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  [No.3893] トゲキッスVSサザンドラ 投稿者:空色代吉   投稿日:2016/02/16(Tue) 23:29:50   38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


トゲキッスVSサザンドラのバトルものです。
※中途半端な所から始まります。
※技を四つ以上使っています。
※ポケモン同士なので会話してます。





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(あんまりこういう使い方するもんじゃないけどね)

心の中で溜息をつきながら、トゲキッスはサザンドラの動きを“みやぶる”で見破った。

「フェアリー、殺す……!」と、サザンドラがわなわなと身体を震わせて呟くのを――トゲキッスは見る。
そして、ワンテンポだけ遅れて放たれた光弾を集中して見やった。
その光弾は僅かにだが膨れ上がっている気がする。

(なるほど、火力が下がらないのは“ふるいたてる”を使っているからか……)

“ふるいたてる”とは、己の心を奮い立たせ、その意気込みによって攻撃力と特殊攻撃力を1段階ずつ上げる技である。
それをサザンドラは技の合間に入れて、“りゅうせいぐん”により下がってしまう特殊攻撃力を補っていたのだ。
“ふるいたてる”の発動のキーは、おそらく『憎悪』
言動から察するに、フェアリータイプを目の敵にしているサザンドラ。その殺気とも取れる気概の凄まじさは……想像に難くなかった。

サザンドラが放つ雨あられの特殊技に気をとられがちだか、さりげなく上がり続けている攻撃力も、ばかにはできない。
だが“はどうだん”は引きつけられたのち撃ち落とされ、“ぎんいろのかぜ”はサザンドラの“おいかぜ”によって届かないのは先ほどの攻防で明白になった。

(距離を詰めなきゃどうしようもない!)

相手の物理攻撃に恐れを抱きつつも、トゲキッスは接近戦に持ち込む事を決める。

空気を蹴り、一気にサザンドラへ向かって飛び出すトゲキッス。
どんどん幅が狭くなっていく、サザンドラの両手から放たれる光弾の連弾を、掻い潜り翔上っていく。
すると突然、攻撃が止んだ。
――サザンドラの姿が、ボヤけて揺れる。
トゲキッスはその意味を一瞬の思考停止の後に理解した。けれども、トゲキッスの身体は勢いづいて、立ち止まれない。

思わずトゲキッスは天を見上げた。それは美しく、神々しい光景だった。

悠々と蒼天に広がるは――ガラス細工を連想させる、水のカーテン。
いつの間にかサザンドラの下方から迫っていた“なみのり”が、二人の間に割って入り、乗り越えてトゲキッスに襲いかかる。

「しまっ――」
「呑み込まれろ!」


飛沫を上げてトゲキッスは高波に思い切り突っ込んでしまった。
水のベールはそれほどの厚さはなく、トゲキッスはすぐに脱出し、また羽ばたいてホバリングする事に成功する。だが、トゲキッスの様子は、飛ぶのがやっとで仕方がないという感じだった。

身体が、特に翼が濡れて重く感じる。
自らを支援する筈の風に煽られて、急激に体温が奪われていく。

「まず、さむ、い」

とうとう膠着し、ゆっくりと降下し始めるトゲキッス。
サザンドラから見れば、格好の的であった。

「喰らえ――!!」

サザンドラの咆哮。
そして、三つの口から放たれるのは、銀色の光線“ラスターカノン”
三本の光線が螺旋を描き一つの太い光の束になっていく。
その光景を見て、トゲキッスは感嘆していた。

(くっそう、いちいち綺麗な技を、使う方だなぁ……)


溢れ出る敗北感とともに、トゲキッスの姿は“ラスターカノン”の光線の中に消えていった。
――こうかは、ばつぐんだった

爛れた白いボールが、輝く粒子を纏いながら森の中へ落ちていき、姿を眩ます。
だが、ボールの姿が見えなくなっても、サザンドラは警戒を解こうとはしなかった。

「――まだだ」

サザンドラの呟きと同時だっただろうか。
――緑の絨毯から、無数の針のような光が立ち上ったのは。

「しぶとい奴め」

すぐさま追い風に乗って、サザンドラはトゲキッスが落ちた辺りの上空へ移動する。
地上では、ほのかに身体を光輝かせるトゲキッスが伏せの状態になって――“はねやすめ”と“あさのひざし”によるハイブリッド回復技を仕掛けていた。

「させるか! “だいちのちから”!」

サザンドラの一喝とともに、大地がばごんっと鈍い音を立てトゲキッスの周囲の木ごと押し上げる。
岩盤がはね上がった際に放たれた礫が、群れをなして“はねやすめ”のせいで飛行タイプを失っているトゲキッスを射抜かんとする。
トゲキッスは地面に押し付けていた、日差しによりすっかり乾いた羽を“はがねのつばさ”で硬化させ、その場でくるりと一回転。“つばめがえし”で礫を一気に叩き落とした。
防ぎきれなかった礫が白い肌に食い込み、トゲキッスの特殊防御力を抉る。
しかし痛みに気をとられる間もなくサザンドラからの猛攻は続く。

紅蓮のような炎を従え、
群青のような氷を抱き、
黄金のような雷を囲み、
トライアングルを描き発射する“トライアタック”で、敵を、トゲキッスを駆逐せんとする。

回転し終えたトゲキッスも負けじとそのまま“トライアタック”を発動させ対抗した。
両者の炎が、氷が、雷が激しくぶつかり合う。発動のタイミングが遅れた事もあって、トゲキッス側がやや不利である。
撃ち合いが終わるのも、時間の問題である。

(賭けに、出るか)

そうトゲキッスは静かに決意し――自らの“トライアタック”を解いた。
襲いかかるサザンドラの“トライアタック”の雨を、僅に残った林の中に転がりこんで避けようとするトゲキッス。
寸刻前まで居た所に雷が迸り草を焼き、氷の礫が尾を掠め、そして、火球がトゲキッスの背中に直撃してしまった。

トゲキッスが背中に火傷を負うのを確認するサザンドラ。
その次の光景にサザンドラはほんの少しだけ驚きをみせる。
トゲキッスの背中が元の白地に戻っていき、火傷痕がみるみる修復されていくではないか。

「“いやしのすず”か? だが鈴の音はしていないはず――む?」

サザンドラは眉をしかめる。
サザンドラは己の比翼の付け根に痛みを感じていた。
攻撃は受けていない。なのに何故痛みを感じる?
この風が当たるだけで痛む、やけつくような痛みはまるで――火傷。
この流れから推察出来る事は限られている。
つまり、

「自らの火傷を私に移したのか」
「正解。“サイコシフト”でした」

トゲキッスは何やら力を溜めながら、軽い口調で答える。
“サイコシフト”。それは自らの状態異常を相手に移し、自分は回復する技。
この技によりトゲキッスの背中の火傷がサザンドラの背中へと移されたのだ。

「だからどうした。この程度、支障にはならない!」
「そうは言っても動きが鈍いよっと、“しんそく”!」

再び“トライアタック”を仕掛けようとするサザンドラに対し、トゲキッスは溜めた力を解き放つ。
ジェット機のごとく、流線型になったトゲキッスが地上から飛び立ち、瞬く間にサザンドラの上を取る。
更に、日の光を背にして、トゲキッスは技を放つ。

「喰らえ必殺っ“マジカルシャイン”!」

真っ白な太陽の欠片が、四方八方に散らばり、サザンドラめがけて溢れ落ちてきた。

「くっ!」

両腕から“かえんほうしゃ”を展開して防ぎきるサザンドラ。
更にサザンドラは残り一つ、メインの口径に“きあいだま”をチャージし始める。
そして炎の壁を突き破る存在を、火の粉を纏いながら向かってくる“はどうだん”を相殺した。

「その手は読めている!」

サザンドラの前方にエネルギー弾がぶつかりあった余波が、光が広がる。
だがまもなくそのエネルギー波が、裂けることになった。

――光を突っ切って、サザンドラの目の前にトゲキッスが現れる。
トゲキッスは、鞘を抜くように流れるような動作で、技を繰り出した――

「“エアスラッシュ”!!」

高らかな掛け声と共に、空気を切り裂く一筋の刃、“エアスラッシュ”が至近距離からサザンドラを斬りつけた。

強烈な衝撃がサザンドラを、仰け反らせた――かにみえた。
……技を確実に当てようとして距離を詰めすぎたのがトゲキッスの敗因だった。
すかさず、サザンドラの両手の頭がトゲキッスの両翼に“かみつく”。
サザンドラの噛み付きを必死に振りほどこうとするも、モノズ時代から刻まれた噛む力は凄まじく、火傷でパワーが落ちていなければこのまま噛み千切られてしまっていたのではないかという恐怖をトゲキッスに植え付けさせた。

「はなれろっ!! がっ?!」

トゲキッスは最後の手段として“ずつき”をするも、サザンドラの“しねんのずつき”に押し返され、逆に怯んでしまう。

「これで、終わりだ――」

無慈悲な宣告ののち、主砲から放たれた“ラスターカノン”がトゲキッスを呑み込んだ。




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勝者 サザンドラ
サザンドラの設定は、あきはばら博士さんからお借りしました。