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  [No.1181] アニポケ詰め 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/09/04(Thu) 23:15:13   45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:アニポケ

 アニポケ見ながら書いてたssがやたら溜まって来たのでこちらで失礼します。ノマとかいろいろごっちゃです。ところでポケアニって言ってたけどアニポケのが一般的な言い方なんですかね。


  [No.1182] ピーターパンはどこにも行けない(ハルカとマサト) 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/09/04(Thu) 23:20:45   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:ハルカ】 【マサト

 夜野宿をしていて眠れない時に耳をすますと、ポケモンの世界の入り口に足を踏み入れることができる。

 耳から夜眠るポケモンたちの寝息や、夜行性のポケモンたちの声が入り込んでくるのだ。不意に、バサッとな
にかが飛び立つ音が聞こえた。まん丸いシルエットは、どこか昼の空と白い雲を合わせたポケモンを連想させて
──。

「なんだ、ホーホーか」

 つぶやきが聞こえたのか、ホーホーはバサバサと翼をはためかせ、こっちを見る。何でもないと手を振れば、
ホーホーは夜空の向こうへと飛び去っていってしまった。この地方でホーホーとは珍しいが、誰かの手持ちのポ
ケモンが夜の散歩に勤しんでいるのかもしれない。

「チルットだと思った?」
「マサト、起きてたの?」

 寝袋にくるまった弟の目が開いていたことに驚いて、ハルカは目を見開いた。てっきりぐっすり眠っていると
思ったのだが。こっちが驚いてるのも構わず、マサトは寝袋から這い出して、そばにあったメガネをかけた。
 
「どっかの世話のやけるおねーちゃんが、くらーい顔してブツブツ言ってたからね」
「何よそれ」
「へっへー」

 ひっぱたくマネをすると、マサトはロケットずつきをする前のカメックスみたいに頭を伏せて引っ込めて、防
御の体制を取った。これはカメックスも顔負けだ。

「チルットかわいかったもんね。やっぱりたまに、思い出しちゃう?」
「時々、どうしてもね」

 群れもはぐれたチルットのことを気にしていたのだから、捕まえず見送ったのがベストな選択ではあったのだ
と思う。だけどポケモントレーナーとしては捕まえるという選択肢もあったのだとも少しだけ考えた。視界に入
れたランプの灯が明るすぎてチカチカする。

「そういえば、魔法の粉ってとっさによく思いついたわよね」
「飛べないってので、ママによく読んでもらったピーターパン思い出してさ。おねえちゃんも一緒に聞いてたよ
ね」
「なつかしいなあ。まあ、わたしはもう立派に大人だから、おこちゃまなマサトみたいにとっさに思いつかなか
ったけど」
「むー、酷いなあ、もう数年すればトレーナーとして旅に出られるし、子どもじゃなくなるもん」
「ホントにい? まだまだピーターパンにあこがれるお年ごろってやつじゃないの?」
「違うよ」

 ムキになる弟が面白くて、ついつい意地悪を言ってしまったが、どうもマサトは本気で否定しているようだっ
た。ぷいとそむけた顔を元に戻して、ずいぶんと真面目な口調で、言い聞かせるように反論する。

「いい、おねーちゃん? ピーターパンはさ、どこでも鳥ポケモンみたいに飛んでっちゃうけど、実際はどこに
も行けてないんだ」
「なぞなぞみたいね」
「そう。なぞなぞみたいなやつなんだ。どこにでも飛んでけるけど、どこにも行けない。結局エラそうにできる
のは、ネバーランドの中だけで、ずっと子どものまま。おねえちゃんといっしょにママに読んでもらった、ピー
ターパンのお話はとっても面白かったけど、だからってピーターパンになりたいとは思わないよ」

 まるで魔法の粉をかけられたウェンディの弟達のように、マサトは両手を広げる。その動きはどこか荘厳で静
かだった。寝袋にくるまったサトシの近くで丸まっている、ピカチュウの寝息が聞こえて来る。

「だってさ、もうちょっとだけ大人になったら、ピーターパンにならなくても、自分でいろんなとこに飛んで歩
いて行けるんだよ。それってさ、魔法の粉を使って飛んでくよりステキじゃないか」 
「なるほどね。マサトもいろいろと考えてるじゃない」
「とーぜんさ。どっかの知らないことだらけのおねーちゃんとボクは違うからね」

 ピーターパンではないらしい弟は、今は嘘をついたピノキオみたいに鼻を高くしているようだった。へし折っ
てやろうか、と考えてやめておく。粉の代わりに夢を全身にふりかけたマサトは、いつか一人で飛び立つのだろ
う。空を飛ぶのではなく、大地を踏みしめて。

 今とは違う冒険の景色に映る人とポケモンとの出会いに、胸を高鳴らせながら。   


  [No.1183] 追いつけない(シトセレ) 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/09/04(Thu) 23:22:29   33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 注・暗いです。


 いつの間にかあの子の姿を目で追っていました。あの子はかわいくてまぶしかったからです。あの子には好き
な人がいて、ボクもその人のことは好意的に見ていました。ボクにはその好きな二人を引きはがしたり、割って
入ったりする勇気はありません。だからせめて、ボクは二人に置いていかれないよう、走って走って、必死に隣
にいようと思ったのです。

 なのに彼らの姿はどんどん遠ざかっていきます。ボクはみっともなく息を切らして、苦手な走りを頑張っても
どうしようもないのです。

 走っても走っても、いつまでもあのきれいな茶色い長い髪はずっと遠いままで、全く、何を、どうあがいても
追いつけないのです。


  [No.1184] 待たれることへの幸福論(シトセレ) 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/09/04(Thu) 23:24:55   41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:シトロン】 【セレナ】 【シトセレ

 一個前のssと対になってる感じです。繋がってはいませんが。


 道に迷うのは毎度のことながら、今度はサトシとユリーカ達とはぐれてしまった。旅慣れたサトシは心配ない
としても、まだ小さなユリーカはどうも姿が見えないと落ち着かなくて不安だ。

 サトシとピカチュウが一緒なのだから、自分といるよりは安心かもしれないが。そんなこと考えながら歩いて
いたら、運動が苦手な自分とセレナ、彼我(ひが)の距離がいつの間にかずいぶんと離れてしまっていた。普通
は女性に合わせてこっちが歩幅を小さくするというのに、セレナの方が歩みが早いというのがとてつもなく情け
ないと自分でも思う。ひいこらひいこら走っていると、いつの間にかその背中に追いついていた。セレナが歩み
を止めて、こちらを待っていてくれたのだ。

「ハアッ・・・・・・ハアッ・・・・・・すみません、迷惑をかけて」
「だってこれ以上はぐれたら大変だし」

 つい座り込んでしまう自分に差し出される手はほっそりしていて、なんでこんな手の持ち主が自分より体力を
持っているのが、シトロンにはとんと理解できない。科学で説明できないことは、この世界にたくさんあるのだ
。彼女の手の感触を考えるヒマもないくらい必死に立ち上がって、ぐったりする頭に気合いを入れる。

「セレナも、サトシも、ユリーカも・・・・・・なんだかんだ言って、みんなボクのことを待ってくれるんです
ね」
「? 当たり前じゃない。一緒に旅してるんだから。みんな一緒がいいよ」

 セレナにとって、シトロンは大事な旅の仲間の一人、そういう区分でそれ以上ではない。それでもシトロンは
嬉しかった。非科学的なスパークが体の中で轟いて、活力がわき出てくるようだった。

「・・・・・・ありがとう」
「ううん……さ、行こう」

 背を向けた彼女は握っていた自分の手を離して歩き出している。自分も後に続く。

 いつか出来るのだろうか、自分も。セレナと、みんなと、息を切らさず足並みをそろえて。さりげなく、なに
げなく、彼女の、セレナの隣を歩くことが。

 

 


  [No.1185] 間近の人魚(ケンカス) 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/09/04(Thu) 23:28:42   44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:ケンジ】 【カスミ】 【ケンカス

 手を挙げてあいさつをした、少し前に一緒に旅をした女の子は相変わらずで、オレンジの髪を片側だけ縛った
独特のヘアスタイルも、パッチリとした目も、その腕に抱えたルリリも、特にこれといって変わったところはな
い。

 女の子にしては少し露出が大きい服だけが変わって、逆にそれが少し大人っぽくなったなあと思う。
 
「どうしたのケンジ」
「いや博士の調査の手伝いの途中で通りがかってさ、どうしてるかなって」
「あたしは特に変わったことはないわよ。ルリリは元気だし、コダックは相変わらず泳げないし」

 泳げないし、のところで露骨に微妙な顔をする正直なところも変わっていない。そのハッキリものを言うとこ
ろが彼女の姉たちよりおっかない印象を作っているが、それは裏表がないということも示している。

 だから同じようにイライラした時は怒り、困ったことがあればため息をつく正直な性質であるケンジは、カス
ミの性質を仲間として気に入っていた。

「ルリリも元気そうだね」
「ルリー♪」
「当然よ。この子はこのあたしが、手塩にかけて育ててるんだから」

 言って、ルリリの頭を撫でる手つきはなんだか手馴れている。昔はタマゴそっくりなポケモンを抱えていた彼
女は、いつしかそれが呼吸をするのと同じ、無意識の動作となっていた。
 
「せっかくだからあがっていったら? 時間があればだけど。お茶くらい出すわよ」
「いいのかい?」
「ええ。お姉ちゃんたちは出かけてていないけどね」

 こっちも相変わらずか。別にお姉さん目当てで来たわけではないけれど、なんだかオーキド博士よりせわしな
い生活をしている気がする彼女の姉たちに、ケンジはハッキリと苦笑いした。

 ◆

「せっかくだからルリリを観察させてもらいます」
「いいけど……それならあたしも一緒に描かないといけないわね」

 彼女の言うとおり、おやつのクッキーが置かれているテーブルにちょこんと座ったルリリは、カスミの側から
離れようとしない。カスミの腕に寄りそって、スリスリとコミュニケイションを取っているルリリは、カスミの
小さな恋人のようでもある。

 カスミは水タイプを主力メンバーとするジムリーダーで、そちら方面のポケモンとの相性もいいのだろうけれ
ど、こういう赤ちゃん──いわゆるベイビィポケモンとも相性がいいのかもしれない。

 記憶の中の、帽子を被ったカスミと同い年であるはずの少年は、よく彼女にお小言を言われていたものだ。末
っ子なのに彼女は面倒見がいい。

「ボクの観察はポケモン専門なんだけどなあ」
「だってルリリとあたしは仲良しで、二人でひとつみたいなものだもの。ねー、ルリリ」
「ルリー」

 彼女に返事をするように、ルリリは彼女の腕の中に収まってしまった。
 やれやれ、これは彼女たちの意見を尊重するより他はないようだ。

「感謝しなさいよ。世界の美少女カスミちゃんを、かわいいルリリと一緒に観察出来ちゃうんだから」
「アハハ……貴重な機会を、ありがとう」

 さて、その後の完成したケンジのスケッチの中の彼女が、彼女の言うとおりの美少女に描けていたかは定かで
はない。何しろルリリを中心に描いて、カスミの顔は完全に見切れてしまって、それを見たカスミは不服そうに
ふくれっ面をしていたので。

 そうは言っても仕方がない。描いてる途中でどうしても意識してしまう彼女の細い腕とか首筋とかパッチリし
た目が、何だか旅の仲間だった人に向ける感情としては不釣合いだし照れくさかったのだ。


  [No.1186] 意趣返し(シュウハル) 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/09/04(Thu) 23:31:04   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:シュウ】 【ハルカ

 向こうの方に赤いバンダナが見える。赤いバンダナは上着と揃いで目立つから、遠くからでもすぐわかる。今
日はピカチュウを連れた少年と、細目の少年と、彼女の弟が見あたらない。別行動でもしているのだろうか。

 そこはどちらでもかまわない。こっちは良きライバルとして、声をかけるだけだ。相棒のロゼリアを連れて、
彼女の元へと歩く。後十メートル。五メートル。いつも通りのバラを懐から出す。いつでもそれはみずみずしい
。広場ではお弁当を食べたり駆け回ったりしている子どもがいて騒がしい。騒がしさが少しだけ心臓に活を入れ
る。柄にもなく緊張していた。あと二メートル、一メートル。

「やあ久しぶり」
「あ、シュウ! これあげる!」

 彼女は何故か、自分と同じ色の真っ赤なバラを持っていた。何か言う前に、強引に手にバラが押しつけられる
。どっかのロケット団もバラを手に持っていたが、そのバラが一本でなく二本になるだけで果てしなく間が抜け
て見えるのは何故だろうか。

「何のつもりだい、これは」
「だってシュウ、いっつもキザにバラを投げてくるから、仕返ししてあげようかと思って」
「仕返しって、キミ、それでわざわざバラなんか用意して一人でウロウロしてたのか? ボクにだって会えると
も限らないのに」
「ウロウロって失礼ね! ・・・・・・だって、今日はなんとなく、会える気がしたんだもん」

 自分でも間抜けだと思ったのか、ハルカの顔が赤くなる。赤いバンダナに赤い服のハルカが顔まで赤くすると
、上半身全部が真っ赤みたいだ。

「・・・・・・で、でも! こうしてシュウにも会えたし! シュウだっておどろかせられたし、結果オーライか
も!」
「たしかに、キミの面白い発想についていけなくて、驚いてはいるけれどね」
「ふーんだ。もうシュウはバラを受け取っちゃったし、驚いちゃった方が負けだもん」
「ロッゼゼゼゼゼッ!」

 あんまりわけのわからないことをやっている自身のトレーナーとその友人に、とうとう笑いが堪えきれなくな
ったのか、ロゼリアは花の手のひらを口に当てて上品に笑った。

「ロゼリアッ」
「ローゼッ」

 これは失礼しました、と今がコンテストならいい点が入りそうな動きでロゼリアは優雅に頭を下げる。本当に
反省したのか怪しいが、まあいい。普段から怠らない美しい動きに免じて許してやろう。

 今は何だか顔が赤いままふてくされている彼女と、間抜けにニ本もバラを持つ羽目になっているこの状況をど
うするべきかこそが問題だ。


  [No.1187] マネネというポケモン(コジロウのマネネ) 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/09/04(Thu) 23:32:26   46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:マネネ】 【ロケット団

 マネネは、名が体を表す通り、人の行動を真似して気持ちをはかり、相手に敵意がなければその対象を楽しま
せたり励ましたりする、実に楽しいポケモンだ。そのマネネが、のんびり楽しく、リズムを取りながら、時に街
を歩く人の遊び疲れて曲がった背中、スキップしながら遊びに行く足取りを真似ながつつ、これというあてもな
さそうに歩いていく。

 まるでチラシをばらまきながら歩く旅芸人一座のように、楽しそうに歩いていたマネネは、前方に悲しそうに
泣いている女の子を見つけた。
 
 髪の毛を二つに結んだ、年齢的には小さなマネネよりもずっと小さそうな女の子だ。迷子なのか、時々お母さ
んを呼びながら、目頭を押さえぐすんぐすんと泣き続けている。
 
 マネネはその女の子の前に立ち、女の子と同じポーズで泣き真似を始めた。これは女の子をからかっているの
ではない。マネネはベイビィポケモンらしくイタズラが大好きだけれども、意地悪はしない。こうやって悲しん
でいる相手の動きを真似することで、ただ見るだけではわからない、相手の気持ちをマネネなりに探ろうとして
いるのだ。

「グスン・・・・・・グスッ・・・・・・あれ、あなたどうしたの?」

 小さな女の子が、泣き真似をしているマネネに気づいたようだ。自分よりもちっちゃなポケモンが泣いている
のに気がついて、泣くのも忘れてマネネの心配をしてしまったらしい。目頭を押さえるのをやめてきょとんとし
た女の子の動きを真似して、マネネが手で目を押さえるのをよして、きょとんとした顔をする。つぶらなお目目
にもちろん涙はない。

「なーんだ、うそなきだー」

 泣いたヤミカラスがもう笑う。子どもはマネネと同じ、楽しいことが大好き。そこに楽しいことがあれば、ち
ょっと前のつらいことなんて、ケロッとケロマツみたいに忘れてしまう。女の子が笑ったので、マネネもニッコ
リする。女の子がこんにちはと手を振れば、まねっこマネネも手を振り替えす。そうしてるうちに、すっかり涙
は渇いてしまった。

「ユウコー、どこにいるのー?」

 遠くから、どこかのおばちゃんの声がする。女の子が声を聞いてハッとなり、立ちあがった。この女の子の名
前はユウコちゃんと言って、ユウコちゃんを呼ぶおばちゃんは、お母さんのようだ。女の子が駆け出す。お母さ
んに向かって。

「ユウコ、勝手にどっか行っちゃだめって言ったでしょ。あなたはすぐ迷子になるんだから」
「ごめんなさい。でもね、お母さんがいない間、あの子が遊んでくれたんだよ、ほら!」

 そうして指さす女の子の先には、すでに楽しいポケモンの姿はない。まるで風のように現れて風のように去る
旅芸人一座みたいに、影も形もなかった。



 子どもがマネネと同じなら、マネネも子どもとおんなじだ。女の子が安心できるお母さんをみつけたらすぐ駆
けだして行ったように、マネネも安心できるだれかを見つけたら、すぐに駆けだして行ってしまう。

「見つけたぞー、マネネ。ダメじゃないか勝手にどっか行っちゃー」
「ソォー、ナンスッ!」
「まったくもー、ちょろちょろふらふらして、危なっかしいったらないわ」
「まったくニャ」

 マネネが駆けだして行った先には、青い髪の青年と、赤い長髪の女性と、真っ青な体のソーナンスと、人間み
たいに二つの足で立っているニャースがいた。走るマネネは、その勢いのまま青い髪の青年の腕めがけて飛び込
んでいく。

「おー、どうしたどうした? 心細かったのか?」
「・・・・・・そうはぜんぜん見えないんだけど」
「笑ってるニャ」
「ソォー、ナンスッ!」

 マネネの飛び込んだ青年の胸には、マネネの赤っ鼻と同じような色の、真っ赤なRの文字が描かれている。ワ
ルそうな胸の文字とは裏腹に、青い髪の青年は飛びついてきたマネネにデレデレするのにいそがしい。

「そうかそうかー、何か楽しいことがあったんだな?」
「マネネ、マネッ!!」

 マネネが笑っているのは、青年の表情を写し取ったのか、それとも自分が楽しいのか。

 話は変わるが、マネネの愉快な動きとピエロのような容姿は、ずっと昔、まだマネネがマネネという名前でも
なく、愉快な動きとピエロの姿もなかったころ。芸をして日銭を稼ぐ人間達の動きが楽しそうだったから、ピエ
ロのような楽しい動きと容姿を真似たのだという説がある。

 この説はいやこれは人間がマネネのマネをして路上パフォーマンスをするようになったのだという者もいて、
どっちがどっちのマネをしたという言い合い、水掛け論か言葉遊びのような趣になっている。またまたややこし
いことに、最近見つかったばかりのマネネがずっと昔から存在したという証拠がどこにあるという者までいて、
何だかその辺の界隈はとてもややっこしい。

 マネをしたのかされたのか、はたまた急な突然変異かなんて、青い髪の青年の小さなマネネは知らないし、考
えようとも思わない。

 ただ泣いていた女の子のような誰かが、抱きしめてくれている青い髪の青年が笑ってくれるから、小さなマネ
ネは今日も大道芸人のピエロのような格好をして、誰かの真似っこをしているのである。



 ロケット団のマネネがかわいすぎたから書きました。ロケット団のマネネにするか別個体にするか迷いました
が、ロケット団の人らを一度書いてみたかったのでコジロウのマネネになりました。  


  [No.1188] しっぽの気持ち(サトセレ) 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/09/04(Thu) 23:35:55   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:サトシ】 【セレナ】 【サトセレ

 ユリーカと二人、やって来た街を観光して歩いていると、一つの小さなお店を通りがかった瞬間、とってもい
い匂いが鼻先をくすぐった。甘い、おいしい、ポフレとはちょっと違う幸福なお菓子。

 香ばしくてとてつもなく、すごい勢いでお腹の虫をくすぐってくるもの。ガラス張りの店内を見れば、それは
ケーキ屋さんだった。ちょうど出来たてらしいクッキーを、お店のガラスのケースに陳列しているところだ。

「ねえねえセレナ、すごおーく、おいしそうだよ?」

 一緒にいたユリーカが、ヨダレを垂らさんばかりの勢いで店内を指さしている。愛用のポシェットから首を出
しているデデンネも、ぴょこぴょこしっぽを振って落ち着かない。お腹の虫はずっとくすぐられ続けている。

「じゃあ、買っていこっか」

 毎朝気を使って一生懸命ブラッシングしている、ヘアスタイルの奥の脳味噌の中枢神経なんやかやは、お見事
なほど匂いに陥落してしまった。


 値段もそれほどではなかったそれを、ユリーカとセレナはついつい自分のポケモンのぶんまで買ってしまった
。一人(あるいは一匹)一袋行き渡ることになったそれらを、ユリーカもセレナもフォッコもデデンネも、みん
なしてあっという間に食べ尽くしてしまう。

 匂いの誘い通り、クッキーはとってもおいしい。一つの袋の中に、種類の違う小さめのクッキーが、ぎゅうぎ
ゅうと入っていた。食べた時の味がふわふわくるくる変わるそれは、手がいつまでも止まらない。

「デデンネにおしゃれさせてあげるね」
「デネデネーッ!」
 
 食べ終わって手持ちぶさたになったユリーカが、クッキーの袋口を縛っていた赤いリボンをデデンネのしっぽ
にくるっと結びつけた。兄に似て案外手先が器用なユリーカは、瞬く間にデデンネのしっぽを彩ってしまう。

「デデンネ、似合ってるー。よーし、あたしもっ!」

 しっぽを彩られ、その場をくるくると回り喜びを表現するちっちゃな相棒がうらやましくなったのか、ユリー
カは自分のサイドで縛った髪の根元に、自分のクッキーについていたリボンをくるっと結びつけて、おそろいに
してしまった。

「どーお、セレナッ!」
「うん、すっごくかわいいっ! 似合ってるよっ!」
「わーい!! あたしたち、かわいいって、デデンネ」
「デネーッ!」

 ぴょんぴょんと自分の体を登ってきて頬ずりをするユリーカに、こっちもなんとなくうらやましさを感じて、
そっとフォッコのしっぽにリボンを結びつけてみた。ユリーカは器用らしい。いざやってみると、ちょこちょこ
落ち着かないフォッコにリボンをつけてあげるのは骨が折れた。

「よーし、フォッコもかわいいかわいいっ。わたしもやっちゃおーっと」

 先っぽだけまとめた自分の髪の毛先を持ってきて、さっと真っ赤なリボンを縛り付ける。

「わー、セレナもフォッコも、かわいいねー」
「えへへ、ありがと」

 ピン、と指で髪をはじいて定位置に戻しながらユリーカに笑いかけて、それからちょっとだけ、よこしまなこ
とを考えた。

 ──サトシもかわいいって、言ってくれるかな。


 待ち合わせ場所のポケモンセンターのドアをくぐるなり、ユリーカは真っ先に入り口近くのベンチに座ってい
たサトシとシトロンを見つけて、パタパタせわしなく走っていく。

「ただいまー!」
「ああおかえりユリーカ、セレナ。面白いものあったか?」
「うん! きれいな噴水とか、かわいいお店とか、いろいろ見て回ってきたよ」
「そっか。こっちはちょっと途中でギブアップしちゃってな」

 ピカチュウを抱き上げながら、サトシはグロッキー状態のシトロンを目線だけで指す。特訓場所を探すついで
に、シトロンの買い物につき合うと言って別行動を取っていたのだが、この様子では無事買い物を全て終えたの
か怪しいところである。と思った瞬間、「買い物は無事終わりました!」という妙に気合いの入った声が、グロ
ッキー状態のシトロンの口から発せられた。いいパーツでも見つかったのであろうか。

「見て見てサトシ、お兄ちゃん、デデンネのしっぽかわいいでしょ!」
「ああ、ホントだ。かわいいな」
「これはかわいいですね」
「ふふふー、おそろいなんだよっ」

 ポシェットに入っていたデデンネを、バッとサトシ達の顔の近くまで抱え上げて、ユリーカは体全体で相棒と
同じ物を身につけていることを表現する。ユリーカみたいにサラッと、何気なく言えたらいいのになあ。そう思
いながら、自分も足元のフォッコを抱え上げて、さりげなく、自分の髪の毛のしっぽの部分も見えるように肩に
かけて、サトシに見えるようにしながら、なるべくさりげなく、ユリーカと同じように声をかけた。

「あのね、フォッコとわたしも、同じようにしてみたんだけど・・・・・・」
「へー、かわいいじゃないか」

 やったあ! フォッコを抱えているため実際には出来ないが、セレナは内心でガッツポーズを取った。サトシ
はセレナに抱え上げられたフォッコの頭を撫でながら、ニコニコ笑っている。

「フォッコの真っ赤なリボン似合ってるぞ」
「フォッコォッ!」

 誉められて撫でられてフォッコは上機嫌だったが、セレナは反対にズッコケそうになった。やっぱりフォッコ
をかかえているので実際には出来ないのだが。

 ほんのちょっぴりだけムッとしながらも、セレナはサトシを怒る気にもなれなかった。何故なら、サトシの自
然にポケモンに優しく出来るところも、セレナは大好きだからだ。


  [No.1189] かっこわるい(サトシとピカチュウ) 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/09/04(Thu) 23:40:20   43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:サトシ】 【ピカチュウ

 うっかりコータスのオーバーヒートを喰らったサトシの顔は、それはもうだんろの煤(すす)を思いっきり頭
からかぶったみたいに真っ黒だった。

 トレードマークの赤と黒の鍔(つば)つき帽子も、少し黒めの地肌も、横にとんがった黒い髪さえも、全部煤
色に黒くなって焦げている。特訓中にうっかりサトシに攻撃する形になってしまったコータスは噴水みたいな勢
いで泣いて、サトシは見事な勢いで仰向けにぶっ倒れた。

 白い雲の浮かんだ青い空に向かって少しだけ突きあげられた手は引きつけを起こしてガクガク震えていて、焦
げた顔についている目は見開かれ、開いた口は「あががががが……」と言葉にならない音を発している。

 とどめに頭からは黒い煙がプスプスと絵本のえんとつみたいに出ているのである。それを見ると苦笑いをせず
にはいられないし、事実自分も苦笑いをしてしまう。

 横に座ってサトシの特訓を見ていた心優しいハルカは見てらんないというように目を両手で覆っているが、ピ
カチュウを抱っこしているマサトはすっかり慣れたもので、アハハハハと苦笑いでさえない笑いを周りに提供し
ている。そうして、なんだか情けなくて面白い兄貴でも出来たように親しみをこめていうのだ。
 
 かっこわるい、と。

 だがしかしそれは違うと思う。言われたサトシもマサトに向かって怒ることもなく、引きつけまで起こしてい
たのがウソのようにムクッと起きあがり、笑い返しているが、敢えて言う。それは違うのだと。

 確かに自分もマサトに抱っこされながら苦笑いをしているが、もしサトシたちと口がきけてもかっこわるいと
は言わないであろう。

 真っ黒コゲにされても数秒後には復活するじこさいせいを繰り返すスターミーやサニーゴも真っ青なサトシは
笑ってしまうが、かっこわるくはないのだ。反論するなら見てみればいい。

 一回目のオーバーヒートを喰らったのに、サトシはいかりをぶつけ、あばれることもなく、コータスの甲羅を
なでているではないか。

 そうして撫でながら、「前よりパワーが強くなっているじゃないか」とほめているではないか。 これが並の
トレーナーに出来ようか。いや出来ない。

 彼は少しばかり猪突猛進なところがあるが、決して思いやりがないわけではない。むしろ人一倍お人よしの節
がある。
 
 そして自分は、そんな彼がいっとう好きで、誰よりもカッコいい、素晴らしい相棒だと思っているのだ。



 思ってたよりいっぱいありました。こちらの投稿にさせていただいて正解だった。コータスが特訓相手なのは
趣味です。長々と失礼しました。