[掲示板へもどる]
一括表示

  [No.3919] まんまるあたまのとりポケモン 投稿者:Ryo   投稿日:2016/05/11(Wed) 20:06:16   59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「わあ…かーわいいー!!」
毎週日曜の夜7時半にやってるテレビ番組「オーキドが来た!」を見て、ぼくはそのポケモンに夢中になってしまった。
元々、ぼくは、世界のいろんなポケモンが野生で生きているところを見られるこの番組が大好きだ。でも、今日の番組に出てきたポケモンは、初めて見たけど、すごくすごくかわいかった。
モクローっていう、まんまるな鳥ポケモン。ちっちゃいのに頭が良くて、首をかしげたりふりむいたりして、とってもかわいい。最近見つかったポケモンで、アローラ地方という所にしかいないと番組で言っていたので、カントーにいるぼくはがっかりした。アローラ地方は、飛行機とか船を使わないと行けない遠くの島だからだ。
でもぼくは、モクローがほしくてしかたない。まだ「たび」は行けないけど、「たび」に出る時は絶対モクローといっしょがいい。お父さんにもお母さんにもお願いしたけど、ムリって言われてしまった。でもやっぱりぼくは、モクローと「たび」に出たい!
ばんごはんの時も、おふろの時も、しゅくだいしてる時も、ずっとモクローのことばかり考えてて、夜もずっとねられなかった。

ねてるのか、起きてるのか、よく分かんない感じだったけど、外で何かがギャーギャーさわぐ声がして、ぼくは目を開けた。
外がすごく明るい感じだったので、朝かなーと思ってカーテンを開けた。そしたら、うちの庭に、なぜかドードリオがいた。それに何だか様子がおかしかった。3つの頭が大げんかしている。よく見たら3つの首がめっちゃくちゃにからまっていた。
なんだこれ?ぼくはまどを開けて庭に出てみた。すると、庭中が鳥ポケモンだらけになっていた。しかも、みんな首を変なふうに曲げている。
ななめ後ろを向いたままのポッポと、真上を向いたままのオニスズメがぶつかって、けんかになった。でも頭の向きがそのままなので、つつくことができないで、でたらめに足でけったり砂をかけたりしている。
グエ〜、と死にそうな声が真横から聞こえた。見たら首がギューっとからまったオニドリルが苦しそうにしている。ぼくは何とかしてほどいてあげた。すると
「コウイチ君、ありがとう」
オニドリルがゼーゼーと息をしながら、しゃべった。しかもぼくの名前を知っている。でもぼくは、そんなにおどろかなかった。多分、庭の鳥ポケモンたちが変すぎて、おどろくひまがなかったからだ。
「みんな何してるの?」
ぼくはオニドリルに聞いてみた。すると別な方から声がした。
「オニドリルは苦しそうだから、私が教えてあげる」

ぼくがそっちを見ると、おばけのサダコみたいな長いかみを前にたらした女の人?がいたので、ギャーッと声が出てしまった。そしたら女の人?に怒られてしまった。
「私はおばけじゃなくて、ピジョット!まちがえないでよ!」
よく見たら体が人じゃなくて鳥で、羽があった。ピジョットは顔が後ろ向きで、頭の羽が前を向いたまましゃべっていた。
「あのね、頭を横にしたり、後ろにしたりする、すごくかわいい鳥ポケモンがいるでしょう」
「モクローのこと?」
「そうそう!今、みんなモクローみたいになりたくて、練習してるところなの」
「ええ〜っ?」
ぼくはびっくりして庭をもう一度見てみたら、本当にみんな頭を前や横、下や後ろに向ける練習をしていたり、そのままもどらなくなって困ったりしていた。
「全く、こんなむずかしいこと、できるわけないよ」
おんぷみたいな頭を真横に曲げたペラップがプンプン怒っている。こんなおんぷががくふにあったら、すごくじゃまそうだ。
アチャモとポッチャマは頭が大きいので、首を曲げるたびに転んでいた。マメパトはわけが分からなくなったみたいで、ひっくり返ったまま動かなくなっている。

みんなふつうにしているのが一番いいのに、変なことばかりしていて、ぼくまでおかしくなりそうだった。
「みんなおかしいよ!こんなの変だよ!」
ぼくはピジョットに言ったはずなのに、いつの間にかそこにはヨルノズクがいた。首を変なふうにしないで、ふつうにしている。ぼくはすごくほっとした。
ヨルノズクは落ち着いた感じの声で言った。
「うん、確かにみんな変だな。首を曲げたらかわいいのなら、首を一番よく曲げられる私が一番かわいいはずだ」
「でしょ?みんな変に見えるよね!」
ぼくはいっしょうけんめいにうなずいた。
「でも私はかわいいと言われたことがない。ふつうにしているのが一番かっこいいと言われる」
「うん、ぼくもみんながふつうにしているのが一番いいと思う!」
やっぱりヨルノズクは頭がいいなあと思って、ぼくはすっかり感心してしまった。
でも、ヨルノズクもやっぱり何か変で、ぼくにこんなことを言った。
「だから首をただ曲げたんじゃ、ふつうすぎてダメだということだ。ぐるりと回すくらいじゃないといけないんだ」
「えっ?そんなの、よけいに変じゃないの?」
「いや、それがとてもうまいポケモンがいるんだ。ほら、みてごらん」

ぼくがヨルノズクの向いた方を見ると、そこには、ネイティオがいた。ネイティオの頭が、パトカーのランプみたいにくるんと一回転した。
「ええーっ!?」
ぼくはさけんだけど、ネイティオは何も言わない。頭をくるんくるんと回し続けている。こわい、すごくこわい!
「やだ!ヨルノズク、助けて!」
ぼくはすぐ近くのヨルノズクに言ったのに、そこにいたのもネイティオだった。頭がコマのようにブンブン回っている。
ぼくは泣きそうになって逃げた。逃げた先にもネイティオがいて、いつの間にかぼくの周りはネイティオだらけになっていた。頭をぐるぐる回しながら、だんだんぼくに近づいてくる。
「やだーっ!!」

そこでぼくは本当に目が覚めた。しんぞうが飛び出しそうにドキドキ鳴っている。庭を見たけど何もいなかった。ぼくはすごくすごくほっとした。

ぼくは朝ごはんを食べて学校のしたくをしながら、よく考えたら夢だってすぐ分かるのに、何で分からなかったんだろう、と思った。
「行ってきまーす!」
お母さんにあいさつをして、ドアを開けたら、げんかんの前に何か落ちている。なんだろう、と思って見てみたら、ぼくは大声でさけんでしまった。
だってそこにあったのは、




まんまるで、みどりいろの、ネイティオの、頭。




それが、「たび」からもどってきたお姉ちゃんのネイティだったって分かったのは、家のふとんで目を覚ましてからだった。げんかんを出たところでぼくは気絶してしまったので、お母さんもお姉ちゃんもすごくびっくりした、とお母さんに言われた。
理由を聞かれて本当のことを答えたら、絶対からかわれるから、死んでも言わないけど、その後ぼくはしばらく、鳥ポケモンを見るたびに、ちょっとドキッとしてしまった。
今のぼくは、今すぐモクローがぼくの所に来ないことを、少しだけ良かったと思っている。