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「おとうとの かたきを とるのです!」
「いやだね やったね たぶんね へんだね」
上記の文章はすべて、実際につけられたポケモンのニックネームである。
近年、ポケモンに珍名をつけることが流行っている。俗に言うキラキラネームである。ユニーク過ぎる名付けに一部ではDQN(ドキュン)ネームとも揶揄されている。
全国トレーナー協会の定めでは公式戦に他種族名をつけたポケモン、同一ニックネームのついたポケモンを使用することが認められていない。また、卑猥な単語、他人を貶める単語をニックネームとしてつけられたポケモンがグローバルトレードシステム上に預けられるということが多発したため、トレーナー協会は2010年より新規個体登録の際に禁止単語をもうけることにした。
イッシュ地方から広まったバトル形式、トリプルバトルも珍名を助長しているのではという愛護団体もいる。いままでのシングルバトル、ダブルバトル形式ではみられなかった文章を表現する珍名だ。ネット上では、そういった文章ネームとでも呼ぶものを投稿するサイトまでできている。
ニックネームはポケモンとのきずなを深めるものだ。おや登録されたトレーナー以外は変えることができず、リリースされたあとに別のトレーナーに捕獲されてもニックネームを変えることはできない。 捕獲したポケモンがおや登録がされているリリース個体であり、ニックネームが不愉快だったためリリースではなく、ボールに入れられたまま数年間放置されてしまったという事件も起きている。
個体登録の際に、そのポケモンの将来を考えてみてはどうだろうか。
☆★☆★☆★
暑いですね、暑いとカキゴーリとでも名付けたオニゴーリを触りまくりたくなります。「ねぇ、カキゴーリ。かき氷食べる?」とか言ってカキゴーリ(オニゴーリ)をあたふたさせてやりたくなります。
いつものように、サイコソーダの栓を開ける、春の日の午後。
彼が瓶に口をつけようとしたまさにその刹那、それは起こった。
パキ ン。
一瞬の音と同時に、シェノンはアシガタナを顔の前で構えていた。
足元に、サイコソーダの瓶が転がる。彼がそれを見、小さく舌を打ったのが聞こえた。
並みの者が見ていたら、ただこうにしか見えなかっただろう。
しかし彼の赤い目は、目の前を一瞬にして通り過ぎた気配を見逃さなかったのだ。
足元の瓶は、割れていた――否、“切り裂かれていた”。すっぱりと斜めに、真っ二つに切られていた。
「うおりゃああぁぁぁっ!!」
レッセが放出した気合いで、無数の灰色い群れに多少の穴が開く。
が、液体であるかのように蠢き、鳴き声を上げ続けるそれらを退けるにはあまりにも小さな攻撃だった。
「囲まれちゃったわね」
隣のもう一匹のコジョンド――ティラが変身した姿である――が、灰色の群れから目を離さず言う。
「下手すると死ぬよ? 私達」
「皆も、もう死んでたりして。この数じゃね…」
お互いに背中を合わせた彼女らは、言葉と反して楽しむかのような不敵な笑みを浮かべた。
「片っ端から蹴散らすわよ」
二人を中心にして、激しい閃光と爆風が巨大な轟音を伴って発生した。
「……逃げて……」
抱きかかえているサワンの発した、小さな力の無い声をナイトは聞き取った。
草タイプであるにもかかわらず、勇ましく戦った彼女の身体には所々に痛々しい傷が付いている。翼で打たれたり、嘴でつつかれたりした傷だ。ぐったりしていて、とても一人で立てる状態ではない。
「馬鹿だな、お前を置いてくわけないだろ」
ナイトの発した声さえも、灰色の羽音に掻き消されてしまいそうだ。
その羽音の中で、虫の騎士は静寂を求めた。左腕にサワンを抱えた今、右腕にだけ精神を集中させ、そして深く息を吸い込む。
今はとりあえず、安全な場所へ避難する事だけを考えなければならない。そもそも安全な場所というのが存在するのかさえも分からないが。灰色の軍団――“マメパト”にこの空間が支配されてから一体どれ位の時間が経っただろう。
片腕のランスで迫ってくる灰色の生物を振り払いながら、できた道を突進していく。
アポロン、と太陽神の名前を持つ幼いメラルバは、恐怖に怯え震えていた。
彼の母親ナスカが周囲に熱を発生させている為、焼き鳥になるのを恐れてマメパトは近寄れなかったが、辺りを飛び交う灰色の渦は見ているだけで十分恐ろしい物だった。さらに、彼の父親のペンドラー、ファルの居場所も分からない。いつも遊んでくれるアギルダー、カゲマル兄ちゃんの安否も分からなかった。
「おかあ…さん」
「大丈夫よ、心配しないで。みんなきっと無事で居るはずよ」
彼女も本音を言えば、夫のファルと仲間がとても心配だった。ナスカのように、炎で敵を遠ざけられるならまだいい。飛行タイプに対して弱点を持つ彼らは、大丈夫なのだろうか。サワンはあの腕のいい騎士と一緒に居れば、おそらくは大丈夫だろうが……。
どこまでも灰色をした空間は、彼女がずっと居たあの遺跡の古い広間を思い起こさせた。
せっかく本を読みに来たのに、これは一体どういうことなのだろう?
中に入ると、マメパトが図書館を占拠しているではないか。辺り一面灰色で何がなにやら分からない。料理をしているような匂いも漂ってくる。しきりに『マメポケ万歳!!』などと叫んでいるのが聞こえるが……。
「おじさぁん…これ……」
隣のコリンクが、不安げな表情で聞いてくる。大分物分りの良くなってきた彼に、今日も物語を読んでやろうと思ったのだが。
すぐそこに、初めて見るポケモンがいるのに気が付いた。青色の魚のような尾がある。首と顔に白い髭が生えていて、手には薄黄色く長い刀のような物を持っていた。灰色の渦を見つめていた彼は私達に気が付くと急に振り向き、赤い目でこちらを見た。
「おまえ、ちょっと手伝ってくれないか?」
開口一番、そんなことを口にする。
「何をだ」
「この図書館の開放。俺はダイケンキのシェノンっていうんだが、図書館に仲間が閉じ込められちまってな……。おまけにさっき俺が飲もうとしてたサイコソーダの瓶を切り裂いて、“マメパト参上!”とか書かれた紙落としていきやがって」
なんというか、明らかに後者の方にこもった恨みが強かった気がするのは置いておく。
目的が同じなら、一緒に行動して損はないだろう。多分。
「よし、マメパト鳴かしに行くぞ」
「シェノンさぁん、鳴いてるのは元からだと思うー」
「四月馬鹿だぜ、エイプリルフール」
「…………」
彼らの冒険は、今、始まった!!
物語の枠を超えた出会い、ダークライ&ルキにシェノンが繰り広げるマメパトだらけの図書館ファンタジー、連載予定☆
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お久しぶりです銀波オルカです
一応こんくらいの駄作が書ける程度には生きてます
もうなんかシリアスにしようとしたのかギャグっぽくしようとしたのか自分でも分からなくなってしまった
あと私はドラゴンクエストを人生一度もプレイしたことはございません
【好きにしてね】
【半日クオリティ】
タブンネ「はい、始まりましたぁタブンネの毒吐きお悩み相談室ぅ!
この番組ではぁ、全国から寄せられたお悩みをー、タブンネがげしげしするコーナーでぇすぅ(はぁと
ではぁ、早速いってみましょ(キラキラ
まずはホウエン地方にお住まいのラジオネーム ミネストローネさん
『こんにちは。いつもラジオ聞いてます。今回はどうしてもタブンネさんに聞いてもらいたくて投稿しました。長文すみません
私は送りび山の山頂でぬくぬくと楽しく暮らしていたのですが、ある日人間にさらわれてしまいました
それだけでは飽きたらず、人間は私を見るなりかわいいだの洗濯したいだの、言い出して、コンテストに出したんです。私が勝てるわけないと思ったら、技がコンボになっていて、大量得点をとってぶっちぎりで勝ってしまいました。
それからというもの、私をコンテスト用に着飾ったり、ポロックを食べさせたり。今では全コンディションがマックスになってしまいました。
私は平和な暮らしがしたいのに、あんまりだと思いませんか』
なめてるねー、なめてるねーこの投稿者。
てめぇが三食昼寝付きでぬくぬく暮らせんのは人間に餌もらってコンディションもあげてもらってるからだろうが
つうかこれのどこが悩み?幸福自慢?
げしげしすんぞミネストローネ
食い物みたいな名前しやがって、ごきゅごきゅすんぞコラ
さて、そんな場違いなのは無視して、次のお手紙いきましょ
お次はこれまたホウエン地方にお住まいのラジオネームエネコLOVEさん。
『いま大ブレイクしてるプリカちゃんのサインが欲しいのですが、サインが当たるチケットが』
あー、リスナーの皆様に補足すると、プリカちゃんはプリンだから、サインをたくさん書けなくて、CD1枚にサイン抽選券をつけてるのね。マジもののファンはCDに何千万も注ぎ込むらしいね。
あ、お手紙に戻ります
『サインが当たるチケットが欲しいのですが、俺の彼女がそろそろキレそうです。CD1枚でサインが当たる方法はないでしょうか』
し る か ボ ケ
てめぇの彼女が何言おうがどうしようが横っ面はたいて俺の趣味にケチつけんなくらい言えねぇのかヘタレ
あ、私はプリカちゃん好きよ。この前のアレルヤ!はいいと思う。熱烈なファンには受けが悪いらしいけどねー
さて、ヘタレはおいといて次いきましょ。
次はシンオウ地方在住のラジオネーム竜骨座さん
『僕は昔、厨ポケとか言われて、主人にも可愛がってもらいました。性格も粘って、タマゴ技ももらって、バトルタワーでも友達と戦うでも活躍しました
けど、今は格下だと思っていたカイリューとかが夢特性で強化され、僕はボックスで過ごすばかりです。
つい先日、強い仲間はみんなイッシュに行きましたが、僕はシンオウに置いてけぼりにされて寂しいです』
厨ポケきたー
てめぇみたいのがいるから、不遇ポケが出るんだろうが
なんのポケモンか知らねぇが、今までカイリューがてめぇをそう思ってたんだ、それくらい我慢しろボケ
はい、もう厨ポケは放置で、次いきますよ次。
お次は旅人で住所不定の、ラジオネームもふもふ狐さん。
『こんばんは。世界をもふもふにそめたくて、旅に出ましたが、一向にもふもふになりません。
家で待ってる妻子を早くもふもふしたいです』
妻子を置いて行くような狐がもふもふ語ってんじゃねえぞコラ。
時代はもこもこなんだよ。時代遅れもいいところじゃワレ
あー、次々。
寒いところにお住まいの、もこもこモンスターボールさんから。
『冷蔵庫の扉をあけたらビリリダマになってテレポートしながらいろんな世界をまわってたんだ。な、何を言ってるか解らないかもしれないが、世界の恐ろしさの鱗片を味わったぜ……』
ビリリダマがテレポート覚えるわけねえだろ。寝言は寝てから言え
今日はろくでもないリスナーが多い日よね。
今度はまともなリスナーの手紙を祈って、次いきます
えーと、イッシュ地方、でいいのかな字が達筆すぎて読めませんねー。とりあえずそこに住んでるラジオネームサイコソーダさんから。
『うちのメンバーのポケモンたちがいつも喧嘩ばかりしてます。どうしたらいいでしょうか』
それでもトレーナーかお前は。
つうかどうみてもこれトレーナーだろ。それくらいなんとかしろ
さて、次のお手紙が最後です
本日のトリは、カントー地方にお住まいのラジオネームデオキシリボ核酸さん
『私、一時期どころかかなり強いって言われてたんです!
むしろパーティには必ず入っていて、バトンタッチが流行ったんです!
でも調子乗りすぎたのか、次の作品から出してもらえなくなりました。もう一度出たいです』
特定した
てめぇ破壊の遺伝子か
オコリザルサワムラーカイリキーケンタロスドードリオが持って出てきた時の恐怖を考えろ
てめぇの自己満足で出たいとかいうなハゲ!
はぁはぁ、今日のタブンネのお悩み相談は終わりです。また次回お会いしましょう」
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書いてもいいのよタグからしかとってないはず。もしつけてないのに勝手に使うなってのがあったらいってください。
【タブンネにげしげしされたい方はお名前、住所、ラジオネーム、職業、年齢を書いた上でご応募ください。
採用された方にはレベルが10上がる経験値をプレゼントしています】
> ピカチュウのちっちゃい銅を抱っこして、ゆっくり移動する。
「胴」と思われます。
最近、仕事があまりはかどらない。パソコンは使えるが、愛用の机が使えないことが多くなっているからだ。冷房の効いた部屋で、ガラステーブルで慣れない体勢で仕事をする。当然、腰も痛くなる。
理由は分かっている。ジャローダのせいだ。
自分の机を陣取って、せっせと手紙を書いているのだ。尻尾を器用に使い、ガラスペンでインクをつけ、可愛らしい便箋に文字を書いていく。はっきり言って何を書いているのかさっぱり分からないが、ポケモン同士では通じるのだろう。
そして、その書いている横顔がとても嬉しそうなことに、本人は気付いているのだろうか。ツタージャ時代からクールで通してきた彼の性格が、ここで崩れるとは。
主人であるミドリはおろか、本人すら予測できていなかったのかもしれない。
そう。ジャローダに、彼女が出来たのだ。
一ヶ月ほど前。期末試験が終わった日、ミドリは家に戻らずに直接ヒウンシティへ向かった。十三時発のホウエン、ミナモシティ行きの客船に乗るためだ。毎月連載している雑誌のコラムに、ホウエン地方のコンテストを紹介することになっていたのだ。
船に揺られて三日。ミナモシティに着いたその足でミドリはコンテスト会場に向かった。ノーマル、スーパー、ハイパー、マスター。全てのランクと、五つの部門がそろった巨大な会場だ。
会場内はコーディネーター達が沢山いた。連れているポケモンはどれも毛並みがそろっていて、艶もいい。片隅にはポロック製作の機械もある。
その中に、ミドリは一際輝く毛並みを持ったミロカロスを連れた女性を見つけた。女性自身も美しい。
「あの、お時間よろしいですか」
女性が振り向いた。ミドリは名刺を取り出す。彼女は驚いた顔になった。
「まあ!記者さんなの?」
「こんな子供に…とお思いかもしれませんが、全力で記事を書かせていただきます。取材よろしいですか」
彼女が笑った。
「ええ。お願いするわ。どんなことも聞いて」
「ありがとうございます。では…」
彼女の名前はミレイ。キナギタウン出身の二十八歳。連れているミロカロスは幼い頃、ヒンバスの時に怪我をしていた物を助けてそのまま手持ちになったという。
「最初はどうしていいか分からなかったの。バトル向きでも、コンテスト向きでもないでしょ。でもね、ある時本で見たのよ。すごく珍しいポケモンだって」
進化方法は、しぶいポロックを沢山あげること。美しさを磨いて進化するらしい。かなり特殊な進化方法だ。
「しぶい味の木の実を集めるのに一ヶ月。レベルの高いポロックを作るのに二ヶ月。進化させるのに三ヶ月」
「大変ですね…」
「でも今ではバトル、コンテスト共に活躍できる、大切な相棒よ!」
ミロカロスが嬉しそうに鳴いた。大きい。どのくらいあるだろう。これじゃうちのジャローダよりでかい…
「貴方はどんなポケモンを連れてるの?もしよければ、見せてくれないかしら」
私はボールを二つ取り出した。海の側で、しかも冷房が効いてるから、彼も水蒸気になることはないだろう。
「ジャローダ!フリージオ!」
ギャラリーが大きくどよめいた。当たり前といえば、当たり前。イッシュのポケモンはここでは見られない。
ジャローダは相変わらずツンとすまし顔。フリージオは周りの熱気で今にも水蒸気になってしまいそうだ。
しかしこうして比べて見るとミロカロスはでかい。ジャローダの二倍近くある。うちのジャローダは♂なんだけどなあ…
ふと、ミロカロスがミレイの後ろに隠れてしまった。彼女がどいても、すぐにまた隠れてしまう。
「どうしたの、ミロカロス」
私とジャローダは顔を見合わせた。もしかして…もしかすると…
ジャローダは何処から取り出したのか、バラの花を差し出した。だけどミロカロスは出てこない。尻尾を器用に使って受け取るだけだ。
「…」
私はこんな人間臭い姿を見せるポケモンを、初めて見た。
まあ、それから二日の滞在期間の間にめでたく二匹は恋人同士になって、今は遠距離恋愛中。年の差って感じじゃないけど、体格差…?カップルの誕生となったのでした。
ちなみにユエさんに話したら、『うちのバクフーンもそういうお相手がいてもいいかもね』って。
その言葉を聞いたバクフーンが食べていたユキノオーカキ氷を噴き出しかけたのは、また別の話。
――――――――
何かシリーズ化した。そして音色さんありがとうございます。さて何をいただけるのか…
楽しみにしております!さて次は誰のポケモンにしようかなー
冷遇されている虫ポケモンにも
もっと愛の手を!
せっかく水技も使えるのに
何であんなひどいことを!
もうあんな無意味な進化をさせるのは
絶対にやめてください!
『ホウエン地方・アメモース復興委員会一同』
研究員はせわしなく、少々乱暴にキーボードを叩いていた。
口元は歪み、眉間に皺をよせながら、ひたすらに指を動かす。しかし何度もタイプミスをおかし、乱暴にデリートキーを連打する。薬品で溶けてボロボロになった白衣の袖に手を包むと白い息を吐きかけた。
「クソッ! おい!室温を上げろ!」
「課長。これ以上エアコンやヒーターを稼動させると、館内の電力が維持できません!」
「俺を課長と呼ぶな!」
忌々しい、そう何度も呟きながら彼は作業を続けていた。
シルフカンパニー、ポナヤツングスカ支店。
ロシアに奥にあるその場所は、ポケモンの進化や変化を中心とした研究を行っていた。
しかし、支社とは名ばかりのその場所は、十分な予算も回されず、設備は壊れかけを騙し騙し使っている。施設は朽ちて崩れかけ、地元では幽霊がでる廃屋との噂まで流れていた。
「こんっなに広くてありがたいことだなーおい! ヒーター1台だけじゃ全く温まらねぇんだよ!」
近くにあるパイプ椅子を蹴飛ばすと、ヒーターの前で両手を擦り合わせて無茶苦茶に体を動かし始めた。
社員は以前4名いた。
彼が転勤してきた当時はまだ予算も今ほど削られてはおらず、極寒の僻地から抜け出そうと様々な研究を続け、いつかは日本に戻る、それを目標に日夜稼動していた。
しかし、発注した資材はいつまで経っても届かず、届けば種類や数が間違っているは当たり前。予算はみるみる削られ、本社からの連絡も全く無くなったころ、一人の研究員が飛び出していった。
「本社のやつらに一泡吹かせてやる!」
そう言った彼の衣服は乱れたまま、目は血走り防寒具も身につけずに吹雪の中飛び出していったが誰も止めるものもおらず、追いかけることもしなかった。訳の分からない呪文のような呟きをもう聞かされなくて済む安堵の気持ちもあったのかもしれない。三人は彼の気持ちが痛いほどわかっていたし、ひょっとしたら何か変わるかもしれないという期待もほんの少しあったかもしれない。
しかし、ここは以前と何も変わらないままだ。
「おう、今日もやってるのか。 どうだ一杯、あったまるぞ」
重役出勤の支店長が酒臭い息を撒きながら瓶を突き出した。彼は首を横に振って応える。凍える体にはあまりに魅力的な提案だったが、その強烈な濃度のアルコールは確実に頭の回転を鈍らせるだろう。
「ま、ほどほどにな」
そのまま所長は瓶の中身をあおると机に突っ伏し、そのままずるずると床に崩れ落ちた。恨めしげに彼が瓶を眺めていると、しばらくして館内に大きないびきが響き始める。
「冗談じゃない」
課長なんて冗談じゃない、そう彼は思う。
本社では常に出世街道を歩いてきた。コネではなく、常に実力で大きなプロジェクトに携わってきた。世界初の人工ポケモンである『ポリゴン』は、開発が停滞していたところを彼のプログラムを導入したことによって完成への軌道にのった。彼の名を知らぬものは社内はおろか、業界でもいなくなっていた。
しかし研究に専念するあまり社内のパイプを強化してこなかった彼は出世や利権の派閥争いに巻き込まれ、そのどちらにも属すことを拒んだ挙句、いわれの無い罪を着せられ、遙か遠くのこの地に左遷されてしまったのだ。
様々なアプローチを行い、開発を続けてきたが、時には失敗をし、時には他の支店に先を越されてしまい全く成果を上げられない。何といっても設備が、人手が、何より予算が足りなかった。
そしてネームバリュー。僻地の支店の研究が多少優れていても、すでに似たようなものがあれば彼らの研究は無視され抹消された。
支店長は勤務時間も気にせず酒に溺れるようになり、研究員の一人は何かに取り付かれたようにロケットがどうこう呟き続け誰も話しかけなくなり、ついにこの地を去った。
唯一の部下である女研究員は、指示されたことはやるが、それ以外はただ机に座り天井を眺めて時が過ぎるのを待つようになった。必要以上の情熱は持たない。今日も言われた仕事を早々に終わらせた彼女は爪の手入れに余念がない。定時になったらまっ先に帰ってボーイフレンドでも探すのだろう。
そして彼は、飛び出していった男とはまた違う狂気に取り付かれ、研究にのめり込んでいった。
全てを手に入れ、そして失う原因となったポケモン、ポリゴンを使って会社に復讐する。
「よし、これでポケセンと同条件の筈だ」
装置にポリゴン2を入れる。作成したウイルスプログラムはポケモンセンターに感染させ、回復や交換を行ったポリゴン2に植え付けられる。そしてポリゴンがレベルアップや技を新しく覚えたときウイルスが発症する仕組みだ。
「よし。やれ」
彼の合図と共に部下は機会を作動させる。
「どうだ?」
「順調です。70パーセント、80パーセント読み込み完了――」
その言葉を遮るようポリゴン2から光が発せられた。姿見えなくなる程に眩しい輝きが収まると、現れたポリゴン2の姿が変わっていた。
首は外れてくるくる回転し、妙な痙攣のような挙動を繰り返す。
そして、ポリゴンは鳴く。彼を見ながら。二度、三度と鳴く。
「なんて姿だよ」
呟くと同時に涙が溢れた。新たな姿となったポリゴンを抱き、次々と涙がこぼれ落ちる。腕の中のポリゴンは奇妙な挙動を見せ、彼と彼女を交互に見ている。
「あれ、どうして? 何で――」
驚く声に彼が振り向くと、部下がモニターを見て停止していた。
「何だ?」
「ポリゴンの防御と特防の値、条件を満たす前にすでに減少してます」
「くそっ! 失敗かっ! 姿もこんなに変わっちまってチクショウ!」
「それが、上昇しているステータスもありまして」
すぐに彼はモニターに駆け寄り覗きこむ。
「組み込んだのはレペルアップ時にステータスが下がるウイルスプログラムなんだぞ! 上がるやつがあるか!」
「見てください。特攻が約22.2パーセント、素早さは約33.3パーセントも上昇しています!!」
「そんな馬鹿な……」
何がどう作用したのか、彼の作ったプログラムによってポリゴンは、姿を変えるだけでなく、能力が強化されていたのだった。
「フォルムチェンジ。姿が固定されていれば進化といってもおかしくありません。強襲型といったところでしょうか。凄い発明ですよ! おめでとうございます!」
「お、おめでたいことがあるかっ!」
彼は怒気を含んだ大声を上げる。しかし部下は微笑みながら続ける。
「よかったですね。課長」
「何がいいものか!」
「大事なポリゴンが無事で」
「大事なことがあるか! これは道具だ! 俺が作った道具なんだ! こんな人工の、生きているか解らないポケモンに、俺は、俺は――」
彼女は上司に駆け寄りハンカチを差し出す。
「そんなの、どっちでもいいじゃないですか」
拭かないと凍っちゃいますよと子どもにするように、上司の顔を拭く。彼はされるがまま動かない。
「生きていようが、そうでなかろうが、魂があろうが無かろうが。それに愛着を持っても。そのポリゴンが大事でもいいじゃないですか」
彼は動かない。
「これを持っていけば本社に返り咲くこともできるかもしれませんよ。どうしますか? 課長?」
落ち着いてきたのか、やっとかすれた声が聞こえた。
「あいつが本社に使おうとしてたメールボム、残っていたな」
「はい、まだあると思います。でもどうするんですか?」
「どけ」
彼は作成していたプログラムと現在のポリゴンのデータと見比べ、書き換え始める。そして完成したものをメールボムに組み込む。
「あーあ、課長。それがバレたら解雇どころじゃすみませんよ」
そういう部下の声は、心なしか彼には弾んで聞こえた。
「見つかればな」
「私知りませんよ」
「あのプロテクトを突破してプログラムを解析できたとして、果たして奴らがみすみす俺達を手放せるかな? あとな」
もし本社の人間が接触してきたとして、高い条件をつけるのと嘲笑って断るのとどっちが気持ちいいか考える。彼は嗤った。
そうして最後の仕上げに彼は震える手でキーボードを、押す。
「俺を課長と呼ぶな」
席を立ち振り返る視界に入ってきたのは、胸元をヨダレで汚したまま、どこからか持ってきた高級酒とグラス五つを用意している赤ら顔の支店長だった。
Program................ run
/
/
/
Complete
ある晩ポリゴン2を育てているあなたの元に、見覚えのないアドレスからメールが届く。
開けてみるとそれはどこにでもあるスパムメールだとわかる。普段なら迷わず削除するのだけれど、あなたはなんとなくマウスをスクロールし文や画像を見る。
それは官能的な絵や謳い文句だったり、簡単に儲ける方法だったり、楽してみるみる痩せる方法だったりする。あなたにとって魅力的な内容だ。ただし、それにも増して胡散臭い、うますぎる内容だ。あなたはそれに呆れ、笑いながら目を通す。時に自分なら思いつくもっとそれっぽい文章を考えたり、誤って引っかかってしまう子どもや愚か者を妄想しながら、メールの最後に書かれているものを見つける。
乱雑なアルファベットと数字と記号の羅列。ジャンプアドレス。
アンチウイルスソフトがしっかり起動しているのを知っているあなたは、その内容を本気にしているわけではなく、利用しようと思っているわけでもないが軽い気持ちでカーソルを動かして、ポン、と指をマウスに振り下ろす。
突然浮かび上がる無数のウィンドウ。
みるみる上がっていくダウンロードバー。
様々ところを手当り次第クリックし、出鱈目にキーボードを押してもみるがそれは止まらない。強制終了が頭を掠めたとき、画面にあるムービーが流れ出す。
幼児が描いた様なヘタクソな絵のポリゴン2にフロッピーが重なる。そのポリゴン2がボールに入れられ、ケーブルを伝ってもう一つのモンスターボールと入れ替わる。そして、他人の手に渡ったポリゴン2は白く光ると、ポリゴン2に似たアニメキャラクターが力こぶを作りウィンクをする。
ムービーに見入っていたあなたは突然流れる相当大きいファンファーレの音にびくっとする。画面にはcongratulationの文字が大きく表示され、やがて全てのウィンドウが消える。いつものデスクトップだ。一点だけ違うのは、patchと書かれたファイル。慌ててパソコンをスキャンするがそのファイルにもパソコンにもウイルスは見つからない。
そこであなたはやっとあの噂を思い出す。友人や知人、もしくはインターネットで聞いた噂を。どこかで出回っているポリゴン2を進化させる「怪しいパッチ」の存在を。
後ろを見ると、ポリゴン2がいる。あなたがじっと見つめているので呼ばれているのかと思い、嬉しそうに鳴きながら擦り寄ってくる。
どうしよう、とあなたは言う。
ハッキングを受けながらも何も起きていないパソコンを見て、このパッチはひょっとしたら、とあなたは考える。
外から近所の住人から夜中の大音量を出す者への罵声や抗議の声が聞こえるかもしれないが、あなたはそれには反応しない。何度も画面とポリゴンを見返すあなたは、そのパッチを削除できない。かといって使おうとも思えない。時計の秒針の動く音がやたらに大きく聞こえ、途方に暮れながら夜は更けていく。
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今更ながら、書いてみました。
インストールを読んでみて、じゃあ作った側はどんな人間なんだろうかと考えて書いてみました。
「インストール」に書かれているシルフカンパニーの面々の、なんとも言えない緊張感となんともいえない他人事な緊張感のなさは現場な感じで凄く好きです。
タグもなく、No.017さんの書く続きと内容の齟齬も生じるとは思ったのですが、リスペクト意味を込めて。
たぶん続けたいということで、そのうち忘れた頃に続きを上げられる予定なんですよね?ね?(笑)
私の書いたこちらの作品の内容はもう完全に無視して、インストールの続き、こっそりお待ちしてます。
【勝手に書いてみた】【ごめんなさい】【続きお待ちしてます】
すげええええええええええええええええ!!(絶叫
あまりにも我が脳内のコットンガードチルチルちゃんと一致していて目を疑いました! すごすぎですよこれは!!
立体チルチルちゃん可愛すぎだろこれ!! 速攻でお持ち帰りですわええ!!
――喜び方が異常すぎて引かれること間違いなしですが(ツイッターのフォロワーの数を不安げに確認しながら)、素晴らしい力作です!
いやもうホントに速攻で保存しました! ありがとうございます!
こちらをじーっと見つめてくるふわふわチルチルちゃん……今日はよく眠れそうです(´ω`)
本当に、ありがとうございました!
I.一週間前
女性の膝にゾロアが乗っかった。肩にも腕にも頭にも。
目の前でそれを見ている男性は、ポカンと口を開けている。
六畳一間の狭いアパートの一室のどこに、これほどのゾロアが隠れていたのだろう。
見ると、小さな棚の上にあったモビールがない。陶器で出来たタブンネがない。ポカブの貯金箱もない。サイドボードに三つ置かれていた目覚まし時計もなくなっていた。通路に作られたキッチンを見れば、やかんがない。洗いかごにあったお玉もない。洗いかご自体なくなっていた。
次から次へと現れるゾロアに押し合いへし合いされて、女性の姿は黒い団子の中に埋もれていた。
女性は胸や頭に乗ったゾロアを引き剥がし、やっとのことで起き上がると、はにかんだような、優しい笑みを浮かべた。
II.一日前
湯呑みが落ちた。
渋い灰色に赤い模様のそれは、床に触れても何の音も立てず、コロコロと転がった。
パソコンをいじっていた女性は、床に転がった湯呑みを見てため息をついた。
風も傾斜もないのにコロコロとひとりでに動くそれは「パソコンやめて、かまって、遊んで」と訴えかけているようだった。
女性は時計を見た。
午前十一時十五分。
昼休みまではまだ小半刻ほどある。
女性はキーボードと、その横に積まれた紙の資料の山を見比べ、これからやらればならない仕事の量の多さを思った。
資料の上に乗ったバチュルが「フィー?」と声を上げる。
バチュルは資料の端まで行くと、青く大きな目で下を覗きこんだ。
そして、「取ろうか?」と言うように女性を見る。
「いや、いい。放っておけ」
女性は淡白にそう言って、パソコンに向き合った。
肩ほどまである黒髪を耳にかける。そうすると視界の端に揺れ続ける湯呑みが映った。
ふう、と息を吐いた。
傍らにある紙の山から一枚をバチュルの下から引っ張り出し、睨みつける。
紙のレポートを電子化するだけの単純作業。
暇つぶしにはいいかもしれないが、このところお呼びのかかる事件もなく、持ち前の手腕を発揮できないのは彼女にとって苦痛でしかなかった。
不謹慎は承知で、事件か何か起こればいいと考える。それも大きな事件がいい。
こう何もなくて平穏で、頭を使うのが、我侭なゾロアたちをどうやって宥めすかすかだけというのは……
不意に頬に温かいものが触れた。
机を蹴って回転椅子に加速度を付け、後ろを向く。
馴染みの同僚であるスミレが、赤い模様の湯呑みを持って笑っていた。
「はい、これ」と差し出された湯呑みにお茶は入っていない。どうやらただ拾ってくれただけらしい、と判断して湯呑みを机の上に戻す。湯呑みがカタカタ揺れた。
「ねえ、レンリちゃん」
湯呑みを拾っただけでは物足りないのか、同僚はレンリに話しかけてくる。
彼女の中ではもう休憩時間が始まっているらしい。もっとも、事件のない警察なんて開店休業しているようなものだ。
レンリもそれに付き合うことにして、パソコンの電源を落とした。
液晶が名残惜しそうにノロノロとシャットダウンの準備をしているのをレンリの横から眺めながら、スミレは話を続けた。
「ライム君と別れたって、本当?」
「本当だ」
「え、なんでなんで? 彼氏が浮気してたとか?」
「いや。向こうがふったんだ」
えー、うっそーと大仰な感嘆を上げる同僚を、彼女はあくまで冷静に見つめた。
その大声に対抗するようにカタカタ鳴り始めた湯呑みを押さえ、「騒ぐことか」と静かに問いかけた。
にも関わらず、と言うべきか。
スミレは「騒ぐことよっ!」とレンリの問いの声量の、何倍もの音量で答えた。
「だってさあ、文武両道美人薄命で有名なレンリちゃんが、ひょろ長のっぽで顔しか取り柄がない気障野郎と付き合ったのよ?
でもってふられたのよ? 騒ぐしかないじゃない! なんでふられたの? っていうかなんでそもそも付き合ったのよ!」
「人を勝手に殺すな」
女はゴシップ好き、とはよく言うが、女であるはずのレンリにはその辺りがとんと分からない。
メッシュを入れたばかりの髪をいじりながら、ふられた理由は分からんが、と言葉少なに答えた。
心当たりがないわけではない。
先週、家に彼が来た。
その折、彼がクッションに化けたゾロアの上に座って、尻をかまれたのである。
それだけの理由、という気がする。
けれど、告白してきたライムが自分より背が高いからという理由で付き合った、その程度の始まりでは終わりもそんなものか。
小柄なスミレには背の高さ云々を気にする意味は分からないだろうから、話していないが。
スミレが宙を見て、あ、と声を上げた。
今が休憩時間であることに気付いたのか、と思いきやそうではなかった。
「美人で思い出したんだけどさ、事件なのよ。レンリちゃんに行ってほしいのよね。君の好きな潜入捜査」
レンリが椅子をガタンと倒して立ち上がった。
III.当日
レンリはライモンシティの自宅で、あぐらをかいて座っていた。
正しくは、家にいるゾロアたちと我慢比べをしていた。
貯金箱、小物、食器類。思い思いの姿に化けた彼らの内、何割かは限界が来ているのか、細かく震えている。
なぜこんなことをしているのか。
それは昨日、同僚が持ち込んだ仕事に起因していた。
「王国? そんなものが今もあるのか」
そう問いかけたレンリに、スミレは、そうよと笑って答えた。
「……で」
レンリは彼女が持って来た資料に目を落とす。
「歓迎パーティーとやらを催すわけだな。血税を使って」
「外交だからね?」
しかし、そこに脅迫状が届いたらしい。
「なんて?」
「王女を殺す」
ありがちな脅し文句だ、と思う。
レンリは少しだけ形の良い眉をしかめて、資料をめくった。
パーティーの段取りでは、使節団と我が国のお偉いさんが食事をしながら語らう。
見取り図に机はいくつも描かれているが、椅子は壁際に数脚だ。立食パーティーをやる気らしい。
その後の日程はライモンのミュージカルホールやセッカにあるリュウラセンの塔など。
実質、お姫様の物見遊山ではないだろうか。
レンリは指でパーティーの段取りを細かくなぞった。
王女はパーティーに出ずっぱりではなく、挨拶の時間をとって、その時だけ公衆の面前に現れる。
「でも、凶器はどうするつもりだ? パーティー用のステーキナイフで刺すわけじゃあるまい」
「ああ、それね。ポケモンは持ち込み禁止なんだけど、ね」
スミレが背伸びしてレンリの腕の中に手を伸ばし、資料を奪った。
資料をめくり、ページを探している。
レンリは思考を巡らし、検査を誤魔化してポケモンを数匹持ち込む方法を考えていた。テロリスト相手に手持ちが一匹では心許ない。
同僚がページの一点を指し示した。
銃。
レンリは指を口に当てたまま、自室の中のゾロアたちの様子を伺った。
ゾロアたちは見られていることが気になるのか、時折細かく震えている。
「……そろそろ、いいかな」
レンリの言葉に、数匹が変化を解いて、子狐の姿に戻る。
それを見たレンリは意地悪そうに笑って、
「はい引っかかった」
と両手を上げた。
ずるいずるいと言いたげに騒ぎ出したゾロアを適当にあしらう。
「一番長く変化したやつをパーティーに連れて行く、って言ったろ? 約束は約束だ」
本来だます方である自分たちがだまされたことに不服な子狐たちは、うにゃんうにゃんと鳴いてレンリにのしかかった。
だめ、約束は約束、と言ってレンリがゾロアを引き剥がしているところにチャイムが鳴った。
ゾロアを蹴散らしてドアを開く。スミレが背丈の半分ほどもある大きな紙袋を持って立っていた。
「なんだこの格好は!?」
ライモンの自室で大量のゾロアに囲まれたまま、レンリは珍しく声を荒らげた。
いつものパンツスーツ姿ではなく、ふわりとした赤いドレスに、紅のメッシュを隠すように付けられたドレスと同じ色の髪飾り。
スミレが着替えろとしつこいので仕方なく着替えたが、着替え終わったところでとうとうレンリの我慢が切れた。
「警備だろ! なんでドレスなんだ!」
だってパーティーじゃなあい、と間延びした声で答えるスミレ。
ゾロアたちが地面に転がって大笑いしている。
「いいじゃない、似合うわよ」
スミレは笑いながら紙袋を手際よく畳む。その紙袋に「レンタルドレスサービス」の文字がなかったら、ドレスを引き裂いて脱ぎ捨てるところだ。
そんなレンリに、スミレは至極機嫌良さそうに問いかける。
「なんでドレス嫌なの?」
「…………犯人を追いかける時に不便じゃないか」
「それだけ?」
「犯人を蹴る時も困る」
レンリの返答にただ満面の笑みを浮かべながら、スミレは「行きましょうか」と静かに呟いた。
「何事もなければ、純粋にパーティーを楽しめばいいんだし」と少し申し訳なさそうに付け足す。
「ああ、あと、応援ひとり呼んであるから」
家を出て、スミレの車に乗り込んだレンリに声をかける。レンリは返事をしなかった。
黒の小型車は、渋滞にも引っかからずスイスイ進んで、程無くして会場の前に辿り着いた。
車から降りようとしたレンリの前に、ついとハイヒールの靴が差し出される。
「……なんで」
「ドレスにスニーカーじゃ、おかしいでしょう?」
渋々といった様子でハイヒールを履き、差し出された袋にスニーカーを入れ、鞄に押し込んだ。
その場で試すように足踏みしてから、車の中に手を伸ばす。黄色蜘蛛がぴょん、とその手に飛び乗った。
その奥からさらにもうひとり、人間の男性が出てきた。
車の中にはずいぶん余裕があるのに、妙に狭そうにして出てくる。
車から出て手足を伸ばすと、男性はレンリに向かっていたずらっ子のようなおどけた笑みを浮かべた。
「……尻尾を出すなよ」
レンリの小さな声に、男性は黙って頷いた。
もうほとんどの参加者は会場に着いているらしく、入り口付近は静かで閑散としている。
レンリは駐車場に泊められた車の群れをもの珍しげに見ながら、入り口へ向かった。
入り口には、持ち物検査用のゲートと警備員と、よく知った人影があった。
なんでここにこいつが、とレンリが咎める前に、スミレは「頑張ってね」と激励の言葉を置いて遠ざかって行った。
不機嫌を顔に貼り付けて振り向いたレンリに、見知った人影が声をかける。
「……ライム」
「君が来るっていうんで、僕も応援にね」
見知った顔がずい、と前に進んでレンリを見つめた。
「すごいな。何て言ったらいいのか……想像以上に綺麗だ」
レンリはそっぽを向いた。招待状の提示を求める警備員に、面倒くさそうに封蝋の付いたそれを見せた。一介の警備員にまで今回の脅迫状の件は知らされていないのだ。
彼も同じように招待状を見せる。警備員が「お連れ様は」と言い淀んだ。
レンリが半身を、車の中から付いて来た男性に向けた。
あごで会場とは逆の方をしゃくる。
男性は肩をすくめると、夜闇に紛れるように駐車場に姿を消した。
ライムが怪訝そうな顔をレンリに近付けた。
「……いいのかい? あれ、スーだよね」
耳元に息がかかった。
反射的に男の頬を打って、レンリは距離を取った。
叩かれたライムの方は、ヘラヘラと笑っていた。
「相変わらず。暴れても美しさが崩れないなんて君くらいだよ」
「無駄口を叩きに来たんなら帰れ、ライム」
ぴしゃり、と叩きつけるように言い放って、レンリは警備員に鞄を押し付けた。
「やだなあ。君を見に来たんだよ。それは冗談として、元々僕が手に入れたネタだからね」
ライムがレンリの後ろで肩をすくめている。
鞄はベルトコンベアーに乗り、中身の画像を晒しながら通過した。
いいですよ、の声にライムがごく小さな鞄を警備員に渡した。
ごく小さな鞄だ。鞄というよりポーチに近い。画像にはよく分からない物体が映っているだけだ。
「何を入れてるんだ?」
「入り用なものだよ」
ライムは微笑みを浮かべながらポーチを受け取った。
相変わらず、ヘラヘラと笑いだけは絶えない男だ。
いつも柔和そうに笑っているが、その分何を考えているか分からず、ミステリアスと言えば聞こえはいいが、ふとするとただの気味の悪い男に成り下がった。
今も何やら理解出来ない笑みを浮かべている。
なんで私はこいつと付き合ったんだろうな。そうレンリは疑問に思う。
レンリは、自分の後ろで彼がどんな表情をしているか、全く見ていなかった。
ライムがレンリの、ドレスのデザイン上むき出しになっている肩を叩いて進もうと促す。いつもはバチュルが乗っている場所だ。
会場への短い道のりの合間に、ライムが呟く。
「モンスターボールだけ見てたみたい。ほら、着いたよ」
レンリがその言葉の真意を問う前に、ライムは笑ってさっと道を譲った。
開け放たれた観音開きの扉の向こうに、淡い赤の絨毯と白いテーブルクロスがいくつも見えた。
吹き抜けの上方、本来の二階部分には張り出した廊下と豪勢なシャンデリア。
男性陣の黒白のスーツの中に、華やかな赤黄緑のドレス。
孔雀の飾り羽のような、大仰な飾りを付けた者もいる。
「君が一番綺麗だ、勿論ね」
さあ、とライムが腰を曲げて手を奥に伸ばす。
気障な奴だ、と会場への入り際に呟いて、そのままレンリは奥に進む。
レンリはチラチラと食べ物を見て、何を食べようか迷っているような振りをしながら、人混みの中に紛れた。
左右に目を走らせ、誰も彼女に注意を払っていないのを確認してから、ドレスの裾をはたいた。
ヒョイと狐が鼻先をドレスの中から突き出し、次いで顔を出した。
そして嬉しそうにシシッと笑うと、ドレスの中から静かに素早く飛び出して、テーブルクロスの下に入り込んだ。
本当はもう少し別の擬態を考えるつもりだったが、時間がなかったので、この際だからとドレスを利用したのだ。
居心地悪そうにバチュルが顔を出し、そして顔を引っ込める。
「すごいね。流石はゾロア使いのレンリだ」
いつの間にか、ライムが彼女の真後ろに立っていた。
彼女は後ろを見もせずに、答える。
「変な仇名を付けるな」
「ほめてるんだよ。家にもあれだけゾロアがいるしね」
「その話はもういいだろう」
にべもなく言い放って、レンリは男から離れる。
その時、レンリが振り返って一目でも彼を見ていたら、そうしたら、彼のヘラヘラした笑い以外の表情を見られただろう。
しかし、彼女はライムを一切見ずに、その場を離れた。
華やかなパーティーは続く。
レンリは壁際に並べられた椅子に腰かけて休憩をとっていた。
そこに、ライムが性懲りも無くやって来た。
「このジュース、美味しいよ」と言って差し出された緑の液体を、彼女は無下に断った。
帰ってきたゾロアが再びドレスの中に入り込んだ。
そのまま、レンリが立ち上がった。
喧騒を離れて扉を出ようとするレンリを、ライムが追いかけた。
「どこ行くの?」
「化粧室。慣れない靴で疲れた」
ドレスを掴み、少しだけ引き上げる。ストッキングの踵の部分が、無残にも血で汚れていた。
「スニーカーに履き替える気? やめなよ。おかしいよ?」
「これだけ丈の長いスカートなんだ。誰も見やしないさ」
見るよ、おかしいよと口を尖らせたライムを置き去りにして、レンリは化粧室を目指した。
化粧室は広く、橙色の暖かな照明で明るく隅まで照らされている。トイレと洗面台だけでなく、化粧専用のスペースも設けている。
レンリは個室に入ると、スニーカーに履き替えた。
そして少し考えて、レンリは欠伸をしているゾロアの額をつついた。
会場に戻ったレンリを、ライムの笑顔が出迎えた。
彼の目が、素早く探るように足元を見る。
そして、がっかりした顔を浮かべた。レンリはスニーカーを履いていなかった。
ライムの落胆した顔を見て、レンリは笑みを浮かべた。いたずらっ子のような、それ。
ライムは気を取り直すように頭を振って、レンリに話しかけた。
レンリの方は、手に乗せたバチュルに小声で指示を出している。
小さな蜘蛛は大広間の上方に張り出した廊下の手すりにひとっ飛びした。
そこからさらに天井を伝って、シャンデリアの上側に隠れる。
「何を……?」
問いかけるライムに、レンリは唇に指を当てる仕草で答えた。
作戦の子細を他人に話すのは彼女の趣味ではない。それが同僚であってもだ。
ライムは不服そうに肩をすくめてから、「さっきの話だけど」とレンリに再度話しかけた。
レンリはまばたきして、ライムを見た。
「すまない。全く聞いていなかった」
ライムは大仰にため息をついた。
いつもはいじられてもヘラヘラしているだけのライムが珍しい、とレンリは思った。
彼はレンリに一、二歩近付くと、内緒話をするように顔を近付けた。
「脅迫状を送った奴は、ポケモンを使うと思うかい?」
レンリは静かに首を横に振った。
「……銃だと思う?」
今度は、首を縦に振った。
競技用ライフルなどの一部を除いて、この地方で銃を持つことは誰にも許可されていない。たとえ、警察であってもだ。他の地方でもそうだろう。
ポケモントレーナー全盛の今、狩猟や犯人の捕縛が目的だとしても銃は使えない。
それに、銃はポケモンには大した威力を発揮しない。命中精度も、ライフルを除けば悪い。
利点は、モンスターボールからポケモンが現れるより速く弾が発射されることぐらいか。
近距離で、人間に向けられたら困るものではあるが。
そんなものが持ち込まれていて、しかもそれがテロに使われるときた。
テロリストはよほど銃の腕前に自信があるのか、それとも、
「銃を作っているか、ばらまいている連中はその銃によっぽど自信があるらしいね。
紛争地域にばらまくだけじゃ飽き足らず、平和なイッシュにまで出てくるなんて」
レンリが思っていたことを、ライムが引き継いで声に出した。
根拠はほぼ、ライムが持ち込んだネタしかないが……しかし、銃が使われる。レンリにはそんな予感がした。
確信に近い予感だった。
人々の他愛ない会話が徐々に静まっていき、人の群れの向きが一方向に定まっていく。
二階の渡り廊下の一部、衝立で両側を仕切られた部分に繋がる扉が開いた。
「只今より、皆様のお時間を頂戴いたしまして」
歓迎パーティーのために雇われた誰かが、声を張り上げた。
それを合図に、会場はしんと静まった。
「遠方より来訪して下さった、栄え有る王家の姫様がお言葉を賜ります」
レンリは誰かの尊敬語を聞くのもそこそこに、周囲を素早く見回した。
誰かが銃を持っている。
この中の、誰かが。
光をキラキラと反射するドレスに身を包んだ王女が姿を現した。
警備兵のポケモンが前方を守り、世話役然とした女性が横側を守るように歩いている。
銃を撃ったとして、これではポケモンに阻まれて王女には届かないだろう。
銃が使われるとして、その理由に一瞬疑念が浮かんだ。
王女が進み出た。
廊下の手すりへ近付く。しかし、手すりに届くほどには前へ出ない。
王女が所定の位置で立ち止まり、口を開こうとした時。
静かな水面に水滴が落ちたかのように、ある人物を中心点に人の群れが揺れた。
鉄鎚で鉄を強く打ったような音が響いた。
天井のシャンデリアが砕け、細片が会場に降り注いだ。
誰かが悲鳴を上げた。それは連鎖して、すぐに判別のつかない大きな音となった。
「皆さん! 早く避難してください!」
ライムが大声で怒鳴った。それさえも飲み込んで、人の群れは一気に出口へ移動し始めた。
我先に、と手を伸ばしながら顔を歪めて走る人々。
姫とそのお付きが扉の向こうへ姿を消した。
レンリは丸テーブルの、人が丁度通らない点に身を収めた。
水流が杭を避けるように、人々がレンリを避けていく。
ライムは兎にも角にも声を上げ、人々を必死に誘導していた。
天井のシャンデリアを見る。
端の一箇所が無残にも壊れている。その場所から、彼女の電気蜘蛛が顔を見せている。
そこから伸びる透明な糸。
それは下方にいる、男の右腕を縛り上げていた。
その手の中には、禍々しい、黒い造形。
天井からなら、会場にいる人の動きがよく見える。
小さなバチュルは男の動きをいち早く察知し、その銃口が姫に向かないよう、糸で腕を縛り上げてその方向を変えたのだ。
「よくやったな、ベー」
レンリは臆せず犯人の男に近付くと、その手から拳銃を奪い取った。
そして顔色を変えず、床に向かって五発、銃弾を撃ち込んだ。
「銃の仕組みはあまり知らないんでな」
しれっとそう言って、空になった拳銃を床に投げ捨てた。
男の左手を取って後ろに回し、空いた手で手早くバチュルの糸を掴んで手首を縛る。
そして力を少し入れて男を床に転がすと、バチュルに戻るよう指示を出し、会場の出入り口の方を向いた。
ライムが手を振りながら走って来る。
「もう犯人を捕まえちゃったのか。流石レンリだ」
そして彼女に銃口を向けた。
IV.当日(2)
彼は会場の中央付近に立つレンリに、大股に歩み寄った。
その手には、黒光りする拳銃が握られている。
「……ベーは離れててくれるかな。後ろに。そう」
体の小さな電気蜘蛛では、主人を弾丸の脅威から守れない。名指しを受けた電気蜘蛛は、すごすごと後方の壁まで下がった。
ライムがバチュルとレンリを結んだ直線上に来るよう体の位置を変えた。
これでは、電気蜘蛛はレンリを巻き込まずに技を出すことが出来ない。
ライムが拳銃を握り直す。手が汗ばんでいるのだろうか。
「驚いたかい、レンリ」
妙にぎらついた目がレンリを見る。
こいつのこんな表情を見たのははじめてだ、とレンリは思う。
「まあね」
レンリは静かに答える。
予感はあった。奇妙なポーチのこと。今回の事件のことも、前日に持ち込まれたネタのわりには詳細が分かっていた。銃のこともあった。
けれど、本当にそうだとは、実際にこうして銃を向けられるまで確信が持てなかった。
「いつから、こんなスパイ紛いのことをやっていた? 銃を作ってる連中と……」
今度はレンリが質問した。
ライムは嬉しそうに笑った。こんな時に、嬉しそうに。
「残念。僕は警察をスパイしに来たんでね。銃のことは漏らしすぎたけど……まあ、そんなことはどうでもいいんだ」
突然、銃を真っ直ぐレンリの顔に向けた。
そして、ほとんど言葉を叩きつけるようにして吐き出した。
「組織に上手く事件の算段を話して、こうやって銃を持ち出すほうが大変だったよ。
道化の男もよくやってくれた。レンリの注意を引き付けてくれて」
本来の目的は失敗したけど、僕の方は達成できる。
そう言ってライムは笑った。嘲笑。
「何か、言い残すことはないかい? これから、君を殺すんだけど」
またライムが笑った。いつものヘラヘラ笑いだった。
レンリは素早く考えを巡らせた。
あと少し、時間を稼げば。そして距離をもう少しだけ縮めたら。
何か、彼の気を引く話題はないか。
「なんで私と付き合った」
ライムは答えない。
「最初から殺すつもりだったのか」
ライムが距離を詰める。もう少し。
「本当に付き合うつもりだったさ」
でも、とライムは続ける。
「絶望した。ああ、絶望を味わったね! 君が僕を家に呼んだ時に」
ゾロアが僕に噛み付いたのは構わなかったさ。ライムが目を剥いて唾を吐く。
でもさ。
「君は……笑ってたね。ゾロアに向かって。僕はあんな笑顔をはじめて見た! 一度も、一度もだ! それをゾロアに向かって!」
ライムが怒りのままに話す。言葉が次第に散り散りになり、意味の分からない罵声になっていく。
銃口がレンリから逸れた。
パン、と指を鳴らす。ドレスが揺れた。
黒い子狐が矢のように飛び出し、ライムの足に突撃した。
ライムは体勢を崩しながらも、銃口をレンリに向けた。
引き金に手をかけるより速く、レンリがその手を蹴った。いつの間にか、履き物がスニーカーにすり替わっている。
ライムの手を離れた銃が、遠くの床に落ちる。
得物を無くした手が、今度はレンリに掴みかかった。強く首を掴まれ、床に倒される。
声が、声にならない。
手を引き剥がそうとしても、まるで首に張り付いたように離れない。
小さな黒と黄色がぼんやり見えた。
ライムがぶつぶつ言っている。ただ一言、「好き」だけ聞き取れた。
空気を求めてもがく腕の力が弱くなっていく。
レンリは目を閉じた。
冷たい液体が流れ落ちた。
ライムの体が跳ね飛んだ。
視界が元に戻り、真っ先に映ったのは赤髪の獣人。
「スー!」
後先考えず、飛び付く。
暖かく慣れ親しんだ獣の匂いが彼女を包んだ。
V.その後
来るのが遅かったと、まるでデートの待ち合わせをしていた男女みたいに一方的な喧嘩を繰り広げるレンリとスーを、呪うような恐ろしい目付きで睨みながらライムは警察車両に乗せられて行ったと、後に同僚が話した。
彼女はあの後もずっと駐車場にいて、スーとどこかに他の出入口がないか探したり、警備員の目を誤魔化す方法を考えたりしていたらしい。
それでスーが来るのが遅れたのだが、事件が解決さえすればレンリにはどうでもいいことだった。
王女自身が狙われる理由もごまんとあるらしく、王女の歓迎パーティーの件は不問になったようだ。
銃の密売組織は最近勢力を広げていて、取り締まりを強化していると別の課からの情報が後になって入ってきた。
最初に銃を撃った男は、最近調理場に雇われた男だったそうだ。
一応、事件は解決したように思えた。
「ただ、なんでライムが私を殺そうとしたか、分からないんだ」
事件のない、開店休業中の警察署内で、レンリとスミレが話す。
時間はいつものように、昼休みの小半刻前だ。
レンリは灰色に赤の湯呑みを撫でていた。
「私は普通に付き合ってたつもりなのに」
肩に乗るバチュルがフィー、と鳴いた。手の中の湯呑みがカタカタ揺れる。
そんなレンリを見て、スミレは優しく笑う。
「じゃあ、分かんなくていいんだよ。レンリちゃんにも、いつか分かればいいなあって思うけどね」
陽光が暖かく室内を照らす。
お茶を入れようか、とスミレが言うと、レンリの手の中の湯呑みが子狐の姿に戻る。
化けるのがまだまだ下手なんだ、と言ってレンリが笑う。
少し長めの昼休みが続いている。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】
ぞろあがぞろぞろあー。……すいません。
スカートの中からゾロア! がやりたかっただけです。
【描けるもんなら描いてみろ】という方向性で。
でもどうせ中はハーフパ(強制終了)
バレットパンチという技があるくらいだから、銃はあるんだろうと思います。
しかしバレットパンチにしろなんにしろ、強力な技を受けても平気なポケモンに銃を撃って効くかなあ、とも思います。
きっと、ポケモン世界の人々はポケモンを中心に狩りをしていたんだ! 弓矢とか剣とかは補助的に使ってたんだ! とか考えています。
銃も、ポケモンがいるからあんまり発展してなくて、威力も命中精度も良くないだろうなあ、とか。
でも人間相手なら致命傷を与えられるから、戦争には使われるかな、とか。
【考察していいのよ】
ゾロアにバチュルそこ代われは諸事情によりお断りします。
……ああ、彼女ですか。多分彼女だと思いますよ。
読了ありがとうございまする!
ナナクサ「コウスケ、この屋台で使ってる米はねハスミノコマチって言って、食べると和歌がうまくなるって言われてるんだ!」
ツキミヤ「……」
ちょっと野の火のアキタコマチの描写、ハスミノコマチに変えてくるわ。
内輪ネタすぎるかしら?w
> 去り行く者なのか、置き去られて行く者なのか。
> 我が身の落魄を嘆く小野小町を思わせる歌人と、時に忘れられ一人残された水の住人。
> 歌というよすがで出会った二者を、共に時に忘れられようとしている者として結びつけた意外性が新鮮。
スランプに陥った歌人が人でない水の住人に歌を作ってもらう
というあらすじを決めて書いていくうちに自然とこういう流れになりました。
忘れ去られていく二人、その二人が生きた証を遺そうとする話でもあります。
そのうちカゲボウズシリーズあたりに「これは蓮見小町の有名な和歌で……」とか出せたらいいな。
> 最後にサダイエが見た大鯰は、彼女を迎えに来た水の歌人だったのか、
> それとも水の住人へと姿を転じた蓮見だったのか。
サダイエが見た大鯰は私の中で設定はありますけど、
サトチさんの感想見たら黙っといたほうがいい気がしてきた。
秘すれば花といいますしね。
ご指摘の通り、蓮見さんは小野小町を意識しとります。
サダイエさんはもちろん百人一首の選者のあの方ですw
短歌はいろいろ検索してて、蓮の別名が水芙蓉だと知ったとき、
フヨウ!? フヨウだと! これは自作するしかねぇ! と思いました(笑)。
だが苦労の後が見えるようじゃあまだまだだねぇい。精進せねば。
「古典ぽい作風にするなら 「うるわし君」がもうちょっと比喩されてもいい、
想い人への表現が直接的過ぎる気がしないでもないので、蓮の花よりも美しいと思えるなにかに! 」
と、時折和歌を作ってるお友達が批評をしてくださったので
サイトに載せるタイミングか、昔語二集を出すときに少し変えるかもしれません。
> 最初、「水芙蓉の歌の後、どうしても歌が詠めなくなった蓮見が水の歌人に魂を売って・・・」とかの
> 怖い系の話になるのかと思ったのはナイショ(^^;)
さすがサトチさん、私がやりかねないことをよくご存じですね。フフフ
実はこの話と対になる赤の都の男の話の構想がありまして。(やるやらないは別として)
こっちはちょいと怖い系の話にしたいな、と思っておりまする。
でわでわ
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