ポケモンストーリーズ!投稿板
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  •   [No.884] 近づく危険 【勝手に応援に来たのよ】 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/10/29(Fri) 23:08:21     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     強い雨。

     気象レーダーに映された黒い影は、ある時刻までは雲らしく動いていたが、山間のある位置まで来て急に止まった。
     まるで、そこで立ち止まらねばならない、何かがあるかのように。

     強い雨風が支配する空を、原色鮮やかな始祖鳥が飛んでいた。
     その背には、肩にバチュルを乗せ、黒い髪に赤いメッシュを入れた女性を乗せている。
     女性は目を閉じて、先程までテレビで見ていた天気図と、この辺りの地理を、まぶたの裏で重ね合わせていた。

     その目を開く。
     雨で視界は煙り、土砂崩れで地形が多少変わっていたが、目指す場所はそれと判別がついた。
    「ロー、あそこだ。降下してくれ」
     始祖鳥はケェーッと威勢よく鳴くと、彼女の指差す先へ、墜落に近い速度で、勢い良く降りていった。


     激しく岩にぶつかる音がして、始祖鳥が着地した。
     ことによれば二次災害が起こりそうな激しさだが、彼女は気にしない主義らしい。
    「ありがとう。今は戻ってくれ」
     水に弱いアーケオスのローをボールに戻し、周囲を確認する。
     テレビの言う通り、あちこちの斜面が崩れ落ち、茶色の土砂や木の根がさらけ出されていた。
     四十五度より急な山肌が、軒並み崩れたのではないかと思われる惨状。
     今立っている足場も、いつ崩れるや分からない。

     ……などど悠長に辺りを見回していたら、足場が流れ始めたではないか。
     すぐ隣に存在していた巨木が折れ、茶色い流れが彼女を押し流す方向に動き始めた。

     それでも彼女は眉一つ動かさず、
    「やれやれ、ってとこだな」
     さっきボールに戻したばかりのローを出そうとして、
    「おや」

     この雨の中、軽々と地を跳ね、駆ける、一匹のポケモンを見た。
     紫の体毛、大きな耳に、二又に分かれた尻尾。

     エーフィと呼ばれるポケモンはひらりと土砂崩れの中に身を踊らせた。
     倒れ始めた巨木を、エスパーの力で弾き飛ばす。
     そして岩石の陰の部分に飛び込むと、そこで虹色に光をばら撒く壁を展開した。

     展開されたリフレクターは、土色の脅威をその場に押しとどめた。
     元はポケモンの物理技の威力を半減させる技だが、こんな使い方もできるのか。
     女性が感心している間に、少しずつ、リフレクターが押されていく。

     やはり半減では辛いか、と呟いて、女性は手で弄んでいたボールのスイッチを押し込んだ。
    「もう一度頼む、ロー。地ならししてくれ」
     再び姿を現した原色の鳥が、雨を振り払うように大きく羽を打ち振るい、リフレクターと土砂崩れが押し合うその渦中に飛びこんだ。
     青と黄の翼を広げ、茶色の流れを押し戻すように動かし、その次の瞬間、体を大の字に広げて、流れる土砂をを地面に押し込めた。
     アーケオスの体が触れた部分とその周辺の土の動きが止まる。
     安心するのも束の間、次の土砂崩れがアーケオスに向かって流れ落ちてくる。

     猫又がローの前に飛び出した。額の紅い宝玉が光り、淡い壁を作り出す。
     ローは空に飛び上がると、壁の前に飛び出して土を左右に散らし、地ならしを繰り出す。

     何度か繰り返すうちに、流れる土砂がなくなったらしい。
     土砂崩れの勢いが削がれてきた。
     エーフィが身を翻し、岩陰へ走っていった。
     ローは安心したのか、大きく息をついた。

    「今のうちに休んでおけ、ロー」
     女性がかざしたボールに安堵の目を向けると、アーケオスは小さな光となって彼女の手元に戻った。

     水に弱い岩タイプのポケモンと言えど、雨が降るたびに死にかけるわけではない。
     とはいえ、強まる一方の異常な大雨の中で長時間活動するのは体に障る。

     この後に一戦控えているのだ。できるだけ良好なコンディションで挑みたい。
     どのようにバトルを組み立てるにしろ、その戦いではアーケオスのローの動きが鍵を握る。
     この地方に伝わる、大雨と大風、雷を呼び、作物を荒らすと言われるポケモン。
     どうしても、何としても倒したい。


     自分勝手な理由ではあった。
     相棒のゾロアの母親が、密猟者に奪われた。
     密猟者は山を越えて逃げた。
     彼らの起こした大雨で、山を越える唯一の道が崩れた。
     彼女は密猟者を逃がし、相棒の母の行方は未だ分からない。

     本当はただ、自分が愚かだったせいだ。
     警察だから、悪いやつはやっつけるというのも表向きの大義名分に過ぎない。
     それでも、自分勝手は百も承知で、彼女は風神、雷神と呼ばれる彼らに挑むつもりだった。


     ローの隣のボールがビクリと揺れて、中から紅いたてがみを持つ二足の獣人が出現した。
     獣人は自分もやると言うように、紅い爪のついた手を胸に当てた。

    「いいけど、無茶はするなよ。スー」

     相棒のゾロアークはコクリと頷き、先程ローがならした地面へと飛び降りた。
     続いて、彼女も地面へと降りる。

    「あ、……あなたは?」
     着地と同時に、後ろから声をかけられた。
     エーフィが走り回っていたから誰かいるのだろう、とは薄々感づいていた。
     ただ、いざ後ろを向いてみると、血の気のない少年を含め四人の人間がいたものだから、少しだけ驚いた。
     ポケモンも、どれが誰のポケモンかよく分からないが、多くいる。

     偶然居合わせたのか、助けに来て遭難したのか、彼女の知るところではなかったし、興味もなかった。

    「遭難したんじゃ……ないですよね?」
     そう尋ねてきた若いレンジャーに短く否定の言葉を返す。
    「日本晴れを使えるポケモンとか持って」
    「いないよ」
     もうひとりの、ウツボットを連れたレンジャーにそう答えながら、彼女はトロピウスの背に乗せられた少年をじっと見ていた。

     離れた位置からでは詳しい容態は分からないが、少年が喜ばしくない状況にあるのは分かる。
     一刻も早く、病院へ連れていかねばなるまい。
     しかし、トロピウスも、若い青年の傍に控えるチルタリスも、この雨風の中で十分な飛行能力を得られるポケモンではない。
     飛ぶのより走る方が得意な彼女のアーケオスもまた然り。


     やっぱり、倒すしか無い。
     この嵐の元凶を。


     彼女はレンジャーたちに背を向けると、ローとスー以外の三つのボールを投げた。
     それを見たレンジャーの少年が「何をする気ですか」と彼女に声をかけた。

    「野暮用だ。この雨を降らす奴らに用があってな」
    「風神と雷神か」
     寒さを堪えているのか、彼女の行動は馬鹿げていると言いたいのか、低い声で言ったのはチルタリスを従えた青年だった。
     レベルの高そうなチルタリスだ、と思う。

    「……さあな。私が遭難しても、助けに来なくていいぞ、レンジャー」
     そう言って、雨の中へ一歩進む。

     スーが雨を透かして一点を見つめている。
     危険を感じているのだろう、アブソルが吠え声を上げる。
     先のエーフィも立ち上がって、忍び寄る気配に細かな毛を震わせていた。


    「さて、と」
     彼女はポケモンを呼び寄せた。
     その場に膝をついて、比較的小さな彼女のポケモンたちに目線を合わせる。
     自分の心を落ち着けるように、ポケモンたちを順番に撫でた。

    「少し、状況が変わった。
     風神と雷神が来たら、全力で攻撃して、気を引いて。ここから引き離してくれ」
     四本の長く白い毛をもつ灰鼠が、小さく跳ねて敬礼のポーズを取った。
     つられるように、頭に花を掲げた少女のようなポケモンは胸に手を当て、薄紫のオコジョは片手を上げた。
     ありがとう、と言って立ち上がる。
     この場から引き離すことで、少しでも雨が弱まれば。
     目が合うと、相棒が大丈夫だと笑って頷いた。


     彼女は黙って、一歩進む。
     岩陰からは一歩離れ、雨はさらに冷たさを増す。

     急速に体が凍えていく。
     滝のように落ちる水で、辺りは暗く、閉ざされたように感じた。
     近くにいるはずのポケモンたちの温もりさえ、遠く感じる。
     けれど、まだだ。
     まだ、倒れるわけにはいかない。

     肩に乗せたバチュルが、フィフィフィ……と細い笛に似た音を立てた。
     危険が、もうそこまで迫っている。




    【書いちゃったのよ】
    【もっと救援に来ていいのよ】

    てこさんパートを読んで、どうしても救助に行きたくなりました。
    なのに、全然助けてくれなさそうな人でごめんなさい。
    もし風神雷神さまとあうことがあれば、彼女をこき使ってやってください。
    あと、サトチさんの救援を出せなくてごめんなさい。

    海星さんの派遣したエーフィをお借りしました。
    これで、土砂崩れは大丈夫なはず……!

    【また土砂災害起こしてもいいのよ】
    【バチュルかわいいのよ】

    (11/3追記)
    レンジャーさんたちを当然のようにお借りしてます。
    そして伸びていくスレにドキドキ……
    こっそり、彼女が美人に書かれてて嬉しいのよ、と言っておきます。


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