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  [No.215] ポケモンがリアル世界にやってきた! 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/13(Sun) 16:54:35   68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

こんにちは。マコです。

この話は、ポケモンストーリーズ!に載せていたものです。
6話まで進めたところで、管理人さんであるNo.017さんから、連載掲示板であるロングポケモンストーリーズ!に移行することを勧められ、ここに書いているといういきさつをたどっています。

それでは、リアル世界のみなさん、御伽噺みたいなこのお話をお楽しみください!


  [No.216] その1 初めての出会い 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/13(Sun) 16:59:29   76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

某月某日、日本のどこか、の朝。
そこで1人暮らしをする大学生、サカモト マイコが目を覚ますと、小包が1個、枕元にあった。
差出人は不明である。
マイコは気になり、包装を破り、中身を見た。
そこには、マンガやアニメ、ゲームでも何度も見たことがあるモンスターボールがあった。
「・・・なんでこれ?オモチャ?私もう20歳のはずなんだけど・・・。」
さらに、紙が1枚はさんであったので、マイコは確認した。
「どれどれ・・・『中身は自分で確認してね!』・・・開けるとこはどこ?」
仕方がないので真ん中のボタンみたいなところを押してみた。
すると、ボールが開き、中から光とともに、体の大部分がオレンジ色の子豚(?)が出てきた。
マイコはそれに、明らかな見覚えがあった。
「・・・ポカブ?」
そいつは確かにポカブであった。
「でも、なんで私のところに・・・?」
そんなことを思っていると、
「カブーーー!!!」
ドカッ
「痛っ」
ポカブが真っ直ぐ突撃し、マイコのお腹に刺さる形になった。ポカブは10キロくらいあるので、ぶつかってくるとマイコでなくとも痛がるだろう。これ以上ぶつかってくると体が持たないし、それ以上に炎を吐く可能性もあるので、ポカブにもご飯をあげることにした。
「何あげればいいんだろう・・・ってあれ?あったっけ?」
ポケモン用のご飯があった。食べさせるとポカブはご機嫌になったのでマイコとしてはよいのだが、10キロもあるので重い。エサもポケモンも10キロあるとは、女子には酷な話だ。
「これって、私だけなのかなあ・・・?」
ふと疑問に思ったマイコは、年上の友人たちがいる、とある劇場に足を運ぶことにした。
ポカブをボールに戻し(案外素直に戻ってくれた)、自転車を走らせる。なんだか若干スピードが速い気がするが、まさかポカブがニトロチャージを行っているのだろうか。
そして、見慣れたはずの町には、すっかりポケモンがあふれていた。
(みんな平然としてる・・・!)
マイコは頭を抱えた。ふと見えた電光スクリーンにはニュースが流れた。しかし、それは「未確認生物大量発生!」なんかではなく、日本の総理の不甲斐なさを批判する、いつもの変わりないニュースであった。
時間があっという間に感じられるほどの自転車での道のりを走破し、ようやく劇場に到着したマイコはみんながいるドアを開けた。
開けたその場所には、小さな黄色蜘蛛がいた。マイコが気づかずに通ろうとすると、怒鳴り声がした。
「マイコ!!踏むなや!!」
黄色蜘蛛は怒鳴ったイケメン、しかし足がなんだか短い青年のところにそそそ、と行った。しかも手に乗り、最終的に肩まで登ってきた。
「まったく・・・、危ないやんか、気づかれにくいもんなんやな。」
「あのさ・・・、ばーやん、そういうの、注意払っといたほうがいいよ・・・。」
ばーやん、とマイコに呼ばれた青年、オオバヤシ ケンジはこう言った。
「たぶん、こいつはみんなに挨拶したがってるんちゃうかなって思うねん。」
「バチュルは10センチぐらいでかなり小さいから、そのやり方いいかどうか分かんないけど・・・。いつか踏まれそうだし。」
「・・・こいつ、バチュルって言うんか。」
「ひょっとして、じゃなくても、バチュルはばーやんのところに来たんだね。まさか、ボールを開けた時点で気付かなかったとか」
「ナメとんのかお前。」
「・・・すいません。まさか、ほかのみんなのところにもポケモンが届いているのかな。」
「みんな持っとるって話やけど。お前はどうやねん。」
「私のところにも来たよ。」
「そうなんや。・・・そういや、お前運が良かったな。」
「なんで?」
「バチュルの蜘蛛の糸に引っ掛かったやつがおってん。しかも糸から電気もくらっとったし。傑作やったわ。あっはっは!」
(エレキネットくらった人いるのか。それこそ危険なのに。あと、ばーやんじゃないのは確かだね。すごく爆笑してるし。)
マイコはその気の毒な人に心の中で合掌した。
ふと周りを見渡すと、いろんなポケモンを持っているみんながいた。ツタージャ、ミジュマル、ヨーテリー、ヒトモシ、オタマロ、チュリネ、シビシラス、モンメン、ランクルスまでいる!ただ、進化後のポケモンは極端に少なかった。
「マイコ、大学はどうしてん、サボりなん?」
「サボるわけないじゃん。昼からだよ。」
「一緒に大学行ってええ?」
「恥ずかしいし、怪しいからダメ!!」
こうして、なんでもない話をしながら、昼になり、みんなと別れて大学に行ってみると、キャンパス内にもポケモンがうようよいて、頭を抱えることになるのは、また別の話。


おしまい?


マコです。実際ポケモンが私たちの世界にいたら、こんな騒ぎじゃ済まないでしょうけど。けれど、絶対楽しいことにはなりそうです。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


  [No.217] ストーリー舞台とヒロイン紹介 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/13(Sun) 17:16:37   60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

このお話の舞台は、タイトル通り、リアル世界です。
その世界の中でも、「日本」の中の「オオサカ」という、日本の中でも群を抜く大都市がメインの舞台となります。
会話の中では、かなりの確率でカンサイ弁という、方言が飛び交っているので、そこが若干分からない人もいるかもしれませんが、そこはご了承ください。

それでは、ヒロインの紹介です。

名前は、サカモト マイコ。日本の西暦で1990年7月7日生まれ、20歳です。
オオサカにある国立大学に通っていて、2回生です。
一人暮らしをしています。
オオサカ出身ではないので、カンサイ弁をしゃべりません。
年上の、しかも男性の友人が多く、彼らが働く場所である劇場へ毎日のように足しげく通っています。
性格は良く言えば勇敢、悪く言えば無鉄砲。おとなしめな部分もあるが、行動力はすごい。戦いにおいての状況判断力も優れている。
ポケモンのゲームをかなりやりこんでいるせいか、知識もかなりのものであります。
パートナーはポカブで、「その5」ではチャオブーに進化しております。火炎放射が得意技です。
また、「その6」ではワシボンも仲間入りしました。燕返しが得意技です。

中身がまだまだ子供な、青年達のある種の青春のような日々は始まったばかりです。
(ある種の逆ハーレム物語とも言いますが・・・。)

追加もあるかもしれません。


  [No.218] その2 バチュルの泥棒退治 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/13(Sun) 17:19:39   66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

※この話は、若干物騒な話です。


こんばんは!ぼくはバチュル。オオバヤシ ケンジさんのところにやってきたポケモンだよ。
ぼくは何か、よくにんげんに踏まれかけるんだ。まあ仕方ないよ。ぼくたちバチュルはポケモンギネスブック認定の世界最小ポケモンだもの。この間は女の子、マイコちゃんっていうみたい・・・、に踏まれかけたんだ。ケンジさんが言わなかったら、ぼくは糸を発射してたよ。
え?今は朝なのにこんばんは、は変?だってぼくが話してる「今」は夜中だよ。
普段だったら、ケンジさんは家に帰ってから寝るんだ。でも、今日は仕事が大変やった、って言って、この劇場に泊まることになったんだ。
ケンジさんの寝顔、カッコいいなぁ・・・。あっ、ぼ、ぼくはオスだよ。変な意味はないよ!
でも、女の子がキャーキャー言うのは分かるよ。
そんなことを思っていると、何かドアの方から音がした。
ガチャガチャ、ガタン!
誰だろう?ぼくはたくさんある目、複眼でよく見た。バトルではぼくの技が当たりやすくなるけれど、こういう使い方もあるんだ。
何か怪しい人だ。手にキラリと光るものがある。
「ふっひっひ、オオバヤシ ケンジはどこだ!?」
ケンジさんのことを狙ってる!?
「お前カッコいいし最近売れ始めているからムカつくんだよ!!」
勝手な意見だよ。
「刺し殺してやる!!」
ケンジさんが危ない!!そう思ってぼくが動こうとしたら、


ザクッ・・・


ケンジさんすれすれのところにナイフが刺さった。
「何やこれ・・・っ!」
ケンジさんが目を覚ました。
「ようやく起きたか。やっと殺して金とか通帳奪える!!」
「お前最初から目的それかい。俺そんな持ってへんで。」
「うるさい、殺してやる!!」
悪い人が迫ってきて、ぼくを踏んでから行こうとした。けれど、ぼくは素早くすり抜けて、その人はケンジさんに一回殴られた。悪い人がふらついたところで、ケンジさんがぼくに言った。
「バチュル、こいつを好きなようにしてええで。」
ぼくは電気の網、つまりエレキネットを使って縛ってあげた。
泥棒は「あがががばばば」と訳の分からないことを言って失神したんだ。


危ない、危ない。ケンジさん死ぬところだったよ。
あの人逮捕されたみたいだけど、不審者は怖いよ。
でも、ぼくはケンジさんを守るためにここに来たと思うんだ。
怖がってちゃいられないよ。


今日も平和な1日が過ごせますように。


おしまい(たぶん)。


マコです。この話は最初のポケモンがリアル世界にやってきた!から数日後の設定です。ケンジさんのところにやってきたバチュル目線の話です。かわいいながらも強いやつになりたい、バチュルはそんな考えを持っているのです。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【バチュルかわいいのよ】
【エレキネットを人にかけちゃダメなのよ】
ポケモンの技はあくまでも対ポケモン用なので、間違って人にかけると大怪我することもありそうです。


  [No.219] その3 カゲボウズVSリアル世界住人 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/13(Sun) 17:22:09   65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ある日、カゲボウズ達は都会の空にたむろしていた。
しかも何十匹も。彼らは幸薄荘から出発して初めて都会に来たのだ。修学旅行に来た学生のようである。
(隊長、隊長!)
(なんだ1号)
(デートしている男女がおります!)
(デートなんて我々には関係無い!欲しいのは負の感情だ。デートのどこにそれがある)
(それが、何かおかしいんです)
カゲボウズ達はその人達に近づいた。
近づかれた男女はこんな話をしていた。
「ドッキリデート!!?私のファーストデート返せぇぇぇっ!」
「ゴメンな、そんなつもりは・・・」
「でも、ユズルとのデートは楽しかったんやろ?マイコ?」
「そりゃユズルくんは優しかったけどさ、女子にとって初デートは重要だよ。女子大生の初デートがドッキリって泣ける・・・。」
20歳の女子大生、サカモト マイコは、友人であるアキヤマ ケンタ、ヤマナ フミカズ、フジモト タカシに促され、これまた友人の一人、カワイ ユズルとデートの約束を取り付け、今日に至った。デートは何事もなく終わり、デート終了のここで、ドッキリとばらされたのだ。
「何であたしがドッキリにはめられなきゃいけないのよぉぉぉっ!」
マイコからは、かなりの負の感情が出ていた。それをカゲボウズ達が見逃す訳がなかった。
「な、なぁ、あれ何やろ?黒い塊」
アキヤマが言うが、後輩3人及びマイコは首を傾げるだけである。
しかし、その時!塊が目を開いた。空色、藍色、黄色の三色の目。それが何十も!
5人は絶叫した。
「「「「「ぎぃやあぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」」」」
そして弾かれるように逃げた。しかし、逃げる獲物を追いかけるのはカゲボウズの習性である。段々詰められる両者の距離。それでも、人間はただ逃げるのみではなかった。カゲボウズ達が襲いかかろうとした時、5人が各々のパートナーを繰り出した!
「ツタージャ、グラスミキサー!!」
「ポカブ、火炎放射!!」
「シママ、電撃波!!」
「メグロコ、噛み砕く!!」
カゲボウズ達は思わぬ反撃を食らい、しかも何十分もそれが続き、とうとうきつくなって退散した。
5人の内4人がそれのせいで倒れた。息も絶え絶えである。この中で唯一へばってないフジモトは、みんなに聞いた。
「ジュースいります?」
「「「「呑気に、聞くなぁぁぁぁっ!」」」」


「・・・あいつ、何で平気なんやろ?」
ヤマナは聞いた。
「体力があるんちゃうか?あいつ、俺らよりいくらか若いやろ?」
ユズルは言う。
「私は別の理由があると思う!」
マイコは何かに気づいたらしい。
「なんや、マイコ、言うて見ぃや。」
アキヤマは促す。
「それは・・・」


カゲボウズ達は帰っている。そして、事後報告会の真っ最中である。
(今日は散々だったなぁ。隊員達よ、被害はどうだ?)
(はい、隊長)
(どうした1号)
(私は沢山の葉っぱに視界を塞がれたところに、さらに養分まで吸われてしまいました。体はカラカラです)
(どんな奴にやられた?)
(緑の小蛇です。ツタージャっていうらしいです)
(指示した奴は?)
(茶髪で、少し目が離れた男です)
(よし、次!2号)
(隊長、私は強い火に焼かれ、危うくボロ雑巾になるところでした)
(どんな奴にやられた?)
(橙色の子豚です。ポカブっていうらしいです)
(指示した奴は?)
(女です。女はあの場に一人だけです)
(よし、次!3号・・・ん?何で支えられているんだ?)
(隊長、体が痺れてうまく動けません)
(なぜだ)
(沢山の電撃を食らったからです。よけようとしたら追尾されて当てられました)
(どんな奴にやられた?)
(白と黒の馬です。鬣と尻尾が稲妻型でした。シママっていうらしいです)
(指示した奴は?)
(イケメンの男です。美男子でしたぁぐふふっ)
(とろけるなっ)
隊長は3号にシャドーボールを放った。3号は弾き飛ばされ失神した。
(4号はどうした?・・・体が茶色じゃねえかお前)
(私は噛みつかれて体がちぎれかけたところに砂や泥をたっぷりかけられました。ただの布になってしまいそうです)
(どんな奴にやられた?)
(黄土色のワニです。メグロコっていうらしいです)
(指示した奴は?)
(坊主の男です)
(後、こちらの攻撃は通ったか?)
(攻撃しようとしたら、甘えたりくすぐられたり、誘惑されたりして、上手くいかなかったです)
(それはもう一人の男、女子の雰囲気がある男が頑張ったのだ。灰色のネズミみたいな奴が、チラーミィが、サポートしたからだ!)

「チラーミィはずっとサポートに徹していたからで、サポートは攻撃より体力的にも精神的にも疲れないからじゃないかな。」
「攻撃が通らへんからって言い換えられそうやねんけど・・・。」
事実、チラーミィの攻撃では、カゲボウズ達にダメージを与えられないのだ。その代わり、カゲボウズ達の攻撃もほとんどはチラーミィに効果がなかったりする。

(帰ろうか、幸薄荘へ。あそこは都会より居心地がいいから)
(毒男に報告だー)
(ほうこくだー)
(洗ってもらおー)
(都会は怖いぞー)

「大丈夫ですか?みなさん歩けます?」
フジモトは4人に聞く。
「「「「もう大丈夫!」」」」
「そういえば、カゲボウズ達からいい香りがしませんでした?」
「感じる余裕なかったで・・・。」
「攻撃やらなきゃこっちがやられるからね。」
(香りを感じたの俺だけかぁ・・・寂しいものやなぁ)
カゲボウズ達からはフローラルな香りがしていたが、それを感じられたのは、どうやらフジモトだけだったようだ。状況が状況だっただけに。
そして、極めて呑気に、フジモトは言った。
「あれでへばるってみなさん年ですかぁ?」
「私より6つ年上のあんたに言われる筋合いはないっ!!」
マイコの怒りがこの場に響くのであった。


おしまいにしなさい


マコです。カゲボウズ達を登場させてみました。ひどい扱いすみません。
CoCoさん、カゲボウズ達がぼろぼろになっていたら、それは私のせいです。
文中のマイコちゃんは初デートを、まあ変な形で済ませてしまいましたが、作者の私はまだです。淋しい20歳です。カゲボウズに襲われた、よくも悪くも記念になりそうなデートです。ちなみに、カゲボウズ達が報告会で言っていた人物描写は、茶髪で、少し目が離れた男=アキヤマ、一人だけしかいなかった女=マイコ、イケメンの男=ユズル、坊主の男=ヤマナ、女子の雰囲気がある男=フジモト、となっています。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【ちゃんとした初デート希望なのよ】
【楽しい感想待っているのよ】


  [No.220] その3の後日譚 翌日の新聞にて 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/13(Sun) 17:24:28   60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

あのドッキリデート(言い換えるとカゲボウズ襲来事件)の翌日、マイコ達が住む街の新聞には、こんな記事が載っていた。

カンサイ新聞 ○月×日 朝刊 社会面

オオサカにカゲボウズの大群襲来

男女5人襲われる

○月△日午後6時頃、オオサカ市××区で20歳代と見られる男女5人が話していたところ、カゲボウズが約50匹襲ってきた。5人はしばらく逃げたのちに、手持ちのポケモンで応戦した。5人にケガはなく、カゲボウズ達は逃げていった。
目撃者によると、カゲボウズの大群は「さながら、黒山のカゲボウズだかり」だったらしい。また、バトルがあった場所では、その時刻に葉っぱや炎、電撃や砂が大量に飛んでいたという情報もある。
カゲボウズは恨みを始めとした、負の感情を食べるので、男女5人の内誰かが大きな負の感情を出した影響で、カゲボウズが寄ってきたと見ている。

「うわぁ、事件と同じような扱いされてる・・・。名前隠されているけど・・・。」
マイコは朝刊を読みながらため息をつくしかなかった。
「みんなに連絡しようかな。カンサイ新聞の朝刊、社会面読んで、って。」
そう言って、マイコは携帯電話を手に取り、あの場にいた残り4人にメールを打ち、一斉送信の準備をするのであった。


おしまいにしようか


マコです。ほんのちょっとの追記がてら、翌日朝のことを書いてみました。あの後、みんなにメールが届くのですが、ほかの友人にもばれて、5人全員がしつこいほどの質問攻めに遭うのです。挙句の果てには「お前らみんなカウンセリング行ったらええねん!!」という返答までされる始末です。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【感想がほしいのよ】
【前のシリーズからの感想も募集してるのよ】


  [No.221] その4前編 ある夏のキャンプ〜シャドーボール事件〜 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/13(Sun) 17:27:07   70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

私の通う大学に、御影さんという一風変わった人がいます。
・・・嫌、一風どころではないかもしれません。
まず、第一に、年齢不詳で何回生かすらわからないです。とりあえず、私が入学した時からいるらしいです。大学院に行っているわけではないという話も聞きました。ちなみに私は二回生です。
第二に、大学近辺の安アパート「幸薄荘」に住んでます。最近になって知りましたが、あそこはカゲボウズがいっぱいいるらしいです。あんなところに住めるのが凄いです。
第三に、変なイベントに参加しては、凄い伝説を残してます。ここでは言えない話もあります。
そして、最後に、なぜか私はよくその彼に会います。しかも会う度に問題を証明するよう迫ってくるんです。更にそれをすぐ解かないと拗ねます。子どもです。難題を突き付けられた日には、泣きながら調べてます。
そんな御影さんですが、今は夏休みです。会うこともないって思っていました。

でも、甘かったです。

そんな夏のある日の話をしましょう。



その日、私は劇場の男友達(みんな年上)8人とキャンプ場に向かっていました。車2台に分乗して、ポケモン達も一緒です。
その場所は空気が綺麗で、気持ちがいいです。
「行ってよかったー!」
「おいコラマイコ、そんなん言うてる暇あったら手伝え!」
「はーい!」
オオバヤシ ケンジさん(私はばーやんって呼んでる)に叱られました。
・・・今、カレー作りの準備の最中でした。でも私はかなり不器用です。中学時代にミシン壊したことあるし・・・。手先の器用さが求められる細工は下手です。
私は何をすれば・・・って考えていると、

ゴンッ!

影の塊(シャドーボールらしい)が後頭部に直撃し、コウノ リョウスケくんが倒れてしまいました。
私は、ばーやんと一緒に、コウノくんをコテージに運びました。

コテージ内で看病よろしく枕元に2人座り、様子を見ていましたが、起きる気配がありません。ポカブ(私のパートナー)と、バチュル(ばーやんのパートナー)も不安そうです。
その時、コウノくんのパートナーのエモンガが弱い電気を身にまとい、彼の胸にうつ伏せになるよう、勢い良く乗りました。弱めの「スパーク」みたいです。AED(除細動)と原理は一緒です。

ビクン!!

体が震えた後、コウノくんがようやく目覚めました。
「あれ、オオバヤシさんにマイコやないですか。・・・僕何でここに」
「お前いきなり倒れよったから連れてきてん。」
「ばーやん、いきなりはないでしょ。影の塊が頭に当たって倒れて、看病してたけど。・・・歩ける?」
「「マイコこそいきなりやん!」」
そんなこんなでコウノくんも無事歩けるぐらいに回復し、みんなのところに戻ると、カレーができてました。料理のうまい、ハマイエ リュウイチくんに指揮を任せた甲斐があった気がします。イイ匂い!

大絶賛のカレーをみんなで(ポケモン含め)平らげ、自由時間です。
キャンプファイヤーの木の枠ができて、川で遊ぼうとしたら、フジワラ トキくんのパートナー、ヒトモシが木立に入っていきました。ビックリしてたら、
「お前もはよ来いや!」
と、トキくんに言われて、私はポカブと一緒に、ヒトモシが行った方向に向かいました。


後編に続く


マコです。今回は前編後編に分けました。
こはるさん、洗濯日和シリーズに登場した御影先輩借りました。すみません。私のフィルターをかけた結果、変人になりました。後編の方が出番が多いと思いますが、キャラがぶっ飛んでいると思います。
【楽しみにして欲しいのよ】


  [No.222] その4後編 ある夏のキャンプ〜キャンプファイヤー事件〜 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/13(Sun) 17:28:58   66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ヒトモシの紫色の炎を頼りに木立を分け入っていくと、ろうそくポケモンは私たちを待っていました。そして、私たち2人は、ポケモンと共に、向こうを観察することにしました。

ヒトモシにゴーストタイプが付いているのは、周知の事実です。
ヒトモシが必死に私たち2人に伝えたことをまとめると、向こうにゴーストタイプの気配を感じた、ひょっとしたら、シャドーボールをコウノくんの後頭部に当てた犯人がいるらしい、とのことです。
その時、向こうに人が見えました。その人を見て、私は愕然としました。
「み、御影さん・・・?」
「誰やねん、そいつ、お前の知り合い?」
「大学の先輩です・・・。」
ミカルゲ顔のその人こそ、御影さんでした。
そして、私たち2人は、顔より彼の着ていたシャツに目が釘付けになりました。
「bonnou108」
今流行りの人数がやたら多い女子アイドルグループのパクりらしきネーミング、これだけでもインパクトが大きいのに、その裏には、
「tamashii108」
何か似たネーミング。更に、かなめいしのプリントも。
「・・・」
「・・・ブッ」
御影さんの顔にぴったり過ぎて我慢の限界です。私は吹き出してしまいました。
そこで、トキくんに小声で怒られました。
(俺ら今覗き見してんねん!バレたらどないするん?)
(ごめんなさい。)
ちょうどタイミング良く、アキヤマ ケンタくん(私はアッキーって呼んでる)と、彼のパートナーのツタージャが呼びに来ました。
「そろそろキャンプファイヤーやるでー!」
「キュウウ!」
「はーい!アッキー、今行くー!」
「アキヤマさん、すぐ行きますんで!」
御影さんのことなんて忘れよう、今はみんなといるんだ。


みんな集合しました。9人のはずなのに、10人います。おかしい。
「何で10人おるん?」
「幽霊ちゃうん?」
「やめろ、俺幽霊苦手やねん!」
・・・ハマイエくん、一際でかい男がびびってどうすんの。彼のパートナー、モンメンもちょっと心配そうです。
「マイコくんじゃないか。」
「御影さん、何でここに」
「君がここに来ると聞いた」
「誰ですか?私は大学でそれを誰にも話してないですが。」
御影さんはそれをスルーして、みんなにあいさつしてました。
ただ、みんな顔は笑ってますが目が笑ってません。怖い。
「マイコに何かしたらコンクリに詰めて海に流す」って聞こえてきそうです。
「キャンプファイヤーをするのか。」
「はい。」
「炎タイプのポケモンを持っているのは」
3人手を挙げました。私と、トキくん、後、ノムラ ショウヘイくん。
「ポケモンを出してくれ。」
出されたのは、ポカブ、ヒトモシ、ダルマッカ。
「この3匹のポケモンのひのこで、大きな炎を作ってくれ。」
3匹の所を強調されて言われました。
「「はぁぁっ!?」」
トキくんとノムラくんが文句を言いそうなので、説得をしなければなりません。
「御影さんが問題出してきたから協力してくれない?」
「マイコだけじゃアカンの?」
「3匹って念押しされた。」
「守らへんかったらどうなるん?」
「コウノくんの二の舞、もしくは最悪の事態。」

「ハクション、ハクション!」
コウノくんが2回くしゃみをしていたので、何か罪悪感があります。
でも、説得の方は「最悪の事態」を出したおかげで(?)2人の同意を取り付けました。
御影さんの問題はまだ簡単な方でした。
威力がどうも2匹より低い(特攻が低い)ダルマッカのひのこを、ヒトモシに当ててもらいびの特性を発動させればいいのです。ポカブには普通にひのこを使ってもらいます。
「ポカブ、ひのこ!」
「ダルマッカ、ヒトモシにひのこ!」
みんなは最初、「何言うとんねん!」って言ってましたがこっちは本気です。
ヒトモシの頭の炎は常より強く輝き、
「ヒトモシ、ひのこ!」
ヒトモシの吐いた、特性でパワーアップしたひのこは、ポカブが出したひのこと混じって大きな炎になりました。
「うん、いいだろう。」
「「「やったぁ!」」」
御影さんの問題は頭を悩ませるのですが、やった後に肩の荷が下りてスッキリするのです。
みんなも拍手してました。しかし、御影さんの口から信じられない言葉が飛び出すのです。
「じゃあ、その炎に入ろう。もちろん、みんなは見ておくだけでいい。」
『はぁぁぁっ!?何言うとんねんあんた!』
「自殺行為はやめてください!」
「自殺とはひどいぞマイコくん。修行だ。」
そう言って、御影さんはシャツを脱ぎ、ズボンも脱ぎ、ふんどし一丁の姿になりました。ふんどしが紫色なのには、もうみんな触れんとこう、という思いが聞こえてきた気がしました。
御影さんは呆然とする私たちを尻目に、炎の中に入っていきました。

水もかぶらずに。

30秒経って御影さんが出てきたので、私たちはようやく我に返りました。
「オタマロ、ハイドロポンプ!」
「ミジュマルもハイドロポンプ!」
セシタ ユタカさんのパートナー、オタマロと、キザキ タロウくんのパートナー、ミジュマルが同時にハイドロポンプを出し、御影さんに水を勢い良く浴びせました。炎から出た時は、体は真っ黒だったのですが、水を浴びせたとたんに炎に入る前の肌が出ました。超人です。
しかし、ふんどしは焼けたので、御影さんは、今、全裸です。
「気持ちがいい修行だった!」
「裸で何言うとんねん!」
「はよ服着てください。」
「何で無事やねん、あんた!」
「マイコは見るな!」
セシタさんに目を塞がれました。何が起こっているか分かりませんが、とりあえずみんなの怒り声が聞こえます。ストーカーやろ、用ないなら出ていってください、とか。
御影さんを何とか追い出し、ようやく平和が訪れましたが、あんなキャンプは二度とやりたくないです。
以上が、御影さん伝説を生で体験した話です。ただ、人に迷惑かけないで欲しいです。


強制でおしまいにしろ


マコです。
まず、色々な人に謝ります。
すみませんでした!
こはるさん、御影先輩のキャラ崩壊甚だしくすみませんでした。
ギャグチックな話を書こうとしたらこんな飛んだ話に・・・。
あれはひどいトラウマになりそうです。キャンプに行った9人には。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【むしろ好きにしていいのよ】


  [No.223] その5前編 バトル・イン・ザ・博物館〜ロケット団の襲来〜 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/13(Sun) 17:32:21   64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ここは、マイコ達が住む街にある、大きな博物館。
ここで、「世界の『石』展」が開かれている。
最大の展示物は、何と言っても、特大の「太陽の石」。


「なぁ、これってホンマのヤツなん?」
ハマイエ リュウイチはその展示物を見ながら疑問をぶつけた。
「分からないよ。太陽はそもそも石のできる環境じゃないし……。」
サカモト マイコは頭の中の情報から必死に考えを引っ張り出している。
「あれ、この立て看板に何か書いとるけど、来てみて、2人とも!」
カワニシ ケンシロウは2人を呼んで、立て看板を見た。
看板には、こうあった。


この太陽の石に、以下のポケモンを近づけないで下さい。
・クサイハナ
・ヒマナッツ
・チュリネ
・モンメン


「……言いにくいけど、2人とも当てはまっているよ。」
マイコの指摘通り、ハマイエはモンメンを、カワニシはチュリネをパートナーとしている。
更に、この場所はポケモンをボールから自由に出していいところだ。
モンメンもチュリネも、気のせいが目がキラキラしている。
「「……。」」
2人は黙って自らのポケモンを抱き上げた。触ってしまった方が大変なことになるのは目に見えている。


その後も、3人は様々な石を見て回った。
隕石(らしきもの)や炎の石、水の石などもあった。
ポケモンがこの現実の世界に来てから、進化の石が各地で掘り出されている。
勿論、展示されるだけあり、全て本物らしい。
そして、3人が展示物に満足して、帰ろうとした、その時だった。


ブチン!!


いきなり照明が切れた。
「何やねん、一体……?」
「電気系統のトラブルちゃう?」
そんなことを、ハマイエとカワニシが話していると、いきなり警備員が叫んだ。
「おい、嘘だろ!?」
何と、警備員達のうち、2、3人が本物の警備員を襲撃していたのだ。
博物館にいた人達が何があったんだ、という感じで集まってくる。野次馬みたいだ。
偽物の警備員は、警備員達のポケモンを倒し、制服を脱いだ。

彼らは黒地の上着に、赤い字で「R」と書いた服を着ていた。
「えー、我々ロケット団は、ここの展示物で珍しい石を奪いに来た。我々に反抗する者は容赦しない。」
客達がざわざわする中で、本物の警備員が叫んだ。
「皆様、アニメの話と思っている方も多いでしょうが、本物です!ショータイムじゃありません!!」
それを聞き、客達がパニックを起こしながら逃げた。
しかし、それを知ってか知らずか、マイコはロケット団に向かっていった。
「マイコ、何してんねん!」
ハマイエが聞く。
「アイツらの話、聞いとったん?マズイで、マイコちゃん!」
カワニシも止めるが、
「多分、今動かないと、大変なことになるよ!アイツらを止めないと……!警備員さん達に任せてられないよ!」
それでも、マイコは様子を変えずにこう言い放ち、ロケット団を見据えてボールを投げた。
そこに現れたのは、ポカブの進化系の火豚ポケモン。
「いつの間に進化させたん!?」
「街にいる、好戦的な不良トレーナーと戦ってたら進化した!」
マイコはそう言いながら、チャオブーに指示を飛ばした。
火豚ポケモンは体を燃え上がらせ、ロケット団のポケモン、ズバットやゴルバット、グラエナなどを倒していく。ニトロチャージでスピードも上がったチャオブーにかなう敵はいない。
「ここらへんは倒した……!ハマイエ君、カワニシさん、危ない!」
しかし、2人は見事な連係プレーで圧倒した。
グラエナが襲いかかろうとした時、綿玉ポケモンが綿胞子で動きを鈍らせ、その隙を突いて根っこポケモンが体力を吸っていく。ギガドレインだ。
親友同士での連係プレーにマイコが感動していると、イライラした悪党が声を張り上げた。
「お前ら、こっち見てみやがれ!」

ゴゴゴ……

機械の音がした。
そこには数人のロケット団員と、アームのついた機械、そして、
「うあぁぁぁぁん!」
4、5歳の男の子がいた。

その男の子はアームに掴まれていた。なので、マイコはアームを溶かそうと考えた。
「チャオブー、火炎放射でアームを溶かして!」
火豚ポケモンの吐いた炎の力は凄まじく、アームを溶かすことには成功した……様に見えたが、すぐ再生されてしまった。
「お前、鋼だから炎でいけるって思っただろ?これは炎を吸収してしまう特注品だ!後、お前らがこっちを攻撃したら、ガキをケガさせる。」
「「「卑怯者……!」」」
あまりにも最低な手口に3人は憤慨したが、下手に動いては男の子が危ない。
ただ歯をくいしばるしかなかった。


「臨時ニュースです。オオサカ市のニシニホン博物館で立てこもり事件が発生したようです。詳細が判り次第続報をお伝えします。」博物館の外では、ただ事でないという雰囲気が漂っていた。


後編に続く



マコです。
大ピンチのマイコ、ハマイエ、カワニシの3人。
起死回生の一手は出るのでしょうか。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


  [No.224] その5後編 バトル・イン・ザ・博物館〜起死回生の太陽の力〜 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/13(Sun) 17:35:04   70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

博物館の中では、男の子を人質に取られてどうにもうまく動けないマイコ達を尻目に、ロケット団員が高らかに笑い声をあげた。
「ハーッハッハッハッ!お前らがやっと手出しできなくなった!」
「くそっ……どうすりゃええねん……。」
ハマイエの言葉にも、マイコとカワニシはただうつむくばかりだ。
そんな3人を見て、ロケット団は調子に乗ったのかこう言った。
「俺らに負けた土産としてこれをかけてやる。」
そう言うなり、特大の太陽の石をアームで少し削り、マイコ達にかけてきたのだ。

「い……石!?」
「危なっ!」
「かけらやから当たったらケガするで!」
人間のみならず、石はポケモン達にも降りかかった。しかし、チャオブーはスピードも上昇したからか、器用に避けていた。一方、こちらは……、
「モンメン、危ないから避けろや!」
「チュリネも避けんと、ケガするで!」
ハマイエとカワニシが必死に逃げるよう言うが、綿玉ポケモンと根っこポケモンは降りかかる石のかけらを避ける様子がなかった。
そして、石が2匹に触れた瞬間、


光が辺りに広がった!


「!?」
びっくりしたロケット団員は、アームから男の子を落としてしまったのだ!

アームから降ってきた男の子を助けたのは、元は綿玉ポケモンの、風隠れポケモンだった。自分の体の綿をコットンガードで大きくしてクッションのようにしたのだ!
焦った悪党は男の子のところに向かおうとしたが、先程まで根っこポケモンだった、花飾りポケモンの繰り出した奇妙な葉っぱによる攻撃を食らった。葉っぱを避けようとするも、それは徒労に終わる。何故ならそれは追尾の葉っぱ、マジカルリーフだからだ!

悪党が足止めされている間に、3人は男の子の元に向かった。
「大丈夫!?」
とマイコが聞くと、
「うん。」
と男の子は言ったが、やっぱり怖かったのだろうか、
「うわーん、怖かったよぉぉ!」
泣き出してしまった。

男の子が泣き止むのを待って、マイコ達は聞いた。
「名前は何て言うん?」
「アカミネ タケル。」
「いくつ?」
「4さい。」
しかし、手はパーだった。
「4歳でも5歳でもあれは怖いやろ。」
ハマイエは言う。
「人質に取られて、しかも落下したからなぁ。」
カワニシはこう返す。
「お兄ちゃんとお姉ちゃん、名前なんて言うの?」
タケルが聞いたので、マイコは答えた。
「私はマイコ。私の隣にいるのがハマイエ君、その隣にいるのがカワニシさん。」
「マイコお姉ちゃん、ハマイエお兄ちゃん、カワニシお兄ちゃん、ありがとう。」
「いやいや、感謝されることしてへんよ。」
「マイコ、タケル君を安全なところに移動させようか。」
「チャオブーが一緒についていくから多分大丈夫だけど……できる限り急ぐよ。」


「速報です!男の子が立てこもり事件の起こっているニシニホン博物館から出てきました!」
記者が声を張り上げた向こう側には、タケル君が両親と再会している様子が映った。
ただ、タケル君はマイコ達のことを話さなかった。
それには、こういう理由がある。

「マイコお姉ちゃん達ってつよいの?」
「少なくとも、機械に乗った、悪い奴らより強いよ。」
「お姉ちゃん達ってヒーローみたい!」
「ヒーローじゃないよ。悪い奴らを見て、嫌な予感がしただけだよ。けど、私達がアイツらを絶対倒すから。」
「すごい!」
「タケル君、」
「なあに、マイコお姉ちゃん。」
「私達のことを秘密にしてくれるかな。」
「なんで?」
「ヒーローは、いつだって、正体を明かさないの。私達がやったって堂々とは言いたくないし。」
「……、わかった。」

つまり、口止めだ。こういう訳で、無事にタケル君を脱出させた。

「くそぉぉぉ!よくも!」
ロケット団は怒り、マイコ達に襲いかかろうとしたが、勝負では焦りを感じる者が負けるのが普通だ。
イタズラ心の特性が発動した風隠れポケモン・エルフーンの痺れ粉で、ロケット団側の動きは鈍った。チャオブーが攻撃の構えを取ったところで、ロケット団員は言った。
「炎だ!炎をくれ!」
「あげる訳ないじゃん!1回した失敗はまたしないでしょ!」
マイコがそう言って、チャオブーに指示した技は、瓦割りだった。
瓦割りでボロボロになった機械に、次いで襲いかかったのは、風隠れポケモンの繰り出した沢山の荒れ狂う風、暴風だった。
そして、フィニッシュブローとして行われた技は、蝶の舞を踊った後に出された花びらの舞で、使ったのはドレディアだ。
機械が風と花びらで破壊され尽くし、ロケット団はうなだれた。
「バカな……我々の計画は完璧だったはず……どこで狂ったんだ!」
「石のかけらを降らせたところからですよ。」
マイコは落ち着き払っていた。
「しかも太陽の石やったからなぁ。」
「俺らも焦ったけど、起死回生ってヤツやね。調子こいたらアカンねん。」
ハマイエと、カワニシはそう言い放った。
「くそっ、くそぉぉぉ!こうなったら……最後の手だ!」
そう言って、ロケット団は何かのボタンを押して逃げた。
「逃げるなや!」
「待てぇっ!」
「卑怯者!」
3人は追いかけようとしたが、


ガラガラガラ……


建物が崩れる音がした。
そして、屋根だった大きな部品が3人に降りかかる寸前のその時!


3人は、奇妙な浮揚感を感じ、周りの風景が変わるのを見た。
そして、たどり着いた場所は、みんなでよくたむろする劇場の建物の前だった。
送り届けた人は老人だった。傍らにはケーシィがいる。
「あ……あの!おじいさん、あっ、ありがとう……ございます。」
マイコが代表してお礼を言うと、
「おい、チャオブーを使っていた女!ボクは老人じゃないよ!」
と言った。
「あんた、見た目完璧じいさんやんか!」
と、ハマイエが言うと、
「ボク自身の姿をバラしたくないからこういう姿をしているだけ。分かるかい、エルフーンを使っていた青年。」
何か事情があるらしい。
「じゃあ、名前だけ教えてくれへん?」
カワニシは尋ねた。
「うーん、本当の名前は言えない……って言うか、忘れちゃったよ。ドレディアを使っていた青年さん。長い間使ってないからだね。だからさ、通り名だけ言うよ。」
その名は……、


「『サイキック・キャリヤー』。念力の運び屋さん、さ。」
男はそう言い、更に付け加えた。
「君たちが助かったことはレスキューの人に言ったよ。行方不明じゃみんな困るから。」
そう言って立ち去った。

「立てこもり事件ですが、室内にいた人は無事救出され、犯人は逃走したようです。以上、建物の倒壊が起こったニシニホン博物館前からお伝えしました。」
こうして、事件は幕を下ろした。
しかし、マイコ、ハマイエ、カワニシの3人及びポケモン達は、自分達を助けた謎の男、サイキック・キャリヤーの存在の方が気になってしょうがない。


「貴方の命が危ない時には、貴方にとって最も安全な場所に運んであげます。無償でね。貴方がたに損はさせません。その代わり、別の場所から巻き上げますよ。フッフッフ。」



おしまい



マコです。
事件は無事に解決したようですが、謎の男、サイキック・キャリヤーに助けられた3人。
不思議で、掴み所がない男。
勇敢な心を持つ人の前にしか来ないらしい。
マイコ達じゃなくても、気になるかもしれないです。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【サイキック・キャリヤー気になるのよ】


  [No.225] 番外編 始まりの話 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/13(Sun) 17:36:43   66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ここは、ポケモン世界の郵便局。リアル世界のそれ同様、集荷された荷物を運ぶ場所。
ただ、今日は何か慌ただしい様子。それもそのはず、ポケモン世界じゃない場所にポケモン達を運ぶ日だ。
「おいおい、何で『日本』にポケモンを送るんだ?」
配達員の一人は言う。
「第一、その世界の人はポケモンの扱い方を知らないだろう。みすみす世界を1つ消すようなことだ。」
別の人も同調した。しかし、また別の、これまで黙っていた若い者が反論した。
「送り先の世界は、ポケモンがアニメやマンガ、ゲームの題材になっていて、しかも国民的なものになっています。たぶん大丈夫でしょう。」
「更に、このポケモン世界では、今、トレーナー達が強いポケモンを作るためにポケモンを産ませ過ぎて、ポケモン過多になっています!余りすぎたポケモンの輸出先に相応しいのは、ポケモンが居らず、更にポケモンの知られている世界なんです!」
この言葉に反対する者は居らず、こうしてポケモンはリアル世界に送られることになる。送り主は不明にして、厳重な封をした。
そして、ポケモン転送装置を応用した、ポケモン世界とリアル世界を繋ぐゲートを通じ、ポケモンは運ばれた。
ただし、クーリングオフは効かないので、一度届いたポケモンとはきちんと絆を結ばないといけない。
更に、配達員の気遣いで、ポケモンの食べ物や傷薬なども届けた。ボールや特殊状態を治す薬も買えるよう、手配した。


ポケモンが、マイコ達のもとに届くまで、あと数時間。



マコです。
ポケモン達がリアル世界にやってくる前に、ポケモン世界の人が下準備を行っていたのです。しかし、マイコ達はそれを知りません。
陰の立役者にスポットを当ててみました。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


  [No.228] 感想になっているといいのですが。 投稿者:ふにょん   投稿日:2011/03/16(Wed) 01:05:45   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

発想がすごいですね。   リアル+ポケモンかぁー      もし、あったら大変なことが起きるでしょうね。  これからも、楽しみにしてますよ!          感想・・・になってましたかね・・・         こういうのって書いて大丈夫でしたか?いやならもう書きませんのでイヤなら言って下さいね。


  [No.229] Re: 感想になっているといいのですが。 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/16(Wed) 11:30:08   73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ふにょんさん、コメントありがとうございます。
> 発想がすごいですね。   リアル+ポケモンかぁー      もし、あったら大変なことが起きるでしょうね。  
私は、褒められるような発想をしてはいないと思うのですが・・・。
これからも、楽しみにしてますよ!          感想・・・になってましたかね・・・
恐縮です。色々まだ考えてますので!感想も、こんな感じで構いませんよ。
         こういうのって書いて大丈夫でしたか?いやならもう書きませんのでイヤなら言って下さいね。
いや、全然大丈夫です!ありがたいです。
また訪問、よろしくお願いします!


  [No.230] おお よかった 投稿者:ふにょん   投稿日:2011/03/17(Thu) 00:33:31   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

こんなコメントでよいのならまた書かせてもらいますね 続き、お待ちしておりますー 


  [No.226] その6 不良の襲撃、そして、進化 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/13(Sun) 17:39:28   57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

※この話は、その5より、時間軸的に前の話です。



それは、何てことない普通の日の夕方の話。
大学の講義がようやく終わり、家路についていたマイコ。ポカブは腰に着けたボールの中にいた。
「はぁ、今日もきつかったー、……ん?」
ガーガー、ガーガー!
近所から何か鳴き声がする。
……何かがおかしい。
マイコはそう確信し、鳴き声の聞こえた方向に向かった。


「ガーガー、ガーガー!」
「ピィ、ピィ……」
「ようし、ヤミカラス、もっとつつけ。」
「「「やっちまえ、ワシボン1匹くらい朝飯前だろ!」」」
行った先にいたのは、沢山のヤミカラスに攻撃される1匹のワシボン、そして、ヤミカラスのトレーナーらしきチンピラ達だった。
「やめなさい、ワシボンが可哀想でしょ!」
マイコは真面目に注意するが、
「はぁ?テメェの言うことなんて聞けねぇよ!」
「「「ただのバカじゃんおめぇよぉ!」」」
チンピラは聞く耳を持たない。


プチン!!


マイコの中で何かが切れた音がした。
「うるっさいんだよ、モブ野郎!大人数で1匹虐めて何が楽しいのよ?後、バカはあんたらだ!」
そう言って、マイコはボールを投げてポカブを場に出した。
「……ポカブ、ヤミカラスに火炎放射。ワシボンを傷つけずに。」
火豚ポケモンの鼻から放出された炎は凄まじかった。黒いカラス型のポケモンは高く上がった火柱に1匹残らず巻かれ、黒焦げになって墜落した。
「うわぁ、ヤミカラスが!」
「「「ひぃぃっ!」」」
「お前、ウチのアニキに言いつけてやるからなぁ!……ここは逃げてやる!」
「「「痛い目遭っても知らねぇぞー!」」」
チンピラ共は一旦退却した。しかし、完全敗北宣言はまだなので、再び来そうな予感は大きい。


「うわぁ、酷いケガ……すぐに治してあげるからね。」
マイコは持っていた傷薬を雛鷲ポケモンに塗った。
「ピィ、ピィ!」
ワシボンのキズは大分治り、元気が戻ってきた。
その時である。
「あっ、ここに居ったんやな、マイコ!」
「何か巻き込まれてたって思ったで。」
2人の青年が来た。彼らは不良の仲間ではなく、マイコの友人だ。
「あっ、アッキーにタロウちゃん!」
「お前にちょっと言いたいことがあんねん。さっき、騒ぎを起こしそうなくらいの炎が上がっとったで。俺らの口から言いたくはないけど……、やったのはマイコやろ?」
アキヤマがそう言うと、マイコは観念した様子で、
「アキヤマさん、キザキくん、本当に申し訳ありませんでした。」
土下座した。
「あ、あの……マイコちゃん、ホンマに土下座せんといて……。」
キザキが大分困惑していたので、マイコは土下座をやめ、すっくと立ち上がった。
その時だった。
ポカブは光に包まれた。3人はじっとそれを見つめる。誰も言葉を発する者はなかった。
光が消えた時に目の前にいたのは、二足歩行で、卵形の体をした火豚ポケモン。
「チャオブーだ……!」
「え、どういうことなん?」
「初めて目の前でポケモンが進化するのを見た!何だろう、凄く嬉しい!」
「何かようわからへんけど、マイコちゃんの喜びを見るといいことって感じはする。」
ポカブから進化したチャオブーをボールに戻し、話はワシボンに移る。
「このモフモフの鳥はどないしたん?」
「さっき襲われているのを見つけて、助けたの。」
「やからさっき、炎がめっちゃ上がってたんやね。」3人の話が盛り上がっていると、何やら声がした。
「お前かぁ、俺様の子分を可愛がってくれたのは……!」
「マイコ、」
「(親分来やがった……!)どうしたの?」
「あの男の気に障ることしたんか?」
「ひょっとして、ヤミカラスのこと?」
「さっきの炎で焼いた奴等の話やね。」
「まぁいい、仲間を呼びやがったなら、3人まとめて叩き潰す!」
((いやいや、俺らは呼ばれたわけやないのに!))
(今サラッとまとめてって言ってた……!)
3人にとっては不本意ながら変則マッチは始まった。途端に1本ヅノポケモンが出てきた。アニキのポケモンらしい。
「コイツは僕が相手したります!」
「行くの?タロウちゃん!?」
「キザキ、お前大丈夫か?」
「僕は勝ちますんで、アキヤマさんもマイコちゃんも僕を信じてほしいです。」
そう言って場に出したのは、頬にそばかすがあり、お腹に貝、つまりホタチを持つラッコポケモン。
「ヘラクロス、メガホーンで突き刺せ!」
「ミジュマル、かわして背中に乗ってくれ!」
猛烈な角の一撃は虚しく空を切るのみだった。そして、背中は、ヘラクロスの死角でもある。背中から攻撃する術のない側と、死角を握った側とでは、差は歴然としている。
「何か悪いかもしれへんけど……、ミジュマル、シェルブレードで角を攻撃してくれ。」
ミジュマルは腹のホタチを掴んだ。貝からは水の刃が出ている。

ザシュッ

ヘラクロスの角は見事に分断され、一気に戦意喪失に追い込まれた。
ミジュマルは何か得意気だ。キザキはほっとしていた。
「よかった、勝てた!」
「ヘラクロス使えねぇなぁ!次出してやる!」
新たに場に出たのは、毛が長く獰猛な噛み付きポケモン。
「今度は、俺が相手したるわ。」
「アッキー、私が最後で大丈夫なの?」
「お前が一番やってくれるはずやから。」
アキヤマが出したのは、体の多くが緑色で、葉っぱのような大きい尾と小さい手を持つ草蛇ポケモン。
「ツタージャ、動き回って、リーフブレードで切りつけてくれ。」
小回りの利くツタージャがスピードで上回るため、グラエナは的を絞れない。
「キュウウ」というツタージャの鳴き声と共に切られていくグラエナ。
気がつくと、自慢の長い毛を文字通り全てバッサリ切られたグラエナは蹲り、ツタージャは無傷という、差が凄い状態になっていた。
「よかった、勝ったで!」
「キュウウウ!」
「くそ、最後のポケモン出してやる!」
アニキがそう言って出したポケモンは、天狗みたいな邪ポケモン。
(ダーテングなら、チャオブーで何とかいけるかも……!)
マイコはチャオブーを場に出した。
「チャオブー、火炎放射……!」
しかし、マイコの指示が通る前に、邪ポケモンがマイコを羽交い締めにした。
「痛い、痛い!」
「これなら、豚も攻撃できねぇなぁ!」
「卑怯やぞお前!!」
「マイコちゃんを放せや悪党!」
アキヤマとキザキはポケモンと共にアニキに立ち向かおうとしたが、子分達に包囲された。
「アニキの邪魔はさせねぇぞ!」
「アニキの顔に泥塗りやがったお前らは通れねぇなぁ!」
子分に包囲された状況を打開する方法を二人は必死に考え、出した結論はこうだった。
「草の誓い!」
「水の誓い!」
パートナーとの絆が大事なコンビネーション技だ。
マイコもその言葉を聞き、指示を飛ばした。
「炎の誓い!」
3個の誓いは混ざり合い、3匹には虹の光を与え、子分達には動きを鈍らせる湿地効果や、火の海効果が襲いかかった。
「あちぃ!」
「沈む、沈む!」
子分の手が出なくなったのはいいが、ダーテングはマイコもろとも火の海に飛び込もうとした。
「女も消せる!」
アニキが過信した、その時だった。

ビュオッ、ズバッ!

雛鷲ポケモンが凄い速さで必中の燕返しを繰り出してきた!
ダーテングは余りの勢いに、マイコを放し、火の海に転げながら突っ込んでいった。
「はぁ、はぁ……。」
「大丈夫か?」
「何とか……。」
ダーテングが火だるまになってからアニキはボールに戻し、こう言った。
「ま、ま、ママー!」
そして逃げた。
「「「「アニキー!!」」」」
子分達も逃げた。


「アイツ、マザコンなんやな。」
「あんな厳ついのに、ママって言うんすね。」
「もうこれに懲りて襲って来ないはずだよ。」
3人が話していると、ツタージャとミジュマルは光に包まれた。
光の中から出てきたのは、ツタージャより体が長くなった草蛇ポケモンのジャノビーと、ミジュマルより体が大きくてホタチを2つ持つ修行ポケモンのフタチマルだった。
「これが、進化なんやな……!」
「今まで以上に愛情を与えなアカンって思いますね。」
「強く、正しく育つんですね。」
そして、マイコの側にはもう1匹。
「ワシボン、付いて行きたい?」
「ピィ、ピピピィ!」
了承の意を示したので、マイコの手持ちが増えることになった。

進化と新たな仲間は、マイコ達を内面的に強くする。
喜びに満ちた日が待っているはずだ。



おしまい



マコです。
進化の話は一度は書いておきたかったんです。
真っ直ぐ育ってほしいです。マイコ達には。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


  [No.263] その7 ムンナの予知夢と雷の鉄槌 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/02(Sat) 11:42:09   57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

深夜、1人暮らしをしているマイコの元に、突然の訪問者が来た。
しかし、そいつは人ではなかった。体全体はピンク色、所々に花の模様。そう、夢喰いポケモンのムンナだ。ご丁寧に窓のカギと窓自体をサイコキネシスで開けていた。
「どうして、ムンナがここに飛んできたのかな……?」
眠い目をこすりつつ、ムンナの訪問によって起こされたマイコは、眠気によってうまく働かない頭でこう思った。
見た感じ、トレーナーのものじゃなさそうなので、自分の手持ちに加えることにして寝た。


その夜、マイコは不思議な夢を見た。
自分を含めたみんなが、劇場の大部屋にて、牢屋に閉じ込められている。さらに悪いことに、鼻息の荒いケンタロスやバッフロンが牢に迫ってくる!!
(やばい、死ぬっ……!)
しかし、猛牛たちは強力な雷によって黒焦げとなった。その雷を放ったポケモンは、
(デンチュラ……?)
自分の周りにデンチュラを持つ人はいないが、マイコはあることを思い出した。
(デンチュラはいないけど、進化前のバチュルなら、確かばーやんが持ってた……!)
そして、牢から脱出できたが、オオバヤシが倒れてしまう……。
「ばーやん!!?え、ちょっ……!」
「オオバヤシさん!しっかりして下さい!!」
(これって「予知夢」……?あっ、ひょっとして、ムンナが見せているのかな?)
マイコの予想通りである。このムンナの特性は「予知夢」だ。バトルだと、相手の技が1つ判明するものだが、ヒトを相手にすると少し先の未来を予知した夢を見せるものになる。
これと同じことが起こることになるとは、マイコも考えていなかった。


4月5日、講義が午前中で終わったマイコは、いつものように劇場にむかった。いつもと違うのは、常に腰につけている2つのボール(チャオブーとワシボンが中にいる)以外に、もう1つボールがあるということ。
「こんにちはー!」
「おお、マイコちゃん!」
「マイコ、来てくれたんやね!」
友人たちは皆、快く歓迎してくれた。
「あれ、腰についてるボール、1個多ない?」
「俺も思っててん。マイコちょっと違うな、って」
気づかれるのが早い、というよりみんな意外と目ざとい。他人の変化に敏感なのか。
「気づかないって思ってたけど早いね、気づくの。まあいいや。出てきて、ムンナ!」
マイコはボールから夢喰いポケモンを出した。ふわふわと中空に浮いている。
「結構かわいいな」
「俺も欲しいわー」
口々に言うみんなだが、
「ごめん、もう、私がボールに入れたから私のなんだ、というか、ひょっとしたら私の言うことしか聞かないかもよ。」
「えー」
「アカンのかー」
「欲しかってんけどなー」
マイコがムンナの所有権(親権)は自分にある、ということを告げると、みんな諦めた。
そして、マイコがムンナをボールに戻した瞬間、上から鉄の牢が降ってきた。
「えっ!!?」
「どっから降ってん!?」
みんなが慌てていると、集団の男の声がした。
「うまく引っ掛かってくれたなー、ヒャッヒャッヒャ」
「ロケット団……!」
「「えっ、何やねん、そいつら!」」
「簡単に言っちゃえば悪い奴、……!」

ビュオオォーッ!!!

突然、強風が吹き、〈ポケモンの入った〉ボールがどんどん吸われていった。
「ハッハッハ、これで邪魔できねえな、ザマーミロってやつだ!!」
ロケット団が嘲笑った。

ちょうど、その時だった。

「誰が、ザマーミロ、やと……!」
オオバヤシがちょうど来たのだ。部屋に入って一目で状況を理解し、ロケット団のうちの一人を一発叩いていた。
「くっそー、こうなりゃこうだ!」
先程も起こった風を再度起こしたロケット団!
「やばい、ポケモンが吸われる!」
「ばーやん、ボールからバチュルを出して!!早く!」
オオバヤシは言われた通りに、ロケット団から見えないようにバチュルを出した。そして風が吹き止んだ。
「もうコイツも太刀打ちできねえなあ……。」
その時、雷の糸が機械の操作スイッチを弾き、
「ぐぎゃあああ」
団員の一人は倒れた。バチュルが出したエレキネットでやられたことをロケット団は知らない。
「な、コイツ、電気ポケモンの技が使えるのか……?」
「アホ言え、俺は人間じゃ。その機械、ボールに入っているポケモンにしか効かへんみたいやな。教えてもらってん。」
バチュルをポケットから出して、オオバヤシは言った。
「ちくしょう、こうなったら……」
ロケット団は4方向から、牢を囲むようにケンタロスとバッフロンを出した。
「牢の中の人間を串刺しにしてやるっ!!!」
猛然と突進を始めるケンタロスとバッフロン。
「殺される!」
「く、来んな!!」
「いやあああっっ!!」
至る所から悲鳴が聞こえ始めた。
(やばい、このままじゃみんなが殺される、それだけは、それだけは、それだけは……!)
「やめろおおおおっっっ!!!」
オオバヤシが叫んだとき、極太の雷がきらめき、猛牛たちを真っ黒焦げにしてすべて倒した。
「……!?」
手乗りサイズの電気蜘蛛は、大きな雷とともに大きな電気蜘蛛へと進化を果たしたのである。
(予知夢の通りだ……!)
マイコは昨晩見た夢の内容を思い返していた。

「くそーっ!おい、お前、逃げろ!」
ロケット団員は、ボールのたんまり入った袋(マイコたちの手持ちの入ったもの)を持った団員に逃げるよう言った。しかし、そんな奴を見逃すわけもない。
「高速移動からエレキネットを放て、デンチュラ!」
オオバヤシの的確な命令により、ボール入りの袋は奪還された。
「わ、わかったよ、そこのイケメン、カ、カギは返すから大人しく、み、見逃してくれねえかな」
あまりの強さに、さっきまでの威張りはどこへやら、すっかりビビりあがってしまったロケット団は、カギを返すことで事態を収拾しようとした。
しかし、やってしまったことの罪は大きい。どす黒いオーラがオオバヤシから出ているように感じられた。彼は静かに言う。
「お前らは、俺を怒らせすぎた。そんなお前らには、やっぱり天罰が相応しいと思うねん。」
「お、おい、やめてくれ、死にたくな……」
「言い訳は聞かへん!デンチュラ、……雷」
フルパワーの雷がロケット団を直撃し、黒焦げとなった彼らはヨロヨロと逃亡していった。

カギが開かれ、全員無事に救出された。もちろん、ボールも返された。
「「オオバヤシさん、ホンマありがとうございます!!」」
「俺は感謝されるようなことしてへんで」
口々にみんなから感謝されるオオバヤシ。
「ばーやんがいなかったら、私たちみんな死んでたよ。」
「あんまり、褒められるのには慣れてへん、か、ら、な……」
その時だった。

バタッ……

オオバヤシが倒れてしまった。
「ちょっ……ばーやん!どうしたの!?」
「オオバヤシさん、しっかりして下さい!」
「は、早く医務室へ!!」

実は、ケンタロスやバッフロンが出てきた時に、「全員の命を自分一人が背負っている」というプレッシャーが起こってしまい、オオバヤシの精神力はギリギリの状態になっていたのだ。バチュルがデンチュラに進化したことで少しばかりは良い方向に転がったものの、全員が解放されたときに、張りつめていた緊張が切れて、倒れてしまったというわけだ。


4月6日。実に半日も眠っていたオオバヤシは医務室で目を覚ました。
みんながほっとした様子で彼を見ている。
「オオバヤシさん、今日何月何日か分かります?」
「4月……5日やろ?」
「6日ですよ。12時間も寝てたんすよ。めっちゃボロボロやったんですね……。」
「12時間……」
昨日のことはまるで夢のようであるが、おぼろげには覚えている。
(俺がみんなを背負ってたからな……。そんくらい寝とっても悪ないか)
「そういえば、ばーやん、4月6日ってことは……?」
マイコが唐突に質問してきた。
「4月6日……!お前、それ、俺に言うか普通」
「病床の上で申し訳ないですけど、ハッピーバースデー!!」
クラッカーの音がたくさん鳴り響く。みんながプレゼントをくれた。
マイコからもプレゼントをもらった。開けようとした、が……、
「ストップ!明日、私と一緒にある場所に行くから、その時まで開けない、で!」
プレゼントの中身は明日わかる。それまでは、みんなが開いてくれるパーティーにでも興じよう。
平和になった劇場内で、オオバヤシはそう思うのだった。


おしまい


マコです。久し振りのポケリア。
オオバヤシさんがみんなのピンチを救ってくれました。かっこいいですね。
次回のポケリアで、マイコちゃんがくれたプレゼントが何だったかわかります。
ヒントは……イッシュの化石ポケモン!
あと、ちょっと早いですが、オオバヤシさんの27歳のバースデーを祝ってやってください!
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【オオバヤシさんのバースデーは4月6日なのよ】
【ちなみにマイコちゃんは七夕生まれなのよ】


  [No.264] 来た来た来たぁッ! 投稿者:ふにょん   投稿日:2011/04/03(Sun) 01:14:49   43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 ついに来たー! 待ってましちゃぁ〜!
 バチュル君、進化ですね〜
 ふにょんのところのバチュル君は、レベルが九十六になっても進化しません。させません。
 なぜかって? なぜでしょう。 それはふにょんにもわかr(ry
 ただ単純にかわいいからです。 それだけです。
 
 化石?始祖鳥かな? それともかめさんかな? 
 それとも、イワパレスの背中のアレ……?
 
 予知夢なんて、やめたげてよぉ!

> 【オオバヤシさんのバースデーは4月6日なのよ】
 4月6日は……なにもないです。 何か考えようとしたけど、何もなかったです。はい。
> 【ちなみにマイコちゃんは七夕生まれなのよ】
 ジラーチが来そうですね。 七夕生まれはふにょんの近くにも一人います。
 ここだけの話。
 ふにょんは昔、七夕のお願いに、『チコリータにしてください。』
 って書いたことがあります。ガチです。






               マジだよぉ!


  [No.269] Re: 来た来た来たぁッ! 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/05(Tue) 13:34:08   45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

こんにちは。ふにょんさん。
いつも感想ありがとうございます。

とうとうバチュルを進化させる日がきました。
(オオバヤシ「俺の意思だけで進化させたわけちゃうけど」)
私のホワイトバージョンでの主力でもあるデンチュラは、早々とレベル36で進化させちゃったので、96まで進化させてないってのはすごいと思います。

実は返信が遅れた理由が、4年ぶりに風邪をひいたということはないしょです。
今はぴんぴんしてますよ!!


あまり書くとネタバレになりかねないので、書きづらいのですが・・・、ポケモンそのものではなく、マイコちゃんは、デートを口実にしてプレゼントを明らかにしようと考えているのです。
策士というか、なんというか。

(追記)
ジラーチと七夕バースデーのマイコちゃんによる数日間のお話を今、頭の中でちょっと作ってます。男性キャラも出ますけど。でもただ、敵とのバトルシーンが、とんでもなくこれまでのポケリアより壮大すぎて自分で(大丈夫かな・・・)とか不安です。


  [No.270] お大事にでっす! 投稿者:ふにょん   投稿日:2011/04/05(Tue) 23:09:59   49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

> こんにちは。ふにょんさん。
> いつも感想ありがとうございます。
 期待してますよ……

> とうとうバチュルを進化させる日がきました。
> (オオバヤシ「俺の意思だけで進化させたわけちゃうけど」)
> 私のホワイトバージョンでの主力でもあるデンチュラは、早々とレベル34で進化させちゃったので、96まで進化させてないってのはすごいと思います。
 このバチュル……いつのまにか変わらずの石持ってやがるっ!
 
 ↓そのほかにも進化させずに高レベルシリーズ。

 イーブイ Lv86 ♀  理由はバチュルと同じ。 イーブイズの♀は珍しいらしい。何でも7:1の確立だとか。
 フタチマル Lv76 ♂ タイケンキ? 倦怠期? ナニソレ。
 ガーディ Lv99 ♂  炎の石がなかっただけ。
 他にもニャルマー、コリンク(ルクシオ)、ロコン、その他。
 特にルクシオは100になっちゃってるという。
 
 ただの自慢になりかけてるのでこのくらいに。
 

> 実は返信が遅れた理由が、4年ぶりに風邪をひいたということはないしょです。
> 今はぴんぴんしてますよ!!
 エルフーン先生が治しに行ってあげたのです。(違
 お大事に。

> あまり書くとネタバレになりかねないので、書きづらいのですが・・・、ポケモンそのものではなく、マイコちゃんは、デートを口実にしてプレゼントを明らかにしようと考えているのです。
> 策士というか、なんというか。
 マイコちゃんとマコさんの名前……関連性はっ!?
 


【期待なのよ】
【風邪にご注意なのよ】


  [No.272] その8前編 バースデー後の一日〜カセキは新しい仲間〜 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/07(Thu) 10:03:13   51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

4月7日、すっかり体調の回復したオオバヤシは、マイコに連れられてある場所に向かっていた。
「おい、マイコ」
「どうしたの?」
「お前は今日、俺をどこに連れていく気なん?」
「ニシニホン博物館に」
「あそこは壊れてんぞ、知らんかったんか?」
「すみません、知ってます……。」
実を言うと、少し前に、マイコはハマイエやカワニシと共にロケット団と一戦交えていた。人質をとられるという危機に瀕しながらも、太陽の石による進化で逆転し、勝利をつかんだのだ。そのバトルのせいで博物館は壊れている(その5前後編参照)。
「でも、そこの跡地に新しい施設ができてるんだよ。」
「……そこは俺も知らんかったな」
「行く価値はあるはずだよ」
着いた場所は、「府立 カセキ復元・発掘センター」
「こんにちは、カセキ復元・発掘センターへ。本日はどのようなご用事でしょうか。」
係員の人が聞いてきたので、マイコが答えた。
「すみません、この人の持っているカセキを復元してもらいたいんですけど。」
そういったのちに、オオバヤシに促した。
(ばーやん、昨日もらったあの箱出して)
(お前、そのために俺をここに……!?)
(ほらお願い、早く開けて!)
オオバヤシが開けた箱の中には、1枚の何かの羽のようなカセキがあった。
「これは……羽のカセキですね。復元するとアーケンになりますよ。」
「はねの……カセキ??アーケン??何なんですかそれ」
「後で説明しますんで、発掘コーナーで楽しんできてくださーい。あと、番号札お渡ししますので、放送されたら来てくださいね。復元には多少の時間を要します。」
番号札は5番である。二人は時間潰しついでに発掘コーナーに向かった。


着いてすぐ、二人にハンマーとピッケルが渡された。
「こちらの2つの器具で壁を削りながら進化の石を探してください。出てきたものは持って帰れますよ。」
係員にそう説明されるが、二人は心の中でこう思った。
(進化の石って結構高いんちゃうかったっけ?)
(この施設ってちゃんと成り立つのかな?)
自分の心配より経営の心配である。
説明ののち、二人は壁を掘ることにした。掘れる区域が決まっているらしく、二人は少し離れることにした。

カン、カン、カン、カン……

器具を壁に打ち付ける音だけが聞こえてくる。ハンマーで大まかに壁を崩し、頃合いを見てピッケルで形を整えていく。
ここの壁は結構柔らかめで、ビギナー用らしい。1回のハンマーで大体、何かが埋まっていることはすぐ分かった。
ほどなくして、収穫が得られることになる。
「あ、あった!月の石だ!本当に夜空みたい!」
「こっちには水の石があったで。模様も入っとるな」
それは月の石と水の石。
「ムンナに使えるけど……、まだいいや。」
そう言って、マイコは月の石を道具入れのバッグにしまう。
「え、何で使わへんの?」
オオバヤシもバッグに水の石をしまいつつ、マイコに聞いた。
「まだ、《進化の必要なとき》が来てないから。」
「どういう意味なん?」
「ばーやん、それはじきに分かるよ」
そのような会話が交わされて、すぐ放送が鳴った。

ピンポーン、ピンポーン

「番号札5番をお持ちのお客様、カセキが復元できましたので至急、案内コーナーに来てください。」
二人は走って案内コーナーに向かった。


案内コーナーで渡されたボールから、オオバヤシはポケモンを出した。
原色の、《飛べない》始祖鳥、最古鳥ポケモンのアーケンであった。
「アーケンは、ちょっと特性にクセがありますが、とても強いポケモンです。進化するとアーケオスという、かなり強力なポケモンになりますよ。」
「へえ……そうなんや……」
オオバヤシは係員の説明を聞き、少しだけ考える素振りを見せるのだった。
そして、マイコに疑問をぶつけることにした。
「アーケンの特性にクセがあるってどういう意味なん?」
マイコは、ポケモンが来てから最初の日に携帯電話に入っていたアプリケーション「ポケモン図鑑」の「アーケン」の項目を見ながら答えた。
「えっと……確かアーケンの特性は……《弱気》だったね。」
「その効果は?」
「体力が残り半分を切ると、素早さ以外の能力が下がるの。」
「えっ……それって良くないんちゃう……?」
「でも、それを補うくらい能力は高いし、えっと……つまり、体力が減らないうちに勝負をさっさと決めることが重要ってこと!」
アーケンを使いこなせる人は、バトルに一定の才覚があるのではないかとマイコは思うのだった。


後編へ続く



マコです。
プレゼントは羽のカセキ、すなわちアーケン!
特性がどうにかならないかって真剣に頭を抱えてしまいますが、それより圧倒的な攻撃力は玄人もうなります。
そして、仲間の新加入は後編でも続きます。
オオバヤシさんだけでなく、マイコちゃんにもね!
次はバトル編。今回は悪党相手ではなく、路上での気兼ねないけど真剣なものです。
【書いてもいいのよ】
【感想待ってるのよ】


  [No.273] その8後編 バースデー後の一日〜老人との大バトル〜 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/07(Thu) 10:21:35   63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

帰り道、二人で歩いていると、1人のお爺さんが道で何かを売っていた。
「ポケモンを売ってまーす。引き取り手のいない子たちでーす。」
気になって、行ってみることにした。
「あのー、ポケモンを売るって、それってええんですか。法には……。」
「わしはただ、捨てられた子を拾っただけじゃから。この子たちは、親から良い技を引き継いでもらったものの、選抜思想のせいで、トレーナーから集団で捨てられた残りじゃ。これでも、だいぶ減った方じゃぞ。ひどいときはこれの3倍おったからのう」
「いらないからただ投げ捨てるように放ったってひどい……。」
「ほんで、このポケモンを俺らに売る、と。」
「そうじゃ。代金はいらん。引き取ってくれる、その心構えだけで十分。」
二人にとってはかなり意外だった。ただし、言葉には続きがあった。
「ただし、条件がある。」
「何です?」
「わしとバトルをして勝ったらタダでやる。負けたら500円をわしにくれ。まあ、ポケモンはどちらにしても渡すがな。」
マイコとオオバヤシはお爺さんの意見に対して相談することにした。
(マイコ、どうする?俺はやるで。アーケンがどんなやつなのかも知りたいからな)
(私もやろうかな。ワシボンもムンナも実戦は初めてだし。どう戦うか見たいわね)
「どうするかの」
「「やります!」」
二人とも決意は固かった。


「まずは彼からかの」
「お願いします、おじいさん」
老人とオオバヤシはがっちりと握手をした。
「ルールはシングル。1対1でやるが、異論はないかの。」
「特にないです」
そして、二人は同時にボールを投げた。老人の出したポケモンは、サボテンの球に手足のついたような草タイプ、サボネア。一方のオオバヤシはアーケンを出した。
「サボネア、ミサイル針じゃ!あの鳥を近づけさせるな!」
サボテンポケモンの周囲から、たくさんの鋭い針が出現し、最古鳥ポケモンをけん制してきた。しかし、青年はかなり冷静に状況を見ていた。
「針を避けつつ接近してくれ、アーケン!」
飛べない鳥のどこにそんな敏捷性があるのか、無数の針は原色の鳥にとって効果を示さぬまま終わった。
「そこから何度も翼で打つ攻撃!!」
まだ、飛ぶために発達していない翼でしたたかにサボネアを打つアーケン。しかし、効果抜群のこの技に何とか耐えつつ別の技を繰り出す緑色のサボテン。
「ニードルアーム!!」
このニードルアームと翼で打つにより、お互いをバシバシと殴りあう打撃戦へともつれていった。もはや、トレーナーの指示がなくとも、精神で持っているようなものだ。
そして……先に倒れたのは……、

サボネアだった。

実はアーケンも、特性である弱気が発動していた。しかし、相性で勝る攻撃をしていたこともあり、勝利をつかんだのだ。
「ありがとう、アーケン。お前のおかげや。ようやった。」
オオバヤシは熱戦で疲労困憊の最古鳥をねぎらうようにこう言った。
その様子を見ながらマイコは思った。
(ばーやんは粘り勝ちした。私も頑張らなきゃ。)


「マイコくん、」
「はい、」
「君はポケモンの数も多いことじゃし、ダブルバトルでもしてみるかの」
「ダブル……ですか」
マイコにとってダブルバトルは未知の領域である。これまでしてきたのはシングルばかりだ。
「まあ、硬くならずにやろうではないか。リラックスこそ気持ちいいバトルの鉄則じゃ」
「は、はあ……」
ここで老人が出したのはロゼリアとジュペッタだった。マイコはバトルの腕を見るのを兼ねて、ワシボンとムンナを繰り出した。
「ジュペッタ、騙し討ちじゃ!ムンナを狙え!」
「ムンナ、リフレクターを展開して!」
必中の悪技の威力は、夢喰いポケモンの周囲に広がった青色の壁によって軽減された。ムンナ自身、エスパータイプではあるが、耐久力が売りである。あまり大きなダメージにならずに済んだ。
そして、攻撃を終えたぬいぐるみポケモンの後ろには、すでに雛鷲ポケモンがいた。
「ワシボン、そこで、ジュペッタにシャドークロー!!」
鋭い影の爪がジュペッタを襲う。運よくクリティカルヒットが起こり、体力は大部分奪われた。そこで茨ポケモンが必中の葉っぱを放つ。マジカルリーフだった。
その攻撃自体はムンナを狙ったものだったが、ワシボンがムンナをかばっていたのだ。効果が薄いとはいえ、受けすぎると危険である。マイコは次の一手をサッと決断した。
「ムンナ、光の壁を展開して!」
今度はオレンジ色の壁が出現し、特殊攻撃も軽減された。守りは十分。後は、攻撃だ。
「ワシボン、岩雪崩!そこからムンナはサイケ光線!」
岩雪崩は2体同時攻撃であり、その場合若干ながら威力低下がみられる。しかし、先のシャドークローで体力のほとんどをごっそり持って行かれたジュペッタはこの攻撃を避けられず、そのままノックアウトされた。
こうなると風向きは一気にマイコ方向に傾く。ロゼリアは草と毒の複合タイプ。ワシボンでも、ムンナでも、弱点を突く攻撃が可能だ。さらにこのバトルは性質上、1体になるとほぼ負ける。燕返しとサイケ光線によってロゼリアも倒され、ここでマイコの勝利が決まった。


そして、約束通り、二人ともポケモンを譲り受けることとなった。
「わしの仕事は、新米が伸びるように援助してやることじゃ。二人とも良く伸びるとみた。」
「「あ、ありがとうございます!」」
二人とも照れていた。老人の発言に嘘はない。
「まずは、オオバヤシくんかの」
「はい」
「ポケモンの数がまだ少ないからのう。2匹あげよう。ハスボーと、モノズじゃ。」
「ありがとうございます!!」
オオバヤシに渡されたのは、ギガドレインや冷凍ビーム、バブル光線を覚えている浮草ポケモンのハスボーと、ドラゴンと悪の二つの波動を使いこなすモノズだった。
「水の石を発掘していてよかったね」
マイコは言う。
「何でよかったん?どっかで必要なんか?」
「ハスボーが最終進化するときに水の石が必要なの。あと、モノズはとても大事に育てたら、すっごく強いサザンドラになるから。」
「へえ……」
思わぬプレゼントに喜びを隠しきれないオオバヤシ。そして、マイコにもポケモンが渡された。
「この子はフシギダネじゃ。マイコくんならきちんと育ててくれることじゃろう」
「ありがとうございます」
マジカルリーフやヘドロ爆弾といった、マイコのパーティに足りないタイプの技を覚えているフシギダネが加入した。これにより、二人とも4匹のポケモンが仲間になったことになる。
老人が導いたポケモンたちとの出会いによって、少しだけ強くなったマイコとオオバヤシなのだった。


おしまい


マコです。二人ともだいぶポケモンを味方につけてますね。
実を言うと、老人は二人だけじゃなく、マイコのほかの友人にも援助をしています。
次の話は、強敵がマイコたちの前にたちはだかります。
そして、マイコは、新しい登場人物と一緒にバトルします。
彼は一度、その4で登場していますが、本格的に登場するのはおそらく初です。

マイコちゃんとマコの関係?
マコの本名がマイコなんです!そう、モデルは私自身!でもだいぶ脚色したところはあります、正直。
でも次回のその9では、実際の設定「運動は超音痴」がちょっと出ます。
【書いてもいいのよ】
【ちょっとネタばらしたのよ】


  [No.274] その9前編 マイコの大事なオルゴール〜勝率予想するエリート〜 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/09(Sat) 18:34:25   52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

マイコには、チャオブー、ワシボン、ムンナ、フシギダネ、ミズゴロウの5匹のポケモン以外に、とても大切にしているものがある。それは、クリスタルでできたオルゴール。
なんでも、マイコの故郷であるキュウシュウのとある名工が1年のうちにたった1個しか作らない名品なのだという。成人祝いに親がくれたもので、10万円はするらしい。
さらに、そのオルゴールには秘密が隠されているのだ。
「これには、安らぎの鈴っていう道具と同じ効果があるみたいなの」
マイコは自分の家で、劇場での友人のうちのひとりである、トキにこう言った。
「そもそも、安らぎの鈴の効果自体わからへんねんけど」
「鈴の方は、ポケモンに持たせて連れ歩いていると懐いてくれるっていうものだよ。で、このオルゴールは、鳴らすと懐いてくれるのよ」
「それは1匹だけやなくて、聴かせたやつら全体に効果がでるん?」
「当たり。だからとても貴重で、喉から手が出るくらい欲しい、って人もいるのよ」
「ふーん。ほんなら、マイコのポケモンと俺のポケモンを出してみんなに聴かせると、それぞれに効果があんねや」
「そういうことかな」
そう二人が話していると、いきなり窓が開き、ドガースが出てきたのだ。
マイコもトキもボールを投げようと構えたが、投げる前にドガースが煙幕を吐いてきたのだ!
「ゲホ、ゴホッ……」
「見えへんやんなにも、ゲホゲホッ」
目と喉にくる煙幕が消え去った後、(あの後二人とも視界不良に苦しみながら窓を開けた)呆然とした。
「「クリスタルオルゴールが、ない……!」」
さっきまで置いてあったはずのオルゴールがそっくりそのままなくなっていた。
そして置き手紙があったので、マイコが読んだ。
「悔しかったら俺らを見つけてみろ そう遠くには逃げてないぜ ロケット団エリートズ」
「明らかな宣戦布告やな、挑発的やんけこいつら」
トキはそう言った。少し怒りを感じているようだ。
「空から探そう。空からなら、きっとわかるはず……!」
マイコはそう言った。盗ったやつへの怒りで腸は煮えくりかえっていた。


マイコはワシボンを、トキはヒトモシを出し、ワシボンの背にヒトモシが乗る形となった。
「ワシボン、上空から怪しい奴らを追ってね」
「ヒトモシはそいつらを見つけ次第、鬼火を放って、俺らを案内してくれ」
雛鷲ポケモンは蝋燭ポケモンを乗せて、空へと力強く羽ばたいた。

ほどなくして、10人ほどの黒ずくめの集団がオルゴールを大事に抱えて逃げるのを発見できた。
すると、蝋燭ポケモンは、頭の上の紫の炎から、報告を待つ二人の元に鬼火を放った。
小さな炎はふよふよと浮き、二人の元へ届いた。
「マイコ、走るで」
「え!?嘘でしょ、トキ君!?」
マイコはあせったが、無駄なあがきである。
「お前のオルゴールやろ。盗られてもええもんなん?」
マイコは首を横に振った。
「嫌やろ?そうと決まったら行こうや」
実はマイコ、走るのがかなり苦手なのだ。しかし、そんなことを言ってられる状況ではない。意を決して走った。呼吸が乱れるということが待っていても。


黒ずくめの集団、つまりロケット団はオルゴールを持って逃げていた。
「これを売り飛ばせば、めちゃめちゃ大儲けできるぞ!もっと早く逃げ……」
「ヒトモシ!弾ける炎!!」
逃げようとした時、不意に上空から降ってきた炎により、彼らは足止めされた。しかもその炎、着弾したと同時にたくさん火の粉を飛ばしたのだ。
「「「あちっ!あちっ!!」」」
ヒトモシに指示が飛ぶ、ということは、つまり、マイコとトキがようやく追いついたということだ。ただし、マイコは息がだいぶ切れていた。
「お前ら、もう逃げ場はないで。大人しくマイコにオルゴールを返せ!」
「フフッ、フフフフフ」
「何がおかしいのよ。オルゴールは私の、早く返してよ!」
「お前ら、ただの落ちこぼれのくせに、有名大学を卒業したロケット団エリートズの俺らにたてつこうなんぞ100万年早いんだよ!!」
団員の一人はそう言って挑発したが、
「エリートズってだっさいで。頭ええんやったらもっとええネーミングあったやろ」
トキに一蹴された。さらに、
「少なくとも、エリートって言うのならこんなことしてないで頭を活かしたら?あんたたちろくでもないね」
マイコにまで一蹴された。しかし、めげないのがロケット団である。
「お前らはポケモンを1匹しか持ってない新米トレーナー。ヒトモシとポカブしか持ってなかったから、勝率は……」
何やらゴーグルみたいなもので計算し始めた団員。しかし、何か大事なことが抜けている気がする。
「5%。せいぜい5%で足掻くんだな!」
ここでマイコが食いついた。
「あんたさっきさあ、ポカブしかって言ってなかった?」
「そうだ。ポカブしか持ってないんだろ?」
「いつのデータよ!」
そう言うと、マイコはすでに場にいるワシボン含め、5匹のポケモンを出した。
「お前らデータあるってくせに、不正確なもんでようやってけたな!後、俺に関するデータも古いで!」
トキもポケモンをすべて繰り出した。こちらはヒトモシ含め、4匹である。
チャオブー、ワシボン、ムンナ、フシギダネ、ミズゴロウ、ヒトモシ、コジョフー、タマザラシ、コリンク。9匹揃った。
「隊長!勝率があがっております!」

勝率 60%

「やばいぞお前ら、一斉に攻撃しろおおっ!!」
ポケモンたちが次々と、ロケット団側から出されていく。
「チャオブーは火炎放射!ワシボンは燕返し!ムンナはサイコキネシス!フシギダネはマジカルリーフ!ミズゴロウは熱湯!」
「ヒトモシはシャドーボール!コジョフーは飛び膝蹴り!タマザラシは冷凍ビーム!コリンクは10万ボルト!」
的確に、きびきびと指示を与える二人。

勝率 85%

二人だけで勝負の流れを引き寄せられて、エリートのプライドが激しくなった。
「こうなったら……フローゼル、ヒトモシの火にアクアジェット!」
公式バトルでは、危険攻撃は反則となっている。しかし、相手はエリートとはいえ、ロケット団。ルールはないのだ。一瞬のうちに、むき出しの火に向かって水をまとった海イタチポケモンが一直線に激突したのだ。火は小さくなってしまった。
マイコとトキは動揺した。特にひどい動揺を見せたのはトキの方だ。
「ヒトモシ!!!火が、小さく……」
フローゼルはムンナのチャージビームおよびコリンクのスパークで仕留められた。

勝率 55%

さらにやばいことに、ボールポケモンまで迫っていた。
「追い打ちをかけてやる!マルマイン、大爆発!……ん?」
しかし、爆発は不発に終わった。煙だけ出して目を回している。
マイコがニヤリとしていた。
「残念でしたっ。ミズゴロウがいるから、爆発は起こせないよ」
「何でミズゴロウごときにっ」
「この子は少し変わってて、湿り気の特性を持っているのよ。だから爆発はどうやっても無理ね」
少しだけ優勢を取り戻したかに見えたマイコたち。しかし……、
「ドリュウズ、地割れ!」
鋼のモグラの出してきた攻撃は、一撃戦闘不能を狙ったわけでなく、マイコとトキを引き離すのが目的であった。思惑通りに引き離される。

勝率 32%

「ユンゲラー、金縛り!」
見えない力で、マイコも、トキも、彼らのポケモンたちもみんな動けなくなってしまった。ヒトモシはまだ回復できていない。傷の治療はしたのだが、炎が大きくならないのだ。

勝率 0%

そして、あろうことか、エリートズは、ヒトモシを抱いたままで無防備なトキに向かって総攻撃をやろうとするではないか!
「これで終わりだ!勝率はもはやゼロだ。落ちこぼれはいつまでたっても落ちこぼれなんだよ!!」
「やめてえっっ!!トキ君に攻撃しないでえっ!!!」
マイコが叫ぶも、無駄であった。

そして、一斉に攻撃が降りかかってきたのだ……!!!


後編につづく


マコです。ポケリア史上最大級のピンチ場面で切ってしまいました。
トキ君とのタッグはなかなかの腕ですが、ピンチを迎えると若干弱さが見えるんです。若いから。
でも、私のモットーとして、「主人公側はどんなに危機を迎えてもハッピーエンドに収める」というのがあります。
だから、なんとかして勝利にもっていきたいと思います。
人を見下すものは報いを受けます。マイコちゃんと、トキ君がどうエリートズに逆襲するのか、そこらへんを楽しみに。
【書いてもいいのよ】
【人を見下しちゃダメなのよ】


  [No.275] オールハッピーエンドもいいですね。 投稿者:ふにょん   投稿日:2011/04/10(Sun) 12:13:02   59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 ロケット団とのバトルの行方…………すごく気になります。

 化石、アーケンでしたか。
 なぜいままでこういう化石ポケモンいなかったんでしょうね。

 ミズゴロウのしめりけ………
 ふにょんの捨て駒4兄弟の大敵ですね。
 ゴーストタイプとともに。
 
>「主人公側はどんなに危機を迎えても、ハッピーエンドに収める。」
 これ、いいですね。
 ふにょんは………一回バッドエンドを書いたことがあります。
 主人公が、友達を……
 それで……主人公も………
 たまーにバッドエンドも書いてみたくなるのです。
 ふにょんは、どちらかというと、主人公がポケモンの話しがおおいです。
 ポケモン率、かなり高いです。
 むしろ、ポケモンのほうが書きやすいっていう………
 人が主人公の話を考えてっかり書けるマコさんは羨ましいです。
 ふにょんは、いつでもマコさんを応援しています! 続きも頑張ってくだしあ!


  [No.276] Re: オールハッピーエンドもいいですね。 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/11(Mon) 13:15:26   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

>  ロケット団とのバトルの行方…………すごく気になります。

ありがとうございます。こう言っていただけるとありがたいです。

>  化石、アーケンでしたか。
>  なぜいままでこういう化石ポケモンいなかったんでしょうね。

なぜでしょうね。単純に、次に次にっていうことを繰り返した結果でしょう。

>  ミズゴロウのしめりけ………
>  ふにょんの捨て駒4兄弟の大敵ですね。
>  ゴーストタイプとともに。

ということは、捨て駒=自爆キャラですか!爆発できませんもんね。湿り気だと!

> >「主人公側はどんなに危機を迎えても、ハッピーエンドに収める。」
>  これ、いいですね。
>  ふにょんは………一回バッドエンドを書いたことがあります。
>  主人公が、友達を……
>  それで……主人公も………
>  たまーにバッドエンドも書いてみたくなるのです。

ハッピーエンド主義の私ですが、今、これからのポケリアの中で、人が死ぬ、というか消え去ってしまう話が浮かんでるんです。ただ、その人はポケリア主要人物ではない、とだけ伝えておきます。

>  ふにょんは、どちらかというと、主人公がポケモンの話しがおおいです。
>  ポケモン率、かなり高いです。
>  むしろ、ポケモンのほうが書きやすいっていう………
>  人が主人公の話を考えてっかり書けるマコさんは羨ましいです。
>  ふにょんは、いつでもマコさんを応援しています! 続きも頑張ってくだしあ!

ありがとうございます!!
私は、主人公が人間で、その人とポケモンが協力するパターンが書きやすいだけなんです。
とりあえず、その9に関しては、早く完結させます。


  [No.277] その9後編 マイコの大事なオルゴール〜奇跡の霊の猛火〜 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/12(Tue) 10:17:33   56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

容赦なく、こちらに向かってくる攻撃に、トキは目をつぶった。
(こんなん、もうアカンやん。俺はこのまま……)
しかし、彼に攻撃が降りかかってくることはなかった。たくさんの技が降りかかろうとしたその瞬間、大きくて分厚い炎の壁が彼を守り、攻撃を押し留めていたのだ。しかもその壁は、炎の弱点である水や岩、地面の攻撃ですら無力化してしまうほどであった。
さらに、炎はだんだんエリートズの方向に近寄り……、

勝率 5%、

勝率 23%、

勝率 42%……

「馬鹿な、0%から勝率が上昇するなんてこと……迫ってくるぞぉぉぉっ!!!」
「そんなことあるはずが……うわあっ、何だこの炎は!!!」
彼らを一気に燃やしたのだ。それと同時に金縛りは解けた。
「マイコがやったん?あの炎は?」
「私、動けなかったから関わってないよ。ん?……あれじゃない?」
トキは疑問をぶつけたが、どうも、マイコはそれとは無関係らしい。しかし、彼女は、上空にふよふよ浮かぶ、黒いランプのような形をしたポケモンを見つけた。
(あれ、さっきまで抱いてたはずのヒトモシがおらんようなってる……?)
そのポケモンはふよふよと降りてきて、トキにすり寄ってきた。ポケモンのほうは、なんだか嬉しそうである。主人の戸惑いを、尻目に。
「え、こいつは……?」
「ランプラー。ヒトモシの進化したポケモンだよ。つまり……さっきの炎の壁は、きっとランプラーが作ったものね。」
マイコは携帯電話の「ポケモン図鑑アプリ」のページの一つ「ランプラー」を見ながら言った。


勝率 70%

「く、くそう、勝率が回復するとは、どういうことだ……。」
ロケット団エリートズのうちの一人が言った。戦況はすっかりひっくり返っている。
先ほどの炎はプライドまで傷つけたのだろう。
「ここから戦いを立て直せ!エリートに敗北の二文字は似合わない!許されないのだ!」
悪党どもはだいぶ切羽詰まっている。それを見つつ、青年は冷静に指示をした。
「つまらんプライドで動くやつにはお仕置きやな。ランプラー、煉獄の炎で焼いてくれ」
トキのこの指示をロケット団は嘲笑った。
「ハッハッハ、煉獄は確かに強いが、命中のしにくい技だ!そんなもの当たるはずが」
「当たるわよ!!!」
マイコが口をはさんだ。言葉を遮られた形となったロケット団は怒った。
「なんだと小娘、あの生意気な男の命令した技は当たんねえんだ」
「コンボの勉強が足りないわねエリートさん!ムンナ、テレキネシス!!」
桃色の夢喰いポケモンが放った、これまた桃色の念波はエリートズを浮かせて、そして……

勝率 88%

「隊長!勝率が最高値を更新しております!」
「そんなことはもういい!ひどい炎が当たる!当たるぞぉぉっ!!!」
そのまま、先ほどの炎よりもっと猛烈な炎が悪人たちを飲み込んだ。
テレキネシスを喰らった側は、しばらくの間、地面技以外が当たり放題となってしまう。(相手を浮かせるという技の性質上、地面技は逆に効果がなくなるため)
確かにエリートズの言うとおり、煉獄の命中率自体は半分といったところで、大変ギャンブル的な技だが、テレキネシスで必中となり、デメリットがなくなった。


勝率 98%

「しょ、勝率が100%近い、です……」
エリートズは丸焦げで、息も絶え絶えである。落伍者という表現が似合いすぎる。
「ま、まだだ……クリスタルオルゴールさえ、あれば……」
「あのさ、クリスタルオルゴールって、これのこと?」
「!!!いつの間にっ」
マイコはきっちりオルゴールを奪還していたのだ。
「ムンナのサイコキネシスと、フシギダネの蔓のムチで取り返させていただきましたよ。って言うかさ、自分たちの所持品面してるけど、私のだからね!」
マイコはそう言い放ち、そして、エリートズに忠告した。
「今の私も十分怖いだろうけど、もう一人、私より怖ーい人、いるんだ。多分、あんたらをふっとばすことくらい、簡単にしちゃいそうだからね。……そうだよね、トキ君?」
「そういうこと。……よお聞け、エリートとかいう奴!」
実際、マイコよりトキの方が怖いオーラを出しまくっていた。もともと180センチのすらっとした青年だが、オーラのせいか、エリートズにとっては何メートルもあるように見えた。
「俺は高校もまともに行ってへんかったから、お前らみたいな頭はない。けどな、マイコがめっちゃ大事にしとったオルゴールを奪って攻撃して、挙句の果てには俺らを殺そうとした。そんなお前らを俺は許さへん!!!」

勝率 100%

「や、やめてくれ、お前らのことちゃんと許すから」
「絶っ対許さへん!!ランプラー、シャドーボールや!とびっきりでっかいの、頼む!」
トキの指示を受け、進化したてのランプポケモンは頭上に影の塊を集めだした。その大きさは通常サイズをはるかに超えて、黒い太陽とも呼べるくらいのシロモノになっていた。

勝率 測定不能 ツヨスギマス コワレマス

勝率を測っていたゴーグルも壊れた。エリートもそのヤバさにパニックを起こしかけている。
「こんなことはいやだ!エリートは絶対勝つ……」
「お前もう諦めろや!往生際が悪いねん!!」
そして、もう影の球が大きくならないところ、つまり限界点で、トキは叫んだ。
「ランプラー、一気に投げつけろぉぉっ!!!」

ドドドドドドッ!!!!!

巨大なシャドーボールがエリートズを巻き込んでいった。
「覚えてろぉぉぉっ!!!!」
その言葉とともに、ロケット団エリートズは空の彼方へと飛ばされていった……。


「やっと……勝った……」
「なんとか……エリートズを……吹き飛ばしたね……」
マイコもトキも疲労困憊である。総力戦だった上に、一度は敗北まで覚悟したくらいだ。最悪の事態から勝利まで持って行ったのは、底力と運が両方関わっていると言える。
「あのさ……」
「どないした?」
「最後のシャドーボール、……ちょっと、やりすぎたんじゃない?」
「……ハハハ、でも、あんぐらいやらな、気が済まんかったからなあ」
シャドーボールの軌道の跡は、アスファルトがえぐれるほど。
とりあえず、あまりにもすごいバトルだったので、早く家に戻って、休息をとる必要があった。


マイコの家にて。とりあえず、オルゴールの具合を確かめることにした。もちろん、ポケモンを全員出した状態で。
「あれ、何も傷がついてへん。あんだけ激しく攻撃を受けたはずやのに」
「硬度が地球上でも最高クラスで、衝撃にも強いって本当なんだ」
クリスタルオルゴールはポケモンの攻撃にかなり強い。二人はただただ驚いていた。
そして、マイコはオルゴールのゼンマイを回した。
そこから流れてきたのは、ポケモンも人間も癒される、素晴らしい音色だった。
そんな優しい音色が奏でられる中で、忙しかった一日は更けていくのであった。


おしまい


マコです。このランプラーの特殊技の威力に、ただただ書いている中でおびえました。もともとヒトモシ系統は特殊攻撃が高いことで有名ですが。
トキ「別に怯える必要ないねんで。敵に回したら怖いなあ思ってるだけやろ」
ランプラー「ふゆー、ふよーん」(くるくる回っている)
この子がシャンデラに進化したら……彼に早く闇の石を持ってきてください……。
とりあえず、無事にハッピーエンドまで持っていきました。
次は10回目。(本当は10じゃなくて、何回か前後編に分けていますが)
ちょっと、いや、かなりギャグチックな話を書く予定です。
【書いてもいいのよ】
【ヒトモシ系の特殊攻撃力いかついのよ】


  [No.279] その10 お粗末誘拐犯 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/13(Wed) 13:46:57   52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

マイコは劇場の友人に会いに行くとき、「今から行く」というメールを送り、ポケモン達と共に向かうということを習慣にしている。
その日も、いつものようにメールを送った。しかし、何時間経っても来なかった。
1時間後ぐらいでは、みんな、
「たぶん、気が変わって、今日は行かんでええやろ、って思ったんやろ」
と、楽天的な見方であった。
しかし、2時間が経ってくると、さすがに心配し始めた。
「何か厄介事にでも巻き込まれてんちゃう?」
「確かにポケモンをたくさん持っとるし、強いけど、もっと強いやつに打ちのめされたんちゃう?」
そして3時間経とうとしたとき、1通の手紙が来た。
差出人は不明である。代表してオオバヤシが封を破ることにした。
中には手紙が1枚。文字は新聞の見出しを切ったような、サスペンスでよく出るものである。
「女の子は預かった。返してほしければオオサカのキンリン公園に来い。」
とりあえず、大人数で行くとまずいので、3人で向かった。


公園に来たが、それらしき人物はいない。でも、不意打ちされると困るので、ポケモンは出した。
デンチュラ、エルフーン、ドレディア。
誘拐犯の来訪を待つ間、自然と会話になった。
「何で誘拐犯が、何もこっちに要求してへんのやろう?おかしないですか?」
カワニシが若干疑問視していたことを言うと、二人とも少し考えて言った。
「確かに。身代金とか言うてへんかったよなあ」
ハマイエが言ったが、オオバヤシはちょっと違う見方をした。
「俺は何か裏があると思うわ。マイコのこと処分してもうたで、とか」
そんな話をしていると、怪しそうな人が現れた。
「あ、こ、こんにちは……」
いやに低姿勢である。その人は長い髪、でかい眼鏡、チェックのシャツ、(しかもパンツにインしてる)すらっとしたを超えてヒョロッとしたもやし体型、そして大きなリュック。
それだけ言われればすぐわかるだろう。
(((オタクや……何か気持ち悪い……)))
3人同時に寒気を感じた。
と、ここで、オタクはリュックから何かを出した。

3体の、ぬいぐるみである。全部ピカチュウの。

正直、攻撃すべきか迷った。「身代わり」という技なら、ダメージを与える技を放って本体を引きずり出すべきである。状態異常を起こす技は無意味だからだ。しかし、本当のぬいぐるみで、中に爆弾が仕込んであったら?ポケモンも人間も危険だ。
結局、攻撃することを選ぶ3人。

背中に大きな綿をもつ風隠れポケモンが飛行タイプ最強クラスの大技、暴風でぬいぐるみを打ち上げたところに、電気蜘蛛ポケモンが虹色の、混乱を引き起こせる光線、シグナルビームを放つ。さらに、頭に赤い花を持つ花飾りポケモンが、必中の特殊な葉っぱ、マジカルリーフを繰り出す。

結果、ぬいぐるみは手足がもげて所々から綿がこぼれるというめちゃくちゃな状態になった。
「うわあああん!!ピカチュウちゅわあん!痛いでしょう、痛いでしょう」
オタクはすぐ寄ってぬいぐるみと一人芝居をしていた。
そのあまりのイタさに、3人と3匹はただ呆然としていた。
「あのー、芝居中すみません。マイコちゃんは今どこに……」
カワニシが丁寧にそのオタクに聞いたところ、案外素直に白状した。
「エルミーハウスの305号室。縄で縛っておいたけど、縛り方が分からなくて緩い結びになったから、多分今はもう脱出してるよ」
「「「はぁ!!?」」」
とりあえずツッコみたい気分である。
「縛り方が分からんって」
「縄を用意したまではいいけど、女の子を見るだけで鼻血が出まくって」
「「「中学生かっお前は!!!」」」
「だって本当に分からなかったんだもん」
「もんって言わんといてや!!」
「ブリッコかっキショイッ」
「もう脱出したって……監視どんだけ緩いねん」
3人ともあまりの酷さにただ呆れている。
「あ、あのー、僕のぬいぐるみへの愛、聞きます?」
オタクがそう聞いてきたので、同時に言い返した。
「「「遠慮します」」」
しかし、それを知ってか知らずか、
「まずピカチュウちゃんだね。ずんぐりとして、何よりこの愛らしい顔!」
喋りだした。相手の反応なんて無視して。


30分後……、熱弁は止まらない。
「綿でしかできてないけど、中に時計を内蔵したものがあったりとか」
オオバヤシも、ハマイエも、カワニシも、顔に青筋が立ちそうである。
さらに30分後……
「軽いものから重いものまでいろいろと……大丈夫ですかみなさん?」
全員倒れていた。聞きたくもない話を1時間聞かされるのは、バトルとは違う意味で精神的に削られる。
「すみませーん……三途の川が見えてきました……」
カワニシの目には、確実に幻覚が見えているはずである。ボロボロになっている。
「え、ホンマ!?それアカンって、ケンちゃん!」
そんな彼を介抱しようとしているのはハマイエ。比較的意識はハッキリしているようだ。
「ハマイエ、カワニシ、お前ら何しとんねん……おええっ」
一番ボロボロなのはオオバヤシだろう。ストレスを感じすぎて嘔吐している。
そして、そんなときである。上空から一人、降りてきた。
「あれ、ばーやんにハマイエ君にカワニシさんじゃん。何してんのそんなとこで」
ワシボンが進化した勇猛ポケモン、ウォーグルに乗って、マイコが降りてきた。
「マイコや!!」
「えっ、マイコ!?」
「マイコちゃん!?」
本当に脱出していたのだ。これには驚きを隠せない3人。
「ケガないか?何か精神的にやられたとか」
「特にないよ。内面も外面も大丈夫」
「縄はすぐほどけたん?」
「というか、私を縛るサイズじゃないくらいでかすぎる輪っかだったから。全然平気だった」
「「「……」」」
いろいろ凄い告発を聞いた後に犯人に待っているのは、とりあえず、お仕置きである。
「さあさ、僕のことを早く警察に突き出しなよ、さあ!」
オタクはそう言って両腕を突き出したが、オオバヤシは言った。
「断る。マイコもケガないし、何も取られてへんし」
「えー……」
「ただ、1個だけ、やっとこうと思う。」
そう言うと、デンチュラに、犯人の片手の甲を寄せて、指示した。
「デンチュラ、2,3滴の胃液を頼むわ」
電気蜘蛛の口から、酸が出てきた。

ジュウ、ジュウッ

タンパク質が溶けてる音がした。

「ギャアアアアッ」
断末魔の叫びが聞こえてきた。(※よい子のみんなはマネしないでね。)
そして泣きながら、逃げ帰った。
「あれ大丈夫なんすかね?」
「表皮だけにかけたから。1,2日で跡形なく消えるから問題ないで」
そこはだいぶ問題である。
しかしながら、マイコが無傷で帰ってくるだけありがたいとみんな思うのだった。


おしまい


マコです。

なんかすみませんでしたあああ!!!ギャグって私が書くと、ついアホなだけの話に……!
普通、こんなおマヌケもいいとこな誘拐犯、いませんよね!?
ポケモンがいるから、余裕で対応できてる3人。でも、興味のない話にはポケモンで牽制できないから、その人の気の持ちようしか対処法はないです。
あと、最後にオオバヤシさんがやった方法は、絶対危ないのでやってはいけません。きっと傷跡がしばらく残ります。
次の話は、今回の話とはちょっと違い、シリアスになります。
私の話では初めて、バッドエンドなものだと思います。
【書いてもいいのよ】
【誘拐とオタクには要注意なのよ】


  [No.280] その11前編 ある2人の男の悲劇〜彼らの裏切り〜 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/15(Fri) 12:03:14   55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

それは、秋の夕暮れ時の話だ。
テレビクルーである、モリシマとカザマ、この2人の男に連れられ、3人の男性と1人の女性は、オオサカ郊外の田舎道にいた。唯一の女性、マイコは、「オオサカにもこんな田舎道があるなんて!」 と、ポケモン達とともにはしゃいでいた。無理もない。彼女はキュウシュウのミヤザキという場所からオオサカに来て、しかも都会の方しか見てきたことがなかったから。
そんな様子を見たオオバヤシ、ハマイエ、トキは揃ってこう思った。
(((こいつホンマに20歳なんか?子供みたいにはしゃぎよるやん!)))
でも、この日の目的ははしゃぐことでも、それを見ることでもない。この田舎に建てられたという、悪事をオオサカの至る所で働いている、悪党のアジトに潜入することなのだ。


この企画の発案者はモリシマだ。旧知の仲というカザマを引き連れ、偶然劇場にいたマイコ以外の3人に声をかけたのだ。そこにマイコが話を聞きつけ乱入した、という次第である。当然3人は猛烈に反対し、あと一歩で3対1のバトルに発展するほどの険悪ムードになったが、モリシマとカザマがマイコの参加を認め、4人は無事に仲直りしたわけだ。その企画説明の前に、モリシマが独自に取材したメモによると、今回入るアジトの所有はロケット団。そいつらは初心者トレーナーでも、簡単に倒せる悪党らしい。
しかし、4人ともその怖さを見ているので、モリシマ達が去ったあと、話になった。
「あのメモって、ちょっと信憑性に欠けるよ。ヤバい奴はゴロゴロいるじゃん」
マイコが率直に言うと、みんな納得して自分達の経験談を話し始めた。
「俺は博物館で奴らと戦ったで。マイコもおったやろ」
「うん、そうそう。怖かったからね」
「モンメンがエルフーンに進化せえへんかったらヤバかったで。人質も取られるし……」
ハマイエの経験談はその5の前後編に入っている。太陽の石によって、ピンチを救われた。
「人質、と言うたら、お前らみんなが人質の状態で、俺はあいつらと戦ったで。みんなヤバいってなったときにバチュルがデンチュラに進化したから良かったけど、おらんかったら……」
オオバヤシの経験談はその7に入っている。一番背負ったものが大きかったバトルでもある。
「俺は最近、マイコと一緒に戦ったで。そいつら、エリートズって言うてて、他の奴らとはちょっと別格やったわ。ランプラーがおらんかったらって思うと……」
「あれは本当にピリピリしたよ。頭の中に、負けがちらついたからね……」
トキの体験談はその9前後編である。大ピンチから逆転したのは、運も少しあったはずである。
どれも修羅場としか言いようのない激戦だった。
「あの人らって、いざ戦いってなっても大丈夫やろうか?」
オオバヤシが言うと、3人とも疑問を浮かべていた。
「「「うーん……」」」


そんなこんなで、ロケット団のアジトが見渡せる場所に着いた。とても田舎にあるとは思えないくらい、近代的な建物である。ここでカザマから1つの提案が出された。
「ここで二手に分かれましょう。僕とモリシマ君とで。そっちは2人づつに」
「じゃあ、グーとパーで分かれようか」
マイコの掛け声とともに、4人は右手を出した。
「「「「グーとパーで分かれましょ!!」」」」


結果、モリシマの方では……
「オオバヤシさん、こっちの方に見張りの奴が多くおるんちゃいます?」
「トキ、それは多分錯覚やわ。どっちも同じくらいちゃう?」
タッグはオオバヤシと、トキである。
つまり、カザマの方では……
「ハマイエ君、なんか多くない?警備の人達……」
「気のせいやろ、マイコ!大丈夫やって!」
こちらはマイコとハマイエがタッグを組んでいる。
「なんか来やがった!」
「早く戦いましょう!」
二手に分かれたはずなのに、まるで計ったように同刻に悪党どもが襲いかかってきた!
「ウォーグル、燕返し!フシギソウ、タネ爆弾!」
「モウカザル、炎のパンチ!ハスブレロ、バブル光線!」
「ルクシオ、電撃波!ガバイト、ドラゴンクロー!」
「ホイーガ、ベノムショック!コマタナ、騙し討ち!」
4人それぞれが複数ポケモンを出し、懸命に戦っていた。やはり、いくつもバトルを重ねるうちに力をつけていったのだろう、警備の下っ端どもとの差は歴然としていた。
と、ここで……モリシマが逃げる素振りを見せていた。
「モリシマさん!あんたどこ行こうとしとんねん!まさか、逃げ……!」
「オオバヤシ、逃げるわけねえだろうが!少し離れるだけだ、行け、ミノムッチ!」
テレビクルーから繰り出されたポケモンは、環境によってミノを変える変わったポケモン。桃色のゴミのミノを身にまとっていた。
「目覚めるパワー!!」
蓑虫ポケモンから出されたのは、ポケモンによってタイプの変わる特殊な技だった。今回は氷の力がほとばしってダメージを与えていた。
「意外と、強いんですね……」
「うわ、凄い……」
「オオバヤシ、トキ、ちょっとは俺を見直したか?」
「「はい、ちょっと……」」
一方のカザマ側は……
「ブイゼル、スピードスター!!」
小さな海イタチポケモンから繰り出された星形の光線が、的確に敵を貫いていた。
「カザマさんのポケモンって、この1体だけなのかな?」
「多分ちゃうと思うで。でも、エース級やろうとは思うけどな」
「ハマイエ、マイコちゃん、どう?」
「「凄いと思います……」」


下っ端を撃退したところで、2人のテレビクルーは行動を起こした。それは、マイコ達4人にとって、裏切りとも呼べる行為であった。
まず、モリシマ側では何が起こっていたかというと……
「ガーメイル、サイコキネシス!」
「モリシマさん!あんた何してんねん!」
「味方に何してんすか!?」
オオバヤシとトキを抵抗できない状態にするため、ミノガポケモンに強い念力を放たせた。ミノムッチが進化する2種類のポケモン、ミノマダム(メスが進化)とガーメイル(オスが進化)。念力系の攻撃も得意なのだ。さらに、
「ミノマダム、草結び!」

グルグルグルッ!!!

「離せっ!離せっ!!」
「どこで裏切ってん!!俺らを奴らに突き出すん!?」
草木のミノに覆われたミノマダムが出した草によって2人は身動きがとれなくなってしまった。
それを確認し、モリシマは駆け出した……。
一方、カザマ側では……
「パラス!キノココ!タマゲタケ!みんな揃ってキノコの胞子!!」

パラパラパラ……

「ふわぁー、何だか眠く……ZZZ……」
「マイコ、お前、寝るなぁー……ZZZ……」
確実に眠りに落とされる胞子をキノコを持つポケモン達から食らい、こちらの2人は眠った。
カザマもそれを確認し、駆け出した……。


後編へ続く


マコです。不穏な空気をため込んで後編へ行きます。
次回は、マイコ、オオバヤシ、ハマイエ、トキの4人を裏切ったと言えるモリシマ、カザマにある悲劇が降りかかります。
そして、それは、救いようがない結末へと進んでしまうのです……。
【書いてもいいのよ】
【次は泣いてもいいのよ】


  [No.281] その11後編 ある2人の男の悲劇〜トライ・バリア・キャノン〜※注意 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/15(Fri) 13:53:21   57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

※死ネタというか、人間消失ネタなので、ご覧になる方は注意してご覧ください。




4人を追いつけなくしたところで、モリシマとカザマは落ち合った。
「モリシマ君、オオバヤシとトキはどう?」
「無事に縛ってきた。だいぶ2人とも喚いていたがな。離せー、離せー、って。カザマ、お前の方はどうだ」
「マイコちゃんも、ハマイエも眠らせてきた。眠ったら反抗しないでしょう?」
「そういうアイデアもあったが、いかんせん俺は眠りに持っていく手持ちがなかったんだ」
2人だけでアジト方向に行った。そこに、大きな罠があると知らずに。


「フッフッフッフ。誰か来たようだ」
一方、同刻、アジト内部。1人の上級団員がモニターを見ている。
その画像には……モリシマとカザマが映っていた。
他の4人は、カメラの画像範囲外なのか、映っていなかった。
「本当は……毎度してやられる、あの女含めたメンバーを始末したいところだが……あの男2人でいいや。この際、どうせ1回しか使えないこの力……トライ・バリア・キャノンを炸裂させてやってもいいかな」
ここで団員が言った「毎度してやられる、あの女含めたメンバー」というのはマイコ達である。
そして、そのターゲットとなってしまったモリシマとカザマが射程範囲内に入ったところで、アジト内モニタールームにおいてスイッチが押された。
すると、2人が来た道に生えていた木が倒され、逃げ道が塞がれた。もう出られない。
「「!?」」
さらに、おかしな重低音が聞こえ始めたのだ。

ヴヴヴヴヴ……

「何か、変な音が聞こえないか?」
「確かにね。ヴヴヴ、って感じの」
と、ここで、範囲内に設置されたメガホンから声がした。ちなみに、このメガホンの音声は、トライ・バリア・キャノンの射程範囲内でしか聞こえないようになっている。つまり、範囲外にいるマイコ達には聞こえないのだ。
『ようこそ、哀れな子羊2匹!』
「おい、どういうことだ!!」
2人の腰についたボールから、ミノムッチ、ミノマダム、ガーメイル、ブイゼル、パラス、キノココ、タマゲタケという、彼らのフルメンバーが出された。
『君達は選ばれたんだ、僕の実験の材料として』
「わけが分からないし、気味が悪いね」
カザマはそう言うが、もう既に後戻りの効かないところまで来てしまっていた。
『実は、実験というのは、《ヒトは新世界で生きられるか》ってやつなんだ。だから君達は、この世界で生きるのはもう終わり』
それは嘘であり、本当のところは、《範囲内に入った人間、つまり反抗分子を処分する》という、残虐極まりないことだった。その恐ろしい声に恐怖感を覚えたモリシマとカザマは、手持ち達に指示を飛ばした。ポケモン達から、風や砂、草や水が飛ぶも、どれも一様にかき消されてしまった。
「何で攻撃が効かないっ」
「これはおかしい、何か変なことが……」
『もう逃がさない、って意味。ポケモンの攻撃は通らないって頑丈さが売りだから。……あ、もう、トライ・バリア・キャノンの発射カウントダウンが始まったみたいだね。』
2人が射程範囲内に来てからカウントダウンはとっくに始まっていたのだ。もう、発射まであとわずかである。
『5、』
「やめろ!!」
『4、』
「いやだ!!」
『3、』
「怖い、死ぬのはいやだ!!」
『2、1、』
「「やめてくれえっ!!!」」

『0!!!』


ピカッッッ!!!


「「ギャアアアアッ!!!」」
3つの発射口から出た光線がモリシマとカザマを包む。それに悲鳴をあげる2人。
『このトライ・バリア・キャノンの発射は1回しかできないけど、発射するとあら不思議!人間もポケモンも、この世界やポケモン世界とは違う異界に、未来永劫幽閉できるんだ!アーッハッハッハ!!!』
狂気に満ちた笑い声をあげて、モニターとメガホンの電源は切られた。
トライ・バリア・キャノンで侵入者を消滅させるというミッションは終わったのだ。


「くそ、何で離れへんねん……よっぽど頑丈にしよったな……」
「モリシマさん、どこ行ってもうたんでしょうねえ……」
草結びが未だにほどけないオオバヤシとトキ。とここで、彼らの腰についたボールから、モウカザルとランプラーが自分から出てきた。
2匹は微弱な炎で、自らの主人を縛る草を焼き切ったのだ。
「ありがとうな、ランプラー!」
「助かったで、モウカザル!」
2人はようやく駆け出した。しかし、その時、既に、トライ・バリア・キャノンは発動を終えてしまっていた後だったのだ……。


罠の発動場所に着いた2人。確かにモリシマとカザマの姿は見える。が……。
「何やこれ、あの2人歪んで見えんねんけど……」
「俺らの目がおかしいわけちゃいますね……」
「というか、この先に行かれへん。別に触ってもなんともないねんな……」
もう既に、モリシマとカザマは電波のような状態になっていた。体が物質ではなく、細かな粒子のようになっていたというわけだ。さらに、オオバヤシとトキの前に大きな壁が1つ。頑丈そうだ。
「これを割ればええってことやんな!デンチュラ、シザークロス!!」
ボールから出た電気蜘蛛は爪を交差させつつ近づき、壁を切り裂いた。しかし、壁はなんともなかった。
「物理攻撃がアカンかったら、特殊攻撃なら……!ランプラー、オーバーヒート!!」
ランプポケモンからはフルパワーの強い熱の塊が吐き出された。しかし、これも壁には効果がなかった。
もっとも、2人に不意打ちを仕掛けようとした下っ端どもには絶大な効果があったようで、バタバタと音を立てて倒れた。ただ、2人とも見向きもしなかった。それより救出すべき人がいるからだ。
しかし、その人達からは意外な返事が出された。

「もう、いいんだ……。やってくれるだけで十分……」

返事をしたのはカザマだった。
「カザマさん!大丈夫やったんですね!」
オオバヤシが言うも、カザマの返事は後ろ向きなものだった。
「もう、僕らはダメみたいだ……、死んでしまうんだ」
「諦めんといて下さいよ!!死ぬとか……そんなこと……!」
トキは思わず叫んでいた。しかし、諦めていたのはカザマだけじゃなかったのだ。
「もう俺らは出れねえ。ただただ終わりを待つしかない」
モリシマも言った。自分の運命を悟ったようだ。
「さっきは……あんなことしてすまなかった……。オオバヤシ、トキ……」
「もう、謝ったって……遅いです……。許す許さないは……抜きでも……」
「いなくなるってことが、……、ただ、嫌なだけ、です……」
もう2人とも言葉が続かなかった。
「ハマイエとマイコちゃんによろしく言っといてよ。多分まだ知らないだろうし、このこと」
いよいよモリシマもカザマも体が大きく歪んできた。どうやら時間切れらしい。
「モリシマさん!カザマさん!!」
「ごめん……、僕はもう、リタイアしなきゃいけないようだ……」
「最後に、突き放すことなんか……するんじゃなかったな……。でもお前らが助かるなら……それで……」
「消えるんじゃない!!そんなこと、言わんといてください……!」
そして強い光が出された。2人が目を思わず閉じ、次に開いたときには……、

カシャーン……

眼鏡と、デジカメが残されているだけだった……!

「う、うああ、あああ……、何か、体の震えが、止まらへん……!」
言いようのない恐怖感に苛まれて、トキは体中が震えだした。一方のオオバヤシは止まったままだった。
「オオバヤシさん、どうしたんです?動いて下さい、あれは、何なんですか……!?」
オオバヤシは無言のまま、トライ・バリア・キャノンの発射口の1つを壊した。
「オオバヤシさん!?」
「トキ、……俺やって、悔しいねん……!あそこで止められへんかったから……!」
お互い、もう、何も言えなかった。そこに、ようやく、マイコとハマイエが来た。
「ばーやん、トキ君!どうしたの、大丈夫!?」
「オオバヤシさんもトキもどないしてん?」
オオバヤシとトキは、残っていた眼鏡とデジカメを2人に見せた。
「え、まさか……!?」
「うわああああん!!!」
2人とも事情を全て悟った。消えた2人はおそらく、生存してはいないだろう。
4人は引き揚げた。幸いにも、追ってくるロケット団はいなかった。
帰ってから、みんなでひとしきり泣いた。
心の整理はつかないが、前を向いていかなければいけない。
死者を弔う、という意味でも、ロケット団を倒す、と深く心に決めるのだった。


おしまい


マコです。
このお話は全編暗い話になってしまいました。
実力者でもどうにもならなかったあの罠。
せめて、モリシマさんとカザマさんが救われることを祈って……!
【書いてもいいのよ】
【暗すぎてごめんなさいなのよ】


  [No.302] 番外編 2つの小話 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/20(Wed) 14:24:42   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

今回は、本編とはちょっと違う、小話を用意しました。2個あります。
文末には教訓みたいなものも載せておきますね。
それでは、スタートです!

(1)目覚め石のお話

マイコが「府立カセキ復元・発掘センター」に行って、珍しい石を採ってきたという。
エメラルドグリーンに輝く、丸い石が2つ。
「見てこれ!目覚め石っていうんだ!」
この目覚め石、キルリアのオスをエルレイドに、ユキワラシのメスをユキメノコにするものなのだ。
そして、それは、偶然にもキルリアを持っていた、オオバヤシとアキヤマに1個ずつ渡された。


そして、2人とも、キルリアに石をあてた。
すると……、
「おお!!光りだしてるで!!」
アキヤマの持っていたキルリアはオスだったのだ。
つまり、腕に刃を持つ、スマートなポケモン、エルレイドを得た、というわけだ。
「うわあ、すごい!」
「すごいですよね、オオバヤシさ……ん?」
マイコもアキヤマもその進化の神秘に驚く中、もう一人の青年、オオバヤシは、というと……、

姿の変わらないキルリアを見て、ただ首をかしげていた。

「!!!やばいっ」
「どないしたん、マイコ?」
「しまった……、下調べしとくんだった……」
「やから、どないしたん?」
マイコは気づいた。
「アッキー、マズいことになった……。ばーやんのキルリア、メスなんだ……」
「めっちゃヤバいやんか!!!」
そう、オオバヤシのキルリアは、メスだったのだ。


オオバヤシに、真実を伝えた。
「ふーん、つまり、俺のキルリアは石の進化をせーへんのか」
「「すみません」」
「でもええよ、キルリアの進化は石だけちゃうもんな」
「育てることでサーナイトになるんだよね」
「ほんなら、マイコ、アキヤマ、ちょっと来い」
オオバヤシは2人を呼んだ。
「え?」
「どないしました?」
「キルリアを進化させるためのお手合わせを頼む」
戦いで進化させよう、身近に相手がいるから、とオオバヤシは考えたのだ。


そして、1時間後……
「ばーやん、強すぎるよ……」
「戦いで怒りを乗せとったんか、あの人は……」
「いやあ、お前らよう頑張ったで」
1人3匹出す(オオバヤシはフルメンバー)マルチバトルの結果、マイコとアキヤマはへばりこんだ。
彼らの周りでは、チャオブー、ヌマクロー、ラクライ、ジャノビー、エルレイド、ヘルガーがばったりと倒れ、ノックアウトされていた。
実はオオバヤシの手持ちのポケモンたちは、いつもの3倍くらいの威力の攻撃を放っていたのだ。
それに2人とも、手も足も出なかったわけだ。
「せやけど、ほら、キルリアはサーナイトに進化したんやから、ええんちゃう?」
ずっと出ずっぱりのキルリアは、きちんとサーナイトになっていた。
悪い人と戦うのもいいけど、自主トレ感覚で身近な人と戦うのも悪くないと思う3人だった。
(あれは申し訳なかったけど、ボロ負けだったなあ…………)
ただ、マイコの中では、石のことについての謝罪と負けず嫌いが同居して、ぐちゃぐちゃとなっていたが。
(リベンジ果たそう!!!)

教訓……下調べは念入りに



(2)ロケット団下っ端のお話

なんにもない なんにもない まったくなんにもない
(ある歌の一節から引用。)
俺はロケット弾の下っ端だ。名前?んなもん忘れちまった。
なんせ、入ってからずっと「下っ端」って呼ばれてんだから。
いいよな、幹部は。給料いっぱいもらってるし、名前もちゃんとある。
俺らはそこらへんのヒヨッコたちからバトルで取るしか方法がねえんだ。
でも、俺には、必殺の特技がある。

「ひったくり」だ。ポケモンを利用した、な。

さーて、どいつがいいかな。

決めた!

あの女にしよう。

「ドーブル!神速で、女のバッグを盗れ!ボールもだ!」
俺様の相棒、ドーブルは、こいつらしか使えねえ技「スケッチ」で、ウインディから「神速」をもらった。
こいつならいける!

バッ!!!

ほら盗った!ボールは3個か。まあいいか……

「ひったくりーーー!!!」
ゲッ、気づかれた!
「待てやこら!!マイコちゃんの荷物返せ!!」
あいつ連れが居やがったか!女と身長が違わねえチビか……
「お前チビ言うたなコラアアア!!!」
地獄耳じゃねえかこいつ!ってか読心術者か!?


あれ、いつの間にか俺の上に、緑色の虫がいる!?静かに追ってたのか?
「ビブラーバ!砂嵐!!」
うわ、視界が利かねえ!痛い、痛い!!
「フタチマルは水の波動!ニューラは泥棒!バッグとボールを奪ってくれ!」
ドーブルがやられてる!!水か、やりやがった……あ!!奪ったはずのバッグとボール3個がない!!!
「泥棒すんじゃねえよ!!俺が盗ったやつを」
「お前認めてもうてるやんか。盗りましたって」
「タロウちゃんありがとう。私1人だったらダメだった……」
女がしきりに感謝してやがる。俺のせっかくの稼ぎをフイにしやがって……


お、やっと砂嵐が晴れた。逃げられる……ってえ!?
真上に雨雲が……

「ラクライ、雷」

ドオォォォーーーン!!

「うわああああ!!!」

やっぱりこうなるのかよ!!これだから下っ端はつらいんだよ!!

なんにもない なんにもない まったくなんにもない

教訓その1……人のものは盗っちゃダメ
教訓その2……他人のコンプレックスをつつくな


おしまい


マコです。今回はちょっと小話を。
1つ目のお話は、経験ある人もいるかもです。
目覚め石って使えるポケモンと性別が決まってますからね。
大変です。ちなみにエルレイドってかっこいいですよね。
シュッとしたスタイリッシュな見た目にやられます。
キルリアがオスでもサーナイトにする人は……いますよね?
2つ目のお話は、絶対やってはいけません。
私にしては珍しく、悪党目線で書きました。
マイコちゃんを狙うからそうなるんですよ。
ちなみにこのお話でも暗に示しましたが、キザキくんは身長コンプレックスです。
後、最後にマイコちゃんのラクライがやったものは、雨を利用した「必中雷コンボ」です。
これは、やってる人多いかもです。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


  [No.305] 特別編 CROSS STORY〜大いなる影の力とその代償〜 前編 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/22(Fri) 11:41:58   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

※ポケリアとA Battle Subway STORY(サブスト)とのコラボ作品。
ポケリア側の登場人物の会話は「」
サブスト側の登場人物の会話は『』
そして、この話は、ポケリアその8の後で、その9で起こる事件の前にあった話です。サブストは完結後です。


10年前、1人の凶悪殺人犯が日本の刑務所を脱獄したというニュースが報道された。その犯人の名はドルビット。警察の決死の捜査の中で、彼は逃走を続けた。結局、彼は捕まらず、行方不明となり、捜査自体が打ち切られた。このときは、マイコは小学生で、オオバヤシは高校生であった。この頃、毎日のようにそのニュースが流れていたので、2人ともこの事件を覚えている。しかし、このときの2人は、10年後にそいつと対峙するなんて思っていない。
そして、10年後、つまり、現在……


4匹ずつのポケモンを仲間にした2人が歩いていると、突然足元に謎の魔法陣が現れた。そこから動こうとするも、
「何これっ……!?」
「う、動けへん!?」
金縛りのようなものにかかってその場から離れられない。と思ったら次の瞬間、2人がいた地面が闇に包まれた。そして、そこで金縛りが解ける。
「「うわああああっ!!!」」
2人ともそこに吸い込まれていった。それは、ある1日の冒険の始まりだった……。


所変わって、シンオウ地方、送りの泉。先程の2人とそっくりな男女がそこに向かっていた。
『ここが送りの泉、か。それにしても……、何か見えにくいな。視界がハッキリせえへん、というか……』
男がそう言うと、女はこう返した。
『霧が立ち込めているみたいですね。ウォーグル、出てき……ん?』
その時だった。霧を切り裂くようにして、2人の男女が突っ込んできた。
「「うわああああっ!!!」」
『『ぎゃああああっ!!!』』

ドッスーーーン!!!

『ど、どうしたの、いきなり……』
「い、いたたた……」
『お前ら、大丈夫か?ケガないか?』
「いや、何とか大丈夫、なんやけど……」
その時、降ってきた女、つまりマイコ、がブルブル震えだした。
「ド、ド、」
「どうしたん、マイコ?」
「ドッペルゲンガーだああっ!!!」
目の前にいる人がそっくりすぎて、若干パニックを起こしているらしい。
落ち着くのを待ってから話をすることにした。


『それで、リアルの世界からポケモン世界に……』
「「はい」」
『奇妙なこともあるもんやね』
ポケモン世界の2人にこっちに来た経緯を根掘り葉掘り問われた2人。
でも、悪い人ではないというのが分かってもらえたようで、自己紹介を始めた。
「俺は、オオバヤシ ケンジっていうねん。よろしく」
「私は、サカモト マイコっていいます。よろしくお願いします」
『俺は彼と同じく、オオバヤシ ケンジ。こっちは……』
外見も名前も同じ。本当にドッペルゲンガーのようだ。しかし、ケンジの次の一言に、マイコとオオバヤシは絶句することになる。
『妻のマイコ』
「「妻!!?」」
『マイコといいます。よろしくお願いしますね』
「嘘……妻って……妻って……」
「こっちでの俺らは夫婦なんや……」
何か言いようのないショックを受けている間も、ポケモン世界の2人の会話は続く。
『今、俺らは、送りの泉にある《戻りの洞窟》に行こうとしとんねん』
『そこでギラティナってポケモンの姿を一目見たい、と思うんだけど……、行きます?』
「「もちろん!!」」
それしか選択肢はない。戻れるかもしれないチャンスなのだ。
『とりあえず、霧をなくして視界を良くしますね。ウォーグル、出てきて!』
マイコさんが出したのは、威厳があり、百戦錬磨の戦績を持つ勇猛ポケモン。野生のポケモンが皆怯んでしまいそうなくらいである。
『霧払い!』
ウォーグルは、翼をはためかせ、一瞬で霧をすべて払い、開けた視界を与えた。
「すごい……」
「お前の持ってるワシボンも、強くなったらこうなるんやろ?」
「そうかもだけど……あの人の腕は相当すごいよ。多分、2人で戦っても簡単にのされるのがオチだろうし」
道中、話をした結果、お互いの年齢が分かった。
マイコは20歳、オオバヤシは27歳、マイコさんは25歳、ケンジは26歳ということだ。
「5歳違うだけで、こんなにも大人なんだ……」
「俺の方が年上やけど、ちょっとタメ口をきくって無理やなあ……」
『い、いいんですよ!気にしないで下さい!』
『そうそう、緊張しすぎたら楽しいもんも楽しく……ん?誰やろう?あれは……?』
その時、ケンジは人を見つけた。3人もつられてそちらを向く。
その男は4人と視線を合わせると、戻りの洞窟に入ってしまった。
「ドルビット……!」
『誰なんすか、そいつ!?』
「こっちの世界で10年前に殺人を5件ほどして、捕まったけど刑務所を脱獄した凶悪犯や」
「その時、毎日のようにニュースで言ってて、ある時行方知れずになったけど……こんな所に……」
『早くギラティナの元に辿り着けた者に、冥界の王、ギラティナは力を授けるって言われて……!』
マイコさんはハッと気づき、こう言った。
『もし、マイコちゃんと、オオバヤシさんの言う通りなら、その人……ドルビットという人を早く止めないと……大惨事に……』
「「『!!!』」」
『行きましょう!!』


後編へ続く


マコです。特別編。プラチナバージョン主役の霊竜、ギラティナ登場のお話。
4人が力を合わせていかないと、戻りの洞窟での最終決戦がいい方向に傾かないのです。
でも、修羅場を乗り越えてきたみんななら問題ないはずです。
次回の後編で完結予定です。お楽しみに。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【感想待ってるのよ】


  [No.306] 特別編 CROSS STORY〜大いなる影の力とその代償〜 後編 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/22(Fri) 13:41:02   45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

※人間消失ネタが入っています。少し注意してご覧下さい。


戻りの洞窟に入った4人。そこで、ケンジがこの洞窟の仕組みについて話し始めた。
『この洞窟には、穴が4か所ある。まあ、今いる部屋の場合は入り口を含むから3か所やけど。行先は。で、柱のある部屋を3回見つけたら、その次の部屋でギラティナに会える、という方式やねん。けど、柱を見つける前に行った部屋の数が31を超えると、入り口に戻されんねん。後、4人で固まって行かんと、絶対迷子になるから。みんな理解した?』
3人は大きく頷き、歩き出した。
次とその次の部屋には柱がなかった。4個目の部屋で、入るなりドータクンやゴーストが襲いかかってきたのだ!!柱はなかった。4人はポケモンを出して追い払い、そして次の部屋だった。
天まで届くのではないか、と思わせる大きな柱があったのだ。
「これ、は……」
『これが、柱。まず1個目ね』
その柱にはこうあった。




『これは、柱が1本目、部屋は5個目って意味や。あと柱は2本やな』
「柱見たら、頑張ろう、って意欲が湧いてくるわ」
そして次の部屋に行くと、またしても柱があったのだ!!
『すごい!連続で柱を見つけるなんて珍しいのに!!』
マイコさんは興奮していた。とにもかくにも、あと1本。


しかし、そこからが長かった。行けども、行けども、柱が見つからない。
「ずっと見つからないのかな……」
マイコは落ち込んでいた。悲しいムードに包まれる一行であったが、次の部屋に入った途端に、全員に笑顔が戻った。
「あっ……」
「柱や……!」
『やっとあったわ、3つ目の柱……!』
『いよいよ、次の部屋ね。ギラティナがいるのは』
回復を済ませ、次の部屋に足を踏み入れた、その時だった。

〈グウ……グウウ……〉

ギラティナのうめき声がした。とても苦しそうだ。その傍らには男が1人。ドルビットだ。
『どうしたの……一体何が……』
「くっはっはっは!!財宝とはこういうことか。強力な影の力……!」
ドルビットは高笑いしていた。
『お、お前……!力を使いすぎたらどうなるか分かっとんのか!?』
「え、これは、どういう……?」
「ドルビットは、ギラティナから力を貰って暴走しよるってことちゃう?ひょっとして、それ、人間には扱えへんシロモノなんやろ」
『大方その通り、オオバヤシさん。ここは俺ら4人であいつを止めなアカンね』
4人はフルメンバーを出した。それはとても豪華である。
『みなさん、力を合わせて行きますよ!』
マイコさんの声で全メンバーが一斉にフルパワーの技を放った。
ドルビットの出した、大量のギラティナの形をした影に向かって、火炎放射、ハイドロポンプ、雷、冷凍ビーム、花びらの舞、地震、コメットパンチ……。威力ある大技が次々出され、影を次々掻き消していった。
「なるほど……俺様に立てつこう、ってか。なら、これはどうだ!!」
その瞬間、ドルビットの目が赤く光ったかと思うと、黒い大きな球が4人のポケモンに襲い掛かり、皆瀕死寸前に追い込まれてしまった。
「今の何……?」
「何か飛んできたよな……?」
「これはシャドーダイブのエネルギーを1か所に集めて放出した技だ。ダークダイブと言おうか。しかしお前らしぶといな。全員死なないとは」
『やめなさい!!もう大人しくしてよ!!』
マイコさんは叫ぶが、ドルビットは聞く耳を持たない。
『ドルビット、お前そろそろ死んでまうやろな。かわいそうな奴』
ケンジが意味深なことをボソリと呟いた。
「え、それってどういうことやねん、ケンジ?」
『オオバヤシさん、そのままの意味ですよ』
「ということは……もうすぐあいつは……。けど、こっちも限界ですよ。私も、ばーやんも、マイコさんも、ケンジさん、あなたも……」
しかし、正直、マイコの言う通り、4人が劣勢であることに変わりない。
「ごちゃごちゃうるせえ!お前らまとめて殺してや……」
先程の黒いエネルギー弾をドルビットが放とうとした瞬間だった。

ドプン、ドプン……。

彼の足を影が蝕んでいた。エネルギー弾も消えてしまった。
「え、どういうこと……、どういうことだああっ!!」
ドルビットは絶叫した。その時、ギラティナの声がした。
〈愚かなドルビットよ。我のこの力はお前なんかには扱えない。使ったとしても、大きなデメリットを伴うのだ〉
腰まで影に喰われていた。4人はただ見ることしかできない。
「それはどういうことだあっ!教えやがれえっ」
〈影は非常に暴れたがる性質でな。人間がその力を使うと、その人間を喰うというものになっているのだ。喰われないのは我ぐらいだ〉
「嘘だ!嘘嘘嘘」
ドルビットはすでに壊れかけている。首から上の部分しかもう残っていない。
〈お前は地獄にすら行けない。漆黒の闇の中で、生まれ変われず未来永劫暮らすんだな〉
「そんなのは、嫌だあああっ!!!」
ドルビットは全て影に喰われ、消え失せたのだ……。
4人は何も言えなかった。ただ、マイコがすすり泣く声だけが聞こえた。
そして、その時だった。

ゴオオオオ……

穴が開いていた。
〈我が、この世界とリアルの世界、2つの世界をつないだ。20分は開いている。その前に別れを告げるなり、何か渡すなりをしろ〉
ギラティナなりの気遣いだった。リアル世界から来た2人は、ここでポケモン世界の2人と別れなければいけない。
「マイコさん、ケンジさん、短い間でしたが、ありがとうございました」
マイコがお礼を言う。
「あの時、2人が導いてくれんかったら……俺らはのたれ死んどったから……本当にありがとう」
オオバヤシもお礼を言った。
『いいですよ、そんなお礼を言われるようなことはしてませんし。あ、……そうだ、私からマイコちゃんにプレゼントがあるの』
『俺からはオオバヤシさんにプレゼントを渡すわ』
2人が渡したのはポケモンのタマゴ。マイコのは青く、オオバヤシのは赤かった。
『私のあげたタマゴからは、水タイプのポケモンが孵るってことと、バトルの流れを変えられる特性を持っているってことを教えておくね。ちょっと特別なのよ』
マイコさんはそう教えてくれた。
『俺があげたタマゴは炎タイプのポケモンが生まれんねん。こいつも特別で、遺伝させた技と大きく特性が関わっているってことを言うとくで』
ケンジはそう伝えた。
「「ありがとうございます!!」」
2人は礼を言った。恩をたくさんもらって、返しても返しきれない。
「私達、また会えますか?」
マイコは帰る前にそう言った。すると、マイコさんは少しだけ涙を流しながら言った。
『私達は、あなた達のことを見ていますけど……会おうと思えば、いつか、会えますよ』
「達者でいて下さい。あと、2人とも、ずっと仲良くいて下さいね!!」
オオバヤシはそう言った。
『オオバヤシさんに言われなくっても、大丈夫です!そちらこそ達者で!』
ケンジもちょっとだけ泣いていた。
そして、2人は穴に入り、元の世界へと帰って行った。
こうして、ポケモン世界での冒険は幕を閉じたのだ……。


リアル世界、オオサカ。マイコとオオバヤシはタマゴを抱えたまま、いなくなった場所で倒れていた。そこに、彼らの友人達が集まってきた。
「マイコも、オオバヤシさんも倒れとるやん……」
「ここはちょっとでっかい声で起こすか。出て来い、ガマガル!」
そのうちの1人が、オタマジャクシからカエルになる途中の姿をした振動ポケモンを出した。
「みんな、耳を塞いでて……ガマガル、ハイパーボイス!!」
聞こえてきたのは、起こすというよりは耳を壊すような大音波だった。
「「ぎゃああああ!!!耳が痛いっ!!!」」
2人とも起きた。しかし、方法がいささか荒かったらしい。起きたと同時に怒っていた。特に、オオバヤシが。
「おい、コラァ……」
どす黒い、ヤンキーのようなオーラが立ち上っているようである。
「ひいぃぃぃっ!!!」

しばらくお待ちください……。
(大変お見苦しい映像が流れております……)

落ち着いたところで、タマゴにひびが入り、そして……生まれた。
マイコのタマゴからはミズゴロウが、オオバヤシのタマゴからはヒコザルが。
ミズゴロウの特性は「湿り気」。爆発技及び特性「誘爆」をできなくしてしまう。冷凍ビームや熱湯も覚えている。
一方、ヒコザルの特性は「鉄の拳」。パンチ系の技の威力が上がるのだ。その特性通り、雷と炎、2つのパンチが使用可能となっており、火炎放射も覚えている。
普通じゃできない経験と、すごいプレゼントを貰い、とても貴重で、いろんな意味で充実した1日になったのだった。


おしまい


マコです。無事完結しました。特別編。
ギラティナはこういうこともできるんじゃないか、と考えてキャラ作りを行いました。
本当はもう少し前に公開したかったのですが(いきなりミズゴロウとかヒコザルが出てきてビックリした方もいるでしょうし)、他の話を書きまくったところ公開が遅れた、と……。
両方とも隠れ特性持ちです。
タマゴから孵ったばかりですが、即戦力です。
しかし、まあ、楽しく書かせていただきました、特別編。
今度は本編でお会いしましょう!
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


  [No.316] その12 勝利を呼ぶビクティニ 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/27(Wed) 13:41:22   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ある日、マイコが新聞を見ているとこんな記事があった。

○月×日 カンサイ新聞 朝刊 社会面

万馬券次々と出る!

昨日オオサカで行われた○○競馬第2レースにて、35歳の男性が100円の券から150万円もの配当を手にした。
彼は記者のインタビューに次のように答えた。
「競馬場に行く途中に、オレンジの耳をして、天使の羽のついた黄色い生物を見たんです。きっとそのおかげです!!」
ここ2週間で5件、同様の事象が起こっており、「幸せの黄色い生き物が起こす奇跡」として広まっている。

「これは……ビクティニのことかなあ?でも、こっちの世界に伝説っていうポケモン、来るの?」
マイコは、奇跡よりも、ビクティニの事例のほうが気になってしょうがなかった。


「っていうことがあったの。どう思う?」
マイコはその記事の内容と自分の考えをカワニシに言った。
「同じことがたくさん起きとるんやろ?ほんならそれはホンマのことやん」
「でも、ビクティニみたいな珍しいポケモンがこの地域内にいるんだよ?不思議だよね」
「まあなあ。マイコちゃんはその、ビクティニとかいうポケモンを捕まえたいん?」
「そうは思わないよ」
「何で?結構珍しいこと言うもんやね」
「なんかさ、そういう奇跡を自分で独り占めする気分って良くないと思うんだ。なんか罰当たりな感じ」
「悟りでも開けそうやね……」
変な感心が起こる中で、事件は突然起こった。

「ひったくりーーー!!!」

見ると、女性が黒ずくめの男にバッグを取られていた。しかも男は逃げている!案の定というべきか、犯人の男はロケット団だった。小話に登場したあの男だが、今度はポケモンを使わず、自分からいった。
「ドンカラス!あの男を追って、バッグを泥棒で奪還してくれ!バオップも乗って、犯人が見えたら弾ける炎で足止めを頼む!」
カワニシが出した黒い大ガラスは翼を強くはためかせ、犯人を追った。背には赤い子猿。
そして、犯人を見つけるとすぐに口から散弾の性質のある炎を吐き出した。
たまらず足を止める犯人。
そこで大ボスポケモンは大きい体に似合わず、素早い動きで男に近づき、隙をついてバッグを取った。
「あー、おいおい、待てー!」
明らかに悪いのに奪い返そうとする根性の悪さに、マイコもさすがに頭にきたようで……
「フシギソウ、葉っぱカッター!」
犯人に向かって無数の葉っぱが宙を舞った。
しかし、表面上は何も起こっていないように見えた。
「ケッ、こけおどしか!見かけ倒しにも程があるぜ!」
そう言ったロケット団の男だったが、
「私がこけおどしとか使う人に思える?」
そう言ってマイコは指をパチン、と鳴らした。

バババババッ!!!

その瞬間、犯人の服は粉々になり、スッポンポンの状態となった。
「服だけに葉っぱカッターを当てたんだ。肌は傷ついてないから安心してよ」
周りの野次馬の視線が痛くなり、犯人は怖くなって、
「ヒイイィィィッ!!!」
走って逃げた。
マイコとカワニシは、取り返したバッグを無事に持ち主の女性に返却し、礼を言われて照れていた。


そして、また歩き始めたその時だった。
「「あっ!!」」
オレンジ色の耳、青い瞳、黄色い体に天使の羽みたいな尻尾。
そう、ビクティニが目の前を通って行ったのだ!
「本物、だ……」
「あんな至近距離で見れるもんなんか?」
2人とも驚いていた。


「ビクティニからは、勝利を導くエネルギーが出ており、自分がエネルギーを与えていいと思った者には必ずや勝利を与える……か」
「凄いポケモンなんやな、ビクティニとかいう奴は」
マイコの携帯電話アプリ「ポケモン図鑑アプリ」の「ビクティニ」のページに書いてある「説明」を2人で見ていた。ここ2週間起こっている奇跡はこのビクティニのおかげだろう、というのが結論だった。


一方、別所。先程のひったくり団員は大儲けな表情をしていた。
「ハッハッハ!ビクティニを捕まえたぞ!これであいつらに復讐できる!」
仲間の団員を数人呼び、「ビクティニを利用した殲滅作戦」を説明した。
「いいか、あいつらは今、街中にいる。そこを狙え!幸い、こっちには勝利ポケモン・ビクティニがいるから攻撃は当たり放題だ。容赦なくやれ!」
「「「はっ!」」」


2人が図鑑説明を見終わり、歩き出そうとしたところ、ユンゲラーが2人を襲おうとしていた。臨戦態勢である。
「エスパーには、悪の攻撃がよく効くから、……、ドンカラス、辻斬り!!」
再び登場した大ボスのカラスは刃と化した翼で相手を切りつけた。普通なら、効果が大きいところ、だったのだが……
ユンゲラーは多少の傷を負ったものの、平然としていた。
「えっ、あんまり効いてへん!?」
「しまった、ハメられたんだ!イリュージョンか!」
「罠やったんか!!!」
そう、これはロケット団が施した罠だった。ユンゲラーに化けたゾロアークが相手をしていたのだ。ポケモン図鑑アプリで正体を暴こうにも、そのデータすら偽れるので、2人とも気づかなかったのだ。
悪狐はここで怒鳴るような声で攻撃した。バークアウトだ。
「「うわあっ!!」」
ポケモンどころか人間にも効果があったようで、若干ふらついた。
「これは何回も受けるような技じゃないね……。だったら、連撃で早めにケリをつけるよ!チャオブー、突っ張り!!」
場に登場したマイコのパートナーは、余裕を見せる悪狐に何発も張り手を食らわした。1発の威力はそうないが、相性の良さと連撃によってあっさりと倒すことができた。
「敵はこれだけなのかな?やけにあっさりしてたけど……」
マイコがこう言っていたら、
「危ない!!」
カワニシがマイコをかばうようにして、横っ飛びにジャンプした。

ジュウウウ……

先程までいた場所は、真っ黒焦げになっていた。
「避けてへんかったらヤバかったで。煉獄の直撃を食らってやられとったな」
2人が向けた視線の先には、

たくさんのコイルとデルビルの集団と、ロケット団員に押さえつけられて身動きの取れないビクティニがいた。
「あんた達、何してんのよ!」
マイコが叫ぶと、ロケット団はこう言った。
「お前達がこいつの力を乱用するから俺達が保護してやってんだ。優しいだろ?」
「言うとることとやっとることが全く違うやんか!保護ちゃう、虐待や!」
ごもっともなことをカワニシが言うと、ロケット団は激高した。
「お前ら口が過ぎるんだよ!コイルども、電磁砲で大人しくさせろ!」
そのまま電撃の大技が放たれた……
「ハッハッハッハ!これで殲滅完了……ん?」
しかし、青年の目の前に緑の雷獣がいた。特性の避雷針によって、電磁砲を全て受け切ったのだ。特にマヒしている様子も見受けられない。
「危なかった……ありがとう、ラクライ。マイコちゃんが助けたんやろ?」
「我ながらナイスタイミング。あんなの食らったら一生マヒが残りそうだから」
そして、団員とそのポケモンにだけ反撃を食らわした。
「ラクライ、ビクティニに当たらないように、電撃波・パワーアップバージョン!」
電撃で痺れを与えている間に、何故相手の攻撃が的確に狙ってきているのか考えた。
そして、その答えは案外簡単に出た。ビクティニの特性が原因なのだ。


ビクティニの特性は「勝利の星」。自分自身及び仲間の技の命中率を上げるのだ。そのために、煉獄や電磁砲といった命中率の低い技ですら、必中とまではいかないながら、狙いが合いやすくなるのだ。
マイコ達がビクティニを奪い返すことができればいいが、腕っぷしだと人数的にも不利。
しかし、マイコがある案を思いつく。
「カワニシさん、」
「マイコちゃん、どないした?」
「ドレディアがいるでしょう?ビクティニに対して、特性を強制的に変える技を放ってほしいんだ」
「分かった。上手くいくかは分からへんけど、やってみるわ」


電撃が止んだところで、作戦は実行された。
「ドレディア、ビクティニに仲間作り!」
カワニシのパートナーである花飾りポケモンは、勝利ポケモンの傍に寄り、かわいらしいダンスを踊り始めた。ビクティニもつられて、団員の手を離れ、一緒に踊った。


「お遊びみたいな技繰り出しやがって!コイルども、デルビルども!電磁砲と煉獄で跡形もなくやっちまえ!」
仲間作りをお遊びと捉えた時点で何も分かっていないことが明らかであるが、とりあえず、炎と雷が飛んだ。
しかし……、両方とも見当違いの方向に空しく飛んでいく結果となった。何度も放射したが、当たらない。
「何で当たんねえんだ!?」
「じゃあ聞くけど、あんたは仲間作りを何だと思ったの?」
マイコが的確に核心を突く質問を投げかけた。
「ただのお遊び」
「立派な技よ!!なめきってるわね!」
「仲間作りって、踊ったポケモンと技を受けたポケモンの特性を一緒にすんねん。やから、今、ビクティニの特性はドレディアと同じ《マイペース》やねん。命中率のアップ効果がなくなってもうてるから、当たらへんねん、攻撃が!」
「く、くそおおおっ!!」
勘違いを起こしていた悪党どもはポケモンを増やすという行動に出た。先より多いコイルとデルビル。
「バオップ、受け取ってくれ!」
青年は赤い子猿に橙色の石を投げた。炎の石だ。受け取ったバオップは光の中で進化し、バオッキーとなった。
「バオッキー、火炎放射!!」
赤い猿が放った火は、容赦なく敵陣を焼き、磁石達をノックアウトさせた。
「ヌマクロー、熱湯!」
広範囲に沼魚が撒いた湯は黒い犬をノックアウトさせるのに十分すぎた。
残ったのは団員だけ。
「こうなったらとんず……追ってくるなああっ!!」
勝利ポケモンは力を悪用した悪い奴らにカンカンだった。ニトロチャージで早くなった動きのまま、最強クラスの炎技を放った。

体を炎で包み込んだまま突進するフレアドライブだった。

「「「「ぎゃあああっ!!!」」」」

悪党は遠くへ飛ばされた。


「ビクティニ、最後は君に助けられたね」
「救出するはずが逆やったなあ。でも、勝利を届けるのはホンマやったみたいやね」
マイコとカワニシはそう言った。しかし、仲間作りをしてビクティニを取り返したのは2人の功績だ。
そんな2人をビクティニはニコニコ笑って見て、そして2人から去っていった。
ビクティニが行ってしまった後に落ちていたのは、
「天使の、羽、だ……」
「勝利の羽やね。餞別かもなあ」
心が少し温かくなった2人であった。


おしまい


マコです。ビクティニ登場の話。
正義を持った人間にしか勝利の喜びは来ない、っていうことを言いたかったんです。
無理やり協力させてはいけません。
人類全体が他人に優しくなれればいいですね。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


  [No.410] その13 フルボルテージの怒り 投稿者:マコ   投稿日:2011/05/06(Fri) 13:21:34   33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

※この話は、その9の後で、その10の前に起こったものです。

5匹のポケモンを仲間にしたマイコが、友人であるトキとともに河川敷を歩いていたところ、明らかに傷ついている緑の体のポケモンが見つかった。
「これは……ラクライだね」
「ラクライ?電気のやつっぽいな。せやけど、何でこんなとこにおるんやろ?電気のポケモンなら、街中に居りそうなもんやろ」
「そこなんだよね、問題は。……トキ君、何か嫌な予感がするんだけど」
「どういう意味やねん」
「虐待とか、捨てたとか、そういう線が浮かんできたんだ」
「保護せなアカンのんちゃう?マイコ、ボール持ってんの?」
「そこらへんの心配はいらないよ。ほら」
そう言うと、マイコは桃色のボールをバッグから出した。
「あれ、普通のモンスターボールとちゃうやん」
「ヒールボールっていって、これで捕まえたら傷と状態異常を完全に治癒できるの」
「お前セレブなん?結構値が張るって聞いとるで」
言っておくが、このリアル世界では、モンスターボール以外の特殊な性能のボールは貴重なのだ。それを、普通の女子大生であるマイコが持っていることに、トキは首をかしげたというわけだ。
「いや、バイトの店長から貰った。1個だけね」
「それを、今使うんやな」
「まあ、トキ君も私と同じ立場だったら使うと思うけど……」
「言いたいことは分かった。人助け……ちゃうわ、ポケモン助けやろ」
「そうそう」
マイコはそう言って、ヒールボールを投げた。というより、転がした。
傷ついていた稲妻ポケモンは、そのボールに反応し、開閉ボタンを押した。光となって吸い込まれ、数回ボールが揺れた後、それは収まった。出る様子はない。
その瞬間、先程まで野良のポケモンだったラクライは、マイコの仲間になったわけだ。
「フルメンバー勢揃いってやつやな」
「とは言っても、戦って手に入れたポケモンじゃないけどね」
「お前の優しさに惚れ込んで仲間になっとるんやから、へこむ必要はないんちゃう?」
実際、マイコはポケモンを全てバトルではない方法でゲットしている。チャオブーはポカブの頃に家に送られてきた。ワシボンはヤミカラスにいじめられているところを助けた。ムンナは家に来訪した。フシギダネは老人から託された。ミズゴロウはタマゴから孵った。そして、ラクライは先程のように助けたというわけだ。
「とりあえず、ラクライは保護したから家に戻ろうかな……」
と、その時だった。若い男が2人の前に姿を現した。


「誰ですか?」
マイコが聞くと、
「うるせえ!」
としか返ってこなかった。
「お前な、こっちが丁寧に聞いとるのに、うるせえはないやろ!」
「ちょっとやめて、トキ君!ケンカは良くないって!」
顔に青筋が立っているトキをマイコは必死になだめた。ここであまり大きな揉め事は起こしたくない。しかし次の瞬間、若い男はこう言い放った。
「ちっ、ラクライはいねえのか」
「どういう事?あと、あなたは誰?」
「俺はシュウだ。ホントはこういうとこ、来たくなかったんだけどよ、俺が捨てたラクライが高個体だったようでさ、引き取りにきたんだよ」
「「捨てた!?」」
「すっげえ苦労したんだぜ?ライボルトにいっぱいタマゴを生ませて、孵った何十匹ものラクライの中からいいやつだけ選んで、残りはポイ、だ。都合がいいだろ?でもその中には泣く泣く捨てたやつもいるんだぜ。それがここに捨て……」

パシン!!!

言い終わる前に、マイコが男の頬を平手打ちした。
「マイコ!?」
驚いたのはトキだ。数十分前には怒る自分をなだめていたマイコが感情をあらわに怒っているのが信じられなかった。
「ふざっけんじゃないわよ!!!たくさん生ませてその後はポイ?あんたバカじゃないの!?生ませたのなら責任持って育てなさいよ!捨てるなんてバカな真似すんじゃねえよ!!!」
鬼気迫るマイコのキレ具合だが、男も負けてはいない。
「わかったよ!!今からお前と俺とでフルバトルをして、お前が負けたらポケモンを全部捨てろ!」
「シュウ、お前ふざけたこと言うなや!!なあマイコ、こんな勝負受けるだけ……」
「受けようじゃないの」
トキが止めても無駄だった。火のついたマイコは止められそうもない。自分から冷めるのを待つしかなかった。それでも、マイコが巨大なリスクを背負っている、負けられないバトルなのは明白だが。
(なんで答えが賛成やねん!!おかしいやん!!落ち着いて考えたら受けたらアカンバトルって分かるやろ!?)
トキは心の中で狼狽していた。マイコには勝って貰わなければならないのだ。


そして、バトルはスタートした。6VS6。フルバトル。
シュウが繰り出したのは、気性が荒く凶暴ポケモンと呼ばれるサメハダー。一方のマイコは背に種を背負う蛙のような種ポケモン、フシギダネを繰り出した。
(サメハダーは特性が厄介なポケモンだから、触れずに倒さないと……。でも、その前に、前段階だ)
「フシギダネ、日本晴れ!!」
マイコが指示を飛ばすと、途端に太陽が輝きを強めた。暖かいというより、むしろ暑いくらいだ。それに対し、シュウは……
「サメハダー、ロケット頭突き!」
頭を引っ込めた凶暴ポケモンは防御の態勢を取り、種ポケモンに向かって、一直線に突っ込んできた!しかし、マイコは驚くほどに冷静だった。
「ソーラービーム・クイックバージョン!!」
強い日差しのおかげで溜め動作がなくなった太陽光線が凶暴ポケモンを一閃し、一撃ノックアウトとなった。
「マイコ、いつの間に鍛えたん!?一撃なんて……」
「作戦勝ちってとこかもね。向こうが気付かなかったってとこも大きいかも」
「おいお前、忘れてんのか?日差しはまだ強いんだぜ!?ってことはよ、炎も強くなるんだよ!バグーダ、行け!」
次いで青年が繰り出したのは、背に火山を2つ持つ、橙色の噴火ポケモン。
「これでサメハダーの敵がとれ……」
「戻って、フシギダネ」
「ああ!?何で戻すんだよ!?」
マイコは相性の悪さを感じ、種ポケモンを引っ込めた。草も毒も、バグーダのタイプである炎や地面に効果が薄いからだ。
「じゃあ、ミズゴロウ、出番よ!」
代わりに登場したのは、小さな沼魚ポケモン。
「そんな小さいやつで、俺のバグーダにケンカ売るなんて見上げた根性だな!まあいい、バグーダ、突進!!」
「ミズゴロウ、ジャンプして避けて!」
一直線に突進してゆく様は恐怖だが、結局は当たらないと意味がない。ただでさえ小さい的がジャンプするものだから、当然の如く噴火ポケモンは沼魚を見失う。と、ここで、

ポツ、ポツ、ポツ……

雨が降り出した。
「いつの間に雲が寄ってきたんだ!?後、ミズゴロウはどこに」
「今よ、水鉄砲!!」
「背中か!!」
雨の補助を受けた水鉄砲は至近距離でヒットしたものだったためか、これまた一撃で噴火ポケモンが戦闘不能に陥った。
「ジャンプの間に雨乞いしてまうなんて、判断がいつにも増して冴えとるな、今日のマイコは」
「炎の攻撃を食らいたくなかったってのもあるけどね」
(今こいつと戦ったとして、俺は勝てるんやろうか、神がかった判断をするマイコに)
トキは傍観しながら、そんなことを思うのだった。


次いで青年から出されたのはモジャンボ。モンジャラが原始の力を得て進化した蔓状ポケモンだ。マイコは当然の如くミズゴロウを引っ込め、雛鷲ポケモンのワシボンを登場させた。ミズゴロウでも冷凍ビームという有効打を持つが、草の攻撃を食らってひとたまりもなくやられるのが目に見えたので、交代させたのだ。
「モジャンボ、日本晴れだ!」
青年の指示により、太陽が再び雲の切れ間から顔を覗かせた。晴れたり雨が降ったり、また晴れたりと空も忙しい。
と、途端に巨大な蔓状ポケモンの動きが素早くなった。
「なるほど、葉緑素の特性ね」
「勘がいいじゃねえか。でも終わりだ!パワーウィップで潰せ!」
力のこもった鞭が雛鷲を襲う。
「けっ、つまんねえやつ!そんじゃあ次のポケモンを出せ……!?」
鞭で倒されたかに思われたワシボンが、素早く的確に燕返しでモジャンボに攻撃したのだ!
「嘘だ!何でまだ攻撃できるんだよ!?」
「タカをくくっていたみたいね。簡単に倒されるほど軟じゃないから。ワシボン、恩返しの一撃をお見舞いしてあげて!」
マイコから受けた愛情を力に変えて雛鷲が放った一撃で、蔓状ポケモンは倒された。
これでシュウの手持ちは半分がノックアウトされた。マイコはまだ6匹全員戦える。
と、ここで、ワシボンの体が光に包まれ、大きく成長し、勇猛ポケモンのウォーグルとなった。
「とうとう進化したのね!ワシボン、いや、ウォーグル!」


青年の4匹目はこれまた巨大な2本牙ポケモン、マンムーだった。こちらはイノムーが原始の力を得て進化した姿である。マイコは相性の悪さと累積ダメージの量を考えて、進化したての勇猛ポケモンを引っ込め、彼女のパートナーである火豚ポケモン、チャオブーを出した。
「どっちも有効打があるからなあ、弱点の突き合いになるやろうな」
トキの言う通り、マンムーは地面技でチャオブーの弱点を突けるが、チャオブーもまた、炎や格闘の技で弱点を突ける。
しかし、シュウの指示は意外なものだった。
「霰!」
途端に雪、いや、それより大きい塊がボロボロ降ってきた。
「そして地震!」
間髪入れず大地の震動が火豚を襲った。足元がふらつく。
「耐えて、チャオブー、そして、火炎放射!」
だが、炎は空しくも当たることはなかった。そして気付く。
「なるほど、雪隠れで回避しやすくしたのね」
ちょうどその時だった。2本牙ポケモンが火豚ポケモンの真後ろに陣取った。これはマイコにとって願ってもみないチャンスだった。
「チャオブー、牙につかまって登って!」
「マズイ、振り落とせ……」
マンムーは必死にチャオブーを振り落とそうとするが、つかまる力が強く、振り落とせない。だいたい、動きがどちらかというと鈍い方に分類されるポケモンに速い動きを求める方が無茶な要求である。
「至近距離からの火炎放射!!」
雪隠れは距離があると効果が大きいが、至近距離だとほぼ意味がない。猛烈な炎に耐え切れず、マンムーもノックアウトされた。これでシュウの残り手持ちは2匹。


青年の5匹目はカイリキー。マイコも5匹目、ムンナを出した。明らかにマイコが有利な対決である。と、ここで、カイリキーの体は猛毒に蝕まれた。それにマイコは心当たりがある。
「わざと猛毒を起こすあたり、根性の特性を活かすのね」
「そういうことだよ!カイリキー、気合いをこめろ!気合いパンチだ!!」
カイリキーは4本ある腕のそれぞれに気を込め、技の発動準備を行った。しかし、それは逆に隙だらけという状況をもたらす。
「チャージビーム!!」
夢喰いポケモンの夢の煙を出す穴(?)のような部分から黄色い光が放たれ、気の注入が途絶えた。
「何でだ!?気合いパンチをやろうとしたはずなのに」
「1つ忠告しておくよ。気合いパンチはダメージが大きい分、相手からダメージを喰らったら集中が途切れて発動できないの」
「ちっ、カイリキー、瓦割り!」
「チャージビーム!」
「岩雪崩!!」
「チャージビーム!!」
次々とカイリキーから繰り出される技にチャージビームで応戦するムンナ。
(マイコのムンナならエスパー技で簡単にカイリキーを倒せるはずやねんけど……チャージビームを連射するあたり、何か策があるんやろうか?……!そうか!!)
「クロスチョップ……」
そして、それを待っていたかのように指示がマイコから放たれた。
「サイコキネシス・パワーアップバージョン!!」
夢喰いポケモンの放った強力な念の力は、カイリキーを簡単に吹き飛ばし、ノックアウトに追い込んだのだ。
「マイコ、チャージビームを連発しとったのって、もしかして……」
「相性としては普通だけど、特殊攻撃のパワーアップを狙っていったんだ。うまくいって良かったよ」
これで、シュウのポケモンはあと1匹である。ラストに出されたのは……

猛禽ポケモンのムクホークであった。


マイコは考えた末に、ラクライを繰り出すことにした。
「ラクライ、出てきて!」
出てきた雷獣は、自分を捨てた相手にいきり立っている。やる気は十分のようだ。
と、ここで、猛禽が強い鳴き声を出し、若干ながら稲妻ポケモンのパワーを削いだ。威嚇の特性である。
さらにいきなり大技が出された。羽を畳んで突撃する、ブレイブバードだ。
「ラクライ、電撃波!!」
ここは必中の電撃をお見舞いしてやろうとマイコは考えたのだ。しかし、いくつかが当たった以外は弾かれ、逆にブレイブバードの直撃を喰らった。多少なりともムクホークにもダメージは来るが、ラクライのダメージも無視できなかった。
「空を飛ぶ攻撃で、忌々しいあいつをコテンパンにしてやれ!!」
猛禽が上空へ飛んだ。だが、これがマイコにとって大チャンスになっていたのをシュウは知らない。マイコがニヤリ、とした。
「何がおかしいっ」
「そうくると思った。ラクライ、雷!!!」

ズドォンッ!!!!

上空の相手には絶対当たる、猛烈な稲光とともに、先程まで上空から獲物を狙っていたムクホークは黒焦げとなって力なく墜落した。
この瞬間、マイコの勝利が決まった。6匹全て残した圧勝だった。
「おめでとう、すごいわ、マイコ!誰も戦闘不能になってへんなんて!!」
「ありがとう!すっごく嬉しい!!」
マイコとトキが喜び合っていると、シュウがどす黒いオーラを放っていた。
「お前らなんかまとめて潰してやる!ベトベトン、行け!!」
「お前7匹目なんて卑怯や!」
「卑怯でも何でもいいんだよ!完膚なきまでに叩きのめされたのが腹立つんだよ!ヘドロ爆弾で骨まで毒に冒されながら苦しんで死ね!!!」
「「うわああああっ!!!」」
そして、2人に向けてヘドロの塊が発射された、その時だった。
「メタグロス、サイコキネシス!」
突如出現した鉄脚ポケモンの発した念の力で、ヘドロは方向が逸れ、遠くへ飛んでいった。
ヘドロの直撃を免れた2人は、自分たちの父親と同じほどの年頃の男性に助けてもらい、メタグロスの上に乗った。


「大丈夫かね、君たち」
「あ、ありがとうございます……」
「すみません、助けてくださって」
「そんなに感謝しなくてもいい。当然のことをしたまでだ。ちなみに私はダンゾウ。あのシュウの父親だ。バカ息子がとんでもないことをしたな」
「父親……」
「さてと、降りるぞ。やつに制裁をしないといけないようだな」
2人もダンゾウに促されて地上に降りた。


シュウとダンゾウが向き合って話している。マイコとトキが入る隙間はなさそうだが、何か起こるといけない。
「オヤジ、何でここが分かった」
「お前が捨てたポケモンを拾いに行くと言ったから、多分ここだろうと目星をつけていた。そしたらお前は大量にポケモンを捨てたくせに親の顔を見せて無理な条件のバトルを押し付けたあげくにストレートで負けている。さらにそれを抹消しようとして毒を放つなぞ、トレーナーというより、人としてなっていない!そこの2人が話を聞いて怒るのも納得がいく」
「もうオヤジも消えちまえばいいんだ!ベトベトン、ヘドロ爆弾!!」
ヘドロポケモンから出されたヘドロの塊をダンゾウは避けるが、頬をかすめた。やはり完全に避けきるのは無理だったようだ。
「ダンゾウさん!?」
「頬が変色してる……このままじゃ……」
マイコとトキの心配をよそに、ダンゾウは至って冷静だった。
「シュウ、お前はそれでいいんだな?」
「どういうことだ?まあ、いいけどよ」
そして、指示が飛んだ。
「メタグロス、サイコキネシスで動けなくして、コメットパンチ!!」
念の力が反撃の動作すらも封じ込め、そこに隕石を思わせる鉄脚ポケモン十八番のパンチがヘドロを襲い、ノックアウトに追い込んだ。
と同時に、バレットパンチのようにダンゾウの平手がシュウに直撃した。
「この大馬鹿息子が!!!」


結局、シュウはポケモン放棄とポケモンによる傷害容疑の現行犯で逮捕された。
そして、2人はダンゾウの頬にモモン汁を塗っていた。変色の原因が毒というのは分かり切っていたことだったから。
炎症も引き、何とか大丈夫になったところで、帰ることとなった。
「あんまり無茶するんじゃないぞ。君たちはまだ若いんだから、ああいうようにならず、真っ当に生きなさい」
「ありがとうございます。ダンゾウさんもあまり無茶せんといてくださいよ」
「私たちも気を付けますから、ダンゾウさんもお元気で!!」
面倒な事件を何とか解決できて、少しだけほっとした2人なのだった。


おしまい


マコです。ちょっと間が空きましたが元気です。
2011年年明けから参加しているので、この度のログ消失に大変驚きました。
プロットを作らない派でしたが、自作品専用USBメモリをプロット代わりに文章作成にいそしんでいます。
とにかく、マサポケが大好きだってことを伝えたいです。


このお話の後書きとして、ポケモンがリアル世界に来て、法体系とかも若干整備された感じにしてあります。もし仮に、マイコちゃんがシュウに負けたらマイコちゃんも捕まっていたでしょう。
現実にペット放棄で捕まる人がいるのと同じように。でも、こんな展開になると主人公が逮捕となっていやなので、やっぱりハッピーエンドにしました。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【ポケモンを捨てちゃダメなのよ】


  [No.427] その14 マリオネット・トリプルバトル 投稿者:マコ   投稿日:2011/05/11(Wed) 14:36:52   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ある時、マイコが街中を1人で歩いていた。その道中、不思議な店を見つけたのだ。
看板にはこうあった。

《Mr.MARIONETTE》

店先にはマリオネット、つまり操り人形がたくさん並べられていた。そのどれもが、今にも動き出しそうな感じで、命があるように思えた。
しばらくじっと見ていたら、
「おや、この人形達に興味があるのかい」
店主に話しかけられた。見たところ、30代後半の男性のようだ。
「いえ、ちょっとふらりと足を止めただけで」
マイコはあまり長話をするのが好きではないので、話もそこそこに出ようとしたら、
「まあ、ちょっと来なさい」
いきなり連れ込まれた。1人の時に限って厄介な人と会ってしまうものである。


「この店には、人形……つまりマリオネットが並んでいることは知っているね」
「あ……はい」
マイコは逃げたいと思っていた。しかし、どうにも体が動かない。ポケモン達も繰り出せない。
「そのマリオネット達はね、」
「……」
「人間だったんだよ!!それを私が作った薬でマリオネットにしたんだ!!凄いだろう、凄いだろう!!」
店主はそう言ったが、マイコは、
「そのマリオネット……つまり、人間達を解放して下さいよ。それはあまりにも人道的じゃないです。警察を呼んでも、」
いいでしょうか、と言い終わる前に、その男は件の薬をマイコに飲ませたのだ……!


その頃、1匹のほうようポケモンが異変を感じ取った。
「サーナイト!?どないしたん!?」
オオバヤシの持っていたサーナイトだった。彼女はテレパシーでオオバヤシに異変の内容を伝えた。
『マスター、Mr.MARIONETTEというお店で、マイコさんが大変な目に遭っています。早く行かないと、もっと大事になってしまいます』
「どこらへんにその店はあるん?」
『視覚情報として、伝えますので大丈夫です』
次の瞬間、道に1本の赤いラインが見えた。それと同時に彼の目の色も赤くなった。つまり、オオバヤシとサーナイトは、視界を〈シンクロ〉したのだ。
『そのラインに沿って行けば、店に着きます。最短ルートをとってますので、早く辿り着けるのではないでしょうか』
「ありがとう、サーナイト!」
彼は走り出した。急がなければ、マイコが危機的状況を脱せない。


300メートルは走っただろうか、目的の店は見つかった。目の色もいつも通りの黒目にすっかり戻っている。
しかし、マイコは見つからない。
「どこにおんねん、マイコ!!分かったら返事せえ!!」
すると、待ち構えていたように店主が姿を見せた。
「お望みのマイコさん、とやらはここにいますがね」
彼が抱いていたのは、

マイコそっくりの、マリオネットだった。

「お前……マイコに何したん!?」
「彼女に薬を飲ませた。この私、ミナヅキお手製のマリオネットになる薬をね」
オオバヤシは狂気のミナヅキという名の店主からマイコとおぼしきマリオネットを救い出すと、そのまま1発殴った。
「汚い手でマイコに触んな!!あと、マイコを元に戻したれや!!」
「いいでしょう、但し、条件があります」
「どう考えてもお前が悪いのに、条件とかふざけんのも大概にせえや!!!」
「トリプルバトルであなたが勝てば彼女を戻してあげましょう。但し、あなたが負けた場合はあなたもコレクションのうちの1体にしてあげましょう」
「ふざけたことをぬかすな!!」
「おや、あなたが応じなければ、彼女は一生そのままですよ?それでいいんですか、あなたは?」
相手のペースに乗せられたのはだいぶ不満であるが、冷静な判断力がなければ勝てない。
さらに、あの口振りからするに、相当の実力者だろう。オオバヤシはバトルの申し出を受け入れるしかなかった。


「まずはこちらからですね。行きなさい!」
ミナヅキの繰り出した3匹はドサイドン、マタドガス、ハガネールだった。
「こっちはこの3匹に任せた!」
オオバヤシの繰り出したポケモンはハスブレロ、ジヘッド、モウカザル。
「ほう、まだ進化を完全に遂げていないポケモンで私に挑もうとはいい度胸ですね。もう負けるのを分かっていて勝負しにきたようなものです」
「うっさいねん!勝負はやってみんと分からんやろ!?勝手に負けると仮定すんな!!」
先に動いたのはモウカザルだった。一番破壊力の強そうなドサイドンに向かって目の前で手を叩いて攻撃した。猫騙しだ。
「そんな蚊の鳴くような攻撃をしたって無駄です!ドサイドン、岩石砲……何で動かない!?」
ミナヅキはどうやら猫騙しの付随効果、怯みを知らなかったようだ。
「驚きすぎて攻撃もできんようになったな」
「なっ!?貴様、卑怯なことを」
「実際に技として存在するものを放った。それのどこが卑怯なん?勝手に他人を人形にするあなたの方が数倍卑怯やと俺は思いますけどね」
攻撃態勢に移れないドリルポケモンに向かって、陽気ポケモンが熱湯を吹きかけた。しかも、尋常じゃない量を。
「やっぱり無駄なことを!こいつの特性はハードロック、弱点技を軽減するから、水の一撃じゃ倒れませ……ん!?」

ドッスーーーン!!!

盛大な音を立ててドリルポケモンは目を回していた。ノックアウトだ。
「その特性が意味を成さないくらい強い技を放てば、全く関係ないんちゃいます?」
まずは1匹倒した。しかし、ミナヅキはこれで終わるような男ではない。
すぐ毒の大波がオオバヤシ側の3匹とミナヅキの鉄蛇を飲み込んだ。
「ヘドロウェーブ、か……」
しかし、実際のところ、鉄蛇ポケモンはダメージを喰らっていない。毒は鋼に効果を示すことがないのだから。
「貴様がドサイドンを先に倒したところでこっちはこいつを使いやすくなりました!!愚かな判断に泣き喚きなさい!!」
二つ首の悪竜と橙色のヤンチャポケモンの毒、陽気ポケモンの傷を治療しつつ、オオバヤシは考えた。
(毒を治療するのもいいが、このままじゃキリがない。それに、ハスブレロは元々毒に弱い。逆転のカギは……どこにある?)

と、その時だった。オオバヤシの頭に声が聞こえた。
〈今が石の使い時なんじゃないの?あのさあ、ばーやん、くよくよしないで、しゃんとしないと、あんな奴に勝てないよ!〉
(マイコ……!?)
まるで、直接マイコが語りかけているような声だった。
(マリオネットの中で見とるんかもな。……俺は1人で戦ってるわけやない。ここはさっきのアドバイス通り、やってみるか!!)


「ハスブレロ、受け取ってくれ!!」
オオバヤシはボールを投げるかの如く、水の石を陽気ポケモンに投げた。
「させるかあっ!!」
マタドガスとハガネールがそれを邪魔しようとしたものの、悪の波動と火炎放射によって両者ともに遮られた。それを横目にハスブレロは水の石をキャッチし、光に包まれ、ルンパッパへと最終進化を遂げた。
「バブル光線!!」
能天気ポケモンから吐き出された泡は、確実にミナヅキのポケモンを圧倒できる威力にまで強化されていた。そして、ここで、さらに嬉しい誤算が起こった。
なんと、モウカザルとジヘッドも同時に光に包まれ、それぞれゴウカザルとサザンドラに最終進化したのだ!!
火の大猿の放った、炎を纏った拳と至近距離から放った火炎放射の連続スピードプレーで鉄蛇もノックアウトされ、残すは大きな毒ガス1匹。
「そ、そんなに強いとは……」
「とどめや!サザンドラ、流星群!!」
橙色の眩い光が三つ首の悪竜のそれぞれの口に集まり、中央の首が吐き出した大きな光球に遅れることわずか、左右の首から吐き出された二回りは小さい光球が先の光球に当たり、弾け、毒ガスに尋常じゃない量の光が降りかかった。それはもう、とんでもない威力の流星群であった。これで、オオバヤシの勝利が決定したのだ。
星の光は勝利を祝うのに相応しい位に輝いていた。


「約束やったな。ミナヅキ」
「うう……」
「マイコを元に戻してくれ」
「ワタシソンナコトイッテマセン」

バシバシバシッ!!!

往復ビンタがオオバヤシの手から放たれた。
「ふざけた口調はアカンやろうが!!!あと、勝手なことをぬかしてんちゃうぞお前!だいたいお前が」
「すみませんでした、きちんと元に戻しますので怒らないでください」
元に戻せる薬をマリオネットの口元に注ぐと、

光が眩く輝き、マイコは元の人間に戻った。

「あれ、ばーやん、何でここに?」
「お前が危なくなったから助けに来た、文句あるか?」
「ない、です……。後、そこの店主さんは?」
「すみませんでした。多分、そこの店に飾ってある商品が全て元の人間に戻るはずです」
ほどなくして商品たちはマイコ同様、人間に戻り、ミナヅキは警察に捕まった。
こうして無事に事件は解決したのだが、しばらくはマイコが1人で街を歩けなさそうだ。周りがストップさせそうだから。


おしまい


マコです。マイコちゃんにとって最大のピンチのお話でした。
最終パーティーにどんどん近づいています。
相手もなかなかのやり手でしたが、見事に粉砕しましたね。
次はお化け達を題材にした話を書こうかと考えています。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


  [No.450] その15前編 ゆうれいこわい〜恐怖の館へいざ潜入!〜 投稿者:マコ   投稿日:2011/05/18(Wed) 14:33:47   52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

今日は珍しい休日。だから、遊園地に遊びに来たマイコ達。そこに、新しく出来たというお化け屋敷があった。
その看板にはこうあった。

ゴーストポケモンによる最恐お化け屋敷!〜恐怖におののく人100%! 精神を病む人60%! ケガする人30%! 死亡者10%! アナタはこの恐怖に耐えられるか!?〜
※なお、飛行タイプのポケモンか、空を飛ぶことができるポケモン、浮遊の特性を持つポケモンを持っていない方には、入場をお断りしております。

「死亡者出たらアカンやん!!」
「最恐って書いとったら、もう入る気せえへん……」
「マイコ、別のとこ行ってからにせえへん?」
確実に入る前から恐怖感を感じている男性陣を尻目に、マイコはこう言った。
「入ろう!面白そうじゃん!!」
彼女には恐怖心はないのだろうか。でも、逆にそれでみんな腹を括ることができた。


ここにはマイコ、ハマイエ、アキヤマ、キザキの4人がいる。4人でお化け屋敷に入るのもあまりマナーとして良くないし、1人が怖がって逃げた時に、パニックが起こりやすい。そのため、ペアを組んで行くことにした。
ここで、キザキが1つの提案をした。
「マイコちゃんと一緒に行く人をインジャン(じゃんけん)で決めません?」
それに対してハマイエは、
「それええな!」
と、すぐに承諾してくれた。一方のアキヤマも、
「別に構わへんで。けど、お前が提案したってことは……」
承諾したが、後に起きそうなことを若干濁していた。
「多分大丈夫やと思いますんで!マイコちゃん、この方法でええ?」
「私は大丈夫!誰と行くにしても文句はないよ」
そして、運命の勝負である。
「「「イーンジャーン、ホイッ!!!」」」

皆さんは、「言いだしっぺの法則」というのを知っているはずである。何かをやろう、と言った人がだいたい負けることだ。
勘のいい人は何が言いたいか分かるはずである。

「ひゃっはっはっは!!!」
ハマイエはそれを見て爆笑していた。
「言わんこっちゃないで、残念やったなあ」
アキヤマは慰めの口ぶりだが、内心笑いたくてしょうがない。
「い、1発負け……しかも俺だけ……」
案の定、提案者が負ける事態になった。バトルでボロ負けしたようにへこむキザキ。彼の周りに黒いオーラが充満しているようにマイコの目には映っていた。カゲボウズが来ようものなら一瞬で彼のもとに集結しそうな勢いである。
そんな彼を尻目に、残る2人はまた勝負を再開した。
「「イーンジャーン、ホイッ!!」」


「あーあ、アカンかった……」
「でもええやないですか、アキヤマさん。5回もあいこで縺れて。俺なんか1発負けやったんですからね」
「せやなあ、あれはひどかったもんなあ」
「……」
結局、勝ち残った2人の勝負は、ハマイエに軍配が上がった。だから、負けてしまった2人がこうして先にお化け屋敷に入ることになった。マイコ達にも自分達が帰ってきたところで入るようにとは言ってある。
「けど、お前みたいに今運を使ってないやつに、後で幸運が舞い込むってことも考えられるで。過ぎたことをくよくよ言うとったらアカンから」
「ありがとうございます」
そんな会話をしつつ、2人は建物内に足を踏み入れた。
ポケモン検査もあったが、2人ともパスできた。ただ、個人情報を見られているようでいたたまれない気持ちにはなったが。


入ったところでドアが閉じられた。真っ暗だが、手には入口で渡されたチョンチーの頭のライトを模した懐中電灯、チョンチーライトがあるので視界は確保できる。
と、その時だった。

ペチャッ

「うわっ」
「何やねんこれ!?」
2人の頭に何かが触れた。思わずライトを向けると、コンニャクであることが分かった。そして、そんなベタな脅かし方をしたのは、ゴーストであった。ニヤニヤしながら奥に引っ込んでいく。懐中電灯の光は嫌いらしい。
「こんなんに引っ掛かるって何や恥ずかしいです……」
「あんな気持ち悪い感触嫌やな……こんな悪戯がしばらく続くとなると……」
2人とも初っ端から結構ダメージを負っているらしい。


そして、しばらくして、悲鳴が聞こえてきた。
「ぎゃあああっ!!!」
「ひいいいいっ!!!」
ここのお化け屋敷はゴースト以外にもゴーストタイプのポケモンがいっぱいいて、入ってきた人を脅かしたがる。
要石からいきなり体を出して人を怖がらせるミカルゲ。
標本近くに集団でいたヌケニン。
棺桶に擬態して(触ってくださいという看板がご丁寧にあった)いざ触れようとしたら顔を出すデスカーン。
ガラス張りの床を歩くと下からじっと見てくるプルリル、ブルンゲル。ピンクと青の鮮やかな体色も、今はただ怖いだけだ。しかも、歩いた後からガラスをぶち破って浮いてきたので、必死で逃げた。
でも、かわいいやつもいる。
「ぷわー」と鳴いて流れるだけのフワンテ。
脅かそうとするものの体の小ささから、あまり脅かしているようには見えないヤミラミ。
お化け屋敷にいながら何か癒されていた。


そんなこんなで、3階のフロアを歩いていると、急に髪を後ろに引っ張られた。また悪戯の模様だ。

グイッ!!!

「痛いっ!!!」
髪の毛を引っ張られたのはキザキだった。勢いよくやられたのか、まだじんじんと痛む後頭部。
「いたたたた……」
「大丈夫?お前、今日は厄日やな」
今日に限っては幸運も舞い込んできそうにないらしい。
そして、先の悪戯をしたのは夜泣きポケモンのムウマだった。ニコニコしているが、最初のゴーストとは違い、ライトを当てても逃げる様子は微塵もなかった。
促されるように足を進め、着いた部屋のドアを開けた。


そこには、沢山の日本人形があった。じっと見る目つきが怖い。
「寒気がする……」
「良くないものがいっぱい居りそうですね……」
と、次の瞬間だった。青と水色、黄色の3色の目に、赤い目が沢山。
黒いてるてる坊主に恨みの詰まったぬいぐるみ達。つまりカゲボウズとジュペッタだ。しかも其処ら中にいた。
「「うぎゃああああっ!!!!」」
最大級の悲鳴を上げて、アキヤマとキザキは全速力で逃げた。
さらに良くないことに、普通なら引っ掛からないはずのトラップが床にあり、

ガコン!!!

「「うわあああっ!!!」」

3階から真っ逆さまに落下していった……!


中編へ続く



マコです。今回は3回に分けて話を進めます。
言いだしっぺに良くないことが降りかかることは往々にしてあるようです。
落とし穴に引っ掛かったアキヤマさんとキザキくんがどうなるのか!?
そこらへんを次に書きたいと思います。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


  [No.452] 同意します〜死亡者出たらアカンやん!!〜 投稿者:ふにょん   投稿日:2011/05/19(Thu) 00:42:30   52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 お化け屋敷ですね。
 ゴーストですね。
 楽しいと思えば楽しそうですね。
 

 でも、いろいろ言わせてほしい。
 

> 「死亡者出たらアカンやん!!」
  全くもってその通りだ!
 
>精神を病む人60%! ケガする人30%! 死亡者10%!
 この時点でアウトー!

>歩いた後からガラスをぶち破って浮いてきた
 一番想像してて怖かった。ガラスの破片が刺さらないかと(見てるとこ違う

 こんなのが普通にあったらいろいろと問題が起きますよ!
 今すぐみんなで行くのです!


  [No.453] Re: 同意します〜死亡者出たらアカンやん!!〜 投稿者:マコ   投稿日:2011/05/19(Thu) 12:39:30   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

>  お化け屋敷ですね。
>  ゴーストですね。
>  楽しいと思えば楽しそうですね。

本気で怖がりの人にはただの地獄ですけれどね。
怖いゴーストタイプとかわいいゴーストタイプがいますから、かわいいやつに癒されることを念頭にしたいですね。怖がりさんには。 

>  でも、いろいろ言わせてほしい。

何でしょうか。私で良ければ、何でも聞きますよ。 

> > 「死亡者出たらアカンやん!!」
>   全くもってその通りだ!

今回のだけでなく、コメディーチックの話はツッコミ所を自分で考えながら作ってます。今回も、また、然り。
自分自身お笑いが好きなもので。でも、クオリティの低さは気にしないです。
 
> >精神を病む人60%! ケガする人30%! 死亡者10%!
>  この時点でアウトー!

それでも、行く人は絶えないんですよ。このお化け屋敷。人気ですから。それも一種の売りでしょうか……ね。

> >歩いた後からガラスをぶち破って浮いてきた
>  一番想像してて怖かった。ガラスの破片が刺さらないかと(見てるとこ違う

通り過ぎた後からガンガン浮いてくるんですよ。プルリル・ブルンゲルが。ピンクと青のクラゲみたいなポケモンが集団で追ってくる様はただの衝撃映像です。ガラスは刺さらないようにポケモン達が気を付けているのです。だから、そこではケガの発生を抑える努力をしてあります。
もちろん、通過し終えた後に従業員さんが大急ぎで修理して、また次の来訪者を待ち構えるのです。

>  こんなのが普通にあったらいろいろと問題が起きますよ!
>  今すぐみんなで行くのです!

実際だともうこんなアトラクションは営業停止ですよ。ニュースのネタにはなりそうですが。
でも、小説の世界なので、何でもアリらしいです。
中編、後編もありますので、楽しみに待っていてください!


  [No.455] その15中編 ゆうれいこわい〜助けてくれたゆうれい〜 投稿者:マコ   投稿日:2011/05/20(Fri) 12:42:28   57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「うわあああっ!!!」
このお化け屋敷、ポケモン達のねぐらということだからか、天井が結構高くなっている。だから、3階から落下するといっても、実際の高さ的には普通の建物の6階から落下しているような感じなのだ。そのため、最初に空中に浮かぶ技や能力を持つポケモンが必要だと念を押していたわけだ。10メートル以上の高さから落下して、人間は無事ではすまない。
「ゴルーグ、出て来い!!!」
アキヤマがボールから出した、パッと見はロボットのようにも見える、地面とゴーストのタイプを併せ持つゴーレムポケモンが手を伸ばし、落下を続ける2人をキャッチしたのだ!
「危なかったな、死ぬところやったわ」
「ありがとうございます……。あんな怖いトラップがあるなんて思わんかったです」
落とし穴は3階から地下まで一気に落下するシステムになっていた。ここが一番スリルを味わえると同時に、死人が出やすいスポットでもある。
「うぐっ……」
「吐き気がしそうやな。早よ出たい……」
しかも、下にはとがった骨が大量にあり、さらに猛烈な腐臭も漂っていて、とても降りられる状況ではなかった。


アキヤマはゴルーグに、キザキはフライゴンに乗って地下を進んでいると、紫の池のような水たまりがあった。色からしていかにも毒々しい。人間が入ったら溶けてしまいそうだ。ポケモンでも、この環境で平気なのは毒や鋼のタイプを持つものくらいだろう。そんな場所から、

ぬうっ

「「ぎゃあああっ!!!」」
何か出てきた。それを見た2人とも乗っているポケモンから落下しかねない勢いで絶叫してしまっていた。その正体は、ゴーストタイプでは最強の部類に入るゲンガーであった。要するに、そいつがヘドロの海から出現したわけだ。考えてみれば、ゲンガーはゴースト・毒の複合タイプ。一般には影から出てくるが、そこから出てもおかしくはない。
そして、シャドーポケモンはその悲鳴を聞くと、満足そうに影に帰還していった。


ようやく降りられそうな場所が見つかり、2人で歩いていると目の前に大きな階段が見えた。出口である。しかし、またトラップがありそうな気配がしてならない。
2人が足を踏み入れたその時だった。

ドドドドッ!!!!

沢山のヨマワル、サマヨールが襲来してきた!!どうやら、ここは、こいつらをどうにかしないと通過できないらしい。
幸いなことに、幽霊たちはライトの光が苦手な模様で、影の方向に集まる習性があるらしい。
ライトを当てて影に逃げたところを見計らってアキヤマの指示がとんだ。
「ゴルーグ、シャドーパンチ!」
その逃げ込んだ影、つまり幽霊達に向かって、ゴーレムポケモンの放った影の拳が飛んだ。的確に命中して幽霊を蹴散らす。
「レアコイル、マグネットボム!」
別方向では、キザキの指示により、コイルが3匹くっついた磁石ポケモンが小さな磁石を飛ばし、それらは幽霊の集団にくっついた。そして、彼がパチン、と指を鳴らすと、

ドオオオン!!

それらは爆発した。ポケモンの体内にも含まれる微量の鉄に反応してくっつく磁力爆弾は、先の影の拳同様に的確に敵を狙う性質があるのだ。


必中技を駆使し、何とかその場を凌ぎ切った2人。さあ出口へ、と思ったその時、
「嘘やろ、まだ来るん!?」
「諦めの悪い幽霊達や……何で……」
ヨマワルの残党が群れをなして襲いかかってきた!
と、その時だった。

影の球であるシャドーボールと10万ボルトがヨマワルを蹴散らしたのだ!
その技を放ったのは……

3階にて髪の毛を引っ張る悪戯をした、あのムウマだった!

「え、お前、助けてくれんの?」
「ここは自分に任せて、ってことなんやな」
夜泣きポケモンにその場を任せた2人は階段を上って、出口に向かった。


「はあーっ、やっと出れたー!」
「あんなお化け屋敷、二度と入りたないわー!」
「お疲れ様、2人とも大丈夫?」
「だいぶ疲れきっとるやん!大丈夫ちゃうって!」
久しぶりに見た外の景色。時間経過としては40分くらいのようだが、色んなことがありすぎて、何時間も経過したような心地だ。
「あれ、後ろに何かいるけど、まさか、連れて帰ってきたの?」
そんな時、マイコがキザキの後ろを指さして言った。
「え、マイコちゃん、後ろ?……ホンマや、何でついて来たんやろ?」
後ろにいたのは、先のムウマだった。今度は髪の毛を引っ張るなんてことはせず、おとなしくしていた。
「なんかこのムウマ、タロウちゃんに懐いてるみたいだね」
「いっそのこと、キザキ、お前がゲットすりゃええねん!」
「え、そんな、やってこいつは」
「ぐじぐじすんな!こいつついて来たがってんねん!お前がその気持ちを汲んでやらなアカンねん!分かるか!?」
(俺の周りって強引な人多いねんな……)
みんなに半ば押し切られる形で、キザキはボールを投げた。
ムウマはそれに反応し、自ら開閉スイッチを押し、ボールに吸い込まれていった。
その瞬間、ムウマはキザキのポケモンになったわけだ。
「これからもよろしくな、ムウマ!」
ボールの中の夜泣きポケモンは、心なしか喜んでいた。
「さて、次は……」
「2人の番ですね」
アキヤマとキザキが帰ってきた、ということは、マイコとハマイエが行く番である。
腹を決めた2人はお化け屋敷に足を踏み入れていった。


後編へ続く


マコです。
2人とも無事に帰還しました!
さらに仲間も増えて。最後に幸運が舞い込んできましたね。
さて、次は、マイコちゃんとハマイエくんです。
どうなるのでしょうかね……。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


  [No.457] その15後編 ゆうれいこわい〜怖がり大パニック!!〜 投稿者:マコ   投稿日:2011/05/21(Sat) 17:18:10   59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「いよいよ私達が入るんだよね。ハマイエ君、大丈夫……?」
マイコが問うも、ハマイエはお化け屋敷を見ているだけで顔色が悪くなっていた。もうこの時点から真っ青である。どうやら、お化け屋敷に向かない怖がりのようだ。
(女より悲鳴あげられたらショックだよなあ、そのうちこの人泣くかも……、ここは私がしっかりしなきゃ!)
マイコはそう、心の中で思っていた。


そして、ポケモン検査もパスし、入った直後である。

ペチャッ

「うぎゃあああっ!!」
(早い早い早い!!!)
ハマイエの悲鳴とマイコの心の中のツッコミが炸裂するのはほぼ同時だった。ゴーストによるコンニャクの悪戯だが、怖がりの恐怖心を煽るにはこれで十分らしい。
「も、もう嫌や……」
「まだまだ序盤だよ。ここでへこたれてどうすんの?」
先程入っていたアキヤマとキザキも、この時点ではへこみこそすれど、悲鳴まではあげていなかったはずだ。相当序盤から堪えているらしい。


「いやあああっ!!」
「ぎゃああああああっ!!!!」
その後は多少お化けに耐性のあるマイコでも、さすがにこのお化け屋敷のクオリティには悲鳴をあげていた。しかし、彼女以上に男性であるハマイエの方が悲鳴のボリュームも回数も多かった。
こんな人と一緒に行くマイコがちょっとかわいそうである。
さらにはフワンテやヤミラミにも怯える始末だ。
「この子達はかわいいんだよ、大丈夫だから」と触ってみるように促しても、ただビビるのみで、もはやペアを組むというよりは介護のような状態だった。
マイコも正直、げんなりとしていた。ハマイエのお化け嫌いは、結構、重症らしい。


色々なトラップを抜けた先の、日本人形の部屋は何だか寒気がした。人形の瞳が怖い。でも、それ以上に周りのカラフルな目の方がもっと怖い。気のせいか、この集団カゲボウズおよびジュペッタは何やら恍惚とした表情を浮かべているようでもあった。怖がる気持ちも、ぬいぐるみ達にとっては良い餌のようだ。
そして、一歩足を部屋の外に出すと、

ガコン!!!

「きゃあああっ!!」
「うぎゃああああああっ!!!」
案の定だった。落下してしまったのだ!


下はやはり骨だったのだが、何とかマイコはウォーグルにつかまり、事なきを得ていた。ハマイエは奇妙な形のエスパーと飛行のタイプを併せ持つポケモン、シンボラーにつかまっていた。どちらも無事らしい。
(落とし穴なんてもうやだ……)
そうマイコが思っていたときだった。

ぬうっ

「ぎゃあああああっ!!!!」
「いやあっ!!」
先も出てきたゲンガーだった。案の定というか、なんというか、ハマイエは大絶叫していた。マイコにとっても怖かったはずだが、カゲボウズ・ジュペッタのエリアに比べると、まだマシだったようだ。そう大きい悲鳴を上げることはなかった。


そして、ヨマワルとサマヨールの大軍勢を相手にしているときに、マイコはあることに気付いた。
ハマイエが出していたのは、サマヨールの進化した姿、ヨノワールだったのだが、彼は指示というものをしていなかった、というより、できないと言った方が正しいだろう。それでも、ヨノワール自体の実力は高く、1匹だけで幽霊の大群を打ちのめすほどであった。
(どうして……?)
お化け嫌いが幽霊のポケモンを持つこと自体驚くべきことなので、マイコにはそれが不思議でしょうがなかった。
しかし、そんな疑問は後でも聞ける。今は目の前のバトルに集中するのが先決だ。
「フシギソウ、マジカルリーフの後に眠り粉を発射して、ラクライは電撃波!」


相手にした数がさすがに多かったのか、ラクライもフシギソウも、それぞれライボルトとフシギバナに最終進化を遂げていた。
「ありがとう、そして、おめでとう、ライボルト、フシギバナ」
2人ともポケモン達をねぎらい、歩き出そうとした、その時だった。

何かハマイエの様子がおかしい。ガタガタと震えている。

「どうしたの、ハマイエく……」
マイコの言葉は最後まで行く前に遮られた。そして次の瞬間、

ぐわん!!!

「きゃあああああっ!!!!」
彼は襲いかかってきたのだ!
「どうして、どうして……!?」
どうも、何かに取り憑かれているらしい。操られているように、的確にマイコを狙ってくる。
攻撃をぎりぎりで避けながら、どうすればいいか彼女は考えた。
(このままじゃ危ない。こうなったら……)
考えた末にマイコはボールを放り投げ、夢喰いポケモンを出し、指示を飛ばした。
「ムンナ、催眠術!!!」
夢喰いポケモンの目が青く光ったかと思うと、ふらりと青年は倒れこみ……


「はあ、はあ、もう、いやだ……こんなアトラクション……」
「マイコちゃん、その様子やったら俺らより大変な目に遭ったみたいやね」
「とりあえず、座って休もうや。こっちの寝てるやつが起きたら、色々聞かなアカンからな」
結局、マイコはハマイエを眠らせた後、ムンナのサイコキネシスで浮遊させて連れ帰ってきたという。時間にして1時間半。アキヤマとキザキの倍はかかっている。
「う、うーん……」
ここでようやくハマイエが目を覚ました。そこで3人は彼に質問を行うことにした。
「おはようございますハマイエさん。ここどこか分かります?」
「え、えーと……お化け屋敷の外?」
「正解。次の質問行くで。自分自身は誰か分かるか?」
「俺はハマイエ リュウイチやけど、大丈夫?」
「当たり。じゃあ、最後の質問。地下で私に何をしたか覚えてる?」
「……覚えてない、です……」
「私を殺す気で襲ってきてたんだよ。怖かったんだからね!」
「……!!!すみませんでしたーっ!!!」
このことは彼のトラウマとして、頭に深く刻まれることだろう。
そしてマイコは思った。
ハマイエのお化け嫌いを治すとともに、ヨノワールにも指示を飛ばせるようにしないと、と。


おしまい


マコです。3回のお話、ようやく完結。
極度の怖がり、ハマイエくんと一緒にお化け屋敷に入ったマイコちゃんの心情。
ご察しします。ご愁傷様です。
さて次回は、あくまでも予定ですが、別スレを立てて特別編をしてみようじゃないか、と。
前に言ってたジラーチのお話。
7〜8話くらいになりそうなので、私のある種の挑戦ですね。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


  [No.508] その16 2人の男を救い出せ! 投稿者:マコ   投稿日:2011/06/07(Tue) 18:58:56   52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ここは、破れた世界。この世とは正反対の場所にある、ということで、別称は「反転世界」となっている。
そして、本来、ここに住んでいるのは、霊竜ギラティナだけのはずだ。なのに、
「いってえなあ、ここは一体どこなんだ」
「何か、地面が天にあるようで、いろいろと分からない場所みたいだね」
男が2人、迷い込んでいた。


彼らはマイコ達とともに、田舎にあるロケット団のアジトに潜入しようとした、テレビクルーのモリシマとカザマだ。アジトの映像を撮るために、ロケット団を次々蹴散らすマイコ、オオバヤシ、トキ、ハマイエの4人を見捨て、2人だけで先に進んだところ、トライ・バリア・キャノンの罠にかかり、肉体を失ってしまった。(その11前後編参照)
アジトでの戦いで活躍したポケモン達は、今はもう、手元にいない。楽園にでも行ってしまったのだろうか。
そして、彼らは今、どちらかと言うとあの世側の場所にいる。そんな彼らの前に、
《どうしたのだ、2人の男よ》
ギラティナが姿を現した。


「ギ、ギラティナ……」
「生で見るのは初めてですね」
「ちくしょう、カメラさえあれば……」
伝説と謳われるポケモンが目の前にいる。しかし、それを写真に収められないのが悔しくてしょうがない2人。その様子を見た霊竜は、こうボソリ、と呟いた。
《我なんかを写して、得はないだろうに、なぜ彼らはこうも拘る?》
そして、ギラティナはこう言った。
《お前達はなぜ、ここに来たのか?》
それに対し、2人は答えた。
「ロケット団とかいう奴に、訳の分かんねえ機械で飛ばされたんだよ!」
「同行した人達の助けを断ってしまったことで、僕達はここに飛ばされました。助けようとした彼らはひょっとしたら、僕達を助けられなかったことを後悔してしまっているかもしれません……」
このことを聞き、反骨ポケモンは言った。
《では、その彼らに会いに行かせてあげようではないか。》
「「本当ですか!?」」
《但し、条件がある。お前達はもう、現実の世で生きるための体を持たない。そして、我にはこの破れた世界に迷い込んだ人間の一時的な蘇りをサポートする役目を持つが……、体がないのは痛い。そこで、だ。ポケモンの姿を貸してあげようではないか。》
ギラティナとしても、本当は人間の姿で帰してあげたかったのだが、仮の体を与えるしか方法はなかったのだ。もっとも、そのタイムリミットが来た暁には、彼らを死者の楽園、つまり、天国に成仏させるという約束はしてある。
そして、2人は眩しい光に包まれ、この世に行ったのだ……。


同じ頃、オオサカのある劇場の一室。
2人の青年、オオバヤシとトキが部屋に入ると、そこには手招きポケモン・サマヨールが1匹、もの言わずそこにいた。このポケモン、先程まではいなかったのだが、気がつくと存在していたのだ。それを見て、戸惑う2人。
「さっきまで……おらんかったはず、ですよね?」
「どっかから入ってきた?こいつはゴーストタイプやし、壁をすり抜けるとか平気でやりかねんからな……」
そう話しこんでいると、

ゴオオオオッ!!!

「体が浮いてるっ!?」
「アカン、あいつに、吸われるっ!!!」
手招きポケモンが口と思われる場所を開け、とんでもない吸引力をもって2人を吸い込んだのだ!!!
「「うわあああああっ!!!!」」


「おい、トキ、お前、大丈夫か?」
「お、オオバヤシ、さん……?」
「良かった……。意識はあるみたいやな。それにしても、周りが真っ暗で自分の周りぐらいしか分からへん」
サマヨールの中の空間は、ただただ真っ黒い世界になっていた。しかし、幸い、2人とも近くに倒れていたために、お互いを認識するのに時間はかからなかった。
どこに続くかも分からない空間に、しかし、明かりのようなものが2人の目に入った。それは、人間の形をしていた。しかも、2人の知り合いの人。
「モリシマさんに、カザマさん?」
「やとしても、うまく出来すぎていて怪しいで。あんまり触るな……」
オオバヤシが注意した、その時だった。

ズボズボッ

「言うた傍から引っこ抜くな!!!」
何か抜けた音がして、オオバヤシが音の方向を向くと、トキがその人型の明かりを両方とも引っこ抜いていた。当然ながら、オオバヤシは怒り、無意識のうちに叫んでいた。
2人は知らなかったのだが、このサマヨールこそ、モリシマとカザマがギラティナから与えられたポケモンなのだ。彼ら2人を一緒にして1匹のゴーストポケモンにした、というのがギラティナのしたことなのである。


明かりは人の形(それでも足がないのだが)をとり、オオバヤシとトキの周りをぐるぐる、浮遊しながら回っていた。
「お前ら、よく気付いたな!」
「ただの偶然だったんですけど、ね」
「オオバヤシが『引っこ抜くな』って言ったのを聞いて、むしろ引っこ抜いた方がいいのに、とか言いたかったけれど」
「……俺の判断ミスってことやな。無駄に怒ってもうたなあ」
「いや、いいんですよ。俺の方が実際、アカンことしてもうてるから」
話し込んでいると、カザマがあることに気付いた。
「オオバヤシ、トキ、いいかな?」
「はい」
「何でしょう?」
「どうやって出るのかな?僕らはともかく、2人はここにいちゃいけないんじゃないかな?」
「「……」」
全くそのことについては考えていなかった。しばらくの間考えた結果、オオバヤシが出した案はこうだ。
「……サマヨールが傷つくことを承知するなら、尖った物質……例えば、ストーンエッジとか……をぶつけて、穴を広げて出る、というのは?」
それを聞き、モリシマが言った。
「いいぜ」
「モリシマ君!?正気か、キミは!!」
あまりにも潔い快諾ぶりに、カザマは驚き、詰め寄った。
「何故だよ」
「僕達がいられなくなるということだ!分かって言っているのかい!?」
「未来あるこいつらをここで潰すより、もう既に死んでいる俺らが潰れる方がまだマシなんじゃあねえのか?」
「……仕方ないね。2人のために、ここは僕達が引こうか」
そして、オオバヤシとトキは、作戦実行のためのポケモンを出した。


「……トキ、野暮なこと聞いてええか?」
「何か文句があるんなら聞きますよ」
「コジョフーはサマヨールを突破できそうな技を持ってるんか?」
ストーンエッジで突破しようということになってそれぞれが繰り出したのは、アーケンとコジョフー。岩技を覚えそうになさそうなコジョフーを見て、オオバヤシは思わず、トキにこう聞いていた。
「大丈夫です。格闘のポケモンは、大体岩タイプの技を使えるんです。こいつも例外ちゃいますから」
「……分かった」
そして、作戦は実行された。
「アーケン!」
「コジョフー!」
「「ストーンエッジ!!」」
最古鳥と子オコジョから出てきた鋭い石のかけらが飛んでいき、穴を穿っていった。しかし、穴の開く面積が小さい。
「思ったより開いてない……」
「このままじゃ、2匹の方がへばってまう……どうすれば……」
と、その時だった。アーケンとコジョフーが光り出したのだ!
「進化するんやな!」
「タイミングがぴったりや。これなら、威力も上がるかも、な」
それによって、最古鳥のアーケンが、飛行能力を得たアーケオスに、子オコジョのコジョフーが、紫色の毛皮のオコジョ、コジョンドへと進化したのだ!!
「じゃあ、改めて!アーケオス!」
「コジョンド!!」
「「ストーンエッジ!!!」」
進化のパワーはやはり絶大で、穴が猛スピードで開いていった。そして、男性2人が通れるくらい開いたところで、2人はポケモンを戻し、走った。
「モリシマさんも、カザマさんも、ついて来て下さい!」
「いいんだ!俺らは」
「俺らの我が儘かもしれませんけど……とにかく!来て下さい!出ましょう!」
2人は走り、しばらく振りの元の世界に出た。



……が。
「ちょっと、どーしたの、2人ともっ!?……きゃあああっ!!!」
穴の開く先までは調節できなかったようだ。マイコに降ってくる形となった。

ドッスーーーン!!!

「いててて……」
「ああ、やってもうた……」
「あ、あの、さ……重い」
マイコがオオバヤシとトキの下敷きになっている状態だ。本当はマイコもムシャーナを出して何とかギリギリで止めようとか思っていたが、若干間に合わずにこうなってしまった。


「分かった。2人とも何か大変だったのはこっちも理解したから。……頭上に降ってくるのはどうにかしてほしいなあ」
「「ごめん」」
そんな3人を見て、モリシマとカザマは言った。
「こいつら、吹っ切れているみたいだな」
「安心して成仏できるよ。サマヨールも元の場所に帰って行ったし」
彼らには、どうやらもう、心配すべき部分は、モリシマとカザマが見る分にはないらしい。ただ、これから起こる、ある大きな戦いのことだけが不安だった。


ロケット団は下火になったが、日本の政治の中枢地が、プラズマ団という巨悪に蝕まれつつあること、そして、近いうちに、ここにいる彼らがその巨悪と戦わなければならないということを……。


おしまい


マコです。
何とか事態を収めることに成功したオオバヤシさんとトキくん。
マイコちゃんの頭上に降ってきたことだけは予定外だったらしいですが。
最後の文は、近いうちに書くであろうポケリア第2部(仮)の予告です。
ということは、トウキョウで……?
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


  [No.522] その17 大きさパニック! 投稿者:マコ   投稿日:2011/06/10(Fri) 14:22:34   51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ある日のことです。オオサカ中に、「パートナーのポケモンの大きさがおかしくなる」煙がばらまかれました。
そして、例外なく、マイコ達のパートナーもその被害に遭ってしまったのです……。

※(1)〜(7)まではパートナー目線で、最後の(8)のみは全員集合の形でお送りします。


(1)エンブオーの場合
ボクの朝はマスターの悲鳴から始まった。
「どーしたのっエンブオー!!!大きすぎるよ!!」
……ボクの本当の大きさは、そこにいるマスター……マイコさんよりも少し低いくらいなんだ。だけど、今は、何故か、ボクの方が、やたらと大きい。
マスターが小さく見える。
仕方がないから、ボクはマスターを腕でなでてあげた。
「エンブオー!?」
なかなかできないよこんなこと。普通はマスターからなでられる方が多いから。
「そういえば、私、エンブオーに、こうされたことってない、なあ」
そういえば、マスターの家に来てから、ボクはマスターにかわいがられてきた、って思えるようになったんだ。仲間もいっぱい増えたし。マスターは優しくていい人。
……でも、大きさだけは、戻りたいなあ。
これじゃあ落ち着けないよ。


(2)デンチュラの場合
ある朝、ボクが起きてみると、何か周りのものが大きく見えた。
ボクが進化する前、うん、ちょうどバチュルの頃の目線くらいかな。っていっても、ボク達デンチュラは人間の大人の半分もいかない大きさにしかならないけれど。
……あ、ケンジさんの手だ。たくましくて、おっきいなあ。そういえば、進化する前は乗っていたんだよね。この手に、よく。懐かしいなあ。
「何か、えらいちっさくなったなあ、デンチュラ……」
あれあれ、ケンジさん、呆れちゃってるなあ。
だから、ボクは、自分が乗っている手に、足先をトントン、と打ち付けて、大丈夫だよ、って伝えたんだ。
「……大丈夫、ってことか、お前が言うんなら、そうやなあ、……分かった。俺も、あんまり、心配せえへんようにしとくわ」
良かった、伝わった。たぶん、大丈夫だよ。きっと戻るはずだから。


(3)エルフーンの場合
もこもこ、もこもこ。
おいらの体は、たっぷりの綿で覆われてるんだ。
もこもこ、ふわふわ。これは相手をジャマすることもできるし、攻撃を防ぐクッションにもなるんだ!
「……うーん……」
あ、リュウイチが起きたみたいだ。おはよう、リュウイチ!
「……エルフーン……、……!?」
どうしたの、そんなジロジロ見て、おいら、何かおかしいところでもあるのか?
「お前、そんなでかかったか?」
え!?そうだったのか!?おいら気づかなかった……。
「やってそうや。お前は確か、俺よりずいぶんとちっさかったはずやで。今、俺と目線変わらへんもん」
あ、本当だ。今気づいたけど、周りが白いなあ。……ってことは……、
「部屋にいっぱい綿が散らばってる……。こりゃあ掃除せなアカンなあ」
そう言うリュウイチだけど、顔がちょっとにやついてた。悪くはないよ。こういうことも。


(4)シャンデラの場合
「うっわー……、シャンデラ、お前、デカなったなあ……」
マスター……つまり、トキさんがボクに闇の石を使って、ボクが進化したちょうど、次の日。
ものすごく大きくなった。
本当は、マスターの大きさの、半分強ってところなんだけど、何があったんだろう?
今のボクの大きさといえば、マスターの倍の大きさだ。だけど、マスターだって小さくないから、かなり大きくなっていることが分かると思う。
でも、マスターはこういうところには、意外と呑気って感じだからねえ。そこまで頭を抱えてうーん、うーん、ってくよくよしてはいないんだ。
だってさ、さっきも、ボクに、
「ここまでデカかったら、俺を乗せて飛べるんちゃう?」
とか言っていたからね。
ちょっと子供っぽいけど、ボクはそんなマスター、嫌いじゃないよ。


(5)ドレディアの場合
あわわ、わたし、どうすればいいのでしょうか?
夕べ、マスターと一緒に寝て、起きてみると、何だか周りが大きく見えているんです。マスターの家のものがみんな、わたしより大きくて。
チュリネのころよりも、更に小さくなって……
どうしましょう……。
「ああっ、ドレディア!泣かんとってや!」
ああ、わたし、マスターを困らせてしまいました……。マスターにまで心配をかけるわたしって、どうしようもなくて、情けなくて……。
でも、そんなわたしを見て、マスター……カワニシさんは、こう言いました。
「ドレディア、俺の手の上に乗ってや」
わたしは言われるままに、彼の手の上に乗りました。
「俺も正直、何でこうなったんやろってビックリしてる。けど、ドレディアが泣くことなんてないから、大丈夫」
彼はそう言うと、わたしの頭をなでてくれました。
わたしの目からは、さっきまでとは違う意味の、雫がこぼれていました。


(6)ジャローダの場合
ワタシを見て、マスターはキョトンとしています。
目を数度、瞬きさせ、こう言いました。
「これって……夢なんか?ジャローダ……めっちゃデカいねんけど」
元々、ワタシみたいなジャローダという種族は、人間よりももっと大きくなるポケモンなのです。ですが、今、ワタシの体は、マスターであるアキヤマさんを遥かに超えるほど大きくなってしまいました。
これでは、マスターに触れ合うこともできません。もし、ワタシがマスターを潰してしまったら、っていうことも十分、考えられます。
でも、その心配は、杞憂のようでした。マスターから近寄ってきたからです。
「ジャローダ、頭を向けて」
言われた通りに頭だけ向けると、マスターがなでてくれました。
「そっちが近寄れへんのなら、俺が近づけばええってことやんか。心配することなんてないで」
マスターの言葉には、説得力があって、ワタシの方が何だか励まされました。


(7)ダイケンキの場合
わたくし達は、主人のために、忠義を尽くしていかなければならないのです。そのために、主人のそばにいて、お守りしなければならないのです、が……。
「ダイケンキ!?お前ちっさいで!!」
主人であるキザキ様が慌てるほどに、わたくしは今、かなり切迫した状況におかれている次第なのであります。
何しろ、人形とも呼べるほどに小さくなっているのですから、慌てないはずがないのです。本来ならば、主人よりもわたくしの方が大きいのですから。
そんな中で、主人はわたくしのところに手を伸ばし、わたくしを手のひらに乗せました。恐れ多くて、主人のお顔を見ることができないのですが、主人はこう言って下さいました。
「ダイケンキ、僕の顔を見てほしい。……僕やって、正直、ちょっとどころやなくパニクッてんねんけど、……、上手く言葉が出えへんけど……、とにかく、大丈夫やから!」
言葉が多少拙くしか出てこなくても、わたくしにとっては大事な、一生をかけてお守り通さねばならない主人なのです。そう言って下さるだけで、わたくしにとってはありがたいのです。


(8)みんな集まって。
7人全員が連絡を取り合い、近くの空き地に集まった。
「完全に、最初に届いたポケモンだけが大きさがおかしいってことなんだね」
被害状況は、ポケモンを見れば一目瞭然、って言う訳で、全員がパートナーをそれぞれ、繰り出した。
「私のエンブオーは見ての通り、大きいの」
「デンチュラはここにおるで。小さくなっとる」
「エルフーンはこっちに。デカいで」
「シャンデラは頭上におる。こっちもデカいねん」
「ドレディアはここに。手のひらに乗ってるで」
「ジャローダはここ。デカなってるから」
「ダイケンキは手の上におりますから、小さいです」
メチャクチャな状態であるのを確認したところに、1人の白衣を着た男が来た。
「すみませんでしたーっ!!!」
彼は膝から滑り込むように土下座をしていた。
「あの、顔を上げて下さい。あなたは……」
マイコが聞くと、男はブルブル震えながら答えた。
「ぼ、ぼ、僕は……、けん、きゅう、い、ん、を、して、おり、まして……、実は、昨晩に、煙、を、ばらまいて、しまったん、です」
「せめて落ち着いて喋ろうや」
「です、から……それ、を、解決、する、薬、を、持って、来ました……」
その大瓶には、「オオキサナオール〜肥大も矮小もこれでバッチリ標準に!〜」とあった。
全員が心の中でこう思った。
(うっわー、胡散臭い……)
しかし、これしか頼れそうな方法はなかった。そのため、ポケモン達に与えた。


すると、みんな元の大きさに戻った。
「それじゃあこれでさよな……」
『待って』
研究員はとんずらを仕掛けようとしたが、7人とも止めた。
「逃げようっていう虫のよい考えをしないでほしいんだ」
そうマイコが言うと、
「じゃあ僕のことを全力で攻撃していいよ。なんてったって僕、すっごくマゾだから」
そのとんでもない告白に全員顔面蒼白だった。
「こいつ、ある意味潔いな……」
「自分でドMって言われへんで」
「じゃあさ、やる?攻撃……」
あまり気は乗らないが、全力で攻撃を行うことにした。
「デンチュラ!雷!!」
「エルフーン!エナジーボール!!」
「ドレディア!花びらの舞!!」
「シャンデラ!オーバーヒート!!」
「ジャローダ!ハードプラント!!」
「ダイケンキ!ハイドロカノン!!」
「エンブオー!ブラストバーン!!」
7種の攻撃(そのうち3種は究極技)を受け、研究員は吹っ飛んでいった……。
とりあえず、1日だけで、猛烈な疲労感に襲われた7人であった。


おしまい


マコです。
ポケリア第1部は一応、ここでおしまいということにします。
第2部「ポケリア+(プラス)!」をこれから、作成しようかな、と思っています。
今度は、全編シリアスチックになりそうです。今回出てきた7人が、新たな悪に立ち向かう、そんなストーリーにしようかな、と思っています。
楽しみに待っていて下さい!
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


  [No.531] 遅くなってすいませぬ!  投稿者:ふにょん   投稿日:2011/06/14(Tue) 16:27:07   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 遅くなってすいませぬ!
 一部完結、お疲れ様です!

> マコです。
 ふにょんです。
> ポケリア第1部は一応、ここでおしまいということにします。
 お疲れ様です。 結構な長さになりましたね……
> 第2部「ポケリア+(プラス)!」をこれから、作成しようかな、と思っています。
 もう投稿なされてましたね。さすが、お仕事が早い。
> 今度は、全編シリアスチックになりそうです。今回出てきた7人が、新たな悪に立ち向かう、そんなストーリーにしようかな、と思っています。
 少しはギャグ的雰囲気も(ry いえ、何でもござりませぬ。
> 楽しみに待っていて下さい!
 言われなくとも楽しみに待っておりまずよー
 
 続きのほうも、北石照代……じゃなくて、期待してます!