行方不明と報じられていた少年が発見されたという情報が入り、一度はほっとした空気が流れていたものの、
救助に向かったレンジャーからの連絡が途絶えたという知らせにセンター内は騒然となった。

「二重遭難か?!」
「すぐ救助に向かわないと……!!」
「ちょっと待て! 訓練されたレンジャーが巻き込まれるような状況だとしたら……!」

「あたし行きます!」
 口火を切ったのは一人の少女だった。
「行っても邪魔になっちゃうかもしれないけど、ここで待ってるだけじゃ絶対なにもできないもの!
草ポケモンだったら、大雨だって平気だし、きっと『つるのムチ』も役に立つ!」
 堰を切ったようにトレーナーたちが立ち上がる。
「俺も行くぜ! 鍛え上げたポケモンの見せ所だ!」
「ボクも行くよ! LV低いけど、『にほんばれ』覚えたポワルン連れてきたんだ!」
気勢の上がるトレーナーたちが、一斉に外へと駆け出し、ボールからポケモンを出す。

「おーい、トモコちゃんや! ウチのゴーリキーも手伝わせておくれ!」
老人が投げたモンスターボールを、ポケモンに乗った少女はしっかりと受け止める。
「ヤマノさん、ありがとう! さくらちゃん、お借りしまーす!!
  ……さあ、行くよ、ツボちゃん!!」


 これだけのトレーナーとポケモンがいれば、きっと大丈夫。みんな無事に戻ってくるだろう。……きっと。
 後に一人残った老人は、一斉に現場に向かうトレーナーとポケモンたち、そしていまだ安否のわからない
遭難者とレンジャーたちの無事を祈りながら、真っ暗な空を見上げたのだった。





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