どうも、中二全開、駄文鯱ことオルカです。 上達するためには数を書かねばいけないかと思い、このたび人生初めての長編小説を書くことにいたしました。 肝心の内容はと言いますと、ポケストの方に投稿した、『陰から覗く日向』に出てくる女の子、天野夏希ちゃんのお話を書かせていただきます(読んで無くても多分大丈夫です)。とりあえず大体の設定は考えてありますが、行き当たりばったりな所も多く、よく止まったりするかと思います。どうか温かい目で見守ってやって下さい。とりあえずは書かないと始まらない気がしたので。 作品には全部、【好きにしていいのよ】タグを付けておきます。 楽しめるかは微妙だと思いますが、よろしくお願いします。
日も暮れた、深い深い山の中。歩いてくるのは、一人の幼い子供。 うつむいて、かすかな嗚咽を漏らしながらも、細い山道をとぼとぼ進んでいく。 ――彼女の親は今日、死んだ。 彼女の進む先に、目的地など存在しない。行く当ても無い。すでに来た道も見失った。 それでもただひたすら、小さな足を動かし、彼女は歩き続けたかったのだ。 その悲しみが消えうせるまで……。 引いていく波のように、だんだんと悲しみも心の底へ戻っていった。重苦しいものはまだ残っているけれども。思考力を取り戻した彼女は、おうちにかえりたい、と思った。 でも帰れない。深く入り込み過ぎて、後になってようやく気付く。大抵の子供がそうするように、彼女もまたそうだった。とたんに、また悲しさがこみ上げて来るようだった。「おかあ、さん」 もちろん、その呟きに対して彼女の母親が来てくれるなどということはありえない事なのだ。その呟きを聞いていたのは辺りの木々と、空で輝いている三日月くらいだろう。 少女は、立ち止まった。そして、一番そばに生えていた木の根元に座り込み、そのまま動かなかった。疲れて、眠ってしまったようだった。 その時彼女が一番見たかった夢は、きっと父親と母親の夢だっただろう。【好きにしていいのよ】
冷たい夜風がさらりと頬に当たって、目が覚めた。 ふと、何かのぬくもりを感じたような気がする。いや実際には、自分の目の前には何もいない。…寝てしまっていた間、毛布のような温かい物に包まれていたような感じがしたのだ。寝てしまっていたから、完全な気のせいなのだと思った。 早く、帰らないと……。見上げた夜空は、木々の間に静かな星が瞬いている。身体のぬくもりが抜けていき、少しだけそれらに見とれてから視線を元に戻した。 ちらりと視界の隅に映った、輝く銀色。目を向ければそれは四足のポケモンだった。薮に隠れておらず、少し遠いけど全身が見えている。よくよく目を凝らせば、銀色に見えたのは純白にも近い毛皮だったことが分かった。月の光をはじき返すそれは、とても美しく思えた。まるで、漆黒の夜空に凛と輝く星々のような、独特の静けさを持つ美しさだった。 そのポケモンは急にこちらを向くと、音も立てずに真っ直ぐ歩み寄ってきた。黒い顔の赤い瞳は、真っ直ぐ私に向けられている。それに、顔の右側に鎌のようなものが付いていて、鈍く光った。私を食べるつもりなのか、襲うつもりなのか。いままで歩いてきた細い小道の上で、ついに手が届くくらいまで、相手は寄ってきた。逃げようにも、足がすくんでしまって動かない。 近づいてきた相手は、私のことを未だに見つめたまま。頭の位置は、私のほうが少し上にあるくらい。そのまま十数秒、見つめ合っていたと思う。少なくとも、今ここで殺したりはしないらしい。赤い瞳が、ある事を問いかけているような気がして、言葉が勝手に口から漏れ出た。「帰りたい」 正直、話す相手は誰でも良かった。問いかけられている気がしたのも、私の勝手な妄想かもしれなかった。それでも、口から出た言葉は私が心の奥で一番思っていた事だったのだろう。 目の前の黒い顔が、うなずく様な仕草をした。それから、白くて細い足を曲げて伏せるような体勢になった。乗れ、ということなのだろうか? 試しに声を出さずに、またぐようなジェスチャーをすると、もう一度相手はうなずく仕草をした。 多少とまどいながらも、白い毛皮の上にまたがる。すごく触り心地の良い毛皮だった。 私が乗った銀の身体は、私の体重をものともせずにぐん、と浮き上がった。とたん、自分の身体が後方へ置き去りにされそうなほどの風を浴びる事になった。それもその時一瞬だけで、次第に身体をさする夜風は心地の良い感触へと変わっていく。 「帰りたい」とは言ったものの、心はまだ揺れていた。 家に帰っても、父と母が出迎えてくれるわけではない。何でも、一人でしていかなければならないのだから。とはいえ、家以外に帰るところなど無い。 心を揺らし、家に帰りたくないと言っているのは、その耐え難い事実から来る、空ろな寂しさだった。 身体の下で白銀の身体が躍動する、温かい感触が伝わってくる。目の前に迫る樹木の横をすり抜けたところで、心が決まった。 一人でも生きよう。 いつからだろうか、気が付くと私は笑っていた。楽しい、気持ちいい。何かを吹っ切った心が、風に揺すられている。 地面から突き出た岩を飛び越えた。 そう、私は村に帰る……。 月夜の山道を、少女を乗せた銀の疾風が駆け抜けた。 徐々にスピードを緩める銀色。気が付けば、そこは見慣れた、村へ繋がる道だった。背中からストンと降りる。強い決心は、すでに立派に固まったものになっていた。地に足が着いても、もう少しも揺らぎはしない。 ただ、目の前の銀色の相手と別れるのが名残惜しかった。「ね、また会えるかな? 今度は一緒に遊ぼうね、私頑張るから!」 村の坂道を下っていく少女の後ろ姿を、赤い瞳がまるで励ますように見送っていた。 それは、自分が撃ち殺されるかもしれない危険を冒しても、少女を救ったことを後悔してはいない表情だった。 そして、月が沈む少し前に、彼女は捜索をしていた村の人々に迎えられたのだった。【次回予告】 新たに村で暮らす事を決意したナツキ。彼女の新たな日常、そして、初めて知った事実とは……――――――ずいぶんと凍結状態でしたが、テスト終了と言う事でついに! 更新再開です。 といっても第一話wそして主人公の名前が出てきてないってどういうことなの…【好きにしていいのよ】
山の中へと続く坂道を、軽い足取りで進んでいく。うららかな春の陽気を含んだ空気が、やがてしっとりとした土の香りの空気に変わってきた。 ナツキが、祖母と一緒に暮らし始めて一ヶ月。両親が死んだ日、山から帰ってきた彼女は祖母に引き取られる事になった。今は、家の手伝いが一段落したので、山へと遊びに行くところである。生活は、祖母と暮らす前の習慣とあまり変わっていない。 こんな山奥で幼い女の子が、一体何をしようとしているのか。彼女のスキップの訳はとても単純な理由で、“友達と遊ぶから”。しばらく山の道をゆっくりと散歩していれば、大抵気が付くと目の前にいたりするのだ。 どこからともなく現れる、白昼から輝く銀色。「やっほー、フウ!」 種族名が分からないので、フウ(風)と呼んでいる。女の子だったし、一番感じが合っていたから、自然とこう呼ぶようになった。 * 数週間前に遡る。ナツキは山の中で山菜を探していた。美味しいし、何よりも、沢山見つければ祖母が喜ぶからだった。小さい頃から親しんでいる、優しい祖母が彼女は大好きだったのだ。 しかし、あの美味しい春の山菜はなかなか見つからない。倒れた木を見つけて、その上にへたっと座り込んだ。「ないよぉ……」 ぽろりと口から出てきた言葉、次に溜め息をつく。それから気合を入れ直す様に顔を上げた。なんとしてでも見つける、たとえ一つでも! そして、奇妙な事に気が付いた。「……え」 目の前に、探している山菜が十数本程度、こんもりと置かれていたのだ。思わず声が出る。 まさに魔法のような一瞬の出来事に、ナツキは驚く他無かった。何故? どうやって? そう思っていると、すぐそばで生き物の鳴き声がした。 振り向くと、少々得意げな色を映した赤い瞳と目が合ったのだ。 * それからのことだ。何かあって山に行くと、フウはナツキの目の前に現れるようになった。見守ってくれているような雰囲気と、人懐っこい性格を彼女は不審に思うこともなく、いつしか自然と遊ぶようになった。今ではフウの言いたい事も大体理解できる。言葉で会話するというよりは心で感じる、という方が近い。(ナツキ、花畑って行った事あったっけ?)「花畑? あるんだ?」(うん、今が一番綺麗な時期なの。行きたい?)「うん!」 笑顔でうなずいた彼女は、フウの背中にぴょんと飛び乗った。 その花畑というのは、山の中、木が生えていないちょっとした空間にできた小さな原っぱだった。それでも、白、桃、紫、様々な色の春の花が咲き乱れている。 さっきまでしゃがみこんでいたナツキが、地面に腹ばいになっていたフウの方を振り向いた。見て見て、と言いながらフウに手招きをする。フウが、ナツキの手を覗き込んで歓声を上げた。(すごーい) ナツキは色々な種類の花を使い、手のひらに乗るほどの小さな輪を作ったのだった。人間にしか、こんな事ができる手と指は無い。目を輝かせるフウの反応はナツキの予想以上のものだった。ナツキはふと思いつき、顔の横についた黒い角に手を伸ばす。(え、なに?)「ちょっと動かないで…」 曲がって生えた黒い角の根元に、小さな花が咲いた。ナツキが満足そうに笑う。「フウかっわいい〜」(私見えないんだけどぉー) 言葉とは裏腹に、フウの表情はとても生き生きとしていた。「あとでさ、水溜りとか見てみればいいんじゃない?」(雨、降らないかなー、なんてね) 二人は原っぱに寝転んで、空を見上げた。白んだ空が、少しばかり朱鷺色を映している。「明日は晴れちゃうかも」 いつもなら憂鬱になる春の雨の日も、楽しみな事が一つでもあれば期待したくなるのだった。(しおれちゃったらさ、また作ってくれる?)「花があれば、すぐ作れるよ」(ありがと! ふもとまで送るよ) ここでフウが言う“送る”とは、背に乗って行くということである。村に続く坂道まで、フウにナツキは乗せてもらう。ほんの十分もかからないのだ。 家に帰ったナツキが、野菜を水で洗っていた時。 ふいに、家の外がざわざわと騒がしくなった。ほぼ同時に、ドンドン、と戸口が叩かれ、祖母が玄関に出たのをナツキは背後に聞いた。村で何かあったのだろうか。 手を止め、ガラス窓の外を見ると、日が沈んだ空は暗い藍色とも紫色ともつかない色だった。暗く透き通った空に、ぽつぽつと小さな星が輝き始めているのを、ナツキはガラス越しにただ眺めていた。「なんだって!?」 直後、夕闇の空へと飛びかけたナツキの意識は、祖母が珍しく出した大声に引き戻されることになる。相変わらず玄関でざわざわと声がするが、祖母の声以外はよく聞き取れなかった。しかし祖母の声色から察するに、緊迫した状況らしいという事だけは感じられる。 ナツキは耳をそばだて、少しでも大人たちの会話を聞き取ろうと努めた。「また……、“アブソルが出た”ってのかい!!」「生き残りが…まだ……今年………」 あぶそる? ナツキは聞いた事の無い単語を頭の中で繰り返す。会話の流れとしては、何か良くない事なのだろう。 久々に感じた冷たい胸騒ぎに、彼女は嫌な予感が湧き出るのを必死に押さえ込むしか無かった――。―――――スーパーお久しぶりです、生きてます。訳あって前後編です。同時に上げたかったのですが、後編が完成しない(おというわけで、せめて前編だけでも上げておこうかと。今年に入るとますますスローペースになりますが、学業に負けずに頑張りたい…です……。【好きにしていいのよ】
※ 一部、生物に対する残酷な描写が含まれます。苦手な方はご注意下さい? 日がとっぷりと沈んで、紫がかった夕闇が空を覆っていた。 パチパチと音を立てながら輝く松明を、疲れた様子で眺める女性。黒いショートカットの髪、一見ラフなスタイルでよく動き回りそうな若い彼女は、実はポケモンの研究クラブに所属する立派な研究員。しかし白衣でも着ていない限り、人に言ってもあまり信じてもらえそうに無い。 彼女は数日前から、ある理由でこの村に滞在しているのだった。 彼女、カナメ(本名:黒島 要)の在するクラブの研究テーマは、“ポケモンの予知能力について”。現在最新の技術で研究を進めても、ポケモンには本当に未知の部分が多い。そのうち、例えば時間を超えて攻撃する『みらいよち』等の技、人や物、自然環境に起こりうる事へ対しての察知。そういうものが、おおかた研究対象にされていた。 そして、彼女がこの村を訪れた理由。それは、災いポケモン“アブソル”に関する祭りを見るためである。いや、祭りというよりは“儀式”といった方が正しいかも知れなかった。少なくとも、おめでたい類のものでは無い。少々、見ていられる自信が無くなってくるのを自分で感じていた。 一気に暗くなって、物々しい雰囲気が村には立ち込めてきたところだ。それはざわめく村人たちが発しているのか、はたまた黒い塊と化した木々がそう見せているのかは分からない。「おい、本当に大丈夫かクロシマ? 見てられなくなったら無理すんなよ?」 同僚の一人が彼女に声を掛けた。それもそのはず、日々意気込んで研究に没頭し、そのうえ自然へも出向く行動力を持ち合わせたカナメは、疲れた姿を普段滅多に見せる事が無かったからだ。「疲れてるだけだから、大丈夫だって」 アブソルが捕まったので儀式を執り行うという連絡が入り、研究クラブの数人で約一日かかって交通の便の悪いこの村へ急いで来たのだ。疲れていないほうがおかしい。 そこまでして来たのだから、できればしっかりと見、参考にして帰りたい。カナメは一人ぼーっとそんな事を考えていた所だった。 突如、人ごみのざわめきが強まったのを聞き、視線を移した彼らの目にまず映ったのは、白と黒の物体。 白い物体、と見えたのは、“毛皮”、そして“骨”。すでに焼かれ洗われ、闇に浮かぶような白さのそれは、丁度四足で歩くポケモン一頭分ほどの量と大きさで、木で作られた机の上に乗せられている。机の下には、薪がすでに置かれていた。 黒い物体は一つだけ、村長が抱えていた。長く湾曲した、やや薄く黒い角。まさしく災いポケモンの持つそれだった。 突如目に入ってきたあまりにも衝撃的すぎる光景を、研究員一同は言葉を失ったまま凝視していた。 毛皮も骨も、ポケモンを研究する上で彼らの誰もがもちろん一度は目にした事がある。ここに置かれた物はしかし、彼らの目には違う物の様に映ったことだろう。 骨格標本でも、剥製でも、インテリアでもない、骨と毛皮。これから炎に焼かれようとしている、忌み嫌われ、捕らえられて殺された者の抜け殻―― もう魂も宿っていない抜け殻でさえも、炎で跡形も無く燃やし尽くしてしまう。なんと残酷なのだろう。 何か、古風な口調で、詩のようなものが唄われているのが聞こえた。とりあえずビデオカメラで撮っている人がいるから、後からでも調べられるだろう――そんな事が、もう何も考えられなくなったカナメの頭にすっと上った。 そして村長が、持っていた黒光りする角を高々と掲げると同時に紅い炎がボウッと燃え上がる。 パチパチと音を立てる炎が、カナメ達の目にはやけに美しく映った。何故だかは誰も知らない。 ああ、燃やされて、焼かれておしまいだ、よかったね。後ろの方で、誰かがそんな事を言っていたのが耳に入った。 村長が持っている角だけは、燃やさずに取っておき、村の御社に飾るのだそうだ。カナメはこの村に来る前にインターネットで調べた事を思い出した。 *(『アブソル』って、“災いを呼ぶポケモン”なんだ……。) 燃える炎を眺めながら、ナツキの意識はついさっきの記憶に飛んでいた。 白くて、長く黒い角を持ったフウ達は、アブソルというポケモンなのだそうだ。隣に居る祖母が、儀式の直前に話した事が何度も何度も耳の奥に蘇る。 ――アブソルってのはね、災いを呼んでくるポケモンだよ。 だからこうやってね、見つけたら退治するのさ。 なっちゃんも、山に行く時は気を付けなさいね。最近はほとんど見ないって言うからおばあちゃん安心して言わなかったけど、見つけたらすぐ大人に知らせなさい。 なら、私にもいつか災いが来るのだろうか? それは怖い。 大人に正直に言った方が良いのだろうか。 でも、フウは私が迷子になった時、助けてくれたよね。(フウは、私の友達……) 声も分かるくらいの。 もし見つかったら、フウは殺されて、あんなふうに毛皮と骨にされて、燃やされる。 友達が殺されてみんなの前で燃やされるなんて嫌だ。(…でも、フウは私に何も言わなかった) 隠していたの? 言いたくなかったの? それとも、大人の人たちは間違っているの? それだけをナツキは今すぐフウに聞きに行きたかった。【次回予告】 ナツキは昨晩見た壮絶な光景、知った事実がまだ信じきれない……。 揺れる心のまま、山へと足を運ぶ少女の思いやいかに。――――― やっと新キャラ登場。もう執筆ペースについては何も言わないで置こうか…。 ちまちま、本当にちまちまと書いてます。それでも読んでくださる皆さんに本当に感謝です。【好きにしていいのよ】