Prologue
「Ordinary Dialy〜ありふれた日常〜」
ここは「シンオウ地方」始まりの町「フタバタウン」。
いつもの昼下がり。
この町に佇む一軒のポケモンの育て屋もお昼時を向かえ、一人の少年がキッチンに立っていた。
彼が今作っているのは、預かっているポケモン用と自分たちが食べる用の昼食だ。
上機嫌に鼻歌などを歌いながら調理を進めていると、階段を掛け降りてこちらに走ってくる足音が聞こえた。
誰が来るのか、少年には分かっていた。
これがこの家の"日常"だからだ。
「コウキ兄ぃお昼まぁぁだぁぁ!?アタシもうお腹すいたよ!」
「もうちょっと待ってなよマイ!」
「え〜!可愛い妹がお腹空かせて倒れそうなんだよ!?」
「もうすぐできるから座ってなさい!ったく、マイはいつもそうやって急かすんだから」
呆れたような声で妹の愚痴をこぼしながら、毎日こんなやり取りを続けている。
調理を終えて食器に盛り付けながらマイへ視線を送る。
「マイ、母さんと姉ちゃん呼んできてくれる?」
「マイはお腹が空いてうごけませ〜ん」
「お昼食べさせないよ?」
「呼んでくる!」
コウキの一言によって、マイは素直に姉と母を呼びに席を立つ。
昼食を誰よりも待ち望んでいる彼女には「お昼を食べさせない」という言葉は効果抜群だ。
コウキはそんなマイの弱点を知っている。
暫くしてマイは姉と母を連れて食卓に戻ってきた。
既にテーブルの上にはきれいに盛り付けられた、コウキ作の昼食が並べられている。
「それじゃ、僕は先にポケモンたちのご飯をあげてくるよ」
そう言ってコウキはポケモンフーズの盛られた容器を幾つか持って、家の裏にある小屋へと向かった。
小屋に着くとお腹を空かせたポケモンたちが、「待ってました」と言わんばかりの表情でコウキの周りに集まってきた。
このポケモンたちはこの家のポケモンではなく、トレーナーたちから預かっているポケモンだ。
ポケモンたちが美味しそうにポケモンフーズを平らげていく光景を、コウキは笑みを浮かべながら見ていた。
何気ない、いつもの昼下がり。
こんな日常もコウキは好きだった。
しかし、そんな日常が少しずつ変わり始めようとしていた。
運命が動きだし、「冒険」に満ちた日常が、コウキの前に訪れようとしていた。
それは、また次回のお話し…
To be continued...