〜とある王様のお話〜
彼は生まれてからずっと1人でした。
彼は1人である事に疑問を持つ事はありませんでした。
彼のトモダチは善悪のない存在である、ポケモン達だけ。
彼の大切な者はトモダチだけ。
時が経ち、成長して、彼はだんだん気づき始める。
自分と同じ人間が、ポケモン達を苦しめているという事に。
彼の耳にはトモダチの悲痛な叫びや、苦しみや、憎しみが、怨念のように響いてくる。
彼は耳を塞ぐという事をしなかった。
トモダチの悲しみを聞き
トモダチの憎しみを聞き
トモダチの失意を聞き
彼はいつしかポケモンと人間は共にいるべきではないと考えるようになりました。
ポケモンにとって人間は邪魔で、彼らがシアワセになるためには人間と離れさせなければならないと。
自分は何ができるのだろう。
小さな王様は考えました。
トモダチを助けるために。
トモダチをシアワセにするために。
自分は何ができるのだろう。
孤独な王様は考えました。
(僕は一体何をすればいいんだろう?)
〜とある兄の話〜
彼は昔は2人でした。
彼と弟はいつでも一緒。
なんでも一緒。
彼らは同一で平等。
けれど2人は離れ離れになってしまいました。
弟と離れて彼は途方に暮れます。
自分はこれからどうすればいいんだろう?
自分はこれから何をすればいいんだろう?
離れた弟と同じ事などできるはずもなく。
母と喧嘩別れした父に、弟の事など聞けるわけもなく。
彼はイッシュと繋がる空を眺めて、1日を過ごしていました。
そんなある日。
彼は彼女に出会います。
オレンジ色の体に、長い尻尾。
そして尻尾の先には赤く燃え続ける炎。
その町の博士は言いました。
「ヒトカゲは最後まで進化するとリザードンになるんじゃ」
リザードン
その名前を聞いたとき、彼は思いました。
ポケモントレーナーになったら
ポケモントレーナーになったら、空を飛んで、海を渡って、弟のいる所まで、1人でいけるのではないか?
「・・・・・・一緒に、来てくれるか?」
彼が彼女にそう言うと、彼女は嬉しそうに彼の胸に飛び込みました。
(さあ、これからどうしよう)
〜とある弟の話〜
彼は昔は2人でした。
彼と兄はいつでも一緒。
なんでも一緒。
彼らは同一で平等。
けれど2人は離れ離れになってしまいました。
兄と離れて彼は途方に暮れます。
自分はこれからどうすればいいんだろう?
自分はこれから何をすればいいんだろう?
離れた兄と同じ事などできるはずもなく。
父と喧嘩別れした母に、兄の事など聞けるわけもなく。
彼はカントーと繋がる空を眺めて、1日を過ごしていました。
新しい友達も出来ました。
おっちょこちょいで少しドジな女の子と
クールで知的な男の子
けれど、何が起こるわけでもなく、街から出るわけでもなく、彼は新しく出来た友達と一緒に平凡な毎日
を過ごしていました。
兄に会いたい。
兄に会いたい。
10歳になれば、兄は迎えに来てくれるだろうか?
そう思って待ち続けて5年間、10歳になっても、兄が現れる事はなかった。
兄に会いたい。
兄に会いたい。
1人は寂しい。
(兄さん・・・・・・今日も来ないんだね)