※あきはばら博士さん発案のバトル描写書き合い会にインスピレーションを受け勝手に書いた物です。企画のレギュレーションには全く従っていません。悪しからず。
ふわりと香った甘い妖しさ。
それに気付いた時には既に身動きが取れなくなっていた。
しゅるりと鱗に蔓が這い。
しゃらりと擦れて音が鳴る。
拘束されている。微かな笑い声に見下ろすと、挑発的にこちらを見上げるロズレイドがいた。尻尾を振るとひらりと身をかわされる。
「なんだ貴様は」
「……やっと捕まえた」
鱗を掻き分けた蔓が深く絡み付く。じわじわと何かが染み込む感覚に、くらりとした。毒か。逃れようともがくが、余計に刺が深く刺さり込み、喉奥で呻く。
「逃げようとしても無駄だよ。君を捕まえるために鍛えたんだから」
「お前は、何者だ」
「えー、僕のこと覚えてないの? 残念だなあ」
ロズレイドの瞳に失望の色が宿り、奴はそのまま赤い手を空に向けた。青い手からは次々と蔓が伸び、拘束を更に強める。早く抜け出さなければ。しかしただもがくのは逆効果だ。
「ぐ、うぁっ!?」
じりじりと、炙られるように熱い。頭上にはいくつもの火の玉が生まれ、まさしく自分を炙っていた。ウェザーボールか。
「っ、ぅ」
「ははっ……君のそんな顔が見たかったんだ」
楽しそうなロズレイドの声と、熱と、毒が思考を鈍らせる。
意識を失いかけた時、微かに草木が焦げる匂いがした。
――今だ。
全身を大きく震わせ、脆くなった蔓を引きちぎる。その衝撃に吹き飛ばされたロズレイドは、後方に軽やかに着地した。
「へぇ、僕の毒を受けたのに、まだそんなに動けるんだ。やっぱり君は凄いなぁ」
今が好機だ、反撃を――。
「……がっ、ぁ……」
その場に崩れ落ちる。動けそうにない。思ったより体力を消耗していたようだ。
「卑怯だぞ……戦いなら、堂々と……」
「戦い? 僕はそんなことしないよ。ただ、君が欲しいだけ」
再び蔓が絡み付くのを感じながら、ジャラランガの意識は闇に堕ちていった。