第一回 / フレアドライブ/ CoCo
駆け抜けた。走った。
深い森を掻き分け走った。喉が痛い。吐き捨てた息は白く吸い込んだ風は気管支を痛めつける。足の裏に木の根の感触。冷え切っているのにどうしようもなく熱い。ジグザグ走行。太股がパンパンに張っている。道が合っているのかわからない。あーっつう、地図とか見てる暇がない。ぶん投げる腕で掻き分ける空気が冷たい。枝が痛い。
衝動が湧き上がる。
「追いつく」
追いつく。あれには追いつける。
俺の口から零れ落ちた言葉をすくい、隣を走るゴウカザルが雄たけびを上げた。響き渡って夜明けに染みた。でも俺はそんな染みも超高速で踏み越えてさらに速く。まだ暗い森、併走する猿の明かりだけを頼って。
胸を圧迫する呼吸のたび掠れる喉の奥が痛い。
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