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  [No.340] 【作品集】居酒屋あつあつおでん 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/05/02(Mon) 22:39:12   45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

以前の投稿の一部が吹っ飛んだみたいなので、念のため残しておきます。掲載するのは消失した作品、サイト改築前に投稿した作品の一部となります。


  [No.342] はじめての100連勝 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/05/02(Mon) 22:41:08   63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


「そんな理不尽な!」

 私は今、プラットホームで途方に暮れている。そりゃ、こんな地下鉄があったら誰だって途方に暮れるはずだ。

 事の発端は先週、友人が結婚式をやるから来てほしいと電話してきたのが始まりだ。私も奴も昔はバトルばっかりやっていたのに、奴が先に結婚するのは気に食わなかったが、行くことにした。

 式場はイッシュという地方のソウリュウシティらしい。なんでも新婦に縁ある土地だそうだ。私はカントー在住だが、せっかくなら観光もしようと、式の前日にライモンシティという街へ行った。

 問題はそこからだ。翌朝、始発で余裕を持って行こうとギアステーションにやってきた私は、ある駅員に尋ねた。

「すいません、ソウリュウシティ行きの列車はどの乗り場から乗れますか?」

「ソウリュウ行きですか?あそこはちょっと大変ですよ」

「大変?どういう意味ですか?」

「いやね、ソウリュウシティにはスーパーシングルトレインという列車で行くんだけど、その駅はここから15番目にあるんだ。で、1つの駅に行くために7人のトレーナーを倒さないといけない。しかも途中で負けたら1からやり直し。ソウリュウシティの駅は15番目にあるから、105連勝する必要があるんだよ」

 ここまで聞いた私の口は、やる気のない自動ドアのように開いていた。なんだこの適当さは。

「ちょっと待ってください。仮にも公共交通機関がこんなので大丈夫なんですか?」

「その点は大丈夫です。広告収入とイベント開催で結構潤ってますから」

 そうじゃない。私は経営の話をしたわけではない。



 とはいえ、ここから歩きだと間に合わない。何としても時間までに到着しなければ。私は急いでパソコンから3匹のポケモンを引き取り、始発に駆け込み乗車した。良い大人は真似するなよ、周りの目線が辛いからな。

 さて、いよいよ長旅の始まりだ。実を言うと、私はこの手の施設で100連勝などしたことない。いわゆる先制の爪大爆発3連続はトラウマだ。間に合うだろうか。

 まずは肩慣らしに21試合して、3つ目の駅に。何だかタイプが偏ってやがる。非常にやりやすい。まだまだ人は多いなか、おじいさんからポイントアップをもらった。世知辛いカントーでは考えられないことだ。

 そこからさらに21試合、6つ目の駅に到着。大分人が減ってきた。明らかにトレーナー達の目の色が違う。まあ、影分身やら先制の爪を惜しげもなく使われたらこうもなるよな。私も若い頃は……といっても、私は今でも若いはずだ。若いと思う。若いかもしれない。若いと思いたい。

 そして49試合目。サブウェイマスターなる者が出てきた。簡単に言えば車掌。それなりに強いのだろうが、他の乗客から使用ポケモンを聞いていたからそうでもなかった。こういうボスは、使うポケモンがばれているから辛いよな。

 約半分の7つ目の駅に到着し、ふと上を見上げると、時計はお昼を指していた。始発が5時だったから、はや7時間。さすがに足が辛い。タワーなんかと違って、足元の揺れがあるから、普段以上に疲れる。私は休憩がてら、立ち食いそば屋に立ち寄りきつねうどんを食べた。スープ美味すぎだろ、これ。うっかり友人への土産に冷凍したものを買ってしまった。

 気を取り直してバトル再開。21試合を腹ごなしにやって、ようやく70勝、10番目の駅に到着。何だかさっきより出るポケモンが弱い気がする。伝説のポケモンも出ない。ちなみに、この駅にいたのは私以外に1人だけだった。よほど暇なのだろうか、あるいは私と同じ目的か。いや、それはないな。

 あと35勝なのだが、ここからが大変だった。79試合目のマタドガスに手も足も出なくなって、交代しまくって眠るのPPを切らせた。88試合目のケッキングのギガインパクトは辛うじて外れ、逃げ切りに成功。93試合目はハピナスの小さくなるに悩まされたり、99試合目に至っては理不尽な麻痺を何度も経験した。しかし、遂に100試合目。

 相手の初手はボルトロス。こちらはシャワーズだから、ガブリアスに交代。そのままげきりんでノックアウト。

 続いてレジアイス。げきりんで7割ほど削ったが、冷凍ビームでダウン。2番手のヘラクロスのインファイトでとどめ。

 最後はトルネロス。ぼうふうを耐えるものの、まさかの混乱。しかし何とかストーンエッジが決まった。次の攻撃でやられたが、最後はシャワーズで締めた。

 ――初めての100連勝か、長かったなぁ。まさかこんな形で実現するとは。思えば……あれ、何でこんなに頑張ってたんだっけ?

 100連勝の余韻に浸る間もなくさらに5試合、何とかソウリュウシティの駅にたどり着いた。時間は午後5時半。実に半日もバトルをやっていたのか、もう足がガクガクだ。そんな中、暇そうなビジネスマンからサンという木の実を2つもらった。これ確か、かなり珍しい木の実だったような。

 プラットホームから地上に出た私を、暮れなずむ夕日が出迎えた。空気がうまい。風が心地よい。こういうものは、地下にはなかったよなあ。やっぱり地上が1番だ!私は大きく伸びをすると、手土産片手に式場へ歩きだした。




 翌日、激しい筋肉痛に悩まされたのは言うまでもない。



先日のチャット会の途中、冗談半分で始めたら、1回目でまさかの100連勝達成してしまったので(現在15周の105連勝)、書いてみました。バトルサブウェイのような延々バトルばかりの話を書くのは難しいです。連載中の話のテーマはバトルなのに……。やっつけ仕事の結果がこれだよ!ちなみに、サンの実は1個ずつしかもらえません。あしからず。


  [No.343] しんかのきせき前編 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/05/02(Mon) 22:45:07   48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



 昔々、世界のどこかにあるというカントー地方に、鳥ポケモンがたくさん暮らす森がありました。いつでもひざしがさしこみ、おいしい水がながれているこの森は、それはそれはにぎやかだったそうです。これは、その森にすむ、1匹のポケモンのお話。




「お、そこにいるのは……アッカ先輩じゃないっすかww」

「う、なんだよドードリオ」

 ある日のおひるさがり、ドードリオ(31)とカモネギのアッカ(24)がばったり出会いました。アッカはドードリオの先輩でしたが、後輩より弱かったのです。

「この前はこだわりスカーフ持ってても僕より遅かったっすけど、少しは速くなったっすかw?」

「それが……僕は弱いから、勝てずに経験値がたまらず、レベルアップできないんだ」

「そうっすかそうっすか、まあそんなことだろうと思ったっすけどねww」

 いつもはけんかばかりしているドードリオの3つの頭は、この時ばかりと揃って笑いころげます。このように、ドードリオはいつもアッカのことを笑っていたのです。

 そんな時、どこからともなく立派な鳥ポケモンがやってきました。この森をしきっている1匹のムクホーク(55)です。彼はアッカと同い年でした。

「あ!先輩、どーも僕です」

「アッカにドードリオか。またアッカをおちょくっていたのか?」

「まさか!親愛なるアッカ先輩にそんな失礼なこと……」

 ドードリオは思わずツボをつつきました。知らず知らずに動きが速くなりました。

「まあいい。アッカ、お前に話があるんだが」

「話?いったいなんだい改まって」

「それがな、湖にいるスワンナに聞いたのだが……イッシュ地方というところに、『しんかのきせき』と呼ばれる石があるらしい」

「しんかのきせき?初めて聞く名前だね」

 アッカは首をかしげながら、目をキラキラさせました。カモネギというポケモンはかれこれ15年ほど前に見つかったのですが、いまだにしんかの兆しすらなかったのです。そんな彼にとって、「しんか」の響きはとても素敵なものでした。

「どうやらそいつは、『しんかしていないポケモンの力を引き出す』ものみたいだ。お前はまだしんかしていないし、おあつらえ向きだろ?」

「確かに……そんなものが手にはいれば、まちがいなく強くなれるね」

「だろ?ものは試しというわけで、イッシュ地方まで行ってみたらどうだ?」

 ムクホークのことばに、アッカはなみだをながして答えました。

「ありがとうムクホーク!僕のためにそんなすごい話を教えてくれるなんて。じゃあ僕、さっそく行ってみるよ!」

「ああ、きをつけて行けよ」

 ムクホークがおわかれを言うと、アッカはすぐさま森をでていきました。

「先輩、いいんですか?アッカ先輩なんかにそんなこと教えて」

「だいじょうぶだ、もんだいない。しんかのきせきは『しんかしないポケモン』には意味がない。それに、もうすぐ『鳥ポケモン・タイプ対抗大会』がある。我々ノーマル・ひこう組にあのようなやつがいては困るからな」

「なるほど、そりゃ名案っすね!」




ポケモンの後ろにある数字はレベルです。ドードリオは31で進化するから(31)としているのです。指摘があったので追記しときます。


  [No.344] 抜け殻 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/05/02(Mon) 22:48:34   56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

これは、あるポケモンの誕生の物語である。


(畜生……何故だ!)
うっそうと生い茂る草の中に、何かが隠れている。薄い黄色に少し茶色を混ぜたようなみてくれで、草すらなびかないそよ風に身を任せている。近くで聞こえる耳障りななきごえが、この場を何か滑稽なものとしている。
(今まで苦しい思いで耐えぬいて進化したと思ったら……畜生、畜生、ちくしょおぉぉ!)
草に隠れている「何か」は、必死に動こうとあがいてみたものの、芋虫ほどにも動けず、ただ時間が流れていくだけであった。


「……君、なぜこのような所で倒れている?」
しばらくして動こうとすることをやめた「何か」の前に、誰かが現れた。背は高く、白い布で体を覆っている。明らかにここの者ではないが、どこかからやってきたというわけでもない。
(誰だ……)
「心配するな。別に取って食べるわけではない」
(なら、なぜ俺に話し掛けた?)
「それはな、気になるではないか。こんな場所で動けずにいるのが見えたのだから」
「誰か」は「何か」にのんびりとした口調で答えた。
(けっ、なら教えてやるよ。どうせ俺は死んだんだ)
「うむ、では話してくれ」
「誰か」は腰を下ろし、楽な姿勢を取った。そして、「何か」が語り掛けてきた。
(俺は元々ツチニンというポケモンだ。長年俺は進化する為に全てを我慢してきた)
「どれくらいだ?」
(大体7年だ。その間はどんなに攻撃を受けても決してやりかえさず、ただ進化の為に待ち続けた)
「そして進化したと言うわけか。だが、それなら君がここで倒れている理由がわからんな」
(そうだ、ここからだよ肝心なのは)
「何か」は語りつづけた。次第に風が強くなり、周りの樹木は不気味に揺れる。しかし、「何か」と「誰か」の近くではそよ風すら吹いてない。
(俺はテッカニンと呼ばれるポケモンに進化する時、抜け殻として捨てられたんだよ!)
「抜け殻……なるほど、確かに抜け殻は成長の妨げになるからな」
(なぜ俺が捨てられなきゃいけないんだ!7年も耐えた結果がこれか!……あまり本体を恨んだおかげで抜け殻に意志ができちまったよ。今あんたに語り掛けてるのは、抜け殻の怨念だ)
抜け殻は一通り語り掛けると、「誰か」が尋ねた。
「君は……これから生きたいかね?」
(何だと……?おとぎ話じゃあるまいし、俺をからかってるだけだろ)
「それは私の目を見て言ってほしいな」
「誰か」は抜け殻に優しく諭した。しかし、その目の中は熱意で燃えている。
(俺は動けないから見れねえよ)
「それもそうか。で、できるできないはともかく、君は生きたいかね?」
(……当たり前だろ、7年も耐えてきたんだぞ)
「なら、君に祝福だ。はっ!」
「誰か」が手を抜け殻にかざすと、青緑色の光が辺りに広がった。それと同時に、辺りの風も化け物のように荒れ狂う。その状態がしばらく続いたが、やがて光が消え、風もやんだ。
「さぁ、浮かび上がれ」
「誰か」は立ち上がり、右手を天にかかげた。すると、抜け殻がまるで風船のようにふわふわ浮かび上がり、空中で静止した。
(こ、これは一体!?)
「おお、忘れてた」
抜け殻が驚くのも聞かず、「誰か」は体の白い布を細長く切った。そして抜け殻の頭の上にわっかにしてのせた。
「これでよし!今日から君も生き物だ。そうだな、名前はヌケニンだ!」
(……あんた、一体何者だ?)
「え?うーん、ただの通りすがりのおじさんだ。それよりだ」
「誰か」、もといおじさんは、ヌケニンに顔を寄せて言った。
「君は確かに生き物となったが、体が脆い。ポケモンには相性があるが、弱点の攻撃を受けたらすぐにやられるから気を付けろ」
(ああ……こちらとしては生きることがまたできて、嬉しい限りだ)
「そうか。では、最後にもう一つ。君の種族が進化する時は必ずヌケニンも生まれるようにしとこう」
(……あんた、なぜそこまで自分で決めるんだ?)
「なぜって、そんなこと言えないよ。では、また機会があれば会おう」
おじさんは再び右手を天にかかげた。すると、そこから太陽よりまぶしい光が発生した。
(ぐわ、なんだこりゃ!)
光はすぐおさまったが、そこにはすでにおじさんの姿はなかった。
(……もう夜か)
ヌケニンはすでに夜になっていることに初めて気付いた。なぜなら、今までうつぶせに倒れていたからである。
(誰かは知らねえが、感謝するぜ。よし、再びもらったこの命、全力で生きてやるぜ!)
ヌケニンが思い切りなきごえを出すと、そよ風にながされてどこかに行ってしまうのであった。




ヌケニン誕生の妄想です。たまにはこんなロマンチックな話書いても、バチはあたらないでしょう。

それにしても、この作品のことを覚えている人ってどれくらいいるのでしょうか。一応サイト改築前に掲載していた作品ですが、ついでなので投稿しときます。