモンを財産と見なすことには無理があるのではないか。
そうではなく、法において必要とされるのは、社会においてポケモンがどのような価値を持つかという定義では。個別的観点は置いておいて。
・社会的利用可能性が高いことが、ポケモンの財産的価値だといえるかもしれない。
・では、人とポケモンでは、どちらの方が保護されるべき法的主体として価値があるのか。
人間社会を作っているのは人だから、人の方が優先されざるを得ないのか。
しかしエスパータイプなどの中には、人よりも高い知能を持つものも多い。
・人よりも価値あるポケモンは、人以上の権利が認められるべきか?
そもそも法的主体としての価値を比較する意味などない。これは無意味。
・ポケモンと人を比べることができる時点で、ポケモンの要保護性は人のそれより劣るのでは。
・ポケモンと人を区別する必要性?
・なぜ、ポケモンはモンスターボールで捕獲して管理すべきなのか。
やはりポケモンを財産として管理したいのか。
人間社会における人のポケモンに対する優位を保持したいのか、あるいはボール会社の陰謀なのか。
そもそもポケモンは、単体で都市一つを滅ぼすことすら可能な力を秘めた、危険な存在である。社会の安定を期すためには、人がポケモンを管理できることは必須条件である。
・人はポケモンに劣ってはならないのか。
・ポケモンの支配する世界など、存在するのだろうか。人がポケモンに支配される世界。
・そもそも、何で知能の高いポケモンも多いのに、そういうポケモンは人のような社会を作らないのだろうか。
ポケモンの支配する社会なんて、生み出されないのではないだろうか。
国家を形成するのは人くらいなのかもしれない。
・けれど、ポケモンに対する抑圧が強まれば、ポケモンは人間社会に反発するかもしれない。
ポケモンによる支配を逃れるためにポケモンを抑圧するのではない。
・ある意味で、ポケモンには人より優れた実力があることから、要保護性は人のそれより劣るのだとも考えられる。
・ポケモンの実力に、人は制度と管理能力で対抗する。そのバランス。
その管理についても、さらにさじ加減が必要となる。
ポケモンから人間社会を守るためにも、法的にポケモンを保護し、人とポケモンの共存を図るべき。
・であれば、やはり生命や自由意思を持つポケモンは、不動産といった財産などよりも保護されるべきだろう。
あくまで人とポケモンが対等に立てるよう、ポケモンの力を制御できるように人の法制度で管理する。→ポケモンに権利を与えてある程度のポケモンの自由を保証する一方で、ポケモンにはトレーナーによる管理には恭順してもらう。
・トレーナーの保護の重要性が高まる。
・ポケモンに権利を与える……人権とまではいかなくても、ポケモン権なるものを認める?
・それにしても、こう考えているとモンスターボールでポケモンを捕獲するのが大層失礼なことに思えてきた。
高い知能と自由意思を持つ存在なのに、持ち運びできるサイズのボールに閉じ込められて自由を奪われるなど、そのようなことは人間では許されないのに、なぜポケモンでは許されるのだろうか。挙句の果て、電磁記録で人間の所有権が及ぶなどと焼き印を押されて。
それでも、彼らの実力と人が対等になるには必要な事か。
・しかし、ポケモンの力を制御して、無理矢理こちらのレベルに引きずり下ろして、どうにか人間が威張っている感は否めない。完全に感覚的な話だが。果たしてポケモンに対してこのような態度でよいのだろうか。
・ポケモンたちはどう思っているのだろう。
・理想は人とポケモンがwin-winの関係になることだろう。
人の利益を保持しつつ、ポケモンの利益も考える。それがポケモン法の理想とするところ。
***
<跋>
息抜き(逆に詰まってますが)その3です。
かの世界ではポケモンの関わる案件が大半を占めていると思います。
まずはこういった基本類型を想定して法律を作って、そしてより具体的で複雑な事案が発生したときに法解釈でごたごたすると考えたのですが。
ポケモン世界の法律を試しに作ろうと思っても、古代の法律のような武骨で融通の利かないものになりそうな。筆者の不勉強もあるのですが、何よりポケモンという存在がイレギュラーすぎて法制度の想像がつきません。
いつか凄まじく暇になったら、ポケモン法や判例を作りかけるかもしれません。空想でならアホでも立法機関や司法機関になれる。無能がポケモン世界を独裁できるんですぜ……でも実際、どのような社会制度があってあのような一見平和な世界が成立しているのか、気になりますよね……。
例の『小卒大人法』については、おそらく国際的な基準が国内にも持ち込まれたものだと思います。10歳にもなれば立派にポケモンを操って稼ぐのが世界標準なのでしょう。教育は二の次、技術開発はポケモンの仕事、人の仕事はポケモンを育成すること、という産業構造だとしか思えない。10歳で大人として生活できるなんてポケモンを利用しているとしか思えない。
進学してポケモンの関係ない立法行政司法を司っているのは、おそらく伝統的な上流のお金持ち。戦後に中流階級が台頭してきたら中等教育や高等教育も広まって、トレーナーの少数化、底辺化が進行するかもしれない。いや、高度成長期を支えるのだってポケモンだから、中流階級が台頭するとは限らない。ほんの一握りとそれ以外のトレーナーの母体集団からなる国家、それならば尚更ポケモン周辺の法整備は念入りで、かつ古臭そうなものと推測しますが。
ポケモンやトレーナーの法的な立場が気になります。
やはりポケモンはポケモン法などで動産・不動産に勝る価値が認められていると思います。利用可能性が無限大のため。
トレーナーという身分もトレーナー育成法などで厳重に保護されていると思います。
そのために一般人の権利がやや制約されつつあるというのが筆者の勝手な想像です。
……という創作のネタ出しでした。長文乱文失礼しました。