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マルチポストしていいのよ・・・ |
黒い煙が空へと昇る。雲一つない、きれいに晴れた青い空。春に差し掛かろうとする季節には似合わないほど晴れていた。 |
夜遅くなってしまった。家が遠いというのに、先輩の話が長かったせいだ。おかげで夕食には間に合わず、街灯少ない野道を急いで帰る。田舎のミシロタウンへと続く道は草むらが生え放題。野生のポケモンに出会っても厄介だ。草むらを避けて帰る。 |
寝坊した。そう気付いたのは時計の針が9時をまわっていたから。飛び起きると自分の服を探す。けれど引っ越したばかりでろくに荷物も開けられない中、そうそう見つかるわけもなく、2個目の段ボールを開けた時に目に入った服を引っぱりだす。昔に来ていた赤い襟のついたサイクリング用のシャツに、下は白いスカート。その丈も短いというので、下にスパッツはいてた気がする。そして靴下を履くと、急いで玄関まで走っていった。 |
「間に合った!」 |
街に火が灯る。カナズミシティの街はネオンが明るく、夜でも不自由がない。結局、ザフィールは見つからない。夜のトウカの森にいるとは考えづらいし、戻ってなければここに来ているはずなのに。 |
意外な趣味なんだとザフィールは思っていた。カナズミシティ郊外のふかふかの土で、木の実栽培に励んでいるガーネットを見て。 |
キモリの攻撃がはじかれる。弱点のはずの草が全く効かない。レベル差がありすぎる。まだ間に合ってなかった。 |
目を開けて入って来た光景は、白い天井と手足に巻かれているガーゼだった。少しの間ながめていると、桃色のラッキーが顔を覗き込んできた。 |
コンテスト会場は、マスコミに囲まれていた。カナシダトンネル崩壊にくわえ、コンテスト会場に現れた謎の黒いローブ。放っておくわけがなく、入り口はあっという間に塞がれる。観客の一部はインタビューに答えていたが、ガーネットとミツルはそれに興味がなかった。むしろ目の前で全ての力をかき消した男の人。そこらのポケモンには出せないような強い力を一瞬で無にした。そのことが引っかかる。 |
その日の午前、やっとコンテスト会場は再開した。待ちわびたトレーナーたちが今か今かと並んでいる。 |
追い掛けなければいけないのに、歩みは遅い。足が止めているかのように、動いてくれない。 |
本日は晴天なり。マイクテストにも出そうなほど晴れた。 |
美しい笛の音が聞こえる。清らかな風に乗り。 |
もう何時間も同じところをぐるぐるまわってる気がする。景色がまったくかわらない。室内なのにどこにいっても木、木、木、木、木ばかり。細い木をジュプトルのいあいぎりで叩ききっているが、気のせいかすぐに生えてきているような感覚がある。なぜなら背後に道がない。まさか遭難してしまったとは認めたくない。広いジャングルならともかく、限界があるはずのカラクリ屋敷だからだ。 |
「くそ、あいつまたしくじったのか」 |
聞こえるか、私の化身。自由に動く体を持つ私。その意思、行動力、邪悪なものが狙っている。邪悪なものより先に私を手に力を調整しなければならない。私にはそれができる。私にしかそれはできない。 |
眠れてないのに、頭はすっきりとしていた。隣には、まだ夢の中にいるザフィールがいる。昨日はわがままいって、こんなに近くにいてもらったけれど。どう思っているか解らない寝顔を起こさないように布団から出る。灰で少し汚れた服も体も洗いたい。けどなんとなくすぐに行動したいと思わず、少しの間、座って離れないようにしていた。小さな声で、行ってくるねとつぶやく。聞こえてるはずもないけれど、無言で行くのも忍びない。 |
黒いズボンにロゴの入った赤い服、そして赤いフード。これを着ればマグマ団と主張しているようなもの。というか主張している。同時に気が引き締まる。白い髪を隠すようにしてフードを深くかぶる。 |
思わず手が出てしまった。いくら彼でも、ダイゴのことを悪く言うことが許せない。けれど冷静になってみれば、力の加減もせずに吹き飛ばしたのはやりすぎたと反省の色が見える。過去は変えられない。完全に怒っていても仕方ないこと。自分が悪いとはいえ、怒らせたくは無い。ガーネットはあることを思いつく。謝ろう。受け入れてくれないかもしれないけれど。 |
「どうしたの?」 |
アチャモにつつかれ、我に返る。信じられないものを見た。すでにそれの気配はないけれど、目があってしまった上に喋った。確実にザフィールの方を見て「ヒトガタ」と。人の形してて何が悪いんだ。アチャモをなでると、ひよこらしい鳴き声をあげる。随分と元気になったものだ。最初は全く鳴かなかったのに。 |
あの後は散々だった。ハルカは泣いてるし、ガーネットは帰されるし、オダマキ博士の怒りは全てザフィールへ。家に行ってもずっと怒ってるし、何より喧嘩の道具にポケモンを渡したのではないという内容で話がループしていた。母親が止めてくれなかったら深夜まで続いたに違いない。部屋に帰ると、プラスルが電気のボンボンで励ましてくれた。スバッチがもふもふの羽でなでてくれた。エーちゃんは顔をなめてくれた。キーチは肩をそっと叩いた。 |
目の前の扉を開ける。どんなポケモンの攻撃も受け付けないような造りになっている。そしてその向こうには、父親でありトウカジムリーダーのセンリが待っている。ガーネットが入ると、静かに言った。 |
ポケナビに連絡が入る。ホムラからだった。呼び出しかなと思って出た。寝起きだったために、声に張りがない。軽い挨拶から入る会話は、いつものようなのんびりとしたもの。 |
アクア団の誘いを蹴った。その事だけでもう充分だ。ホムラにその事を伝えると、じゃあ俺とカガリが行くと言ってくれた。もう心配なことは何も無い。それに充分強い。進化しないと悩んでいたポニータだって、すでにギャロップ。ジムリーダーの子って、才能まで受け継ぐのか、育て方がいいように思えた。 |
近所というのはとても不便なもので、田舎町ならなおさら話が広まるのは早い。センリからオダマキ博士のことを聞いた。それはさらに感情が迷宮入りするのに充分なことだった。どうしてそんなことになってるのか、ガーネットには到底理解できない。一つ屋根の下で二人がいることを想像するだけで耐えられない重圧が心にかかる。 |
ガーネットは目を覚ます。見た事もない場所。手触りのいいふわふわマットに、頭の下には柔らかいぬいぐるみ。体を起こす。雨で体が冷えて、体温がどんどん上がっているのが解る。とても寒い。震えているのはそれだけじゃない。 |
ヒワマキシティにあるポケモンセンターも例外ではなかった。木の上に家を造り、生活するヒワマキシティを象徴するように、ポケモンセンターも高いところにあった。といっても、一階部分は他と変わらず、2階から上が木と合体しているのである。きっと、前は2階にあったのに、旅のトレーナーからいろいろ言われて下ろしたような、とってつけた内装だった。 |
「似合わない」 |
予想以上だった。見えないところにもいたアクア団にあっという間に追い込まれる。残りのポケモンはアブソルただ一匹。だがボールから出すのすらザフィールは嫌だった。むしろ触りたくないのである。けれどホムラだって結構ギリギリで、追い込まれた時の表情を見せている。笑ってるけど焦ってる。どうしようもならない時にしか見せない顔だ。 |
シルクに乗ったままミナモシティにつく。ガーネットの手に抱えられていたザフィールは、そこで下ろされる。マグマ団の姿に街行く人々は驚きと軽蔑の視線を送る。一緒にいるガーネットまで。ミナモデパート前で残っていたマグマ団に声をかけられた。アジトでの留守番組だ。そしてガーネットを見ると、その腕をつかんだのだ。 |
あれはまだ父さんがオダマキ博士ではなく、オダマキ教授と呼ばれる方が多かった時か。 |
もう日が沈みそうだというのに、落ち着かない様子で家の中をウロウロしている。白い体に茶色の縦縞。流線型の体で、もぞもぞと動く。 |
楽になってきた。まだ舌に残る苦みは取れない。勢いが弱まった血が、靴の中にも入ってきてなんとも気持ち悪い。もしかしたら今なら立てるだろうか。ザフィールは物につかまり、左足に体重をかける。 |
「こうして見ると、マグマ団も大したことないのね」 |
ホムラは倉庫の壁に背中を預けて腹をさする。さすがに短時間の間に同じところへ二発もくらっては動くことが難しい。心の中でマツブサへ詫びる。カガリを上手く使ってくれと。 |
乱暴に体を揺すられる。目を覚ますより先に姿勢が崩れた。床に頬をぶつけた痛みで目を開ける。まだ頭が重い。それなのに乱暴に頭が持ち上がる。そして腕をいたわりもなく引っ張られた。 |
明けの明星が目に入る。東の海から、夜の終わりをつげる金色の光が広がった。遠くの黄金の海が、この季節の日差し以上に強い。そして足元の氷も心なしか薄くなる。気温が上がり、限界は近い。後ろを振り向けば、シルクが蹴りだした氷が、力に耐えきれず割れていく。そして目の前の氷もいつまで持つか解らない。 |
「突然の大雨と強い日差しにより、気圧が乱れています!」 |
「大丈夫か?」 |
GJです。 |
確かに長いのは大変っす。けどゲームの通りに進行していくので迷うことなく進んだ感じはありました。 |
ヒトガタを失ったのは大きな痛手でした。一対で形となるヒトガタ、もう一つは始末するしかありませんね |
最近会ってないし、全く手がかりもつかめてない。ホウエン地方って広すぎる。 |
私たちはずっと前……もう数えきれないほど前に生まれました。 |
うっすらと目をあける。それと同時に刺すような寒気に体が震える。手も冷えて思い通りに動かない。顔にかかる邪魔な前髪をかきわける。髪は濡れていて、全て思い出す。 |
プラスルが弾き跳ばされる。エアームドのとても固い鋼の翼に。タイプ相性上は有利なはずなのに、体格と強さが桁違いだ。 |
その日はとても静かだった。カイナの海はとても穏やかな凪。遠浅の海は絶好の観光スポットだった。 |
何も見えなかった。何も聞こえなかった。 |