ポケモンストーリーズ!投稿板
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  •   [No.2703] タグソートアルゴリズムの変更テスト 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/19(Fri) 21:43:32     119clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:1番だから1番】 【3番だけど2番】 【4番だけど3番


    「……『Line:3316 未定義のシンボルです』……これ、もう何回目でしょう……」
    「まーたそのエラーか。ったく、可愛げがねーなぁ」

    名取――エラーメッセージを読み上げた男――と、北川――エラーメッセージに「可愛げがない」と悪態を付いた男――が一つのディスプレイに目をやりながら、それぞれにぼやく。二人は今、ディスプレイに垂れ流された長いプログラム・コードを読みながら、潰しても潰しても際限なく出続けるバグと格闘し続けていた。

    名取と北川は、共にとある情報処理技術を扱う企業に勤めているプログラマーだ。名取は二年目の新人、対する北川はこの道十五年のベテランである。彼らはこうしてコードと格闘する日々を続けながら、それでもこの仕事にやりがいを見出すことができていた。この手の仕事は離職率が高い。彼らのようにやりがいを見出すことができる人種は、幸せな人種であると言えた。

    「ちゃんとヘッダで宣言してるんですけどねぇ」
    「ああ。こりゃ、どっかでヘンな初期化を食らってるな」
    「デバッガにかけてみましょうか?」
    「いや。printfデバッグでいいだろう」

    この部屋の時計は、すでに十一時を指している。無論、本日二回目の十一時だ。だだっ広いオフィスの電気はほとんど落され、部屋にある光源は名取と北川の見ているディスプレイのみ。彼ら以外に、人影はまったく見当たらない。

    北川の指示を受け、名取がキーを叩く。

    「この辺ですかね」
    「おう。とりあえずその辺りの変数をコンソールに出してみてくれ」
    「はい」

    二人はごく最近チームを組んだばかりであるが、見ての通り、なかなかに息の合ったコンビだった。

    北川の指示と、それを受けた名取によるコードの修正という作業が数度繰り返された後、名取が何かをやり終えたような表情で、ゆっくりと息を吐きながら呟いた。

    「……とりあえず、エラーは出なくなりましたね」
    「とりあえずは、な。またいつ出るか分からんから、ここはコメントアウトして残しておけ」
    「ええ。そうするつもりです」

    名取はカーソルキーを数度、スラッシュキーを二度叩き、最後にコントロールキーとF5キーを押下した。

    「これでよし、と……」


      [No.2662] 第一話「まつりの はじまり」 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/15(Mon) 23:29:58     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:top

    「遅い!」
     周囲の視線が一斉に声の主に注がれる。視線の先には一人の女性トレーナーが立っていた。彼女は待ち合わせ相手がこないらしくイライラしている。傍らには、一匹の獣人型のポケモンが立っていた。青と黒の体毛。黒がまるで素顔を隠すマスクのような模様を描き、耳の下に二対の黒い突起があった。その突起が何かを探るアンテナように、地面と水平方向にピンと伸びている。
    「リオ、見つかった?」
     彼女が尋ねると、ルカリオが首を横に振った。彼女はいよいよ辛抱が利かなくなってきた様子で、さらなるイライラのオーラを周囲に放つ。波導ポケモンの力をもってしてもあいつの気配を察知できない。会場に人が密集しているせいだろうか。
    「リオ、探しに行くよ」
     彼女はとうとう痺れを切らし、ルカリオと共に探索に繰り出した。





    もりのなかで くらす ポケモンが いた
    もりのなかで ポケモンは かわをぬぎ ひとにもどっては ねむり
    また ポケモンの かわをまとい むらに やってくるのだった

    「シンオウの むかしばなし」より






    ●第一話「まつりの はじまり」





     「頭の中が真っ白」という状態は、こういう状況のことを言うのではないだろうか。
     いわゆる西洋にある中世の城を模った建造物を見上げて、青年はただ立ち尽くしていた。
     彼はにわかに握っていた拳を広げた。開いて握って、また開いて感触を確認する。
     不意に寒気を感じた。妙に身体が冷たく、自分のものではないようだった。思わず両手でその対となる反対側の腕をぎゅっと掴んだ。確かめるように。
     次に感じたのは視線。彼が立つ道にはあらゆる老若男女、多くの人々が行き来しており、時折ポケモンを連れた人もあった。ある人は青年にいぶかしげな視線を投げ、ある人は知らないふりをして素通りし、またある人は彼の存在を気に留めることなく歩いていった。
    (……ここは?)
     真っ白な頭の中にそんな疑念が生まれた。その疑念が浮かぶと同時に、彼は群集の行き先を見たのだった。群集のほとんどは目の前にそびえる西洋の城のような建物を目指しているようだった。青年はその流れに従ってフラフラと歩き出した。
    (ここは何処だ? この人たちはどこへ向かっている? それに……)
     彼は群集について、城内へと足を進める。人々はなんだか興奮したおももちで、ああでもないこうでもないと、とりとめのない話をしていた。やがて、城内に放送がかかる。それを聞いて、彼はようやくここがどこであるかがつかめてきた。
     どおりで人が多いわけだ。にぎやかなわけだ。人々が興奮しているわけだ、と。
    「ポケモンシンオウリーグ予選Aチケットをお買い求めのお客様は南窓口へ、すでにチケットをお持ちのお客様は、北2番ゲートにて整列してお待ちくださいませ」
     城内にはそんな放送がかかっていた。
     ここは祭が開かれる場。一年に一度の祭が。シンオウ中がこの祭に注目している。ある人は開催期間中ずっとテレビに釘付けになり、ある人は稼ぎ時だとこの場に乗り込み商売をする。ある人はこれを見に行くために仕事の有給のほとんどを注ぎ込むのだ。
     ポケモンシンオウリーグ――古の神話が息づく北の大地、シンオウ地方で最も強いポケモントレーナーを決する、ポケモンバトルの祭典だ。
     とりあえず彼は、自分が立っている場所を理解した。しかし、そのおかげで次の大きな問題に気がつくことになる。
    (ここがどこなのかはわかった。……けれど、そもそも僕は誰だ?)
     青年は再び自身に問いかけた。第一試合の時間が一刻一刻と迫っている。会場を取り巻く空気はいよいよ熱を帯びてきていた。
    「アオバ! あなたこんなところで何やっているのよ!!」
     不意にそんな声を聞こえてきたのは、青年が真っ白な頭の中に再び問いかけはじめたその直後だった。彼が驚いて声の方を見ると、目の前にトレーナーとおぼしき女性が立っていた。
    「待ち合わせの時間、何分すぎたと思っているの!」
     なぜ彼女をトレーナーであると判断したかと言えば、傍らに獣人型のポケモンがいたからだ。青と黒の体毛。胸と腕にツノのような突起物が生えていた。青年のおぼろげな頭の中にふとその名前が浮かんで、ぼそりとそれを口にする。
    「思い出した。ルカリオだ」
    「ちょっとアオバ! あなた私の話を聞いているの!」
     さっきよりも大きな声で女性トレーナーが吼えた。無理もない。やっとの思いで見つけた待ち合わせ相手は、こともあろうに観戦者の列に加わってぼうっとしていたのだ。彼女はぐっと青年の腕を掴む。
     すると青年がまるで他人でも見るかのように、彼女の顔を見た。そして、
    「……アオバ? アオバって言うのか僕の名前は」
     と、言った。
    「…………は?」
     女性トレーナーはなんとも複雑な表情を浮かべた。それは怒りを含んでいたが、それ以上に困惑の表情であり、勘ぐるようでもあった。こいつは私をからかっているのか、それともバカにしているのか。だが、それにしてはなんだか様子がおかしい。
     なんというか、青年はそれなりにきめた服装(人によってはキザと言うだろう)をしているというのに、言動が妙に子どもっぽいというか頼りないのだ。彼が放つ雰囲気が、彼女の知る青年本来のものとはずいぶん違うのである。
     ……本当に演技ではない?
    「君は誰? 僕を知っている人?」
     彼女がそんなことを考えているのをよそに、青年はさらなる質問を投げかける。さらには、
    「よかった。気がついたらここにいたんだけどさ、自分が誰で何しにきたのかもわからないし、正直困っていたところなんだ」
     と、のたまった。
     女性トレーナーは顔を引きつらせた。今目の前にいるこいつが、本気でこのセリフを吐いているならばこれは俗に言うあれだった。まさか自分がこの目で見る機会が巡ってこようとは。
     あれとはもちろんあれである――――記憶喪失である。


    「あなたはアオバ。ポケモントレーナーのミモリアオバ。今から三時間後シンオウリーグの予選にBグループで参加する選手よ」
     と、女性トレーナーは告げた。
     彼女は半信半疑で根掘り葉掘り質問を投げかけまくった結果、やはり青年の記憶が喪失しているとうのは本当らしいとの結論に至った。
     ポケモンとトレーナーに関する諸々の知識は一般人レベルかやや下くらいか。コミュニケーションはとれるものの、青年からは様々な記憶がごっそりと抜け落ちていた。
     アオバという自分の名前にはじまり、自分の出身地、自分の所持ポケモンとそのニックネーム、自分はどんな人間で、どんな家族がおり、いままでどんなことをして生きてきたのか……。  
     そして彼は、目の前にいる女性トレーナーについてまったく答えることが出来なかった。正直、重症である。
     その結果、彼女が導き出した結論は、自分が先導してやらねば、トレーナーとしては何も出来ないのが今の彼である、ということであった。記憶の戻し方はおいおい考えることにしよう。何かやっているうちに思い出すかもしれない、と彼女は考えた。
    「私はシロナよ。シンオウリーグ予選にCグループで参加する」
     まさか今日ここで「自己紹介」をしなくてはならなくなるとは、彼女も予想だにしなかっただろう。青年もといアオバの手をとり、人ごみを掻き分けながら、彼女は名乗った。金髪の長い髪がたなびく。この状況で動くにはちょっと邪魔そうだった。
    「私は今日、あなたと待ち合わせて、予選前にバトルの調整をする予定だったわ。それなのに約束の時間を過ぎてもあなたはやってこなかった。電話をかけても、メールを送っても何の反応も無い。会場にいるのかもわからない。リオにあなたの気配を探らせてみたけど、人が密集し過ぎているせいか、ちっとも見つからないんだもの。結局、目で探すしかなかった。やっと見つけてみれば、あなたはこんな状態。一体今日はどうなっているのかしら!」
     そこまで一気にしゃべると、ちらりと青年の様子を見る。アオバと呼ばれた青年の反応は手ごたえなし。シロナは「はぁ」と溜息をつく。
    「……その様子だと、まだ何も思い出さないみたいね。ということは、出場前の本人確認はまだよね。それならトレーナーカード出しておいて」
    「トレーナーカード?」
     青年がきょとんとした顔で聞き返す。
    「ポケモントレーナーの身分証明書よ。受付でそれを提示して最終確認ってことになるわ。いくら記憶喪失っていったって持ち物にそれくらいは……」
     彼女がそう言うので、青年はズボンのポケットと胸ポケットを漁ってみた。
     しかし、
    「…………………………」
    「え…………、もしかして……ないの?」
    「………………」
     こくん、と青年は頷いた。
    「え、それってさ、ヤバくない? ……ていうかヤバいよね?」
    「………………」
    「意味がわからないのはわかってる。わかってるけど、同意くらいしてよ」
     トレーナーカード、トレーナーの身分を保証する証明書である。なくしたなんてことになれば、トレーナー生活に大きな支障をきたすことになる。すぐに届けないといけない。それくらいの公的な効力をもつものである。
    「まずいことになったわ」
     と、シロナは言った。
    「このままだと、あなたはリーグに出場できない」
     すぐさま、あごに手を当てて考え込む。深刻そうな表情だった。再発行してもらうにしたって、とても時間には間に合わないだろう。
     それでは困る。目の前にいるこの青年が出場できないのなら、私は今まで何のために……。
     だが、しばらくして彼女は何か決心したかのように、手をあごから放すと、
    「……悩んでいてもしょうがないわ」
     と、決心したように言った。
     お、何か策でもあるのだろうか? という顔をする青年に、彼女はにっこりと微笑むと、
    「こうなったら強行突破よ」
     という作戦の内容を伝えた。


      [No.2615] 【ポケライフ】お客さんの来ない日 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/09/13(Thu) 22:59:08     154clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ポケライフ】 【冥土喫茶】 【コーヒー1杯450円】 【本日のケーキ400円】 【セットにすると50円引き
    【ポケライフ】お客さんの来ない日 (画像サイズ: 887×682 200kB)

     僕の喫茶店は、通称「冥土喫茶」と呼ばれている。


     別に雰囲気がおどろおどろしいとか、入ったら呪われるとか、ましてや本当にあの世にあるとか、そういうことじゃない。もちろんメイドさんがいるわけでもない。
     赤レンガの壁にアルコールランプの明かりの内装はお客さんたちにも落ち着くって評判だし、庭では奥さんが手入れしている花壇を眺めながらお茶を楽しめる席も用意してある。メニューだって自信がある。コーヒーは自家焙煎だし、甘味も軽食も手作りだ。

     ただちょっと、集まるのだ。ゴーストポケモンが。


     それというのも、僕がこの喫茶店を開いたばっかりの頃だ。
     昔からのささやかな夢で、街の片隅で小さな喫茶店でもやりたいな、って思ってた。
     で、とある町で店舗を借りたものの、喫茶店としてやっていくにはちょっと狭すぎて、しょうがないからもうちょっと広い場所に移ることを夢見ながら数年間、自家焙煎のコーヒー豆を売っていた。
     その頃に後々僕の弟子となる子と会ったんだけど、その時その子が連れていたのがヨマワルだったんだよね。

     しばらくして資金もたまって、長年お付き合いしてた奥さんとも結婚して、晴れて郊外の一軒家に移り住んだわけだ。
     ちょうどその直後、例の弟子が「迷子のヨマワル拾ったんですが育てません?」とか言ってきて。
     まー僕もそれなりにポケモンを育てることには興味を持ってたし? 弟子の様子見てヨマワルかわいいなーとか思ってたし? じゃあせっかくだからってことでもらいうけたわけだ。

     最初は僕と奥さんの2人で喫茶店をやってたんだけど、しばらくして奥さんが妊娠したから、僕ひとりで店をやることになっちゃったんだよね。
     そんなに大きな店じゃないけど、ひとりで注文聞いてコーヒー淹れてお菓子用意して運んで掃除して片付けて、って結構大変なんだよね。自分がまだ慣れてなかったのもあるけど。時期的にもお店を開いてまだそんなに経ってない。常連さんが出来て、お客さんが入るようになって、これからが大事って時だから。

     で、僕は気がついたらヨマワルに「手伝ってくれない?」って聞いてた。ヨマワルの手も借りたいという慣用句はなかったと思うけど、そんな気持ち。
     そしたら意外とあっさり言うこと聞いてくれて、まずは店の掃除を手伝ってくれるようになった。
     教えたら食器を洗ったり、注文されたものを席まで届けたり、注文を取ったり、何かいろいろ出来るようになった。
     しばらくしたらサマヨールに進化して、細かい作業ができるようになって、ケーキをよそったり、ケーキを作ったり、クッキー焼いたり、紅茶を淹れたり、豆を量ったり、豆を挽いたり、コーヒー淹れたり、コーヒー飲んだり、僕のブレンドに文句を言ってきたりした。

     まあ良く働いてくれるもんだから、だんだんお店の評判が広がって、お客さんがたくさん来るようになった。
     で、相方はいつの間にかお客さんたちから「副店長」って呼ばれるようになってた。
     まー確かにそう呼ばれてもしょうがないよね。僕より働いてるような気がしないでもないしね。
     ヨノワールに進化してからというもの、来る人来る人に「店長より副店長の方が威厳ありますよね」とか言われるのが僕としてはちょっと不満だ。


     うん、まあ、ずっと僕と副店長の2人(1人と1匹)体制でお店をやってたんだけど。


     いつの間にか、増えてた。


     いや、僕が新しいポケモン捕まえたとかそういうわけじゃない。
     そもそものきっかけは、副店長が外出した先で、野生のカゲボウズを拾ってきたことだ。
     言葉は話せないし表情も基本ポーカーフェイスだから、身振り手振りで強引に解釈した結果、「何か知らないけどついてきた」……ということらしい。
     まあ別に困るわけじゃないし、暇だったし、せっかくだからとコーヒーを出した。

     そしたら懐かれた。

     いやまあ考えたら野生のポケモンに餌付けするようなものなのかもしれないけど、それを言うならまずは連れて帰ってきた副店長に文句を言ってください。
     ちなみにそのカゲボウズ、進化した今でも常連と化して、よくカウンターに寝転がって新聞読んでます。

     で、それをきっかけに、色んな野生のポケモンがうちに来るようになったんだよね。主にゴーストタイプが。多分副店長が副店長だから。
     勝手に人の店にたむろしてるわけだけど、たまにお店を手伝ってくれることもあるから何とも言えない。
     ゴーストやゲンガーは注文を取りに行ってくれるし、ヤミラミは注文のものを運んでくれる。
     ムウマとムウマージはよくお店の掃除をしてくれる。イトマルやバチュル辺りとは巣の存亡をめぐって仁義なき争いを繰り広げているようだ。
     ユキメノコとその子供のユキワラシは氷が切れた時に用意してくれる。この親子が来るようになってから、夏のメニューにかき氷が増えた。
     ヒトモシの集団は、たまにサイフォンの熱源の代わりになっている。燃料代を節約できるかと思ったら、コーヒーが何だか生気の抜けたような味になったからやめた。
     フワンテはよく、お店に飾る花を摘んでくる。でもこの前店に行ったら花瓶にキマワリが刺さってた。本人(本花?)がまんざらでもない顔だったからそのままにしておいたけど。でも次の日にはいなくなった……と思ったら代わりにチェリムが刺さってた。
     その辺にいっぱいいるカゲボウズやらヨマワルやらゴースやらは……うん、まあ、遊びに来てるんだろうな。気まぐれに手伝ってくれたりするけど、基本的にお客さんにちょっかい出したり、僕にちょっかい出したり、副店長にちょっかい出して追い払われたりしている。
     副店長は副店長で、マイペースかつ確実に仕事をやってくれる。僕はまあ、遊べとせがんでくるちびっこたちを適当にあしらいつつ、適当に仕事をしている。げに頼もしきは副店長だ。全く。


     まあおかげさまで、喫茶店はお客さんたちに「冥土喫茶」とあだ名をつけられ、その筋ではそこそこ有名になっているらしい。
     イーブイやエネコやミミロルみたいな、かわいくて癒されるポケモンと触れ合えるカフェなんかはよく聞くけど、うちはあだ名からして何だか禍々しい気がしてならない。
     話に聞くと、例の弟子の店も僕の店以上にゴーストのたまり場と化しているらしいので、師弟そろってろくでもない店を経営する運命だったようだ。


     さて、と。
     今日は珍しくお客さんが来ないし、ここのところの暑さでだるいし、眠いし、副店長は本読んでるし、相変わらずポケモンたちがいっぱいだし。


     ドアベルが鳴るまで、ちょっと寝かせてもらうとするかね。



    +++++

    「ますたーおきろー」
    「ますたーおきゃくさんきちゃうぞー」
    「どうしたますたー? たいちょうわるいのかー?」
    「どうせ夏バテでしょ。副店長、どうする?」
    「……放っとけ」


    こっそりイラコンに紛れ込ませていただいた1枚。
    塗ろうと思ったところで灰色の色鉛筆が消失していて、別色で無理やり塗った思い出。


      [No.2573] Re: 【ポケライフ】大図書館の司書 投稿者:keckle   投稿日:2012/08/14(Tue) 19:23:32     93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    Re: 【ポケライフ】大図書館の司書 (画像サイズ: 600×525 395kB)

    はじめまして、keckleと申します。
    ポケライフ絵のネタを探しているときにこのお話に出会い、読ませていただきました。
    エーフィの特性と性格がすごく話にあっていて、ぜひともこのワンシーンを描いてみたいと思い、まことに勝手ながら描かせていただきました。描きたいシーンがたくさんありすぎて、そのすべてのシーンをひとつにまとめるのが大変でしたが、完成しましたので報告をさせていただきます。もしよろしければ、このまま鳩急行のイラコンへ投稿させていただきます。
    それでは失礼します。


      [No.2530] これはひどい(※褒め言葉です) 投稿者:砂糖水   投稿日:2012/07/27(Fri) 01:39:36     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    読み終わった瞬間思ったのはこれはひどい、です。
    もちろん褒め言葉ですw
    なんというか、フミんさん節が効いてるなあと思いました。
    途中までは、おおマスターボールの話か、たしかに普通に販売しようと思えばできそうなのにしていないよねえ、やっぱりこういう理由だよねと思って読んでいたらまさかの…。
    これはひどい(

    素晴らしい小説をありがとうございました。


      [No.2489] ノストロ 投稿者:Tom Walk   投稿日:2012/06/28(Thu) 22:20:08     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    第一部、町

    「町だ」と彼は言った。
     乾燥した荒野を風が吹き抜ける度に砂埃が舞う。地表には背の低い雑草が這って稀少な緑を添えたが、それさえもが僅かな潤いを奪って旅路を困難にするようで憎々しく映った。そしてその道なき道を踏破した先に、果たして、町があった。
     それは幾らか風の穏やかな午前。まだ日は南天に達していなかったが、しかし目に映る全方位が陽炎に揺れていた。件の太陽は後方からじりじりと背中を焼いた。ぽたりと汗が落ちれば、瞬く間に地に吸い込まれ、何の足しにもならないと雑草さえもが無関心であるようだった。そんな孤独な命の現場に、不釣合いな黒い影が見えたのだ。そこから最も暑い時刻を迎えるころまでに、僕らは巨大な城門の前に立っていた。
    「町ね。」彼女はオウムがえしのように呟いた。
     僕は言葉もなく、ただ圧倒する巨大な城壁と、そして開かれたままの城門を見上げた。
     どうすると訊ねることもせず、彼は歩みを進めた。僕と彼女も、一呼吸と遅れず彼に続いた。何よりもこの日差しを避けられる場所に潜り込みたいという本能が、論理的な判断過程を超越して足を動かした。
     門をくぐって振り返れば、城壁は一メートルを超える厚さを持ち、高さは周辺の小屋から比して十メートルはあるだろうと推し量れた。あまりにも強固に過ぎる。いったい何から町を守ろうとしているのだろうか。少なくとも僕らが旅してきたこの数日、あの惨めな雑草以外の命を目にしなかったというのに。
     門から先は何の手も加えられていない土が剥き出しの道で、二列の轍がくっきりと跡を残していた。画家志望という彼はイーゼルや画材をキャリーカートに縛って引きずっており、それが轍や自然の凹凸に引っかかる度に立ち止まった。僕と彼女はやはり同じように立ち止まって彼を待ち、また歩いた。
     通りの左側の建物に寄り、なるべく日陰を選ぶ。先ほどまで背後から照らしていた太陽は、正午を過ぎて左前方へと傾いていた。僕らがくぶったのは東門で、そしてこちら側は貧しい階層の地域なのだろう。僅かな日陰を提供する平屋は土を塗り固めた粗末なものだった。中には窓もなく、戸の代わりに編んだ藁をかけただけの小屋もある。そしてどの家からも、何の気配も感じられなかった。
    「誰もいないわね」と彼女は言った。
    「町が荒らされた様子はないから戦争や暴動じゃないな」と僕は続けた。「変な病気が流行ってなきゃいいけど。」
     彼は露骨に嫌そうな視線を僕にぶつけ、荷物から適当な布を引っぱり出すと口に当てた。彼女は溜め息を付き、開き直ったように胸を張って歩いた。
     五分もすると風景に変化が起こった。家は石造りのものが建ち、道もまた粗雑ながら石を敷いて整えられ、幾らか歩きやすくなった。間もなく二階層以上の立派な屋敷とその向こうに広場が見えてきた。
     僕らは通りの角で立ち止まり、用心深く広場を観察した。これまで歩いてきた道とは比べものにならないほど滑らかな石畳が敷かれ、取り巻く建物はどれも綺麗な白壁で、中には商店のように広い間口を持ったものもある。そうした建物には看板が下がり、例えば果物屋なのだろう真っ赤に塗られたリンゴの形をしたものや、開いた書籍のような形のものがあった。そして広場の中央には噴水が見て取れた。建物よりもいっそう鮮やかに白い女神の像が肩に抱えた壺から水が流れ落ち、日差しを眩しく弾いていた。
    「水だ!」
     言うが早いか、僕らは噴水へと駆け出した。先刻までの警戒を、再び本能が凌駕していった。彼は両手で掬っては飲み、また先ほどまで口に当てていた布を濡らしてベレー帽の下の汗を拭いた。彼女は気丈に貼った胸の勢いそのままに、頭から噴水に飛び込んだ。僕もまた掬うのが面倒で、石造りの縁から身を乗り出して水面に口付けた。
     あまりにも勢いよく飲んだために幾らか気持ち悪くなったりはしたが、それは毒や病の類ではなさそうだった。少し冷静になってその不安が蘇ってきたが、変わらず男勝りに振舞う彼女に倣って僕らも開き直った。
     再び周辺を見渡すと、広場の反対側、西の通りの入り口で何かが動く気配がした。目を凝らせば、薄い青の庇を持った商店の前にあるベンチの陰で、鳩が何かをついばんでいる。それは僕らを除く、動く生命との久しぶりの邂逅だった。
     なるべく驚かさないようにと静かに歩いたつもりだったが、幾らも近づかないうちに鳩は飛び立ってしまった。羽音を立てて広場の上を旋回すると、鳩は北の方角へと去っていった。それを追うように視線を送ると、町の北部は丘陵になっていて、そこには緑の木々が豊かに茂り、ときどきその隙間から巨大な屋敷の屋根が頭を出していた。
     視線をおろしてベンチに目をやると、地面にはポップコーンが落ちていた。彼は一粒つまむと、まだ新しいね、と言った。
    「僕は人間以外にポップコーンを炒る生物を知らないよ。」
     この町は廃墟にしては荒れていない。そしてまだ新しい生活の痕跡。
    「どうして彼らは姿を消したんだろう。」
     彼は言って、つまんだポップコーンを放り捨てた。
    「別にかくれんぼをしている訳じゃないんだ。探さなくても、そのうち向こうから出てくるさ」と僕は答えた。
     彼女はどうでもよさそうに欠伸をしながら体を伸ばし、ベンチに上って今度は丸くなった。
    「私、ちょっと休むわ。」
     彼はベンチの背に荷物を凭せかけ、自身もベンチに腰かけた。僕は彼に目配せをして、ひとりで広場を見て歩いた。

    __

    はじめまして。(嘘)
    ぜんぜん続きを書かないまま放置していたので、何かきっかけになればと投稿します。
    「第二部、図書館」のクライマックスのアイデアを思い付いたので、まあ、暇になったら書くんじゃないかな。


      [No.2447] コンビニアルバイターから見た感想 投稿者:マコ   投稿日:2012/06/06(Wed) 09:19:27     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    フミんさん、初めまして。マコです。
    ポケモンにも働ける場所があるなんて、いいことじゃないですか。
    でも、体の大きさとか種族としての特徴で働けるかが制限されるということは、何だかやりきれない思いでいっぱいになります。
    雌のカイリューであるアイコさんや、雄のヌオーであるリキさんみたいに、やる気は十分なのに、障害となる部分が大きいゆえに結局は排除されるということが、いくらしょうがないといっても悲しくなります。
    まあ、コンビニで仕事が遅い人に対して、「これで時給が同じなの!?」とかぼやいてしまう気持ちは分からなくもないです。

    自分が今、大手コンビニチェーン店のアルバイトとして働いているので、話の内容に親近感が持てました。
    自分も入ったころは仕事が遅くて文句もさんざん言われましたが、もう既に2年続けています。今では文句も言われることはない、と思います。

    もし自分がポケモンを雇うなら、と考えると、やっぱり人の形に近いポケモンになるのかな、なんて思います。あまり小さすぎても、レジに届かない可能性がありますから。最低1メートルの身長は欲しいところです。(浮遊できるポケモンなら問題はないでしょうけど)
    それにしても最後に出てきた女の人(及びその息子)は……、どうしようもないですね。働きたい人が電話をかけるのが普通ですよね。何で親使うんですか。
    かくいう私も店に直接行き、飛び込みでこの仕事を掴んだ身なので大声で文句は言えませんが。


      [No.2406] 初期図鑑の非日常さはピカイチ 投稿者:小春   投稿日:2012/04/25(Wed) 23:10:14     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    > レアコイルと桜の組み合わせとは、意外でした。
     思わぬ組み合わせがうまれるのがポケモン小説の楽しいところです。そんな言い訳をひとつ(

    > 周りの温度が二度上がるの、知りませんでした。そこで桜前線とか、素敵だなあ。
     初めてプレイしたピカチュウ版の図鑑、いろいろ記憶に残っています。コンパンの目からビームやら重さ20キロを放り投げるイシツブテ合戦やら…。ネタが尽きませんなぁ。

    > それでは、短い感想ですが失礼します。
     感想ありがとうございました!


      [No.2363] Re: 神の祈り 【前編】 投稿者:akuro   投稿日:2012/04/08(Sun) 12:01:33     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     初めまして、akuroと言う者です。 


     くろまめさんギャグ上手いですねー! 私もギャグ物を書いてるんですが、到底及ばない……尊敬する域に達してます!

     後編も楽しみにしてますね!


      [No.2320] 斧歯相撲 投稿者:リング   投稿日:2012/03/26(Mon) 00:45:53     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     ここに来るまでに糞の跡、尿の跡、そして真新しい踏み跡を探り回っていた二人は、傍目には変人奇人の類に映ることであろう。
    「見ろ、オノノクスだ。11時の方向、あの岩場の方だ」
     そんな行動の末に、迷彩服に身を包んだ男はお目当てのポケモンを見つけた。彼は、隣の草むらに興奮した様子で話しかける。もちろん隣の草むらにいる者も同じく迷彩服に身を隠し、擬態した人間であり、動かずにじっとしていれば発見するのは難しい。
     視覚で彼らを捉えるならば、ハブネークの持つピット器官を使うか、カメラのレンズの反射を視認するしか手は無いだろう。オノノクスの嗅覚は、退化こそしていないがそれほど敏感と言うわけでもないから、まず嗅覚からは見つからないし、聴覚だってここは山。吹き寄せる風に紛れて、足音なんてかき消されてしまう。まず見つかるはずもない。

    「おー、本当だ。いるいる」
     双眼鏡を覗いて、もう一方は感嘆の声を漏らす。視線の先には、オノノクスが互いの手を掴みながら抱き合っている光景。愛を語らっているわけではない。ましてやオノノクスに社交ダンスの生態は無い。

     あれは、メブキジカやオドシシの角と同じ。外敵に対する攻撃手段としても使われるが、メインは相撲を取るためだ。メブキジカならば、角を絡め合わせて押しあいを始める。角の付け根の痛みに負けて押し返される若い雄は、格上の雄に凄まれればすごすごと引き返しては視界から消える。
     そうして、ほとぼりが冷めた頃に大きさが同じくらいの雄に挑んでは、勝った負けたを繰り返して、そうして切磋琢磨ともライバル落としとも付かない期間を終えて、繁殖期に至るまでその行為は続けられるのだ。
     繁殖期の頃にはもう雌が雄を選んでいる。強い雄は複数の雌を囲み、数日の間はほとんど飲まず食わずで子孫を残す行為に専念するのである。


     その斧葉相撲を撮影するには、さすがに最初の位置からでは遠すぎるため、ある程度近づいてから二人は撮影を始める。その際、周囲の景色に紛れる迷彩服は非常に役に立ち、二人とオノノクスの距離は30メートルほどまで縮まった。そのまま追いかけることも考えたのだが、運がいいことに忍び足で近寄って行くうちに、オノノクスはもう一頭の雄と鉢合わせしていた。
    「見てください……二頭のオノノクスです」
     小さな声だ、ここまで離れていれば、普通に会話をしてもオノノクスの耳に届く前に風にかき消されるであろうが、万が一のことを考えると慎重にならざるを得ない。マイクは顔に固定するイヤホンマイク型。安物ではないが、いかんせん小型であるため機能性は芳しくなく、周囲の雑音も容赦なく拾われていくため、さわさわと木の葉を撫でる程度の優しいそよ風が相手でも、音量を絞った声では太刀打ちできない
    「おい、マモル。声小さい……全然聞こえないぞ。大丈夫だって、この時期のオノノクスはまだ温厚だから多少の声なら安全だ」
    「あいあい、アマノ。それではー……えー、見てください。アレがオノノクスです」
    「……うーん、これはどうなのかなぁ」 
     言わせておいてなんだが、と言う風にアマノと呼ばれた青年は呟いた。
    「やっぱりあれだ、基本的に自然の音だけを録音して、後からナレーションを入れた方がいいかもなぁ……口パクでナレーションを入れる間だけ作って……」
     アマノが提案する。
    「そうだな……周りの音も邪魔せず入れておきたいし」
     そしてその提案にはマモルも納得した。
    「じゃ、黙るぞ……」
     ポケモン達を刺激しないよう、マモルは黙りこくって撮影を始める。しばらくフィルムをまわしていると、闘争心の強い二頭の雄のオノノクスが雌の争奪戦に向けての斧歯相撲を始めてくれた。
     手と手を握り合ったまま、顎の斧歯をガツンガツンと打ち合わせる斧歯相撲。歯の付け根が痛くなるか、ヒビ割れるかでどちらかが降参すれば勝敗のつくこの試合。同族の仲間を殺さないように、かつ必要以上に傷つけないようにどちらが強いかを競い合うにはもってこいである。

     繁殖期の前は、斧歯同士を打ち鳴らす音が時折山で響きあうため、オノノクスを恐れるポケモンはその音を聞くとすぐに逃げ出してしまうのだ。
     フキヨセの街では、そんなポケモンたちの性質を利用して、オノノクスの斧歯相撲に似た音を出す楽器を打ち鳴らすことで農作物の被害を減らしたという。
     そんな、斧歯相撲の力強い音色を間近で聞いていると、その迫力にはナレーションを入れる余裕もないくらいに息をのんでしまう。
     双方ともに斧歯の付け根が痛いのか、時折休みを挟みながらもつなぎ合った手は離れない。
     痛みで膠着状態に陥っていた時、痺れを切らした僅かに体が大きい方のオノノクスが牙を振り上げる。
     待ちの体勢に入っていた小さい方はこれを待っていたのだ。わずかに小さい方は斧歯の中心で、相手の斧歯の中心から外れた部分へ打ち付けた。
     斧歯の芯で斧歯の比較的弱い部分を叩いたことで、痺れを切らした大きいオノノクスの斧歯は僅かながらに欠けてしまう。
     これには、大きい方も負けを認めざるを得ず、体の大きなオノノクスは自分から手を離して頭を下げた。
     鮮やかな勝負の幕引きに思わず撮影者も感嘆の声を上げる一方で、小さなオノノクスの勝利の雄たけびが撮影者の声をかき消す勢いで周囲に響き渡る。
     あの雄はいずれ大物になる、そんな気がした。


     思ったよりも迫力のある映像を撮れての凱旋帰還の最中の事。
    「そういえば、ソウリュウシティのジムリーダーのシャガさん……オノノクスとレスリングをやっているって言うけれど……あの髭の中に金属仕込んで斧歯相撲でもやっているのかなぁ?」
    「いやいやいや、アマノ。それはないだろ」
     あの圧倒的な力強さの相撲に、人間が太刀打ちできるわけがない。いかにあの逞しいシャガさんでも、それは例外ではないだろう。それでも、ありえそうに思えてしまうあのカリスマが、彼が市長たる所以なのだろうか。


      [No.2279] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:渡邉健太   投稿日:2012/03/10(Sat) 20:43:14     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    じゃ、フランス留学経験のある俺が勉強を見てあげるという名目で。

    たぶん、行けると思う。


      [No.2237] うおおおお…… 投稿者:ラクダ   投稿日:2012/02/06(Mon) 23:10:20     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    久しぶりにマサポケを覗いたら、なんとまあ「ポケモン嫌い」を書いてくださっていた……! ありがとうございます!

    なんだかもう……切ないなあ。
    タブンネに対する誤解で嫌悪を募らせる“私”と、嫌われながらも“私”と家族を気遣うタブンネの姿が……うわああああ orz
    愛玩用として可愛がられていたが為に、父親の変調に気付いてもどうしようもなくて。母親までもが同じ変調を抱えてしまって……それもどうしようもなくて。見守り続けることしか出来なかった上に、“私”からは殺されそうになるほど憎まれて……うおおおおお orz

    でも、“私”が悪いのかといえばそうじゃないんだろうなあ、と。情操教育の為に子供に生き物を与える、というのは割と聞く話ですが、子供が全て生き物に興味を持つかと言えばそんなことは無いわけで。当然興味を持てない子だっているし、そんな子からしたら突然現れた「家族の一員」なんて煩わしいだけなんでしょうね。
    ただ、もし両親が“私”とタブンネを引き合わせる時にきちんとした説明をしていたら。もし“私”が自分でタブンネの事を調べようとしていたら。
    誰が悪い、という訳でなく、無知故に起こった思い込みによる悲劇だと思うと……悲しいなあこれ……。

    > 「タブンネってポケモン知ってる? 倒すとたくさん経験値をくれる、優しいポケモンよね!」

    相手を瀕死に追い込まないと経験地が貰えないという事を考えると、この一言はなかなかキッツイですね……。願わくば、いつか彼女に真実を知る日が訪れますように……。

    面白かった、という表現はそぐわないかもしれませんが、この作品を読めて良かったと心より思います。読了後も残る切なさが半端ないです。
    書いてくださったことにお礼を申し上げます。本当にありがとうございました!

    【げしげししていいのよ……だと……? とんでもねえ!!】


      [No.2192] その商法を人は 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/01/10(Tue) 20:48:49     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    > メジャーデビューキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ !!!!!
    > 何千万という底抜けに桁外れな金額もキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ !!!!!
    きっと、ゴーヤロック商法という商法に引っかかってるファンがたくさんいるんです。1枚程度じゃ当たらないというさすがのすさまじさです。
    会いに行くのも一苦労です。

    > こういう風にちょい役で出してもらえると、なかなか嬉しいものです(´ω`)
    私のアイドル枠に入ってしまいまs
    今後も時々出て来てしまいます

    ありがとうございました!!!!!


      [No.2151] たった三時間、でも本格的な即席ツリー 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/12/25(Sun) 21:25:24     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    『クリスマスはまだ終わっちゃいねぇ!! 今日が当日なんだ! 幸いアイツは午前中いっぱい居ないし!』



    『おまえら、三時間で仕事完了させやがれえぇぇ!!』


      *


     一匹のシュバルゴが、目の前に生える沢山の針葉樹を、まるで品定めするかのように見渡していた。

    「ったく、リーダーのアシガタナの方がこの仕事には適任なんじゃねえのかよ…」
     ぼやきながらも、彼はだいぶ小ぶりな若木に近づいていく。

    「あなたが木を切らないと、始まらないわよ? あなたのお姫様だって待ってるし」
    「そうだな、早く戻ってやるか」
    「リーダーの事だから、もし遅れると人質…ポケ質にされても知らないわよ?」
     彼は若木の前に立ち止まった。隣のウルガモスからクスクスと笑い声がする。

    「そん時は、リーダーであっても俺のメガホーンでぶっ飛ばす」

     ナイト――騎士と呼ばれたシュバルゴがため息を一つ吐いた刹那、彼の背後でドサリと音が立った。

    「ナスカ、後は頼んだ」
    「サイコキネシスって本当に便利ね」
     ピンクの光に包まれた針葉樹は、いとも簡単にふわりと浮遊する。


      *


    「……と、パイ生地と、お菓子を沢山に、シャンメリー。あとはサイコソーダ…」
     メモをそこまで読み上げた女性は、はあっとため息をついた。反対側の左手には、すでに膨らんだ買い物袋が下がっている。
    「全くもって子供っぽいわねぇっ! 今日になって突然言い出すなんて!!」
     ターン! と八つ当たりをするかのように、今いた家の屋根を蹴ると、そのまま数メートル近く跳躍し次の屋根へと飛び移る彼女は、すでに黒い毛皮の狐、ゾロアークだった。


      *


    「シザークロスのPPが切れた」
    「あまりの冷たさに角の感覚が無い、だと…」

     周りには、クリスマスツリーに飾り付ける透き通った天使、球、プレゼントボックスが転がっている。
     無論、今ぐったりと床にへたり込んでいる彼ら…ペンドラーが氷塊を砕き、シュバルゴがシザークロスで形を作ったのだった。冷たい氷を使った細かい作業に、二匹の体力と精神力は限界に来ていた。

    「私も熱風がもう出せないんだけど」
     ウルガモスは氷の表面を薄く溶かして、つるっと滑らかにしていた。溶かしすぎては駄目なので、火力の調節がこれまた絶妙、上の二匹と同様の状態である。

    「もう気力が限界なんだけど、まだ作るの?」
    「これ以上やったら身がもたないでござる」
    「…エネルギー切れです…」

     隣の三匹、コジョンド、アギルダー、ドレディアはそれぞれ波動弾、エナジーボールを使って氷に細工をしていた。
     氷の中に光が閉じ込められ、とても美しく光るのだが『気』とか『波動』を使った特殊な細工のため、量産すれば疲れる事この上ない。
     六匹が何故ここまで凝った“クリスマスツリーの飾り”を作っていたのかといえば、全ては『リーダー』と呼ばれるダイケンキ――シェノンの命令である。
    「リーダー今頃何してんのかなぁ…」


      *


     そのダイケンキは、今彼らとは別の場所で、ツリーに別の作業を施しているのだった。
    「後から考えれば、氷技を使えるのが俺だけだったっていう…」
     冷気を枝に吹きかけるのを一時中断すると、代わりに口から出たのはため息だった。自業自得というのだろうか、こちらもれいとうビームを使いまくって、クリスマスツリーに霜を降ろして白くする地道な作業に、本人もへとへとになっていた。
    「あいつらも多分辛いと思うから、差し入れでもしてやるか…」

     普段子供っぽい彼は、彼らしくない言葉を発した。疲れでどうにかしてしまったのだろうか、それとも、心の底には皆から慕われるモノがあるのだろうか。
     少なくとも、彼の口の端が持ち上がったのは確か。


      *


    「先生! てっぺんに飾る大きな星がありませんっ!」

    「ナ、ナンダッテー!?」
    「もうPP切れでござるよ…」
    「でも、星がないと多分クリスマスツリーにならないと思う!! それにリーダーがなんて言うか…!」
     六匹がぎゃあぎゃあ言っていると、ガチャンと部屋の扉が開いた。

    「シェノンリーダーからの差し入れだってー!」
     疲れ果てた六匹の元にやってきたメラルバが背に乗せてきたのは、籠に入ったいくらかのPPマックス。それと、少し大きい氷塊。
     絶妙すぎるタイミングと、それらが意味する事に、彼らは言葉を失った。

    「要するに…もっと頑張れって事か…」
     笑顔のシュバルゴの顔は、妙に引きつっていた。

    「わが子の笑顔が眩しく、そして胸に痛いわ」
     ウルガモスとペンドラーは、複雑な表情をしている。

    「アポロン君、重かったでしょ? お疲れさま!」
     一人だけ笑顔のドレディアはメラルバの頭を撫でながら、内心どんな事を考えていたのだろうか……。

    「あ、そうそう、ツリーのてっぺんに飾れそうなもの見つけたんだよ!」
    「おお! でかしたぞアポロン!」

     思わぬ展開に賞賛の声が上がった。

     メラルバが黒い手でドレディアに差し出したのは、クリーム色っぽい星型……ではなく三日月型の物体。中心の辺りから、クチバシの様なものが飛び出している……。見るからにルナトーンそのものだった。しかし、こいつはただのルナトーンではない。


    「「「それは噂に聞く『スケベクチバシ』だあぁぁぁぁ!!!!」」」


     六匹の絶叫が響き渡り、PPの残っている技が一斉にスケベクチバシに放たれた。
     シュバルゴからメガホーン、ペンドラーからポイズンテール、ウルガモス、アギルダーからむしのさざめき、コジョンドからドレインパンチ、ドレディアからはなびらのまいが“何もしていない”スケベクチバシに炸裂し、どこかへぶっ飛ばしたのであった……。
     不憫だ。今回に限っては不憫すぎるスケベクチバシであった。吹っ飛んだ先で、また誰かにツイートされたりはしたのだろうか?


      *


     黒い狐――ゾロアークは買い物袋を両腕に提げ、お昼過ぎに家に戻ってきた。彼女を出迎えたのは見事に飾り付けられた輝くツリーと、飾り付けを終え死屍累々の如く転がる七匹だった。メラルバがゾロアークに駆け寄る。

    「どうしよう…みんな疲れちゃってて……」
     彼女はメラルバに頷くと、袋から一本サイコソーダを取り出した。ダイケンキが瞬間的に飛び起きる。
    「お昼ごはんの後ですよー」
     物を言わせぬうちにゾロアークは意地悪な笑みを浮かべながら答えた。

    「なかなか立派なクリスマスツリーね。……てっぺんの星は?」
     気付いた他の六匹が、あっと声を出した。

    「ヤバイ…忘れてた」
    「でも今からじゃアイツが帰って来ちまうな…どうする?」

    「全く……わたくしティラにお任せあれ!」

     ゾロアークが右手の爪を立て、くるくるっと魔法使いのように回した。
     ツリーのてっぺんに輝きが生じ、直後にポンっという音と共に大きな金色の星が現れた。

    「幻影、か?」
    「そのとおり。これで大丈夫でしょ?」
     そこに居た全員に笑みが浮かんだ。



     ………ガチャッ
    「ただいまぁー」

     彼らの主人を迎えたのは、仲間たち全員で作った即席ツリーだった。



    ――――
    うわぁグダグダ。もんのすごいグダグダ。前のダークライさんの記事が台無しだねwww
    クリスマスは何が何でも二つ書こうとか決心した結果がこれだよ!
    ケーキを争奪したり喧嘩したりもするけど、彼らも時には協力して何かをすることがあるんですね。ほとんどはシェノンの我が侭だと思うけど!
    あとスケベクチバシを勝手にお借りしました。…いろいろな意味ですみませんリナさん…

    【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【クリスマス終了まで約三時間前なう】


      [No.2110] おじいさんの旅路 投稿者:西条流月   投稿日:2011/12/13(Tue) 21:33:42     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     見ず知らずの――よい子限定ですが――人に黄金をプレゼントする。
     そんな行為を半世紀近く続けてきたぐらいなグッドでアルティメットでウルトラなおじいさんがおりました。
     ただ、この行為はアルティメットにグッドすぎたのでしょう。残念なことに完璧なまでの球体に加工した黄金を配るおじいさんの元にはあまり人が近づいてきてくれないので、なかなか黄金を配ることはできませんでした。
     それでも、おじいさんはめげませんでした。
     いつだっていいことは受け入れにくいものなのです。
     いいことをするのも受け入れて協力するのも恥ずかしい、面倒くさい。そんな世の中だということを知っているからです。
     街を綺麗にしようという清掃活動の呼びかけも暴力のない世界を作ろうと呼びかけることも人はいつだって見ないふりをするものなのです。それがたとえいいことだと無視している人も知っているのにも関わらず、に。
     それと同じです。
     だから、おじいさんはめげません。近くを通る人に声をかけ、きんのたまを配ります。
     悪い人だった昔の自分を悔いるようにいい人になろうとおじいさんは頑張り続けました。
     そんな行為を続けて、早数十年。
     おじいさんはあるとき、ふっと疑問を覚えました。
     自分はこのままでいいのだろうか、と。
     その問いはもう幾度も通り過ぎた道でした。
     見ず知らずの人に配っても、幸せになるのはきんのたまを受け取った人だけ。おじいさんの目的は世界中の人が幸せになることなのに、それではいささか範囲が小さすぎるのではないか、と。
     そんな疑問が浮かぶたびにおじいさんは、千里の道も一歩からと言う言葉を胸に刻み続けて、その問題を解決してきましたが、今日はそうはいきませんでした。
     配り続けてきたきんのたまの数は膨大だというのに、いまだに世界は幸せになりません。
     世界は広いのだと思おうとしました。広いから分からないのだと思おうとしました。
     でも無理でした。
     今度は、どれくらいの年月をかければ、どれほどのきんのたまを配れば世界が幸せになるのかということを考えてしまったからです。
     ふう、と溜息を吐いて、視線を落とせば、視界の端には深いしわの刻まれた節くれだった手。その手には杖を握っております。
     もうおじいさんは若くない。いつ倒れるかわかったものではありません。
     しかし、このアルティメットグッドマンの道を継いでくれる者はだれ一人としておりません。
     この黄金に目を眩ませず、ただ奉仕の思想をもって、人に配り続ける。そんな人をおじいさんは長い月日を過ごしてなお、見つけることはできなかったのです。
     いつ志半ばで倒れるか分からない。そんな不安を抱えてしまったのです。
     おじいさんは思いました。
     このままでは願いがかなう前におじいさんが死んでしまいます。
     そうなったとき、残った黄金はどうなるのでしょう。
     誰かが世のため人のためと使ってくれることを信じたいですが、世の中はそんなご都合主義はなかなか存在しません。
     ただ、放っておかれるだけならいいですが、悪人の懐に入ってしまうことも十分に考えられます。そうなれば、おじいさんの願ったことと真逆のことが起きるのは明白です。
     そして、あーでもない、こーでもないと思案した結果、おじいさんはひとつの結論を導きました。
     やりかたを変えようと。
     そうです。おじいさんは今まで、偏見を持たずに自分に近づいてくることをできる人をいい人だという選別基準を設けていました。しかし、それではおじいさんに近づいてくれる人が少なかったという弊害がありました。
     おじいさんはこのことを今までそれだけいい人が少ないのだと思っていましたが、その話しかけられなかったという人に、内気でシャイな子がいる可能性に思い至ったのです。今朝のテレビでも、コミュニケーションが取れない人が急増しているとやっていました。
     おじいさんの若い頃はそんなことはありませんでしたが、きんのたまを配り始めて数十年。時代が流れれば、人も変わるものです。
     おじいさんもやりかたを変えるべき時が来たということでしょう。
     おじいさんは今度は自分から声をかけ、配ろうと決めました。
     幸せが歩いてこないように、目的の成就も歩いてきてはくれない。そんな当たり前のことにいまさらながらに気付いたのです。
     まず、おじいさんはイッシュ地方に行くことを決めました。
     さまざまな町で人を見定める。出会う人数は多い方がいい。
     ならば、ビッグでフリーダムな地方を、ということをツイッタ―で検索したら、引っかかった地方だからです。
     まずは注文すると次の日には届くと噂の密林でイッシュの地図をクリック。そして、イッシュへ向かう船旅のチケットを入手。きんのたまの形を崩さないようにブリーフケースに入れることも忘れません。
     密林から地図が届いたと同日、おじいさんは船のタラップを踏みしめていました。
     長い人生、イッシュという地を踏んだことは未だにないということに忘れかけていた冒険心がちりちりと胸を焦がすおじいさん。
     自然と笑みが零れます。

     ◆ ◆ ◆

     首が痛くなるほどの高いビル。そのビルに努める多くの人々。
     同じ「街だというのに、おじいさんのいた街とは雲泥の差です。やはりイッシュはでかかった。
     しかし、と名物のヒウンアイスを舐めながら、おじいさんは苦々しく思っていました。
     大きい街だからでしょうか、人々に余裕はなく、皆自分のことで精いっぱいでとてもではないですが、人のために行動できる人が少なそうです。
     今までは自分に近づいてくる人に見境なくあげていたおじいさんはこまってしまいました。だれがいい人なのか判断する基準を持ち合わせていなかったのです。
     人の良さと言うものが見た目で分からないのが残念です。
     しかし、まだイッシュにきたばかり。これから探せばいいのです。
     溜息を吐きながら、おじいさんはヒウンシティを後にしました。






    【書いていいのよ】
    【好きにしていいのよ】
    【レイニーさん、アルティメットグッドマンお借りしました】


      [No.2069] なんとシュールな 投稿者:イサリ   投稿日:2011/11/15(Tue) 22:40:23     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    小春さん、こんにちはですー。

    二匹だけで土を耕しているダグコンビを想像したら笑いが止まらなくなくなりました!w
    そうか、ダグトリオとは植物の一種だったのか(違

    はぐれディグダ もとい ピンのダグトリオが何処で何をしてたのかとか、
    もしかしたら別の個体が何食わぬ顔で混じってんじゃないのかとか、
    色々想像してたら収拾がつかなくなりました。

    ダグトリオには ふしぎが いっぱい!


      [No.2026] ダイゴさんとハルカちゃん。 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/10/28(Fri) 23:16:29     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    「そうなんです!私のお父さんはジムリーダーで、私もお父さんを尊敬してます!」
     嬉しそうに家族のことを話す女の子がいた。今までたくさんの大人にこの話をしてきたが、いずれもお父さんと仲いいのねとかいいことだねと言ってくれていた。
     だから同じ反応を求めていた。自然と。気付かないうちに。
    「ふーん。あっそう。まあ、ジムリーダーなんて名前だけでしょ」
     その場の空気は凍り付いた。


     不機嫌な足音がする。その持ち主を特定するには時間はかからない。
     それが聞こえた時、彼の心臓は止まりそうだった。今やっているポケモン図鑑をまとめる作業に集中し、なるべく気付かないフリをする。
    「ねえちょっとユウキぃ!」
     その不機嫌な足音は部屋に入ってきてユウキの後ろに立つ。これは特大に機嫌が悪い。なるべくユウキは自分に降り掛からないように空気を読むモード最大に入る。
    「なんなのあのダイゴとかいう嫌味なトサカ頭!まじうぜえし!」
    「う、うん知ってるよハルカ……」
    「つーかあいつまじいつか殺す」
     ハルカの目は言っていた。もうそれだけで怒りに満ちている。その後に続く今日の嫌なことが予想できすぎてユウキは心の電源を半分オフにした。
    「殺すって、穏やかじゃないよハルカ……なんでそんなダイゴさんが絡むとかわっt……」
    「んだとコラ」
    「ひいいっ」
     目で殺す。視線だけで殺される。ユウキの心臓が大爆発寸前のマルマインのよう。
    「お前もボーマンダの餌がいいかああん?」
     いじめっこがカツアゲしてるかのような二人。むしろユウキは巻き込まれただけなのだが。もう心の電源は全てオフモードになった。全てハルカの気の済むまで黙ってることを決意する。
     その後もハルカのマシンガンどころかロケット弾のような話は続く。
     ダイゴもダイゴで、ハルカに嫌われてることなど百も承知。けれどうっかりとか偶然とかで会ってしまったら、彼女にしつこく話しかけるのも悪い。ハルカの表情は一切かわらないのに、ダイゴはずっとにこにこ話し続けていた。
     そして1年のうちに何度かクリスマスとかバレンタインとかホワイトデーとかそういう行事があったときなんて大変だ。特に去年は……。

    「やあ、ハルカちゃん。」
     さわやかな笑顔で近付いて来る。それに対し、ハルカの表情は一切変わらない。にこりともせず、ダイゴを見た。
    「はい、これプレゼント」
    「は?」
     ハルカが受け取ったのは、白い紙袋。なぜこんな唐突に?と問う前に、ダイゴは語る。
    「今日はホワイトデーだったよね。」
    「私、ダイゴさんにバレンタインあげてませんけど」
     悪魔で冷たく返す。この人のそういうところが嫌い。こういう嫌味みたいな絡み方をしてくるダイゴがまじで嫌い。
    「いいのいいの。僕があげたいからあげるんだから」
    「え?え?もらう理由がありませんからいりません」
     そういうダイゴは何が面白いのか、困るハルカを見て笑っている。嫌いな人に物を押し付けられ、ハルカもどうしようか迷った。が。
    「いりません」
     ハルカは紙袋をダイゴに投げ付け、回れ右をしたかと思うと自転車であっという間に遠くへと行ってしまった。
    「やれやれ、嫌われたもんだ。」
     足下に落ちた袋を拾い、砂を払う。小さくなっていくハルカの背中を見つめてダイゴは「大成功」とばかりに笑いを堪えていた。


    「・・・だからいい加減ハルカをからかうのやめた方がいいですって。そのうち殺されますよ?」
    「だってだって、1000円ちょっとで、こんな面白いもの見られるんだもの、映画見るより払う価値あるって。」
     ハルカに拒否されたことを、自慢気にユウキに話す。ユウキもなぜダイゴがここまでハルカに嫌がらせしているのかを知ってるようになってしまった。
    「いやだからですね・・・。」
    「だってかわいい後輩だよ!?ハルカちゃんも『ありがとうございます』って笑顔で受け取ってゴミ箱にぶち込むくらいのかわし方できないしさー!!!まあ、それやられたら僕が面白くなくて次から何もしないだけだし。そっちの方がまわりの見ている人の印象もいいのに、なんでできないのかなー。本当にあの子面白くて。」
    「いやだから・・・。」
    「別に僕はハルカちゃんに後輩以上の可愛がりはしてないし、それ以外、特別には思ってないし。だからね、僕に本気で突っかかって来るのがおかしいんだって。勝てるはずないのにねー!」
     その被害は全てユウキが被っていることを、ダイゴは全て知っている。はた迷惑な後輩いじりに、ユウキも返す言葉がなかった。



    ーーーーーーーーーーーーーー
    ※実話です
    ※実話です
    ※大事なことなので二度いいました。

    こういうバトルは、端からみてるとかなり面白いです。ごめんなさい。
    萌えたいからダイゴさん書くといって、こんなのしか浮かびませんでした。ごめんなさい。萌えません。むしろダイゴさん酷すぎる。
    ダイゴさんのセリフは言い放った人の言葉そのままです。まじです。
    「ジムリーダーなんて名前だけ」の意味がハルカは多分子供だから解らないんです。
    意味が解った人は挙手!
    【好きにしてください】


      [No.1983] つつき 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2011/10/11(Tue) 02:15:36     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     おい

     待っ
     ちょっと
     まじ おい
     地面 とけてるし
     落ちてるし
     風いたいし 涙わくし

     ――神に祈った。どこの神とも知れない。唯一神でも八百万でも創世神でも貧乏神でももはやなんでもいい。ちょっと待てよ。死にたくないよ! どうしていきなり溶岩に落ちて全身黒こげの塊になって死ぬんだ! クレイジー! クソッタレ! ジーザス! 死んだほうがマシだ! 嘘! やだ死なない! 死なないよ! まだ彼女に会ってない! キスしかしてないのに! 童貞なのに! 呼ばれたのに! なんか来てるから来いって! 神様! カミサマ!

     焼けるような熱風で皮膚が熱いを通り越して痛みをスルーして天国への階段を上った。脳みそが沸騰していた。目を開けているのかいないのかわからなかった。すさまじい風。服がダイビングスーツのようだ。焼ける。
     手の皺と皺を合せて祈った。走馬灯が焼け落ちた。意識が蝋のように溶ける。こんなことなら彼女をもっと可愛がっておくべきだった。溶け落ちて真っ先にマーマレードのような溶岩にしたたり落ちてジュウと水蒸気を上げた。岩石に混じって流れた。
     そして鈴の音を聞いた。
     僕はまだ風を感じていた。落ちている。鈴の音がする。凛。焼けぼっくいと化してゆく身体を漱ぎ流すように降り注ぐ。乾いて黒くかたまってゆく外殻に染み渡るように鳴り響く。凛々。
     天使が現れた。あたかもルーベンスの絵画の前に降りるような屈託のない幼児の微笑みで。天使は剥いたばかりのタマネギの姿をしていた。新緑と白い地肌。小さな指先が伸びる。涙と熱風に焼け付いた目で何が見えているのか見えていないのかまったくわからない――。

     E.T.

     ハッとした。
     触れた指先の感覚から、電撃の迸るような凄まじい勢いで全身に感覚が開花した。蘇った。枯れかけた花が突如生命エネルギーを注がれて満開するような爆発的な復活を感じた。気がつくと僕は、普通に僕だった。
     天使が居た。天使と僕はそれぞれの指先で触れ合っていた。鈴の音が遠のく。そうだ、この天使の名前は有名だ。セレビィ。森を守る妖精。時を渡る神。
     僕はどこか、廃墟のようなところに立っていた。天井は崩れてなくなっていて、建物だった名残はあるがもはや完全に野外だ。月明かりで薄明るいフロアに錆びたドラム缶が鈍く照っている。
     不意に背後から、冷たい指先が僕の目を覆った。
    「だーれだ」
    「やめてくれよ」
     振り向くと彼女が笑っている。
    「静かにしてね。まだ下に私が居るの」
     また妙ちきりんなことを言うしさ。
    「死ぬかと思った。会えてよかった」
     とりあえず彼女を抱きしめる。と、彼女の背中にくっついていたタマネギの妖精も一緒に潰してしまった。こいついつのまに彼女の背に。
     と思って、よく見ると、ちょっとまて。
     セレビィ二匹いるぞ。
    「おい、どういうことだ」
    「だから静かにってば」彼女は口を尖らせる。「あたし、来ちゃった後から来たの。だから下のフロアに、来る前までのあたしがまだ居るの。気づかれたらまずいでしょ、タイムパラドックスなんて作者の手に負えないもの」
     僕はホールドアップした。彼女の発言には脳ミソが追いつかない。
     すると、どこかから「あーッ、もう!」と苛立つ声が聞こえた。彼女の声によく似ている。
    「来たわ。時計見て」
     僕はアイフォンにタッチした。時計は0:00、昨日と今日と明日の境目を差している。
    「おめでとう」
     彼女はささやくような声で祝いの言葉を言うと、音が鳴らないようにハンドクラップして、僕に何か丸いものが包まれた包装紙をくれた。突然のことで、僕はなにがなんだかわからない。目の前が白黒した。
    「どうしたの、来たのよ」彼女は微笑む。「あなたの誕生日」
    「え?」申し訳ないことに僕は混乱していた。「誕生日がどうかした?」
    「誕生日おめでとう」
     そして彼女にプレゼントを握らされて初めて、祝われたものがなんだったのかを理解したのだった。


     包装紙を開けると、中にダークボールが入っていた。
    「これは……?」
    「新品よ」
    「いや、これは……」
     僕はポケモンを持っていないし、モンスターボールをコレクションする性癖もないんだけど。
    「今からフライデーナイトだもの。わざわざゆめのあとちで他になにをするの?」
     要領を得なかったので問いただしたところ、とりあえずポケモンを捕まえようとしていることだけはわかった。ヨーテリーのお返しだそうだ。
    「でも僕はポケモンを持ってないんだけど」
     すると彼女の肩口から、セレビィが二匹顔を出す。
    「貸すわ」
    「……その二匹、どこから?」
    「配布よ」
     僕が彼女を理解できる日はたぶん永遠に来ない。


     僕らはそれから、明るい月を眺めながら、”彼女”が下のフロアから消えるのをずっと待っていた。そして僕の部屋の居候に、もくもくと煙を吐く獏が加わった。部屋に帰ってきて最初にやったのはボールの隙間から漏れる煙を逃がすべく換気扇をつけることだった。
     そういえばアイフォンはメールを受信していて、それは例の旧友からで、そこには【すまんが、俺の新しい相棒がどっかいった。もしかしたら自転車が気になってお前ん家に行ったかもしれん。なんかテンション上がると、どうやってかしらんがエスパーパワーでものを黒こげにすることがあるから気をつけてとりあえず捕まえておいてくれ】と書かれていた。僕は明日の朝一番に奴をヴン殴りにいくことにした。
     それまでは、彼女と二人で。

    「ねえ、そろそろ寝ないの?」
    「まだ。次はノボリさんが『わたくしの最終形体を見せて差し上げましょう!』って言ってたけどあの人イッシュ産しか使わないからパーティ的には」
    「……寝ないの?」

     長い夜を過ごす。



    ***

     なんとなく完結。今は猛省している。
     お粗末さまでした。
     


      [No.1937] 遅ればせながら 投稿者:tyuune   投稿日:2011/09/30(Fri) 07:43:46     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     遅ればせながら、感想ありがとうございます。tyuuneと申します。てこさん、こちらこそよろしくお願い致します。
     いやはや、感想をいただけるとモチベーションが上がりますね。とてもありがたいです。
     まだまだへっぽこながら、精進していく次第です。

     さて、この度、このような小説をこの場に投稿させていただいたのには、ある理由があります。五日ほど前まではこのポケモンストーリーズという板の存在を知りませんでしたが、ツイッターにてその存在を知り、投稿された小説を読み、強い感銘を受けました。
     そして、「私もこのような短編を書いてみたい!」と、やる気が急上昇し、勢いのままにこの短編を書きました。
     その為、このポケモンストーリーズという板のおかげで、この作品が書けたと言っても過言ではありません。
     なので、こちらに感謝の意味も込めて投稿させていただいた次第です。

     私は、ポケモンストーリーズの小説を読み、創作意欲が刺激されました。そして、貴方は私の作品を読んで創作意欲が刺激されたとおっしゃる……。素晴らしい好循環ですね。この調子で、このポケモンストーリーズ全体がさらに賑わって頂ければ幸いです。

     蛇足ですが、私がハッピーエンドを書くのは、珍しい事です。はてさて、次回作はどうなる事やら。あまりハッピーエンドに期待しすぎると、衝撃を受ける事になりかねないので、ご注意をば……。


      [No.1896] これぞ最強☆ダイエット 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/09/20(Tue) 21:52:53     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     こんにちは! 私はポケモントレーナーのトウコです。最近まで普通のトレーナーでしたが、今はモデルとしても頑張ってます。カミツレさんには及びませんけどね。

     さて、今回雑誌『ポケモンのとも』に書くのはズバリ! 「誰でも痩せる最強☆ダイエット」の紹介です。私もこれを始める前はどこにでもいる女の子でした。それが今ではこんな仕事をできるまでになったのです。手軽に始められるのでおすすめですよ♪

     では手順を説明します。必要なものはオスとメスのポケモンを1匹ずつ。タマゴグループが一緒でないといけないので注意してください。また、自転車や「そらをとぶ」を使えるポケモンがいると一層はかどりますよ。

     まず、オスとメスのポケモンを育てやさんに預けます。そしたらタマゴができるまでひたすら走ります! 育てやさんの前には一本道があるはずなので、そこを走るといいでしょう。

     タマゴができたと呼ばれたらいよいよ本番。タマゴを受け取り、孵化するまで全力で走ります! この時、タマゴが孵化しにくいポケモンだと根気が要りますけど早く痩せますよ。初めての方は孵化に時間のかからないポケモンでも大丈夫です。ちなみに、孵化におすすめの場所はスカイアローブリッジ。道が長くて一通りも少ないので、快適に走れますよ。

     これを何度もやります。孵化したポケモンはライモンシティのジャッジさんに能力を見てもらうのもいいでしょう。高い能力ならバトルでも使えちゃいますよ。高い能力の子は中々生まれませんから、それを目標にするとモチベーションの維持にも役立ちます。ダイエットにもなって強いポケモンも手に入るなんて、一挙両得ですね。

     そして、孵化が終わったらポケモンを育てます。ポケモンと一緒に駆け回れば地道な作業も楽しいものに! やっぱりポケモンは大切なパートナーですね!

     いかがでしたか、ポケモン孵化ダイエットは? あなたも今日から始めてみてはいかがですか?






    ポケモンの女の子主人公、特にHGSSとBWがかわいいと思ったわけですよ。何故彼女達はあのスタイルを維持できるのかということをぼんやり考えていたら、以上の結論に達しました。

    いいぞもっとやれ。


      [No.1853] きゃっちんぐ 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2011/09/13(Tue) 01:44:34     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     これは……。
     落としたい橋を思わず渡ってしまう作品でした。
     オーベムの凄まじい悲哀に心がやられた。純真無垢な少年の瞳にやられた。もうやられたと溜め息しか出ないです。

     投稿ラッシュで埋もれかけていたので、乱雑ですが感想をば。
     急ごしらえで申し訳ありません。

     


      [No.1812] 【おまけ】僕の守護霊の話 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/08/29(Mon) 19:13:53     151clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ところで】 【あなたの】 【後ろにいる】 【その人】 【……誰?

    「おっ、久しぶり」

     大学の中庭にある椅子に座ってのんびりしていると、声をかけられた。文学部でフィールド文化だか何だかを専攻している、僕と同郷の幼馴染だ。

    「お前が中庭にいるの珍しいなぁ。ヤミラミ元気?」
    「まあたまにはね。ヤミラミはまあ、相変わらずだよ」

     僕は隣のいすでぐったりとしているヤミラミに目を向けた。暑さでだれている。

    「はっは、やっぱ暑いか」
    「暑いだろうねえ。ねえ、何か涼しくなるような話ない?」
    「えー? そんなこと言われてもなぁ、どっちかって言うと僕は涼しくなるより笑えるような体験しかないぞ」

     小学校の4年(くらいだったと思う)に越してきたそいつは、人一倍霊感が強いことで有名だった。

     残念ながら、僕はそういう霊的な体験を全くしたことがない。いっそ清々しいほど、ない。……と思う。
     有名な心霊スポットやら幽霊屋敷やら連れて行かれたことがあるけど、何もない。というか、僕が行くと何も起こらなくなる、らしい。



     そう言えば昔、こいつのおばあちゃんに、僕はすごく強い守護霊を連れていると言われたことがあった。
     気になったから、僕とこいつともうひとりの幼馴染達とで花火をしているときにこいつに聞いたら、確かにいる、と言われた。

    「確かに、すごいのがついてる」
    「すごいの? それって例えば、お侍さんとか、軍人とか?」
    「いや、ポケモン」
    「ポケモンかぁ。じゃあ何だろ、カイリューとかギャラドスとか?」

     すごく強いポケモン。僕はこの頃ポケモンについてはちっとも詳しくなかったけど、ちょっとドキドキする。
     そしたらこいつ、僕の足元をじっと見て、こう言った。

    「いや、ネズミ」

     僕ともうひとりの幼馴染は声をそろえて「は?」と言った。
     ネズミって。いや、ネズミって。

    「……何それ?」
    「かわいいよ。うん。かわいい」

     そう言ってこいつは、僕の足元の何かをなでるしぐさをした。
     まぁ当時の僕はポケモンの名前を言われても、何もわからなかっただろうから、それ以上聞なかったしこいつも教えてくれなかったけど。



    「……ねえ、そういえば、僕には未だにそのすごい守護霊がついてるの?」
    「うん。超強いのがついてる」

     そいつはあっさりとそう答えた。

    「お前の守護霊のおかげで、お前の周辺全然霊いないんだぜ。あーやべー超癒される」
    「そ、そんなすごいの?」
    「うん。悪霊も呪いも裸足で逃げ出すレベル」

     そう言うとそいつは、僕の足元から何かを持ち上げるしぐさをした。
     かわいいんだぜ―こいつ、とそいつはにこにこ笑って言う。
     一体何なの? って聞いたら、そいつはカバンの中を漁り始めた。

    「多分、見えると思う。超強いから」

     そう言って渡されたのは、双眼鏡のような何かだった。
     曰くこれは、シルフスコープとかいう、姿を消したゴーストポケモンが見えるようになる眼鏡らしい。最近の技術ってすごいよな、とそいつは言った。僕についてるのはゴーストポケモンじゃないけど、相当強いから多分見える、とのこと。
     そいつはテーブルの上に抱え上げた何かを置いて、ここにいるよ、と言った。僕はシルフスコープを装着した。

     長い鼻先。クリーム色と黒の丸い体。細い目。

     ちょっと待ってこれ図鑑で見たことある。ええと何だっけ。
     確かどこぞでは初心者向けのポケモンとして配られてるんだったような気がする。

    「思い出したヒノアラシ!」
    「おー、やっぱ見えるか」

     そのヒノアラシは、テーブルの上にちょこんと座っていた。
     ああなるほど、かわいい。かなりかわいい。……いや、かわいい。かわいいけども。

     じっと見つめていると、ヒノアラシはぴょんとテーブルから飛び降りて、物陰に隠れてしまった。幼馴染は和んだ顔をして言った。

    「照れ屋さんなんだなぁ。お前に見られるの恥ずかしいみたいだぞ」
    「あ、そう……」

     僕はシルフスコープをそいつに返した。そいつはしゃがみこんでテーブルの陰の何かをなでている。
     いやーかわいいなぁ、と言うそいつに、僕は疑問を投げかけた。

    「……本当に強いの?」
    「超強いよ。見た目はかわいいけど。多分、どっかの神様か何かじゃないかなぁ。うらやましいよ、僕は見えるくせに守護霊いないから」

     マジ連れて帰りたいわー、とそいつは言った。
     にわかには信じがたいけど、そいつが言うならそうなんだろう。……いや、信じがたいけど。
     あ、そうだ、とそいつが言ってきた。

    「ちょっとさ、協力してくれないかな」
    「はぁ」

     何でも、そいつの研究室の奴らが、今夜どこぞの心霊スポットに肝試しに行く計画を立てているらしい。そいつ曰く、その場所は割と冗談抜きでヤバいらしくて、必死で止めたけど、幽霊が見えることで有名なこいつが必死で言うもんだから余計に面白がっているとか。
     それで一同の護身のために、今夜一緒に来てくれないか、と。まぁ今夜は特に予定ないし、いいよ、と僕は返した。
     じゃあ今夜8時に文学部棟の前な、と言って、そいつは僕の膝の上に(多分)ヒノアラシを置いて、去っていった。
     僕は隣の椅子の上でぐったりとしているヤミラミにたずねた。

    「なあ、お前、ここにいる奴見えてる?」

     ヤミラミはだるそうに頭を上げると、何が? とでも言いたげに首をひねった。
     ……なるほど。必ずしもゴーストポケモンに幽霊が見えるってわけじゃないらしい。まぁ確かにこいつは見えそうにない。




     夜8時、僕はヤミラミを連れて大学の文学部棟に行った。
     幼馴染と、研究室の同級生と先輩らしい人たちが3人。合計5人。
     先輩の車に乗り込む。幼馴染は顔色が悪い。マジで頼りにしてるから、と耳打ちされた。

     車でしばらく走って着いたのは、山の中の少し開けた場所だった。
     幼馴染の同級生曰く、古戦場だったやら自殺の名所やら火葬場が近いやら、何かよくわからないけどすごいらしい。
     ぐいとTシャツの裾を引っ張られた。言うまでもなく幼馴染のあいつだ。人間の顔って本当に青くなるんだなぁ、と僕は思った。
     ヤミラミが頭にしがみついてきた。こいつも何か感じているのだろうか。残念ながら、僕はまだよくわからない。
     車を降りることになった。そっと幼馴染に、何が見えるか聞いてみた。幼馴染は他の人たちに聞こえないように声を抑えていった。

    「す……っごいいっぱいいる。何が何だかよくわからないくらいいる。やばい。すし詰め。ラッシュアワーとかいうレベルじゃない」

     とりあえず、降りたくなくなった。


     幼馴染以外の人たちが早く降りようとせかすから、ドアを開けた。

     瞬間、ぞわわっと悪寒が走った。

     初めての体験だった。何かよくわからないけど、何かいる感じがした。視線を感じる。
     やばいもう無理、と幼馴染がつぶやいた。
     他の人たちは、不気味ー、とか、こわーい、とか言いながら、先へ進んでいった。

     おい、あいつら追いかけろ、と幼馴染が慌てて言った。
     どうした? と聞くと、そいつは冷や汗をかきながら言った。

    「あの先、崖だ」

     そう言われて、僕は慌ててハンドライトを向けた。数10メートル先から地面がない。他の人たちもそこそこ明るいライトを持ってるのに、全然気がついていないようだった。
     僕と幼馴染は、急いで車から飛び出した。

     ぐい、と何かに足を掴まれた。
     いや、足だけじゃない。腕や肩、服の裾。何かにしがみつかれているような感覚。
     ヤミラミが短い叫び声を上げたけど、ほとんど声にならない。僕も声を出そうとしたけど、声が出ない。
     そうこうしている間に、他の人たちは刻一刻と崖に近づいている。

     僕は体中の力を振り絞って、声を出した。

    「く……そっ、放せ――――っ!!」


     瞬間、辺りが紅色の炎に包まれた。



     いつのことだったか詳しく覚えていないけど、まだ小さい頃、父さんに連れられて山に行った時のことだったと思う。
     気がついたら父さんがいなかった。はぐれて道に迷ってしまったのだと思う。
     道に迷った時は山を降りるんじゃなくて、とにかく登りなさい、そして道を探しなさい、と父さんに言われていた僕は、泣きながら山を登って道を探した。
     地図の見方や万が一の時の対処法は父さんに仕込まれていたけど、怖くて心細くてしょうがなかった。

     そんな時、僕は壊れた小さな木の建物を見つけた。

     その建物は大きな岩の下敷きになっていた。落石で潰されたらしい。
     ふと近くを見ると、何か小さな生き物が、石の下で暴れている……ような気がした。僕は小さな子供が抱えるのは少々大きなその石を動かした。だけど何もいなかった。

     次の瞬間、周りが炎に包まれた。
     僕はびっくりして、何が何だか分からなくなった。

     気がついたら、僕は父さんの後ろをついて、山道を歩いていた。
     父さんに聞いても、僕はずっとついてきていたと言われた。
     よくわからなかったから、夢だと思うことにした。そしてその記憶も成長するにつれて薄れていった。

     幼馴染のおばあさんに守護霊のことを言われたのは、その直後のことだ。
     それからというもの、山に行って危ないことがあっても、僕はけがひとつなく帰ってこられた。



     そうだ。これは、あの時見た炎と同じだ。


     炎が消えた。体が動く。幼馴染はその場にへたり込んだ。ヤミラミが僕の頭にしがみついて震えている。
     僕の前に一瞬、小さなヒノアラシの姿が見えた。
     うわっ崖だ、あぶないなぁ、という先輩たちの声が遠くから聞こえた。



     帰りの車の中で、幼馴染はずっと膝の上の何かをなでていた。ありがとなー、と小さな声で何度も言っていた。
     そいつは膝の上に乗っている(らしき)ものを僕の膝の上に乗せて、言った。

    「さすが土地神様は強いなぁ」
    「みたいだね……」

     ヤミラミが膝の上に降りてきた。幼馴染は僕の膝の上から何かを持ち上げて、自分の膝に乗せた。
     なるほど、僕にはとんでもないものがついているらしい。
     何の因果か、僕を守ってくれているのだから、悪い気はしない。ありがたいことだ。


     でもとりあえず、もう二度と肝試しには関わるまい、と僕は誓った。




    おわれ。




    電波って大事だよね。
    【好きにしていいのよ】


      [No.1767] 一人前追加願いますー 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/08/20(Sat) 08:26:06     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    せんせー
    ロッコさん(よろずに書き込んでるりえさん)が参加したいと言ってるので一人前追加願います。
    飲み屋は量が結構あったから人数増えても平気だとは思うw


      [No.1726] 【書いてみた】 シンオウへ旅行なう 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/08/11(Thu) 10:10:00     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     ごく、とサイコソーダが俺の喉を通った音がした。

     木陰にいればマイナス三度。水タイプで暑がりの俺は大きな木の下で湖を見ながら、サイコソーダを飲んでいる。ここシンオウは涼しくていいところだ。
     周りには仲間のシュバルゴ、ドレディア、コジョンド、ゾロアーク、ウルガモス。そろって昼寝中。はっきり言って全員が最終進化形態のガチパが木陰で昼寝をしている図は、けっこうシュールだと思う。
     
    「えへへ〜♪ここまでおいで♪」

     少し遠くからの声。聞こえた方を見ると、木に登るマイナン。見るからに悪戯好きそうな感じだ。下にはエンペルト。

    「よーし!れいとうビーム!」

     エンペルトがれいとうビーム発射。避けるマイナン。あ、となり…。
     うとうとしているドンカラス。なんか面白い事になりそうだから、黙って見てることにする。

    「ん?うわあああ!」ピキーン!

     凍っちまったぞおい。内心笑が止まらないんだがどうしてくれるんだエンペルト。
     あのマイナンなかなかの策士だなー。

    「うわあああ!こくあが凍っちゃった!…どうしよう…」
    「…どうしたの?」

     困っていたエンペルトに近づくキュウコン。
     二匹は少し話をしているそぶりだったが、よく聞こえない。キュウコンが凍ったドンカラスを見上げた。そして、エンペルトの方がさっきのマイナンを追いかけにいった。 
     そしてキュウコン。え、まさか技で溶かすつもりじゃ……。

    「かえんほうしゃ!」

     案の定……。火加減、気をつけろよキュウコン。

    「あっちゃあああ!!」

     あー、まさに焼き鳥、そして予想通り。あれじゃ火傷したな…。
     ……今なんか思い出しかけた。

     あ、そうか、あの時のナスカか! 懐かしい物を思い出す。
     ダブルバトルのとき、ファルが凍ってナスカが溶かしたときも、あんな感じだったな。 ドンカラスが当のキュウコンに何かを言っている。会話はよく聞き取れないが、やっぱり似たような雰囲気だったな。その後、俺が冷凍ビームで冷やそうとしたらまた凍らせちまったのも今となっては笑い話。ファルすまん。
     あいつら、いつのまにやら夫婦になったもんな……。子供までできやがって。ちくしょー、爆発しろ。


    「はっくし!?」

     某ペンドラーがくしゃみをした後、つぶやく。

    「夏風邪でも引いたか? ……今頃、あいつら北の大地かぁ。うらやましいぜ」


     なんか負の感情わいてきたんで、いったん考えるのをやめる。
     そういや、マイナンとエンペルトどこいったんだろ。

    「…!?キャーー!!」ゴーーー!

     そう思っていたら、向こうで突如火柱が立った。あれは……かえんほうしゃとかというよりは……なんか漫画の表現みたいだな。
     出していたのはロズレイド。マイナンに木の実だろうか? を投げられたようにも見えた。辛いんじゃないかあの木の実……。賑やかだなーあいつら。

     サイコソーダがなくなってしまった。ふと上を向く。と、この木、木の実がなっているじゃないか。桃色の、くるっと曲がったような形の木の実。
     アシガタナをさっと振って、二個ほど落とす。食べてみると、甘くてとてもおいしいじゃないか。自慢じゃないが、俺はかなりの甘党だ。自分でも気付いたら、もうすでに二つとも腹の中に消えていた。
     仲間たちにも、と思い、もう五個落とす。

    「起きろー、うまい木の実があんぞー」
    「んあ?」

     周りの仲間が、目をこすりながら起きてくる。木の実を手渡して食べてみろよ、と進めると、一番初めに食べたのはコジョンドのレッセ。

    「おいしいわね、これ!」

     その声を聞き、他のやつらも一口食べ始める。
     が、突然。

    バタンッ

     いきなり、ジュバルゴのナイトが、目を回して倒れた。

    「そういえばこの騎士さんってさぁ」

     ティラがしまった、というような表情で彼を見つめながら言った。

    「甘いもの、苦手じゃなかった?」

     ……今度、おわびにお土産として辛いものを買って帰ろうと思う。



    ――――

     自分のパーティって何かと思い入れありますよね、ということで一つ、書いてみました。
     こっちもケーキ一つで戦争したり、何かと賑やかですよ。ちなみに、私はシンオウに旅行に行ったわけではないです。夏休みだらだらなうです。


      [No.1683] なにこの魅力的過ぎる書店 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/08/03(Wed) 21:01:17     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    > 自分のポケモンから雑巾の匂いがしたら 著コトネ 1480円

    某マリルちゃんですね、わかります。

    > 破壊光線は人に撃っても大丈夫☆ 著ワタル 1980円

    …多分大丈夫ですよ、週に一度は手持ちにメガホーンで串刺しにされてる私オルカが言います(嘘

    > おいかける    著ミナキ 1200円
    > グラードン愛   著マツブサ 1500円
    > カイオーガ愛   著アオギリ 1500円

    一緒に愛を叫びましょう!あのポケモンに!!
    特に下の二つにいろいろと突っ込みが追いつかない件。
    でも一番読んでみたいのはここら辺。ポケモン愛いいわポケモン愛。

    > あきらめましょう  グリーン

    なんかこれが一番意味深だった。マコさんのようにレッドさんとの実力のことなのか!?
    それとも、レッドさんの消そk(

    以上、ありがとうございました〜


      [No.1642] 私を置いていかないで 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/07/26(Tue) 13:12:52     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     最愛のあなたが、この世から姿を消した。もう世の中全てが幻でいいと思った。
     泣き疲れて何も考えられなくなった私に触れる者がいた。

     あなただった。
     抜け殻となって今も生き続けるもう一人のあなたが、現実(ここ)に存(い)た。

    ※99字(ルビ含まず)


    MAXさんの「あいつに置いて行かれたから」の影響を受けた模様です。


      [No.1601] 【百字】親の七光り 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/13(Wed) 21:06:27     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    いいわよね、ジムリーダーの子供なんだから・・・いいわよね・・・・
     うるせえよ、オヤジと俺は関係ない。ポケモンだってオヤジからもらったことなんて一度もない。今ここで超えてやる。



    ーーーーーーーーーー
    ユウキはホウエン組だし好き。
    スターウォーズ的な展開でもおかしくないと思ってる。
    同じく、ヒョウタとトウガンとかも燃える。Nとゲーチスは・・・確定してからで。
    【何してもいいのよ】


      [No.1560] 抜け殻の彼 投稿者:音色   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:10:17     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    「ヌケニンって息してないって本当か?」「そうだよ」
    「じゃあ死んでるってことか?」「そうだよ」
    「だからゴーストタイプ?」「そうだよ」
    「でも腹は減るんだ?」「そうだよ」
    「矛盾してね?」「そうでもないよ」



    ※99字詐欺


      [No.1519] そうして見えた真実 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 21:23:24     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     世界は変わってしまった。ポケモンは解放され、人と切り離された。僕のポケモンも例外ではない。初めてカノコタウンを出た時のポケモンも、旅のポケモンも。Nと戦い、僕は敗れた。僕が甘かったのだ。理想ばかり言う僕が。Nの堅く決意した真実の前には無力も等しかった。
     これはNの温情なのかもしれない。イッシュが見渡せるNの城の一番高いところ。そこに僕はいた。プラズマ団が見守る中、Nは宣言した。
    「英雄は誕生した!そして英雄に刃向かったものは処刑せねばならない!」
     ここから見えるイッシュはとても小さい。遠くに見えるあれはヒウンシティのビルかな。ハイルツリーも渦をまいたまま止まってしまった。強制的に椅子に座らせる間も、ずっとイッシュを見て。もう見えなくなる、うまれたこの大地。
    「それでは、逆賊よ、最後に言い残したことはないか?」
     Nは僕を見ていった。言葉を許される。まっすぐにNを見ていった。
    「まだ死にたくない。まだ・・・」
    「そうやって死んでいったポケモンたちはたくさんいた。君が直接手を下してないとしてもだ」
    「あいつらより先に死ぬわけにはいかないんだ」
     言いたいことはそれだけか、とゲーチスが笑った。けれど頭の中には、ムリヤリ解放してしまったポケモンたちのことしか浮かんで来なかった。Nが何か喋っているが聞き取れない。違うんだ、こんなところ早く出て、うまれたばかりのメラルバにご飯あげないと。水タイプのやつらに海水浴につれていってやらなければ。炎タイプはカロリー消費するからいつも餌を食べてないといけない。草タイプのやつらに水をやらなければ。こんなところ・・・


    ーーーーーーーーーー
    Nに負けたもう一つの未来。

    【百字の予定だった】【やっぱり百字じゃ足りない】【好きにしていいのよ】


      [No.1478] 振り向くと、そこは戦争だった… 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/07/06(Wed) 23:18:46     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    隣には、息子のアポロン。寝かしつけようと、絵本を読んでやっていた。
    しっかしナスカ遅いな。オルカたちと隣の部屋にいたはずだ。
    先に寝よう。そう思った矢先、

    『ドゴーン!』

    アポロンが飛び起きる。何なんだっ!?



    無数の花弁の渦が、こちらに向かってくる。
    冷凍ビームで凍らせ、威力を無くすと同時に飛んできたのは気合玉。
    すんでで避けると、それは部屋の壁にぶち当たり、煙をもうもうと上げた。
    視界を遮られて何も見えないところに響く、燕返しの音。



    熱風を打ってくるのはナスカ。ギリギリ避けられないところに、
    リーダーのアシガタナがのびて来、止める。
    互いの弱点をカバーしつつ戦っているが、四対二では流石に勝ち目は無い。
    おい、何でこいつら怒ってるんだ!?



    さっきまでチャットをしてたんだけど、無茶振りに定評が付いてしまった。
    次はどんなお話書こうかな、とか考えてたら部屋で戦争が起きてるし…。
    そろそろ寝たい。静かにしてくれないかな近所迷惑だし。

    「黙れ!!」



    カゲマルから、大体の事情を聞いた。偶然覗いてたらしい。
    シェノンとナイトがチャットをしてたのをメスどもに見られたと。
    それで四匹が怒ったらしい。なぜか?知らん。

    音が消えた。

    見ると、六匹が氷漬になっていた。



    寝ているオルカ。
    どうやら、コイツが『絶対零度』を使ったようだ。
    …要は怒らせると怖い、という事か。
    ともかく、平和な夜が戻ってきて、めでたし、めでたし。
    氷漬になったやつらは、明日になれば頭も冷えると思う。


    ――――
    無茶して書いてみたよ。多分六百文字。少しだけ、初バトル描写。
    もう無茶しすぎたので何がなんだか意味不明ですが、華麗にスルーして下さい。
    一、ファル視点  二、シェノン  三、ナイト  四、私  五、六、ファル

    【何をしてもいいのよ】


      [No.1437] whale song 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 21:25:39     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     ハルカは目を覚ました。夜中だというのに、なぜか目がさえて。船のエンジンは静かに動いているというのに。夜風に当たろうとハルカは甲板に出て行った。
    「うわぁ・・・。」
    満月の海。真っ黒の海の中に波間が見え、そこだけ白く照らしている。風はそんなに強くない。
    「きれい・・・。海ってこんなにきれいなんだ・・・。」

    ふぁーーーーーーーん

    「あれ?何かきこえ・・・。」
    船の横を大きなホエルオーが飛んだ。ホエルオーの鳴き声だ。黒い海を船とぶつかりもせず、遊ぶようにして飛んでいる。

    ふぁーーーーーーーーーーん

    さっきよりも長い鳴き声で、ハルカを呼んでいるようだ。
    「ホエルオー!?私と勝負するー!?」
    その言葉を理解したか、ホエルオーは海へと潜り、見えなくなった。
    「なんだ、勝負したいんじゃないのか・・・。野生のポケモンってみんな自分を大事にしてるんだな。」

    ふぁーーーーーーーーーーーーーーーん

    「まだいるの?いじめないから出ておいで!」
    再びホエルオーが顔を出す。今度は船尾の方に。ハルカはデッキを走る。
    「遊ぼう!夜の海くらい遊べるよー!」
    船の作る波を受け流し、ホエルオーは再び鳴く。深く、そして低い鳴き声。ユウキのホエルコを見せてもらった時とは違う、野生の鳴き声。闇に入ろうとして、手すりに足をかけた瞬間、ハルカは後ろから抱きかかえられた。
    「こら、ハルカちゃん、危ないじゃないか。」
    「あ・・・ダイゴさん・・・。」
    「夜の海に落ちたら、危ないんだよ。いいかい、まず見つからないから死んじゃうかこのへんのサメハダーに食べられちゃうかなんだ。」
    「・・・はーい。」

    ふぁーーーーーん

    「あ、まだいる・・・。」
    「ホエルオーかい?」
    「うん、そうみたい。さっきから1人で船のまわりにいるよ。」
    「・・・仲間を探してるんだね。」

    ふぁーーーん

    「仲間?」
    「そう、ホエルオーは群れで暮らすポケモンなのに、一匹だけ、船のまわりをまわってるなんておかしいだろ?」
    「あのホエルオー、1人なの?」

    ふぁあああああああん

    「そうかもしれないね。」
    ダイゴはホエルオーを見つめていった。
    「かわいそう・・・パパもママも、お姉ちゃんとかお兄ちゃんもいないのかな・・・。」
    「分からないな、野生だからね。」
    「寂しくないのかな・・・。」

    ふぁーーーーーーーーーん

    「寂しいと思うよ。だから、ああやって仲間を探してるんだ。」
    「友だち、船じゃなくて早く見つかればいいのに・・・。」
    夜風がハルカの髪をさらう。
    「そうだね。」
    「かわいそう・・・。」

    ふぁーーーーーん

    「ハルカちゃんは優しい子だね。」
    「え?なんで?」
    「他人の痛みが分かる、優しい子だよ。」
    「分からないよ。ホエルオーは・・・私と同じだから・・・。」
    「なぜ?」
    ホエルオーの声が遠くに行った。それでもまだ低い声は聞こえる。
    「私は・・・ずっと1人だから。」
    「なんで?お父さんは?ユウキ君は?」
    「ユウキ君は・・・違うの。お父さんも・・・ダイゴさん、あの・・・お父さんは、本当のお父さんじゃないの。」
    「え?それは本当なのかい?」
    「・・・・うん。この前、初めて知っちゃった。戸籍が必要でね、それで、お母さんに聞いたら、本当のパパとママは交通事故で死んじゃったって言ってた。それで知り合いだったパパが引き取ってくれて、でも、その時はまだトレーナーだったパパが子どもなんて養えるわけなくて、パパは家にいなかったよ。それでも私はパパとママの家族が好きだったの。」

    ふぁーーーーん


    「本当の家族だと思ってたの。でも、違うの。ダイゴさん、あのね、私ね、時々、この世で1人だと思うの。なんでか分からないけど、パパも、ママも、誰もいないように思うの。誰かに頼りたいのに、誰かが分からないの。仲間なんて・・・・いない気がして、なんでそう思うのか、最近わかって。ねえ、ダイゴさんは時々、自分が1人だけって思わないの?」
    「・・・思わないな。昔はそうだったかもしれない。でもね、ハルカちゃん。必ずどこかに孤独だと感じる人がいるなら、それをうめてくれる人っていうのはいるんだ。もうハルカちゃんは出会ってるかもしれない。まだ出会ってないかもしれない。誰だかは分からないよ?でもね、必ず会える。だから、会う時までは絶対に生きていなきゃいけないんだ。」
    自然とハルカを後ろから抱き締めていた。ここまで強気で張ってきた子。泣き顔を見られるのは、一番嫌がるだろうから。
    「ホエルオーのように、寂しいと言えば誰かきてくれるかもしれない。それでも、孤独を感じる度にその人が来てくれるとは限らない。」
    「うん・・・。」
    「・・・ハルカちゃんは強い子だね。」

    ふぁーーーーーーーん

    「・・・なんで?」
    「人間は野生の生き物のように孤独に耐えられないんだ。耐えられないから言葉で孤独にならないようにしてるんだ。だからずっと耐えてるハルカちゃんは、強い子だよ。」

    ふぁーーーーーん
    ふぁーーん

    トーンの違う二つの声。近くにホエルオーが2匹以上いる。ハルカは海を見た。
    「あ、ダイゴさん、ホエルオーが・・・。」
    「どうやら、仲間が迎えにきたようだね。」
    「・・・よかった・・・。」
    「ハルカちゃんも、もう迎えに来てくれた人がいるかもしれないね。」
    「え?いないよー。」
    「ほらまた。ハルカちゃんが思ってても、みんな思ってるかもしれないんだから。冷えるからね、もう戻ろうか。」
    「うん。」
    ふぁーーーーーーーーん


    ーーーーーーーーーーーー
    チャットで鳩さんの話を聞いてから、昔のをまた引っ張りだして来た。

    オーボエの素朴でどこか哀愁のあるソロと、ティンパニのクジラの鳴き声が合わさるwhale songを聞きながら。

    【お好きにどうぞ】【見た事ある?】【あるならその人と名前一緒よ】【昔のだからね!】
    参考音源:海の男たちの歌より「whale song」


      [No.1396] 七夕のお願いと誕生日 投稿者:マコ   投稿日:2011/07/05(Tue) 09:35:16     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    ポケリアのマイコちゃんのお話です。
    彼女のバースデーの日に、短冊を見ているところです。



    七夕。それは人々が短冊に願いを書いて飾る日。
    そして、恥ずかしながら、私の誕生日でもある。

    「いっぱい短冊が飾られてるね。ちょっと読んでみようか」
    私は笹に飾られている紙を見た。

    人のお願いは匿名にしてあるみたいなんだけど……。どれどれ、
    『マイコの料理の腕が上がりますように』
    ちょっ、待て!短冊に普通こんなこと書く!?
    『世界が平和になりますように』
    壮大だなあ……。
    『マイコにいい彼氏ができますように』
    余計なお世話!!仮にできたとしてもみんなの嫉妬が怖いから無理!


    ……人のお願いって怖いな。ほとんど私絡みじゃん。……ポケモン達の短冊はどうなんだろう?

    『はやく進化して、マスターの力をもっと高めたい チャオブー』
    ごめんチャオブー、私の努力不足で……。でもありがとう。
    『ボクの見た目で怖がる人を減らしたい ヌマクロー』
    これ……どうすればいいんだろう?進化?うーん……考えてもいい解決案が浮かばない。
    『よい予知夢が見られますように ムンナ』
    切実だね……。でも、予知夢だから、調節できるのかな?分かんないなあ……。


    その時、部屋が真っ暗になった。
    「え、何何何っ!?」
    私が驚いていると、みんなの声がして、
    「「「ハッピーバースデー、マイコ!!!」」」
    パンパンパーーーン!!!
    クラッカーがいっぱい発射された!ポケモン達もしれっと発射していた。
    「ありがとう……。でもすっごく煙たい……ゲフンゲフン」
    クラッカーの量がすごいから、火薬の臭いがきつい。若干煙も立ってたし。
    「ほら、ケーキ!頑張って作ってん!」
    「ちょっと不恰好やけど、おいしいはずやから!」
    形はちょっといびつだけど、折角作ってくれたんだ。食べよう。

    パクリ

    「あ、おいしい!!」

    サプライズバースデーも無事に終わり、大満足なマイコなのでした。


    マコです。
    七夕は私自身の誕生日でもあるので、勝手にバースデーストーリーをねじ込んでしまいました……。
    あ、私のお願いはですね……。
    『もっとポケストが発展できますように』
    ここも、ロングもですね。私も書き進めなくては。ポケリア+(プラス)!を。
    もう一つはリアルな話です。
    『今年こそは「不可」なしを!』
    大学の考査の話です。ほとんど単位はとっていますが、毎回のように1個は「不可」をもらってしまうので、何とか今回はせめて一番悪くても「可」で止めたいです。
    できる限り「秀」を目指します!(成績は秀が最も良く、次いで優、良、可、不可の順。)


      [No.1355] 自然の摂理 投稿者:megafeps   投稿日:2011/06/22(Wed) 22:47:33     91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     ぼくはようやくこのやみのせかいからぬけだすのだ

     ながいあいだせわになったこのからだにわかれをつげ

     ずっとあこがれていたひかりのせかいにこのはねをひろげるのだ

     いちどだけみあげたそとはあまりのもまぶしかったが

     きっといまのぼくにはだいじょうぶだろう

     なぜならちかのせかいにてきしたからだから

     おおぞらをとびまわるためのはねをてにいれたのだから

     ぼくのぶんしんよ ぼくがおいていくことをゆるしておくれ

     きみもぼくであることにはかわりはない

     ただ ぼくはきみをわすれない

     ぼくはこれからめいいっぱいぼくのいっsh


     ばきっ
     めしゃ
     もぐもぐ

     ごっくん

    ピジョン「あー進化したてのテッカニンうめぇ。早起きしてよかったー。 あ、そこにヌケニンもいる」

     
    【書いても良いのよ】 【批評しても良いのよ】


      [No.1314] 長老の呟き。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/06/12(Sun) 21:59:55     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     その身を黄金に染めた一匹の九尾狐がマトマをかじりながら、夜空を見上げていた。
     全国でも比較的、寒いこの地方の夜には散らばった星と月がよく映えている。
     マトマをかじり、真白の吐息が空を舞っていく。

    「コウキとジュン、か……ふふふ。あやつら、今頃、どの辺りまで辿り着いておるかのう」

     今日、出逢った二人組の少年とその会話を思い出していく九尾の狐。
     何でも知っている自分の言葉に何回も驚いていた少年達の顔が浮かぶと、思わず、笑みが零れてしまう。
     それと、いつでも相談役に乗ると宣言したことに「仕事が増えそうじゃな」と呟いていたが、その顔は楽しそうな顔だった。
     そして、少年達の言葉も――。

    『キュウコンのじいちゃん!』

     九尾の狐の頭に何かが引っかかった。

    『ありがとう、キュウコンのじいちゃん!』
    『キュウコンのじいちゃん!』
    『じいちゃん!』

    「あれか、そうか、これが俗にいうボーイッシュってやつなのか? そうか、そうか、男っぽく見えたのか、そうなのか……」

     しかし、九尾の狐は一回、目を閉じて……それから緋色の湖を開けて――。 

    「わしは女じゃーーーーーー!!!!」

     九尾の狐が泣きながら何かを訴えかけるような鳴き声を一つ、月夜に吼えたのであった。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

     前置き:長老は一応、女です。 

    ★長老の件 

     灯夢さんに引き続き、コラボありがとうございます!
     長老がすごい活躍してますね!(ドキドキ)
     色々なことを知っているのは流石の一言に尽きます。(ドキドキ)
     そして、平和主義者と言いながら、今日もチャットにて、人間をもふる長老がそこにいる。(笑)
    「もふもふは正義じゃから問題なしじゃ!」と言い返されそうですが。(汗)


    ★物語の件

     人がポケモンに姿を変えることができる設定、そしてその背景にあるものに……ドキドキしました。
     他にも長老が言っていた一組の夫婦とは?(ちなみに夫婦の予想はディアルガとパルキア、そして戦争を止めたのがアルセウスと予想)
     例の六匹のポケモンの内、残り四匹は何のポケモンか。
     また、後三人は一体誰なのか。(ギンガ団の中に一、二人いたりして……そして後の一人は中立的な感じ? と予想)
     
     色々と伏線が張られていて、この先がとても気になります!(ドキドキ)
     きっとお忙しい中(『流星を追い掛けて』もありますし)……難しいと思いますが、出来れば……機会があれば、続きを! 連載を!(キラーン)
     そして、また長老を出してあげて下さい。(ペコリ)
    「うむ。待っておるぞ(キラーン)」 
     
     それでは、失礼しました。


    【ジュン君、いい走りしてる!】


      [No.1273] アズキトギ 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/06/03(Fri) 02:27:31     102clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     ――夜が怖い。
     ――夜が来るのが怖い。

     もう半月程、彼はぐっすり眠ることができずに悩んでいた。
     変な音が夜中、決まった時間に聞こえてくる。
     最初は少し気になる程度だったが、毎夜、誰もが寝静まった夜中にその音が聞こえて目が覚めるとだんだん不安になってきていた。
     彼の生まれた町では、夜は恐ろしいポケモンが出没するという言い伝えが語り継がれていた。もちろん、それを完全に信じる者がどれだけいるのかはとにかく、少なくとも日が落ちる頃には外に出歩く者はいない。そんなところで育った。今は故郷を離れ、夜に出歩くこともするようになったが、未だに夜は落ち着かない。そんな夜が苦手な彼が、さらに夜に何かが起これば、そのままでいられるはずもなかった。

     おかげで最近、彼の大学での講義の時間は散々なものとなっていた。やっと眠りにつく頃には朝日が昇り始めることもあったほどで、例えキャンパスから家が近くても、集中して講義を受けることができなくなっていた。講義中のざわめきもヒソヒソ声も、あんなに退屈でもう聴きたくないと思った教授の声も、大好きな科目も、全てが安らかで心地よく感じてどうしようもない。そんな彼を助けてくれていたのは一人の女性だった。遠くの地方から留学してきた彼女は、面倒見もよく、彼を心配してノートを自ら貸してくれたのだった。
     ただし、やはりそんなことが続くと疑問も出てくる。幸い彼は真面目な学生というイメージが浸透していたので愛想をつかされるということもなかったが、理由を説明しないわけにはいかなくなったのである。

    「で、それってどういう音なの?」
    「ああ、何というか、シャッシャッていうか、スッスッていうか」
    「よくわからないわねー。鳴き声とか? ポケモンの」
    「いや、生物的な鳴き声というよりは、何かこう、こすれるというか、ぶつかるというか……」
    「それってあれじゃない?」
    「あれ?」
    「伝説のポケモン、アズキトギ」



    「アズキトギ?」



    「ほら、君の家って河原の近くにあったでしょ? 私の故郷では夜、川で『アズキトギがアズキを洗う』って伝説があるのよ」
    「どんな、ポケモンなの……?」
    「さぁ? どんな姿だったかな? 何しろ伝説のポケモンだから見たことないし、そもそも見た人いるのかなぁ? とにかく、アズキを川で洗う謎のポケモンなのよ」
    「アズキって?」
    「えと、これぐらいの赤っぽい色で、アズキ色の豆」
    「アズキ色?」
    「あー、アズキ知らないんだもんね。何言ってんだろ私。アハハ」
    「凶暴なの?」
    「さぁ? 何しろ幻のポケモンだから」
    「何でそんなことするの?」
    「何でだろうねぇ。私も知りたい」

     結局彼女もその正体までははっきりと知らないらしい。
     そんなわけで余計な謎まで増えた挙句、彼女の話を聞いた所為で、日が暗くなっていくにつれて、彼の頭の中のアズキトギは形がはっきりし始め、次第に輪郭を帯びていのを止められない。




    「やっぱり今日も眠れないな」

     その夜、彼は音で目が覚めるどころか眠気すら訪れることなく、目をぱっちり開いたままベッドで天井を見ていた。昂った神経を落ち着かせる術を身に付けているわけもなく、何度も寝返りをうって、ぎゅっと目を閉じては目を開いてみたり薄目をしてみたり色々やっては繰り返す、そんなことしかできない。
    メリープを数え、モココを数え、モンメンやエルフーンも数えだし、頭の中の牧場がもこもこふわふわで一杯になり、挙句にメリープ達が残らずデンリュウに進化して、エルフーン達が痺れて動けなくなったところを「奴」がやってきた。ビリビリのモコモコを恐ろしい姿のポケモンが、血の色の豆と一緒にバクバク食べだした。デンリュウが逃げ出し最後の一匹に飛びかかろうとしたその時、例の音が聞こえてきた。

    「ひっ!」

     彼の情けない声が一瞬で闇に吸い込まれ、再び静寂。遠くにはあの音がずっと聞こえていた。すっかり引き戻された現実も、妄想同様、最悪のままだった。

    「ああ、もう!」

     彼は耐えられなくなり、適当に着替えると、ポケモンの入ったモンスターボールを身につけて家を飛び出した。
     進む先には川原があった。だんだん音も大きくなっていくようで、そこで間違いないようだった。川原は少し低くなっていて、向こう岸と繋ぐ、車も通れるような大きな橋があった。その下は明かりもなく暗くてよく見えない。近づくにつれて駆ける足は次第に遅くなり、ゆっくり歩くのがやっとになった。とにかく暗い。つまずきそうになって明りになるものも持っていないことに気付き、彼は自身を鼻で笑った。それを理由に探索を止めようとした時、暗がりに気配を感じた。

     ――何かがいる。

     キラリと光った。
     赤い色をしていた。

    「っ!」

     かろうじて声をあげなかった自分を彼は少しだけ褒めた。しかし彼の勇気はそこで使い果たしてしまったらしく、モンスターボールに手をかけた状態で固まった。
     恐怖と緊張のあまり動けなくなってしまったようだった。
     手も震え足も震え、このままではボールを落としてしまうとか、震えるあまり倒れてしまうだとか、周りの状況と全く関係ない情けない心配をし始めしたころ、謎の正体を目撃した。

     現れたのはコマタナ。野生でも見かける珍しくもなんともないポケモンだ。

    「なーんだ」

     そう口にした瞬間、体が自由を取り戻す。一気に汗が噴き出し、少しの疲れと眠気がやってきた。

    「コマタナだよ、コマタナ! どこにでもいるただのポケモンじゃないか。なんだなんてことはないビクビクしてバカみたいだハハハ」

     目が合う。
     野生の狩猟者の、射る様な視線だ。
     深夜の客を1匹はじっと見ていたが、敵ではないとわかったのか、取るに足りないと感じたのか作業を開始する。
     一定のスピードでその音が聞こえる。
     石に刃をこすり合わせ、何度も何度も動かす。その手の刃は欠けている。手だけではない。胴体、頭と体中の刃もぼろぼろだ。毎日聞こえる音は、コマタナが全身を治している音だった。



    「なんだぁ。コマタナかぁ」
    「そ。コマタナ」
    「幽霊の正体見たり、枯れ尾花ね」
    「カレオバナ?」
    「枯れたススキのことよ」
    「ススキ?」

     留学生に早速報告すると、すっきり冴えた意識で講義を受ける。睡眠時間が増えたわけでもないのに眠気はほとんどない。ただそれは河原を去った時から離れない茫洋とした感覚のせいかもしれない、と彼は思っていた。

    「ああいうのって普通のことなのかな」

     少し沈んだ声で言う彼の言葉に、彼女は手櫛で梳きながら言う。

    「ああいうのって?」
    「体中の刃が欠けたりして」
    「まぁ、一番槍を気取って頑張っちゃう子なのかもしれないわね」
    「要領が悪くてぼろぼろになるまで無理しちゃうとか」
    「うん。何にせよ、しがみついて狩りをするなら刃が折れたり欠けたりってのはいつものことなのかもね」

     教室に笑いが起きた。講義中の教授は、よく生徒をイジったり余談を挟んだりして学生の気を引く。難しい話が続いたときなど、生徒に一息入れるさせるための工夫だ。おかげで講義の人気も高い。

    「進化するのがさ、随分と遅いよね。コマタナって」
    「そう――ね。そういえばそうかも」

     講義は、サンヨウシティ近くの地下水脈に生息するポケモンの種の変化から、その現在の共生の仕組みに移ろうとしていた。
     彼はあのコマタナのことを考える。全身の刃は欠けに欠け、毎日体を研ぎ、来る日も来る日も狩りに明け暮れる日のことを。いつかは進化して、グループのリーダーとなる日が来る。ひょっとしたら来ないかもしれない。それでも毎日狩りに出るそんな日。

    「どうしてコマタナの進化は遅いのかな」

     彼の言葉への返事は予想していたよりはるかに大きく、低い声だった。

    『面白いこと話してるね。留学生さんとキミ』
    「え? ボクらですか?!」
    『うん。そう』

     講義をしていた教授が話に割り込んできたのだった。
     講堂というのは、大勢いても案外生徒が見えるものらしいが、まさか小声の会話まで聞こえているとは思いもよらず、彼は動揺した。マイクで拡声された教授の言葉によって学生の視線を一気に受けた彼は顔を真っ赤にした。
     私語を怒られるのかと思いきや、教授は二人に質問し始めた。

    『どうしてキリキザンの進化が遅いかわかるかい?』
    「え、あー、うーんと」

     彼は必死に、教科書のページをめくった。

    『乗ってないよ。正確なところはわかってないから。憶測でいいんだよ。どう考える?』
    「えー、どうなんでしょう?」

     彼の言葉に忍び笑いもちらほら聞こえた。

    「そーですねぇ、あんまりみんなが進化すると獲物がなくなっちゃうぐらい敵がいないとか、そういう感じじゃないかと思います」
    『ふむふむ。なるほどね」

     そういう考えもありだとメモをとった教授は、咳払いを一つして話しだす。

    『私はこう考えるね。あー、ノートとらなくていいからね。ただの余談だから』

     教授はニヤニヤしながら言った。

    『これは群れから脱落者を出さないためのシステムなんじゃないかな』

     後継者が現れないのでリーダーが長く君臨する。年寄りがずっと現役でいられることなんだと教授が笑った。
     そして長くいることによって固体の単純な強さや若さでなく、老練された技術というものも身につけ伝えることができる。そしてリーダーが戦えなくなる頃、やっと後継者が進化するのだという。

    『もちろんこれは理想の形。実際はもっと進化する者もあり、世代交代の戦いは頻繁に行われるけど、そこは野生の厳しさだね。強いものを維持する緊張感みたいなものはなくならないはずさ』

     そして自分が引退する頃には君らも一人前の教授になって僕の研究を引き継いでおくれよ、と結んで生息生理学の本筋に戻っていった。




     それから数日、彼は再びアズキトギの音が聞こえるのを毎晩待ったが、静かな夜が続いた。一週間も過ぎたころ、例の音が聞こえて彼は家を飛び出した。前と違うのは進む足が躊躇いのないこと。そして聞こえる音が間隔が短く忙しないことだった。
     橋の下に着くとやはりいた。今回は四匹で研いでいて、音の違いはその所為だった。
     走る人間の出現に驚いたようで、コマタナは慌てて逃げてゆく。しかし1匹だけは一瞬顔を向けただけで、すぐに作業に戻った。

    「あの時のお前なんだな」

     声を無視して刃を研ぐ体はボロボロで、以前より刃こぼれが増えているような気がした。

    「どうしてそんなに頑張るんだよ」

     答えはない。

    「虚しくないのか?」

     反応もない。

    「俺と一緒に行くか?」

     一歩踏み出したとき、やっとコマタナが反応する。右腕の刃を突き出し、彼を牽制していた。あともう一歩でも踏み出せば飛びかかってくるだろう、そういう音のない剣幕を感じて彼は立ち止まった。

    「俺と一緒にいれば、狩りもしなくてすむし、ボロボロになってもすぐにポケモンセンターに連れていって回復してやる」

     コマタナは動かない。先程から変わらず切っ先を向けて彼を睨みつけていた。

    「だから俺と――」

     言葉は途中で途切れる。モンスターボールをポーチから取り出したとき、砂利をける音がいくつか聞こえたからだ。先ほど逃げた三匹が、コマタナの後ろに立った。仲間のために戻ってきたのだろうか。

    「そっか」

     初めてあった日からまとわりついた、茫洋とした感覚は溶けるように消えていった。

    「それは俺の、人間の一方的な考えか」

     コマタナは相変わらず刃を突き出したまま、構えを崩さなかった。

    「だよな?」

     彼はモンスターボールをしまって、かわりに取り出したものを投げる。
     三日月よりも細くコマタナの刃が煌めいて、彼の投げたオボンの実はまっぷたつになって落ちていた。

    「なんだ、いい切れ味してるじゃん」

     アズキトギの音で彼が目を覚ますことは二度となかった。

    ------------------------------------------------------------------------
    お題「眠り」

    コマタナがお腹や頭の刃を研ごうとする姿って、苦戦してそうで想像するとなんか和みます。

    お読みいただきありがとうございました。

    【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【批評してもいいのよ】


      [No.1231] 一ミリ下さい 投稿者:エイティ   投稿日:2011/05/25(Wed) 23:24:10     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    『さあ、新チャンピオン就任の後は皆さんお待ちかね、新旧チャンピオンによる、デモンストレーションバトルです!』

     夜空に咲く炎の花、観客に埋め尽くされたスタジアム。ひでり並みのスポットライトで照らされるのは、中央にモンスターボールのマークが大きく描かれた、シンプルで広大なバトルフィールド。長方形のフィールドの両端に一人ずつ人影が現れると、数百匹のマルマインが一斉にだいばくはつしたかのような歓声が上がる。
     数年に一度あるか無いかのチャンピオン交代に伴うバトル。ポケモントレーナーの頂点、二人のチャンピオンとそのポケモンが技巧を凝らしあい、互いに全力でぶつかる対決は、見る者の心を揺さぶらぬ筈は無い。――例えそれが過去のもので、画面越しに見るビデオであっても。だが、今回の観客は違ったようだ。

    「なあ、他のビデオねえの?」

     木の温もり溢れるログハウスのリビングで、一人の少年がバトルビデオを見ていた。テーブルに数冊のノートを広げた少年の傍らには、一匹のニドキング。

    「ラン、眠かったら先に寝てていいよ」
    「お前が寝るまで寝ない」

     ランと呼ばれたニドキングは、如何にも怪獣を主張するような牙の生え揃った大口を開け、欠伸を一つ。
     ニドランの名残を残した大きな耳、薄紫色の皮膚に逞しく太い手足。手の先には鋭い爪が三本ずつ生え、長い尾は先に行くにつれ細くなっている。背丈は発育不良気味な少年と対して変わらない、図鑑に載る平均身長ギリギリだ。
     時計の針が両方真上を向き、ランは顎をテーブルに乗せる。かれこれ二時間に渡り延々と同じバトルビデオを再生され続け、眠気と傾いてきた機嫌でランの声は何処かぼんやり間延びしていた。

    「うー……トオル、明日にしねえ?」
    「ごめんね。このビデオ明日返さなきゃいけないし、もうちょっとだから」

     少年、トオルはノートから目を離さず言い、バトルビデオを一時停止しテーブルに置いてあった分厚いポケモン図鑑の冊子を広げる。ポケモン図鑑といえば電子辞書サイズの端末が想像されることが多いが、一般的なのはこの紙の図鑑である。端末であるポケモン図鑑を手に出来るのは、ポケモン研究者に才能を見出だされデータ収集を依頼された、ごく一部のトレーナーだけなのだ。
     バトルビデオと図鑑を交互に眺め、トオルは手元のノートにペンを走らせる。
     ランはトオルに気付かれないよう、細く息を吐き出した。大きな耳が気持ち萎れ、尾はゆっくり揺れる。トオルは勤勉であるのはいいのだが、集中し過ぎて時の経過を忘れてしまうのが玉に傷だ。いつも彼に就寝を促すのは彼の両親の役目であるが、生憎、トオルの両親は出張で家を空けている。つまり今日この家にいるのは、トオルの他はランを含めたトオルの手持ち三匹だけ。そろそろ就寝したいが、熱心なトオルを見ていると邪魔をする気が引けるのだ。
     他の手持ちであるブラッキーのラキはラン達から少し離れたリビングの床に寝そべっており、ヨノワールのヨルは彼女にブラシをかけていた。口には出さないものの、ラン同様、トオルが作業を終えるまで今日は付き合うつもりらしい。
     こういう時、言葉が通じないというのは不便なものだとランは思う。
     人間は、ポケモンの言葉を理解出来ない。鳴き声や唸りにしか聞こえないのだ。ポケモンは人間の言葉を理解出来るし、ポケモン同士会話が出来る。一部の力量が高いエスパーやゴーストタイプのポケモンは、テレパシーで人間と意志疎通が可能らしいが、ここにはその存在は無い。だが、生活を共にするうちに何となくではあるが、トレーナーは自分のポケモンが何をいいたいのか、表情や仕草でうっすら分かるようになるものだ。
     夜の帳が降りた町は静かだ。バトルビデオが一時停止されている現在、部屋には時計の秒針が進む音と子気味良いブラシの音、そしてトオルの捲る本とペンの音。そろそろランも眠気に負けそうになってきた時、空を見上げていたラキが呟いた。

    「あ、流れ星」
    「え?どこ?」

     耳を跳ね上げたランはガラスの引き戸に駆け寄り、夜空を見上げる。ランはラキのルビーにも似た紅い視線の先を辿るが、天駆ける星は見あたらない。
     黄色の輪模様に黒く艶やかな毛並み、ラグビーボール状の耳と尾をしたラキは、イーブイ進化系に共通した愛らしい外見に似合わぬ冷めた目と口調で床に伏せる。

    「もう行っちゃったわよ」
    「そんなあ」

     眠気を吹き飛ばしたランは、引き戸の鍵を開け外に出た。多くの技を使いこなす種族柄か、ニドキングであるランは爪が三本であるにも関わらず、手先が非常に器用だ。
     ひやりとした夜気がリビングに流れ込み、身震いしたラキが立ち上がる。

    「やめなさいよ、寒いじゃない」
    「一回来たんだろ?もう一回位来るって」
    「何よその根拠の無い自信」

     何だかんだでもう一度流れ星を見たいのか、ラキも伸びをしてランの後に続く。ブラシを腹の割れ目に放り込んだヨルが、壁をすり抜けた後、開け放された引き戸をゆっくり閉めた。

    「うおおお……」

     三匹は夜空を見上げ、感嘆の声を上げる。
     濃紺のヴェールが空を覆い、砕いたダイヤモンドと真珠をばらまいたかのように瞬く、一面の星。ぽっかり浮かぶ金色の満月は明るい。
     此処はズイタウン。テンガン山の東側に位置する、自然と小さな牧場の町だ。人工の明かりの少ない地理と、シンオウ地方の凛と澄んだ空気がよりこの空を引き立てている。

    「これは……凄いですね」

     ヨルが呟いた。月光を浴び、体の各所にある輪模様が淡く発光し始めるラキと同じく、ヨルも頭部と両腕、腹部の顔に似た模様が明滅する。楕円形の弾力ある巨体に丸太のように太い両手、頭頂部にアンテナのある灰色の顔面には横にスリットが走り、朱い一つ目が闇夜に浮かぶ人魂の如く浮かぶヨルは、おどろおどろしいヨノワールでありながら物腰も雰囲気も穏やかだ。
     ヨルの隣でランは拳を撃ち合わせ、期待の眼差しで夜空を見上げる。

    「よし来い!いつでも来やがれ流れ星!」
    「りゅうせいぐんでも当たればいいのに」
    「来い!来い来い来い来い来い!」
    「アンタ聞いてんの?」

     ランは引っ掛かる筈のラキの言葉も聞かない。苦虫を噛み潰したように顔をしかめ、ラキは暫し間を開けた後に口を開いた。

    「……ねえ」
    「ん?」
    「もし、もしよ。これはあくまでも仮定の話だからね」

     絵に描いた餅、とらぬジグザグマの皮算用を強調してから、ラキはランを見やる。口は相変わらずへの字だ。

    「流れ星がもう一回来たら、アンタは何お願いするの?」

     自分の願いは教えたくないが、他のポケモンの願いは気になるものである。ついでに言えば、先程からランは星を妙に真剣に見上げていた。

    「ヒミツだ、ヒミツ」
    「教えなさいよ」
    「教えたらヒミツじゃないだろ」

     隠せば隠す程、興味はそそられる。周りをグルグル回るラキから、ランはひたすら目を反らす。

    「そういえば……」

     いたちごっこを続ける二匹を見たヨルは、明後日の方向を向き、人間で言えば顎に位置するであろう部位をさすりながらどことなく呟く。

    「流れ星が通った後、お願いを叫ぶとそれが叶」
    「図鑑サイズになりたああああああいッッ!」
    「スケールちっさ!」
    「ちょっとラン!」

     ラキが思わず叫び、ヨルが灰色の大きな手で慌てて二匹の口を塞ぐ。辺りを見回し、ラン達は揃って後ろを振り返る。
     変わらずトオルはノートと格闘しているようで、三匹は内心胸を撫で下ろした。
     ヨルはそれを見計らってから手を放す。

    「今は夜中ですよ、近所迷惑になったらどうするんですか」
    「だってヨル、お前が叫べって言うから」
    「いや、まさか本当に叫ぶなんて」
    「何してんのよこのおバカ」
    「うっせえ!」

     ヨルの呆れに、ラキの容赦ない追い打ち。しかしランの願いには、独身が持つ結婚への渇望にも似た切実さがあった。危機感を一蹴されたランは、自らの種族における身長の重要性を訴える。

    「いいか、お前らは百四十センチと百三十九.八センチの差なんて分かんねえだろうけどな!他のニドキングなんか、二メートルもあるんだぞ!」

     ポケモン研究の権威・オーキド博士がかつて発表したニドキングの平均身長は百四十センチ。だが最近ニドキングは種族自体に巨大化傾向があるらしく、トレーナーが育成した個体は勿論、野生個体ですら二メートルを越える。かつてセキチクシティにあったサファリパークで飼育されていたニドキングは、最大で六メートル近くあったという記録すら残っていた。
     それに対して、ランの身長は図鑑平均ギリギリの百三十九.八センチ、子供のトレーナーサイズである。ランは相当に小柄なのだ。

    「俺だってなあ、毎朝モーモーミルク一瓶飲んでんだぞ!」

     そして、本人(?)の努力にも関わらず、その二ミリは一向に埋まる気配が無い。

    「見てろよお前ら!」

     ランは拳を握り締め、高らかに宣言しようとする。

    「お前らは俺のことチビチビ言うけど、いつか俺はコガネのラジオ搭位でかくなってだなあ……」
    「いいんですか?そんな巨大化して」
    「何が」

     腕を組んだヨルが、ランに水を注す。スリット奥の朱い一つ目がランを見下ろした。

    「あなたがゴドラ対ウルガモスラとかアバゴメラみたいな大怪獣になりたいと願うのは別に止めませんが」
    「お前懐かしい映画引っ張って来るな」
    「人の話は聞きなさい」

     ヨルは元々ポケモンでも大柄な部類に入るヨノワールだ。ヨノワールという種族は壁をすり抜けることが出来、体格差が大して意味を持たない。従って、この部類の悩みを持つ者の心情が理解し難いのだ。

    「とにかくですね」

     ヨルは言葉を切った。

    「あなた、そんな大きくなったらトオルとお昼寝出来ませんよ」
    「よしやっぱ図鑑サイズだ!」

     ランの実に速い変わり身と同時に、ラキは一歩後退る。

    「昼寝って」
    「いいだろ!」
    「威張ってどうすんのよ!」

     ラキは深く嘆息した。ランは確かにニドキングだ。だが進化しても中身はニドラン並みの単純お気楽思考で、その自覚に大きく欠けていた。

    「アンタね、あのガキンチョを毒まみれにしたい訳?それとも尻尾で叩いてミンチにしたいの?」
    「そんなに寝相悪くねえよ」
    「カーペットは涎まみれですけどね」
    「…………」

     ランは閉口する。

    「……じゃあ、ブースターに寄りかかってる人間はどうなんだよ?あいつら体温九百度あるってトオルが言ってたぞ」
    「アンタね」

     ラキは言葉を濁すランを真顔で見上げた。

    「自分のビジュアル見て出直してきたら?」
    「…………」

     ラキはあっさり答え、心底つまらさそうに背を向ける。
     ランはぐうの音も出ず黙り込んだ。頭も語彙も貧相なランは、それでも何とか反論を捻り出そうとした。此処で手を出せば、敗北も同然なのである。
     ランは目の前のブラッキーの背中を睨みながら鋭い牙の揃った頑丈な顎で歯軋りし、電柱もマッチ棒のようにへし折る尾を空回りさせ、頭を抱えて考えて。

    「ヨル!何かコイツに言ってやってくれ!」

     パンクした。

    「そこまで勿体つけたら自分で反論しましょう!?」
    「俺にそんだけの頭あると思うか?」
    「失礼しました」

     ヨルとランが話す間に、ラキはリビングを振り返る。ノートを畳み、目を擦りながらテレビを消すトオルの姿が見えた。ポケモン達がリビングにいないことに気付いたトオルは、引き戸を開けラン達を呼ぶ。

    「ラン、ヨル、ラキ、お待たせ。寝よう」
    「今いくぜ、トオルー!」
    「分かりました」
    「はいはい」

     三匹は各々返事を返し、少年のいる自宅に戻る。トオルは自室に本を片付けに行った。


      [No.1190] わたしと けいやくして ヒロインに なってよ! 投稿者:紀成   投稿日:2011/05/15(Sun) 17:30:24     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    紀成はポケスト!の執筆者の一人である。もうじき処女作を投稿してから一年になるが、それは置いておこう。
    最初、これと言ったキャラはいなかった。思いついた話を投稿していき、しまいにはネタが尽きるくらいだった。だが、これで終わっては執筆者の名が廃る。
    今まで書いてきた小説の中から、キャラクターを引っ張りだしてくるのだ。芸能界で言う、契約のような物である。この子にはこのシナリオを、また別の子には別のシナリオを。
    そこでちょっと彼女達に話を聞いてみた。最初にかける台詞は勿論―

    紀成:わたしと けいやくして ヒロインに なってよ!
    ユエ:アンタさあ、私の最初ってポケダン小説のクレセリアの擬人化からだったんでしょ?中二病の末期よね、これ。おまけに最初の長編で拳銃で撃たれるし、マグマラシに最初の出番取られるし。

    紀成:わたしと けいやくして ヒロインに なってよ!
    ミドリ:元々私ってただのサブキャラだったんですよね。いつの間にか名前がついてました。
    それはそうと相棒の無い半年間が辛すぎて発狂しそうなんですが。
    紀成:ジャローダ、ミドリとめたげてよぉ!

    紀成:わたしと けいやくして ヒロインに なってよ!
    ミスミ:男運と出番よこせ。さもなくばダストダスに生ゴミ塗れにさせるわよ
    紀成:ほわぁぁぁぁ!やめさせてよぉ!

    紀成:わたしと けいやくして ヒロインに なってよ!
    ミコト:僕ってヒロインじゃないって、前自分で言ってたよね。あと脳内妄想でそれっぽい展開にさせるのやめてくれない?あと何でランクルスいんの
    ランクルスの じばく!(注:覚えません

    紀成:わたしと けいやくして ヒロインに なっ(
    ファントム:随分とチャットで変なこと話してくれるね。私シリアスキャラのはずなんだけど。あとたまにはゴーストタイプ以外も使いたい
    紀成:ちょww

    紀成:わたしと けいやくして ヒロインに(
    ヒナ:ちょっと跳んでみなさいよ。やっぱ持ってるじゃない
    ヒメ:今日の夕食代にはなりそうですね
    紀成:カツアゲするヒロインとか嫌だ

    何でこんなに女性キャラ多いんだろう… ついでだからマスターにも聞いてみるか。
    マスターマスターねえマスター!
    「…何だ」
    わたしと けいやくして ヒロインに なってよ!
    「だが断る」


    何だかんだ言って皆のコスチューム考えてる私はもう駄目かもしれない


    [皆も契約していいのよ]
    [チョロネコ娘さんと契約したいのよ]


      [No.1146] 紫陽花心 投稿者:紀成   投稿日:2011/05/05(Thu) 13:03:16     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    「ごめん、他に好きな人が出来たから!」
    吐き出した言葉は、私にとっては軽く、相手にとっては重くて痛い楔だったのかもしれない。

    「はあ!?また別れたの!?」
    混雑している食堂に、友人の声が響き渡った。皆が一斉にこちらを見る。
    「ちょっと、そんな声で言わなくてもいいじゃない」
    「だって…アンタ、まだ付き合って一週間も経ってないわよ」
    私はコホンと咳払いをした。
    「確かに、前の男の子は顔も体も、そして何より性格も良かったわ。彼氏にするには申し分ない人だった」
    「じゃあなんで」
    私はニッと笑った。
    「今度の人は、顔と体と性格に加えて、財力もあるの!どっかの社長の一人息子なんだって」
    「…はあー」
    友人がテーブルに突っ伏した。コーヒーが入った紙コップが揺れる。
    「アンタねえ、そんなポンポン彼氏変えて良いと思ってるの?自分が大学にいるほとんどの女から何て言われてるか分かってる?」
    「八方美人?」
    「微妙に合ってるけど、違う。チョロネコ被り、尻軽女。相当恨まれてるわよ」
    「だって男の子は皆私の味方をしてくれるもの。どうせ老けてヨボヨボのお婆ちゃんになっちゃうなら、若いうちにいっぱい遊んでいた方がいいじゃない!」
    「…」

    小学校、中学校、高校、そして大学。私の学校生活はほとんどが恋愛で埋め尽くされている。今までを振り返ってみても女友達より男友達の方が圧倒的に多い。今話していた子は、数少ない小学校からの友人だ。
    どんなに良い男がいても、それ以上に良い男がいれば、今付き合っていた人とは速攻でサヨナラ。私が別れ話を切り出しても、大抵の人は涙を流しながらも承諾してくれる。そして新しい人に告白すると、やれやれという顔をしながらも応えてくれる。
    今までで付き合った男の数は…ザッと五百人くらい?でもほとんどが一週間続いた試しが無い。何故かは分からないけど、小さい頃から私の周りは良い男が沢山いた。そして自分で言うのもアレだけど、私は美人だ。こればかりは譲らない。
    とにかく、チョロネコ被りと言われようが、尻軽女と言われようが、私はこのままモテ道を突っ走っていくだけ!

    大学と自宅は遠いため、私は近くの小さなマンションで一人暮らしをしている。家賃もそれほど高くない、女の一人暮らしには持ってこいの賃貸だ。
    私の部屋は三階。エレベーターはついていない。そこがキツイけど、あまり文句は言えない。教育費以外にお金をかけさせないことも、親孝行の一つだと思うのよね。
    いつも通りに分かれ道で彼氏と別れて、マンションへ向かって、階段を昇って、部屋のドアを…
    あれ?
    私は目を丸くした。茶とも黒とも言えないタイルが敷かれた地面に、青紫の花が積まれていた。メロンパンのような形に、同じ大きさの小花が沢山集まっている。
    紫陽花だ。
    「すごーい」
    私は思わず感嘆の声をあげていた。まだ五月とあって、紫陽花はあまり見ない。ここまで見事な物は、きっと今の時期は花屋にしか売っていないだろう。花って意外と高いんだよね…
    こんなサプライズで素敵な贈り物をしてくれる人は、一人しかいない。
    今日付き合い始めたばかりの彼氏だ。お金持ちと言うからには、こういうことをしそうだし。
    「明日お礼をしなくちゃね」
    生憎まだメアド交換はしていない。メールよりも直接言った方が相手も喜ぶだろう。私は花を抱えて部屋のドアを開けた。
    その姿を廊下の影から見つめる何かがいることも知らずに…


    次の日。大学へ来た私は、真っ先に彼の所属する文学部へ向かった。彼は部屋の片隅で本を読んでいた。『豊縁昔語』…よく分からない。自慢じゃないけど勉強は大嫌いだ。本も読む気がしない。
    「おっはよー」
    私が覗き込むと、彼はかけていた黒縁眼鏡を外した。
    「おはよう」
    「ね、昨日のアレってサプライズプレゼントだよね!?」
    「…はぁ?」
    「あんな大きな紫陽花、高かったでしょ?ありがとー!」
    「…何を言ってるんだ」
    「え?」
    …話がかみ合わない。私は昨日のことを話した。
    「知らないよ。僕じゃない」
    「えー、貴方じゃなかったら誰がするの」
    「他の男じゃないのか。君、過去に何人も付き合ってるんだろ」
    ムッとした。何となくトゲのある言い方だ。
    「知らないもん。もう前に付き合ってた人とは関係ないもん」
    「どちらにしろ、君が尻軽だということは噂に聞いていた。試しに付き合ってみたんだが…昔のことを引っ張る女はごめんだ。厄介事は嫌いだからね」
    「ちょ、どういう意味」
    「さよなら。やっぱり僕には恋愛なんて向いてなかったみたいだ」
    それだけ言うと、彼は本を棚に戻して部屋を出て行った。呆然とする私をあざ笑うかのように、始業のチャイムが鳴り響いた。

    「へー…アンタが振られた」
    昼休み、私は昨日の友人と一緒にキャンバスでお昼を食べていた。昨日と今朝の出来事を話すと、友人はしばらくの沈黙の後、この言葉を吐き出した。
    「意外や意外。男運も尽きたんじゃない?あら、頭からタマゲタケが生えてるわよ。…いや、モロバレルかしら」
    「うるさいっ」
    でも本当に生えているような気がする。久々に落ち込む。相手に振られるのは初めての経験だ。こっちから振ることは数え切れないくらいあったけど。
    「酷くない?あんな言い方」
    「でも、その紫陽花を贈ったのは彼じゃなかったんでしょ。嫌がらせじゃないの」
    「今まで何も無かったのに」
    「ある日突然…ってことも考えられるわ。人の心理って、銀河の誕生並みに奥が深いのよ。
    …あら、これ美味しい」
    その時、私達の頭上に細長い影が一つ。見上げると、男が立っていた。知らない男だ。
    「振られたんだってね」
    「何よ、文句あるの」
    「あんなインテリ止めておきなよ。女心をちっとも分かってない」
    二人掛けのベンチにどっかりと座る。狭い。顔は良い方だ。
    「僕なら君を満足してあげられると思うんだけどな」
    「…」
    もうこの際どうでも良かった。前の男のことは早く忘れたい。
    「付き合ってあげてもいいわよ」
    「本当かい!?」
    「ちょっと、また変えるの?」
    友人が焦ってるけど、知らない。こんなモヤモヤした気持ちは早く消したかった。
    「男なんて腐るほどいるんだもの。たった一人の男と付き合うなんて、バカバカしくって」
    そう。私は八歩美人で尻軽でチョロネコ被り。悪いかしら?

    ムシャクシャした気分で部屋に戻った私を待っていたのは、また紫陽花だった。ただし今度は状態が悪い。ピンク色で、水をあまりやっていないのか保存状態が悪い。かなり萎れている。
    「…何よ」
    紫陽花が私を笑っているような気がして、私は花を踏み潰した。そして携帯を取り出して三つの番号を押す。
    「もしもし、ストーカー被害に遭ってるの。犯人を捕まえてくれないかしら」

    数分後、パトカーに乗って来た警官二人はすぐに私に話を聞いてきた。話が広がることを恐れて、私は彼氏をとっかえひっかえしているという話はしなかった。一部を隠した話を聞いた彼らは、パトカーの中から網を持って来た。これで犯人を待ち伏せして、捕まえるという。警察のストーカー事件に対する姿勢が良く分かった。
    とりあえず私は部屋に入った。特に荒らされた形跡は無い。ただ精神攻撃をするのが目的なんだろうか。考えてても仕方無いので、いつもの通り食事を取って、風呂に入って、表にいる警官二人にカイロを渡して(結構夜は冷えるから)布団に入った。
    数時間後。
    部屋にある電話が鳴った。眼を擦って出る。相手は表で見張っていた警官の一人だった。
    犯人らしき影が大量の紫陽花を持って現れ、それに網を被せた。確かに感触はあった。
    だが懐中電灯で照らしてみると、そこには誰もいなかった。ピンク色の紫陽花だけが萎れた状態で転がっていた―
    彼の報告は、実にシンプルだった。


    「マスター、お酒頂戴」
    「生憎カフェにはお酒は無いわよ。っていうか貴方未成年でしょ」
    もう大学なんて行く気にならなくて、今日はサボった。ギアステーション前にあるカフェ『GEK1994』でコーヒーをヤケ飲み。トイレに行きたくなるかもしれないけど、この際どうでも良い。
    「だって飲まないとやってらんない」
    「おじさんみたいなこと言うのね。華のキャンパスライフはどうしたの」
    「ストーカーに壊された。もうマジ最悪」
    チョロネコを被っている余裕なんて無い。泣きたいけど泣けない。何だか情けない気がする。
    マスターがレコードを変えた。
    「失恋でショックを受けてる貴方に。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲、オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』より。『ドラベッラのアリア』」
    甲高い女性の声が溢れ出す。横文字音楽は全く分からない。ここのマスターは知性と美に溢れている。
    「で、どうしたの。何かただ事じゃない雰囲気だけど」
    「聞いてくれるの」
    「まあ、一応ね。私が解決できるかどうかは分からないけど」
    マスターが床で寝ていたマグマラシを抱き上げた。ここの看板息子で、マスターの相棒だ。
    「実は…」

    たっぷり十分。されども十分。マスターは私の話を聞いていた。時折質問されることはあっても、それでも頷くだけで何か考えているようだ。
    「…ってわけなの」
    「紫陽花か。私は向日葵の方が好きだな」
    「あの、話聞いてる?」
    「うん。大体分かった」
    マスターが立ち上がった。カウンターに戻る。
    「紫陽花って、見て分かる通り二色あるの。青紫と、ピンクね。どうやって色を変えるか知ってる?」
    「ううん」
    「土の性質から。アルカリ性か酸性かでね。アルカリなら青、酸ならピンクに変わるわ。その不思議な性質から、紫陽花は移り気な人に喩えられることが多いの。つまり、浮かれ女である人に喩えて、犯人は紫陽花を毎日運んでたのね。
    こう言っちゃ何だけど…思い当たること、あるんじゃない?」
    他に聞こえないようにそっと、でもハッキリした声に私はハッとした。責められてる気はしない。なんていうか…諭されてる?
    「犯人分かる?」
    「その前にちょっと付き合って欲しい所があるのよね。丁度GWだし。
    貴方もどう?植物園」
    「えっ?」


    次の日。私は指定されたギアステーションにいた。『植物園に行けば、ほとんど分かったも同然』と言われて同行する気になったんだけど…
    「お待たせ。さ、行きましょうか」
    相変わらずマスターはスタイルがいい。足も長いし、何より胸がある。男達が彼女をチラチラ見ていくのが傍観者である私には良く分かった。
    「あの、本当に分かるの」
    「この近郊にある植物園は、ここだけよね」
    …聞いていない。不安な気持ちを抱えながらも、彼女の真剣な瞳に任せることにした。

    ギアステーションから約二十分。電車は山に面した駅に着いた。地図を片手に植物園に向かう。長い休みの最終日とあって、駅前は家族やカップルで混雑していた。
    「直通のバスが出てる。こっち」
    「あ、はい」

    バスに揺られて更に三十分。ガラス張りの巨大な植物園に私達は辿りついた。他地方の珍しい木の実や、中には草タイプのポケモンが放し飼いにされている場所もあった。
    「おお、ルンパッパ!こういうテンション高いポケモン、嫌いじゃないわ」
    「ミツキがダーテングと友達になったって言ってたわね」
    「ロズレイドかー…草タイプオンリーなら一匹欲しいかな」
    「トロピウスの首の木の実、一度食べてみたいわ」
    私が側にいることをすっかり忘れて楽しんでいるマスター。何となく友人の気持ちが分かった気がした。
    「何しに来たんですか」
    「あ、ごめんごめん。えっと、紫陽花は何処にあるのかしら」
    「何でここに来てまで紫陽花なんですか」
    「キーだからよ。木の実じゃないわよ。鍵」

    紫陽花は見事に咲いていた。青もピンクも両方。まだ五月なのに…
    「六月の気候に合わせてるのね。…枝が折られた形跡は無し」
    「どういうことですか」
    「これでいいのよ。さ、戻るわよ」
    「え?」
    訳が分からないまま、私はマスターに手を引かれて植物園を出た。

    「…ここは」
    ライモンに戻って来て、再び歩くこと五分。私は自分の通う大学近くの花屋の目の前にいた。
    「すみませーん」
    マスターが入る。私も後を追う。
    「はい」
    若い男が出てきた。茶色いエプロンと、花束を作っていたのだろうか、赤いリボンを片手に持っている。
    「ここに紫陽花ってありますか?」
    「紫陽花、ですか。ええ。三日前に入荷したばかりですよ」
    「なるほどねえ…。あら、どうしたの」
    私は目の前の男の顔から目が離せなくなっていた。何処かで見たことがあると思ったら…
    「君は…」
    「…」

    この人、うちの大学の生徒だ。しかも私と付き合ったことがある。ごく最近。

    「元彼ね。これで全て繋がったわ」
    「あの、何か」
    「もう一つ。貴方、エスパータイプ持ってない?テレポート使える子」
    「ああ、それなら。おーい、ディー!お客さんだぞー」
    男が向こうの部屋に向かって呼びかけた。と、いきなり男の隣に現れる影。
    「え」
    「…流石に予想外」
    マスターも驚いていた。
    「俺の手持ちでエスパー、しかもテレポートを使えるのは、このフーディンだけです」

    そこにいたのは、赤いリボンをつけたスプーンを持った、フーディンだった。いやに睫が長いことから、♀だろう。無駄に可愛い…気がする。
    「てっきりキルリアとかサーナイトかと思ってた」
    「コイツはカントー時代からの相棒なんです」
    フーディンの視線は私に向いていた。睨まれている…というより、ものすごい悪意を感じる。今にもカゲボウズが集まってきそうだ。
    「ディーがどうかしたんですか」
    「…この子、貴方のこと大好きみたいね」
    「え?」
    マスターが腕を組んだ。

    「だって、振られたご主人を思って、その振った相手の部屋の前に紫陽花をバラ撒くくらいだもの」

    マスターの言葉に、フーディンが下を向いた。
    「さて―」

    「ます、私が考えたのは何故バラ撒く花が紫陽花でなくてはいけなかったのかってことよ。別に花で無くてもいいじゃない。単純に恨んでいたのなら、それこそヤブクロンとかダストダスとかをどーんと」
    マスター、今その二匹のトレーナーを全員敵に回したと思う。
    「でもあえて花、しかも紫陽花をチョイスした。紫陽花は変わり身の象徴。これを知らなきゃ、わざわざ男と別れたその日に前日とは違う色の紫陽花をバラ撒いたりしないわよ。
    で、もう一つは警官ね。網を被せて、確かに感触はあったはずなのに、影も形も無かった。これはテレポートを使ったのよ。相手に恐怖心を与えるために、紫陽花は置いて行ったけどね。
    で、この推理が確定するにはある事が必要だった」
    「…?」
    「この近くの花屋はここだけ。駅前にもあるけど、まだ紫陽花は入荷してないわ。私昨日帰りに見てきたから。で、近郊で紫陽花がある場所は今朝行った植物園のみ。でもそこの紫陽花は見事に咲いてたけど、変に切られたりしてなかった。だから、ここかなー…って思ったの。お金さえ入れておけば、別に花を盗んだことにはならないものね。Quod Erat Demonstrandum。略してQ.E.D」
    その場にいた私達(フーディンも含む)全員が呆然としていた。マスターが私に向かって言った。
    「フーディンは振られたご主人を気の毒に思って、変わり身の早い貴方を戒めていたのね。全く、いつの時代も女の嫉妬は怖いわねぇ…
    あら、♀ポケモンでもそうなるのかしら」

    私は絶句していた。ポケモンが主人のためにまさかこんなことをするなんて。いや、それ以前にマスターの頭はどうなっているんだろう。
    「あの」
    「ごめん」
    私が何か言う前に、男が頭を下げた。フーディンが驚いて主人を見る。
    「うちのディーが変なことして」
    「え、あの、えっと…」
    私は声を振り絞った。
    「謝るのは私よ。私、やっと周りの人達の気持ちが分かった気がする。恋愛は楽しいことだけじゃない。振られた方は、すごく悲しいんだって…
    やっと分かった…と、思う」
    まだ十分ではない。でも、確かにその時私は、何か成長したと思う。多分。


    「恋、か」
    お客が少ない時間帯のカフェ。カウンターを拭いていたユエは、ふと呟いた。
    「高校の時は色々忙しくてそんな浮かれた事なんてしなかったな」
    「おや、意外ですね」
    目の前でコーヒーを飲んでいたカクライが言った。
    「ちなみに、どのようなことを?」
    「剣道部、あと晴明学園との抗争とか。いや、そんな昔の漫画みたいな感じじゃないよ。
    ただ…本当に色々あったなあ」
    「Ms,ユエの周りは退屈という言葉など、存在していないような気がしますよ」
    その言葉に少し取っ掛かりを感じながらも、ユエはいつも通りの業務に励むのだった。


    ――――――――――――
    久々に長い物を書いた気がする。以上。


      [No.1103] ■投票はじまりました 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/27(Mon) 20:55:33     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    http://masapoke.sakura.ne.jp/pokemonstory-contest.html

    皆様、大変お待たせ致しました。
    ポケモンストーリーコンテスト、投票がはじまりました。
    投票の方法をよく読んで、投票をお願い致します。

    期限は1月14日までです。
    でも集計大変だから早いとありがたいよ(笑)。

    感想に関しては審査員がいるのであまり無理はなさらないでくださいネ。
    一言とかでもいいですよ。


    今ちょっとずつ感想、批評を書いているところです。
    ☆は振り終わりました。

    ☆   ……12作品(自作品含む)
    ☆☆  ……6作品
    ☆☆☆ ……4作品

    と言ったところです。
    調整するかもしれないけれど。

    総評に書きましたが、全体レベルは非常に高いと個人的には思っております。
    参加点☆のみの作品が結構ありますが、別に0点とかそういうわけじゃないです。
    高評価を出したい作品がいくつかありましたので、差別化の意味で3段階に振り分けております。
    相対評価という風に解釈いただければと思います。
    また評価にあたっては、お題「足跡」の解釈、料理の仕方を重視しておりますので、純粋に作品のおもしろさ・出来ということであれば多少順位が変わるかもしれません。



    というのはあくまで私の個人のつけかたなので、
    皆さんがどうするかはおまかせします。
    参考になれば。


      [No.1060] ひと息ついて 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/12/24(Fri) 04:19:35     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     瞼の向こうに、朝の日差しを感じた。

     もう朝か、と女性は思った。
     布団の中が暖かい。
     もう少し寝ていたい。
     女性が寝返りを打とうとして、腕の中にポケモンがいることに気付く。
     またゾロアか、チラチーノあたりが布団に入り込んだのか、と思う。
     それにしては、何だか平べっちゃくて……

     何だか細いものを掴んだ。

    「ぷぎゅぇっ!?」と腕の中の物体が声を上げた。慌てて女性は掴んだ手を離して、起き上がった。

    「あら!? ちょっと、お姉さん起きはったで!」
     彼女の姿を見た知らないおばさんが、嬉しそうに声を上げ、周囲に伝える。
     体の上には見覚えの無い毛布と、ヒノアラシ。
     さっき彼女が鼻先を掴んでしまったのだろう。ヒノアラシは頬を膨らませて怒っている。

    「悪かった、謝るよ」

     ヒノアラシを膝から下ろし、自力で立ち上がると、女性警官は周囲の状況を確認した。

     付近に、風神、雷神と思われるポケモンの影はない。
     さっきまでのバトルが夢のようだった。
     観光客と覚しき賑やかな一団が、毛布やモーモーミルクを配給している。
     雷神と戦う前はトロピウスの背に乗せられて、具合悪そうにしていた少年は、今は毛布を重ねた地面の上に寝かされていて、その周りに人だかりができている。顔色が随分良くなっていた。
     遠くには平和そのものといった顔で巨体を揺らす、マダツボミの姿。
     ぬかるんだ地面と、ところどころで倒れている木があることを除けば、あの大嵐の爪痕など見るべくもない。


     晴れていた。


     空は青く、風神雷神が呼んだはずの、重たげな黒雲は取り払われ、薄い白い雲が少し残っているだけ。
     いつの間にやって来たのか、誰かのポワルンが赤く小さな太陽の姿で飛んでいる。

     とにかく、バトルは終わったのだ。

     彼女は毛布を綺麗に畳み、その上にヒノアラシを置いておばさんに託し、それから近くで彼女を見守っていた三匹のポケモンに労いの言葉をかけた。
     そして、雨に濡れて重くなったコートを脱いで相棒のゾロアークに持たせた。
     ゾロアークは心配そうに顔を覗きこんでくる。
    「大丈夫だよ」
     バチュルをいつも通り肩に乗せると、彼女はそう言って笑った。
     少し麻痺の残る体をおして、人だかりの方へ歩き出す。


     仮にこさえられた木製の物干し場に、誰かの上下服がはためいていた。
     その下では、ヒトカゲが安らかな寝息を立てている。おそらく、毛布の上で眠っている少年の服だろう。
     彼女は人の群れから離れてた位置で休んでいる、自身の手持ちの三匹を見つけ、そちらに近寄った。

     三匹は配給されたらしいきのみを食べ終え、体力を回復させたところだった。
     彼女らのうちの一匹、ドレディアだけが物欲しそうに、次のきのみをねだった。
     体力は十分なのに。彼女は手渡されたきのみをドレディアの手から奪った。

    「ナン、体力が回復したのにねだるな、はしたない。……すいません」
     そう言って元の持ち主にきのみを返すと、持ち主の女性はいいえと微笑んで、彼女の手にきのみを押し付けた。
    「まだたくさんありますから、遠慮しないでください」
     そう言う彼女の瞼は閉じられている。どうやら目が見えないらしい。
    「じゃあ、……ありがとうございます」
     好意に甘えてドレディアにきのみを渡し、お礼を言うように促すと、ナンは他の二匹から離れた位置に移動し、きのみを持ったまま踊り始めた。

     彼女の目は見えないのに、と思ったが口には出さなかった。
     横を見ると、紅い髪に白いワンピースの彼女は、踊り出したドレディアの方を向いて穏やかに笑っていた。
     視覚以外の感覚が優れているのかもしれない、と思ったが、野暮だと感じて口には出さなかった。

     歩いて二匹のポケモン、コジョンドとチラチーノの間まで行き、そこに腰を降ろした。
     きのみをもらった二匹はすっかり元気になっていた。
     どうやら今回のバトルでは自分が一番ダメージを負ったらしい、と思い苦笑する。
     眠たげに瞼を落としてボールをつついて来たコジョンドをボールに入れ、チラチーノを膝の上に乗せて、暫くの間、ナンの舞を見ていた。

     彼女の近くに、紫の猫又が駆けてきて、続いて橙の火竜が飛んできた。
     おそらく、誰かを暖めたりする手伝いをしていたのだろう。二匹のポケモンに、彼女は労いの言葉をかけていた。

    「そのエーフィ」
     彼女は猫又の背を撫でる手を止めて、女性警官の方を見る。
    「えっと……世話になったよ。ありがとう」
     アーケオスだけでは土砂崩れを防げなかっただろう。
     それから、彼女のミスでバトルの場から弾き飛ばされた後、エーフィはその場に残ってサポートをしてくれたに違いない。
     雨の中を走り回ったであろう猫又の体は、まだ少し泥で汚れている。

     ふと、大事なことを思い出す。
    「風神と雷神はどうなった……?」
    「どっちも“ひんし”状態ですよ。風神の方はまだ近くに転がってるはずです」
     答えたのは盲目の彼女ではなく、最初にここに着いた時に目にしたレンジャー二人のうち、アブソルとウツボットとトロピウスを連れた若い方のレンジャーだった。
     彼はレンジャーたちの装備なのであろう、小型の通信機を取り出しながら、
    「俺は遭難者の保護に必死でした。皆さんのお陰ですよ」と言った。その皆さんの内のひとり、先輩レンジャーがドンカラスに掴まって、額に包帯を巻いた状態で姿を見せた。
    「こっちは問題ない。二次災害の心配なしだ」
    「こっちも見回り終わりました。大丈夫みたいですね。帰り道も確保されてます」
     嵐の爪痕を見回り、無事を確認した二人のレンジャーは、嵐の後の詳しい地理情報をレンジャー本部に伝えている。
    「あと、嵐の原因となったポケモンですが、彼が懲らしめました」と少年レンジャーがおどけた調子で付け加えると、
    「俺だけじゃ無理でした。他の人たちとポケモンの協力あってのものですよ」と先輩レンジャーが訂正する。
     その“他の人たち”の内、彼女と少しの間共闘した、あの青年はここに姿を見せていない。
     通信を終えた二人は、女性警官と盲目の彼女の方を向き、
    「さて、あのポケモンたち、どうしましょうか」
     どちらともなく、そう言った。

     中々結論は出なかった。
    「警察の方ですよね。逮捕とか出来ません?」
    「野生のポケモンを逮捕する法体系はない」
    「ですよねー」
     いつ自分の身分がバレたのだろう。仮にも休職中の身であるから、こんな所に出歩いていることがバレたら不味いことになる。
    「それより、レンジャーたちの方でどうにか出来ないのか? 保護するとか」
    「どうでしょう。伝説に出てくるポケモンを保護したなんて前例、聞きませんし……」
    「あの……」
     今まで黙っていた紅い髪の女性が、声を出した。
    「ゲットする、……というのはどうでしょう? 皆さん程のレベルなら、彼らも認めると思うんですが」
     今まで話を続けていた三人が黙った。
     ゲットする。トレーナーとしてこんなに基本的なことを、どうして思い付かなかったのだろう。
    「私は遠慮するよ」
     他の三人の顔がこちらを向いて、何か言う前に女性警官はそう言った。
    「自分を殺す気で技を出してきた奴を手持ちに入れる程、心が広くないんでね」
    「そういえば、体の具合、大丈夫なんですか?」
     心配そうに声をかけたレンジャーの額には、中央が赤く染まった白い包帯が巻かれている。
    「そちらこそ、怪我は? 私が未熟なせいで、迷惑をかけた」
     申し訳ない思いでそう口にした彼女に、
    「いやあ、元気、元気。ピンピンしてますよ!」
     とレンジャーは快活に笑って答えた。その隣でドンカラスが血気盛んな風で、大きな声で鳴いた。
    「どちらにしろ、あの青年の意見も聞かないと決められませんね」
     若いレンジャーがそう口にした。

     ずっと踊り続けていたドレディアが、気が済んだらしく、一礼した後、身を翻して森の中へ飛び込んでいった。
     入れ替わりに件の青年が、リュックを背負った状態で姿を現した。
     簡単な挨拶を交わし、今回の事の次第に言葉少なに触れて厚い謝辞を述べた後、青年は先に抜ける意を伝えた。
     その彼に、レンジャーの二人が、先程までの議題であった風神雷神の処遇について問いかける。
    「どう思う?」と尋ねた彼女に、彼は苦笑しながら、
    「どう思うと言われても、ヘマした俺には発言権無いですよ。耳と尻尾はあなたのものです」
     そう軽い口調で答え、「ただ」と付け足した。

    「俺の故郷にはこんな言葉があります。
     『天から下ろされたものに、役目の無いものは何一つ無い』、と。
     ……少なくとも俺自身は、ガキの頃からそう言い聞かされて育ちましたし、それが間違ってると思った事もありません」

     そう言い残して、彼は体の向きを変え、頭を下げた。
    「後の事は宜しくお願いします。縁が会ったら、またお会いしましょう」
     そう言って、彼は足早にその場を去って行く。
     青年の背中を見送ったその後は、またさっきの議題に逆戻りした。

    「どうします? やっぱりゲットしますか。耳と尻尾はあなたのものだそうですよ」
    「耳と尻尾だけゲットしてもなあ」
     そう言ってから考え込んだ彼女に、
    「でも、雷神を打ち破ったのはあなたなわけだから」
     そう意見が述べられた。

     彼女は少し考えて、結論を出した。ゾロアークからリザードンの尻尾の炎で乾かしたコートを受け取り、膝の上のチラチーノをボールに戻すと、その場に残った三人に向けて、こう告げた。
    「風神の処遇はあなた方に任せる。……片を付けたのはあなた方なわけだし……。私は、雷神の方の始末を付けるよ」
     了解しました、と答えたレンジャーたちを残して、彼女はアーケオスに乗ろうとした。

     その時。

    「あのポケモン……」
     一番早く気付いたのは、目の見えない彼女だった。
     彼女が示すその先には、青と黒の小さな獣人、リオル。
    「あの子、彼のポケモンですよね」
     女性警官は静かに頷いた。青年と共同戦線を張った時にもいた、あのリオルだ。
    「確か、ラックル、だったか」
     現場を心配して戻って来たのか、しかしトレーナーである青年の姿は見えない。

     リオルは自分を見つめる四人に、大丈夫だと言う風に頷いて見せて、今は助太刀に来た人々に囲まれている少年の方へ視線を向けた。
     ふと、バトル中、ラックルが少年のヒトカゲと懇意にしていたことを思い出す。

     彼女の考えに、紅い髪の女性も気付いたようで、
    「彼らと一緒に行くことを選んだのかもしれませんね」
     そう呟いた。その後ろでリザードンと、そして何故かドンカラスが勇ましく鳴いた。未来の好敵手を思っているのかもしれない。
     ラックルを迎え入れるかどうかは、少年たち次第だが、仮に断られてもあの青年のリオルなら問題あるまい。
     そう判断した彼女は、待っていた原色の始祖鳥の背に腰を落ち着かせ、森の中へ駆けて行った。


     辿り着いたのは、もう二度とごめんだと思っていた場所。
     森が拓かれた、天然のバトルフィールド。例の雷神の目の前だ。
     ドレディアのナンは先に来ていて、待ちくたびれたように彼女を見上げた。

     彼女はアーケオスから降り、相棒のゾロアークが付いて来ていることを確認すると、バトルフィールドの中央にある、不自然な白い糸の塊に近付いた。
     中にいるであろう雷神は、今は静かにしていた。
    「ベー」
     静かにバチュルの名を呼ぶと、肩に乗った黄色蜘蛛は、心得たとばかり彼女から飛び降りて、雷神を包む糸を切り始めた。
     大方切り終わると、雷神は自分で糸を払って這い出してきた。
     その目にさっきのバトルで見せた覇気はない。バチュルの糸に電気を吸われたらしく、フラフラしている。
     雷神はどうにでもせい、と言わんばかりに、残った力と生意気さでもって彼女を睨めつけた。

    「ナン」
     花人の手から体力回復のきのみを受け取ると、それを雷神の方に差し出した。
     驚いた表情で、きのみを断った雷神に向けて、彼女はこう言った。

    「さっき言われた。……どんな生命にも役割があるらしい。お前たちにも、役目があるんだろう。……私には分からないが。
     ただ、少なくともそれは、ところ構わず暴風雨をまき散らして、民家や畑を壊すことじゃない。人を遭難させるなんて、論外だ。
     そんなことをしたら、私はもう一度お前たちを倒しに行く」

     そして、雷神にきのみを押し付けて、こう付け加えた。

    「それ以外は、勝手にしろ」

     きのみを齧りながら、雷神は彼女を不思議そうに眺めていた。
    「個人的に恨みがあったが、それももうどうでもよくなった」
     と正直に答える。相棒の母親の問題はまだ彼女の心に深く根をはっていたが、それとこの雷神とは、最早無関係な別問題だ。

    「……何か言うことはないか、スー」
     水を向けた相棒は、ゆっくり頭を振って彼女に寄り添った。
     相棒のたてがみを撫でる、その目の前で、雷神が離陸した。

    「お別れだ。もう会うこともない」
     彼女は静かに呟く。
     その声が聞こえたのか、雷神は力強く頷いてから、遠くへ飛び去って行った。

     もう、すっかり日は落ちている。

    「とりあえず……地均しであの大穴を直して、……それから、お礼を言いに行くか。ひとりで息巻いて来たが、随分助けられたよ」
     そう言うと、夜目にも鮮やかな原色の始祖鳥の背に乗って、彼女は元来た道をゆっくり戻り始めた。




    【風神のほうは任せたのよ】
    【あともうひと息っぽいのよ】

     とりあえず雷神は厳重注意の後、釈放となりました。
     クーウィさんとこの青年と、Cocoさんちのレンジャーさんと、てこさんちのレンジャーと、海星さんとこの女性をお借りしました。
     サトチさんとこのツボちゃんと、お人好しそうなおばちゃんも。
     今回会話シーン多いですが、【変なところあったら指摘して欲しいのよ】

     クーウィさん、てこさん、風神討伐お疲れ様でした! この指とまれと補助技を最大限利用する戦いも、相手の風を利用してこちらの攻撃を強化する戦いも、読んでいて非常に心踊るものでした。
     そして海星さん、女性からきのみを大量に頂きました。ナンがあんなんですいません。
     サトチさんからは毛布とヒノアラシを、ありがとうございます。
     まさに「ひとりで息巻いてやって来て、たくさんの人に助けられた」状態。
     そんな迷惑千万な彼女も、そろそろ退場です。地均しぐらいはするかもしれませんが。
     そうだ!みんなでキャンプファイアーすればいいよ(謎

     というわけで、
     きとかげ は 逃げ出した! ▼

    12.25 微修正
    バチュルはあげません。


      [No.1018] ―fascinate 投稿者:海星   投稿日:2010/12/07(Tue) 22:46:45     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     もうどうにでもなれ、と思った。
     それくらい、ステージは滅茶苦茶だったから。
     広い会場の壁のあちこちに大きな切り傷が刻まれているのは、シュンがかまいたちを放ちまくった証拠。
     磨き上げられた床が安いスケートリンクみたいにガチガチに凍っているのは、ルナがれいとうビームをぶちまけた結果。
     審査員の溜息が聞こえる。
     会場は不満げにざわめいている。
     司会は顔を強張らせて一言も喋らない。

     ――こんなの、美しくない。私が求めてるのはこんな演技じゃない。

     困った様子でシュンとルナが振り返ってきた。
     仕方ない、今回も退場のブザーを待つしか道はなさそうだ。



     
     トップコーディネーター。
     私は、旅立つときには既にそれを夢としていた。
     小さなキモリをシュンと名付け、隣に連れて、コンテストの開催を耳にしてはすっ飛んで行く。
     その繰り返し。
     いつしか仲間も増え、一次審査を突破できるようになり、そしていくつかのリボンを手にし―――。
     一体いつからだろう。
     ぱったりと良い演技ができなくなったのは。
     これがいわゆる「スランプ」というやつなのだ、と納得するまでに時間が必要だった。
     仲間と心が通じ合えていないのを痛いほどに感じることが何度もあった。
     それを認めたくなくて、でも絶対的な現実が私を押し潰していって。
     以前では有り得ない量の練習をスケジュールに詰め込み、無理してまで連続してコンテストに出場した。
     それでも、一次審査さえまともにアピールできなくて……。
     私は自分の笑顔が無くなってしまっているのに気が付かなかった。
     そして、それをパートナー達が心配しているのにも。
     どんどん無理なパフォーマンスを求めてしまっているのにも。

     ……そうだ――そういえば、今思えば、切っ掛けはあのときかもしれない。
     リオンを新しく仲間にしたとき。
     彼女は出会ったときから自分の殻に閉じこもりがちだった。
     私はそれを、ただ恥ずかしがり屋なだけだと思っていたが、実はそれだけでは無かった。
     しかし、そのとき私はそれに気付いてあげられなかった。
     どんどんリオンは閉じこもり、ついには顔を見ることの方が少なくなって。
     理由がわからない――いくつかのリボンを手にしていた私には多少なりともプライドがあり、リオンが心を開いてくれないことでそれはじわじわと引き裂かれていく。
     コーディネーターとしての自信が欠けていき、演技にも焦りが滲み出てしまうようになった。
     そうだ、それだ。
     次第に私はリオンに触れる事が怖くなっていった。
     私のことを拒絶されそうで。
     私のステージを否定されそうで。
     一番責めていたのは私だったのに――リオンを苦しめていたのは、紛れもない私自身だったのに。
     その海のように澄んだ蒼の殻を、蔑むように見たのは私だったというのに。
     気が付いたら、ご飯を与える際にしかボールから出さなくなっていた。
     リオンはずっと、何も言わずに大人しくボールの中にいた。
     そのまま時は過ぎる……。
     手放そうか、とも考えた。
     そうすれば私は元に戻れると思ったのだ。
     完全に、スランプをリオンに押し付けて。
     そんなときだった。
     ひとりの少年が私にポケモン交換を申し込んできたのは。
     俺、みずタイプのカッコいいポケモンが欲しいんだ。と彼は言った。
     私は即座にリオンの名を口にした。
     それを申し訳ないとも思わずに。
     彼は喜んでそれを受け入れると、早速ポケモンセンターに駆け出し、私を手招きして呼ぶ。
     私は――私は、解き放たれる思いだった――。
     すぐに自動ドアに駆け込み、ラッキー達が忙しく働く奥にある、大きな転送機械の片方の窪みにリオンのモンスターボールを乗せた。
     一度も言葉をかけないで。
     少年は一度ボールからケムッソを出して何やら言っていたが。
     数分後には、私の手元にはリオンはいない。
     代わりにこちらを見つめてきたのは、殻を持たない、大きな毛虫ポケモンだった。
     進化したら、美しい蝶か怪しい蛾になるという。
     どちらにしてもコンテスト向きだ……ぼうっとした頭で思った。
     少年が早速ボールからリオンを出そうとする。
     私はちらりとそれを確認すると、逃げるように走ってポケモンセンターを後にした。
     リオンが私のポケモンだったということは無かったことにしよう。
     これからは、ケムッソ。
     ケムッソが私のポケモン。
     ケムッソがリオンの代わり。
     リオン――リオン!
     結局、普段あまり運動をしない私の体力はすぐに尽き、近くの茂みに座り込む。
     呼吸を整えようとして、深呼吸を繰り返す。
     不意にリオンとの思い出が私の頭に流れ出した。
     違う!
     リオンはケムッソ。
     ケムッソなの!
     両手で頭を抱えて思い込もうとする。
     そこに、ドタドタと騒がしい足音が聞こえてきた。
     茂みから顔を覗かせたのは、さっきの少年だった。
     「おい! 言ってたポケモンじゃないじゃないか! 俺のポケモン返してよ!」
     少年がモンスターボールを突き出してくる。
     つい、私が勢いのまま受け取ると、少年は私が抱えていたケムッソを乱暴に引っ張り、ケムッソのボールを探し当て、引っ手繰って、行ってしまった。
     「え、ちょっと!」
     叫んでも届かない。
     恐怖が帰ってきた――しかし、少年が言っていたことはどういうことだろう?
     私は彼に確かに「パールル」と告げたのに。
     恐る恐る、私はボールを開いた。
     そして出てきたのは。




     今、私はステージに乗っている。
     二次審査、それもファイナル、決勝戦。
     まだまだグランドフェスティバルには遠いけれど、今の私には自信がある。
     相手のトレーナーは、ドンメルとジュペッタを繰り出してきた。
     最近、ここホウエンのコンテストでも、ボールに特別なシールを貼ったカプセルを被せる、「ボールカプセル」が流行っている。
     シンオウが発信源らしいが、それにより、ポケモンは登場時に様々な効果を浴びてアピールをすることができるようになった。
     実際、ダブルパフォーマンスが増えたのもシンオウの影響だろう。
     今も、バトルでいうと「ダブルバトル」の形式で、決勝戦が始まろうとしている。
     ドンメルはカラフルな炎を纏い、ジュペッタは弾ける雷を飛ばしながら、ステージに降りた。
     さあ、今だ。
     私のポケモンを一番輝かせる方法を散々に考えてきた。
     それを今!
     「Let’s fascinate! ルナ、リオン!」
     ルナ――ポワルンが、白い煙と小さな星に包まれて登場する。
     回転しながら空中に留まると、煙は溶けるように消え、星は弾けた。
     そして、リオン――サクラビスは、昔の殻の色のような蒼の泡を渦巻かせながら空に飛び出し、身体をくねらせて泡を自在に操った。
     会場の盛り上がりを感じる。
     そう、そう、この感じ!
     決戦の始まりの合図が出される。
     司会の声が高々に響く。
     相手のポケモンが動き出す。
     「ルナ、あまごい! リオン、ルナの下まで移動、うずしお!」
     ルナがふわりと浮きあがり、身体を震わせた。
     そしてその下へとリオンが滑り込んでくる。
     空にいるルナへの攻撃は後回し、と考えたのか、相手の攻撃はリオンに向けての集中攻撃だったが、リオンはそれをするりと美しく避けた。
     相手のポイントが下がる音がする。
     雨粒が、ぽたり、ぽたりと降ってきた。
     そしてリオンが首を持ち上げ、ルナに向けてうずしおを起こし始める。
     回転しながら徐々に大きくなるうずしおは、すぐにルナを巻き込んだ。
     司会を中心に、疑問の声が聞こえる。
     しかし、これが新しい私達の技。
     焦りを露わにしながら、ドンメルのかえんほうしゃやジュペッタのシャドーボールがうずしおに飛んでくるが、圧倒的な水の威力に掻き消されてしまう。
     いや、寧ろ、取り込むように巻き込んでしまう。
     これも狙いの内だった。
     うずしおが雨を吸い込む。
     巨大化を始める。
     「今よ! リオン、うずしおを放って! ルナ、回転しながられいとうビーム!」
     リオンがいっぱいに溜めたうずしおを力に任せて解き放った。
     そして、その中で、何やらクリアブルーの物体が動いたと思うと、高速回転をし始め、気圧で鋭く尖り始めるうずしおの最先端部分に向けてれいとうビームを発射した。
     ルナだ。
     雨の姿になっている今、ルナはみずタイプであり、うずしおの中でも目が見える。
     高速回転することでうずしおの動きを調整しつつ、れいとうビームで凍っていく反動を生かして外に脱出した。
     今や、うずしおは巨大な弾だ。
     鋭い氷の弾。
     しかもうずしおは、ルナが水中に残してきた回転の力で更に尖っていく。
     「行っけー!!」
     力の限り叫ぶ。
     勿論、これで倒れなかったときの為の技の構成も考え済みだ。
     しかし大技が決まらなければ、今までの練習の成果が無い。
     練習よりも、一段と大きく綺麗な出来だった。
     渦氷の銃弾は真っ直ぐにドンメルとジュペッタに衝突した――!
     白い煙が辺り一面に広がり、事態がわからなくなる。
     それでも、不思議と、私にはルナとリオンの居場所と気持ちがわかる気がした。
     やりきった感じだ。
     まあ、終わってはいないのだが。
     さあっと煙が晴れた時、雨の中で、ドンメルとジュペッタが目を回して倒れていた。
     「ドンメル、ジュペッタ、共にバトルオフ!」
     司会が叫ぶように伝える。
     バトルオフ――勝った、私は勝ったのだ。
     ルナとリオンが抱きついてくる。
     久しぶりに感じる確かな感触。
     勝利の快感。
     喜び――。
     抱き合いながら、きゃあきゃあと燥ぐ。
     歓声が私達を包む。
     二か月後のグランドフェスティバルまで、リボンは、あと四つ。



    ――――

     コンテストものを書きたくて…ただ、それだけなんですorz
     「fascinate」とは、魅せる、魅了する、魔法をかける、のような意味があるそうです

      シュン→ジュプトル
      ルナ →ポワルン
      リオン→サクラビス

     多分続きます。
     でも多分です;

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.974] どこに行ったら見れますか 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/11/19(Fri) 00:04:28     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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      <○><○>   ジー

    これは、狐面を3、4枚所持してる私が感想を書かぬわけにわいかないっ!
    そう思って書き込みをしている!


    >「……何だ夢か」
    >『こら、勝手に夢にするな小僧』

    クソフイタwwww
    思考回路が野の火の誰かさんと同じで萌えたw
    というか主人公怖いモノ知らずすぎる。
    ポチとかマリモとかひでえwwwww
    しかし、久方さんのその手の悪ノリが私は大好きです。


    >『八岐大蛇』やら『酒呑童子』、『土蜘蛛』等と言えば、わかる人にはわかるだろうか。

    はい! 全部わかります先生!
    豊縁昔語はじめてからその手の本をいろいろ読み始めて、
    ここ1年くらいで無駄に知識がつきましたw
    ふふふ、話題を共有できる人がいるっていいなぁw

    いやぁもうね、終始ニヤニヤしっぱなしでしたよ。
    お稲荷さん食いながら観劇とかね、もうね
    いいよね!

    で、
    動画見たんですが、地元の伝統芸能とかうらやましすぎる(
    何これどこ行けば見れるんですか(
    ゆめタウンで検索したら何か出ますか(

    悪狐がいかにも着ぐるみで吹いたのはここだけの話。


    とりとめのない感想ですが、
    なんかいろいろ楽しそうだった。
    いいなぁ。

    私が読んだ時点で地味に40clapもついてて嫉妬したんで、
    私も自分の悪狐伝(笑)のほうがんばりますよw


      [No.932] 【黒歴史】処女作を晒すスレ【降臨】 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/11/07(Sun) 21:49:52     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    はじめて書いたポケモン小説を晒してみませんか。
    もうファイルが残ってなかったら手元にある最古のものでも可。
    (連載なら1話目オンリーとか)

    かの人いわく
    「処女作なんて、数年後に読んで笑うためのものなのだよ。 」

    さあ、勇気を持って投稿しよう……。
    小説歴とその時の具体的なエピソード付だと尚、可。




    【恥ずかしがらなくていいのよ】


      [No.891] 進まない【どろどろ】 投稿者:てこ   投稿日:2010/10/31(Sun) 02:21:47     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     崖が崩れはじめる。俺よりも上の方にいたフーディンが、足を取られ、転ぶのが見えた。
    「だああぁぁぁっ!」
     渾身の力を振り絞りフーディンの体を受け止める。重いなぁぁぁ!!ちくしょううぅぅ!!この頭でっかちいぃぃ!足を泥に沈ませ、何とか転ばずに耐える。つもりだった。
     かかとがわに草か何かがまきつき、重心が一気に後ろに傾くのを感じた。視界が上へと向いた。空が見えた。
    「うぐっ!」
     そのときだった。背中が弓なりに反る。人生で一番、背骨が反ったとか思った。その背骨の反った形のまま、俺の体は静止した。きうぅ。小さな声がした。俺の背中を後ろからぎゅうぎゅう押しているのは、いつの間に出てきていたムウマージだった。サイコキネシスの光が、ゆっくりと俺とフーディンを包み込む。指の先、足の先までが紫の光に包まれている。
     けれど、いつもより、弱い。普段の彼女ならもっと強い力を出せるはずだが、体力のない今、長くは持たない。
     時間はない。目の前には、フーディンの頭がある。――やるしかない。俺たちがどうなろうとも、これをやるほか、ない。大きく深呼吸をして、唾を飲み込む。フーディンの耳に届くよう、わずかに顔の向きを変え、俺は言った。
     
    「フーディン……頼む!」


     ――黄金色に輝く二本のスプーンが、大きく折れ曲がった。


     土砂は崩れない。木も倒れない。その場所で止まってしまっている。否、止められている。時間が止まってしまったかのように、泥も木も動かない。
     突然の状況に戸惑っている彼らに俺は傾いた姿勢のまま叫んだ。フーディンのサイコキネシスの力で、土砂や木々の動きを止めている。
    「行ってくれ!はやく、ここから逃げてくれ!」
     俺とムウマージがフーディンを支え続けなければ、あっという間に土砂は流れ出すだろう。だから、俺は逃げられない。
     ――フーディンの力が切れたら?
     考えたくもない。

     トレーナーは苦い顔をしていた。彼の隣で、彼のポケモンであるリオルが一生懸命に彼の手を引っ張っている。彼の拳が、白くなる見えるほどにきつく握り締められていた。彼のポケモン達も、同じ表情をしていた。けれど、すぐに彼らはずぐに身体を翻し、走って行った。 こういうとき、レンジャーはどうしなければならないか。彼はわかっている。レンジャーの鉄則。より多くを助けられる道を選べ。もし、俺が彼だったら、ああいうふうにできただろうか。ぐずぐずして、困らせそうな気がする。もし、そんな機会があったら俺もあの人のように振舞うようにしよう。――あれば、だけど。
     アブソルとリーフィアが道の先導をしている。まぶしい光を放つルカリオの波動弾が藪や木々を吹き飛ばす。
     
     地面が動きはじめる。

    「もう少しだ、フーディン!」
     フーディンが苦しそうに唸る。いくら、強い超能力を持ったポケモンだとは言え、これだけ多くの物体を一度に操るのは簡単なことではない。だが――

     まだ近い。この土砂崩れの規模は分からないが、ひどい場合には広範囲にわたる場合もある。彼らを巻き込まぬよう、少しでも時間を稼がなければ。
     俺も全身に力を入れる。超能力はないけれど、やれることをやるしかないのだ。
    「ムウマージ、フーディン!力の出し惜しみなぞするなよおぉ!もし、力が切れて土砂に飲み込まれたって必ず死ぬわけじゃないんやぞおぉ!!死ぬかもしれんが、そんなことは考えるな!!」
     体の筋肉が悲鳴を上げているような気がする。いや、サイコキネシスで支えられているはずなのだから、体に負担がかかるはずはないのだ。ムウマージの力が、弱く、なってきている。

     地面が滑る。パラパラと小さな小枝が顔に降りかかってくる。力を入れて無理やりに木の棒を折ったような、軋んだ音が耳に届く。そして、一気に、滑り落ち始めた――。


     もう、無事に逃げ終わったか――?


     泥が視界を覆い隠していく。フーディンにまわした腕に力をこめ、背中側に手をまわしてムウマージを抱き寄せる。体が浮いた。自分を支えるものは、もう一つもない。あとは、落下をしていくのみ――。

     あ――。

     一瞬ではあったが、何か輝くものが見えたのだ。それは光を纏った猫のような形をした、何か。未確認生物カーバンクルのような、額の赤が光っていた。そして、その後ろから古代の翼竜が流れ落ちる土砂をその身体に受け、勢いを止めた。そこまでしか、見えなかった。直後、体の右側に強い痛みを感じ、頭を打った。激しい頭痛が徐々に消えていくよう。そこで、意識が切れた。 


    ――――


     痛い。身体中が痛い。
    「ん……?」
     痛い?
    「痛いということは……つまり、俺は生きている!」
     腕の中のムウマージとフーディンが嬉しそうに微かに鳴く声が聞こえた。俺は二匹をぎゅっと抱きしめた。温かい。動いている。息をしている。俺達は、まだ、生きている。何だか目頭が熱くなって、頬に温かいものが零れた。嗚咽が、漏れる。死を覚悟はしているけれど、死ななくて良かった。本当に良かった。
     けれど、そう。まだ、仕事は終わっていない。喜ぶのは帰ってからにしないといけない。両手で、顔をこすり、涙を拭きとった。二、三度叩いて、気持ちを入れ替えてようやく体を起こした。体の上に降り積もった土や落ち葉が落ちる。全身、泥だらけ。腰のモンスターボールを確認する。きちんと三つある。そのうちの一つがぐらぐら揺れている。が出せない。こいつはあまりにも血の気が多すぎて、トラブルをよく起こしがち、すなわちトラブルメーカーである。だから、自分で出てこられないようなモンスターボールに入れてあった。まぁ、今でてきたいという気持ちは分からなくもないが、お前は駄目だ。
     ムウマージは抱きしめていたおかげでそこまで負傷はしなかったようだ。フーディンのほうは若干、傷が目立つが……まぁ、だいじょうぶだ。こいつなら。俺の身体も痛みはするが、骨折したり、大量出血はしていない。不幸中の幸い、か。
    「フーディン、ムウマージ。緊急事態のアレ、頼む」
     合点承知之助だい!とばかりに、フーディンがスプーンを前にかざす。あれだけ、崖を転がり落ちたと言うのに、こいつはスプーンを手放さなかったのだ。見上げた根性である。ある意味。フーディンがじこさいせいをし、それにムウマージがぴったりとくっついていたみわけをする。そうすれば、ある程度までは体力を回復できる。

     俺はぼんやりと崖へと目を向けた。まだ、頭がぼうっとして記憶が曖昧だ。一つ、一つ、何が起きたかを思い出していく。
     そうだ、輝く猫のようなポケモン。あれはエーフィだ。恐らく、がけ崩れの被害を緩和してくれたのだろう。きっと、フーディンの力だけじゃ、俺たちは今生きていなかったと思う。土砂に埋もれて、死んでいたか、もしくはあの少年のようになっていたと思う。命の恩人、いや恩ポケモン。誰の、ポケモンだったのだろうか。

     ムウマージが俺の体にぴったりと張り付く。いたみわけ。
    「ん……あと、あれ。なんだっけ。エーフィだけじゃなくて、えーっと……」

    「――休んでおけ、ロー」
     古代の翼竜――アーケオロスが赤い光となって消えた。泥まみれの俺を一瞥もせず、前をすたすた歩いていったのは赤い女性だった。その女性の顔は一瞬しか、見えなかったが、どこか、危うさを感じた。その人が凶悪とか、怖いとかそんなんじゃない。冷淡な顔に、鋭い眼光、低い声。だが、その奥に重いものを秘めているような気がした。あふれ出してしまいそうなほど、重いものを必死に秘めているような、そんな危うさ――だった。

    「大丈夫か!」
     レンジャー達が走ってくる。怪我はなさそうだ。少年も、無事なようである。
    「大丈夫です!重傷ありません!」
     何とか立ち上がる。うん。フーディンとムウマージのおかげで、大分痛みが引いた。
    「あの人は……?」
     青年のレンジャーが顔をしかめて、彼女を見る。
    「あぁ、なんか助けてくれたみたい、です」

    「あ……あなたは?」
     赤い彼女が振り向いた。風が巻き起こり、雷が近くに落ちた。木の葉が舞い上がり、彼女の赤い髪も舞う。
     そんな中、彼女は一切動かずに、ただ平然と直立していた――。





     
    【続けていいのよ】
    【むしろ、続けて欲しいのよ】


    きとかげさんの彼女さんと、海星さんのエーフィお借りしました。イメージ違ったらごめんなさい。
    救助隊は次号で!(すみません

    みんな、救助頼んだ!

    きとかげさんのアーケオロスをプテラと書いていました。化石=鳥=プテラ の考えはもう古いのかっ


      [No.850] 【好き勝手救助しようとしたのよ】 投稿者:CoCo   投稿日:2010/10/26(Tue) 20:33:42     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     上司から連絡が来る前に、既にアブソルが土砂崩れを予知していた。
     しかしそこは山中深く、谷を下ればすぐなのだがそれはあまりにも危険すぎる所業。道をひろいながら下っていたら遅くなってしまい、結果的に土砂崩れが起こる前に周辺の確認をすることはできなかった。

     アブソルは背中から飛び降りた俺を赤い瞳でみつめて悔しそうに呻いたが、とりあえず状況を確認しようとなだめてやると少し落ち着いた。こいつはまだ育ちきっていないので、足は速いが俺を乗せて長い距離を走ると消耗が激しい。とりあえず隣に控えさせて、この先は足で進むことにした。

     雨は降り続いている。
     彼は周囲にポケモン、そして万が一人間が巻き込まれている気配を注意深く確認しながら、土砂が崩れ落ちた地点へと身長に道を下っていく。

     すると突然、アブソルがぐる、と声を発し、ほぼ同時に茂みからリオルが飛び出してきた。
     この周辺にリオルが生息しているという話は聞かない。もしやトレーナーが巻き込まれているのでは……と脳裏を過ぎる不吉な予感。それを裏付けるかのように、リオルはたいへんな勢いで彼の泥まみれな足にすがり付いてきた。ちいさな腕を必死に伸ばして、どこかへ俺を連れてこようとしている。

    「わかった、わかった」
     レンジャー本部の支給品である分厚い手袋を外して、ひどく取り乱しているリオルを撫でる。冷たい。どれだけの間この風雨にさらされていたのか。耳の下を撫でてやると少し吐息を漏らして、安心した様子ではあったがまだ俺の腕を引いて向こうを指している。この震えが寒さによるものだけではない、なにか差し迫った事情があることにはすぐに感づいた。

    「大丈夫、すぐに助けに行く」
     本部に応援要請の信号を送った後、リオルを抱えて斜面を降りる。アブソルが藪を切り裂き、すぐに崩れ落ちた斜面が見えた。
     しかし雨が少しずつ強くなってきている。起伏の激しい南国の密林で生まれ育った俺ならこれぐらいの斜面は降りるに困らないが、どこにリオルをここまで心配させる原因が潜んでいるのかもわからないし、どこから再び崩落が始まらないとも限らない。

    「ウツボット」
     レンジャーのボールは特殊で、万が一の状況を考え自動でも開閉するように設計されている。もちろんポケモンもそれにあわせて訓練されるので、俺の生来の相棒・ウツボットは難なくボールから飛び出してきた。

    「ウツボット、つるのムチで俺を下まで下ろしてくれ」
     ウツボットは葉を振って答えると、ツタに俺の胴をしっかと絡めてゆっくりと降下させる。
     しばらく降りると、上からは死角になっている岩だなの影に、人とポケモンの一団が見えた。
     チルタリスと青年、しけって火の消えた薪、そしてどうやら手当てを施された後と思われる子供の影。そばに寄り添っているのはヒトカゲだろうか。向こうからリーフィアとビーダルとおぼしきポケモンが小枝を背負って駆け下りてくる。

    「ポケモンレンジャーです! 大丈夫ですか!」

     声をかけると、健康的な体格の青年が笑顔で右手を上げてきた。どうやら、彼はここであのヒトカゲのトレーナーと思われる少年を救助して、リオルに助けを呼びに行かせたようだ。
     着地するとすぐ、リオルは青年にとびついた。

    「彼が危険です」
     青年は言った。
    「応急手当はしましたが、早いとこ病院に連れて行かないと」

     俺は頷いた。少年は適切な処置を受けてなんとか無事そうだが、傍目からも衰弱が激しいのがわかる。

    「トロピウス!」
     ボールから飛び出したのは大柄なトロピウス。こいつなら問題なく遭難者を病院まで運んでくれるはずだ。
     少年の身体を鞍に固定して、俺は青年を振り向いた。あなたは、と聞くと集まってきた手持ちを差して口角を持ち上げる。チルタリスがばささ、と数度羽ばたいた。なんと頼もしい。

     しかし雨足は強まるばかり、暗雲には雷の気配も感じる。アブソルが崖の上で吼えている。
     はやく援軍が来てくれれば、それに越したことはないのだが。

     こんなことなら故郷を出てこっちへ研修へ来る前に、啖呵切って「俺にはウツボットがいるから大丈夫です!」なんて言わずちゃんと天気研究所でポワルンを受け取っておけば良かったなあと、少し思った。


     おわりんぐ



    ***

     だってアブソルが「まじ埋まってる人間救助しないとかお前人間じゃねぇ」って言うから。
     本当に申し訳ないです。


    【もっと救助してもいいのよ】


      [No.716] はじめて? 投稿者:てこ   投稿日:2010/10/11(Mon) 01:23:37     78clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    「わー!!寝坊した」
     走る。俺はベッドを飛び起き、服を着替え、飯も食わずに家を飛び出した。目指す場所は、町の、研究所。

    「博士!博士!」
     研究所に飛び込むと、一番奥で白い服を着た博士がいつも険しい顔を更に険しくし、仁王立ちで俺をにらめつけていた。うっ、やばい。マジでやばい。
     今の状況を説明すると、今日は俺のポケモントレーナーとしての旅立ちの日であり、この目の前の博士は俺にポケモンをくれるであろう人であり、俺とこの博士の仲はなかなか悪いのであり、更にその悪さに追い討ちをかけるように俺は寝坊してしまったのである。
     ……俺のポケモントレーナー人生終わったかもしれん。
    「あの……すみません」
    「……」
     目の前の博士は黙ったまま、俺を睨み続けている。何か言えよ、じじぃ!とは言えない。じ……博士は微動だにしない。眉一つ動かさず、立ったまま死んでるんじゃというまでに動かない。
     とにかく、俺は謝ることにした。めちゃくちゃ謝った。超謝った。研究所の人の視線が痛いが気にしてられる状況でもない。すみません、ごめんなさい、本当にすみません。あと少ししてたら、俺はきっと土下座をしていたに違いない。幸い、膝を地面につける前に博士は一声を発してくれたのである。
    「……言いたいことはたくさんある、が。持ってけ」
     そう言って博士は一つのモンスターボールを俺に差し出した。机に残っていた最後の一つ。きっと、残りは友達とか友達とか寝坊しなかった友達とかが持ってったに違いない。寝坊せずに選んだ方がよかったかなぁなんて思いつつ、俺は恐る恐るそれを受け取って中心のボタンを押した。
     赤い光がほとばしる。赤い光は集まって、一つの影となり、そのポケモンは姿を現した。

     ジジィィーン。

     黄色い体、糸のように細い目。長い尻尾。座ったまま動かない身体からすーすーと声が、あれ……寝息?
    「お前のポケモンじゃ」
     確か家にあった図鑑で見たことがある。一日中寝ているポケモン。敵に襲われたら寝たままテレポートして逃げるポケモン。一切の攻撃手段を持たず、テレポートしかできないポケモン。
     ケーシィ。
    「……」
    「これが、お前のはじめてのポケモンじゃ。大事にするがいいぞ」
     いつもは険しいその顔に若干優しさのようなものをにじませて、博士はゆっくりと言った。
     俺の……はじめての……ポケモン……。
     って。
    「かっこいい面してんじゃねぇじじぃ!!ケーシィだけで……どうやって戦っていけって言うんだよ!?あの、コイキングですらたいあたりくらい覚えてるぞ!」
    「うるせぇ!寝坊してくるやつがピーチクパーチク言うんじゃねぇ!もう他にポケモンがいなくなってしまったから仕方なくわしの愛弟子をお前に預けよう言うとるんじゃ!文句があるなら、生身で草むらに入って襲われでもするんじゃなぁ!」
     寝坊、そこを出されると俺はもう何も言えない。しばらくにらみあいを続け、俺はケーシィをボールに戻し、全速力で走り出した。
    「覚えてやがれじじぃ!」
    「なんとでも言え小童が!」
     ……こうして、俺の旅は始まったのである。


    「あれ ――くん。 ポケモン だいぶ なついて きた みたいだね
     よし わたしが バトルで ためして あげる!」

     うおぉぉぉぉぉ!!ケーシィで……テレポートしか持たないケーシィで、まともに戦えるポケモンを持った幼馴染にどうやって勝てって言うんだよちくしょうーー!
     と、こころの中で叫んだ瞬間には、俺の視界は真っ暗になり、いつのまにかポケモンセンターにいたのである。まぁ、いい。モンスターボールを買いに行こう。 まぁ、あれだろ。モンスターボール買って、草むらのポケモン捕まえればなんとかなるだろ。


     と思った数分後。

     幼馴染倒さなきゃ、モンスターボール販売されねぇのかよぉぉ……。

     もういい。俺は進む。がむしゃらに進めば、道は見えるさ。何とかな

    「あれ――くん。 ポケモン だいぶ なつ」
    「うるせえぇぇぇぇ!!!」

     数十秒の沈黙。
    「……もぅ。私も私の仕事をしてるんだけどー……」
    「うるせぇやい……ケーシィだけで、どうやって勝てって言うんだよばかやろおぉぉ……」
     幼馴染があごに指を当てて「うーん」と声を漏らす。俺は体育座りをし膝の間に顔をうずめ、地面にの、の、の……。
    「あ、そだてやに行ったらいいんじゃないかな。そだてやに行ったら育ててくれるよ」
    「マジでか!よし、ケーシィ行くぞ!」

     数日後。
     暗い森を超え、道を塞ぐ悪者の目を盗んで道を突き進み、そして、なんとか念願のそだてやに辿り着いた。
    「よし、強くなってこいケーシィ!」
    「ジジィィィ!!」

    「ここはそだてや おまえの ぽけもんを おまえさんの かわりに そだててあげるよ」
    「このケーシィを宜しくお願いします!」
    「……。いや、おまえさんの戦うポケモンがおらくなるじゃろ……」
    「え、だめ!?だめ!?大目に見てもだめすか!」

     ……。

    「ごめん、あたしが言い忘れてたわ」
    「お前なぁ!レベル1のケーシィとここまで来るのにどれだけ苦労したと思ってんだ!」
    「あ、じゃあバトルタワーは?BPためてふしぎなあ」
    「BPたまんねぇだろ!」
    「ポケウォーカーに入れるってのは?あが」
    「だから、一体しかいねぇんだよ!」
    「じゃ、ポケスロンでスロンポイン」
    「だから、一体しかいねぇって言ってんだろ!!」
     うーんと唸る幼馴染。しばらく唸って、手のひらを叩き、笑顔で
    「ものひろいとか!」
    「モンスターボールがねぇんだよ!!」

     あぁ、もうちくしょう。俺は全然駄目だよ。違法ルートで道を突き進んできたけれど、ジムリーダーどころかトレーナー一匹倒しちゃいない。いや、トレーナー一匹どころかポケモン一匹すら……。
     ケーシィの黄色い頭を撫でる。ごろごろとまるで猫のようにケーシィは喉を鳴らした。
     強いポケモントレーナーになることが夢だったけど、別にポケモントレーナーじゃなくてもケーシィといることは出来る。出来る、けど

    「……」
    「あー……、じゃあさ、博士にもう一度謝ってみたら?でさ、ポケモン変えてもらえばいいじゃん」

     変えてもらう。確かに時間をおいた今なら許してもらえるかもしれない。あのときもらえるはずだった、三色のポケモンがもらえるかもしれない。そしたら、おれもトレーナーになることが出来て、幼馴染を倒して、モンスターボールを買って、新たなポケモン達と旅が出来るかもしれない。でも――

     俺は立ち上がった。立ち上がり、早足で歩き始めた。え、なに?と俺を不審そうに見つめる幼馴染をおいて歩き始めた。
     俺とケーシィじゃすぐにやられてテレポートで逃げ帰ってくるに違いない。その場で二人、倒れてしまうかもしれない。だけど――ケーシィじゃなきゃ駄目なんだ。
     理由はともあれ、共に苦労してきた相棒。初めてのポケモンだから。

     あいつのおかげで目が覚めた。俺は何をぐだぐだ言ってた?あきらめて、ケーシィと他のポケモンを交換して、足を進めて何が出来るんだ。何も出来ない。ケーシィをあきらめたという挫折ではじまるトレーナー人生でいいのか。よくない。
     俺に、やれることはまだまだあるだろう。

     ケーシィがふよふよと後ろから着いてくる。首を微かに縦に振り、ジーィと微かに鳴いた。


     数年後。

    「フーディン、サイコキネシス!ドンカラスはゴッドバードっ!」
     翼を広げた黒い影が相手のキノガッサに激しくぶつかる。キノガッサはダメージをくらったようだが、ふらふら。そこにフーディンのサイコキネシスが追い討ちをかけ、ぐるぐると目を回して戦闘不能状態。
    「おっしゃ!よくやった!」
     白旗が相手の側にあげられ、審判の声がフィールドに響き渡った。フィールドの真ん中で俺のはじめての相棒――フーディンは得意げにスプーンを曲げ、髭を揺らしている。

     あれから、なんやかんやあって、とあるまちでとあるおじさんにサイコキネシスのわざマシンをもらった。サイコキネシスはエスパータイプのわざのなかでも高威力なわざ。これで、俺とケーシィの長い長い旅も次のステップに進むぜ!なんて思ったら

    「この わざは もう おぼえているよ」

     なん……だと……!!!

    「おいじじぃ!いや、オキード博士様!これはいったい……」
    「なんじゃ、お前。今更気づいたのか?そのケーシィはわしの愛弟子。リトルカップに出そうと、大事に育てておったやつじゃよ。サイコキネシスくらい、親の譲り技で覚えとるわい!」
     ポケモンが一匹しかいないからって一度もパソコンを触らなかった俺にも原因がある。あるが。
    「それをはじめに言ってくださいよ……」
    「何が、はじめに言えじゃ!戦えないようなポケモンを渡すわけがなかろうが!!」
     
     なんだか笑ってしまう。俺と、ケーシィのあの努力はなんだったのか。いや、ケーシィも使えるなら使ってくれればよかったのになぁ……。
     だが、そう。あの時のこと、今は笑える。でも、あの時は笑いも出来なかった。どうしようか毎日考えて失敗して、でも、あれはあれでどこか楽しかったような気もする。

     
     相手の最後のポケモンであるキノガッサを倒し、俺は相手のトレーナーと握手を交わした。相手トレーナーの後ろに佇む、大きな扉。次の――四天王はどんな人で、その先には何があるのか。
     どきどき、はらはらしながら扉を押すこの瞬間に、初めての相棒、お前が隣に居てくれて、よかった――。


    【批評していいのよ】
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】

    お久しぶりです。てこです。
    今回はギャグのようなギャグのような……。
    台詞おおいところは大目に見てください。すみません。

    最初のポケモンってちゃんと考えられているんだなぁ、なんて思いました。テレポートしか使えなかったらそりゃつらいよ!

    何はともあれケーシィは可愛いんだ!


      [No.532] Re: イーブイに関する相談 投稿者:セピア   投稿日:2010/08/26(Thu) 23:36:06     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    > 知恵袋に寄せられた相談:
    > 父と母がイーブイの進化を何にするかを巡って対立しています。
    > どうすればいいでしょうか?

    ワーストアンサー:お父様とお母様が望む進化以外の進化をイーブイにさせてください。
          
    > 知恵袋に寄せられた相談:
    > 娘のイーブイをサンダースにするつもりだったのですが、なんだか黒いポケモンになってしまいました。
    > 娘が泣いています。どうすればいいでしょうか?

    アンサー?:防御と特防に極振りして、「のろい」と「しっぺがえし」を覚えさせてください。
          娘さんがトレーナーなら、ブラッキーの無双っぷりに喜ぶと思います。





    【珍回答するのよ】


      [No.430] カゲボウズは洗濯するもの 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/17(Tue) 19:05:23     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    何この素敵な流れ。
    カゲボウズいっぱい見れて幸せだわー。

    ああ、でも幸せだとカゲボウズよってこないなー
    ううむこのジレンマ


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