私のミミッキュは、極めている。
不思議な力を使って自身の被り物をピカチュウに似せているポケモン、ミミッキュ。たいていのミミッキュは子供が手がけた工作のような、言ってしまえば下手な作りの被り物をしているけれど、私のミミッキュは違った。ものすごく、再現度が高いのだ。
左右の耳はぴんととがっているし、瞳はきらきら、ほおぶくろの赤みや膨らみも、どう見てもピカチュウそのもの。触れたらバチっと火花が散りそうだ。
「そんなにピカチュウになりたいのかねえ」
永子がつんつんとつつきながら言う。ミミッキュはあのラクガキっぽい感じがかわいいのに、と本人の目の前であるにも関わらず続ける。私も永子と同じ意見だけれど。
「完璧主義なんだよ、たぶん」
「そういうもんかねえ」
永子のつんつんが嫌になったのか、ミミッキュはピカチュウが嫌がったときに見せるような表情を被り物に浮かべてから、永子の指から離れた。
「こうも極められると、かえって気味が悪いよ」
「ミミッキュっていうのは気味が悪いもんでしょ」
ピカチュウとしても、ミミッキュとしても、この子はよくできているわけである。あまりかわいいとは言えない点だけは、頂けないのだが。
「気味の悪さの種類が違うと思うんだけどなあ」
被り物の裾の部分を指でつまんで、ちらりと中をのぞく永子。この行為にも、ミミッキュはわざわざピカチュウの仕草で抗議した。
「そうだ、あんたミミッキュの真似をしてみてよ」
不意に永子が大きな声を出す。ミミッキュは驚いて飛び上がってから、ピカチュウのびっくりしたような顔を作った。完璧主義、崩れたり。永子がにやりと笑う。
永子に向かってぷんぷんと怒るミミッキュ。できないの、と永子がいたずらっぽく言うので、ミミッキュは後ろを向いてしまった。
「永子、あんまりいじめないの」
「ごめんごめん」
とりあえず謝った永子。それでもミミッキュはそっぽを向いたままだ。ごめんってば、と永子が無理やりこちらを向かせると、ミミッキュの被り物はひどい顔をしていた。
「それ、もしかしてミミッキュの真似のつもりなの」
訊ねた私にミミッキュはぎこちなく頷いた。ピカチュウとは言えないような、しかしミミッキュのかわいさからも離れた、なんとも微妙な顔である。
「これからはミミッキュの練習をしようか。うん、そうしようね」
力なく言う私に、ミミッキュも力なく返事をした。さすがの永子も苦笑いである。
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48095と申します。活動の場をひろげてみようと、こちらにうかがいました次第です。恐れ多い気持ちでもういっぱいいっぱいです。よろしくお願いいたします。