どれ、ロングにも進出してみるとしましょうか。 結構危ないシーンもあるお話です。 苦手な方はご注意くださいまし。 なぜ半耳イーブイだって? それは、プロローグを読んじゃってくださいな。 このお話は、すべて【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【批判していいのよ】【何をしてもいいのよ】【途中で話が止まるかもなのよ】 のタグが付きます。 よろしくお願いします。 追加タグ【おかしいところはどんどん指摘してほしいのよ】 追加説明 一話一話の間に、『,5話』という物も一緒に進行させていきます。 整数話が本編、『,5話』は、スペシャルエピソード的な物です。
私は、生まれつき体が弱かった。 グレイシアのお母さんからイーブイとしてこの小さな町に生まれた時から。 風邪なんかはしょっちゅうひいてたし、もっと重い病気にかかって生死の淵をさまよった時だってある。 健康な時よりも、怪我や病気で家にいたときのほうが長かった。 外で他のポケモンが遊んでても、いつも眺めてるだけ。 みんなはいいな…… 私もこんなに体が弱くなければみんなと遊べるのに…… 毎日毎日そんなことを考えながら過ごしてきた。 お母さんは十四歳の時に、出かけたっきり戻ってこない。 優しくて強いお母さんのことだから…… この街じゃないところで、きっと幸せに暮らしてるはず。 こんな私も、もう十六歳。 きっと、今まで生きてこれたことも奇跡だと思う。 ――――――そんなある日 私はいつも通り、窓から外を眺めていた。 相変わらず、外には出れない。 家の前のレンガでできた赤い街並みをただ眺めるだけ。 いつもこうやって時間を過ごす。 歩いて行くさまざまなポケモン。 楽しそうに会話しているミズゴロウとウパー。 落ち込んだ様子で歩いて行くミミロル。 並んで飛んでゆくオニスズメとオニドリルの親子。 あたりをキョロキョロ見ながら何かを大切そうに運んでゆくヘルガー。 毎日違う景色になる。 だけど、自分はその中にはいない。 助けてくれる家族もいないし、話してくれる友達もいない。 知り合いといえば、日用品をいつも運んでくれるペリッパーさんだけ。 少し会話もするけど、大抵は次の仕事があるから、ってすぐに行ってしまう。 別に、寂しくはない。 もう、一匹でいることになれちゃったから。 夕日が山の向こうに沈んでいく。 今日も何事もなく、終わってゆく。 朝から晩まで、ずーっと眺めるだけの生活。 明日も、明後日も、ずーっと死ぬまで続くかもしれない。 死ぬまで続くにしても、どうせそのうちすぐその時が来るんじゃないかなぁ、と考えたりもする。 そんなことを考えてつつボーっとしていたら、通りの向こうから声が聞こえてきた。 「おい! 見ろよ! こんな田舎にあの有名なプクリンのギルドの一行が来てるぜ!?」「本当だ! あのピンク色の姿をしたのは間違いなくプクリンだ!」 何やら騒がしい。 一応目の前の通りはこの街一番の通りだから、通るポケモンも多く、賑やかではある。 だけど、いつもとはまた違った騒がしさだ。 確か、プクリンのギルドとか言ってなかったっけ? プクリンのギルド……ああ、昔一度ペリッパーさんから聞いたことがある。 お宝を探して手に入れたり、困ってる人を助けたり。 ギルドって言うのは、そんなことをするポケモンたちの集まりらしい。 その中でも、プクリンのギルドはこのあたりで一番有名、と言っていた。 確かに、有名ということはある。 通りは既にポケモンだかりができはじめていた。 「やぁ! 僕はプクリン! よろしくね♪ ともだち! ともだち〜〜〜!」「おやかたさま! 誰に言ってるんですか!」「え〜? ここにいるともだちにだよ?」「ともだちって……全員初対面の方ばかりじゃないですか!」「顔が合えばみんなともだち!」「おやかたさま……」 窓から見る限り、プクリンとぺラップしか見えない。 こんな田舎町に何をしに来たんだろう? 「ねぇ! 友達のみんな! 一つ聞いていいかい? このあたりに、ヘルガーって言うとっても悪ーいポケモンが逃げ込んだらしいんだけど、みんな知らない?」「これがそのヘルガーだ。誰か知らないか?」 ぺラップが空から何かの似顔絵のようなものが入った紙をばらまいている。 私は、体は弱くても、目はいい方だと思ってる。 数メートル先のものだったら読める。 ――――――――――――――〜依頼詳細〜――――――――――――――― ミチユクポケモンヲ ウシロカラオソッテハ ドウグヲウバイマス モクテキノタメニハシュダンヲエラバズ ナニヲシテクルカモワカリマセン ケガヲシタポケモンモオオク カナリキケンデス ゴネンイジョウトウボウシテオリ ヒガシノヤマノホウコウニ ニゲタトノジョウホウイライ ショウソクガ ツカメテイマセン ジョウホウトタイホニ ゴキョウリョククダサイ! 依頼主:ジバコイル 目的:ヘルガーの情報収集と逮捕 難しさ:☆9(1500) お礼:??? ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― カタカナが多くて読みにくい。 って言うか、こういった文字自体そんなに見かけない。 足形文字のほうがよく使う。 へぇ……犯人はヘルガーなんだ…… ん? ヘルガー? そう言えばさっき…… 何かを大切そうに運んでゆくヘルガー。 ……………………まさか。 まさかまさかまさか。 で、依頼書。 ミチユクポケモンヲ ウシロカラオソッテハ ドウグヲウバイマス やっぱりそうだ。 さっき大事そうに持ってたのは多分、盗んだ道具なんじゃないかな。 「ランク☆9の大悪党だ。逮捕のために、ギルドをあげてやって来たんだ。誰か少しでも情報があったら教えてほしい。」「教えて! ともだち〜〜〜!」 どうしようか。言いに行くべきだろうか。 ……でも、家から出るのなんて……何か月ぶりだろう。 病院に行った時以来、かな。 ……うん。行こう。 心を決め、玄関から数か月ぶりに外へ出る。 たくさんのポケモンたちが、プクリン達の周りを囲んでいる。 プクリンに話すために、進もうとする……が。 自分よりひとまわり、ふたまわりも大きいポケモンたちに押し返されてしまう。 ただでさえ小さな種族なのに、運動したり、たくさん食べたりしていなかったから、更に小さかった。 メタグロスに踏まれそうになったり、ダストダスに埋まりながらも、ポケモンたちの足元をすり抜け、最前列についた。 そして、「そのポケモン知ってます」と、プクリンたちに向かって言う。 が、周りのポケモンの声にかき消されて伝わらない。 自分の出せる精一杯の声でもう一度。 『そのポケモン知ってます!』 しーん…… その声を聞いた群衆が一瞬にして静かになる。 ペラップが、こちらに近づいてきて、話しかけてくる。 「そこの君、今、知ってるって言ったよね? 本当かい?」「は……はい。」 周りを見回す。 みんなが私を見ている。 とくとくとくとく。 自分の心臓の音が耳元で聞こえる。 緊張で気を失ってしまいそうだが、なんとか意識を呼びとめる。 「そんなに緊張しなくてもいい。ワタシはペラップ♪ さぁ、知っていること、なんでもいいから教えてくれ。」「あ……あの……その……ヘルガーです……よね?」「そうだ。先日、このあたりで目撃情報があったらしい。」「え……えーっと……今日の夕方……あ……あっちの山の方角に……何かを運んでいる……ヘルガーを見ました。」 声が上手く出ない。 どうしてもカチコチしてしまう。 理解してくれただろうか……? 「おやかたさま。」「うん。わかってる。ともだち! ありがと〜!」「では、後を追うことにしましょう。」「じゃあ、ぼくたちはいくよ。またね♪ ともだち! ともだち〜〜〜!」 どうやら理解してくれたみたいだ。 プクリンとぺラップは何やら嬉しそうに去っていった。 ……あれ? さっき、『プクリンの一行』って言ってなかったっけ? 一行って言う割には、二匹しかいなかったけど…… でも、ちゃんと伝わったみたい……よか……った。 緊張の糸が途切れてか、目の前の景色が一瞬にして歪んで見えなくなった。 どうしてあそこまで緊張しちゃってたのだろうか。 しばらくして自分の部屋で気がついた後、しばらく考えていた。 あそこで気を失って倒れた後、メタグロスが運んでくれたらしい。 気がつく前に帰っちゃったみたいだけど。 もうすっかり暗くなっている。 どの位の時間気を失ってたんだろう? 頭が痛い。薬飲んで寝よう。 夜更かししても何の得もないし…… お休みなさい…… ―――――――――――――――――――――――――――――― 続く。 補足※年の数え方は人間とは違うかもしれません1年≠1歳
赤いレンガでできた小さな街並みを、山から現れた太陽が照らす。 ベッドの上で丸まっていた私の体に暖かい光が当たる。 まぶしい。もう少し寝ていたい。起こさないで。 なんだろう。この光は。 朝だ。 今日も朝から晴れ。 洗濯でもしようか。 それとも、もう少し寝てようか…… 朝のぼーっとタイムが始まる。 窓から朝の通りを眺めつつ、今日は何をして過ごそうか、と考える。 ぐぎゅるるるるるるる ……お腹すいた。 そう言えば、昨日の夜何も食べてない。 頭痛くて寝ちゃったからなぁ…… タイミング悪く襲ってくる頭痛を恨めしく思いつつ、ペリッパーが運んできてくれた食べ物を手に取る。 何食べようかなぁ…… 毒とかマヒとか治っても、頭痛を治す木の実はないらしい。 あんまり薬好きじゃないんだけど、頭痛くなったら薬飲むしかない。 生ものは早く食べちゃわないと……腐って地獄を見る。 グミは長持ちするから後回しでもいい。 一年放置しても食べれたからね。お腹壊したけど。 うん。これにしよう、と今朝の朝食を決める。 オレンの実とカゴの実という、がっちがちに硬い朝食。 そのままじゃ食べれないから、すりつぶしてから食べる。 これがまた重労働で、数分もやると疲れて体のあちこちが痛くなる。 酷い時は次の日筋肉痛に襲われる。 モモンの実とか柔らかいものが食べたい……が ペリッパーが運んできてくれないからしょうがない。 今度頼んでおこう、と心に決めながら、木の実をすりつぶす。 なんだか今日の木の実は固い。収穫時期間違えたんじゃないの? ってくらいに。 コンコンコン! ゴリゴリという音に混ざって、何かをたたく音が聞こえる。 音は玄関のほうから聞こえる。 こんな朝早くから誰だろう? 今忙しいのに。 はーい。今出ますよー。と返事を一応しておく。 居留守してもいいんだが。 ペリッパーだったら困るから、一応出ておく。 何もかも一応。一応が大事。 一応やっておけばだれにも何も言われないからね。 がちゃ。 木でできた扉をあける。 見た目によらず結構重い。一体何の木材だ。昔から気になってる。 まぁ、丈夫だからいいけど。 誰が来たのかを確認する……が、誰もいない。 いわゆる『ピンポンダッシュ』ってやつだろうか。 家には呼び鈴ついてないぞ。 ってことは、『ノックダッシュ』だろう。たぶん。 自分でもくだらないことを考えてるなぁと思いつつ、家の中に戻ろうとする。 戻ろうとする。 戻ろうとしている。 戻ろうとしてるんだよ。 戻ろうとしてるんだけど。 なんか体が動かない。 きっと、動かないって言うのは気のせいなんだ。 動かないと思うから動かないんだ。 体に何か縄が巻きつけられてるのも、気のせいなんだ。 いきなり上から現れた何者かに縛られたって言うのも、気のせいなんだよ。きっと。 うん。 前、後ろ足はしっかり縛られてる。 体もぐるぐる巻き。 口にはなんかのテープ。 気のせいじゃないよね。これ。 なんかよくわからないけど、今、私は縛られてる。 今わかることは、それだけ。 それ以外は全く理解できない。 何がどうしてこうなった。「よぉ。可愛いイーブイさん。昨日は世話になったな。」 声のするほうを見ると……黒い何かが見える。 私に世話になった? 何か私がしたっけ? 「あんたが俺の逃げた方向をばらまいてくれたおかげで、俺はあいつらに捕まりかけたんだぜ?」 ようやく誰かがわかった。 この黒色に白い線が入ったような体は、ヘルガーだ。 「まぁ、しっかり借りは返させてもらわねぇとな。」 ヘルガーが私を縛っているロープに噛みつき、そのまま持ち上げる。 このままどこかへ連れて行く気らしい。 多少暴れてはみるものの、体長30cmがどう暴れたって、140cmに敵うはずがない。 助けを呼ぼうにも、口に巻かれているテープのせいで、声が出せない。「おとなしくしてろよ? じゃないと後が酷いぜ?」 ロープが体にくい込んで痛い。 ぐるぐる巻きにされているせいで息もしづらい。 一体このままどこに行くんだろう。 こういう時に限って、誰もいない。 こんな状況を見たなら、誰だって怪しむはず。 そうすれば、誰かが助けてくれるはず……なのに。 ―――――――――――――――――――――――――――――― しばらく走っていたヘルガーが、急に足を止めた。 かなりの時間つれてこられた気がする。 周りは町ではなく、山奥の森といった感じだ。「この辺なら誰も見てねぇな。よし、降ろすぞ。」 ドサ…… 乱暴に落ち葉の上に落とされる。 石が当たって痛い。 「さて、本題に入るが、お前は俺のことをプクリン達に話した。そうだな?」 質問をされるが、口がふさがっていて、答えられるはずがない。 「まぁ、ビッパとかいうやつがイーブイに聞いたって言ってたからな。お前に間違いないことはわかってるんだが。」 じゃあ質問しなくてもいいじゃないか。 何のために聞いてきたのだろう……「んーっとな、つまりだ。お前があいつらに俺の逃げた方向を教えなかったら、俺はアジトを離れずに済んだ。わかるか?」 首を横に振る。 アジトとどういうかかわりがあるのかがわからない。 「簡単に言うとだな、お前が言ったせいで、俺のアジトがばれて、捕まりかけたんだ。だからこうして仕返ししにきたってわけさ。」 仕返し……? 一体何をするつもりだろうか……?「俺に狙われた奴はどうなるか知ってるか? ただでは戻れないぜ?」 ヘルガーの表情が一瞬にして変わる。 今までとは比べ物にならない恐ろしいものを感じる。「さて、どこからにしようか? 可愛いイーブイさんよ。」 怖い…… 背筋が凍りそうなほど寒い。 一歩一歩ヘルガーが近寄ってくる。 近寄ってくるほど、心臓がはじけそうなくらいに早く脈打つ。 「まずはその……でっかい耳からだな。」 ガブッ! ーーーーーーー!!!!! ヘルガーが思いっきり右の耳に噛みついてきた。 あまりの痛みに悲鳴を上げたいが、口がふさがれていて声が出ない。「ふん……この程度じゃあ……まだまだだな。もっと……苦しめ。あのアジトにいったいどのくらいのお宝があったと思ってるんだ? お前が言ったせいでな、俺様が五年以上かけて集めてきた物、全部パァだぜ?」 ヘルガーが耳に噛みついたまま、思い切り首を引く。 相当怒っているようで、さっきまでの軽いノリはどこにも見当たらない。 どうせお宝といっても……盗んだものだろう。 もともと自分の物ではないのに……見つかって当然だ。 大声でそう言ってやりたかったが、今は口どころか、手足も動かない。 ただ、なされるがまま。 ヘルガーが歯にかける力をあげてきた。 痛い…… こんなに『痛い』と感じたのは久しぶりだ…… なんでこんなに冷静でいられるんだろう。 さっきとは違い、不思議と心が落ち着いている。 これはきっと……自分の中で認めているのだろう。 どうしようもない……ということを。 ブチッ ヘルガーが思い切り首を引いた瞬間、鈍い音があたりに響いた。 ……どうやら耳を食いちぎられたようだ。 耳のあたりから鋭い痛みと生温かい物を感じる。 落ち葉の上を流れる赤い液体。 ヘルガーの口からも赤い液体があふれている。 「久し……が……わ……も……よ…………」 何か言っているようだが、頭に入ってこない。 頭の中が真っ白になっていく。 目の前の景色がぼやけていく。 意識が遠のいていく。 このままあっちの世界に行っちゃうんじゃないだろうか。「さて、つぎは尻尾でも行こうか?」 ヘルガーが再び大きな口をあけて噛みつこうとする。 もう、どうなったっていい。 どうせ病弱な自分だから、ここで死んだってそんなに変わらない。 このまま……あっちの世界に行ったとしても、ね。 が、その瞬間、ものすごい衝撃波が押し寄せ、ヘルガーを吹き飛ばした。「ワタシから逃げれると思ったら大違いだよ!」「ヘルガー! もう自由にはさせないですわ! きゃー!」「ヘイヘイ! プクリンのギルドの名にかけて!」「えーっと、逮捕するでゲス!」 「みんな、行くよ! たぁー!」 ヘルガーを吹き飛ばしたのはオウムのようなポケモンの大声。 どうやらあっちの世界はお祭中だったらしい。 物凄く賑やかだ。「こいつら! なぜ俺の居場所が分かった! ここに来るまでは誰にも見られてなかったはずなのに!」「本当にそうか?」「誰だ!?」 地面から四匹の茶色いポケモンが現れた。 四匹……じゃない。二匹だ。 ダグトリオとディグダ。 「まさか、地面の下でつけられているとは思わなかっただろう?」「流石お父さんだね!」「くそっ! ひとまず逃げるぜ! お前らに俺は捕まらないさ!」『やってみなければわからないよ!』「なんだと!?」「残念だったね♪ もう後ろは取ってあるよ♪」 プクリンがヘルガーの後ろに立っている。 今まで別のところにいたはずなのだが。「観念してね♪」「くそ……しかたないな。ほら、連れてけよ。」「依頼完了だね☆」 プクリンとその弟子たちに、ヘルガーが連れて行かれる。 連れていかれる間際、ちらっとヘルガーがこちらを見た。 ……あれ? 今、一瞬ヘルガーが笑ったような気がする。 捕まって観念したのだろうか……? いや、ただの見間違いだったようだ。 こんな状況になって笑っていられるはずは……ない。 ――――――こうして、ヘルガーは捕まった。 私はあの後、ドゴームって言うポケモンに担がれて、すぐに病院に運ばれた。 もう少し遅かったら、血が多く出すぎて危なかったかもって。 しばらく入院してたけど、その間、プクリンやその弟子たちが、かわるがわるお見舞いに来てくれたんだ。 ある時にはダグトリオとディグダが二匹(?)そろって来た時があった。「すまない! ……あのとき私達が判断に躊躇しなければ……あなたの右耳の半分は無くならずに済んだかもしれない。許してもらえるとは思っていないが、一応……謝罪だけでも聞いてほしい。」 いきなり頭をさげられて驚いたが、すでに起きてしまったことはしょうがないとしか言えないし、 それに…… 助けてもらったポケモンに謝ってもらうなんて……なんかおかしいと思うんだ。 そのことはしっかり伝えておいたよ。気にしないで、って。 その後も三日に一度くらいのペースでお見舞いが続いた。 ある時、一回しか会ってないのになんでこんなによくしてくれるの? って聞いたら、「怪我してたらほおっておけないでしょ? ともだち! ともだち〜〜〜!」 って言うんだ。 他の弟子ともいろいろお話できたし、いつになく楽しかったな。 楽しい日々はすぐ過ぎていく。 右耳は半分無くなっちゃったけど、無事退院できる日がやってきた。 別に、退院できる日とは言っても、誰もおめでとうとか言ってくれるポケモンはいないし、喜んでくれるポケモンもいない。 ずうーっと部屋に籠りっきりだったから。 そう思ってた。 だけど、違った。 病院を出ると、声が聞こえてきた。「やぁっ! 退院おめでとう♪ 元気そうでなにより♪」 声のしたほうを振り向くと、そこにはプクリンがいた。 私のために来てくれたのだろうか?「お忍びで来てるから、早くしないとペラップに怒られちゃうよ〜」 あれ? なんだか目から涙が……「ん〜? どうしたの? 涙なんか出しちゃって。 涙なんかにあわないよぅ♪ ほら、わらって〜?」 なんでだろう。 このポケモンを見てると不思議な気分になる。「じゃあ、ボクはそろそろ行くね♪ じゃあね〜! ともだち〜〜〜!」 ……かっこいい。 あれがギルドのおやかたなんだ。 …………私もあんな風になりたいな。 だけど、こんな私じゃなれないよね。 『やってみないとわからないよ!』 え? プクリン? 辺りを見回す。 だけど、どこにもプクリンの姿はない。 一体なんだったのだろうか…… ……やってみないとわからない、か。 もしかしたら、こんな私でも、なれるかもしれない。 ……よし。 行ってみよう。プクリンのギルドに。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 冒険は、始まったばかりだ。 続く…… 〜プロローグを書いてみて〜 なんかいきなり危ないシーンが(ry この後、半分の右耳がトレードマークになったりならなかったり。 ヘルガーさん頭に血が上りすぎです。 冷静を装っているようですが。 冷静ならばいきなり耳に噛みつくなんてことはしないでしょうなぁ。 次回予告(?) 一人プクリンのギルド目指して歩いていた時、思わぬ出会いが…… それが思わぬ展開に!? 半耳イーブイの運命はどーなる? ――――――――――――――――――― 補足説明2 っ【いきなり噛みつくとか……ヘルガーいきなり何やってるんっスか?】 仕返しということで頭に血が上ってて思いつきでやった、みたいな状況を表現したかったのですが…… やっぱりキツかったですね。すいません。 っ【ダグトリオ出てくるタイミング考えて欲しいッス。】 これはもう完全にふにょんのせいです。ごめんなさい。 もし、追いついていたのなら、そこで技を出せば効果抜群で、耳も噛み切られずに済んだのでは? とのご指摘をいただきました。 一応、仲間を呼びに戻ってしまった&技の出すタイミング、場所を見計らっていたら時間がかかってしまったということにしておいてください。 いい加減ですいません。 っ【なんでヘルガーはイーブイの家を知ってるんっスか?】 ……これはごめんなさいとしか言えない。 思いつきで書いてしまった自分が恨めしい。 これについては、『イーブイの住んでいる町の近くにヘルガーのアジトがあったので、 周辺地理については、詳しく調べ上げていたので知っていた。』 という理由があったのですが、出すタイミングがなく、けっきょくこういう形になってしまいました。 もっと考えるべきでした。すいません。
俺様はヘルガーだ。 ちったあ名の知れたとーぞくよ。 まぁ、今は捕まってンだけどな。 あーあ。 あんなところでカッコつけて無けりゃあきっと逃げきれてたぜ。 まーいーや。 だってな? 俺様はおたずね者ランク☆9だぜ? こんなんで捕まるはずねーだろ? こんな牢屋なんてひとひねり……… ふらっ…… おっと……持病の貧血が…… 急に立ち上がるとふらっとくるんだよなー こーだから、血がほしーんだよ。鉄分がな。 マトマジュースじゃダメなんだよ。 さて、火炎放射ーっと。 ゴオオオオオオオオオオオ!!!! ドロドロ〜〜 お……おい。予想外だぞ。 こんなんで溶けちゃったぜ? こんな牢屋で大丈夫か? 大丈夫じゃないだろ。問題だな。 まぁ、俺様としちゃあ楽でいいんだがな。 これで脱獄十回目だぜ。 最後に脱獄したのは5年前か。 俺様も結構トシいってるのかもな。 脱獄してるから、ランクもあがってるのかもしれねーな。 捕まってもな? 俺様は何度だって逃げ出してやるさ。 じゃあ、また会おうぜ。 _______________________________________________ 〜後書きのような物〜 昨日のチャットで。 っヘルガー簡単に捕まりすぎ という話がありましたね。 そうです。ヘルガーは脱獄も出来るのです。 貧血気味という設定は、後で思いついた。 でぃえすあいで書くのはツラい。 今度また正式に1話持ってきます。
大きい……ここがトレジャータウン…… 私が住んでた町から歩いて半日。 西の空に日が沈みかけてる。 やっとのことで、トレジャータウンって言う場所についた。 右側には何か小さな山のようなものが見える。 階段がたくさんあるけど……なんだろう。 さて、プクリンのギルドを探さなきゃいけない。 歩いてくるには少し遠かった……少し疲れてしまった。 あの家はちゃんと戸締りしてきたから大丈夫だと思う。 大事な物は置いてきたけどね。 道中、トレジャータウンやプクリンのギルドのことをいろいろ聞いた。 探検家になるにはまず、プクリンのギルドに弟子入りして、修業を積むのが一番の早道らしい。 トレジャータウンは、この世界の探検家の拠点、だそうだ。 どうりで私の町なんかよりはるかに賑わっているはずだ。 ここにいるみんなが探検家なのだろうか? おっとっと……こんなことしてる暇じゃなかった。 プクリンのギルドはどこだろうか……? ああ、あそこに看板がある。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ↑プクリンのギルド ←トレジャータウン ぼうけんへ→ ↓かいがん ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― こっちの方向にプクリンのギルドがあるんだ……って、この山のことだろうか? 階段の方向を指してるみたいだけど…… とりあえず、のぼってみよう。 たったったった……たたたた……とてとてとて……はぁはぁはぁ…… 数段上っただけで息が切れた。 どんだけ体力ないんだろうか。私は。 のぼり切るころには、完全に息が上がっていた。 ぜーぜーはーはーすーはーすーはー ……ふぅ。だいぶもどった。 気を取り直してもう一度プクリンのギルドがあるはずの山の上を見る。 顔を上げるとそこには、プクリンをかたどったテント(?)が一つあり、入口は格子戸になっている。 その周りにはたいまつが二つ立っており、夕焼けの空を照らしている。 それ以外には、謎のトーテムポールのようなものが二本、ばってん印の丸太。 ここがプクリンのギルドなんだ。 思わずポカーンとしてしまった。 なんというか……想像と違うというか…… どこにギルドがあるんだろう? まさかこのテントだけ……じゃないよね? とりあえず、進んでみよう。 入口の前に歩き進むと、地面の感覚が変わった。 今まで感じていた砂の感じではなく、何かすーすーとした感じがする。 下から風が抜けてくるというか……なんというか。 暗くてよく見えない……けど。 鉄格子まで目と鼻の先……まで近づいたその瞬間。 ずぼっ! な……足元がいきなり抜けたっ? ……と思ったら、地面に穴があいているだけだった。しかもたくさん。 穴があいている……というより、もともと網目状に棒が交差されて組まれた足場だったようだ。 何のためにこんな危ない床を…… よいしょ、と落ちた前足を引っこ抜きながら体勢を整えていると、どこからともなく声が聞こえてきた。 『ポケモン はっけん! ポケモン はっけん! だれの あしがた? だれの あしがた? あしがたは イーブイ! あしがたは イーブイ!』 突然の出来事だったので、思わず小さな悲鳴をあげてしまった。 しかもかなりの大声。驚いてまた足が穴に落ちるところだった。『よし。別に怪しい者じゃないみたいだな。通行許可を出そう。』 ずどどどどどどど なんだか重苦しい音を立てながら、目の前の格子戸が開いた。 奥には誰もいないはずなのに、どうやって開けているのだろうか。 ドキドキといつもより早く脈打っている胸を前足でなでおろしつつ、プクリンの形をしたテント(?)の中に入る。 テント(?)の中には、真ん中にある降り梯子(はしご)以外には、何もなかった。 それ以外に何もないということは、やることも一つなのだろうが、なかなか足が進まない。 下に何があるのか、という期待と不安のせいもあるだろうが、何より一番の原因は…… 四本足のポケモンに梯子のぼりおりできるの? と、言うのが一番の原因。 一つ下の階層を覗いてみるが、結構な高さがあり、落ちたら骨の一、二本持っていかれそうだった。(体が丈夫なら大丈夫だろうけど) 怖いな……なんでこんな作りにしたんだろう……絶対滑るよ。これ。お約束ってやつ…… 頭でそんなことを考えつつ、ゆっくりと、梯子に後ろ足をかける。 一段、また一段とゆっくり、慎重に降り進んでいく。 半分くらい下りて、やっと一つ下の階を見渡せるような高さの場所に来ると、何やら声が聞こえてきた。「もぅ! 全く! どこにイーブイがいるんだい! 本当に入ってきたんだろうね!」「確かに僕は見ましたよ。ちょっと小さかったけど、しっかりイーブイの足形でした。」「じゃあなんでいつまでも入ってこないんだい? もう結構時間がたつよ?」「それは……」 何やらもめているらしい。 あの声は、どこかで聞いたことがある。(ような気がする) もっとよく聞こえないかな……と下の階に注目した……その時。 つるっ 自分なりに……しっかりと握っていたはずなんだけど。 前足が……滑った。案の定。やっぱり滑った。お約束な気はしてたけど。 ご〜ん 頭から鈍い音が聞こえる。 背中と頭をうちつけたようだ。痛い。 幸いあまり高くないところから落ちたので、半泣きになったことと、頭にたんこぶができたこと以外、大きなけがはなかった。「だ、大丈夫かい? いきなり上から降ってきたけど……」 涙で滲む視界の中にいきなりカラフルな物体が写りこんできた。 こっちを見ているようだが、ぼやけていてどんな表情をしているかは分からなかった。 「まさか、君がさっき入ってきたイーブイかい?」 カラフルな物体の質問に、首を縦に振って答える。 それから、目を両前足でごしごしとこすり、頭と背中がひりひり痛いのを我慢しつつ、立ち上がった。 よく見えるようになった目で、もう一度カラフルな物体を見ると、どうやらペラップだったようだ。 「ん……? 君のその耳……まさか、あの時のイーブイなのかい?」 また首を縦に振る。 はい。とか、いいえ。とか口で言えばいいのに、なんだか恥ずかしくて。 「そうかい! 久しぶりだね♪ …………ところで、今日は何の用事があってきたんだい?」 私がプクリンのギルドに来たかというと…………プクリンのような探検家になるため。 そのために、ここに弟子入りをしたい、という理由がある。そのことをペラップに伝えなくては。 探検家になりたいこと、プクリンのギルドに弟子入りしたいこと。 かなり小さい声だが、懸命に説明する。 聞きとってもらえたかが多少不安だったけど。 「探検家になりたいのかい? それなら、おやかたさまのところに行かないといけないな。ほら、ワタシについておいで♪」 どうにか聞き取れてもらえたようだった。ふぅ。一安心。 ペラップがバサバサと音を立てながらもう一つ下の階層へ向かって飛んで行った。 まさか……ここもまたあの梯子……? 予想通り、今降りてきた(落ちてきた)梯子の隣にもう一つ降り梯子が掛けてあった。 今度こそ落ちないように、慎重に、そーっと降りる。 時間はかかったが、今回は上手に降りることができた。はっきり言って奇跡だと思う。 今更だけど……プクリンのギルドは、上から降りてくるようにして作られてたんだね。 だから梯子もあるし、窓もある。 どおりで一番上に小さなテント(?)しかなかったわけだ。 なんで下にも入口を造らなかったんだろう。下に入口を造ったほうが早いと思うんだけど…… 「さぁ、こっちだよ♪ 急いで急いで♪ おやかたさま。ペラップです♪はいります。」 ペラップが何やらマークがはいった扉をあける。 何故かここだけに扉がついている。流石は親方がいる部屋。他とは違う。 ……そう言えば、他の弟子たちはどこにいるのだろう。 何やら怪しい壺の前に居る一匹を除けば、他にはペラップしかいない。「ほら! 何してるんだい? 早くおいで?」 はっ。そうだった。 ボーっとタイムから意識を呼び戻し、ペラップが待っている方向へ急いで向かう。 扉を通るとそこには、大きな宝箱が二つ置いてあり、そこにはなんだかよくわからないまあるい物体がたくさん入っていた。 凄いものなんだろうなぁ……多分。 「おやかたさま、新しい弟子入り希望者です。よろしくおねがいします。」 そう言うと、ペラップは忙しそうに部屋から出て行った。 ……気を取り直して。 部屋の真ん中には、赤いじゅうたんが敷かれており、その上にプクリンがいた。 奥の壁のほうを向いている……何かをしているのだろうか? 「やぁっ! ぼくはプクリン! ここのギルドの親方だよ? って、久しぶりだね! 元気にしてた? ともだち!」 くるりんっ! カポエラーもびっくりの速度と勢いで、プクリンが180度向きを変えてこっちに向き直った。 あの体型でどうやって回転しているのだろうか。 まさか…… いや、なんでもない。ただの思い違いだろう。 「どうしたの? そんな顔してさぁ♪ ぼくがそんなに変かい?」 いや、あんな挨拶のされ方をすれば誰だって驚く。 はじめて会ったならなおさら。 初めてじゃなかったからこれだけですんだけど…… 「探検隊になりたいんだって? うん! 一緒に頑張ろうね! じゃあ、まずはチームの登録を……あれ? もしかして、君一匹かい?」 探検『隊』? チームの登録? ナンノコトダカサッパリわからない。 まさかとは思うが、プクリンに、二匹以上じゃないとなれないのですか? と聞いてみる。 「別に一匹でも活躍している探検家はいるし、一匹じゃダメって言う決まりもないけど、君、探検初心者だよね? もしも初心者が一匹で探検に行って、倒れたらどうするの? 誰も助けてくれないよ? だから、まだ慣れないうちは、誰かと一緒にチームを組んだほうがいいんだ。それに、チームでいたほうが、賑やかで楽しいよ♪」 にぎやかで楽しい……か…… そんな事とは無縁の人生(?)だったからなぁ…… ん……この場合はポケ生というべきなのか……? もちろん、無縁ということは、友達などという物はいない。周りからみると、きっと寂しい奴なんだろう。自分では、別にそんなこと思わないけど。 だから、いきなりチームを組め、とか言われても困る。 友達どころか知り合いすら少ないし…… 「大丈夫だよ♪ 見つかるまで探せばいいから! じゃあ、一応仮登録しておくよ♪ ほら、これを受け取って♪」 プクリンが床に箱のようなものを置く。 箱には『ポケモン探検隊セット』と書かれてあった。 あけると、探検隊バッジなるものと、地図と鞄が入っていた。(自分の鞄もあるのだが)「まず、探検隊バッジ。探検隊のあかしだよ。そして、その地図。不思議な地図と言って、とっても便利な地図なんだよ♪ 最後に、トレジャーバッグ。拾った道具を取っておけるよ♪ 今は小さいけど、活躍によって大きくなるとっても不思議で便利な鞄なんだよ♪」 一度にたくさんの説明をされて、頭の中がぐちゃぐちゃする。 でも、全部便利な物、ということはわかった。一応。「さぁ、トレジャーバッグの中身をのぞいてごらん。」 中には、布状の物が入っており、きれいにたたまれていた。 が……よく見ると、値札が付いている。『特売! 800ポケ! カクレオン商店』 特売品……まあいいけど。プクリンは全く気がついてないようだ。 言うべきだろうか……「それは、『ともだちリボン』っていう、持ってると不思議と人気者になれるリボンなんだ♪ それを渡しておくから、探検隊になりたそうなポケモンを誘ってみたらどうかな?」 誘ってみたら? か……一度も友達作ったことない私に……できるのだろうか? 早速、『ともだちリボン』を頭にかけてみる。 目にばっさりとかかって前が見えなくなった。どうやら頭に付けるものではないらしい。 首に巻くものなのかなーと、必死で巻こうとするが、前足をじたばたさせるばかりで、いっこうに巻ける気配がない。 見かねたのか、プクリンが手伝ってくれた。きれいに首に巻いて、トレジャーバッグを体にかけると、気分だけは探検隊になれた気がした。 ……………て言うか、値札が……ちくちくするんだけど…… この特売ってところが特にちくちくする。 「仮登録で、チームができるまでは、依頼や探検はさせてあげれないから、がんばってね♪ とりあえずは、ここにいてもいいから! ペラップ!」 プクリンが、ペラップを呼ぶと、「はいはい、ただいま〜」とペラップが飛んできた。 すぐ近くにいたのだろうか。すぐに部屋に入ってきた。「一つ空き部屋があったよね。この子に使わせてあげて。えっと、一応、仮登録して、ぼくの弟子になったからね。今日はもう休ませてあげて。」「はい♪ わかりました♪ あの部屋ですね。 かしこまりました。……さぁ、ついておいで。」 ペラップに再び連れられて、奥にある部屋に案内された。 そこは、一匹で使うにはなかなかの広さで、わらのベッドが二つあった。 窓も付いており、快適そうに見えるが、一番奥の部屋なので、出入りに時間がかかりそうだ。 「この部屋は自由に使っていい。 早くパートナーが見つかるといいな♪」 そう言うとペラップはまたも忙しそうに飛んで行ってしまった。 パートナーか……きっと、私にできるはずがない。 今まで生きてきて、友達らしい友達を作ったことも、出来たこともない。 寂しい……と思ったことはなかったけど。 うん……ギルドに他の弟子たちがいないのが気になるけど…… 今日は暗いし、もう寝ようかな…… 初めて使うベッドに体を丸めてのせる。ふかふかしていて、とても気持ちがいい。 目を閉じ、耳をぺたりと体にそえる。半分しかない右耳も、最初は違和感があったが、既に慣れてしまった。 慣れって怖いね。 あんなにショックだったのに、もう立ち直ってる。 プクリンのギルド生活も、こんな感じですぐに慣れてしまうのだろうか……? きっと、すぐに慣れることができる……はずだよね。 今日はドキドキすることがいっぱいあったけど、明日はどんなことがあるのだろうか? いいことあるといいな………… 〜第2話に続く〜 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき的な物体。 はい。第1話です。ありがとうございます。 前回から大幅に遅れてしまいましたが、入門編ということで、書かせてもらいました。 当初、先にパートナーを仲間にする予定でしたが、先に入門したほうが、辻褄が合うので、先に入門させてしまいました。 ただ、ともだちリボンを持たせたかっただけかもしれない。 カクレオンの店で買えない? そこは気にしてはイケナイ。 そして、引き続き おかしいところの指摘をお待ちしております。 指摘されたところは、加筆・修正していくので、どんどん言ってください。 て言うかむしろ、見つけてほしい。 見つけてください! お願いします!
ふぅ……昨日は緊張したなぁ…… ギルド生活一日目。朝からいきなり寝坊した。 おこしてくれたっていいじゃない。仮入門だからかな? 今さっき、ペラップが思い出したようにやってきて、おこしてくれた。 相変わらずギルドには他の弟子がほとんどいない。 一体どうなっているのだろうか。何かあったのかな? ともだちリボンをバッグにしまい、頭から体にかける。 ギルド入門(仮だけど)を済ませて一安心。 済ませたことには済ませたが、どうやら初心者はチームを組まないといけない(組んだほうがいい)ということらしい。 と、言う訳でとりあえず誰か一緒にやってくれるポケモンを探しに行こう。 とはいっても……どうやって探せばいいのだろうか? とりあえず、外に出てみようかな。 プクリンの部屋の前を通り、梯子に前足をかける。 相変わらずこの梯子、怖い。毎回慎重に登らないといけない。 はぁ。やっとのことで真ん中のフロアについた。 ん? 向こうから声が聞こえる。あの調子に乗ったような軽い口調は、ペラップかな? 紙の張り付けてある壁の前でうろうろしながら大声で独り言を喋っている。「どういうことなんだい! せっかく捕まえたのに逃げられるだなんて! ぶつぶつ……ん? はっ!」 私の視線にペラップが気づいたようだ。 ここまで熱中して独り言を言えるポケモンを、初めて見た気がする。 まぁ、独り言を言うポケモン自体、あまり会ったことがなかったが。 「い、いつからそこにいたんだい? バサバサ! おっと、なんでもないよ! この後ろには何もないんだからね! さぁ、あっちへ行った言った!」 露骨に何かを隠そうとしている。 ペラップってもしかしたら……結構わかりやすいキャラなのかもしれない。 でも、何を隠しているのかがとっても気になる。 じろじろと見ていると、ペラップがまたしても大声でしゃべりだした。「こ、これはだな、おたずねもの掲示板と言ってだな……全国のおたずねものが貼り出されているんだ。さぁ、わかったら行った行った!」 聞いてもないことをペラペラと喋るペラップ。 そこまでして隠したい物とは何なのだろうか。 余計見てみたくなっちゃう。 だけど、ペラップがどんどん顔を赤くしていくのが見えたので、ひとまず退散することにした。 一番上部に上ると、既に鉄格子が上がっているのが見える。 いつ開けたのだろうか……? ずどどどどどどど とかいう音がすればわかるはずなんだけどなぁ…………まぁいいか。 ん〜! 朝日(昼だけど)が気持ちいい。 初夏の日差しは温かいような、熱いような、乾いた感じだった。 前足をまっすぐのばし、体を後ろに引いて伸びをする。 体をぶるぶるとふって、準備完了! ……とはいっても、毎朝やってるんだけど。 で。どこに行こうか? ―――――――――――― 〜一方その頃、とある場所〜「んじゃ〜、行ってらっしゃい。久々のもふもふ活動、がんばってくだしゃいな。」「任せておけ。全世界を狐ともふもふにしてやるのじゃ!」「よいしょ〜。はい、テレポート!」 ぶい〜ん「あ、失敗したかも……変な所に飛んでないといいけど……」 ぶい〜ん バキバキバキ! どしゃ! いたたたたた…… ここはどこじゃ? 全く……あやつめ、また変な所に送りよったな。 もっとまともなところに送れ、と毎回言っておるじゃろうに。 帰ったらもふもふの刑じゃな……うむ。 確か、テレポートの効力は一日じゃったかのう。明日を覚えておれ。 ……さて、このあたりで適当にもふもふ同志を増やすとしようかのぅ。 ふむ。ここは海岸のようじゃの。ここなら他の奴にはあまり見られないじゃろう。 なんとかして誘いこんでもふもふじゃ! ――――――――― うん。とりあえず、海岸に来てみたけど。 誰もいない。 海岸なんだからクラブくらいいたっていいと思う。 でも、トレジャータウンには今日はもう行きたくない。 みんなの視線が右耳に集まっちゃって……なんか恥ずかしかった。 特にMADとか言うチーム……思いっきり睨んできた。はっきり言ってあれは怖い。 はぁ……誰もいない場所にいても誰もチームなんて組んでくれない……どうしようか。 海岸に座りこみ、またしてもボーっとタイムが始まった。 ―――――――――― ぬぅ……いつになったら来るのじゃ……やっぱり自分から動かないとだめかのぅ? ……お? ようやく誰か来たようじゃな。朝から待ったかいがあったというものじゃ! よいこらしょっと。 ふふふ……まずは声をかけることからかの!「そこのイーブイ、ちょっといいかのぅ?」 ――――――――――「そこのイーブイ、ちょっといいかのぅ?」 ん……? 誰かに話しかけられた気がするなぁ…… 多分、気のせいだろう……やけにはっきりしてた気もするけど…… 最近なんだかおかしいなぁ……「そこのイーブイ! 聞いておるか?」 はっ……やっぱり気のせいじゃない? 後ろに振り向くと、大きな金色をした、尻尾が九本ある……狐さん? さっきまで誰もいなかったのに……「ふふ……可愛いイーブイじゃ。じゅるり。」 なんだかさっきから口をじゅるじゅると鳴らしている。 おいしそうなものが目の前にある時にならすあれだ。 おいしそうな……もの……?「安心せい、食べたりはせん。じゅるる。ん? お主、右耳が半分しかないようじゃが、何かあったのかのぅ? 」 半分しかない私の右耳を不思議そうに見つめている。 やっぱり……普通じゃないのかな? 私はそんなに……どうとも思ってないんだけどな…… それと、口をじゅるじゅるならしながら『食べたりはせん』って、説得力なさすぎるよ……「はっ! こんなことしている暇はなかったんじゃった。いきなりじゃが、どうじゃ? もふもふされてみんか?」 もふもふ? 何のことだろうか……? ああ、寝る前に自分の尻尾を抱いて顔を埋めるあれかな? 尻尾が大きいと毎晩できるもんね。今は別にしてもらわなくても……いいや。 って言うか、してもらうものなんだろうか……? 首を横に振って、またぼーっとタイムに入る。 これであきらめてくれるといいんだけど…… 「ぬぅ……嫌と言われてもしてやりたいところじゃったが……どうかしたのか? やけに元気がないように見えるぞ? まぁ、いつものお主は知らぬから、素で元気がないかどうかはよくわからんがのぅ。」 夕日がきれいだな…… 明日は友達できるかな…… 波が足に当たって冷たいな…… それに、金色のふかふかしたものが…… ……ん? 金色のふかふかしたもの? ぁ……よく見ると、さっきの金色の狐さんが隣に座っている。いつの間に。 「うむ。元気のない奴にしたところでつまらぬからの。さぁ、どうして元気がないのか話してもらうとしよう。相談になら乗るぞ? まぁ、嫌なら無理にとは言わぬが。」 是非相談してくれと言わんばかりに目をキラキラさせてこっちを見つめてくる。 この状況……言わないわけにはいかないよなぁ……「どうした? 何か言えないわけでもあるのかの? もしかしてお主、相当の恥ずかしがり屋なのか?」 ……仕方がない。 ……これまでの経緯を、手短に話す。 右耳が半分になってしまったわけ、ギルドに入門したこと。 一緒に探検隊をやってくれるパートナー(すなわち友達)を探している、ということ。 それが全く見つからない事、そして今に至ること―――「ほぅ……ふむふむ。それは大変じゃったのぅ。それで元気がないのじゃな……ふむ。」 こくこくこく、と何かを理解したように金色の狐さんは首を縦に振り、頷いている。 しかしこの狐さん、どこからともなく現われて話しかけてくるなんて、怪しいよなぁ…… 油断させておいてパクッ……とかならないよね……? 「よし。それじゃあ、わしが一つ昔の話をしてやるとするかのぅ。あれは――――」 頼んでもいないのにいきなり話しだす、金色の狐さん。 なんでこうなるんだろう? 変なポケモンもいるもんだなぁ…… まぁ、話を聞くだけだったらいいけどさ…… 変なポケモンだとは思いつつも、話に耳を傾けることにした。 ――――――――――――――――――――――――――――― あれはのぅ……かなり昔の出来事じゃった。 昔はわしはの、お主のように……その……恥ずかしがり屋のところがあったのじゃ。 他者と接することに苦手意識があってな、とあるポケモンと出会うまで、ずっと一匹でいることが多かったのじゃ。 わしは、いつものように川辺で化ける練習をしておったのじゃ。 ふと、誰かの視線を感じたわしは、化ける練習を中断し、辺りを見回したのじゃ。 するとのぅ、一匹のポケモンが、のぞき見をしていたのじゃ。 もちろん見られたわしは驚いて、近くの茂みに隠れたのじゃが…… あやつは電光石火でわしの近くまで飛んできたのじゃよ……それは鳥肌物じゃったぞ。全身の毛が逆立ちそうになったからの。ほっほ。 それでのぅ? あやつは何をしたと思う? 話しかけてきたのじゃ。『キミ、すごいね! 化けることができるなんて!』と。それは楽しそうに尻尾を揺らしながらのぅ。 あまりいもいきなりの出来事じゃったから、わしは一歩後ずさりをしたのじゃ。すると、あやつは一歩こっちに歩み寄ってくるのじゃ。 わしが一歩退く、あやつが一歩前に出る。それを繰り返しているうちに、わしは後ろの川に落ちてしまってのぅ。 幸い、流れはゆるやかで、浅かったからの、溺れることはなかったのじゃが……あの時はまだ水に耐性がなくてのぅ…… わしは混乱してしまってのぅ……まぁ、最終的にはあやつに助けてもらったのじゃが。 恥ずかしくなって逃げ出したくなったのじゃが……助けてもらったし、逃げるに逃げられなくなってしまったのじゃ。 そして、緊張と寒さでぶるぶる震えていたら……あやつがとある木の実を差し出したのじゃ。 真っ赤で、トゲトゲのついたような木の実――――マトマ。 食べると体の内側からあったまってくるようでの、今でもあの味は忘れる事ができん。 そしてのぅ? あやつは言ったのじゃ。『キミはいろいろな物に化けることができてすごいなぁ……』 わしは顔に何か熱いものが昇ってくるのを感じておったのを、マトマのせいにして、とりあえず頷いておいた。 そして、何を思ったのか、その場で化けてみたのじゃ。不思議じゃろう? 先ほどまであんなにびびっておったのに、初めて他者の前で化けたのじゃ。 あやつの驚いた顔……鮮明に覚えておる……ぷぷっ……今思い出しても笑えるのぅ。 それでの? 得意になってわしはいろいろな物に化けて、あやつを驚かせたり、楽しませたりしたのじゃ。 気がつくと、わしも一緒に笑っておった。『えへへ、やっと笑ったね。』 おそらく、わしが変わった瞬間じゃったろうな。 その日の翌日から、わしらは毎日といっていいほど一緒に遊ぶようになったのじゃ…… あやつに化かしを見せることによって、化けることにも自信が持てるようになっていったのじゃ。 その頃から、人間に化けて人間の町に出かけたりもしたのぅ…… あやつと一緒に、散歩したり、葉っぱを化かして作ったお金で団子を掠め取ったり…… あの時は楽しかったものじゃ。毎日が幸せだったからのぅ。 気がつけば、わしは笑うことが増えていたのじゃ…… じゃが、楽しい時はあっという間に過ぎ去るものでな…… わしはこう見えても、結構長生きができるのじゃ。だがのぅ……だれしもがそんなに長生きができるわけじゃないのじゃ…… あやつも、そうじゃった……まぁ、あやつに限らず、友になった者は皆そうだったのじゃがのぅ…… まぁ、仕方ないのじゃ。これもまた、わしがキュウコンとして生まれた運命だったのじゃろうな。 おっと、話がそれてしまったの……さて、そろそろ元の話にもどすとするかの…… そうじゃ、あやつは最後まで笑っておった。そしてこう言ったのじゃ。『キミと友達になれて本当によかったよ……こんなにきれいな美狐さんと友達だなんて、ぼくは世界一ラッキーだったよ……』 ふん……最期の最期までマイペースじゃったよ。 ……全く。変わるきっかけをもらったわしのほうがよっぽど運がよくて幸せ者なのにのぅ…… あやつは本当にいい奴だったのぅ……長らく生きてきておるが、心の底から親友と呼ぶのにふさわしいいのは、あやつのほかには数えるほどしかおらんしのぅ。 つまり、わしが言いたいことはのぅ……『どんなに恥ずかしがり屋だろうと、内気だろうと、変わっていようと、心を通わせることのできる友は必ずできる』ということじゃ。 現に、わしが体験しておるのじゃから、まちがいないぞ。 きっとお主にも、近いうちに友ができるときが必ず来る。わしのことを見てくれていた、あやつのように、お主のことを見てくれる奴がきっといるはずじゃ。 お主は結構ヘビーな体験をしておるが、その現実から逃げずに、ここまで来たのじゃろう? 逃げずにやって来たのなら、きっとその分、縁がめぐってくるじゃろうて。 それと、もう一つ。 もし、友と出会えたなら――――その時間を、思い出を、大切にすることじゃ。 お互い支えあって、強く生きるのじゃぞ。 ほっほっほ。わしはお主が気にいった! どれ、ここで会ったのも何かの縁じゃ。お主が良い友に出会えるよう、おまじないをかけてやろう。 皆には、秘密じゃぞ? それ、もふもふもふ…… ふふ……かわいいのぅ……大丈夫じゃ、お主にはこの後すぐに―――――― ――――――――――――――――――――――――――――――――「ねぇ、ここで寝られると困るんだけど。サッサとどいてくれない?」 体を左右にゆすられて、目が覚めた。 どうやら眠っていたようだ。 いつから眠ってたんだろうか……? 確か……金色の……何かに……にもふもふされてから意識が無くなって……って、あれ? 「変わったポケモン……そう言えば、見かけない顔ね。あなた、この辺のポケモンじゃないでしょ? それくらいお見通しよ。」 よっこらせ、と体を起こす。 改めて、声のするほうに向きなおるとそこには、薄緑の体と、頭に大きな葉っぱを持ったポケモンが座っていた。 声の調子からしてとても気が強そうだ…… 「なんて言う名前なの? 私は、チコリータ。まぁ、見てのとおりよ。あなたは?」 チコリータと名乗った薄緑のポケモンに、今度はそっちが自己紹介するばんでしょ、的な目で見られたので、仕方がなく自己紹介をする。 出身地、歳、名前、ここに来た理由を、簡単に説明する。 相手は名前しか言っていないのに、なぜこっちはこんなに言わされないといけないのだろうか…… 「ふぅん……イーブイって言うんだ。で、探検隊をやりたいけど、チームを組むポケモンがいなくて困ってると……ふーん。こんなのが探検隊を、ねぇ。」 こんなの…… こんなのって言われた…… 確かに私は内気だし、積極性もないけど、こんなのって言われると、ちょっと悲しい。 「そうねぇ……私が、一緒にやってあげようか?」 ……え? 今、なんて? 私には、「一緒にやってあげようか?」って聞こえたような気がするんだけど。 な、なんで?「聞こえてる? 一緒にやってあげようか? って聞いてるの。」 ―――――――――――――――――――――――――――― じゃあ、今日はとりあえず荷物まとめてくるから、明日プクリンのギルドの前にいてくれ。 ということで、チコリータは去って行った。 なんだかとっても気が強そうだけど、とにかくギルドに正式加入できそうでよかった。 それにしても……あの金色の……えーっと、誰だっけ……まぁいいや。 不思議なポケモンだったなぁ……『心を通わせることのできる友が、近いうちに必ずできる』っていってたよぅな…… まぁ、そのうちできるってことだよね! 2話につづく ―――――――――――――――――――――――――――――― 〜あとがき的物体(?)〜 チャットの副産物、長老の昔話より。 2話へのつなぎ+長老とのコラボレーション(?) しかしこれは(仮)ver.ですので、いろいろと直すべき場所はあると思います。 長老が話してるところとか話してるところとか話してるところとか。 途中で主人公が喋らなくなるのは……寝ちゃtt(ry と、言う訳で、1,5話(仮)完です。 ありがとうございました〜 【何をしてもいいですとも】【長老への……なのよ】
プクリンのギルドに入門(仮だけど)して二日目―――――― 海岸で……不思議なことが起きた。 確か……いつもの通り、ボーっとしてたんだけど……よく思い出せない。 気がついたら海岸で寝てたわけだけど……うん。 あれは本当に夢だったのだろうか……あの……金色の……なんだったっけ…… なんだかよくわからないけど……そこだけ記憶が曖昧だ。 何か大事なことを言われた気がするけど……『心を通わせることのできる友が、近いうちに必ずできる』って言っていたことしかおもいだせない……どうなってるんだろう?「そうねぇ……私が、一緒にやってあげようか?」 目が覚めた時に目の前いいたのは、薄緑の体と頭に大きな葉っぱを持ったポケモン、チコリータ。 私のことを『こんなの』って呼んだり、そこからどいてとか言っておいて、話しかけてくる、よくわからない性格の持ち主。気は強そうだけど。 最初はこれもまた夢かと思ったけど、つるのムチで半分叩かれながらゆすり起こされたんだから現実なのだろう。 「聞こえてる? 一緒にやってあげようか? って聞いてるの。」 うん。気のせいじゃないみたい。 こんなに早く一緒にやってくれるポケモンが見つかるとは思わなかったなぁ…… ……でも、出会って10分も経ってなにのに、話を聞いただけで、『一緒にやってあげようか?』って言うかな……普通。 なんか怪しい……けど、本当の好意で言ってくれているとしたら…… うーん……どうなんだろうか……「ん? なんなのよ。その疑りの目は。別にいいのよ? そっちがいやなら。私は別に一緒にやってあげなくたっていいんだから。」 とっさに首を横に振り、『別にそんなこと思ってないない』といった感じの表情を作って、チコリータに向き直る。 ここまで来ておいてやっぱり一緒にやってあげないとか言われたら、私泣くよ。きっと。怪しいとは思っていても。 ……でも、一応聞いておきたいことがある。 どうして、話を聞いただけで一緒にやることにしたの? ――――――ということを。「ん〜? 何か言いたげね? 何? なんでいきなり一緒にやってくれることになったのかって? …………そ、それは……」 一瞬、物凄く複雑な顔をした後、しばらくの沈黙が続く。 そのあと、くるりと後ろをむき、何やらもじもじとしている。 何がそんなに言いにくいのだろう。「そ、それは……な、なんとなくよ! なんとなく! なんとなーく、かわいそうだったからやってあげようと思っただけよ!」 物凄く動揺しているようだ……何かまずいことを聞いてしまったのだろうか。 はっきり言って、どこにそんなに恥ずかしがる要素があるのかがわからない。 よく見ると、さらに小さな声でぼそぼそと何かを喋っているようだ……が、上手く聞き取れない。 「別に……私も……興味が……とか……友達が……とか……そういうのじゃ……ぶつぶつ」 声が小さくてよく聞こえない…… もう一度大きな声で言ってくれる? って頼んだら何故かつるのムチでたたかれた……痛い。 結局、どうして一緒にやってくれることになったのか、ということの詳しい理由は聞けずじまい……「と、とにかく、今日は荷物をまとめに家に一旦帰ってくるから、明日。明日の朝、交差点で待ってて! いいわね! 絶対に遅れないこと!」 つるのムチで私の背中をばしばし叩きながら走っていく。 結構痛いんだよ……つるのムチ。 そう言えば、細かい集合時間を聞いていない……遅れるなとか言っておきながら詳細時間を教えないって…… 細かい集合時間を聞こうとチコリータの走って行ったほうに振り向くが、その姿は既になかった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ……うん。これが昨日の出来事だよね。 昨日の出来事を頭の中で整理して、目をこすりながらベッドから起き上がる。 まだ外は薄暗い。もう少し寝てようかな、とも思いつつ、身支度を始める。 朝、一番最初に毛づくろいするのだが、毎日時間がかかる。 特に、尻尾。寝癖が酷い。それに、よだれでべとべとになってるときもある。 夜寝るとき、尻尾を体の前に持って行って、抱き枕のようにして寝るのだが、気づかないうちにしゃぶっていることがあるらしい。 口の中毛だらけだったからすぐに気がついたんだけど。尻尾がべとべと&ぼさぼさになっててひどかった。 何度も寝るときは尻尾を抱き枕にするのはやめようと思ったけど……癖になっちゃって、知らない間にそういう体勢で寝てる。 しょうがないと思って最近はあきらめてるけど。 尻尾の毛づくろい、完了。結構な時間がかかる。毎朝。 鞄の中身をチェックして……ともだちリボンしか入ってないのはわかってるけど。 一度はずしちゃったら自分でつけれないのが難点、だろうか。こんなことじゃあほとんどのリボン系統使えない気がする…… リボン、かぁ……そういうのあまりつけたことないなぁ……ともだちリボンだって頭につけれなかったし……きっとそういうのは私には似合わないと思うけど。 相変わらずすっからかんな弟子の部屋を横目で確認し、広間へ出て、梯子を上る。少しづつだが、のぼるのにも慣れてきた。 プクリンのギルドの入口である鉄格子をくぐると、そこには既にチコリータの姿があった。 まだ薄暗いのに……自分でもかなり早起きしたつもりだったんだけど。 「遅い! 何分待ったと思ってるのよ! 朝日が昇るずっと前から待ってたのよ? それなのにあんたはねぇ……」 朝日が昇るずっと前って……どれだけ待ってたんだろう…… ん……? チコリータの背中に、何か大きな物が。 背負っている、といったほうが適切だろうか。自分の体と同じくらいのを背負って普通に立っている…… 「さぁ、早く案内して。これで私も探検隊になれ……こほん……一緒にやってあげるんだから。」 本当に早く案内しないとまたつるのムチでたたいてきそうな状況だったので、おとなしく案内した。 何かとすぐつるのムチでたたいてくるんだから……どうにかしてほしい。 まだ朝早いので、下ろしてもらって鉄格子を閉めておく。どうやって開けたり閉めたりしているのかは謎だけど…… 梯子を降り、一番下の階へ。 ここがプクリンの部屋……と、説明しようと後ろを振り向く。 後ろにはチコリータがついてきているはずだったのだが、そこに見えるのは梯子だけ。 一瞬チコリータが梯子になってしまったのかと思った。 ……上を見上げると、鞄が梯子と壁にひかっかって動けなくなっているチコリータの体が見えた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――「まったく……どうなってるのよ……この建物は……」 梯子に引っかかってたのを助けた後、ずっとこの調子だ。 プクリンのギルドのヘンテコな構造に疲れた様子で、ぐったりとしている。 やっぱりこの建物の構造ははじめてくるポケモンにとっては疲れるものらしい。 また随分と感情の起伏が激しいポケモンと知り合っちゃったもんだなぁ…… まぁ、それは置いておいて、ペラップに報告を済ませた後にプクリンの元へ行き、正式入門することになった。 ここに来るまでに三日……短いようで長かったようで……でも、家にいた時とは比べ物にならないくらいいろいろと出来事があって…… なんというか……とても充実した三日間だった気がする。 どんなポケモンであっても変わらない接し方をするプクリンに多少驚きつつ(いい意味で)、チームの登録を済ませた。 済ませた後に、プクリンから予想外の言葉が……「おめでとう! これで君たちは正式入門したことになったよ! じゃあ、早速君たちのチーム名を教えて!」「チーム名? そんなもの、考えてないわよ? イーブイ、あんた何かいいチーム名ない?」 チコリータに同じく。チーム名なんて考えてなかった……なんかいいのあるって聞かれても、私も考えてないから困ったことになった。 うーん……うーん……よし! 決めた! これでどうだ!?「………うん。さ、最後に聞いても……いい……かな? 本当に、その名前でいいの?」「イーブイ……あんたそれ、本気で言ってるの?」 もちろん。私はいつでも本気だよ! ……嘘だけど。 何故かプクリンとチコリータが引いてる。なんでこんな反応なの? とーってもいいネーミングだと思うんだけどな…… ほら、とってもいいと思わない?『ぶいさんず』! 「………わかった。じゃあ、『ぶいさんず』で、登録するよ♪ とうろく♪ とうろく♪ たぁー!!!」「ちょ……え、ちょっと待ってよ……本当にこれで登録されちゃったの……?」「うん♪ こんなチームの名前、初めて聞いたけどね。」「……………………………イーブイに任せた私が悪かった……はぁ。」 え? え? なんでそんなにがっかりしてるの? なんでプクリンはそんな顔してるの? わけがわからないよ! すっごくいいじゃない! 『ぶいさんず』! なんでこの名前のよさがわからないのかなぁ…… とにかく、これで私たちはこれで完全に弟子入りできた。 チコリータは始終不満そうな顔してたけど、どうしてなのかよくわからない。 ペラップによると、明日から依頼を受けることができるらしいけど…… 初めてだからしばらくの間はペラップが依頼を選んでくれるらしいから、掲示板の前には行かなくてもいいって。 そう言えば……掲示板を見ようとすると、ペラップが毎回どこからともなく飛んできてなんやかんやで理由をつけて追い払おうとしてくるんだけど…… きっと、難しい依頼はまだ早いってことだよね。 ふぅ……ちょっと疲れちゃったから、足らに備えてお昼寝しようっと…… チコリータはもう隣で寝てるし……そりゃあ日が昇る前から起きてれば眠たくなるよ。 まぁ、そんなこんなで、私たちの探検が、始まった。 後篇に続く
急ぎで仕上げたので、ぐちゃぐちゃでし。蹴るあの人が来たものでして…………すいませぬ。後書き兼補足は2話後編にて、まとめて書きますゆえ、お許しください。