Subject ID:
#128650
Subject Name:
魔法の家
Registration Date:
2010-10-08
Precaution Level:
Level 4 (2010-10-08時点) → Level 0 (2016-04-27時点)
Handling Instructions:
エリア#128650はその特異な性質から、当局による直接的な収容は極めて困難です。このため、案件担当者がエリア#128650の居住者である住民#128650-2及び住民#128650-3と定期的に連絡を取り合い、エリア#128650の特異性を発現させている住民#128650-1を継続監視する代替の収容手順が策定されました。この収容手順はエリア#128650の特異性が失われるまで継続されます。住民#128650-2と住民#128650-3の実子である住民#128650-4及び住民#128650-5については、当局による監視の下で寄宿制の学校へ通学させています。
住民#128650-1については3年ほど前から案件担当者に対して種々の体調不良を訴えており、また住民#128650が持つ性質から近代医学に基づく医療措置を受けることも不可能であると考えられるため、当局から具体的なアクションを起こす予定はありません。これまでに得られた情報から、住民#128650-1の死去をもって、エリア#128650の特異性は失われるとの見方が示されています。
[2016-04-27 Update]
2016-04-20をもって住民#128650-1は老衰のため死去し、それと同時にエリア#128650は特異な性質を喪失しました。エリア#128650における資源の利用制約はなくなり、高度な電子機器を含むすべての資源が利用可能になります。エリア#128650に於ける特異性の消失をもって、当案件の警戒レベルは「0」に再設定されました。
エリア#128650は事後検査のため一か月間管理下におかれ、その後事象#128650の再発が確認されなかった場合、当局より住民#128650-2に返還される予定です。エリア#128650の返還に際しては、現存する住民#128650全員(-2, -3, -4, -5)に対してプロトコルUXに基づく記憶処理が行われます。
Subject Details:
案件#128650は、ある異常性を持った一軒家及びその近隣(エリア#128650)、エリア#128650内に居住していた五人の人間(住民#128650)、並びにエリア#128650に於いて発生していた事象(事象#128650)、及びそれらに係る一連の案件です。
2010年9月上旬、住民#128650-2から当局へ「子供が家を出たまま帰らない」と通報が寄せられました。警察機関ではなく案件管理局へ直接通報がなされたことが当局の注意を引き、住民#128650-2にヒアリングを実施しました。ヒアリングによってエリア#128650及び事象#128650について情報が得られ、エリア#128650が当局の管理下に置かれることとなりました。住民#128650-4及び-5については、コガネシティ第三支局所属のフィールドワーカーが一時保護の上警察に引き渡していたことが分かり、警察当局より当局へ身柄が移管されました。
エリア#128650は一貫する異常性を帯びた165平方メートルの空間です。エリア#128650における異常性は事象#128650として分類され、その根本的な起源はエリア#128650における住民の一人である住民#128650-1にあると突き止められました。住民#128650-2から-5については、住民#128650-1と直接の血縁関係にあるにもかかわらず、事象#128650やそれに類する事象を発生させる能力を保持していません。
住民#128650-1はエリア#128650に居住する七十六歳の女性で、住民#128650-2の母親に相当する人物です。住民#128650-2は住民#128650-2の実の娘で、住民#128650-3とは婚姻関係にあります。住民#128650-4及び-5は住民#128650-2及び-3の間に生まれた実子で、それぞれ十歳の女性と八歳の男性です。住民#128650-1を除き、すべての住民#128650が当局の管理下に置かれることを了承しています。また住民#128650-4及び-5については、保護者である住民#128650-2及び-3と当事者である住民#128650-4及び-5両者からの申し出により、エリア#128650に戻るのではなく寄宿制の学校へ転校する措置が執られました。この措置は、当局の倫理委員会の承認に基づくものです。
事象#128650は、事象が発生している区域内に於いて(恐らくは)1950年以前に実用化されていなかった物品が一時的に機能を喪失して利用できなくなるという事象です。事象#128650の対象となるのは物品が実用化されていなかったケースであり、物品個々の製造年ではないことに注意してください。例えば2010年に製造された一般的な鉛筆については、「鉛筆」という概念そのものは1950年時点で存在していたことが明らかであるため、影響を受けることなく使用することができます。また、1950年以降に出生した人物についても、エリア#128650内で問題なく活動することが可能です。この点は住民#128650-1を除く住民#128650が全員1950年よりも後に出生したことからも証明されています。
以下は案件担当者が住民#128650-2と共にエリア#128650に対して物品を持ち込み、利用の可否についてテストを行った結果の抜粋です:
[ケース番号1]
対象物品:ゼブラ社製の油性ボールペン
利用可否:利用不可。ボールペンは芯を出すことができませんでした。芯を出したまま持ち込まれたものについては、インクが十分残っているにも関わらず紙への筆記ができませんでした。エリア#128650から退出した直後から正常に利用可能になったことを確認しました。
[ケース番号4]
対象物品:Apple社製のスマートフォン「iPhone 3G」
利用可否:利用不可。電源を投入したまま持ち込まれたiPhone 3Gは即座にシャットダウンされ、エリア#128650内部での再起動の試みはすべて失敗に終わりました。エリア#128650からの退出後は再び正常に稼働しましたが、シャットダウン時のログは記録されていませんでした。
[ケース番号11]
対象物品:プラスチック製のストロー
利用可否:利用不可。未知の原理によりストローの機能が失われ、液体を吸い上げられなくなっていることが分かりました。無作為に選ばれた13本のサンプルすべてで同一の事象が発生しました。エリア#128650からの退出後、すべてのストローが正常に利用できることを確認しました。
[ケース番号12]
対象物品:森永乳業製アイスクリーム「ピノ」
利用可否:利用不可。持ち込まれた「ピノ」はいかなる手段を用いても容器から取り外すことができませんでした。あらかじめ容器から出しておいたものについても、実験に当たった局員が「鉄のように固い」とコメントし、摂食できませんでした。この実験結果から、事象#128650は食品に対しても作用するとの知見が得られました。
[ケース番号16]
対象物品:1950年以降に開発・販売されたカレールーを使用したカレー
利用可否:利用可能。カレーの概念自体は1950年以前に確立されていたことが理由と推定されます。
[ケース番号17]
対象物品:ケース番号16の調理時に使用したカレールー
利用可否:利用不可。エリア#128650内においてカレールーはケース番号12と同じ理由で容器から取り出せず、あらかじめ取り出しておいたものについても利用できませんでした。対象のカレールーが市販されたのが1960年代以降であることが理由と考えられています。
[ケース番号18]
対象物品:ケース番号16で調理したカレーをプラスチック製の容器に盛り付けたもの
利用可否:利用不可。持ち込んだ直後に未知の理由によりカレーが食器から滑り落ちました。プラスチック製の食器は1950年以前に実用化されていなかったことが原因と推定されます。
[ケース番号26]
対象物品:電池駆動の針式腕時計
利用可否:利用不可。腕時計の概念は1950年以前に確立されていましたが、電池駆動のものは1960年代になるまで実用化されていなかったためと見られます。
[ケース番号28]
対象物品:ぜんまい動力による針式腕時計
利用可否:利用可能。このタイプの腕時計は1950年時点で実用化されていたためと見られます。
[ケース番号29]
対象物品:1950年代の仕様に基づき2000年代に製造されたぜんまい動力による針式腕時計
利用可否:利用可能。製造年は事象#128650に直接関与するものではないことが明らかにされました。
エリア#128650における事象#128650の性質により、住民#128650-2から-5は1950年代当時の水準で生活することを余儀なくされていました。住民#128650-4及び-5はこの生活環境に対して非常に強いストレスを感じており、エリア#128650を出る直接の原因になったと局員に語っています。エリア#128650で居住していた際は友人を家へ呼ぶこともできなかったと語っていることから、エリア#128650について住民#128650以外に知識を持っている人物はいないと考えられます。住民#128650-4及び-5は当局局員が勤務する寄宿制の学校へ転校させられました。
住民#128650-1は少なくとも2004年頃から「近頃は便利になりすぎた」と周囲に語っており、近代化された生活を嫌悪していたとの複数の証言を得ています。いかなる原理により事象#128650が発生しているのかは定かではありませんが、事象#128650の性質を鑑みてその発生に住民#128650-1が深く関与していると見られています。
事象#128650の「所定の道具を使用できなくする」という特徴から、事象#128650については携帯獣の技能の一つ「マジックルーム」に類似した性質を持つと考えられています。正確な性質については今後さらに調査が行われる予定です。
[2016-04-27 Update]
住民#128650-1の死後エリア#128650に残置された物品の一部について、事象#128650の影響下に長期間置かれ続けたため性質を変貌させた虞のあるものが確認されました。該当する物品については当局が押収し、ジョウト地方エンジュシティ第六支局の中異常性物品保管庫へ移送/保管しています。これら物品の詳細については、押収時に作成された目録L-128650-4を参照してください。今後エリア#128650内で同様の物品が発見された場合、収容措置を執ると共に目録L-128650-1を更新してください。
Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。