草上で食前酒 -Le Aperitif sur l’herbe
Chapitre4-1. 葡萄月のクノエシティ
9月下旬 クノエシティ
目を覚ますと、セラが消えていた。
一人しかいないポケモンセンター宿舎のツインルームで、枕元のシシコが毛づくろいしている気配だけを感じ取りながら、リズはしばらく白い天井を見つめてぼんやりとしていた。
朝の7時半ごろ、日が昇ってくる。
外は曇り、室内は10℃でもう肌寒い季節となっていた。
昨晩まで確かにセラが休んでいたはずのベッドは、まるで使用されたことなどないかのようにぴしりと几帳面にベッドメイクされていた。おそらくニャスパーの念力のなせる業だろうとリズは適当に結論付けた。エスパーポケモンはだいたい何でも出来るものだ。
セラの痕跡は、いっさい部屋から消えている。
上着も無い。荷物も無い。室内履きも無くなっている。
10か月弱もの間ずっとリズと行動を共にしていたセラが実は幽霊だったというオチでも別におかしくないぐらい、気配が消えている。
書き置きなども何も無い。
しかしホロキャスターを操ってみれば、きちんとセラのホロキャスターの番号は登録されたままである。かといって、彼に電話を掛けたりメールを送ったりする気にはなれなかった。これまでもそんな事をしたことはなかったし。
リズにとってセラとは、記憶の中の唯一の友達であり、またリズが記憶を失っても常に傍に居続けた物好きな人間だ。それでも、だからといって特別に大事に思うほどの相手ではない、ように思われる。
エゴイストであることを自覚しているがゆえに。
そのリズは、自分の領域が侵されない限りは、他人の意思や価値観を尊重するつもりである。セラがどこかへ行きたくなったのなら自由に行けばいいし、リズに付き合うのが厭になったという話なら別にそれでも構わない。好きに生きてくれればいい。
リズは興味もなく、のんびりと伸びをしてベッドから立ち上がった。
セラがいようがいまいが、やる事は今日も変わらない。とりあえず朝食にして、当面の宿代飯代を適当に稼がなければならない。そろそろ冬着も欲しいところだ。
季節はもう葡萄を収穫する頃だけれど、ところがこのカロス最北の街クノエシティは、葡萄の栽培北限を越えてしまっている。
そのためこの街では、朝から夕まで農家のコマタナたちが偉そうなキリキザンの指揮の下でせっせと葡萄を摘み取る秋の風物詩を拝むことは叶わない。地酒もワインよりはむしろビールが有名だ。
木々の葉が色づき始めている。
家々の庭のボダイジュやブナは金茶に。
街路のプラタナスは黄赤や薄茶や青枯れのものなど様々に匂う。
路地にはマロニエの落葉の薄黄の吹き溜まり。
ナナカマドは鮮やかな真紅に。
カエデは水彩のような橙黄色に。
ツタは深紅に、石造の家々の外壁を染め上げ。
そして黄金や緋色のナラが、クノエの街全体を上品な錦に織り上げている。
公園や庭には淡紅色のコスモスや、赤・橙・黄・白・ピンク・薄紫と様々な色を持つダリア、これまた赤黄橙白と鮮やかな色を剣のように飾ったグラジオラス。
秋のクノエは華やかだ。
リズは、のんびりと朝食のバゲットを買うために朝のクノエを散歩しながら、秋の色彩を花切鋏で手の中に集めている。さながら七色のパレットのような美しい花束が出来上がった。
リズの足元を、シシコがくるくると駆けまわっている。仲良しだったニャスパーがいなくなってもシシコはいつもと同じ調子だった。
明るかった夏の太陽はあっという間に雲に覆われてしまい、既に涼しくなってはいるけれど、秋は秋でこれまた心躍る季節だ。カロス各地で葡萄や林檎の収穫祭が大々的に催され、それらの果実から新酒が造られればまたもや各地でワイン祭りが開かれ、それからは年末のノエルに向かって気分が盛り上がってゆき、そして年明けを盛大に祝う。
――それが毎年繰り返されるはずだ。
フレア団はそれらをすべて破壊しようとしたが、その野望ももはや潰えたのだから。
季節は巡る。
美しい人とポケモンの営みは続いていく。
その後ポケモンセンターに戻り、朝食のバゲットをカフェオレに浸しながらホロキャスターのラジオでニュースを聴いていて、リズは顔を上げた。
『昨日午後、ミアレシティで、自称フレア団所属の科学者の男・クセロシキが、強盗罪その他の容疑により、ミアレ警察によって逮捕されました』
――クセロシキ。
記憶の中のケラススが何かとオリュザに愚痴を言っていた、フレア団でのセラの上司の名前だ。
ニュースを聞いていると、どうやらそのクセロシキという男は、ミアレに住む貧しい移民の少女に、アルバイトなどと称して精神を遠隔操作する恐ろしいスーツを装着させ、意識のない少女にミアレの人々のポケモンを強奪させたり、美術館の絵画に落書きをさせたりした、というのである。
「ロリコンきめぇ」
感想の一つめはそれだ。男が少女の意思を奪って操ったなどと言っているが、確実にいやらしい事があったはずだ。――とリズは思う。
さらに、その少女の精神を操って犯罪を強要するというのは、クセロシキに間接正犯が成立するのみならず、実に重大な人権侵害だ。それは倫理的に手を出してはならない研究分野だったはず。そのような研究をフレア団の援助なしに一定水準まで完成させてしまったクセロシキは、まさにマッドサイエンティストの名がふさわしいように思われる。
セラがこの男を嫌っていたのも、納得されるのだった。
今頃セラもどこかでこのクセロシキ逮捕のニュースを聞いてほくそ笑んでいるのだろうか――と考えたところで、リズはバゲットの欠片を丸ごとカフェオレの中に落としてしまった。
――なぜ、いなくなったセラのことを気にする必要がある?
***
「ケラススはどうした?」
ミアレシティのフラダリラボの休憩室。一人きりでこっそり上等のセキタイ産シードルを楽しもうとしていたところに背後から低く穏やかな声を掛けられ、オリュザはびくりと飛び上がった。
恐る恐る振り返り、きまり悪く笑いながら立ち上がる。
「…………Bonjour, Votre Majeste………...」
「Bonjour, Oryza」
カエンジシを思わせる勇猛な風体の、ダークスーツに身を包んだ長身の男。
にこやかな表情を浮かべているその緋色の毛髪の男と握手を交わすと、ようやくオリュザは上目遣いに顔を上げた。
「…………あ、シードルなんていかがっすか、ムッシュー・フラダリ」
「頂こう。ほう、セキタイ産か。これは貴重なものになるだろうね」
「……っすね」
「今年はもうセキタイでは林檎の収穫が無いからな。名残惜しくはあるが、我らの美しい世界を創るという理想の為ならば仕方あるまいな」
「……林檎が採れないっつーことは、セキタイ住民の移転も完了したんすね」
「9割方は。あとはもう、梃子でも動かない連中だろう。まあどこにやっても同じ話だが。……ところでロゼ・シードルだな、これは。実に美しい」
「Oui, Monsieur. なんか、赤くてフレア団っぽくていいかなーと思って」
「――それでオリュザ、ケラススはどうした?」
そう何気なく話題を移されて、フラダリのために薔薇色の林檎酒をグラスに注いでいたオリュザは、危うくむせかけた。
「…………な、なんで、あいつのことなんか? 陛下がお気になさるんで?」
「確か今月の初めまでは、お前たち2人はよく一緒にいたと記憶しているが。さて、喧嘩でもしたか」
赤いシードルのグラスを優雅に揺らしながら、フラダリは休憩室の黒い革張りのソファに緩慢な動作で腰を下ろす。獣のように緩やかでありながら隙の無い所作だ。
その鋭い視線を向けられて内心びくびくしつつ、オリュザは視線を逸らした。
フラダリは目敏い。そして恐ろしいほどの記憶力を持っている。フレア団員の下っ端に至るまで、その顔や名前、所属、出身地、手持ちのポケモン、好きなデザートまでもを記憶しているのである。そして下っ端にも気さくに話しかけ、よく気にかけ、それがまたフラダリをカリスマたらしめている一因ともなる。もちろん、皆を率いる王としての資質も十分ある上でだ。
そのフラダリだから、オリュザとケラススの不和にもすぐに気づいたのだろう。
実際、オリュザはケラススとヒャッコクで別れて以来、連絡すら取り合っていない。
オリュザは数秒間視線を彷徨わせた末に、はあと溜息をついた。
「…………ああ、なんだ、聴いてたな」
「ほう、分かるか」
「分かるだろ。……アンタも大概、暇人だな」
ホロキャスターの電源を入れて常に持ち歩いている今となっては、オリュザにプライバシーなど有って無いようなものだ。オリュザの発言の一つ一つは音声データとしてフラダリラボに送信され、監視される。秘密を漏らさぬよう、裏切りを起こさぬよう。もちろんホロキャスターの電源を切ってしまえばプライバシーは守れるが、それをしないことが組織への忠誠を示す。
フラダリは、新世界の不死の王は、全知全能でなければならない。
そもそもホロキャスターの盗聴による情報の掌握それ自体、オリュザが提唱したことなのだから。
オリュザはグラスを空けると、がたんとそれをローテーブルの上に置く。
「そもそも、俺をアイツと組ませたのはアンタだろう。何故そんなことをした?」
「異なる分野の化学反応を試した、とでも言えば満足するか?」
「気まぐれで、科学者と思想家をくっつけてみたわけかよ。で、お望みの化学反応とやらは得られたのか?」
「いや、どうやら失敗だったようだな。残念だよ、オリュザ」
低い声に名を呼ばれると、オリュザの二の腕にざわりと鳥肌が立った。――フラダリを失望させてしまった、と思ってしまった。それこそがフラダリの持つカリスマ性のなせる業だ。
――ああ、本当に素晴らしい。
フラダリこそ、オリュザの思い描いた『不死の王』の理想に限りなく近い存在だった。
この男なら、やるだろう。
世界を滅ぼし、ポケモンを滅ぼし、限られた選ばれた者だけが永遠の生を享受する新世界を統べる王となる。
気分が高揚して、オリュザは喉を擦れさせて笑った。
「あはっ」
「どうかしたか、オリュザ」
「いやね。アンタも相当キてるな……うん、最ッ低の人間だ」
「世間のごく一般的な市民感覚ととかけ離れていることは自覚しているつもりだが、えてしてリーダーとはそういう者でなければ務まらぬだろう。そしてそのようなリーダー論を示した張本人であるお前に、最低となじられる謂れは無いと感じるが?」
「やだよ。……ああ、分かっちまったよ。アンタの考えが。アンタは俺を買いかぶりすぎだよ。アンタが何を言おうが、ケラススがそっちに行こうが、俺は行かないよ。約束通り…………殺してくれよ」
「そうか。つくづく残念だ」
目を伏せてみせるフラダリに、オリュザは苦笑する。その残念そうな様子も、フラダリからごく自然に発せられた本心でありポーズなのだと思いながら。
「俺のことをおだててくれるの、それなりに嬉しかったし楽しかったよ。でも、もうやめようや。アンタは俺の知らないところまで行っちまった。俺は道標を示したが、道の先に何が見えるかなんて知らないんだ。プラトンの哲人王は自らを育てた者を超越しなければならない」
「やれやれ。お前もケラススに対しては友人として心を開いていたようだったから、もしかすれば思い直すかとも期待したのだがな。実に、口惜しいが――委細承知した。約束はそのままに」
フラダリがボトルを手にし、二人のグラスにとくとくと赤い林檎酒を注ぐ。
それを掲げ合った。
「別れの杯だ。僅かなる余生を安らかに過ごせ、親愛なる夢想家よ」
「我らが不死王の治世に幸多からんことをお祈り申し上げる」
――というような雰囲気たっぷりの別れを交わしておきながら、フラダリは悪びれることなくオリュザに『最後の仕事』を押し付けてきた。
「ところでオリュザ、最後にクノエのビールを飲みたくないか?」
「は? 飲みたいの? 買ってこようか?」
「詳細は送る。すぐ発て」
「はいよ。余命少ない人間にも最後まで人使いが荒いのね、陛下」
オリュザも分かっている、オリュザは最終兵器が火を噴くその時まで、フレア団員だ。フラダリの部下だ。フラダリの命令には絶対服従である。
それにこれが、オリュザのフレア団としての最後の仕事になる。
ビールの名産地、クノエで。
オリュザはフレア団の下っ端たちと共に、超長身の老人・AZの捕縛を命じられていた。
14番道路“クノエの林道”。
その薄暗い湿原を、真っ赤なウィッグに真っ赤なサングラスに真っ赤なスーツといういやに目立つ出で立ちの下っ端たちと共にオリュザは歩き回った。赤い花のフラエッテに“フラッシュ”で行く手を照らさせながら、目標の老人を捜す。
最低の任務だった。
フラダリの最後の嫌がらせかと思った。
「暗いし寒いしオーロットとか出そうだしゴーストに首筋舌で舐められそうだし」
ぶつくさ言っていると、オリュザは木の根っこにつまずいて泥の中に顔面から突っ込んだ。
「あいた。顎を岩にぶつけた。……ってこれ、闇の石じゃん。ラッキー、って俺のポケモンには使えないけどな。光の石だったらクローリスを進化させられたのに、残念。ミアレの石屋には高く売れるよな。つっても残り少ない人生、別に贅沢したいわけでもなし……」
開き直って、泥まみれで立ち上がる。たまたま拾った闇の石をちゃっかりポケットにしまい込みながら。転んでもただでは起きないという言葉は実にロマンをそそられるものだ。
黒スーツは泥ですっかり台無しになってしまったが、これでもうフレア団の仕事は終わりなのだから、気にもならなかった。この任務が終わったら捨ててしまおう。
しかし、それにしても、フレア団の下っ端たちは使い物にならない。
やれオシャレな赤いスーツが汚れただの、怖いだのなんだの言って、ろくに動こうともしない。これだから金持ちの子息令嬢は困る。というより、フラダリも何だかんだ人手が必要だとか言って、綺麗なお仕着せだけ与えておけば資金が勝手に集まってくる程度にしか思っていないのではなかろうか。
そんな傲慢な人間ばかりを集めて、新世界が上手く統治できるのだろうか。
オリュザには分からない。最終兵器が作動した後のことは、すべてフラダリと、ケラススに任せておけばいい。自分が死んだ後の世界など知ったことではない。
ホログラムメールのフラダリの立体映像が、オリュザに任務の詳細を語りかける。
『セキタイの例の物の分析が進んでいるが、どうにも“鍵”が無いと動かないことがわかった。長い白髪、3メートル超の巨体、名はAZ。その老人が“鍵”を持っている。だが念のため“鍵”だけでなく、その老人ごと確保しろ』
誰に盗み見されるかわからないメールであるため、内容は適当に省略されていた。行間を読み取りつつ、オリュザは内容を把握する。
セキタイタウンに眠る最終兵器は“鍵”が無いと動かないので、その持ち主を捕らえろ――。
しかし3メートルの巨体を持った人間など、果たして存在するのか。
というか、3000年前の鍵なんか、あっても使い物になるのだろうか。
『頼むから、3000年前の鍵など鍵穴から複製できるのではなどと言ってくれるなよ、オリュザ。クレッフィの“フェアリーロック”という技をお前も知っているだろう? それと同じく、あれにはフェアリーの封じる力が働いているのだ、本物の“鍵”でないと動かない』
「あ、そうなの。残念ね」
一方的に話してくる立体映像に相槌を打って、オリュザは最後のホログラムメールを端末から消去した。
フラダリの指示は的確だった。
クノエの林道に、AZは潜んでいた。
20時半ごろ、日没。
下っ端の一人が連れていたゴルバットがそれを発見した。やはり人間よりポケモンの方が役に立つ。オリュザは指示を飛ばし、下っ端たちに包囲させる。
「クローリス、“サイコキネシス”」
血のように赤い花を捧げ持つフラエッテに命令を下す。
囲い込み、茂みから追い出して、その挙句なぜかオリュザのフラエッテを捕まえでもするかのように手を伸ばしかけていた、やたら長身の老人をフラエッテが強力な念動力で拘束する。
「……Bonsoir, Monsieur. アンタがAZ?」
茂みから飛び出してきた老人に、オリュザはきちんと挨拶をした。一方的にフラエッテの力で自由を奪ってはいるけれど、まだ上品な方だろう。
長い白髪を持った、ハブネークを縦にしたような長身の老人は、動けなくなってもほとんど表情に動揺を見せないまま、聞き取りにくい低い静かな声でぼそりと呟いた。
「……フラダリの手の者か」
「ちょっと我が家にご招待したいんですが、お時間頂いても?」
「……ふん、男にくれてやる時間など、無い」
「おいおい、うちの可愛いクローリス以上の美女がいったいどこにいるっつーんだよ? アンタの目は節穴か?」
意外にも、そしてこの状況でも冗談などを口にできるAZの度胸に、オリュザは感心した。軽口を返してやる。
しかしAZの視線は、もとよりオリュザよりも、そのフラエッテに注がれていた。
「なんだい爺さん、クローリスに一目惚れか?」
「…………その……フラエッテに」
AZは表情を動かさないまま、血の色の花を捧げ持ったオリュザのフラエッテをどこか痛ましげに見つめていた。
「……なぜそんな哀しそうな表情をさせるのか……」
そう囁く老人に、オリュザはわずかに目を見開いた。いったい何を言い出すかと思えば。
思わず自分のフラエッテを見つめる。
赤い花のフラエッテには、笑顔はない。瞳に生気は無い。虚ろに、ただオリュザの命令に従ってAZを拘束し続けている。
オリュザは不思議に思った。――あれ、こいつ、こんな顔してたっけ。フェアリーポケモンってもっと生き生きしてる印象があったけれど。
AZの低い声が投げられる。
「……私のことは、好きにするがいい……もはや抵抗はしない……」
「おおいいですね、物わかりのいい男性はモテますよー」
「だが……そのフラエッテは、なぜ……フラエッテ…………今……どこにいるのか……どうすれば会えるのか………………」
オリュザの背後では下っ端たちが、意味不明なことを口走るAZを嗤い嘲っている。その下品な口調から、まったくお里が知れるというものだ。
どうやらAZに抵抗の意思はもう無いようだった。腕を縄で縛りあげても、もはやうんともすんとも言わない。その胸元には不思議な形の古びた“鍵”を提げている。それは申し分ない。
その長身の老人は、正常な精神状態にあるとはオリュザには思えなかった。瞳は虚ろで、身につけているものもボロボロで、白い蓬髪を泥に引きずっても気に留める様子もなく、長すぎる手足を縮こまらせて、意味の通らない独り言を垂れ流している。
なぜこの老人が最終兵器の“鍵”を持っているのか、そしてなぜそのことをフラダリが知るに至ったのかは、オリュザには知らされていない。
しかし、最終兵器と関わりのあるらしい老人の心を失った様子が、ただそら恐ろしかった。
しかもなぜ、オリュザのフラエッテに妙に拘るのか。
そのように老人については疑問ばかりが浮かぶが、オリュザは首をもたげる好奇心を殺した。
だって、カロスはもうすぐ滅びるのだ。
Chapitre4-1. 葡萄月のクノエシティ END