【030】一個の同僚へ、祝福を 作:イケズキ ☆18 ☆☆7 ☆☆☆5 =47 ☆ 卵という保育器をメインにしたのは特に目を引いて、卵という保育器の生と死の意味を書こうとしていたのはよかったが、特に強くこのことに考えていた女タマゴを主人公にしたほうが収まりもよくなったと思う。作品内で女タマゴが特に悩んでいた生と死についてあっさりと流していたように感じたのでもうすこし綿密に書いたほうがよかった 西条流月 ☆ グッと来た文【俺はこれから死ぬのかい? それとも生まれるのかい?】 ポケモンのタマゴから、という視点がとても新鮮でした。ポケモンのタマゴがどのような想いで日々を過ごしているのか、胸にじわじわときました。それと、最後のポケモンのタマゴの『彼』から投げかけられた問いについて考えてみたのですが、どちらかと言われたら個人的には『生まれる』の方かなと思いました。生まれ変わる前の前世の人格がポケモンのタマゴにあったりするのかなぁ……と考えてみたりしました。(汗)ちなみに『白いの』ってなんだろう、スワンナかな? と最初思っていたのはここだけの話です。(汗) 巳佑 ☆☆☆ テーマはタマゴと思われる。誤字脱字誤用及び話の流れに不自然な点は見当たらなかった(5/19時点)。また、テーマのタマゴはこれでもかというほど出ていた。以上の点から☆☆☆とした。これは評価と関係ないが、「女タマゴ?なんじゃそりゃ」と思っているうちに読み込んでしまった。こうした新しい視点をこれからもどんどん出してほしい。 あつあつおでん ☆☆☆ 読んでいて途中まではタマゴに五感があって感情まであって、なんだそりゃ……と思っていましたが、終盤で納得。トゲピーでしたか。それから最後に投げかけてくる問いに繋がり、確かにどっちなのだろうと考えました。トゲピーのまとった殻の性質を巧く使った作品だと思います。 鶏 ☆ お題:タマゴ(物理的、主人公) タマゴそのものに人格があるという、ストーリー。人格どころか男女まであるというのにびっくりです。しかし、奇をてらった設定が故に、感情移入しにくいなという印象が。どうやってお腹さするんだとツッコミたくなったり(爆)ラスト、タマゴの中身がトゲピーだったというのにはやられました。 レイニー ☆ トゲキッスと生まれてくるトゲピーのお話。生まれてくるときにタマゴは死ぬのか?死ぬのか死なないのか、その二択で済ませて欲しくないなぁ、この問題は。「生きてるじゃん」と悟った理由は何でしょうか。説明不足で非常に難解です。難解なまますっ飛ばしたければ、最後に生まれたとしてもタマゴは生き続けるのだという確信が男タマゴにはあるはずなので、最後の質問は無意味になってしまいませんか。表現は凄くいいと思います。雨が降る擬音だけで溢れ出す感情を描写したりとか、結構うまいです。 乃響じゅん。 ☆ <作品情報> テーマ種別 →タマゴ作品タグ →【物理的なタマゴ】【一般文芸寄り】【タマゴ一人称】 ポケットモンスターシリーズの二次創作としての意義 →微妙なライン。一般的な「動物」でも置換可能。 テーマの消化度合い →タマゴを主人公にするという着想は悪くない。消化していると言える。 <講評> 今回のコンテストの特異性を象徴する出来事として、「タマゴが主人公」という作品が二つも投稿された、というのが挙げられます。この着想を得た時点で相当に尖った作品が来ると考えられますが、そうした「特異なアイデア」を持つ作品の宿命として、同じアイデアを持つ作品が存在する場合にどうしても互いが比較対象となってしまう、ということを述べねばなりません。端的に言えば「ネタが被っている」状態と言えます。ただ、今回それは評価のポイントとしません。ネタが被っていたとしても、異なる方向性を示せればそれは個性ある別個の作品として成り立つからです。一つの作品として評価を下したいと思います。 テーマ「タマゴ」としての要件は満たしていると言えます。それ自身が主人公ですし、全体を貫く作風もそれに合致したものと言えます。ただ、主観ですが「タマゴを主役にする」というアイデアが大きくなりすぎてしまって、「ポケットモンスターの二次創作」として見るとかなり微妙なものになっていると感じました。二次創作は最終的には一次創作に置き換えられるものがほとんどですが(私自身の作品も、突き詰めていけばほぼすべて置き換え可能であることを自覚しています)、それでも「二次創作だからこそ」できる作品というものがあって、キャラクターの特異な個性を最大限に生かしていたり、大本の世界観に強く依拠していたりするものがそれに当たります。本作品は「タマゴが主人公」であれば、中身はポケモンである必要性が薄く、極端に言ってしまえば一般的な「動物」(この場合ですと「鳥」が適当でしょう)でも話が成立する構造になっています。本作品のような一風変わったアイデアを持ち込むことに成功した作品であれば、むしろ一般文芸として成立させたほうがよりシンプルにまとまった可能性もあります。 二次創作作品は突き詰めれば突き詰めるほど一次創作作品との境目が薄くなり、どこかのタイミングで筆者は必ず「二次創作である必要があるのか」という自問自答をする時が来ます。私自身解決できていない課題であり、それをもってこの作品を評価するには勇気が要りましたが、今一度「二次創作とは何か」という問いを考えることも重要かと思います。今後の更なるご活躍に期待しております。 586 ☆ 一読目:タマゴがしゃべる。保育器ですから当然です…なわけないけども、プロトーガのとこもタマゴがしゃべってたからある意味問題ナッシングか。しかし、トゲピーという事はこの場合の白いの、はトゲキッス…。え、あれ鳥?鳥でいいの?鳥なの?うーぬ、変な謎だ。飛行タイプが全部鳥じゃないしなぁ。そんでもって、彼の返事はなんなんだ、教えてくれ。気になるだろぉぉ!ヌケニンが出てきた話と言い、こういうの嫌なんだからもう。はっきりさせんか! 二読目:落ち着いて読んでみる。結局のところ、保育器のタマゴの死=誕生、ってことなのか。それとも保育器保育器って自覚してる割には実はそれは中のタマゴの奴で記憶には残っていないだけなのか。分かるか畜生!俺はこういう禅問答みたいなものが解けるほどのとんちは備えておりませぬ!ていうか卵なのに性別なんかあるのか?仮にフリージオとか性別のない奴のタマゴだったらどうなるんだ?謎だ。 三から八読目:そういえば母親(白いの)って結局タマゴに話しかけてたのかそうでないかもはっきりしてない。どっちなんだ。 九から十読目:☆1つ。なんかなぁ、どうしてかなぁ。さっくり終りすぎてるような気もするんだよなぁ。最後に俺に応えられないような質問ぶつけるから熱暴走起こしちまったもん(爆)観点は面白いよ、トゲピー。けど、アイデア勝負の割にはちょっと不発感あるかなぁ。誤字(?)発見俺が「白いの」から出てきたときの事、そこにはすでに一個、保育器として『働いく』女タマゴがいた。『働く』でしょうね。俺もよくあるミスだ…。 音色 ☆☆ 卵にとって「誕生」とは産卵された時なのか、孵化の時なのか。そして卵とはそれ自体で1つの主体なのか、それとも保護されるべき胚とそれを保護する殻や白身という「他者」の集合体なのか。そんな思いも寄らない問いを投げかける、妙に哲学的な不思議なテイストの作品と感じた。 サトチ ☆ わたしはこういうコンテストとかにおいて一番怖いと思うものがあります。 ネタが被ることです。 16と被りましたね、このタマゴ視点というの。 ネタが被ることの最大の弱点は、インパクトが七割減っていうのもあるんですが、何よりも被った作品と比較してしまうんです。 ☆の数見ればわかりますようにわたしはこれは016に勝てないと思います。 016にも欠点はあるんですが、こっちの欠点は女タマゴがよくわからんこと。 最初はよく話しかけてきた→俺と揉めて気まずくなる→豹変してキレる、ついでに白いのに対しての態度が変わる→いきなり死ぬって言い出す→トゲピー この豹変してキレるところからよくわからない。これはメンヘラ認定。異議は一切認めない。結局白いのに対する態度が変わった理由が明記されておらず、急に死ぬとか言い出したり唐突すぎる。 あと俺もこの女タマゴが嫌いなのか好きなのかよくわかりません。 つまりキャラクターがよくわからないので、感情移入出来ません。 でも最後のトゲピーのオチはなかなかうまいと思いました。 でりでり ☆☆☆ すごく独特な味わいがあった作品。 ……と言うか、語り手の語り口や主義主張が、他に例を見ないぐらい異色な部類だったと言うべきでしょう。まさかの、存在理由を否定するタマゴ。 タマゴが中で眠っている存在に語りかけるというのはままある口なのですが、まっさか正面から存在理由を全否定するタマゴが居るとは思わなんだ(汗)最早これだけで、インパクトは絶大です。 素晴らしい発想の転換!内容もどこか哲学的な雰囲気があるのと同時に、主人公の人柄(?)が非常にはっきりしており、目の前で起きた事によって徐々に変わっていくその心境の変化は、なぞっているだけである種の感慨を得る事が出来るほど。一見すると荒っぽい文体の様に見えますが、読み返してみると全くそんな事は無く、情景描写も台詞もしっかり組み立てられており、目だって引っ掛かるような点もなし。 寧ろ繰り返し読んでいくと、なにやら詩か何かのような印象すら抱く破目に。 ……いかん、審査員なのに全然指摘が出来んとか(爆)五千も行って無い字数なのに、得られた余韻も満足感も、長めの作品を上回るほどのボリュームがありました。 自分の見識と致しましては、文句無しの最高評価です。 クーウィ ☆ タマゴ一人称、その2。まさかタマゴ一人称が二つも来るとは思わなかった。しかも今度は男(?)のタマゴと女タマゴですよ。これには恐れいった。こんな発想私には出来ないよ。(あと、順番がこれでよかったとも思った(笑)) しかし文中にもあるようにタマゴは保育器なので生まれてくるポケモンの性別はあってもタマゴそのものに性別があるのかといったらちょっと疑問であった。そのへんの議論がタマゴ同士であったらおもしろかったかもしれない。男タマゴが終始「アホか」と淡々な感じを貫いてるのに対し、女タマゴは生まれるのが楽しみといってみたりブルーになったり。秋の空となんとかは変わりやすいっていうけれど、まさにこれが女のよくわからないところだなと思う。女っていういうところがあるよなーと妙に納得してしまった。この辺の対比はおもしろい。 残念なのはオチが弱かったところかなー。なんだ生きてるじゃん? と思った矢先に、男のほうが「生きるのか死ぬのか」って言い出してよくわからなくなってしまった。でも、一人取り残されて不安になるのはわからないでもない。案外それが男なのかもしれない。私は男じゃないのでわからないですが。 お題:タマゴ タグ:一人称、タマゴ一人称、この発想はなかった、女ってわからない、トゲピー、トゲキッス 地方:不明 死亡:あり? No.017 ☆☆☆ 大変申し訳ないが、私の批評力の範疇を超えた作品。 癌で亡くなったシスターの話を聞いたことがある。告知の後も神や周囲の人に感謝をして穏やかだった人が、宣告された死期が近づいた途端、急に全てのものに当たり散らした。どうしてこんな風に死ななければならないのかと神を罵った。かと思えば、また翌日には穏やかなシスターに戻ったりもした。死を迎える恐怖と混乱は、かくも矛盾し、人を別人のように変える。(この話を聞かせてくれたのは、亡くなったシスターと直接の友人だった別のシスターである。) 本作の女タマゴの性格の豹変は、この話を思い出させた。 本作は創造された生命、そして神聖な“白いの”の元へと旅立つ救済のメタファーであると読める。クリスチャンの友人は何人かいるが、私自身はブッディストであるため、本作について論じることはできない。重ねてお詫びする。 渡邉健太 |