某月某日、日本のどこか、の朝。
そこで1人暮らしをする大学生、サカモト マイコが目を覚ますと、小包が1個、枕元にあった。
差出人は不明である。
マイコは気になり、包装を破り、中身を見た。
そこには、マンガやアニメ、ゲームでも何度も見たことがあるモンスターボールがあった。
「・・・なんでこれ?オモチャ?私もう20歳のはずなんだけど・・・。」
さらに、紙が1枚はさんであったので、マイコは確認した。
「どれどれ・・・『中身は自分で確認してね!』・・・開けるとこはどこ?」
仕方がないので真ん中のボタンみたいなところを押してみた。
すると、ボールが開き、中から光とともに、体の大部分がオレンジ色の子豚(?)が出てきた。
マイコはそれに、明らかな見覚えがあった。
「・・・ポカブ?」
そいつは確かにポカブであった。
「でも、なんで私のところに・・・?」
そんなことを思っていると、
「カブーーー!!!」
ドカッ
「痛っ」
ポカブが真っ直ぐ突撃し、マイコのお腹に刺さる形になった。ポカブは10キロくらいあるので、ぶつかってくるとマイコでなくとも痛がるだろう。これ以上ぶつかってくると体が持たないし、それ以上に炎を吐く可能性もあるので、ポカブにもご飯をあげることにした。
「何あげればいいんだろう・・・ってあれ?あったっけ?」
ポケモン用のご飯があった。食べさせるとポカブはご機嫌になったのでマイコとしてはよいのだが、10キロもあるので重い。エサもポケモンも10キロあるとは、女子には酷な話だ。
「これって、私だけなのかなあ・・・?」
ふと疑問に思ったマイコは、年上の友人たちがいる、とある劇場に足を運ぶことにした。
ポカブをボールに戻し(案外素直に戻ってくれた)、自転車を走らせる。なんだか若干スピードが速い気がするが、まさかポカブがニトロチャージを行っているのだろうか。
そして、見慣れたはずの町には、すっかりポケモンがあふれていた。
(みんな平然としてる・・・!)
マイコは頭を抱えた。ふと見えた電光スクリーンにはニュースが流れた。しかし、それは「未確認生物大量発生!」なんかではなく、日本の総理の不甲斐なさを批判する、いつもの変わりないニュースであった。
時間があっという間に感じられるほどの自転車での道のりを走破し、ようやく劇場に到着したマイコはみんながいるドアを開けた。
開けたその場所には、小さな黄色蜘蛛がいた。マイコが気づかずに通ろうとすると、怒鳴り声がした。
「マイコ!!踏むなや!!」
黄色蜘蛛は怒鳴ったイケメン、しかし足がなんだか短い青年のところにそそそ、と行った。しかも手に乗り、最終的に肩まで登ってきた。
「まったく・・・、危ないやんか、気づかれにくいもんなんやな。」
「あのさ・・・、ばーやん、そういうの、注意払っといたほうがいいよ・・・。」
ばーやん、とマイコに呼ばれた青年、オオバヤシ ケンジはこう言った。
「たぶん、こいつはみんなに挨拶したがってるんちゃうかなって思うねん。」
「バチュルは10センチぐらいでかなり小さいから、そのやり方いいかどうか分かんないけど・・・。いつか踏まれそうだし。」
「・・・こいつ、バチュルって言うんか。」
「ひょっとして、じゃなくても、バチュルはばーやんのところに来たんだね。まさか、ボールを開けた時点で気付かなかったとか」
「ナメとんのかお前。」
「・・・すいません。まさか、ほかのみんなのところにもポケモンが届いているのかな。」
「みんな持っとるって話やけど。お前はどうやねん。」
「私のところにも来たよ。」
「そうなんや。・・・そういや、お前運が良かったな。」
「なんで?」
「バチュルの蜘蛛の糸に引っ掛かったやつがおってん。しかも糸から電気もくらっとったし。傑作やったわ。あっはっは!」
(エレキネットくらった人いるのか。それこそ危険なのに。あと、ばーやんじゃないのは確かだね。すごく爆笑してるし。)
マイコはその気の毒な人に心の中で合掌した。
ふと周りを見渡すと、いろんなポケモンを持っているみんながいた。ツタージャ、ミジュマル、ヨーテリー、ヒトモシ、オタマロ、チュリネ、シビシラス、モンメン、ランクルスまでいる!ただ、進化後のポケモンは極端に少なかった。
「マイコ、大学はどうしてん、サボりなん?」
「サボるわけないじゃん。昼からだよ。」
「一緒に大学行ってええ?」
「恥ずかしいし、怪しいからダメ!!」
こうして、なんでもない話をしながら、昼になり、みんなと別れて大学に行ってみると、キャンパス内にもポケモンがうようよいて、頭を抱えることになるのは、また別の話。
おしまい?
マコです。実際ポケモンが私たちの世界にいたら、こんな騒ぎじゃ済まないでしょうけど。けれど、絶対楽しいことにはなりそうです。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】