実家から、この秋最初のふじりんごが届いた。
宅配業者のゴーリキーから受け取った箱をあけると、俺の大好物である赤々と艶めいた丸い果実がところ狭しと並んでいた。
俺は独り暮らしだというのに毎年毎年、段ボールいっぱいに送ってくるのは何故なのか。豊作すぎるのも困りものだ。そのおかげなのか、俺は秋が一年で一番調子がいい季節だったりする。
とりあえずひとつ。玄関に膝を付き、一番左上のりんごを手に取り、適当に服で拭う。
かしゅり。
一口かじると、みずみずしい果汁が口内にしみ出る。中々に酸味も効いていて、美味い。
きゅうきゅう。
二口目をかじろうとすると、俺の膝辺りで鳴き声がした。
見ると、俺が飼っている球体が物欲しげにりんごを見ていた。つぶらな瞳を潤めかせ、ぽかんと開けた口から牙が見えている。後ろ足はぱたぱたとはためき、美味しそうなものへの興味が見てとれた。
食うか、と差し出すと球体は嬉しそうに鳴いてかしゅりとかじりついた。
その甘酸っぱさがお気に召したようで、ふたくち、みくちとかじりついている。
やはりポケモンは飼い主及びトレーナーに似るというのは事実のようだ。
そういえば一昔前に、手のひらサイズのタマザラシというキャラクターが流行っていたのを思い出す。そいつは自分と同じくらいのサイズのりんごに乗っかろうとして、落っこちたり、上手く乗れると得意げな表情になっていた。
自分と同じ見た目なのに小さいのが不思議だったのか、球体はそいつのぬいぐるみをまじまじと見ていた。そいつは今でも球体の寝床に転がっている。
きゅーいー。
いつのまにかりんごを食べ終えた球体が段ボール箱に入り込もうとしていて、俺はそいつを抱き抱えながら、このりんごの消費方法について想いを巡らせるのだった。