デリバードのクリスマスイブ実況中継 カントーFM、時刻は夜9時になりました。リスナーの皆さんメリークリスマス、ディスクジョッキーのデリバードです。今日はクリスマスイブ、僕はプレゼントの配達をしながら進めることにするよ。それじゃ、最初のナンバーはフワライドツヨシの名曲、「ヤンヤンマ」だ! さてさて、もう年末ですねえ。リスナーの皆さん、今年は良いことありましたか? 僕は今年ひどい目に遭ったんですよ。夢特性ってやつがあるじゃないですか。俺みたいな弱いポケモンが強化される数少ないチャンスだから、すごく楽しみにしてたんですよ。まだもらってない種族がたくさんある中、デリバードは既にいただいちゃいました。なんだと思います? なんと「ふみん」ですよ! え、良い特性じゃないかって? 確かに便利ではありますが、この特性はなんと「やるき」と同じく眠り状態にならないという効果なのです。しかし私は、もう「やるき」の特性を持っている! 完全に遊ばれちゃったんですよ、僕は。あっはっはっはっ、笑っちゃいますよねえ。 さて、そろそろ到着ですね。今日はお便りを頂いたリスナーさんのお宅に伺ってクリスマスプレゼントを渡すという企画のため、あちこちを回っています。最初に訪れるのは、むじんはつでんしょにお住まいのサンダーさん! ……サンダーって、伝説の鳥ポケモンとして有名な? まあ、話してみなければわかりません。早速行ってみましょう。こんばんはー。あ、サンダーさんですね? 寒い中お出迎えありがとうございます。 「……出迎えたわけではない、家がないのだ」 い、家がない? 一体どういうことですか? 「それがな、わしはそこのはつでんしょに昔から住んでおったのだ。ところがある日突然、人間どもがわしの住みかを奪った! いらなくなったら捨てて、必要と見れば力ずくでも手に入れるとは……やはり徹底抗戦しておけば良かったわい」 そ、それはお気の毒に。けれど、今日持ってきたプレゼントの「大型鳥ポケモン用寝袋」さえあれば、寒くありませんよ! 「ば、馬鹿者。それを言うんじゃない! わしの威厳に関わる。さあ用が済んだらさっさと帰った。でないとわしからもクリスマスプレゼントをやるぞ?」 ひっ! わかりました。メリークリスマス、失礼しました! いやあ、えらく怒らせちゃいましたねえ。しかし俺は目に焼き付けましたよ、サンダーさんが寝袋を見てニヤニヤする姿を。さて、そろそろ次のナンバーを流しちゃおうか。ニョロトノケイスケの「思い出はいつの日も通り雨」、レッツゴー! さてさて、次のお宅に到着するまでまだ時間がありますし、番組に届いているメッセージを読んじゃいましょうかね。えー、サファリゾーン在住のニドリーノさん。「俺と彼女のニドリーナはラブラブのカップル。最高に熱い毎日を送ってる。けど今日は遅いなあ、もう待ち合わせから1時間も経つぞ」か。……あー、そーだねー君、明日には僕とうまい酒が飲めるようになるよ。一緒に朝まで飲み明かそうぜ。 さあさあ、そうこうするうちに着きましたね。2人目のお宅はハナダシティのドードリオさん。あ、今回も外で待っていてくれました。こんばんはー、寒いのにありがとうございます。 「あらあらすみませんねえ、こちらこそ。ほら、ドリとリオも挨拶しなさい」 「こんばんはー」 「こんばんはっす」 あの、もしかして頭ごとに名前をお持ちで? 「そうなんですよ。次男がドリ、三男がリオ、長男の私がドーなのです」 「……おいドー、なんで同じポケモンなのに兄弟になるんだよ。しかもお前が長男だなんて」 「おやおや、どうかしたのですかドリ。私は戦闘力でも速さでも2人より優れている。それで十分じゃないですか」 「くそー、もう頭にきたぞ。積年の恨み、今こそ晴らす!」 あ、ドードリオのドーさんとドリさんが喧嘩を始めました。善良なディスクジョッキーとして、これは止めなければ。お二方ともやめてください! 「うるせえ、外野は引っ込んでろ!」 うわああ、ドリルくちばしだ! というわけで、プレゼントのきついハラマキを残して退散します! またしてもクリスマスイブらしからぬハプニングに遭遇してしまいました。喧嘩する程仲が良いとは言いますけどね。それでは丁度良い頃合いなので、次のナンバーをどうぞ。カモネギノリユキの「もうバトルなんてしない」、いってみよう。 では次のお宅に伺うまでの間、お便りを読んじゃいましょうか。えーと、ミナモシティのカゲボウズさんからのお便り。「デリバードさんは弱いポケモンですが、バトルで活躍したいと思ったことはありますか?」か。……念のために言っておくけど、デリバードは弱くないぞ! ただきあいのタスキが必須だったり命中に難があったりするだけさ! え、それが活躍できない理由だって? まあそこは否定しないでおくけど。で、僕も昔はマニューラとかスターミーとかみたいに活躍したかったよ。最近は、友達だったマグカルゴ君もからをやぶるなんて使いだしたし、ますます思いはつのるばかり。でも……お、そろそろ着きますね。 3人目のお宅はニビシティのキルリアさん。キルリアってカントーじゃあまり見かけないけど、可愛いよね。あ、今回も玄関前で待っててくれました。こんばんは、メリークリスマス! いやあ麗しいお姿で、鼻が伸びちゃいます。 「……僕、キルリアはキルリアでも♂なんだけど」 な、なんですって! それは失礼しました。じゃあ、もしかしてクリスマスプレゼントは……。 「そう、僕がめざめいしを頼んだのは進化がしたいから。『オスのキルリアとかどこの女装だよ』なんてからかわれて数年、僕はこの姿が嫌いでした。けど、オスのキルリアだけが進化できるポケモンが発見されたんです。進化に必要なのはめざめいし、可能な限り探してみました。けど見つからない。そこでデリバードさんの放送に賭けてみることにしたわけです」 なるほどー、これは中々重大な問題ですね。では早速プレゼント、といきたいところですが、1つ言わせてください。……すみません、プレゼントを用意できませんでした! 「そ、そんな! じゃあ何故僕の家に来たんですか?」 それがですね、放送の1ヶ月前にあらかじめ訪問するお宅を決めていたらしいのです。しかし当日になってもプレゼントの準備ができず、このような事態になってしまいました。 「……なんてこったい、寒い中待って損しましたよ」 あ、まだ話は終わってませんよ! お詫びの印としてこちらを受け取ってもらえないでしょうか? 「なんだよ、同情するなら石を……ってそれ、めざめいしじゃないですか! ないんじゃなかったんですか?」 ええ、確かにあなたの分は見つかりませんでした。これは5年前、シンオウ地方で地下を掘りまくって入手した自分用です。いつか、デリバードが進化するその日まで取っておこうと思いましたが、必要な方に使ってもらえれば本望ですよ。 「しかし、それではデリバードさんは!」 私はまた掘りに行きますから大丈夫です。さあ、早く使ってください。 「……わかりました。ありがとうございます」 今、キルリアさんがめざめいしを額に当て、光りだしました! 映像でお見せできないのが残念でなりません。そして……おめでとう! キルリアさんはエルレイドに進化しました! エルレイドさん、ご感想をどうぞ。 「は、はい。念願だった進化をすることができて、とても感動しています。デリバードさん、ありがとうございました。今日は最高のクリスマスです!」 どういたしまして。さて、そろそろ時間なのでこの辺で失礼します。お疲れさまでした。 喜んでもらえて良かったですよ、ほんと。ああいうのを見ると、僕のハートが弾んじゃうんだ。 さて、質問の続きに戻りますか。僕をはじめとしたデリバードはクリスマスにプレゼントを配るんだ。で、さっきみたいな場面にたくさん遭遇するわけ。その時「ありがとう」なんて言われると、もう元気ビンビンになっちゃうね。そして、「こんな良い仕事ができるなんて、僕はなんて幸せなんだ!」と思うから、バトルへの執着はあんまりないよ。贈ってるだけと思ったら実は贈られているんだ。皆さんも彼氏彼女だけでなく、家族や友達にもプレゼントしてみてください。きっとお互い幸せになりますよ。 さ、次はどのナンバーでいこうかなあ。……うん、これが良い。ドンカラスマサシで「ユクシーの贈り物」、いってみよう! (3431文字) 〔作品一覧もどる〕
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