空からスバメが落ちてくる。あのスバメは一体どこからやって来たのだろう。
船の甲板から海を眺めていた旅人は驚いた。
頭上には夏の雲が広がり、その雲が柱のようにどこまでも天の上方へと伸びている。
そういえばこの海の付近には『空の柱』という場所があると聞いたことがある。
それは、まさに空想上のお話の中にある場所で、確かその神話によると、海と大地が激しい戦いを繰り広げた時、雲の中から竜が飛び出してきたというのだ。
落ちてきたスバメを受け止めた時、そのスバメがとても傷付いていたので旅人はまた驚いた。
スバメの胸にはお守りがかかっていた。このお守りを、どこかで見たことがある。
……ああ、確かこのお守りは、今年のポケモンリーグチャンピオンが、自分のポケモン達に持たせていたものとよく似ている。
テレビで見た光景を今でもかすかに覚えている。本当に、瓜二つと言ってもいいくらい、そっくりである。
旅人はもう一度、雲の方を仰ぎ見た。
一瞬、あの雲の中で、稲妻が走ったような光景が目に浮かんだ。
あの雲の中で、砂嵐や吹雪が轟音をたてているような、そんな錯覚が、ふと脳裏をよぎった。
遙かな天上から落ちてきたこのスバメが、神話の時代からの唯一の生還者のように旅人には思えた。
早くちゃんと、元の持ち主のところに返してあげないとな。
腕の中のスバメを見やりながら旅人は考える。
それから彼は、赤ん坊にミルクを飲ませるように、傷付いたスバメにミックスオレを与えてやるのだった。