雨がふっている。湖からちょこんと顔を出したぼくは、さっきまでいっしょに遊んでいた友だちを湖周辺を見渡しながらさがしていた。ヒトカゲくん……彼は炎タイプのポケモンだから、雨は苦手なんだよね。でも、帰ったんならいいんだ。別に心配してたわけじゃないよ、ただ……ヒトカゲくんがまだここで待っているような気がしてたんだ。さっき、あんな別れ方をしてしまったから……
「ねぇ、ミニリュウくん。ぼく、ずっと気になってたんだけど、君ってへびだよねぇ?」
「え……?」
今日の昼下がり、湖の近くでひなたぼっこをしていたとき、ヒトカゲくんがぼくにそう聞いてきた。はじめは腹がたったけど、ぼくが竜だって言ったときのヒトカゲくんの驚いた顔が見たくてちょっとだけがまんすることにした。
「へび……じゃないの?」
「ちがうよ!」
ヒトカゲくんは少し考えてからもう一度ぼくに言った。
「でもぼく、ミニリュウくんみたいに手足がなくて、にゅるるんって長ーいからだの動物って、へびしか思いつかないんだよ。」
しょぼんとうつむくヒトカゲくんを見て満足したぼくは、そろそろ答えを教えてあげようと、ワクワクしながら口を開いた。
「ぼくは……」
竜だよ、ドラゴンさ!と、得意げに言ってやるつもりだった。そのつもりだったのに……彼はあのとき「わかった!」というような顔をして、目を輝かせてこう言ったんだ。
「わかった!ミニリュウくん、君は本当はなめくじだったんだね!」
「……」
「知らなかったよぉ。ぼく、ずっと君のことへびだと思ってたんだ。でも、へびはもっともーっとからだが長……あれ?ミニリュウくんどうしたの?」
「……がう。」
「え?」
「ぼくはへびなんかじゃない!なめくじでもないよ!ヒトカゲくんのばかー!」
ぼくは、大粒の涙をぽたぽたと落としながら湖に逃げ込んだ。ぼくはまだ小さいけれど、それでも小さいなりに自分がドラゴンだという誇りはちゃんともってたんだ。いつか、パパやママみたいな大きな翼で空を飛ぶのを夢見てたんだよ。それなのに……
雨がふりつづいている。ぼくはさっきまでひなたぼっこしていた場所まで行ってみた。だれもいない。ヒトカゲくん、おこっちゃったよね。もう遊んでくれないかもしれない。どうしよう。
ぼくはため息をついた。無意識に視線が下に落ちる。ん?なんだろう。土に木の棒で何か書いたあとがある。
あした はれたら また あそぼ
ミミズみたいなその文字は、雨でもう消えてしまいそうだった。ぼくは置いてあった木の棒をくわえて、その文字の上にでっかくこう書いた。
ごめんね
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処女作。
ミニリュウはどこからどう見てもなめくじです。